JP4484297B2 - 誘電体磁器組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体共振器、高周波導波路、マイクロ波コンデンサ、マイクロ波IC基板、ICパッケージ、誘電体アンテナ等の電気通信分野またはマイクロ波透過窓等の核融合関係設備分野などの高周波用として好適に利用される誘電体磁器組成物に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、通信網の発達にともなって、使用周波数がマイクロ波やミリ波領域などの高周波領域に及びつつある。誘電体磁器は、これらの高周波領域において、共振器や集積回路基板、アンテナ、各種高周波回路のインピーダンス整合等に応用されている。特に、フィルタやガンまたはFETマイクロ波発信器の周波数安定化のために必要となり、その需要が増大している。
【0003】
マイクロ波用誘電体材料の特性としては、Qf値(=f/tanδ)が大きく、共振周波数の温度係数(τf)を制御できることが必要である。それに加えて従来は、素子の小型化のために比誘電率の大きな材料が開発されてきた。しかし、使用周波数が高くなるにしたがい、加工性の面から比誘電率の小さい材料が望まれ、特に準ミリ波帯である15GHz以上の周波数帯では、従来の誘電率20程度の誘電体では加工精度の問題から使用できず、誘電率10程度の誘電体材料が望まれていた。
【0004】
これまで、セラミック材料として最も多用されているAl2O3質焼結体は、Al2O3に、焼結助剤としてSiO2、CaO、MgO等を添加して焼結したものであるが、このAl2O3質焼結体は、従来のBa−Mg−Ta−O系等のマイクロ波誘電体材料に比べて比誘電率が10と小さい。また、単結晶Al2O3が非常に高いQf値をもつことから、Al2O3本来のQf値が高く、高周波誘電体材料として高い能力を持っていると考えられる。さらに、Al2O3質焼結体は、機械的強度、熱伝導性及び化学的安定性に優れコストが低いという利点もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のAl2O3質焼結体は、共振周波数の温度係数(τf)が−60ppm/℃と絶対値の大きな値をもつため、高周波またはマイクロ波誘電体材料としてはその用途が著しく制限されていた。また、Qf値については、Al2O3原料粉末中の不純物や焼結助剤等の添加物によって大きく低下してしまい、本来有する優れた特性が得られないのが現状であった。
【0006】
このような状況下の中、本発明者らは、Al2O3と逆の符号のτf値を持つTiO2を複合化させ、高いQf値を保ちながらAl2O3のτfが制御可能な材料を提案した(特開平9−221355号)。しかしながら、この材料は、温度によってτf値が変化し誘電体共振器等の電子部品に用いるには、信頼性の点で不十分であった。
【0007】
従って本発明は、Al2O3を主成分とし、高いQf値を有し、共振周波数の温度係数τfの絶対値が低減でき、且つτfの温度変化を低減した新規な材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、Al2O3−TiO2系材料についてさらに検討を重ねた結果、さらにY2O3を添加することで高周波におけるQf値を低下させることなく、τfを制御しつつτfの温度変化率を低減することを見出し本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明の誘電体磁器組成物は、Al2O378〜96体積%と、TiO24〜22体積%とからなる主成分を100重量部に対して、Y2O3を0.1〜10重量部の割合で含有してなり、結晶相が、Al2O3(コランダム)結晶相を主相とし、TiO2(ルチル)相を4〜14体積%の割合で含有するとともに、開気孔率が3%以下、測定周波数20GHzにおけるQf値が50000以上、共振周波数の−40〜85℃における温度係数の絶対値|τf|が30ppm/℃以下、−40℃と85℃におけるτfの差の絶対値が30ppm/℃以下であることを特徴とするものである。
【0010】
Al2O3の共振周波数の温度係数τfは、−60ppm/℃と負の大きな値である。そこで、Al2O3のτfの絶対値を低減させるには、焼結体中にτfが+440ppm/℃のTiO2(ルチル)相を共存させることが有効である。但しこのままでは、τfの温度変化率が大きく、−40℃と85℃におけるτfの差は40ppm以上に達する。
【0011】
そこで、本発明によれば、Al2O3−TiO2系組成物にY2O3を所定の割合で添加させることにより、Al2O3(コランダム)からなる主相に対して、TiO2(ルチル)相を4〜14体積%の割合で共存させることができ、しかも開気孔率3%以下まで緻密化させることにより、高周波あるいはマイクロ波領域で、高いQf値を持ち、共振周波数の温度係数τfの絶対値が小さく、τf値の温度変化率の小さな焼結体を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体磁器組成物は、Al2O3(コランダム)相を主相とするものであり、その他の結晶相として、少なくともTiO2(ルチル)相を含むものである。本発明によれば、Al2O3相を主相とする焼結体中に、TiO2相が4〜14体積%、特に7〜11体積%の割合で存在することが重要である。
【0013】
これは、TiO2相が4体積%より少ないと、τfが−30ppm/℃より小さくなり、TiO2相が14体積%より大きいとτfが+30ppm/℃より大きくなるためである。なお、本発明の焼結体中には、Al2O3(コランダム)相およびTiO2(ルチル)相以外にAl2TiO5相が存在する場合もあるが、Al2TiO5相は、TiO2相のようにAl2O3のτfを制御する効果を有さず、また、焼結体中に多量に存在すると誘電損失が大きくなるため、Al2TiO5相の量は少ないほどよく、具体的には、7体積%以下であることが望ましい。また、3Y2O3・5Al2O3(YAG)やチタン酸イットリウム、わずかにこれらの成分からなるガラス相が存在する場合もある。即ち、Al2O3(コランダム)相が86〜96体積%、さらにはAl2O3相およびTiO2相は合計で93体積%以上であることが望ましい。
【0014】
本発明の誘電体磁器組成物によれば、結晶相を上記の範囲に制御するために、主成分組成がAl2O3とTiO2とからなり、焼結体全量におけるAl2O3が78〜96体積%、TiO2が4〜22体積%の比率で含有されることが必要であって、これらの比率を逸脱すると、共振周波数の温度係数を上述の範囲に制御することが難しくなる。
【0015】
また、本発明によれば、τfの温度変化による変化を抑制する目的で上記Al2O3とTiO2からなる主成分組成100重量部に対して、Y2O3を0.1〜10重量部、特に0.2〜1重量部の割合で含有することが重要である。これはY2O3量が0.1重量部よりも少ないと、τfの温度変化による変化が大きく、−40℃と85℃のτfの差の絶対値が30ppm/℃を超えてしまい、10重量部よりも多いと、Qf値が50000未満となるためである。
【0016】
また、本発明の誘電体磁器組成物は、上記成分以外に多少の他成分を含有していてもよいが、その成分量は酸化物換算による合計で0.2重量%以下、特に0.01重量%以下であることが本発明の効果を最大限発揮させる上で望ましい。
【0017】
上記の組成からなる本発明の誘電体磁器組成物は、誘電特性を高める上で開気孔率が3%以下、特に1%以下であることも重要である。これは、開気孔率が3%を越えると、高周波領域での誘電損失が大きくなり、Qf値が低下するためである。
【0018】
本発明によれば、上記の構成により、測定周波数20GHzにおけるQf値が50000以上、特に100000以上、共振周波数の−40〜85℃における温度係数の絶対値|τf|を30ppm/℃以下の範囲に容易に制御でき、−40℃と85℃のτfの差の絶対値を30ppm以下とすることができる。
【0019】
本発明の誘電体磁器組成物を作製するには、まず、原料粉末として、純度99.8%以上のAl2O3粉末と、純度99.8%以上のTiO2粉末、純度99.9%以上のY2O3粉末を準備する。特に、本発明によれば、低温での焼結性を高めるためには、Al2O3粉末の粒径は小さいことがよく、特にAl2O3粉末のBET比表面積は、12m2/g以上であることが望ましい。
【0020】
そして、これらの粉末をAl2O3粉末78〜96体積%と、TiO2粉末4〜22体積%からなる主成分組成物100重量部に対して、Y2O3粉末を0.1〜10重量部の割合で添加し、さらに有機バインダー等を添加してボールミル等により混合する。そして、その混合物を所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押出し成形、ドクターブレード法、圧延法等により任意の形状に成形後、焼成する。
【0021】
焼成は、1350℃以下、特に1000〜1300℃の温度で大気などの酸化性雰囲気中で1〜10時間焼成し、開気孔率が3%以下、特に1%以下となるに十分な時間焼結させる。焼成温度が1350℃より高いと、Al2TiO5相が生成されてしまい、τfの制御ができず、誘電損失も大きくなってしまう。なお、焼成時間を長くして緻密化を促進させることにより誘電損失をさらに小さくすることができる。
【0022】
なお、本発明におけるAl2O3結晶相やTiO2結晶相の存在割合は、あらかじめ量が定められた試料に基づいて測定された検量線に基づき定めた値である。
【0023】
【実施例】
Al2O3粉末として、純度99.99%、TiO2粉末として純度99.8%の粉末を用いて、Y2O3粉末として純度99.9%の粉末を用いて、表1の組成で100g調合し、純度99.9%のAl2O3ボール(直径10mm)300gとイソプロピルアルコール100gとともに500mlポリポツトに入れ24時間回転ミルで混合した。次にパラフィンワックスを5重量%混合し、乾燥後#40メツシユに通した。この粉末を金型プレスにより100MPaで成形した。焼成は、大気中で表1の条件で行い円柱状の焼結体を得た。
【0024】
得られた円柱試料に対して、研磨加工後、アルキメデス法により開気孔率を測定し、X線回折測定により結晶相を同定するとともに、その存在割合を検量線法により全結晶相に対する各結晶相の比率を求めた。また、誘電体円柱共振器法により測定周波数20GHzで、比誘電率(εr)、誘電損失(tanδ)を測定するとともに、−40〜85℃の共振周波数の温度係数τfを測定した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1によれば、TiO2相の析出量が4体積%よりも少ない試料No.1では、いずれも|τf|が30ppm/℃を越えるもので、逆にTiO2相の量が14体積%より多い試料No.15、16でも+側に大きくなりすぎていた。開気孔率が3%より大きい試料No.16ではQf値が2000と小さいものであった。
【0027】
また、TiO2相の析出量が4〜14体積%内であってもY2O3無添加の試料No.5は−40℃と85℃のτf値の差が40ppm/℃以上となってしまう。
【0028】
これに対して、上記比較例以外の本発明の試料は、1350℃以下の温度で焼結して、いずれもTiO2相を4〜14体積%析出させることにより、τfを−30〜30ppm/℃の範囲で制御できることがわかる。また、Y2O3を0.1〜10重量%添加することにより、−40℃と85℃のτfの差の絶対値を30ppm/℃以下に低減できる。本発明の試料は、いずれもQf値50000以上、比誘電率10以上の特性を有するものであった。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、Al2O3−TiO2系材料において、高周波領域でのQf値が高く、|τf|を30ppm/℃以下に制御でき、−40℃と85℃のτf値の差の絶対値を30ppm/℃以下にできる材料を提供できる。これにより、誘電体共振器、マイクロ波導波路、マイクロ波コンデンサ、マイクロ波IC基板、ICパッケージ、誘電体アンテナ等の電気通信分野またはマイクロ波準過窓等の核融合関係設備分野などの高周波用として好適に利用できる。
Claims (1)
- Al2O378〜96体積%と、TiO24〜22体積%とからなる主成分を100重量部に対して、Y2O3を0.1〜10重量部の割合で含有してなり、結晶相が、Al2O3(コランダム)結晶相を主相とし、TiO2(ルチル)相を4〜14体積%の割合で含有するとともに、開気孔率が3%以下、測定周波数20GHzにおけるQf値が50000以上、共振周波数の−40〜85℃における温度係数の絶対値|τf|が30ppm/℃以下、−40℃と85℃におけるτfの差の絶対値が30ppm/℃以下であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
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