JP4356163B2 - ターボ過給機付エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気により吸気を過給するターボ過給機を備えたエンジンの制御装置に関し、主としてエンジン高負荷域における燃料噴射制御の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車用エンジンの出力や燃費を向上させるために、排気エネルギを利用してエンジンの吸気充填量を高めることのできる排気タービン駆動式過給機(ターボ過給機)が広く用いられている。
【0003】
また、直噴式ディーゼルエンジンにおいて、燃料噴射弁の作動特性の個体差による悪影響を排除するために、例えば特開平3−160148号公報に開示されるように、燃料噴射弁の針弁をパルス信号の入力に応じてオンオフ動作させることにより、該燃料噴射弁からの燃料噴射量を時間的に変調させて、その噴射量を変更制御することが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般的にターボ過給機は、エンジンの排気エネルギの大きい中回転ないし高回転域では優れた能力を発揮するものの、排気エネルギの小さな低回転域では能力が低下するという特性を有し、しかも、ターボ過給機を装備する過給エンジンは通常、気筒の圧縮比が非過給エンジンよりも小さいことから、低回転域では吸気充填量の低下が相対的に大きくなる。
【0005】
このため、例えば車両の発進加速時のような低回転かつ高負荷の運転領域では、要求出力に応じた十分な吸気充填量が得られず、エンジン回転数が速やかに上昇しないという不具合があり(いわゆるターボラグ)、一方で、燃料の供給量は多くなるので、局所的に空気不足により燃焼状態が悪化し、スモークが増えてしまう。
【0006】
また、エンジン高負荷域では全般に燃料噴射量が多いことから、燃焼が激しくなって、NOxの生成量も増大しやすく、しかも、熱負荷の増大に伴い信頼性の低下が懸念される。特に高負荷高回転領域では時間当たりの発生熱量が大きくなるので、エンジン本体の熱負荷が極めて大きくなり、また、ターボ過給機の過熱も問題になる。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ターボ過給機を備えたエンジンにおいて、その運転状態や過給状態に応じたきめ細かな燃料噴射制御を行うことにより、燃焼状態を改善しつつ、特に、低回転域におけるスモーク抑制と出力向上を実現する一方、高回転域における信頼性向上と燃費改善とを図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の解決手段では、副噴射を行うことによって主噴射燃料の着火性を高めて、該主噴射の時期を進角又は遅角側のいずれにも従来よりも大幅に変更し得るようにした上で、空気量の不足しやすいエンジン低回転域では前記主噴射の終了時期を遅角させて、過給圧を速やかに上昇させる一方、熱負荷の問題が大きい高回転域では反対に主噴射の終了時期を進角させるようにした。
【0009】
具体的に、請求項1の発明は、図1に一例を示すように、エンジン1の気筒2内燃焼室4に燃料を直接、噴射供給する燃料噴射弁5と、エンジン1の排気により吸気を過給するターボ過給機31とを備え、前記燃料噴射弁5による燃料の噴射量をエンジン1の負荷状態に応じて制御するようにしたターボ過給機付エンジンの制御装置Aを前提とする。
【0010】
そして、少なくともエンジン1が高負荷域にあるとき、前記燃料噴射弁5により燃料を、予混合燃焼状態になるように気筒2の圧縮行程で副噴射させるとともに、この副噴射作動の終了後に拡散燃焼状態になるように燃料を主噴射させる燃料噴射制御手段40aを備え、この燃料噴射制御手段40aを、エンジン1が前記高負荷域の高回転側にあるとき、同じ負荷状態の低回転側に比べて前記主噴射作動の開始時期及び終了時期が進角するように、前記燃料噴射弁5を作動制御する主噴射制御部40bを有するものとする。
【0011】
その上さらに、エンジン1が前記高負荷域にあるとき、前記燃料噴射弁5の副噴射作動による燃料噴射量の主噴射作動に対する割合を、同じ負荷状態であれば高回転側の方が低回転側よりも多くなるように設定する噴射割合設定手段40cを設ける構成とする。
【0012】
前記の構成により、エンジン1が高負荷域にあるときに、燃料噴射制御手段40aの制御により燃料噴射弁5の燃料噴射作動が副噴射及び主噴射作動に分けて行われる。そして、その副噴射作動により気筒2の圧縮行程で噴射された燃料が空気と混合されて燃焼し(予混合燃焼)、この燃焼により燃焼室4の温度及び圧力状態が高められるとともに、火種が形成され、続いて燃料噴射弁5の主噴射作動が行われると、その噴射燃料の着火遅れ時間が極めて短くなって、噴射燃料の殆どが良好に拡散燃焼されるようになる。
【0013】
ここで、エンジン1が前記高負荷域の低回転側にあれば、燃料噴射弁5の主噴射作動の開始時期及び終了時期が相対的に遅角側とされて、排気エネルギが増大することで、吸気の過給圧が高められ、これにより、十分なエンジン出力が得られる。また、過給による空気量の増大と前記副噴射による燃焼性向上とによって、スモークを低減できる。
【0014】
一方、高回転側では主噴射作動の開始時期及び終了時期が進角されて、燃焼期間が相対的に短くなることで、機械効率が向上するとともに、排気エネルギが減少し排圧上昇が抑えられることで、排気抵抗による損失も低減し、これにより燃費を低減することができる。さらに、排気温度の上昇が抑えられることで、ターボ過給機の過熱も防止できる。
【0015】
そうしてエンジンが高負荷域の高回転側にあるときに、同じ負荷状態の低回転側に比べて燃料噴射弁の主噴射作動の開始時期及び終了時期が進角される際に、その主噴射作動に先立って副噴射された燃料が燃焼し、不活性な既燃ガスが発生するので、主噴射開始時期を進角させても、その噴射燃料の初期燃焼速度が過度に高まることはない。よって、このときのNOxの生成を抑制でき、また、気筒内温度や圧力の上昇による熱負荷の増大を軽減できる。
【0016】
加えて、熱負荷の問題の大きいエンジンの高負荷高回転側では、前記したように噴射割合設定手段によって燃料の副噴射量の割合が多くされ、その噴射燃料の燃焼による既燃ガス量が増やされる。これにより、エンジン高回転側で主噴射開始時期が進角されていても、該主噴射による燃料の初期燃焼速度を適切に低下させて、NOx生成を十分に抑制しかつ熱負荷を十分に軽減できる。
【0017】
請求項2の発明では、請求項1の発明における燃料噴射制御手段は、エンジンが高負荷域の高回転側にあるときに、同じ負荷状態の低回転側に比べて燃料噴射弁の副噴射作動の開始時期を進角させる副噴射制御部を有するものとする。このことで、低回転側よりも副噴射割合の多い高回転側において、燃料噴射弁の副噴射作動の開始時期が副噴射制御部により進角されることで、その噴射燃料の気化霧化のための時間が確保される。
【0018】
請求項3の発明では、燃燃料噴射制御手段は、エンジンが中負荷域にあるときも、燃料噴射弁により燃料を副噴射及び主噴射作動に分けて噴射させるものとする。そして、エンジンが高負荷域の高回転側にあるとき、前記副噴射作動による燃料噴射量の主噴射作動に対する割合を、エンジン回転数が同じであれば前記中負荷域よりも多くなるように設定する噴射割合設定手段を設けるものとする。
【0019】
このことで、中負荷域よりも燃料の噴射量が多い高負荷域において、燃料の主噴射量の割合が相対的に少なくされ、その分、該主噴射の噴射終了時期が進角されて排気温度が低下する。同時に、燃料の副噴射量の割合が多くなるので、既燃ガス量が増えることになり、これにより、主噴射燃料の初期燃焼速度を適切に低下させて、NOx生成を十分に抑制しかつ熱負荷を十分に軽減できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は本発明の実施形態1に係るディーゼルエンジンの制御装置Aの全体構成を示し、1は車両に搭載される直列4気筒ディーゼルエンジンである。このエンジン1は4つの気筒2,2,2,2を有し、その各気筒2内に往復動可能なようにピストン(図示せず)が嵌装されていて、このピストンにより各気筒2内に燃焼室4が区画されている。また、その各燃焼室4の上面略中央部には、図には誇張して示すが、気筒2の軸線に沿って延びるようにインジェクタ(燃料噴射弁)5が配設され、この各インジェクタ5の先端部には噴射ノズルが一体的に設けられている。これらのインジェクタ5,5,…は、それぞれ、燃料を噴射圧以上の高圧状態で蓄える共通のコモンレール6に対し分岐管6a,6a,…により接続され、噴射ノズルの針弁が図示しないアクチュエータにより開閉作動されることで、前記コモンレール6から供給される高圧の燃料を複数の噴孔から燃焼室4に直接、噴射供給するいわゆる蓄圧式燃料噴射システムとなっている。ここで、前記燃料噴射圧力は例えば、エンジン1のアイドリング中には20〜40MPaくらいとされるが、そこからエンジン回転数が少し上昇しただけで速やかに高められて、低回転域から高回転域に亘って80〜140MPa以上の高圧噴射が行えるようになっている。また、コモンレール6には内部の燃圧(コモンレール圧)を検出する燃料圧力センサ6bが配設されている。
【0022】
前記コモンレール6は高圧燃料供給管7を介して燃料供給ポンプ8に接続され、その燃料供給ポンプ8は燃料供給管9を介して燃料タンク10に接続されている。この燃料供給ポンプ8は、入力軸8aにエンジン1のクランク軸からの回転入力を受け入れて駆動され、燃料供給管9を介して燃料タンク10内の燃料を燃料フィルタ11により濾過しながら吸い上げるとともに、ジャーク式圧送系により燃料をコモンレール6に圧送するようになっている。また、燃料供給ポンプ8にはその圧送系により送り出される燃料の一部を燃料戻し管12に逃がして、ポンプの吐出量を調節する電磁弁が設けられており、この電磁弁の開度が前記燃料圧力センサ6bによる検出値に応じて制御されることによって、コモンレール圧が所定値にフィードバック制御される。
【0023】
尚、同図の符号13は、コモンレール圧が所定値以上になったときに、燃料をコモンレール6から排出させるプレッシャリミッタを示し、このプレッシャリミッタから排出された燃料は燃料戻し管14を流通して、燃料タンク10に戻される。また、符号15は燃料の一部をインジェクタ5から燃料タンク10に戻すための燃料戻し管を示している。
【0024】
このエンジン1には、詳細は図示しないが、クランク軸の回転角度を検出するクランク角センサ16と、動弁系カム軸の回転角度を検出するカム角センサ17と、冷却水温度(エンジン水温)を検出するエンジン水温センサ18とが設けられている。前記クランク角センサ16は、詳しくは図示しないが、クランク軸端に設けた被検出用プレートと、その外周に相対向するように配置した電磁ピックアップとからなり、前記被検出用プレートの外周部全周に亘って等間隔に形成された突起部の通過に対応して、パルス信号を出力する。また、前記カム角センサ17は、同様にカム軸周面の所定箇所に設けた複数の突起部と、その各突起部が通過するときにパルス信号を出力する電磁ピックアップとからなる。尚、符号19は前記カム軸により駆動されるバキュームポンプを示している。
【0025】
また、エンジン1の一方の側(図の上側)には、図外のエアクリーナで濾過した空気を供給する吸気通路20が接続され、この吸気通路20の下流端部はサージタンク21を介して気筒毎に分岐して、それぞれ吸気ポートにより各気筒2の燃焼室4に連通されている。このサージタンク21には、後述のターボ過給機31により過給された吸気の圧力を検出する過給圧センサ22が設けられている。そして、前記吸気通路20には、上流側から下流側に向かって順に、エンジン1に吸入される吸気流量を検出するホットフィルム式エアフローセンサ23と、後述のタービン29により駆動されて吸気を圧縮するブロワ24と、このブロワ24により圧縮した吸気を冷却するインタークーラ25とが設けられている。
【0026】
一方、エンジン1の反対側(図の下側)には、各気筒2の燃焼室4からそれぞれ燃焼ガスを排出する排気マニホルド27が接続され、この排気マニホルド27の下流端集合部に排気通路28が接続されていて、この排気通路28には上流側から下流側に向かって順に、排気流により回転されるタービン29と、排気中の有害成分(未燃HC、CO、NOx、スモーク等)を除去するための触媒30とが配設されている。この触媒30は、詳細は図示しないが、排気の流れる方向に沿って互いに平行に延びる多数の貫通孔を有するハニカム構造のコージェライト製担体を有し、その担体の各貫通孔壁面に触媒層が形成されたものである。
【0027】
また、前記タービン29及びブロワ24からなるターボ過給機31は、図2に示すように、タービン29を収容するタービン室26に該タービン29の全周を囲むように複数のフラップ29a,29a,…が設けられ、そのフラップ29a,29a,…がそれぞれ回動することで、該フラップ29a,29a,…間に形成される排気流路面積(ノズル断面積)を変化させるように回動するVGT(バリアブルジオメトリーターボ)である。このVGTの場合、同図に実線で示すように、フラップ29a,29a,…をタービン29に対し周方向に向くように位置付ければ、ノズル断面積を小さくさせて、排気流量の少ないエンジン1の低回転域でも過給能力を高めることができる。一方、同図に仮想線示すように、フラップ29a,29a,…をその先端がタービン29の中心に向くように位置付ければ、ノズル断面積を大きして、排気流量の多いエンジン1の高回転域でも高い過給能力を得ることができる。
【0028】
さらに、前記排気通路28は、タービン29よりも排気上流側の部位で、排気の一部を吸気側に還流させる排気還流通路(以下EGR通路という)33の上流端に分岐接続されている。このEGR通路33の下流端はインタークーラ25よりも吸気下流側の吸気通路20に接続されており、そのEGR通路33の途中の下流端寄りには、開度調節可能な負圧作動式の排気還流量調節弁(以下EGR弁という)34が配置されている。このEGR弁34は、バキュームポンプ19からの負圧を利用する負圧駆動式のアクチュエータ35により開閉作動されるもので、EGR通路33の通路断面積をリニアに変化させて、吸気通路20に還流される排気の流量を調節するようになっている。
【0029】
前記各インジェクタ5、燃料供給ポンプ8、VGT31,EGR弁34等はコントロールユニット(Electronic Contorol Unit:以下ECUという)40からの制御信号によって作動するようになっている。一方、このECU40には、前記燃料圧力センサ6bからの出力信号と、クランク角センサ16及びカム角センサ17からの出力信号と、エンジン水温センサ18からの出力信号と、エアフローセンサ23からの出力信号と、車両の運転者による図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ36からの出力信号とが少なくとも入力されている。
【0030】
そして、インジェクタ5の燃料噴射作動による燃料噴射量及び噴射時期がエンジン1の運転状態に応じて制御されるとともに、高圧供給ポンプ8の作動によりコモンレール圧、即ち燃量噴射圧が制御され、さらに、EGR弁34の作動制御やターボ過給機31のフラップ29a,29a,…の作動制御(VGT制御)が行われる。ここで、前記EGR弁34の制御としては、例えば、全気筒2に共通の目標空気過剰率をエンジン1の運転状態に応じて定め、各気筒2毎の燃料噴射量に応じて、前記目標空気過剰率になるように排気還流量を制御する。つまり、気筒2毎に排気の還流量を調節することにより、燃焼室4への新気の吸入空気量を変化させて、各気筒2内燃焼室4の空気過剰率を目標空気過剰率になるように制御するものである。
【0031】
尚、一般的に、直噴式ディーゼルエンジンにおいては、排気の還流割合を高めて燃焼室の空気過剰率を小さくすると、NOxの生成が抑制されるが、その反面、図3に一例を示すように、空気過剰率λがλ=1に近づくとスモークの生成量が急増するという特性があるので、この実施形態におけるEGR弁34の制御では、前記空気過剰率の目標値をスモークの急増しない範囲のできるだけ小さな値に設定している。また、そのような排気の還流制御は主としてエンジン1の低負荷ないし中負荷域で行われるものであり、エンジン1の高負荷域や加速運転時には新気の吸入空気量の確保を優先して、排気の還流は中止する。
【0032】
(燃料噴射制御)
次に、前記ECU40による燃料噴射制御の概要について説明する。このECU40のメモリには、エンジン1の目標トルク及び回転数の変化に応じて実験的に決定した基本的な燃料噴射量Qのマップ(図7参照)が電子的に格納されており、アクセル開度センサ36からの出力信号に基づいて求めた目標トルクとクランク角センサ16からの出力信号に基づいて求めたエンジン回転数とに基づいて、エンジン1の要求出力に対応する基本的な燃料噴射量Qbが前記燃料噴射量マップから読み込まれる。そして、その基本噴射量Qbの燃料をエンジン水温や吸気圧力等に応じて補正した上で、図4(a)〜(e)にそれぞれ示すように、エンジン1の運転領域に応じて、インジェクタ5を最適に作動させる。
【0033】
具体的に、前記ECU40のメモリには、図5に一例を示すように、エンジン1の負荷状態に対応する目標トルクとエンジン回転数とに応じてインジェクタ5の作動状態を設定した噴射制御マップが電子的に格納されており、エンジン1の目標トルクとエンジン回転数とに基づいて、前記噴射制御マップから燃料噴射回数Cin等の制御データを読み込むようになっている。すなわち、この噴射制御マップは、エンジン1の全運転領域を該エンジン1の負荷状態及びエンジン回転数によって区分し、負荷状態について低、中、高負荷に概略3等分したうちの高負荷域(図のイ、ロ、ハの領域)において、前記図4(a)(b)(c)にそれぞれ示すように、インジェクタ5による燃料噴射を副噴射及び主噴射作動の2回に分けて行わせるようにしている(Cin=2)。
【0034】
また、前記エンジン低負荷ないし中負荷域において、さらにエンジン回転数について低、中、高回転に概略3等分したうちの低回転ないし中回転域(図例ではエンジン回転数が2500rpm以下の回転域)となる領域(ニ)では、前記図4の(d)に示すように、インジェクタ5による燃料噴射を副噴射及び主噴射作動に分けた上で、その主噴射作動をさらに2回に分割する(Cin=3)。一方、エンジン1の中負荷高回転域(ホ)では、前記高負荷域(イ、ロ、ハ)と同様に、燃料噴射を副噴射及び主噴射作動の2回に分けて行わせるようにしている(Cin=2)。
【0035】
さらに、前記のようにインジェクタ5の噴射作動を副噴射及び主噴射作動に分けて行わせるとともに、該副噴射及び主噴射作動の開始時期を、それぞれ、エンジン1の運転状態に応じて進角又は遅角させることで、主に主噴射による燃料の燃焼状態をきめ細かく変化させて、エンジン1の燃費性能、出力性能、排気状態、耐熱信頼性等の種々の要求をそのときの運転状態に応じて満足させるようにしている。尚、そのようにインジェクタ5の噴射作動時期を進角又は遅角させるといっても、燃焼状態の悪化を防ぐために、主噴射作動の終了時期は気筒2の圧縮上死点後(ATDC)35°CAよりも以前とされている。
【0036】
以下、燃料噴射量制御の全体的な手順を図6のフローチャート図に基づいて具体的に説明する。この制御手順は、ECU40のメモリ上に電子的に格納された制御プログラムに従い、各気筒2毎に独立して所定クランク角で実行されるものであるが、エンジンが定常運転状態にあるときには所定時間毎に実行するようにしてもよい。
【0037】
まず、図6に示すメインフローにおいてスタート後のステップSA1では、クランク角信号、エアフローセンサ出力、アクセル開度、エンジン水温、コモンレール圧等のデータを入力する。続いて、ステップSA2において、アクセル開度から求めた目標トルクと、クランク角信号から求めたエンジン回転数とに基づいて、燃料噴射量マップから基本噴射量Qbを読み込んで設定する。この燃料噴射量マップは、例えば図7に一例を示すように、エンジン1の目標トルク及びエンジン回転数の変化に応じて実験的に決定した最適な燃料噴射量Qbを記録したものであり、基本噴射量Qbは、目標トルクが大きいほど、またエンジン回転数が高いほど、多くなるように設定記録されている。
【0038】
続いて、ステップSA3において、図示しない基本噴射時期マップから基本的な燃料噴射時期(基本噴射時期ITb)を読み込んで設定する。この基本噴射時期マップは、エンジン水温、コモンレール圧及びエンジン回転数に対応する基本的な最適噴射時期を実験的に求めて記録したもので、例えば、基本噴射時期ITbは、エンジン水温が低いほど、そのことによる着火遅れ時間の増大に対応するように進角設定される。また、基本噴射時期ITbは、コモンレール圧が低いほど、或いはエンジン回転数Neが高いほど、進角されるように設定記録されている。これは、コモンレール圧が低いほど、同じ分量の燃料を噴射するための時間間隔が長くなるからであり、また、エンジン回転数Neが高いほど、同じ時間間隔に対応するクランク角間隔が長くなるからである。
【0039】
続いて、ステップSA4では、基本吸気量AIRbを吸気量マップから読み込んで設定する。この基本吸気量AIRbは、燃焼室4に吸入される吸気のうち還流排気等を除いた新気の吸入空気量の目標値であり、EGR制御における目標空気過剰率に対応するように実験的に求められて、記録されたものである。言い換えると、EGR制御では、エンジン1の燃焼室4への新気の吸気量が前記基本吸気量AIRbに基づく目標値になるように、排気の還流量の方を制御するようにしている。前記吸気量マップも前記燃料噴射量マップ等と同様にECU40のメモリに格納されており、図示省略するが、基本吸気量AIRbはエンジン1の目標トルクが大きいほど大きくなるように、また、エンジン回転数が高いほど大きくなるように設定記録されている。
【0040】
続いて、ステップSA5において、前記図5に示す噴射制御マップからインジェクタ5による燃料噴射回数Cinを読み込んで設定する。具体的に、例えばエンジン1が同図の(ニ)の運転領域にあれば、Cin=3とされ、或いは、エンジン1が同図の(イ、ロ、ハ、ホ)のいずれかの運転領域にあれば、Cin=2とされる。また、例えばエンジン1が全負荷運転状態のときには、Cin=1とされる。続いて、ステップSA6において、前回の制御サイクルで設定された燃料噴射量Qiをイニシャライズして(初期設定)、全て零(Qi=0)とした後、ステップSA7に進んで、前記ステップSA5で設定した燃料噴射回数Cinに基づいて、インジェクタ5により燃料を一括して噴射するかどうか判定する。この判定がYESならば(Cin=1)、図8に示すサブフローに進んで、主噴射作動1回のみの噴射量及び噴射時期を設定してステップSA10に進む一方、判定がNOならばステップSA8に進み、今度はインジェクタ5により噴射作動を2回行うかどうか判定する。
【0041】
前記ステップSA8における判定がYESならば(Cin=2)、図9に示すサブフローに進んで、副噴射及び主噴射作動を各1回ずつ行うための噴射量及び噴射時期をそれぞれ設定してステップSA10に進む一方、判定がNOならばステップSA9に進んで、今度はインジェクタ5により噴射作動を3回以上行うかどうか判定する。この判定がYESならば(Cin=3)、図10に示すサブフローに進んで、副噴射作動1回と主噴射作動を複数回行うための噴射量及び噴射時期をそれぞれ設定してステップSA10に進む一方、判定がNOならばそのままでステップSA10に進む。そして、このステップSA10では、後述の如くインジェクタ5の噴射作動を実行し、しかる後にリターンする。
【0042】
詳しくは、前記ステップSA7で一括噴射と判定して進んだ図8のフローのステップSB1では、インジェクタ5の主噴射作動による噴射量Q1として基本噴射量Qbを設定し、続くステップSB2では、該主噴射作動の開始時期IT1として基本噴射時期ITbを設定して、メインフローにリターンする。つまり、インジェクタ5により燃料を一括して噴射させる場合は、該インジェクタ5の噴射作動を基本噴射時期ITbに開始させて、基本噴射量Qbの燃料を噴射させる。
【0043】
一方、前記ステップSA8で2回噴射と判定して進んだ図9のフローにおいて、ステップSC1,SC2では、それぞれ、基本噴射量Qbに係数α,β(0<α,β≦1)を乗算して、インジェクタ5の副噴射及び主噴射作動による噴射量Q1,Q2として、設定する。これにより、インジェクタ5の副噴射作動による燃料噴射量Q1は基本噴射量Qbの約10〜20%とされ、また、主噴射作動による燃料噴射量Q2は基本噴射量Qbの約80〜90%とされるが、噴射量Q1と噴射量Q2の合計は必ずしも基本噴射量Qbには一致しない。また、前記係数α,βは噴射制御マップ(図5参照)の各運転領域(イ、ロ、ハ、ニ,ホ)毎に個別に設定されており、例えば高負荷高回転領域(ハ)では、高負荷中回転領域(ロ)や中負荷高回転領域(ホ)に比べて、係数αの係数βに対する割合(α/β:以下、副噴射割合ともいう)が大きくなるように設定されている。
【0044】
続いて、ステップSC3では、インジェクタ5の主噴射作動の開始時期IT2を設定する。この主噴射時期の設定も前記噴射制御マップ(図5参照)の各運転領域(イ、ロ、ハ、ホ)毎に設定されている補正量を読み込んで、この補正量に基づいて基本噴射時期ITbを進角又は遅角補正するものである。例えば、高負荷低回転領域(イ)では基本噴射時期ITbを遅角補正する一方、高負荷中回転領域(ロ)では基本噴射時期ITbをやや進角補正し、また、高負荷高回転領域(ハ)では基本噴射時期ITbを相対的に大きく進角補正する。さらに、中負荷高回転領域(ホ)では、前記高負荷中回転領域(ロ)と同様に基本噴射時期ITbを進角補正する。
【0045】
続いて、ステップSC4では、インジェクタ5の副噴射作動の終了から主噴射作動の開始までの噴射停止期間INT1を図示しないマップから読み込んで設定する。この噴射停止期間INT1は、副噴射作動による噴射燃料が予混合燃焼して燃焼室4の温度及び圧力状態が高められ、かつ火種が適度に形成されたときに、主噴射作動が行われるように、副噴射作動による噴射量Q1とエンジン回転数とに対応づけて適切な値が予め実験的に求められて、ECU40のメモリにマップとして設定記録されている。
【0046】
続いて、ステップSC5においてインジェクタ5の副噴射作動の開始時期IT1を設定して、メインフローにリターンする。この副噴射時期IT1の設定は、まず、インジェクタ5の主噴射作動の開始時期1T2から前記噴射停止期間INT1の分だけ進角したクランク角位置を求め、そこからさらに、副噴射量Q1に対応するインジェクタ5の開弁時間に相当するクランク角度だけ進角したクランク角位置を求め、これを副噴射時期IT1として設定する。このため、副噴射時期IT1は、エンジン1の高負荷域(イ、ロ、ハ)において負荷状態が同じであれば、副噴射割合の相対的に大きい高負荷域(ハ)の方が低回転域(イ)よりも進角設定され、これにより、噴射燃料の気化霧化のための時間が確保される。尚、副噴射時期IT1は、その終了時期が気筒2の圧縮上死点前20°CA(BTDC20°CA)、即ち燃焼室4の温度状態が混合気の自己着火温度に達するクランク角位置よりも以前になるように設定される。
【0047】
つまり、エンジン1が高負荷域(イ、ロ、ハ)にあるときには、インジェクタ5により燃料を、予混合燃焼状態になるように気筒2の圧縮行程で副噴射させるとともに、この副噴射作動の終了後に拡散燃焼状態になるように燃料を主噴射させる。そして、前記高負荷域(イ、ロ、ハ)の高回転側(ハ)にあるときには、同じ負荷状態の低回転側(イ)に比べて主噴射作動の終了時期が進角するように、該主噴射作動の開始時期IT2を進角側に設定するとともに、インジェクタ5の副噴射作動による燃料噴射量の主噴射作動に対する割合(副噴射割合α/β)を、同じ負荷状態であれば高回転側(ハ)の方が低回転側(イ、ロ)よりも多くなるように設定する。
【0048】
また、エンジン1が中負荷域(ニの高負荷側及びホ)にあるときも、インジェクタ5により燃料を副噴射及び主噴射作動に分けて噴射させるようにし、しかも、エンジン高回転側の2つの領域(ハ、ホ)で比較すると、エンジン回転数が同じであれば、高負荷域(ハ)の方が中負荷域(ホ)よりも主噴射作動の終了時期が進角するように、該主噴射作動の開始時期IT2を進角側に設定するとともに、副噴射割合もエンジン回転数が同じであれば高負荷域(ハ)の方が中負荷域(ホ)よりも多くなるように設定する。
【0049】
次に、前記ステップSA9で3回以上噴射と判定して進んだ図10のフローでは、まずステップSD1,SD2において、前記ステップSC1,SC2と同様にインジェクタ5の副噴射及び主噴射作動による噴射量Q1,Qmをそれぞれ設定し、続くステップSD3において、該主噴射作動による噴射量Qmを2等分して、主噴射作動の分割による噴射量Q2,Q3をそれぞれ設定する。続いて、ステップSD4において、前記ステップSC3と同様に噴射制御マップの領域(ニ)に設定されている補正量を読み込み、この補正量に基づいて基本噴射時期ITbを補正して、主噴射作動の1回目の分割噴射時期IT2を設定し、続くステップSD5では、前記1回目の分割噴射時期IT2の終了時期から所定の噴射休止期間を空けて、2回目の分割噴射時期IT3を設定する。
【0050】
そして、ステップSD6において、インジェクタ5の副噴射及び主噴射作動の間の噴射停止期間INT1を前記ステップSC4と同様に設定し、続くステップSD7において、副主噴射作動の開始時期IT1を前記ステップSC5と同様に設定して、メインフローにリターンする。つまり、エンジン1が低負荷ないし中負荷でかつ低回転ないし中回転の領域(ニ)にあるときには、インジェクタ5の燃料噴射作動を副噴射及び主噴射に分けるとともに、その主噴射作動を更に2回に分割することで、該主噴射作動の開始時期はあまり遅角させることなく、その終了時期は排気エネルギを高めるために十分に遅角させることができる。
【0051】
次に、前記図6のステップSA10におけるインジェクタ5の噴射作動は、図11のフローに示すように、まずスタート後のステップSE1において、インジェクタ5の噴射作動の回数を示すカウンタ値iに初期値を与え(i=1)、続くステップSE2において、当該噴射作動による目標噴射量Qiが正の値かどうか判定する。この判定がNOならば、インジェクタ5の噴射作動は行わずにリターンする一方、判定がYESならば、続くステップSE3においてクランク角信号に基づいて、噴射時期になったかどうか判定し、噴射時期になるまで待って(判定がNO)、噴射時期になれば(判定がYES)、ステップSE4に進んで、インジェクタ5に燃料噴射量Qiに対応する噴射パルス信号を出力し、噴射作動を実行させる。
【0052】
続いて、ステップSE5において、前記カウンタ値iをインクリメントし、続くステップSE6では、該カウンタ値iが燃料噴射回数Cin以下かどうか判定する。そして、この判定がYESならば(i≦Cin)、設定された噴射回数の燃料噴射作動が完了していないと判定し、前記ステップSE2に戻って、次の噴射作動に移る一方、判定がNOであれば(i>Cin)、設定された噴射回数の燃料噴射作動は完了したと判定し、メインフローにリターンする。これにより、例えばCin=2ならば、インジェクタ5の燃料噴射作動は副噴射及び主噴射作動に分けて行われ、また、Cin=3ならば、副噴射作動1回と主噴射作動2回の合計3回に分割して行われる。
【0053】
前記図6〜図11に示すフローの各ステップにより、全体として、エンジン1の高回転域を含む殆どの運転領域(イ、ロ、ハ、ニ、ホ)において、インジェクタ5により燃料を、予混合燃焼状態になるように気筒2の圧縮行程で副噴射させるとともに、この副噴射作動の終了後に拡散燃焼状態になるように燃料を主噴射させる燃料噴射制御手段40aが構成されている。
【0054】
そして、特に前記図9のサブフローに示すステップSC3により、エンジン1が高負荷高回転領域(ハ)にあるとき、同じ負荷状態であれば低回転域(イ)に比べて、インジェクタ5の主噴射作動の開始時期を進角させる主噴射制御部40bが、また、ステップSC5により、エンジン1が高負荷高回転領域(ハ)にあるときに、同じ負荷状態であれば低回転域(イ)に比べて、インジェクタ5の副噴射作動の開始時期を進角させる副噴射制御部40cが構成されている。
【0055】
さらに、同図のサブフローに示すステップSC1,2により、エンジン1が高負荷高回転領域(ハ)にあるとき、インジェクタ5の副噴射割合を、同じ負荷状態であれば高負荷低回転領域(イ)よりも大きくなるように設定するとともに、同じエンジン回転数であれば中負荷高回転領域(ホ)よりも大きくなるように設定する噴射割合設定手段40dが構成されている。
【0056】
(実施形態の作用効果)
したがって、この実施形態に係るターボ過給機付エンジンの制御装置Aによれば、まず、蓄圧式燃料噴射システムを備え、エンジン1の低回転域でもインジェクタ5により燃料を極めて高い圧力で噴射して、その噴射燃料の微粒化を十分に促進しながら、該インジェクタ5の噴射作動を副噴射及び主噴射作動に分けて行うことができ、これらの相乗的な効果として、エンジン1の殆どの運転領域において燃焼状態の大幅な改善が図られている。
【0057】
例えば、エンジン1が高負荷域(イ、ロ、ハ)にあるときに、燃料噴射制御手段40aにより、図4(a,b,c)にそれぞれ示すように、気筒2の圧縮行程でインジェクタ5の副噴射作動が行われ、その噴射燃料が燃焼室4の空気と混合して、該燃焼室4が自己着火可能な温度状態になったときに(例えばBTDC25°CA)、一斉に着火、燃焼する(予混合燃焼)。そして、その燃焼によって燃焼室4の温度及び圧力状態が高められかつ火種が形成されたところで、インジェクタ5の主噴射作動が行われると、この主噴射作動による噴射燃料の着火遅れ時間は極めて短く、その噴射燃料の殆どは良好に拡散燃焼されるようになる。しかも、前記副噴射された燃料の燃焼により不活性な既燃ガスが生成され、この既燃ガスにより主噴射燃料の初期燃焼速度が適度に低下させられる。
【0058】
つまり、燃料の副噴射によって、主噴射による燃料の燃焼初期のNOx生成や筒内圧上昇を抑えながら、該主噴射燃料の着火性及び燃焼性を高めることができる。
【0059】
そして、エンジン1が高負荷域の低回転側(イ)にあれば、インジェクタ5の主噴射作動の開始時期IT2が主噴射制御部40bにより遅角される。このような噴射時期の遅角を行うと、仮に副噴射を行わないとすれば、燃焼時の指圧波形は図12(a)に仮想線で誇張して示すようになり、燃焼状態が悪くなって緩慢に燃え続けることで、スモークが急増する。
【0060】
これに対し、副噴射を行えば、同図に実線で示すように、主噴射された燃料が適度な燃焼速度で良好に拡散燃焼されて、筒内圧も適度に上昇する。また、燃焼終了時期が遅くなることで、排気エネルギが増大し、ターボ過給機31による吸気の過給圧が高められる。このことで、エンジン1の低回転域であっても吸気充填量を十分に増やして、エンジン出力を高めることができる。しかも、この吸気充填量の増大と前記のような燃焼性の改善との相乗的な効果によって、スモークを低減できる。
【0061】
一方、エンジン1が高回転側(ハ)にあれば、インジェクタ5の主噴射作動の開始時期IT2は進角される。この際の指圧波形を同図(b)に誇張して示すと、副噴射を行わないとすれば同図に仮想線で示すようになり、噴射燃料の初期燃焼(主に予混合燃焼)が激しいために筒内圧が急激に上昇して、高いピークを示す。このため、燃料噴射量の多いエンジン高負荷域では激しい燃焼に伴うNOxの増大と過大な熱負荷とが問題になる。
【0062】
これに対し、副噴射を行えば、同図に実線で示すように主噴射燃料の初期燃焼が適度に穏やかになって、NOxの生成が抑えられるとともに、筒内圧のピークを低下させることができる。しかも、この実施形態では、噴射割合設定手段40dにより、高回転側(ハ)で燃料の副噴射割合α/βを多くして、既燃ガスを増やすようにしているので、主噴射による燃料の初期燃焼速度を適切に低下させて、NOxの生成抑制及び熱負荷軽減という効果を十分に得ることができる。
【0063】
また、前記のようにインジェクタ5の主噴射作動の開始時期IT2が進角されることで、燃焼期間が相対的に短くなって機械効率が向上するとともに、排気エネルギが減少し排圧上昇が抑えられることで、排気抵抗による損失も低減し、これにより燃費が大幅に低減できる。さらに、排気温度の上昇が抑えられることで、ターボ過給機31の過熱も防止できる。
【0064】
加えて、この実施形態では、エンジン1が高負荷高回転領域(ハ)にあるとき、前記噴射割合設定手段40dにより燃料の副噴射割合α/βを中負荷高回転領域(ホ)よりも多くさせるようにしており、このことで、インジェクタ5による燃料噴射量が多いときに副噴射割合を増やす一方、燃料噴射量が少ないときには副噴射割合を減らすというように、エンジン1の負荷状態に応じて副噴射及び主噴射の燃料噴射割合を適切なものとして、燃焼状態を最適化できる。
(他の実施形態)
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前期実施形態では図5の噴射制御マップに示すように、エンジン1の全運転領域を該エンジン1の負荷状態及びエンジン回転数について、それぞれ、低、中、高に概略3等分するようにしているが、これに限らず、負荷状態又はエンジン回転数のいずれかについて、例えば高低2つに区分するようにしてもよく、或いはそれぞれ4つ以上に区分するようにしてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、インジェクタ5の主噴射時期IT2を、エンジン1が高負荷低回転領域(イ)にあるときに遅角させる一方、エンジン1が高負荷中回転領域(ロ)にあるときには進角させ、高負荷高回転領域(ハ)にあるときにはさらに大きく進角させるようにしているが、これに限らず、例えば、エンジン1が高負荷域にあるときには、インジェクタ5の主噴射時期IT2を、エンジン回転数に応じて高回転側ほど進角する一方、低回転側ほど遅角するように連続的に変化させるようにしてもよい。
【0066】
さらに、前記実施形態において、エンジン1が高負荷低回転領域(イ)にあるときにも運転領域(ニ)と同様に、インジェクタ5の主噴射作動を複数回に分割して行わせることができる。こうすることで、主噴射された燃料の拡散燃焼期間を長くさせかつ燃焼終了時期を遅角させて、排気エネルギを高めることができる。また、エンジン1の運転状態が低負荷側であるほど、前記主噴射作動の分割回数を増やしたり、或いは各噴射作動の間の噴射休止間隔を拡げるようにすれば、前記の作用効果をさらに高めることができる。
【0067】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明に係るターボ過給機付エンジンの制御装置によると、エンジンが高負荷域にあるときに燃料噴射弁の燃料噴射作動を副噴射及び主噴射作動に分けて行わせることで、該主噴射作動による噴射燃料の着火性及び燃焼性を高めることができる。そして、その上で、エンジンが高負荷域の低回転側にあれば、前記主噴射作動の開始及び終了時期を遅角させて排気エネルギを増大させることにより、過給圧を高めてエンジン出力を向上でき、また、空気量の増大と燃焼性向上とによりスモークを低減できる。一方、エンジン高回転側では主噴射作動の開始及び終了時期を進角させて、機械効率の向上と排圧上昇の抑制とにより燃費を低減でき、しかも、ターボ過給機の過熱を防止できる。
【0068】
さらに、エンジンが高負荷域の高回転側にあるときに、燃料の副噴射割合を低回転側に比べて多くすることで、NOx生成を十分に抑制しかつ熱負荷を十分に軽減できる。
【0069】
請求項2の発明によると、エンジンが高負荷域の高回転側にあるときに、副噴射作動の開始時期を進角させることで、副噴射燃料の気化霧化のための時間を確保できる。
【0070】
請求項3の発明によると、エンジンが高負荷域の高回転側にあるときに、燃料の副噴射割合を中負荷域に比べて多くすることで、燃料噴射量が多くても主噴射作動の噴射終了時期を進角させて、排気温度を低下させることができ、また、NOx生成を十分に抑制しかつ熱負荷を十分に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る制御装置の全体構成図である。
【図2】 ターボ過給機のタービン室の構造を一部省略して示す断面図である。
【図3】 直噴式ディーゼルエンジンの排気中のスモーク濃度と燃焼室の平均的な空気過剰率との対応関係を示すグラフ図である。
【図4】 インジェクタの燃料噴射作動における開閉作動状態を示す説明図である。
【図5】 インジェクタの噴射制御マップの一例を示す図である。
【図6】 燃料噴射制御の全体的な手順を示すフローチャート図である。
【図7】 エンジンの目標トルク及びエンジン回転数に対する目標燃料噴射量の変化特性を記録した燃料噴射量マップの一例を示す図である。
【図8】 一括噴射のときの燃料噴射量及び噴射時期の設定手順を示すフローチャート図である。
【図9】 インジェクタにより噴射作動を2回行うときの図9相当図である。
【図10】 インジェクタにより噴射作動を3回以上行うときの図9相当図である。
【図11】 インジェクタの噴射作動制御の手順を示すフローチャート図である。
【図12】 インジェクタの燃料噴射作動を副噴射及び主噴射作動に分けるとともに、主噴射作動を遅角させた場合(a)と進角させた場合(b)の指圧波形の様子を、一括噴射のとき対比して示す説明図である。
【符号の説明】
A エンジンの制御装置
1 ディーゼルエンジン
2 気筒
4 燃焼室
5 インジェクタ(燃料噴射弁)
31 ターボ過給機
40 コントロールユニット
40a 燃料噴射制御手段
40b 主噴射制御部
40c 副噴射制御部
40d 噴射割合設定手段
Claims (3)
- エンジンの気筒内燃焼室に燃料を直接、噴射供給する燃料噴射弁と、エンジンの排気により吸気を過給するターボ過給機とを備え、前記燃料噴射弁による燃料の噴射量をエンジンの負荷状態に応じて制御するようにしたターボ過給機付エンジンの制御装置において、
少なくともエンジンが高負荷域にあるとき、前記燃料噴射弁により燃料を、予混合燃焼状態になるように気筒の圧縮行程で副噴射させるとともに、この副噴射作動の終了後に拡散燃焼状態になるように燃料を主噴射させる燃料噴射制御手段を備え、
前記燃料噴射制御手段は、エンジンが前記高負荷域の高回転側にあるとき、同じ負荷状態の低回転側に比べて前記主噴射作動の開始時期及び終了時期が進角するように、前記燃料噴射弁を作動制御する主噴射制御部を有し、
さらに、エンジンが前記高負荷域にあるとき、前記燃料噴射弁の副噴射作動による燃料噴射量の主噴射作動に対する割合を、同じ負荷状態であれば高回転側の方が低回転側よりも多くなるように設定する噴射割合設定手段が設けられている
ことを特徴とするターボ過給機付エンジンの制御装置。 - 請求項1において、
燃料噴射制御手段は、エンジンが高負荷域の高回転側にあるときに、同じ負荷状態の低回転側に比べて燃料噴射弁の副噴射作動の開始時期を進角させる副噴射制御部を有することを特徴とするターボ過給機付エンジンの制御装置。 - 請求項1において、
燃料噴射制御手段は、エンジンが中負荷域にあるときも、燃料噴射弁により燃料を副噴射及び主噴射作動に分けて噴射させるものであり、
噴射割合設定手段は、エンジンが高負荷域の高回転側にあるとき、前記副噴射作動による燃料噴射量の主噴射作動に対する割合を、エンジン回転数が同じであれば前記中負荷域よりも多くなるように設定するものであることを特徴とするターボ過給機付エンジンの制御装置。
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