以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一あるいは類似の部分には同一あるいは類似な符号を付している。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る3次元構造体は、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第1の基板11内にパターン幅の異なる複数の凸部13a、13b、13c、・・・が形成されている。総ての凸部13a、13b、13c、・・・は、第2の基板12の上に直接、接合されている。
図2(a)乃至図2(c)を参照して、図1に示した3次元構造体の製造方法を説明する。
(イ)先ず図2(a)に示すように、単結晶シリコンからなる第1の基板11を用意し、熱酸化法或いは化学的気相成長(Chemical vapor deposition:CVD)法等を用いて第1の基板11の第1の主表面14上に一様に酸化膜を形成する。スピン塗布法及びフォトリソグラフィ法を用いて、酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン5は、図1の凸部13a、13b、13c、・・・が形成される領域に選択的に形成される。
(ロ)図2(b)に示すように、酸化膜パターン5をマスクとして、深堀り(高アスペクト)反応性イオンエッチング(DRIE)法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面14から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン5の下の第1の基板11は除去されずに凸部13a、13b、13c、・・・を形成する。以後、この工程を「第1のパターニング工程」と呼ぶ。なお、第1のパターニング工程では、側壁にポリマーの保護膜を形成する段階とエッチングする段階とを交互に繰り返す方法が一般的に用いられる。したがって、エッチングされた部分の断面、即ち凸部13a、13b、13c、・・・の側壁には、約0.2μm程度の凹凸25が形成される。また、エッチングの深さ(凸部13a、13b、13c、・・・の深さ)は、溝幅の広い部分の方が溝幅の狭い部分よりも深くなる。その後、酸化膜パターン5を弗化水素酸溶液で除去する。
(ハ)図2(c)に示すように、単結晶シリコンからなる第2の基板12を用意し、第1の基板11の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16に接合する。具体的には、図2(c)に示す第1の基板11は、図2(b)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面14、15を入れ替えた状態を示す。第1の基板1の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16と重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。以後、この工程を「基板接合工程」と呼ぶ。なお、基板接合工程の前に、第2の基板12に対する加工処理は施されず、第2の基板12の主表面は平坦である。したがって、基板接合工程によって総ての凸部13a、13b、13c、・・・が第2の基板12に接合される。即ち、凸部13a、13b、13c、・・・の総ての上面が接合面となる。
(ニ)最後に、第1の主表面14に対向する第2の主表面15から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面15を、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部13a、13b、13c、・・・に挟まれた溝が表出する、つまり、凸部13a、13b、13c、・・・のみが残される前に終了する。具体的には、溝の一番深い部分が露出せず、且つ機械的に構造破壊を起さない範囲で研磨は終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を用いて、第1の基板11の第2の主表面15を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部13a、13b、13c、・・・のみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。以後、この工程を「裏面エッチング工程」と呼ぶ。以上の工程を経て、図1に示した3次元構造体が完成する。
このように、接合プロセス及びドライエッチングプロセスにより、3次元形状の溝を有する構造体を形成することができる。
以上説明したように、第1の基板11を第2の基板12へ接合する前に、第1の基板11に対して加工を施しているため、加工の自由度も向上する。加工前から一体となっているSOI基板では実現できない形状であっても、加工後の基板を接合することにより、複雑な形状の3次元構造を実現可能である。
また、裏面エッチング工程において、途中まで第2の主表面15を研磨し、その後、エッチング処理(DRIE処理)により第1の基板11の凸部13a、13b、13c、・・・を除く他の部分を総て除去することにより、DRIE処理の時間を短くすることができる。したがって、DRIEのエッチングバラツキに起因した加工形状のバラツキを抑制することができる。
なお、上述したように、第1のパターニング工程において溝幅の広い部分は狭い部分よりも溝の深さが深くなるため、裏面エッチング工程において溝幅の広い部分は狭い部分よりも早い段階で露出することになり、第2の基板12の主表面16がエッチングされることになる。結果的に、溝幅の広い部分は、狭い部分に比して溝の深さが深く形成されることになる。
(第2の実施の形態)
図3に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る3次元構造体は、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第1の基板11内にパターン幅の異なる複数の凸部13a、13b、13c、13eが形成され、第2の基板12の主表面16に凹部18a、18bが形成されている。一部の凸部13a、13eは、第2の基板12の主表面16に直接、接合されている固定部を構成し、他の凸部13b、13cは、凹部18a、18bの上方に配置され、第2の基板12の主表面16に接合されていない可動部を構成する。
図4(a)、図4(b)、図5(a)乃至図5(c)を参照して、図3に示した3次元構造体の製造方法を説明する。
(イ)先ず図4(a)に示すように、第1の基板11を用意し、第1の基板11の第1の主表面14上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン5は、図3の凸部13a、13b、13c、13eが形成される領域に選択的に形成される。
(ロ)図4(b)に示すように、第1のパターニング工程において、酸化膜パターン5をマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面14から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン5の下の第1の基板11は除去されずに凸部13a、13b、13c、13eが形成される。その後、酸化膜パターン5を弗化水素酸溶液で除去する。
(ハ)図5(a)に示すように、第2の基板12を用意し、第2の基板12の主表面16上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン19は、図3の凹部18a、18bが形成される領域に開口を有する。
(ニ)図5(b)に示すように、酸化膜パターン19をマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第2の基板12の主表面16から深さ5〜10μm程度、第2の基板12を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン19の開口部分に凹部18a、18bが形成される。以後、この工程を「第2のパターニング工程」と呼ぶ。その後、酸化膜パターン19を弗化水素酸溶液で除去する。
(ホ)基板接合工程において、第1の基板11の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16に接合する。具体的には、図5(c)に示す第1の基板11は、図4(b)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面14、15を入れ替えた状態を示す。第1及び第2の基板11、12の溝加工を施した面を接合面として重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。この時、可動部を構成する凸部13b、13cが、凹部18a、18bの上方に配置されるように、第1の基板11及び第2の基板12の接合面はアライメントされる。また、可動部を構成する凸部13b、13cの総ての部分が、凹部18a、18bの上方に納まるように、アライメント精度を勘案して設計する必要が有る。
(へ)最後に、裏面エッチング工程において、第1の主表面14に対向する第2の主表面15から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面15を、CMP法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部13a、13b、13c、13eに挟まれた溝が表出する、つまり、凸部13a、13b、13c、13eのみが残される前に終了する。具体的には、溝の一番深い部分が露出せず、且つ機械的に構造破壊を起さない範囲で研磨は終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を含む異方性のエッチング方法(サイドエッチングを伴わない垂直エッチング)を用いて、第1の基板11の第2の主表面15を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部13a、13b、13c、13eのみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。以上の工程を経て、溝形状を有し、一部に可動部を含む図3に示した3次元構造体が完成する。
以上説明したように、可動部がリリースされる時点及びそれ以降の工程では、ウェットプロセスを用いない為、可動部形成時に問題となる固着の発生を抑制することができる。ひいては、デバイスの歩留り向上の効果が達成される。
固定部となる部分をそのパターン幅に係らず配置することができ、望みの場所を固定部とすることができる。例えば、図6の凸部13eは、可動部13b、13cに比して同等なパターン幅を有するにも係らず、第2の基板12との接合を形成し、固定部とすることができる。したがって、光スイッチのレイアウトの自由度が大幅に向上し、デバイスの小型化が達成できる。
また、2つの基板11、12を接合する前に、第1の基板11に対して加工しているため、加工の自由度も向上する。加工前から一体となっているSOI基板では実現できない形状であっても、1枚づつの基板を加工し、加工後の基板を接合することにより、複雑な形状の3次元構造を実現可能である。
また、裏面エッチング工程において、途中まで第2の主表面15を研磨し、その後、エッチング処理(DRIE処理)により第1の基板11の凸部13a、13b、13c、13eを除く他の部分を総て除去することにより、DRIE処理の時間を短くすることができる。したがって、DRIEのエッチングバラツキに起因した加工形状のバラツキを抑制することができる。
(第3の実施の形態)
図6に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る3次元構造体は、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第1の基板11内にパターン幅の異なる複数の凸部13a、13b、13c、13eが形成されている。一部の凸部13a、13eは、第2の基板12の主表面16に直接、接合されている固定部を構成し、他の凸部13b、13cは、第2の基板12の上方に配置され、第2の基板12の主表面16に接合されていない可動部を構成する。なお、図3の3次元構造体と異なり、第2の基板12の主表面16に凹部18a、18bは形成されていない。
図7(a)、図7(b)、図8(a)乃至図8(c)を参照して、図6に示した3次元構造体の製造方法を説明する。
(イ)先ず図7(a)に示すように、第1の基板11を用意し、第1の基板11の第1の主表面14上に一様に酸化膜を形成する。ここでは、熱酸化法を用いて第1の主表面14に厚さ1μm程度の酸化膜を形成する。この酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン20は、図6の可動部を構成する凸部13b、13cが形成される領域に開口を有する。
(ロ)図7(b)に示すように、再び、第1の基板11の第1の主表面14上に一様に酸化膜を形成する。ここでは、熱酸化法を用いて第1の主表面14に厚さ0.5μm程度の酸化膜を形成する。したがって、図7(a)の酸化膜パターン20が形成されている領域には、比較的厚い酸化膜21aが形成され、図7(a)の酸化膜パターン20が形成されていない領域には、比較的薄い酸化膜21bが形成される。
(ハ)酸化膜21a、21bの上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜21a、21bを除去する。図8(a)に示すように、残された酸化膜パターン22a、22b、22c、22eは、図6の凸部13a、13b、13c、13eが形成される領域に選択的に形成される。また、可動部を構成する凸部13b、13c上に形成された酸化膜パターン22b、22cの厚さは、固定部を構成する凸部13a、13e上に形成された酸化膜パターン22a、22eの厚さよりも薄い。
(ニ)図8(b)に示すように、第1のパターニング工程において、酸化膜パターン22a、22b、22c、22eをマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面14から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン22a、22b、22c、22e下の第1の基板11は除去されずに凸部13a、13b、13c、13eが形成される。また、第1のパターニング工程でエッチングマスクとして用いる酸化膜パターン22a、22b、22c、22eは、第1の基板11に対して一定のエッチング選択比を有する。即ち、第1の基板11のエッチング進行と共に、酸化膜パターン22a、22b、22c、22eも少しづつエッチングされる。図8(b)に示すように、第1のパターニング工程のエッチング終了後には、酸化膜パターン22a、22b、22c、22eのうち、固定部を構成する凸部13a、13e上の酸化膜パターン22a、22eのみが残り、可動部を構成する凸部13b、13c上の酸化膜パターン22b、22cは総て除去される。更に、酸化膜パターン22b、22cが総て除去された後のエッチング終了前の短時間、可動部を構成する凸部13b、13cの一部も除去されて、凸部13b、13cの高さは、凸部13a、13eよりも5〜10μm程度低くなる。このように、エッチング時間及びエッチング選択比とを勘案して、固定部の酸化膜パターン22a、22e及び可動部の酸化膜パターン22b、22cの厚みをそれぞれ最適化する。その後、酸化膜パターン22a、22eを弗化水素酸溶液で除去する。
(ホ)基板接合工程において、第1の基板11の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16に接合する。具体的には、図8(c)に示す第1の基板11は、図8(b)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面14、15を入れ替えた状態を示す。第1の基板11の溝加工を施した面を接合面として重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。
(へ)最後に、裏面エッチング工程において、第1の主表面14に対向する第2の主表面15から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面15を、CMP法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部13a、13b、13c、13eに挟まれた溝が表出する、つまり、凸部13a、13b、13c、13eのみが残される前に終了する。具体的には、溝の一番深い部分が露出せず、且つ機械的に構造破壊を起さない範囲で研磨は終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を用いて、第1の基板11の第2の主表面15を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部13a、13b、13c、13eのみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。以上の工程を経て、一部に可動部を含む図6に示した3次元構造体が完成する。
このように、図3に示した3次元構造体では、可動部を構成する凸部13b、13cが、第2の基板12の凹部18a、18bの上方に配置されるように、第1の基板11及び第2の基板12の接合面をアライメントする必要があったが、第3の実施の形態では、第2の基板12に対して溝加工を施さない為、第1及び第2の基板11、12間の接合アライメントの必要がない。また同様に、可動部を構成する凸部13b、13cの総ての部分が、凹部18a、18bの上方に納まるように、アライメント精度を勘案して設計する必要もない。
また、第1のパターンニング工程におけるエッチング時間及びエッチング選択比とを勘案して、固定部の酸化膜パターン22a、22e及び可動部の酸化膜パターン22b、22cの厚みをそれぞれ最適化する。このことにより、凸部13a、13b、13c、13dの仕上がり高さを制御することができる。
また、第2の実施の形態と同様な作用・効果が得られることは言うまでもない。
(第4の実施の形態)
図9に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る3次元構造体は、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第1の基板11内にパターン幅の異なる複数の凸部13a、13b、13c、13eが形成され、第2の基板12の主表面16に凹部18a、18bが形成されている。一部の凸部13a、13eは、第2の基板12の主表面16に直接、接合されている固定部を構成し、他の凸部13b、13cは、凹部18a、18bの上方に配置され、第2の基板12の主表面16に接合されていない可動部を構成する。このように、図9に示す3次元構造体は、図3に示した3次元構造体と同様な構成を有する。
図10(a)乃至図10(d)、図11(a)乃至図11(c)を参照して、図9に示した3次元構造体の製造方法を説明する。
(イ)先ず図10(a)に示すように、第1の基板11を用意し、第1の基板11の第1の主表面14上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン5は、図9の凸部13a、13b、13c、13eが形成される領域に選択的に形成される。
(ロ)図10(b)に示すように、第1のパターニング工程において、酸化膜パターン5をマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面14から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン5の下の第1の基板11は除去されずに凸部13a、13b、13c、13eが形成される。なお、第1のパターニング工程では、側壁にポリマーの保護膜を形成する段階とエッチングする段階とを交互に繰り返す。したがって、エッチングされた部分の断面、即ち凸部13a、13b、13c、13eの側壁には、ピーク・バレイ値(P・V値)で約0.2μm程度の凹凸25が形成される。
(ハ)図10(c)に示すように、第1の基板11の第1の主表面14を熱酸化して、凸部13a、13b、13c、13eの側面及び底面に厚さ1.0μm以上の熱酸化膜23を形成する。その後、酸化膜パターン5及び熱酸化膜23を弗化水素酸溶液で除去する。図10(d)に示すように、凹凸の小さい平坦な凸部13a、13b、13c、13eを形成することができる。例えば、厚さが1.2μmの熱酸化膜23を形成した場合、凹凸が40nm(rms)程度の平坦な面が得られる。
(ニ)図11(a)に示すように、第2の基板12を用意し、第2の基板12の主表面16上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン19は、図9の凹部18a、18bが形成される領域に開口を有する。
(ホ)図11(b)に示すように、第2のパターニング工程において、酸化膜パターン19をマスクとして、乾式反応性イオンエッチング(DRIE)法などのドライエッチング方法を使って、第2の基板12の主表面16から深さ5〜10μm程度、第2の基板12を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン19の開口部分に凹部18a、18bが形成される。その後、酸化膜パターン19を弗化水素酸溶液で除去する。
(へ)基板接合工程において、第1の基板11の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16に接合する。具体的には、図11(c)に示す第1の基板11は、図10(d)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面14、15を入れ替えた状態を示す。第1及び第2の基板11、12の溝加工を施した面を接合面として重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。この時、可動部を構成する凸部13b、13cが、凹部18a、18bの上方に配置されるように、第1の基板11及び第2の基板12の接合面はアライメントされる。また、可動部を構成する凸部13b、13cの総ての部分が、凹部18a、18bの上方に納まるように、アライメント精度を勘案して設計する必要が有る。
(ト)最後に、裏面エッチング工程において、第1の主表面14に対向する第2の主表面15から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面15を、CMP法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部13a、13b、13c、13eに挟まれた溝が表出する、つまり、凸部13a、13b、13c、13eのみが残される前に終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を含む異方性のエッチング方法(サイドエッチングを伴わない垂直エッチング)を用いて、第1の基板11の第2の主表面15を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部13a、13b、13c、13eのみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。以上の工程を経て、溝形状を有し、一部に可動部を含む図9に示した3次元構造体が完成する。
このように、第1のパターンニング工程の後に、第1の基板11の第1の主表面14を熱酸化して熱酸化膜23を弗化水素酸溶液で除去することにより、凹凸の小さい平坦な凸部13a、13b、13c、13eを形成することができる。特に、光学素子等のデバイスを形成する場合にはその光学特性の向上に効果を発揮する。
また、第2の実施の形態と同様な作用・効果が得られることは言うまでもない。
(第5の実施の形態)
図12に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る3次元構造体は、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第2の基板12の主表面16には一様に酸化膜24が形成され、第1の基板11は酸化膜24を介して第2の基板12に接合されている。第1の基板11内にはパターン幅の異なる複数の凸部13a、13b、13c、13eが形成され、第2の基板12の主表面16には凹部18a、18bが形成されている。酸化膜24は、凹部18a、18bの側面及び底面にも配置されている。一部の凸部13a、13eは、第2の基板12の酸化膜24に直接、接合されている固定部を構成し、他の凸部13b、13cは、凹部18a、18bの上方に配置され、第2の基板12の酸化膜24に接合されていない可動部を構成する。
図13(a)図13(b)、図14(a)乃至図14(d)を参照して、図12に示した3次元構造体の製造方法を説明する。
(イ)先ず図13(a)に示すように、第1の基板11を用意し、第1の基板11の第1の主表面14上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン5は、図12の凸部13a、13b、13c、13eが形成される領域に選択的に形成される。
(ロ)図13(b)に示すように、第1のパターニング工程において、酸化膜パターン5をマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面14から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン5の下の第1の基板11は除去されずに凸部13a、13b、13c、13eが形成される。その後、酸化膜パターン5を弗化水素酸溶液で除去する。
(ハ)図14(a)に示すように、第2の基板12を用意し、第2の基板12の主表面16上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン19は、図12の凹部18a、18bが形成される領域に開口を有する。
(ニ)図14(b)に示すように、第2のパターニング工程において、酸化膜パターン19をマスクとして、乾式反応性イオンエッチング(DRIE)法などのドライエッチング方法を使って、第2の基板12の主表面16から深さ5〜10μm程度、第2の基板12を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン19の開口部分に凹部18a、18bが形成される。その後、酸化膜パターン19を弗化水素酸溶液で除去する。
(ホ)図14(c)に示すように、再び、第2の基板12の主表面16上に一様に酸化膜24を形成する。ここでは、第2の基板12の主表面16を熱酸化して酸化膜24を形成する。
(へ)基板接合工程において、第1の基板11の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16に接合する。具体的には、図14(d)に示す第1の基板11は、図13(b)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面14、15を入れ替えた状態を示す。第1及び第2の基板11、12の溝加工を施した面を接合面として重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。この時、可動部を構成する凸部13b、13cが、凹部18a、18bの上方に配置されるように、第1の基板11及び第2の基板12の接合面はアライメントされる。また、可動部を構成する凸部13b、13cの総ての部分が、凹部18a、18bの上方に納まるように、アライメント精度を勘案して設計する必要が有る。
(ト)最後に、裏面エッチング工程において、第1の主表面14に対向する第2の主表面15から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面15を、CMP法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部13a、13b、13c、13eに挟まれた溝が表出する、つまり、凸部13a、13b、13c、13eのみが残される前に終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を用いて、第1の基板11の第2の主表面15を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部13a、13b、13c、13eのみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。以上の工程を経て、溝形状を有し、一部に可動部を含む図12に示した3次元構造体が完成する。
このように、第1の基板11と第2の基板12との接合面には酸化膜24が介在し、第1の基板11と第2の基板12とを電気的に絶縁することができる。
また、第1のパターニング工程において溝幅の広い部分は狭い部分よりも溝の深さが深くなるため、裏面エッチング工程において溝幅の広い部分は狭い部分よりも早い段階で露出することになり、第2の基板12の主表面16がエッチングされることになる。しかし、第2の基板12の主表面16には酸化膜24が形成されているため、第2の基板12の主表面16がエッチングされることはない。したがって、溝幅の大小によって第1の基板11の貫通するまでの時間に差が生じたとしても、酸化膜24がエッチングストッパーとして機能するため、第2の基板12の主表面がエッチングされることはない。即ち、結果的に、溝幅の広い部分が、狭い部分に比して溝の深さが深く形成されることはなく、オーバーエッチングによる3次元構造体の構造がダメージを受ける心配はない。
また、第2の実施の形態と同様な作用・効果が得られることは言うまでもない。
(第6の実施の形態)
図15(a)に示すように、本発明の第6の実施の形態に係るアクチュエータは、可撓性の支持部材(板バネ)36と、支持部材36で懸吊された可動プレート31と、可動プレート31の両側に一体に連結された可動電極32a、32bと、可動電極32aに対向して配置された固定電極33aと、可動電極32bに対向して配置された固定電極33bと、支持部材36に接続されたパッド35a、35bと、固定電極33a、33bにそれぞれ接続されたパッド34a、34bとを有する。支持部材36の一端及び固定電極33a、33bは、アンカー部により基板に固定されている。可動プレート31、支持部材36、及び可動電極32a、32bが可動部を構成し、支持部材36の一端と固定電極33a、33bが固定部を構成する。パッド34a、34b、35a、35bは、例えば、アルミニウム合金からなる金属パッドである。
図15(b)に示すように、図15(a)のアクチュエータは、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第1の基板11内にはパターン幅の異なる複数の凸部からなるアクチュエータの各構成要素が形成されている。第2の基板12の主表面には一様に厚さ1.2μm程度の酸化膜37が形成され、第1の基板11は酸化膜37を介して第2の基板12に接合されている。複数の凸部のうち固定部を構成する固定電極33a等は、第2の基板12の酸化膜37に直接、接合されている。一方、可動部を構成する可動電極32a、支持部材36、可動プレート31は、酸化膜37の上方に配置され、酸化膜37に接合されていない。
図15(a)及び図15(b)に示したアクチュエータの動作を説明する。パッド35a、35b、支持部材36、及び可動プレート31を介して可動電極32a、32bに接地電位(GND)を印加し、左右の固定電極33a、33bに所定の電圧(例えば、10V程度)を交互に荷電することで、可動部を左右に動かす。例えば、左の固定電極33bに荷電すれば、支持部材36が撓み可動部は左側へ引き寄せられ、支持部材36のバネ反力と静電気の引力が釣り合う位置まで移動する。左の固定電極33bを除電すると、静電気の引力が無くなり、可動部は支持部材36のバネ反力により中央位置に戻る。右方向の移動も同様に行われる。
図16(a)乃至図16(c)、図7(a)、図7(b)を参照して、図15(a)及び図15(b)に示したアクチュエータの製造方法を説明する。
(イ)先ず図7(a)に示した製造工程と同様にして、第1の基板11の第1の主表面14に厚さ1μm程度の酸化膜を形成し、この酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン20は、図15(a)の可動部が形成される領域に開口を有する。
(ロ)図7(b)に示したように、再び、熱酸化法を用いて第1の主表面14に厚さ0.5μm程度の酸化膜を形成する。したがって、図7(a)の酸化膜パターン20が形成されている領域には、比較的厚い酸化膜21aが形成され、図7(a)の酸化膜パターン20が形成されていない領域には、比較的薄い酸化膜21bが形成される。
(ハ)酸化膜21a、21bの上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜21a、21bを除去する。以上の製造工程と同様にして、図16(a)に示すように、酸化膜パターン38a、38bが、図15(b)の各構成要素が形成される領域に選択的に形成される。なお、可動部の上に形成された酸化膜パターン38bの厚さ(例えば、約0.5μm)は、固定部の上に形成された酸化膜パターン38aの厚さ(例えば、約1.2μm)よりも薄い。
(ニ)図16(b)に示すように、第1のパターニング工程において、酸化膜パターン38a、38bをマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面14から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン38a、38bの下の第1の基板11は除去されずにアクチュエータの構成要素となる凸部(32a、33a、36、35a、31、35b)が形成される。また、第1のパターニング工程におけるエッチングマスクとして用いる酸化膜パターン38a、38bは、第1の基板11に対して一定のエッチング選択比を有する。即ち、第1の基板11のエッチングの進行と共に、酸化膜パターン38a、38bも少しづつエッチングされる。図16(b)に示すように、第1のパターニング工程のエッチング終了後には、固定部の上の酸化膜パターン38aのみが残り、可動部の上の酸化膜パターン38bは総て除去される。更に、エッチング終了前の短時間、可動部を構成する凸部(32a、36、31)の一部も除去されて、可動部を構成する凸部(32a、36、31)の高さは、固定部を構成する凸部(33a、35a、35b)よりも5〜10μm程度低くなる。このように、エッチング時間及びエッチング選択比とを勘案して、固定部の酸化膜パターン38a及び可動部の酸化膜パターン38bの厚みをそれぞれ最適化する。その後、酸化膜パターン38aを弗化水素酸溶液で除去する。
(ホ)基板接合工程において、第1の基板11の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16に接合する。具体的には、図16(c)に示す第1の基板11は、図16(b)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面14、15を入れ替えた状態を示す。第1の基板11の溝加工を施した面と第2の基板12の酸化膜37が形成された主表面16とを接合面として重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。
(へ)裏面エッチング工程において、第1の主表面14に対向する第2の主表面15から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面15を、CMP法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部に挟まれた溝が表出する、つまり、凸部のみが残される前に終了する。具体的には、溝の一番深い部分が露出せず、且つ機械的に構造破壊を起さない範囲で研磨は終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を用いて、第1の基板11の第2の主表面15を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部のみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。最後に、メタルマスクを用いてアルミニウム合金をパッド35a、34aとして選択的にアンカー部に1.0μm程度堆積する。以上の工程を経て、一部に可動部を含む図15(a)及び図15(b)に示したアクチュエータが完成する。
以上説明したように、可動部がリリースされる時点及びそれ以降の工程では、ウェットプロセスを用いない為、可動部形成時に問題となる固着の発生を抑制することができる。ひいては、デバイスの歩留り向上の効果が達成される。
固定部となる部分をそのパターン幅に係らず配置することができ、望みの場所を固定部とすることができる。例えば、図15(b)の固定電極33aは、可動電極32aに比して同等なパターン幅を有するにも係らず、第2の基板12との接合を形成し、固定部とすることができる。したがって、アクチュエータのレイアウトの自由度が大幅に向上し、デバイスの小型化が達成できる。
また、2つの基板11、12を接合する前に、第1の基板11に対して加工しているため、加工の自由度も向上する。加工前から一体となっているSOI基板では実現できない形状であっても、1枚づつの基板を加工し、加工後の基板を接合することにより、複雑な形状の3次元構造を実現可能である。
また、裏面エッチング工程において、途中まで第2の主表面15を研磨し、その後、エッチング処理(DRIE処理)により第1の基板11の凸部を除く他の部分を総て除去することにより、DRIE処理の時間を短くすることができる。したがって、DRIEのエッチングバラツキに起因した加工形状のバラツキを抑制することができる。
また、第2の基板12に対して溝加工を施さない為、第1及び第2の基板11、12間の接合アライメントの必要がない。
また、第1のパターンニング工程におけるエッチング時間及びエッチング選択比とを勘案して、固定部の酸化膜パターン38a及び可動部の酸化膜パターン38bの厚みをそれぞれ最適化する。このことにより、凸部の仕上がり高さを制御することができる。
また、第1の基板11と第2の基板12との接合面には酸化膜37が介在し、第1の基板11と第2の基板12とを電気的に絶縁することができる。
また、第1のパターニング工程において溝幅の広い部分は狭い部分よりも溝の深さが深くなるため、裏面エッチング工程において溝幅の広い部分は狭い部分よりも早い段階で露出することになり、第2の基板12の主表面16がエッチングされることになる。しかし、第2の基板12の主表面16には酸化膜37が形成されているため、第2の基板12の主表面16がエッチングされることはない。したがって、溝幅の大小によって第1の基板11の貫通するまでの時間に差が生じたとしても、酸化膜37がエッチングストッパーとして機能するため、第2の基板12の主表面がエッチングされることはない。即ち、結果的に、溝幅の広い部分が、狭い部分に比して溝の深さが深く形成されることはない。
(第7の実施の形態)
図17に示すように、本発明の第7の実施の形態に係る光スイッチは、可撓性の支持部材(板バネ)46と、支持部材46で懸吊された可動プレート41と、可動プレート41の一端に連結された第1の電極(可動電極)42と、可動電極42に対向して配置された第2の電極(固定電極)43と、支持部材46に接続されたパッド45a、45bと、固定電極43にそれぞれ接続されたパッド44と、可動プレート41の他端に接続されたミラー49と、ミラー49の近傍で交差する4つの光導波路(光ファイバ)50a〜50dとを有する。支持部材46の一端及び固定電極43は、アンカー部により基板に固定されている。可動プレート41、支持部材46、可動電極42、及びミラー49が可動部を構成し、支持部材46の一端、固定電極43及び光ファイバ50a〜50dを固定する為の溝が固定部を構成する。パッド44、45a、45bは、例えば、厚さ0.04μmのクロムと厚さ0.4μmの金の合金からなる。光ファイバ50a〜50dの先端には、それぞれレンズが配置されている。
図18に示すように、図17の光スイッチは、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第1の基板11内にはパターン幅の異なる複数の凸部からなる光スイッチの各構成要素が形成されている。第2の基板12の主表面には一様に厚さ1.2μm程度の酸化膜47が形成され、第1の基板11は酸化膜47を介して第2の基板12に接合されている。複数の凸部のうち固定部を構成する固定電極43及び支持部材46のアンカー部は、第2の基板12の酸化膜47に直接、接合されている。一方、可動部を構成する可動電極42及び支持部材46及び固定電極43の櫛歯部分は、酸化膜47の上方に配置され、酸化膜47に接合されていない。固定電極43及び支持部材46のアンカー部の上には、それぞれパッド44、45aが配置されている。また、ミラー49の側面には、厚さ0.04μmのクロムと厚さ0.4μmの金の合金膜が被覆されている。更に、光ファイバ50aは、光ファイバを固定する為の凹部に嵌め込まれている。
図17及び図18に示した光スイッチの動作を説明する。パッド45a、45b、支持部材46、及び可動プレート41を介して可動電極42に接地電位(GND)を印加し、固定電極43に所定の電圧(例えば、30V程度)を荷電することで、可動部は固定電極43側(右側)へ引き寄せられ、支持部材46のバネ反力と静電気の引力が釣り合う位置まで移動する。固定電極43を除電すると、静電気の引力が無くなり、可動部は支持部材46のバネ反力により元の位置に戻る。可動部が固定電極43側に引き寄せられた状態では、光ファイバ50a〜50dから出力される光は、ミラー49に反射されずに、対向する光ファイバへ直進する。可動部が元の状態では、光ファイバ50a〜50dから出力される光は、ミラー49に反射される。例えば、光ファイバ50aから出力された光は、ミラー49に反射されて光ファイバ50bへ進み、光ファイバ50dから出力された光は、ミラー49に反射されて光ファイバ50cへ進む。
図19(a)乃至図19(c)、図20(a)、図20(b)、図7(a)、及び図7(b)を参照して、図17及び図18に示した光スイッチの製造方法を説明する。
(イ)先ず図7(a)に示した製造工程と同様にして、第1の基板11の第1の主表面14に厚さ1μm程度の酸化膜を形成し、この酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン20は、図17の可動部が形成される領域に開口を有する。
(ロ)図7(b)に示したように、再び、熱酸化法を用いて第1の主表面14に厚さ0.5μm程度の酸化膜を形成する。したがって、図7(a)の酸化膜パターン20が形成されている領域には、比較的厚い酸化膜21aが形成され、図7(a)の酸化膜パターン20が形成されていない領域には、比較的薄い酸化膜21bが形成される。
(ハ)酸化膜21a、21bの上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜21a、21bを除去する。以上の製造工程と同様にして、図19(a)に示すように、酸化膜パターン48a、48bが、図18の各構成要素が形成される領域に選択的に形成される。なお、可動部の上に形成された酸化膜パターン48bの厚さ(例えば、約0.5μm)は、固定部の上に形成された酸化膜パターン48aの厚さ(例えば、約1.2μm)よりも薄い。
(ニ)図19(b)に示すように、第1のパターニング工程において、酸化膜パターン48a、48bをマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面14から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン48a、48bの下の第1の基板11は除去されずにアクチュエータの構成要素となる凸部(42、43、46、49)が形成される。また、第1のパターニング工程におけるエッチングマスクとして用いる酸化膜パターン48a、48bは、第1の基板11に対して一定のエッチング選択比を有する。即ち、第1の基板11のエッチングの進行と共に、酸化膜パターン48a、48bも少しづつエッチングされる。第1のパターニング工程のエッチング終了後には、固定部の上の酸化膜パターン48aのみが残り、可動部の上の酸化膜パターン48bは総て除去される。更に、エッチング終了前の短時間、可動部を構成する凸部(42、43、46、49)の一部も除去されて、可動部を構成する凸部(42、43、46、49)の高さは、固定部を構成する凸部よりも5〜10μm程度低くなる。その後、酸化膜パターンを弗化水素酸溶液で除去する。なお、第1のパターニング工程では、側壁にポリマーの保護膜を形成する段階とエッチングする段階とを交互に繰り返す。したがって、エッチングされた部分の断面には、約0.2μm程度の凹凸が形成される。
(ホ)第1の基板11の第1の主表面14を熱酸化して、凸部(42、43、46、49、51)の側面及び底面に厚さ1.0μm以上の熱酸化膜を形成する。その後、熱酸化膜を弗化水素酸溶液で除去する。図19(c)に示すように、凹凸の小さい平坦な凸部(42、43、46、49、51)を形成することができる。例えば、厚さが1.2μmの熱酸化膜を形成した場合、凹凸が50nm(rms)以上の表面粗度が得られる。この平坦化処理は、ミラー49の反射面が光学的特性を達成する上で必要な処理である。
(へ)基板接合工程において、第1の基板11の第1の主表面14を第2の基板12の主表面16に接合する。具体的には、図20(a)に示す第1の基板11は、図19(c)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面14、15を入れ替えた状態を示す。第1の基板11の溝加工を施した面と第2の基板12の酸化膜47が形成された主表面16とを接合面として重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。
(ト)裏面エッチング工程において、第1の主表面14に対向する第2の主表面15から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面15を、CMP法などを用いて研磨する。図20(b)に示すように、研磨処理は、凸部に挟まれた溝が表出する、つまり、凸部のみが残される前に終了する。具体的には、溝の一番深い部分が露出せず、且つ機械的に構造破壊を起さない範囲で研磨は終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を含む異方性のエッチング方法を用いて、第1の基板11の第2の主表面15を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部のみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。
(チ)最後に、メタルマスクを用いてクロムを0.04μm程度、金を0.4μm程度、それぞれ固定電極43及び支持部材46のアンカー部、及びミラー49の側面に選択的にスパッターする。そして、光ファイバ50a〜50dを光ファイバ用溝に嵌め込む。以上の工程を経て、一部に可動部を含む図17及び図18に示した光スイッチが完成する。
以上説明したように、可動部がリリースされる時点及びそれ以降の工程では、ウェットプロセスを用いない為、可動部形成時に問題となる固着の発生を抑制することができる。ひいては、デバイスの歩留り向上の効果が達成される。
固定部となる部分をそのパターン幅に係らず配置することができ、望みの場所を固定部とすることができる。例えば、図17の光ファイバ50aを固定する為の枠51は、可動電極42等の他の可動部に比して同等なパターン幅を有するにも係らず、第2の基板12との接合を形成し、固定部とすることができる。即ち、接着剤を用いて光ファイバ50a〜50dを溝部に固定する際、アクチュエータ部と溝部の分離幅51を狭くすることができる。枠51の底が第2の基板12に接続されており、接着剤のアクチュエータ部への染み出しがないからである。したがって、光スイッチのレイアウトの自由度が大幅に向上し、デバイスの小型化が達成できる。
また、2つの基板11、12を別々に加工するため、加工の自由度も向上する。加工前から一体となっているSOI基板では実現できない形状であっても、1枚づつの基板を加工し、加工後の基板を接合することにより、複雑な形状の3次元構造を実現可能である。
また、ミラー49への平坦化処理によりミラー49の光学的特性も維持向上される。
また、第6の実施の形態と同様な作用・効果が得られることは言うまでもない。
(第8の実施の形態)
図23(a)乃至図25(d)を参照して、第8の実施の形態に係わるMEMS構造体の製造方法を説明する。MEMS構造体の一例としてアクチュエータについて説明する。
(イ)先ず図23(a)に示すように単結晶シリコンからなる第1の基板11を用意し、図23(b)に示すように熱酸化法或いはCVD法等を用いて第1の基板11の表裏面上に一様に酸化膜58a、58bを形成する。図23(c)に示すようにスピン塗布法及びフォトリソグラフィ法を用いて、酸化膜58aの上にレジストパターン52を形成し、図23(d)に示すようにレジストパターン52をエッチングマスクとして、選択的に酸化膜58aを除去する。残された酸化膜パターン58aは、凸部が形成される領域に選択的に形成される。その後、図23(e)に示すようにレジストパターン52を除去する。
(ロ)図24(a)に示すように、熱酸化法或いはCVD法等を用いて第1の基板11の表面上に一様にフィールド酸化膜53を形成する。図24(b)に示すようにスピン塗布法及びフォトリソグラフィ法を用いて、フィールド酸化膜53の上にレジストパターン54を形成し、図24(c)に示すようにレジストパターン54をエッチングマスクとして、選択的に酸化膜53を除去する。その後、レジストパターン54を除去する。
(ハ)酸化膜パターン58a及び酸化膜パターン53をマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の表面から第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン58a及び酸化膜パターン53下の第1の基板11は除去されずに凸部が形成される。DRIE法を用いる場合、アスペクト比が50程度の垂直性の高い溝を形成することが出来る。また、酸化膜パターン58a及び酸化膜パターン53は、第1の基板11に対して一定のエッチング選択比を有する。すなわち、第1の基板11のエッチング進行と共に、酸化膜パターン58a、53も少しづつエッチングされる。図24(d)に示すように、エッチング終了後には、酸化膜パターン58aのみが残り、酸化膜パターン53は除去され、更に凸部55の一部も除去される。したがって、酸化膜パターン58aを介さずに第1の基板11の上に直接、酸化膜パターン53が形成されていた凸部55の上面は、酸化膜パターン58aを介して第1の基板11の上に酸化膜パターン53が形成されていた凸部の上面よりも5〜10μm程度低く形成される。このように、エッチング時間及びエッチング選択比とを勘案して、固定部の酸化膜パターン58a及び可動部55の酸化膜パターン53の厚みをそれぞれ最適化する。その後、図24(e)に示すように酸化膜パターン58a、58bを弗化水素酸溶液で除去する。
(ニ)図25(a)に示すように、熱酸化法を用いて凸部の表面を含む第1の基板11の露出面に100nm程度の厚さの絶縁膜56a、56bを成膜する(成膜過程)。絶縁膜56a、56bは、後で行う第2の基板の裏面エッチング工程における凸部のサイドエッチングを防止するためのものである。そして、図25(b)に示すように、凸部のうち少なくとも第2の基板12に接合される固定部分の上面57aに成膜された絶縁膜56aを選択的に除去する(接合面形成過程)。低く形成され可動部を構成する凸部55の上面及び側面に絶縁膜56aは残されている。以上の過程を経て、凸部の側面に絶縁膜56aを形成する「側壁形成工程」が完了する。
(ホ)図25(c)に示すように、単結晶シリコンからなる第2の基板12を用意し、基板接合工程において、第1の基板11の表面を第2の基板12の表面に接合する。図25(c)に示す第1の基板11は、図25(b)に示した第1の基板11の表裏面を入れ替えた状態を示す。
(へ)最後に、図25(d)に示すように、「裏面エッチング工程」において、第1の基板11の裏面から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の裏面を、CMP法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部に挟まれた溝が表出する、つまり、凸部のみが残される前に終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を用いて、第1の基板11の裏面を除去する。エッチング処理は、総ての溝が露出し、凸部のみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。以上の工程を経て、第8の実施の形態に係わる3次元構造体が完成する。なお、DRIEエッチングを行う際に先に表出する溝部分から凸部の側面はサイドエッチングに晒される。しかし、「側壁形成工程」において形成された絶縁膜56aがこのサイドエッチングから凸部を保護する。
このように、接合プロセス及びドライエッチングプロセスにより、3次元形状の溝を有する構造体を形成することができる。
複雑で微細な三次元構造体を形成するMEMSプロセスにおいて、DRIE法で構造を形成した場合、構造体(凸部)の間隔が広い場合はエッチングが早く進み、間隔が狭い場所ではエッチングが遅く進む。これにより、D-RIE法で形成した構造体(凸部)の深さは面内で一様ではなく、その構造体(凸部)の間隔によって大きく異なる。
この時、所望の構造体(凸部)の表面のみ他の場所よりも数μm程度低くした後、構造体(凸部)を形成した表面と別の支持基板とを直接接合や、共晶接合などの接合手法を用いて互いの表面を接合した後、構造体(凸部)を形成した基板の裏面側から研磨やエッチングなどの手法を用いて構造体形成面まで貫通させることによって、複雑な三次元可動構造体を形成することが可能となる。しかしながらこの工程においてドライエッチングにより早く貫通するため、構造体(凸部)側壁がサイドエッチングによる損傷を受け、数μm程度以下の幅の構造体(凸部)は消失してしまう。
本発明の第8の実施の形態によれば、構造体(凸部)形成後に覆膜(絶縁膜56a、56b)を形成する工程(側壁形成工程)を設けて構造体(凸部)をサイドエッチングから保護することによって、微細な三次元可動構造体を容易に形成することが出来る。このように、第8の実施の形態に係わる半導体構造の製造方法によれば、半導体基板上に微細な三次元構造体を形成する場合において、構造体を形成するエッチング工程における面内でのエッチング深さのバラツキを低減するとともに、容易に形成することができる。
以上説明したように、半導体基板に構造(凸部)を形成する工程と、半導体基板の凸部形成面に別の基板を接合する工程と、半導体基板の反対面をエッチングする工程とを有する半導体構造体の製造方法において、構造(凸部)を形成する工程の後に絶縁膜を形成する工程を設けることにより、反対面からのエッチング時に先に開口した部分からの凸部側壁に対するサイドエッチングを防止することが出来、微細な構造体が消失することも防止することが出来る。また、このときの絶縁膜の材料としては、酸化シリコン或いは窒化シリコンなどが望ましいが、酸化シリコンは加工などの観点から最も望ましい。
また、絶縁膜を形成する工程の後に、支持基板(第2の基板)と接合する主表面上の絶縁膜のみを選択的にドライエッチングなどで除去することによって、支持基板としてガラス基板を使用することも可能となり、デバイスの低価格化に寄与することが出来る。また、シリコン基板とガラス基板は簡便な陽極接合で接合することが出来、シリコン基板同士を接合する場合に比べて極めて低い基板温度で接合することが出来る。
(第9の実施の形態)
図26に示すように、本発明の第9の実施の形態に係る3次元構造体は、第2の基板12と、第2の基板12の上に配置された第1の基板11とを有し、第1の基板11内にパターン幅の異なる複数の凸部60a、60b、60c、・・・が形成されている。総ての凸部60a、60b、60c、・・・は、第2の基板12の上に直接、接合されている。また、隣接する凸部の間の溝の幅は、第1の溝幅61と、第2の溝幅62と、第3の溝幅63との3種類の幅を有する。
図27(a)乃至図27(d)を参照して、図26に示した3次元構造体の製造方法を説明する。
(イ)先ず、図27(a)に示すように、第1の基板11を用意し、第1の基板11の第1の主表面上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターン64は、図26の凸部60a、60b、60c、・・・が形成される領域及びダミー構造65、66が形成される領域に選択的に形成される。そして、第1のパターニング工程において、酸化膜パターン64をマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板11の第1の主表面から深さ100μm程度、第1の基板11を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターン64の下の第1の基板11は除去されずに凸部60a、60b、60c、・・・が形成され、同時に、隣接する凸部の間に凸状のダミー構造65、66が形成される。その後、図27(b)に示すように酸化膜パターン64を弗化水素酸溶液で除去する。ダミー構造65、66は、第1の基板11の第1主表面上の凹凸パターンの間隔61、62a、62b、63a、63bがほぼ等間隔となるように配する。すなわち、第2の溝幅62及び第3の溝幅63が、第1の溝幅61と等間隔になるように、第2の溝幅62及び第3の溝幅63の部分に、それぞれダミー構造65、66が配される。
(ロ)図27(c)に示すように、基板接合工程において、第1の基板11の第1の主表面を第2の基板12の主表面に接合する。具体的には、図27(c)に示す第1の基板11は、図27(b)に示した第1の基板11の第1及び第2の主表面を入れ替えた状態を示す。第1の基板11の溝加工を施した面を接合面として重ね合わせた状態で、第1の基板11と第2の基板12とを接合する。
(ハ)裏面エッチング工程において、第1の主表面に対向する第2の主表面から第1の基板11を一様に除去する。具体的には、第1の基板11の第2の主表面を、CMP法などを用いて研磨する。研磨処理は、凸部60a、60b、60c、・・・及びダミー構造65、66に挟まれた溝が表出する、つまり、凸部60a、60b、60c、・・・及びダミー構造65、66のみが残される前に終了する。その後、DRIE法などのドライエッチング法を含む異方性のエッチング方法を用いて、第1の基板11の第2の主表面を除去する。エッチング処理は、総ての溝61、62a、62b、63a、63bが露出し、第1の基板11のうち凸部60a、60b、60c、・・・及びダミー構造65、66のみが残され、その他の部分が総て除去された時点で終了する。
(ニ)最後に、凸部60a、60b、60c、・・・を残してダミー構造65、66を選択的に除去する(ダミー構造除去工程)。以上の工程を経て、溝形状を有し、一部に可動部を含む図26に示した3次元構造体が完成する。
なお、第9の実施の形態では構造体(凸部)を形成する第1の基板11表面としてシリコンを考えているが、ドライエッチングで加工できる基板であれば基板材料を限定しない。
このように、所望の構造体パターンに加えて、パターン間隔がほぼ等しくなるようにダミーパターンを構造パターン間に設けた表面パターンを形成する。このパターンをドライエッチングで加工することによって、構造体深さ方向のばらつきを低減することが出来る。
また、このときに構造体間の距離を適当に取ることによって、任意に構造体の深さ比率を変化させることも可能である。
更に、ダミー構造体の位置を構造体近傍にとることによって、構造体の側壁の垂直性を高める効果もある。
以上説明したように、半導体基板に構造体を形成する工程と、半導体基板の構造形成面に別の基板を接合する工程と、半導体基板の反対面をエッチングする工程とを有する半導体構造体の製造方法において、構造体となる部位の間にダミーの構造をパターン間がほぼ等間隔となるように配することによって、ドライエッチングによるエッチング効果を均一化させ、エッチング後に形成される構造体の深さ方向のほぼ一定にすることが出来る。
なお、第1の基板11としてSOI基板を用いることが望ましい。このことにより、ドライエッチングの進行が二酸化シリコン表面で確実に停止するため、構造体の深さを総て二酸化シリコンの上のシリコン厚さに保つことが出来る。
本発明の第9の実施の形態によれば、ダミーの構造体を設けることによって、構造体間の深さばらつきを抑え、微細な三次元可動構造体を容易に形成する半導体構造体の製造方法を提供することが出来る。
なお、前述したダミー構造を設けずに、「裏面エッチング工程」を実施した場合、図28に示すように、第1乃至第3の溝幅71、72、73の違いにより、第1の基板11のエッチング速度が変化し、形成される溝の深さが溝幅71〜73に応じて変化してしまう。
(第10の実施の形態)
図29(c)に示すように、本発明の第10の実施の形態に係る3次元構造体は、図12と同様にして、第2の基板20と、第2の基板20の上に配置された第1の基板10とを有し、第2の基板20の主表面には一様に酸化膜30が形成され、第1の基板10は酸化膜30を介して第2の基板20に接合されている。第1の基板10内にはパターン幅の異なる複数の凸部110a、110b、110c、110d、・・・が形成され、第2の基板20の主表面には凹部210a、210bが形成されている。酸化膜30は、凹部210a、210bの側面及び底面にも配置されている。一部の凸部110aは、第2の基板12の酸化膜30に直接、接合されている固定部を構成し、他の凸部110b、110c、110dは、凹部210aの上方に配置され、第2の基板20の酸化膜30に接合されていない可動部を構成する。
次に、図29(a)及び図29(b)を参照して、図29(c)に示した3次元構造体の製造方法を説明する。なお、図29(a)は基板接合工程を示し、図29(b)は裏面エッチング工程の一部を示す。基板接合工程より前に実施する第1のパターニング工程及び第2のパターニング工程は、図13(a)、図13(b)、図14(a)乃至図14(c)とほぼ同じであるため、図示を省略する。
(イ)先ず、SOI(silicon on insulator)基板からなる第1の基板10を用意する。SOI基板は、図29(a)に示すように、ベース層105と、ベース層105の上に配置された埋め込み絶縁膜103と、埋め込み絶縁膜103の上に配置された活性層104とを備える。第1の基板10の第1の主表面101上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターンは、図29(a)の複数の凸部110a、110b、110c、110d、・・・が形成される領域に選択的に形成される。
(ロ)第1のパターニング工程において、酸化膜パターンをマスクとして、DRIE法などのドライエッチング方法を使って、第1の基板10の第1の主表面101から第1の基板10を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターンの下の第1の基板10は除去されずに複数の凸部110a、110b、110c、110d、・・・が形成される。その後、酸化膜パターンを弗化水素酸溶液で除去する。活性層104の厚さは、凸部110a、110b、110c、110d、・・・の高さと等しい。即ち、第1の基板10の選択的な除去は、活性層104の厚さ分だけ行い、埋め込み絶縁膜103が表出した時点で終了する。
なお、SOI基板は一般的に裏面にも反り防止用の酸化膜が形成されている。第1のパターニング工程を実施する前にこの酸化膜を除去してしまうと、第1の基板10の反りが大きくなり後の基板接合に支障をきたす場合がある。よって、反り防止用酸化膜の除去は、第1のパターンにング工程の後に実施することが望ましい。また、第1のパターニング工程の後に、図10(c)及び図10(d)に示したように、凸部110a、110b、110c、110d、・・・の側面の粗さを取り除くスムージング工程を実施しても構わない。ただし、凸部110a、110b、110c、110d、・・・の側面の熱酸化膜を弗化水素酸溶液で除去する際、同時に埋め込み絶縁膜103も除去されてしまう。よって、スムージング工程の熱酸化膜を完全に除去しても埋め込み絶縁膜103は残るように、埋め込み絶縁膜103の厚さはスムージング工程の熱酸化膜よりも厚いことが必要となる。
(ハ)第2の基板20を用意し、第2の基板20の主表面上に一様に酸化膜を形成する。酸化膜の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、選択的に酸化膜を除去する。残された酸化膜パターンは、図29(a)の凹部210a、210bが形成される領域に開口を有する。
(ニ)第2のパターニング工程において、酸化膜パターンをマスクとして、乾式反応性イオンエッチング(DRIE)法などのドライエッチング方法を使って、第2の基板20の主表面から深さ5〜10μm程度、第2の基板20を垂直方向に選択的に除去する。酸化膜パターンの開口部分に凹部210a、210bが形成される。その後、酸化膜パターンを弗化水素酸溶液で除去する。
(ホ)再び、第2の基板20の主表面上に一様に酸化膜30を形成する。ここでは、第2の基板20の主表面を熱酸化して酸化膜30を形成する。酸化膜30は第1の基板10と第2の基板20の絶縁を確保することを目的とし、その厚さは必要な絶縁耐圧に応じて決定される。
(へ)図29(a)に示すように、基板接合工程において、第1の基板10の第1の主表面101を第2の基板20の主表面に接合する。この時、可動部を構成する凸部110b、110c、110dが、凹部210aの上方に配置されるように、第1の基板10及び第2の基板20の接合面はアライメントされる。また、可動部を構成する凸部110b、110c、110dの総ての部分が、凹部210aの上方に納まるように、アライメント精度を勘案して設計する必要が有る。第2の基板20の主表面には酸化膜30が形成されているが、基板接合工程に支障はない。
(ト)裏面エッチング工程において、第1の主表面101に対向する第2の主表面102から第1の基板10を一様に除去する。具体的には、第1の基板10の第2の主表面102を、DRIE法などのドライエッチング法を含む異方性エッチング方法を用いて第1の基板10のベース層105を一様に除去する。ベース層105と埋め込み絶縁膜103の間で十分大きなエッチング選択比を有するエッチング法を用いることで、容易にベース層105を除去することができ、図29(b)に示すように、埋め込み酸化膜103が表出した時点でエッチングを確実に停止することができる。なお、裏面エッチング工程においてベース層105を除去する際にCMPなどの研磨を併用しても構わない。ただし、研磨に使用する溶媒が接合基板10、20内に進入して基板10、20を汚染する恐れがあるため適当ではなく、予め上記エッチング処理によりベース層105を十分薄くしておくことにより、裏面エッチング工程の時間を大幅に短縮することができる。
(チ)埋め込み酸化膜103が表出した後に、ドライエッチング法を用いて埋め込み酸化膜103を除去する。ドライエッチング処理は、総ての埋め込み酸化膜103が除去され、総ての溝が露出し、凸部110a、110b、110c、110d、・・・のみが残され、第1の基板10の他の部分が総て除去された時点で終了する。以上の工程を経て、溝形状を有し、一部に可動部を含む図29(c)に示した3次元構造体が完成する。なお、埋め込み酸化膜103の除去にウェットエッチング法を用いてしまうと、除去する必要のない酸化膜30にも同時に損傷を与えてしまうことになり、最悪の場合、接合領域が剥離してしまう恐れがあると共に、溶媒に侵すことによるスティッキング現象を引き起こし、微細なパターンの損傷に繋がるため好ましくない。
以上説明したように、第1の基板10としてSOI基板を用いることにより、第1のパターニング工程において、DRIE処理を埋め込み絶縁膜103で確実に停止することができ、凸部の開口面積差によって生じるエッチング速度の違いに起因したマイクロローディング現象を考慮する必要がなくなる。また、裏面エッチング工程においても、エッチング処理を埋め込み絶縁膜103で確実に停止することができ、凸部110a、110b、110c、110dの仕上がり形状を向上させることができる。
裏面エッチング工程における埋め込み酸化膜103の除去に液体を用いずにドライエッチング法を用いることにより、スティッキングなどによる微細パターンの損傷を防ぐことができる。
SOI基板の活性層104の厚さを凸部110a、110b、110c、110dの高さと等しくすることにより、容易に凸部パターンを形成することができ、その高さを均一に形成することができる。
SOI基板の裏面に反り防止用の酸化膜が形成されている場合、第1のパターニングの後、基板接合前に研磨により除去する。これにより、第1のパターニング前に除去した場合に生じる基板の反りを防止し、基板接合後に除去した場合に生じる接合面の隙間への研磨液の侵入を回避できる。
(第11の実施の形態)
第11の実施の形態では、第1乃至第10の実施の形態に係わる半導体構造の製造方法で使用する半導体ウェハ120について説明する。半導体ウェハ120は、第1の基板又は第2の基板の何れであっても構わない。半導体ウェハ120には、基板接合工程において第1の基板と第2の基板との間に閉空間が形成されないように、予め、第1の基板の第1の主表面又は第2の基板の主表面に半導体ウェハ120の外周までに至る溝123が形成されている。即ち、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の接合面に、半導体ウェハ120の外周までに至る溝123が形成されている。溝123が第1の基板に形成される場合、第1のパターニング工程において凸部の形成と同時に溝123を形成することが望ましい。一方、溝123が第2の基板に形成される場合、第2のパターニング工程において凹部の形成と同時に溝123を形成することが望ましい。容易に溝123を形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
半導体ウェハ120の外周には結晶方向を示すオリフラ121が形成され、複数の構造体形成領域(チップ)122がマトリックス状に配置されている。溝123は各チップ122間に格子状に配置され、更に半導体ウェハ120の外周まで伸ばされている。溝123を形成することにより、基板接合工程において、第1の基板の凸部と第2の基板の凹部により形成される隙間が閉空間となることを防ぐことができる。これにより、裏面エッチング工程で使用するDRIE装置内において接合基板が真空状態に置かれても、接合基板の内外での圧力差の発生を回避することができ、この圧力差によるストレスによって接合基板の接合面が剥離又は破損することを防止できる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は、第1乃至第11の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
上述した第1乃至第11の実施の形態において、第2の基板12として、サファイア基板、ガラス基板、又は石英基板など絶縁基板を用いても良い。例えば、高耐熱ガラスを材料として用いた場合、基板接合工程において陽極接合を実施することにより、比較的低温(約400度程度)で且つ接合強度の高い第1の基板と第2の基板の接合が可能となる。なお、この場合においても、シリコンからなる第1の基板11の加工は、基板接合工程の前に実施する為、シリコンに対する高温の熱処理(熱酸化など)も実施することができ、上述したプロセス自由度が損なわれることは無い。また、例えば図3に示したような凹部18a、18bを形成するには、サンドプラスト加工を施せばよい。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。