JP4350919B2 - 能動型雑音除去装置 - Google Patents

能動型雑音除去装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4350919B2
JP4350919B2 JP2001140328A JP2001140328A JP4350919B2 JP 4350919 B2 JP4350919 B2 JP 4350919B2 JP 2001140328 A JP2001140328 A JP 2001140328A JP 2001140328 A JP2001140328 A JP 2001140328A JP 4350919 B2 JP4350919 B2 JP 4350919B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
transfer function
signal
path
reflection path
identification
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001140328A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002333888A (ja
Inventor
清浩 栗栖
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toa Corp
Original Assignee
Toa Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toa Corp filed Critical Toa Corp
Priority to JP2001140328A priority Critical patent/JP4350919B2/ja
Publication of JP2002333888A publication Critical patent/JP2002333888A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4350919B2 publication Critical patent/JP4350919B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Exhaust Silencers (AREA)
  • Pipe Accessories (AREA)
  • Soundproofing, Sound Blocking, And Sound Damping (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、能動型雑音除去装置(Active
Noise Controller:ANC)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、能動型雑音除去装置として、例えば図7に示すような能動型消音装置が知られている。同図に示すように、この装置は、排気ダクト1内をその入口側(同図の左側)から出口側(同図の右側)に向かって伝搬する騒音、例えば図示しないエンジン等の排気音、に対して、これと実質的に等大で逆位相の音波、所謂制御音、を干渉させることによって、当該排気音を打ち消すものである。
【0003】
このような能動的な消音動作を実現するために、この消音装置は、排気ダクト1内において上記排気音を収音するためのリファレンスマイクロホン2、を備えている。このリファレンスマイクロホン2の出力信号、所謂騒音信号は、増幅器3によって増幅され、A/D変換器4によってディジタル信号xk(kは、時刻を表すタイム・インデックスである。)に変換された後、例えばFIR(Finite Impulse Response:非巡回)型の適応ディジタルフィルタ(以下、単に、適応フィルタと言う。)5に入力される。適応フィルタ5は、この騒音信号xkに対して、後述するLMS演算部6により設定されるフィルタ係数を用いて所定のフィルタリング処理、例えば次の数1で表されるような畳み込み演算を施し、その演算結果ykを出力する。
【0004】
【数1】
Figure 0004350919
【0005】
なお、この数1において、Nは、適応フィルタ5のタップ数で、iは、当該フィルタタップのタップ番号(順番)を表すタップ・インデックスである。そして、wk(i)が、適応フィルタ5のフィルタ係数を表し、詳しくは、時刻kにおける当該適応フィルタ5のi番目のタップのフィルタ係数を表す。
【0006】
上記適応フィルタ5の出力信号ykは、加算器8を経てD/A変換器9に入力され、ここでアナログ信号に変換された後、増幅器10により増幅され、二次音源スピーカ(以下、単に、スピーカと言う。)7に入力される。スピーカ7は、排気ダクト1の上記リファレンスマイクロホン2が設けられている位置よりも当該排気ダクト1の出口側(同図の右側)、即ち排気音の伝搬方向で言うところの下流側、に設けられている。そして、スピーカ7は、これに入力される上記信号ykをアナログ化した所謂制御用信号に応じて、排気ダクト1内に上記制御音を放出する。これにより、制御音が、排気ダクト1内を伝搬する排気音と干渉して、当該排気音が打ち消される。
【0007】
更に、排気ダクト1内の上記スピーカ7よりも出口側(下流側)の位置には、エラーマイクロホン11が配置されている。このエラーマイクロホン11は、上記制御音により排気音を打ち消した後の音、つまりは排気音のうち制御音によって完全に打ち消されずに残った所謂残留雑音を検出する。そして、この残留雑音を検出して得たエラーマイクロホン11の出力信号、所謂エラー信号は、増幅器12によって増幅され、A/D変換器13によってディジタル信号ekに変換された後、上述したLMS演算部6に供給される。LMS演算部6には、このエラー信号ekの他に、後述する例えばFIR型のディジタルフィルタ(以下、単に、FIRフィルタと言う。)14により上記騒音信号xkを処理した後の信号(以下、この信号を、フィルタード・リファレンスと言う。)rkも、供給される。
【0008】
LMS演算部6は、上記フィルタード・リファレンスrkとエラー信号ekの大きさとに応じて、当該エラー信号ek(残留雑音)が極力小さくなるように、適応フィルタ5の伝達関数Wkを適応制御する。具体的には、LMS演算部6は、適応フィルタ5の伝達関数Wkと後述する二次音路(secondary path、またはerror pathとも言う。)の伝達関数(以下、単に、二次音路という。)Cとの合成による伝達関数[C×Wk]が、排気ダクト1内のリファレンスマイクロホン2からエラーマイクロホン11までの間に存在する一次音路(primary path)の伝達関数(以下、単に、一次音路という。)Pと相補(等価)になるように、即ちP≒−C×Wkとなるように、例えば次の数2で表されるLMSアルゴリズムに従って、適応フィルタ5のフィルタ係数wk(i)を更新し、即ちwk+1(i)を求める。
【0009】
【数2】
Figure 0004350919
【0010】
なお、この数2において、μwは、適応フィルタ5のステップ・サイズ・パラメータである。
【0011】
このように、図7に示す消音装置においては、適応フィルタ5の伝達関数Wkと二次音路Cとの合成伝達関数[C×Wk]を、一次音路Pと相補にすることによって初めて、排気ダクト1内を伝搬する排気音をスピーカ7の放射する制御音により打ち消すことができる。ただし、このように適応フィルタ5の伝達関数Wkを適応制御することによって、この伝達関数Wkを含む上記合成伝達関数[C×Wk]と一次音路Pとを相補にするには、当該合成伝達関数[C×Wk]を構成する上記二次音路Cを、同定(推定)する必要がある。
【0012】
即ち、図7に示す構成においては、スピーカ7の音波放射面(出力側)からエラーマイクロホン11の収音部分(入力側)までの間(厳密には、適応フィルタ5の出力側から加算器8、D/A変換器9、増幅器10、スピーカ5及び排気ダクト1の一部(下流側)を経てエラーマイクロホン11の収音部分までの間)に、上記二次音路Cが存在する。従って、この二次音路Cを、何らかの方法により推定(同定)して補償しなければ、上記のような適応制御により合成伝達関数[C×Wk]と一次音路Pとを相補にすることはできない。そこで、この消音装置においては、リファレンスマイクロホン2とLMS演算部6との間に、上述したFIRフィルタ14を設けている。そして、例えば一般に知られているM系列信号(MLS信号)や白色雑音等のランダムな疑似信号mkを発生する疑似信号発生器15を設け、この疑似信号mkを、図7に点線で示す経路で処理することによって、二次音路Cを同定する。これについて、図8を参照して説明する。
【0013】
同図は、上記図7に点線で示す経路、即ち二次音路Cを同定するための制御系の部分を、抜粋したものである。なお、ここでは、同図を簡素化するために、本来、上記疑似信号発生器15とスピーカ7との間に介在する加算器8、D/A変換器9及び増幅器10、の記載を省略し、エラーマイクロホン11とLMS演算部6との間に介在する増幅器12及びA/D変換器13、の記載を省略する。同図に示すように、この制御系においては、二次音路Cを同定するためのFIRフィルタ14を、例えば上記LMS演算部6とは異なる演算部16により適応制御される適応フィルタ構成としている。そして、上記疑似信号発生器15の発生する疑似信号mkを、スピーカ7、FIRフィルタ14及び上記LMS演算部16に供給すると共に、このときのエラーマイクロホン11の出力信号ekと、上記疑似信号mkをFIRフィルタ14で処理した後の信号とを、比較器17で比較して両者の誤差εkを求め、この誤差信号εkを上記LMS演算部16に供給する。LMS演算部16は、これに供給される疑似信号mkと誤差信号εkとに基づいて、当該誤差信号εkの大きさが極力小さくなるように、換言すれば二次音路C内に疑似信号mkを通過させた後の信号と、疑似信号mkをFIRフィルタ14で処理した後の信号と、が近似するように、例えば次の数3で表されるLMSアルゴリズムに従って、FIRフィルタ14のフィルタ係数chk(i)を更新し、即ちchk+1(i)を求める。
【0014】
【数3】
Figure 0004350919
【0015】
なお、この数3において、μcは、FIRフィルタ14のステップ・サイズ・パラメータである。
【0016】
この数3に基づいて、FIRフィルタ14のフィルタ係数chk(i)を更新することによって、当該FIRフィルタ14の伝達関数Chと二次音路Cとが略等価となり、即ち二次音路Cの同定を実現できる。そして、このように二次音路Cを同定して得た所謂同定伝達関数Chを有するFIRフィルタ14により上記騒音信号xkを処理した後のフィルタード・リファレンスrkを、LMS演算部6に供給することによって、当該LMS演算部6により適応フィルタ5を制御する際に、二次音路Cを補償することができ、ひいては良好な消音効果を得ることができる。このようなFIRフィルタ14を備えた制御系は、一般に、filtered-x LMSアルゴリズム構成の制御系と呼ばれている。なお、FIRフィルタ14は、次の数4に示す畳み込み演算を行なうことにより、上記フィルタード・リファレンスrkを生成する。
【0017】
【数4】
Figure 0004350919
【0018】
この数4において、Nは、FIRフィルタ14のフィルタタップ数である。ここでは、このタップ数Nを、適応フィルタ5と同じタップ数Nに設定している。
【0019】
ところで、上記のようなfiltered-x
LMSアルゴリズム構成の制御系においては、例えば排気ダクト1内の温度変化等によって当該排気ダクト1内の音響特性に変化が生じたり、或いはスピーカ7の放音特性等に変化が生じたりすることによって、二次音路Cが変化することがある。そして、このように現実の二次音路Cが変化すると、当該二次音路CとFIRフィルタ14の伝達関数(同定伝達関数)Chとが乖離して、消音効果が悪化する。このような場合には、改めて二次音路Cを同定し直せばよい。即ち、当該排気ダクト1内の温度変化等に応じて適宜に、または、定期的に、二次音路Cを同定し直せば、常に安定した消音効果を得ることができる。
【0020】
また、上記FIRフィルタ14として、騒音信号xkを処理することによりフィルタード・リファレンスrkを生成するものと、二次音路Cを同定するために疑似信号mkを処理するものとを、それぞれ別個に設けてもよい。このようにすれば、適応消音動作と二次音路Cの同定動作とを同時に、しかも安全かつ確実に、実行でき、より安定した消音効果を得ることができる。
【0021】
以上は、飽くまでエラーマイクロホン11が排気ダクト1の排出口1aの近傍に位置する場合のことであって、例えば図9に示すように、エラーマイクロホン11が排気ダクト1内の途中に設けられており、当該エラーマイクロホン11と上記排出口1aとの距離(L/2)が開いている場合には、次のような問題が生じる。
【0022】
即ち、排気音のうち制御音によって打ち消されずに残った残留雑音は、最終的に上記排出口1aから外部に排出される。しかし、この排出口1a付近においては音響インピーダンスが急変するため、残留雑音の一部は、同図に矢印1bで示すように、当該排出口1aにおいて反射して、排気ダクト1内をそれまでとは反対の方向(同図の左側、即ち上流側)に向かって伝搬する。そして、この反対方向に向かって伝搬する所謂反射成分と、排気ダクト1内を上流側から下流側へと正規の方向に向かって伝搬する上記残留雑音と、が干渉し、これによって、或る特定の周波数において、エラーマイクロホン11の収音位置で当該残留雑音の音圧が極端に小さくなる所謂音圧ディップが生じるようになる。このようにエラーマイクロホン11の収音位置で音圧ディップを生じる周波数においては、LMS演算部6は、排気音を十分に消音できているものと言わば誤認識する。従って、適応フィルタ5の伝達関数Wkは、当該周波数において、排気音を打ち消すようには成長しない。これにより、エラーマイクロホン11の収音位置においては、見かけ上、この消音装置が消音の対象としている全周波数帯域にわたって一様に排気音を消音できている状態となるが、排気口1a付近を含む他の位置においては、上記周波数の排気音が残り、十分な消音効果が得られない、という問題がある。
【0023】
上記エラーマイクロホン11と排出口1aとの距離が開いていることによって、二次音路Cも、次のような影響を受ける。即ち、二次音路Cの同定時において、上記疑似信号mkをスピーカ7に供給することにより当該スピーカ7から排気ダクト1内に放出させる音波、所謂同定音、もまた、その一部が上記排出口1aで反射して、排気ダクト1内を上流側に向かって伝搬する。従って、当該二次音路Cを同定して得られる同定伝達関数Chには、上記同定音の反射成分の伝搬経路であるところの上記エラーマイクロホン11と排出口1aとの間の空間、に係る伝達関数も含まれる。よって、この空間に係る現実の伝達関数と、上記同定伝達関数のうち当該空間に係る部分と、の関係によっては、例えばこれら両者が乖離している場合には、そのような周波数において、二次音路Cを精度良く同定できず、十分な消音効果が得られなくなることがある。このことについて、以下、数式を交えてより論理的に説明する。
【0024】
例えば、今、図9の構成において、排気ダクト1内におけるスピーカ5の出力側からエラーマイクロホン11の収音部分までの区間の音響伝達関数(即ち、図7における二次音路C)を、直接音路と呼び、これを符号Caで表すとする。そして、排気ダクト1内におけるエラーマイクロホン11の収音部分から当該排気ダクト1の排出口1aの部分にまで至り、この排出口1aにおいて反射して再度エラーマイクロホン11の収音部分に戻るまでの区間、即ち上記反射成分の伝搬経路、の音響伝達関数を、反射音路と呼び、これを符号Pで表すとする。この場合、上記二次音路Cは、次の数5で表される。
【0025】
【数5】
Figure 0004350919
【0026】
ここで、この二次音路Cの同定時に、エラーマイクロホン11から出力されるエラー信号Ek(ただし、Ekは、上記エラー信号ekで構成されるベクトルをフーリエ変換することにより周波数領域の値に変換したものである。)は、当該二次音路Cの同定処理に係る部分についてのみ言えば(即ち、上記残留雑音を検出して得られる成分を除けば)、次の数6で表される。
【0027】
【数6】
Figure 0004350919
【0028】
なお、この数6において、Mkは、疑似信号mkで構成されるベクトルをフーリエ変換することにより周波数領域の値に変換したものである。
【0029】
そして、この数6における二次音路Cに、上記数5を代入すると、当該数6は、次の数7に示すようになる。
【0030】
【数7】
Figure 0004350919
【0031】
この数7からも明らかなように、二次音路Cの同定時におけるエラー信号Ekは、上記直接音路Caを介して当該同定音を直接的に検出して得た成分[Ca・Mk]と、この直接的な成分[Ca・Mk]に上記反射音路Pを掛け合わせた成分[P・Ca・Mk]と、の和になる。即ち、当該二次音路Cの同定時において、上記反射音路Pが影響することが判る。
【0032】
なお、上記数5で表される二次音路Cを同定して得られる同定伝達関数Chは、次の数8で表される。
【0033】
【数8】
Figure 0004350919
【0034】
ここで、Cahは、上記直接音路Caの同定値(推定値)であり、Phは、反射音路Pの同定値(推定値)である。
【0035】
一方、図9の構成において、排気ダクト1内におけるリファレンスマイクロホン2の収音部分からエラーマイクロホン11の収音部分までの区間の音響伝達関数(即ち、図7における一次音路P)を、主一次音路と呼び、これを符号Pで表すとする。この場合、本消音装置による適応消音動作において、上記合成伝達関数[C×Wk]による相補の対象となる一次音路Pは、次の数9で表される。
【0036】
【数9】
Figure 0004350919
【0037】
そして、この適応消音動作時に、エラーマイクロホン11から出力されるエラー信号Ek(ただし、上記同定音を検出して得られる成分を除く。)は、次の数10で表される。
【0038】
【数10】
Figure 0004350919
【0039】
なお、この数10において、Xkは、騒音信号xkで構成されるベクトルをフーリエ変換することにより周波数領域の値に変換したものである。
【0040】
更に、この数10における一次音路Pに、上記数9を代入すると共に、二次音路Cに、数5を代入すると、当該数10は、次の数11に示すようになる。
【0041】
【数11】
Figure 0004350919
【0042】
この数11からも明らかなように、適応消音動作時のエラー信号Ekは、上記残留雑音を直接的に検出して得た成分[(P+Ca・Wk)Xk]と、この直接的な成分[(P+Ca・Wk)Xk]に上記反射音路Pを掛け合わせた成分[P(P+Ca・Wk)Xk]と、の和になる。即ち、この適応消音動作時においても、上記反射音路Pが影響することが判る。
【0043】
ところで、上記図9(図7)に示す制御系のように、騒音信号Xkを入力とし、エラー信号Ekを出力とする制御系においては、当該制御系全体の伝達関数Hkの経時的な変化は、次の数12で表されることが知られている。
【0044】
【数12】
Figure 0004350919
【0045】
この数12において、Chは、FIRフィルタ14の伝達関数(即ち二次音路Cを同定して得た同定伝達関数)Chの複素共役である。また、GRは、所謂公比(Geometric Ratio)であって、即ち、LMS演算部6による適応フィルタ5の伝達関数Wkの適応動作を1回実行すると、当該制御系全体の伝達関数Hkが、GR(=[1−2μw・|Xk|・C・Ch])倍されることを示す。なお、この公比GRは、周波数領域の関数であって、各周波数毎にそれぞれ異なる値となる。
【0046】
この公比GRの値により、本消音装置の制御系が(各周波数毎に)収束傾向にあるか否かを判断できる。具体的には、当該公比GRの絶対値が1よりも小さい(|GR|<1)場合には、制御系は収束傾向にあり、安定した消音効果を期待できる。そして、この公比GRの絶対値が小さいほど、当該制御系の収束速度は速くなり、より効率的な消音動作を期待できる。一方、当該公比GRの絶対値が1よりも大きい(|GR|>1)場合には、制御系は発散傾向となり、制御不能となる可能性がある。なお、この公比GRの絶対値が1(|GR|=1)のときには、制御系は収束傾向にも発散傾向にもなく、よって消音効果は向上することも悪化することもない。
【0047】
上記公比GRの絶対値は、当該公比GRを構成する現実の二次音路Cとその同定伝達関数Chとの位相誤差θ(=∠C・Ch)に依存する。具体的には、当該位相誤差θの絶対値が小さいほど上記公比GRの絶対値は小さく、位相誤差θの絶対値が大きいほど上記公比GRの絶対値は大きくなる。なお、この位相誤差θの絶対値がπ/2を超えると(|θ|>π/2になると)、公比GRの絶対値が1よりも大きくなり、制御系が発散傾向となる。ただし、このような位相誤差θの絶対値と公比GRの絶対値との関係は、ステップ・サイズ・パラメータμwの大きさが1に比べて十分小さく設定されている場合にのみ、成立する。
【0048】
ここで、上記数12における二次音路Cと同定伝達関数Chとに、それぞれ上記数5と数8とを代入すると、公比GRは、次の数13に示すようになる。
【0049】
【数13】
Figure 0004350919
【0050】
この数13において、Phは、反射音路Pの推定値Phの複素共役である。この数13からも明らかなように、公比GRは、反射音路Pとその推定値Phとの影響を受けることが判る。従って、例えば、二次音路Cを構成する直接音路Caと反射音路Pとのうち、直接音路Caについては比較的に精度良く同定できている(Ca≒Cah)としても、上記反射音路Pとその推定値Phとの関係によっては、例えばこれら両者が乖離している場合には、(そのような周波数において)二次音路Cの同定精度が不十分となり、良好な消音効果が得られない場合がある。例えば、上記直接音路Caを比較的に精度良く同定できている場合、上記位相誤差θは、次の数14で表される。
【0051】
【数14】
Figure 0004350919
【0052】
そして、この数14の関係を複素平面で表すと、図10に示すようになる。同図に示すように、上記位相誤差θの要因となる反射音路Pとその推定値Phとは、それぞれ実軸(Re)上における1を中心とする円の円周上を回転する。この円の半径は、反射音路Pとその推定値Phとの各大きさ(絶対値)|P|、|Ph|を表し、これらは1よりも小さい。排気ダクト1の排出口1aにおける音響反射率の大きさが、1よりも小さく、即ち当該排出口1aに到達する音波がここで全て反射することはないからである。なお、ここでは、当該図面を簡素化して見易くするために、上記反射音路Pと推定値Phとの各大きさ(上記円の半径)|P|、|Ph|を、それぞれ等しくしてある。
【0053】
この図10によれば、上記反射音路Pとその推定値Phとの各位相∠P、∠Phの如何によっては、上記位相誤差θ(≒∠{(1+P)(1+Ph)})が大きくなったり小さくなったりする。そして、この位相誤差θの絶対値が比較的に小さいときには(そのような周波数においては)、安定した消音効果を期待できる。一方、位相誤差θの絶対値が大きいときには、十分な消音効果が得られない。そして、これら反射音路Pと推定値Phとの各絶対値|P|、|Ph|が大きいほど、当該位相誤差θの絶対値は大きくなり、より消音効果が悪化する。
【0054】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、本発明が解決しようとする問題点は、上記のようにエラーマイクロホン11の収音位置と排気ダクト1の排出口1aとの距離[L/2]が開いている場合に、これら両者間に形成される反射音路Pの影響により、或る特定の周波数において消音効果が悪化する、という点である。
【0055】
また、上記距離[L/2]が大きいほど、エラーマイクロホン11の収音位置において上述した音圧ディップが発生する周波数は、低くなる。ここで、上記のような能動型消音装置は、主として、受動型(パッシブ型)の消音装置では消音が困難とされている比較的に低周波数帯域(例えば500Hz以下)の音波を消音の対象とする、ということを鑑みると、かかる低周波数帯域において上記音圧ディップが発生することは、好ましくない。即ち、このような音圧ディップが起因して発生する上記問題は、上記距離[L/2]が大きいほど、顕著になる。
【0056】
そこで、本発明は、上記反射音路Pのような反射経路の影響を排除することにより、雑音除去の対象としている全周波数帯域において、一様に雑音除去効果を得ることのできる能動型雑音除去装置、を提供することを目的とする
【0057】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の能動型雑音除去装置は、
第1の伝達関数を有する伝送路に入力される被制御信号を検出する第1の検出手段と、
上記伝送路の途中において当該伝送路内を伝搬する信号を検出する第2の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を処理し、この処理して得た制御用信号を、上記伝送路内における上記第1及び第2の各検出手段間の或る地点に放出する適応フィルタ手段と、
上記第1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、上記適応フィルタ手段の伝達関数と、上記適応フィルタ手段の出力側から上記伝送路の一部を経て上記第2の検出手段の検出部分までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
例えばランダムな疑似信号を生成して上記第2の伝達関数に入力する疑似信号生成手段と、
上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記第2の伝達関数を補償する上記ディジタルフィルタ手段を含み、該ディジタルフィルタ手段に上記疑似信号を入力して、このディジタルフィルタ手段により当該擬似信号を処理した後の信号とそのときの上記第2の検出手段の出力信号とが近似するように、上記疑似信号と上記第2の検出手段の出力信号とに基づいてディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御することにより上記第2の伝達関数を同定する同定フィルタ制御手段と、を具備する。
そして、この同定フィルタ制御手段によって上記第2の伝達関数を同定して得た同定伝達関数のうち、上記疑似信号が上記第2の検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射して折り返し再度上記第2の検出手段により検出されるまでの反射経路に係る部分、を抽出する反射経路関数抽出手段と、
この反射経路関数抽出手段によって抽出して得た上記反射経路に係る部分を相殺するための相殺伝達関数を導出する相殺伝達関数導出手段と、
上記同定伝達関数のうち上記反射経路関数抽出手段によって抽出して得た上記反射経路に係る部分を上記相殺伝達関数に置換する伝達関数置換手段と、
この伝達関数置換手段による置換後の上記周波数領域の伝達関数を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する伝達関数設定手段と、
を具備するものである。
【0058】
なお、上記ディジタルフィルタ手段は、例えばDSP(ディジタル信号処理装置)等によって構成でき、同定フィルタ制御手段、反射経路関数抽出手段、相殺伝達関数導出手段及び伝達関数置換手段は、例えばCPU(中央演算処理装置)等によって構成できる。また、上記伝送路内を伝搬する信号が例えば音波である場合には、上記検出手段は、マイクロホンや音圧センサ等により構成できる。また、上記適応フィルタ手段は、例えばDSP等によって構成でき、適応フィルタ制御手段及び伝達関数設定手段は、例えばCPU等によって構成できる。さらに、上記伝送路内を伝搬する信号が例えば音波である場合には、上記第1及び第2の各検出手段は、マイクロホンや音圧センサ等により構成できる。
【0059】
即ち、本発明の能動型雑音除去装置によれば、第1の検出手段が、伝送路に入力される被制御信号、即ち当該能動型雑音除去装置が除去対象とする信号、を検出する。そして、第2の検出手段が、伝送路の途中(上記被制御信号の伝搬方向で言うところの上記第1の検出手段よりも下流側)において、当該伝送路内を伝搬する信号を検出する。更に、伝送路の上記第1の検出手段が設けられている位置と第2の検出手段が設けられている位置との間の或る地点には、適応フィルタ手段によって上記第1の検出手段の出力信号を処理して得た制御用信号が、放出される。なお、この適応フィルタ手段の出力側から伝送路の下流側の一部を経て第2の検出手段の検出部分までの間には、第2の伝達関数が存在する。そして、適応フィルタ制御手段が、第1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と第2の検出手段の出力信号とに応じて、適応フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補するように、適応フィルタ手段の伝達関数を、例えばLMSアルゴリズム等の演算式に基づいて制御する。このように、適応フィルタ手段の伝達関数と第2の伝達関数との合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補することによって初めて、適応フィルタ手段から伝送路内に放出される上記制御用信号により、当該伝送路内を伝搬している上記被制御信号を、打ち消すことができる。
【0060】
ただし、上記のように適応フィルタ手段の伝達関数を適応制御することによって、当該適応フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成伝達関数を上記第1の伝達関数と相補にするには、当該適応制御において、上記第2の伝達関数を何らかの方法により同定してこれを補償する必要がある。そこで、本発明では、上記第1の検出手段と適応フィルタ制御手段との間に、上記第2の伝達関数を補償するための上記ディジタルフィルタ手段を設ける。即ち、本発明の能動型雑音除去装置全体の制御系を、上述したfiltered-x LMSアルゴリズム構成とするのである。そして、疑似信号生成手段が生成する疑似信号を用いて、当該ディジタルフィルタ手段により上記第2の伝達関数を補償すべく伝達関数を同定する。この第2の伝達関数の同定は、当該ディジタルフィルタ手段を備えた同定フィルタ制御手段が行う。具体的には、ディジタルフィルタ手段と第2の伝達関数とに、それぞれ上記疑似信号を入力する。そして、この状態で、当該ディジタルフィルタ手段により擬似信号を処理した後の信号と、そのときの上記第2の検出手段の出力信号とが近似するように、上記疑似信号と第2の検出手段の出力信号とに基づいてディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する。これにより、ディジタルフィルタ手段の伝達関数と第2の伝達関数とが略等価となって、当該第2の伝達関数の同定が実現される。
【0061】
しかし、この第2の伝達関数の同定時においては、上記第2の検出手段は、上記疑似信号生成手段から当該第2の伝達関数を経て直接的に検出する疑似信号の他に、この疑似信号が伝送路の出力側端部において反射して当該伝送路内に向かって折り返し再度第2の検出手段側に戻ってくる反射成分をも、同時に検出する。従って、上記同定フィルタ制御手段によって同定して得た伝達関数には、当該反射成分の伝搬経路である所謂反射経路、に係る伝達関数も含まれる。よって、この反射経路を含む伝達関数を上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定し、この状態で上記適応フィルタ手段の伝達関数を適応制御(所謂適応雑音除去動作を実行)した場合、当該反射経路の影響により、十分な雑音除去効果を得られない場合がある。
【0062】
そこで、本発明の能動型雑音除去装置においては、上記同定フィルタ制御手段により上記第2の伝達関数を同定して得た同定伝達関数のうち、上記反射経路に係る部分を抽出する反射経路関数抽出手段、を設ける。そして、この反射経路関数抽出手段によって抽出して得た上記反射経路に対応する部分を相殺するための言わば逆元的な伝達関数である相殺伝達関数、を導出する相殺伝達関数導出手段、を設ける。更に、上記同定伝達関数のうち上記反射経路に対応する部分を上記相殺伝達関数に置換する伝達関数置換手段、を設ける。そして、伝達関数設定手段が、この伝達関数置換手段による置換後の上記周波数領域の伝達関数、即ち上記反射経路に係る部分を相殺するための所謂逆元的要素を含む伝達関数を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として当該ディジタルフィルタ手段に設定する。このようにすれば、上記反射経路の影響を積極的に排除することができ、適応フィルタ手段の伝達関数を更新制御する際に、あたかも当該反射経路が最初から存在しないのと等価な状態を形成できる。従って、本発明の能動型雑音除去装置が雑音除去の対象とする全周波数帯域において、一様な雑音除去効果を得ることができる。このことは、後述するように、計算機によるシミュレーション実験により、確認された。
【0063】
なお、上記相殺伝達関数導出手段は、例えば、上記相殺伝達関数として、実際の伝送路の伝達関数とこれを同定して得られる上記同定伝達関数との位相差を構成する各要素のうち、上記反射経路に係る部分を、積極的に概略零(0)にするための伝達関数、を導出するよう構成する。この導出は、上記同定伝達関数のうちの上記反射経路関数抽出手段によって抽出して得た反射経路に係る部分を用いて、換言すれば、当該同定して得た反射経路に係る部分を実際の反射経路の伝達関数と仮定して、行う。
【0064】
また、上記反射経路関数抽出手段は、例えば次のような構成により実現できる。
即ち、上記同定伝達関数の中から上記反射経路に係る部分を抽出するには、当該同定伝達関数を時間領域、即ち所謂インパルス応答特性、で表した方が便利であり、当該抽出を容易に行える。そこで、当該同定伝達関数が、例えば周波数領域の関数である場合には、これを逆フーリエ変換する等の所定の変換処理を施すことにより、時間領域で表す手段、を設ける。なお、この同定伝達関数を、上記同定フィルタ制御手段から、直接、時間領域で取り込むことができる場合には、これをそのまま利用してもよい。
そして、この時間領域で表される同定伝達関数において、上記反射経路に係る部分を特定する反射経路特定手段と、
この反射経路特定手段によって特定して得た上記反射経路に係る部分を実際に抽出する抽出実行手段と、
を設ける。
【0065】
更に、上記反射経路特定手段については、次のように構成してもよい。即ち、上記時間領域で表される同定伝達関数、所謂インパルス応答特性には、いくつかのピーク成分が含まれる。これら各ピーク成分のうち、最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分は、上記疑似信号生成手段から伝送路内に入力される疑似信号のうち、当該伝送路を経て直接的に検出手段に入力される所謂直接的成分、に対応する。そして、2番目に大きいピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分以降が、上記疑似信号のうち、伝送路の出力側端部で反射して再度検出手段に入力される反射成分、に対応する、と考えられる。そこで、上記インパルス応答特性において、当該2番目に大きいピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が存在する部分以降の部分を、上記反射経路に係る部分として特定するよう、当該反射経路特定段を構成してもよい。或いは、インパルス応答特性において、上記2番目に大きいピーク成分が存在する部分を含む所定区間、例えば当該2番目に大きいピーク成分が存在する部分以降の部分でインパルス応答特性の絶対値が比較的に大きい区間等を、上記反射経路に係る部分として特定してもよい。
【0066】
上記反射経路特定手段は、次のようにも構成できる。即ち、上記時間領域で表される同定伝達関数において、上記直接的成分に対応する最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点から、上記反射成分に対応する2番目に大きいピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点まで、の時間的な間隔は、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射して再度上記検出手段の検出部分にまで到達するのに要する時間に、相当する。そこで、上記最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点を基準とし、この基準時点から、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射し、再度上記検出手段の検出部分にまで到達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分以降の部分、または当該時点に略対応する部分を含む所定区間を、上記反射成分に対応する部分として特定するよう、当該反射経路特定手段を構成してもよい。
【0067】
ここで、上記疑似信号が、検出手段の検出部分から伝送路の出力側端部にまで伝搬して折り返し再度検出手段の検出部分にまで到達するのに要する時間は、現実の反射経路の距離とこの反射経路における疑似信号の伝搬速度との関係から予測できる。具体的には、上記検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部までの区間の距離の略2倍(即ち往復分)の距離を、この区間における疑似信号の伝搬速度(例えば平均速度)で除算することにより、当該時間を算出できる。
【0068】
また、反射経路特定手段は、次のようにも構成できる。即ち、まず、上記時間領域で表される同定伝達関数において、上記基準時点から、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射し、再度上記検出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分を特定する。これにより、上記反射経路に係る部分を、大まかに特定し、所謂当たりを付ける。そして、この当たりを付けた部分を含む或る区間内、例えば当該当たりを付けた部分の前後付近において、ピーク・トゥー・ピーク値が最も大きいピーク成分を探し出し、この探し出したピーク成分が存在する部分以降の部分、または当該探し出したピーク成分の存在する部分を含む所定区間を、最終的に上記反射経路に係る部分として特定するよう、構成してもよい。
【0069】
なお、上記抽出実行手段は、所定の窓関数により、構成できる。この所定の窓関数としては、例えば一般に知られている矩形窓や指数窓、或いはガウス(Gauss)窓、ハニング(Hanning)窓、ハミング(Hamming)窓、二乗余弦(Raised cosine)窓、ブラックマン(Blackman)窓等の、各種窓関数がある。これら任意の窓関数を用いることにより、上記反射経路に係る部分を抽出できる。また、この抽出処理の際に、使用する窓関数の特性に応じて、上記同定伝達関数を加工することもできる。
【0070】
ところで、上記反射経路は、上記信号伝送路の一部であることから、当然に時間遅延要素を有し、これは周波数領域において位相の遅れとして表現される。そして、この位相遅れを生ずる反射経路、を相殺するための上記相殺伝達関数は、位相の進みを生ずるもの、即ち時間領域においては負の時間遅延を有するもの、でなければならない。かかる負の時間遅延要素を有する所謂非因果性の伝達関数を、時間領域の処理により導出するのは、基本的に不可能である。そこで、本発明では、当該負の時間遅延要素を有する相殺伝達関数を導出するために、周波数領域において処理を行う。
【0071】
具体的には、上記相殺伝達関数導出手段については、上記相殺伝達関数を周波数領域で導出するよう構成する。そして、伝達関数置換手段については、周波数領域において、上記同定伝達関数のうち上記反射経路に係る部分を相殺伝達関数に置換する。更に、伝達関数設定手段は、上記伝達関数置換手段による置換後の周波数領域の伝達関数をディジタルフィルタ手段に設定し、適応フィルタ手段については、上記第1の検出信号の出力信号を周波数領域で処理する。そして、適応フィルタ制御手段については、周波数領域において、第1の検出手段の出力信号を上記ディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と、上記第2の検出手段の出力信号とに基づいて、ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御するよう構成する。
【0072】
【発明の実施の形態】
本発明を例えば能動型消音装置に応用する場合の一実施の形態について、各図を参照しながら説明する。図1に、本実施の形態の概略構成を示す。同図に示すように、本実施の形態は、上述した図9に示す従来の消音装置において、LMS演算部16による演算結果に応じてFIRフィルタ14の伝達関数Chを制御するフィルタ制御部18を設けたものである。これ以外の構成については、上記図9に示す従来技術と同様であるので、これら同等な部分については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0073】
即ち、本実施の形態では、上記フィルタ制御部18を設けることにより、上述した反射音路Pの影響を積極的に相殺して、適応フィルタ5の伝達関数Wkの更新制御時に、あたかも当該反射音路Pが最初から存在しないのと同様な状態を形成する。具体的には、上述した数13で表される公比GRにおいて、上記反射音路Pに係る部分[(1+P)(1+Ph)]が1となるような状態を形成する。このようにすれば、上述した数14で表される位相誤差θがθ=0[rad]となり、消音対象とする全周波数帯域において一様に安定した消音効果を得られることが期待できる。以下、その手順について、詳しく説明する。
【0074】
まず、上述した従来技術と同様の手順により二次音路Cを同定する。そして、この二次音路Cの同定後、即ち現実の二次音路Cとこれを同定して得たFIRフィルタ14の伝達関数Chとが略等価な状態において、当該同定伝達関数Chに係る情報を、LMS演算部16からフィルタ制御部18に与える。これにより、フィルタ制御部18は、二次音路Cの推定値である同定伝達関数Chを認識する。フィルタ制御部18は、この同定伝達関数Chを、例えば逆フーリエ変換する等、所定の変換処理をすることにより、時間領域の関数に変換して、例えば図2に示すようなインパルス応答特性を得る。なお、フィルタ制御部18が、LMS演算部16から上記同定伝達関数Chを直接時間領域で取り込むことができる場合には、これをそのまま利用してもよい。
【0075】
同図に示すように、上記同定伝達関数Chのインパルス応答特性は、概ね2つの比較的に大きいピーク成分20、30を有する。これら各ピーク成分20、30は、それぞれ時間間隔Tを隔てて現れる。このうち、時間的に先に現れるピーク成分20は、二次音路Cの同定時にスピーカ7から放出される同定音(疑似信号mk)が、上述した直接音路Caを経て直接的にエラーマイクロホン11に入力される、所謂直接的成分に対応する。一方、このピーク成分20よりも時間的に遅れて現れるピーク成分30は、上記エラーマイクロホン11の収音部分を通過した同定音の一部が、排気ダクト1の排出口1aで反射して折り返し再度エラーマイクロホン11に入力される、反射成分に対応する。
【0076】
なお、上記各ピーク成分20、30間の時間間隔Tは、上記同定音がエラーマイクロホン11の収音部分を通過してから排気ダクト1の排出口1aで反射して折り返し再度エラーマイクロホン11の収音部分にまで到達するのに要する時間、に相当する。また、各ピーク成分20、30の各ピーク・トゥー・ピークの絶対値Ua、Uを比較すると、上記直接的成分に対応するピーク成分20の絶対値Uaの方が、反射成分に対応するピーク成分30の絶対値Uよりも大きい(Ua>U)。これは、上記排気ダクト1の排出口1aにおける音響反射率の大きさが1よりも小さく、即ち当該排出口1aに到達した同定音がここで全て反射することはないからである。
【0077】
フィルタ制御部18は、上記のようなインパルス応答特性の中から、反射音路Pに係る部分を、特定する。この特定は、例えば、上記インパルス応答特性に含まれるピーク成分のうち、上記ピーク・トゥー・ピーク値が2番目に大きいピーク成分30を捉え、このピーク成分30を含むそれ以降のインパルス応答特性を、反射音路Pに係る部分と見なすことで、実現できる。
【0078】
また、これに代えて、例えば上記インパルス応答特性のうち、上記直接的成分に対応するピーク成分20が現れる時点tを基準とし、この基準時点tから上記時間間隔Tを隔てた時点t、に対応する部分以降の部分を、上記反射音路Pに係る部分として特定してもよい。この時間間隔Tは、例えば当該反射音路Pの距離Lを、この反射音路P内における同定音の平均伝搬速度で除算することにより、導出できる。
【0079】
更に、上記反射音路Pに係る部分は、次の方法によっても特定できる。即ち、まず、上記インパルス応答特性において、上記基準時点tから上記時間間隔Tを隔てた時点t、に対応する部分を、概略的に特定する。これにより、上記反射音路Pに係る部分を、大まかに特定し、所謂当たりを付ける。そして、この当たりを付けた部分の例えば前後付近において、最もピーク・トゥー・ピーク値の大きい部分(即ち上記ピーク成分30)を探し出し、この最も大きい部分以降の部分を、最終的に上記反射音路Pに係る部分として特定してもよい。このように、上記反射音路Pに係る部分を特定する方法は、いろいろあるが、これら以外の方法により、当該反射音路Pに係る部分を特定してもよい。
【0080】
上記のように反射音路Pに係る部分を特定した後、フィルタ制御部18は、この特定して得た反射音路Pに係る部分を抽出する。具体的には、例えば、上記インパルス応答特性において、上記ピーク成分30が現れる時点t以降の部分、または当該時点tよりも少し前の時点taからそれ以降の部分を、抽出する。或いは、当該インパルス応答特性において、上記ピーク成分30を含む所定区間、例えば上記時点ta以降の部分でインパルス応答特性の絶対値Uが比較的に大きく、換言すれば反射音路Pによる影響が比較的に大きいと思われる区間Tp、のみの部分を抽出してもよい。この抽出は、例えば一般に知られている矩形窓や指数窓等の窓関数を用いて上記インパルス応答特性を処理することにより、実現できる。また、当該窓関数として、例えばガウス窓やハニング窓等の所定の特性を有する窓を用いれば、上記インパルス応答特性を所定の形態に加工することもできる。
【0081】
上記のように抽出して得た反射音路Pに係る部分は、上述した数8で表されるところの当該反射音路Pの推定値Phに相当する。フィルタ制御部18は、この推定値Phを、現実の反射音路Pであると仮定して、当該反射音路Pを相殺するための言わば逆元的な伝達関数である相殺伝達関数iPhを導出する。この相殺伝達関数iPhとは、上述した公比GRを構成する各要素のうち反射音路Pに係る部分[(1+P)(1+Ph)]を1とするためのものであって、次の数15で表される。
【0082】
【数15】
Figure 0004350919
【0083】
即ち、この数15における相殺伝達関数iP hに関する式(iP h=−{P /(1+P )})において、現実の反射音路Pに、上記推定値Phを代入して、当該相殺伝達関数iPhを導出する。そして、フィルタ制御部18は、この導出して得た相殺伝達関数iPhを、上記数8における推定値Phに代入して、即ち次の数16に基づいて、上記反射音路Pを相殺するための逆元的要素を含む伝達関数iChを導出する。
【0084】
【数16】
Figure 0004350919
【0085】
そして、フィルタ制御部18は、この数16に基づいて導出して得た伝達関数iChを、FIRフィルタ14に設定する。このようにすれば、上記公比GRを構成する反射音路Pに係る部分[(1+P)(1+Ph)]が1となり、上述した数14で表される位相誤差θがθ=0[rad]となる。即ち、当該反射音路Pがあたかも最初から存在しないのと等価な状態を構成でき、消音対象である全周波数帯域において、一様に安定した消音効果を得ることができる。
【0086】
ただし、上記のような消音効果を得るには、二次音路Cを比較的に精度良く同定できていることが前提となる。従って、例えば排気ダクト1内の温度変化等に応じて適宜に、または、定期的に、二次音路Cを同定し直すことが望ましい。また、上述したようにFIRフィルタ14として、騒音信号xkを処理するためのものと、疑似信号mkを処理するためのものとを、別個に設けることによって、適応消音動作と二次音路Cの同定動作とを同時に実行するよう構成してもよい。
【0087】
ところで、上記反射音路Pは、排気音の伝送路である排気ダクト1の一部分であることから、当然に時間遅延要素を有し、これは周波数領域において位相の遅れとして表現される。そして、この位相遅れを生ずる反射音路Pを相殺するための上記相殺伝達関数iPhは、位相の進みを生ずるもの、即ち時間領域においては負の時間遅延を有するもの、でなければならない。よって、この相殺伝達関数iPhを含む上記FIRフィルタ14の伝達関数iChもまた、当然に負の遅延要素を有するものになる。かかる負の時間遅延要素を有する所謂非因果性のフィルタ14を、時間領域フィルタで実現するのは、基本的に不可能である。そこで、本実施の形態においては、当該フィルタ14を、周波数領域で処理を行うフィルタにより実現する。また、これに伴い、適応フィルタ5及びこれらを制御するためのLMS演算部6、16等についても、周波数領域で処理するよう構成する。その具体例を、図3に示す。
【0088】
同図に示すように、リファレンスマイクロホン2から出力される騒音信号をディジタル信号xkに変換するためのA/D変換器4の出力側と、適応フィルタ5及びFIRフィルタ14の各入力側と、の間に、バッファ20と変換部21とを、直列に設ける。即ち、バッファ20は、上記A/D変換器4によりディジタル化した騒音信号xkを、所定時間分(所定サンプル分)ずつ順次記憶する。ここで言う所定時間とは、適応フィルタ5及びフィルタ14が、周波数領域でフィルタリング処理をするのに十分な時間を言う。そして、変換部21は、バッファ20から順次出力される上記所定時間分の時間領域の騒音信号xkを、周波数領域の信号に変換して出力する。
【0089】
そして、エラーマイクロホン11から出力されるエラー信号をディジタル信号ekに変換するためのA/D変換器13の出力側と、LMS演算部6及び比較器17と、の間に、上記と同様のバッファ22と変換部23とを、直列に設ける。即ち、バッファ22は、上記A/D変換器13によりディジタル化したエラー信号ekを、上記所定時間分ずつ順次記憶する。そして、変換部23は、バッファ22から順次出力される上記所定時間分の時間領域のエラー信号ekを、周波数領域の信号に変換して出力する。
【0090】
即ち、上記構成により、適応フィルタ5は、周波数領域で騒音信号xkを処理し、フィルタ14は、周波数領域で上記騒音信号xkまたは疑似信号mkを処理する。そして、これら各フィルタ5、14の各伝達関数Wk、Chを更新制御する各LMS演算部6、16もまた、周波数領域で演算を行う。
【0091】
更に、加算器8の出力側とD/A変換器9の入力側との間に、逆変換部24と同期部25とを、直列に設ける。即ち、逆変換部24は、適応フィルタ5から加算器8を経て入力される周波数領域の制御用信号ykを、時間領域の信号に逆変換する。また、二次音路Cの同定時には、逆変換部24は、疑似信号発生器15から加算器8を経て入力される周波数領域の疑似信号mkをも、時間領域の信号に逆変換する。そして、同期部25は、この時間領域に逆変換された制御用信号ykまたは疑似信号mkの同期(タイミング)を整えて所謂ブロック処理等を行ってから、当該各信号yk、mkをD/A変換器9に入力する。
【0092】
なお、本実施の形態におけるリファレンスマイクロホン1が、特許請求の範囲に記載の第1の検出手段に対応し、エラーマイクロホン11が、特許請求の範囲に記載の第2の検出手段に対応する。そして、適応フィルタ5が、特許請求の範囲に記載の適応フィルタ手段に対応し、LMS演算部6が、特許請求の範囲に記載の適応フィルタ制御手段に対応する。そして、排気音が、特許請求の範囲に記載の被制御信号に対応し、制御音が、特許請求の範囲に記載の制御用信号に対応する。また、一次音路Pが、特許請求の範囲に記載の第1の伝達関数に対応し、二次音路Cが、特許請求の範囲に記載の第2の伝達関数に対応する。
【0093】
更に、疑似信号発生器15が、特許請求の範囲に記載の疑似信号生成手段に対応する。そして、フィルタ14が、特許請求の範囲に記載のディジタルフィルタ手段に対応し、このフィルタ14、LMS演算部16及び比較器17から成る部分が、特許請求の範囲に記載の同定フィルタ制御手段に対応する。そして、フィルタ制御部18が、特許請求の範囲に記載の反射経路関数抽出手段、相殺伝達関数導出手段、伝達関数置換手段及び伝達関数設定手段に対応する。
【0094】
なお、本実施の形態における適応フィルタ5及びフィルタ14は、例えばDSPにより構成できる。そして、これらを制御する各LMS演算部6、16は、例えばCPUにより構成できる。なお、このLMS演算部16によりフィルタ14の伝達関数Chを制御するのに、LMSアルゴリズムを用いたが、例えば一般に知られているM系列信号を用いた相関法等の当該LMSアルゴリズム以外の適応制御アルゴリズムを用いてもよい。また、本実施の形態において新たに追加したフィルタ制御部18についても、CPUにより構成できる。従って、本実施の形態において当該フィルタ制御部18を追加しても、消音装置全体が大型化したり、極端に高コスト化したりすることはない。そして、このフィルタ制御部18は、例えばLMS演算部16に内蔵することもできる。
【0095】
更に、本実施の形態では、本発明を能動型消音装置に応用する場合について説明したが、これに限らない。例えば、一般に知られているエコーキャンセラ等の他の雑音除去装置についても、本発明を応用できる。更に、図8に示すような二次音路C等の任意の信号伝送路の伝達関数を同定することを目的とする所謂伝達関数同定装置にも、本発明を応用できる。
【0096】
【実施例】
本実施の形態の実施例として、「本実施の形態によれば、反射音路Pが存在しても、消音対象とする全周波数帯域において一様に安定した消音効果が得られる。」、という本実施の形態の効果を立証するための実験を行なったので、以下に説明する。
【0097】
まず、上記図3に示す消音装置と同様の制御系を、計算機によりシミュレートして形成する。ここで、排気ダクト1内におけるリファレンスマイクロホン2からエラーマイクロホン11までの間の主一次音路Pを、20タップ目に値1のインパルスを有する所謂単純遅延とする。一方、二次音路Cについては、図4に示すように、スピーカ7から放出された同定音が、10タップ目に値1でエラーマイクロホン11の収音部分に到達した後、排気ダクト1の排出口1aにおいて反射して折り返し、この反射成分が最終的に20タップ目に値−0.9でエラーマイクロホン11の収音部分にまで戻ってくる、というモデルをシミュレートする。
【0098】
そして、フィルタ14に、上記図4と全く同様のインパルス応答特性を有する伝達関数Ch(=C)を設定し、この状態で、適応消音動作を計算機上で実行する。これとは別に、上記図4における反射成分を積極的に相殺すべく相殺伝達関数iPh(数15)を導出し、これを数8におけるPhと置換した伝達関数iCh(数16)をフィルタ14に設定し、この状態で、適応消音動作を実行する、というシミュレーションを行なう。そして、これら各条件による消音効果を、エラー信号Ekのレベルに基づいて、評価する。
【0099】
なお、上記適応消音動作に係る各パラメータの設定条件は、次の通りである。即ち、適応フィルタ5のタップ長wtapを、wtap=128とし、フィルタ14のタップ長ctapを、ctap=128とする。また、各バッファ20、22についても、これらのバッファ長bをb=128とする。更に、ステップ・サイズ・パラメータμwについては、μw=0.1と比較的に大き目の値に設定する。このようにステップ・サイズ・パラメータμwの値を大き目の値に設定するのは、上記シミュレーション結果(消音効果)を短時間で確認するためである。そして、これらの条件の下、上述した数2に基づいて、厳密には当該数2を周波数領域で表した演算式に基づいて、適応フィルタ5のフィルタ係数Wkを更新制御する。
【0100】
図5に、上記フィルタ係数Wkの更新処理を4回実行したときのシミュレーション結果を示す。なお、同図において、(a)は、フィルタ14に、上記図4と全く同様のインパルス応答特性を有する伝達関数Ch(=C)を設定した場合のシミュレーション結果である。そして、同図(b)は、上記相殺伝達関数iPを含む伝達関数iChを、フィルタ14に設定した場合のシミュレーション結果である。なお、各図の横軸の値は、周波数(消音対象周波数)fをタップ長換算した値を示し、縦軸の値は、上記エラー信号ekの信号レベルeを周波数領域で表した値を示す。
【0101】
同図(a)に示すように、フィルタ14に設定されている伝達関数Chと、現実の二次音路Cとが等価な場合(Ch=C)には、周波数fによっては、最大で−40dB強という非常に大きな消音効果が得られる。ただし、消音効果が極端に悪い周波数fもあることが判る。一方、同図(b)に示すように、上記相殺伝達関数iPを含む伝達関数iChをフィルタ14に設定した場合には、全周波数帯域において、一様な消音効果を得られることが判る。
【0102】
なお、図6に、上記反射音路Pが無い場合(即ち、エラーマイクロホン11が排気ダクト1の排出口1a付近に設けられている場合)のシミュレーション結果を示す。同図に示すように、反射音路Pが存在しない場合には、上記相殺伝達関数iPを含む伝達関数iChをフィルタ14に設定した場合と略同様の実験結果が得られた。これにより、本実施の形態によれば、あたかも反射音路Pが最初から存在しないのと等価な状態を形成でき、全周波数帯域において一様に安定した消音効果が得られる、ということが証明された。
【0103】
【発明の効果】
以上のように、本発明の能動型雑音除去装置は、第2の伝達関数を補償するためのディジタルフィルタ手段を有するfiltered-x LMSアルゴリズム構成の制御系において、当該第2の伝達関数を同定して得た同定伝達関数のうち、反射経路に係る部分を積極的に排除して、これを当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する。これにより、あたかも反射経路が最初から存在しないのと等価な状態を形成でき、雑音除去の対象とする全周波数帯域において、一様に安定した雑音除去効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を能動型消音装置に応用する場合の一実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】 同実施の形態において、二次音路Cを同定して得た伝達関数Chを時間領域で表したインパルス応答特性図である。
【図3】 同実施の形態に係る制御系の正確な構成を示す図である。
【図4】 同実施の形態の実施例として、同実施の形態による効果を立証するためのシミュレーション実験の条件を模式的に示す図である。
【図5】 同実施例における実験結果を示す図で、(a)は、反射音路Pを含む二次音路Cを同定して得た伝達関数Chをそのまま用いて適応消音動作を計算機上で実行した場合のシミュレーション結果、(b)は、同定伝達関数Chのうち反射音路Pに係る部分を積極的に排除した伝達関数iChを用いて適応消音動作を計算機上で実行した場合のシミュレーション結果である。
【図6】 同実施例における比較対象データで、元々反射音路Pの存在しない制御系において適応消音動作を計算機上で実行した場合のシミュレーション結果である。
【図7】 従来の能動型消音装置の概略構成図である。
【図8】 図7の構成において、二次音路を同定するための部分を抜粋した図である。
【図9】 図7の構成において、反射音路Pが形成される場合を示す図である。
【図10】 図9の制御系において、当該制御系に対する反射音路の影響を示す複素平面図である。
【符号の説明】
1 排気ダクト
2 リファレンスマイクロホン
5 適応フィルタ
6 LMS演算部
7 二次音源スピーカ
11 エラーマイクロホン
14 FIRディジタルフィルタ
15 疑似信号発生器
16 LMS演算部
18 フィルタ制御部
主一次音路
反射音路
Ca 直接音路

Claims (8)

  1. 第1の伝達関数を有する伝送路に入力される被制御信号を検出する第1の検出手段と、
    上記伝送路の途中において該伝送路内を伝搬する信号を検出する第2の検出手段と、
    上記第1の検出手段の出力信号を処理し、この処理して得た制御用信号を、上記伝送路内における上記第1及び第2の各検出手段間の或る地点に放出する適応フィルタ手段と、
    上記第1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、上記適応フィルタ手段の伝達関数と、上記適応フィルタ手段の出力側から上記伝送路を経て上記第2の検出手段の検出部分までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
    疑似信号を生成して上記第2の伝達関数に入力する疑似信号生成手段と、
    上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記第2の伝達関数を補償する上記ディジタルフィルタ手段を含み、該ディジタルフィルタ手段に上記疑似信号を入力して、該ディジタルフィルタ手段により該擬似信号を処理した後の信号とそのときの上記第2の検出手段の出力信号とが近似する状態に、上記疑似信号と上記第2の検出手段の出力信号とに基づいて該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御することにより上記第2の伝達関数を同定する同定フィルタ制御手段と、
    この同定フィルタ制御手段によって同定して得た同定伝達関数のうち、上記疑似信号が上記第2の検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端部において反射して折り返し再度上記第2の検出手段により検出されるまでの反射経路に係る部分、を抽出する反射経路関数抽出手段と、
    この反射経路関数抽出手段によって抽出して得た上記反射経路に係る伝達関数を相殺するための相殺伝達関数を導出する相殺伝達関数導出手段と、
    上記同定伝達関数のうち上記反射経路関数抽出手段によって抽出して得た上記反射経路に係る部分を上記相殺伝達関数に置換する伝達関数置換手段と、
    この伝達関数置換手段による置換後の伝達関数を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する伝達関数設定手段と、
    を具備する能動型雑音除去装置。
  2. 上記相殺伝達関数導出手段は、上記相殺伝達関数として、上記第2の伝達関数とこれを同定して得た上記同定伝達関数との位相差を構成する各要素のうち上記反射経路に係る部分を概略零にするための伝達関数を、上記同定伝達関数のうちの上記反射経路関数抽出手段によって抽出して得た上記反射経路に係る部分を用いて導出する、請求項1に記載の能動型雑音除去装置。
  3. 上記反射経路関数抽出手段は、
    上記同定伝達関数を時間領域で表す手段を有し、
    この時間領域で表される同定伝達関数において、上記反射経路に係る部分を特定する反射経路特定手段と、
    この反射経路特定手段によって特定して得た上記反射経路に係る部分を抽出する抽出実行手段と、
    を具備する、請求項1に記載の能動型雑音除去装置。
  4. 上記反射経路特定手段は、上記時間領域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含まれるピーク成分のうちピーク・トゥー・ピーク値が2番目に大きいピーク成分の存在する部分以降の部分、または該2番目に大きいピーク成分の存在する部分を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状態に構成された、請求項3に記載の能動型雑音除去装置。
  5. 上記反射経路特定手段は、上記時間領域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、この基準時点から、上記疑似信号が上記第2の検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端部において反射して折り返し再度上記第2の検出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分以降の部分、または該時点に略対応する部分を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状態に構成された、請求項3に記載の能動型雑音除去装置。
  6. 上記反射経路特定手段は、上記時間領域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、この基準時点から、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端部において反射して折り返し再度上記検出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分を含む或る区間内で最もピーク・トゥー・ピーク値の大きいピーク成分が存在する部分、以降の部分、または該或る区間内で最も大きいピーク成分が存在する部分、を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状態に構成された、請求項3に記載の能動型雑音除去装置。
  7. 上記抽出実行手段は、所定の窓関数により、上記同定伝達関数のうち上記反射経路特定手段によって特定して得た上記反射経路に係る部分を抽出する状態に構成された、請求項3に記載の能動型雑音除去装置。
  8. 上記相殺伝達関数導出手段は、上記相殺伝達関数を周波数領域で導出し、
    上記伝達関数置換手段は、周波数領域において、上記同定伝達関数のうち上記反射経路に係る部分を上記相殺伝達関数に置換し、
    上記伝達関数設定手段は、上記伝達関数置換手段による置換後の上記周波数領域の伝達関数を上記ディジタルフィルタ手段に設定し、
    上記適応フィルタ手段は、上記第1の検出信号の出力信号を周波数領域で処理し、
    上記適応フィルタ制御手段は、周波数領域において、上記第1の検出手段の出力信号を上記ディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力信号とに基づいて、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する状態に構成された、
    請求項1に記載の能動型雑音除去装置。
JP2001140328A 2001-05-10 2001-05-10 能動型雑音除去装置 Expired - Fee Related JP4350919B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001140328A JP4350919B2 (ja) 2001-05-10 2001-05-10 能動型雑音除去装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001140328A JP4350919B2 (ja) 2001-05-10 2001-05-10 能動型雑音除去装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002333888A JP2002333888A (ja) 2002-11-22
JP4350919B2 true JP4350919B2 (ja) 2009-10-28

Family

ID=18986951

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001140328A Expired - Fee Related JP4350919B2 (ja) 2001-05-10 2001-05-10 能動型雑音除去装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4350919B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE10316946A1 (de) * 2003-04-12 2004-10-21 Daimlerchrysler Ag Vorrichtung und Verfahren zur Dämpfung von Druckschwingungen in Hydraulikleitungen
KR101140321B1 (ko) * 2010-01-06 2012-05-02 한국과학기술원 능동소음제어 시스템 및 방법
JP6384784B2 (ja) * 2014-08-05 2018-09-05 パナソニックIpマネジメント株式会社 信号処理装置、プログラム、レンジフード装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002333888A (ja) 2002-11-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2955855B1 (ja) 能動型雑音除去装置
JP4790843B2 (ja) 能動消音装置および能動消音方法
JP6125389B2 (ja) 能動消音装置及び方法
WO2015133094A1 (ja) 信号処理装置、プログラム、レンジフード装置
JP2010250316A (ja) 無限インパルス応答フィルタを用いたアクティブノイズ制御のためのシステム
WO2016067540A1 (ja) 信号処理装置、プログラム、レンジフード装置、および信号処理装置における周波数ビンの選択方法
JPWO2016178309A1 (ja) 信号処理装置、信号処理方法、プログラム、レンジフード装置
WO2019181758A1 (ja) 会話支援装置
JP4350919B2 (ja) 能動型雑音除去装置
JP4690243B2 (ja) デジタルフィルタ、周期性騒音低減装置および騒音低減装置
JP5295086B2 (ja) 能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法
JP4350917B2 (ja) 能動型雑音除去装置
JP6214884B2 (ja) 能動消音装置および能動消音方法
JP5297657B2 (ja) 能動的消音システム
JP6116300B2 (ja) 能動型消音システム
JP5164588B2 (ja) 能動的消音システム
JP3725959B2 (ja) 伝達関数同定装置及び能動型雑音除去装置
JP3505337B2 (ja) 伝達関数同定装置及び能動型雑音除去装置
JP5646806B2 (ja) 能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法
JP4438632B2 (ja) ハウリングキャンセラ
JP2014235240A (ja) 能動騒音制御装置
JPH09171388A (ja) 適応フィルタ
JPH07253792A (ja) 消音装置
JPH0635482A (ja) アクティブ消音方法及び消音装置
JP5545923B2 (ja) 適応制御システム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060314

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071120

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080121

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080212

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090723

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120731

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4350919

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130731

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130731

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130731

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130731

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140731

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees