JP4350917B2 - 能動型雑音除去装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、能動型雑音除去装置(Active
Noise Controller:ANC)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、能動型雑音除去装置として、例えば図12に示すような能動型消音装置が知られている。同図に示すように、この装置は、排気ダクト1内をその入口側(同図の左側)から出口側(同図の右側)に向かって伝搬する騒音、例えば図示しないエンジン等の排気音、に対して、これと実質的に等大で逆位相の音波、所謂制御音、を干渉させることによって、当該排気音を打ち消すものである。
【0003】
このような能動的な消音動作を実現するために、この消音装置は、排気ダクト1内において上記排気音を収音するためのリファレンスマイクロホン2を、備えている。このリファレンスマイクロホン2の出力信号、即ち上記排気音を収音して得た所謂騒音信号xk(kは、時刻を表すタイム・インデックスである。)は、図示しない増幅器によって増幅され、図示しないA/D変換器によってディジタル信号に変換された後、例えばFIR(Finite Impulse Response:非巡回)型の適応ディジタルフィルタ(以下、単に、適応フィルタと言う。)3に入力される。適応フィルタ3は、これに入力される上記騒音信号xkに対して、後述するLMS演算部4により設定されるフィルタ係数を用いて所定のフィルタリング処理、例えば次の数1で表されるような畳み込み演算を施し、その演算結果ykを出力する。
【0004】
【数1】
Figure 0004350917
【0005】
なお、この数1において、Nは、適応フィルタ3のタップ数で、iは、当該フィルタタップのタップ番号(順番)を表すタップ・インデックスである。そして、wk(i)が、適応フィルタ3のフィルタ係数を表し、詳しくは、時刻kにおける当該適応フィルタ3のi番目のタップのフィルタ係数を表す。
【0006】
排気ダクト1の上記リファレンスマイクロホン2が設けられている位置よりも当該排気ダクト1の出口側(同図の右側)、即ち排気音の伝搬方向で言うところの下流側には、排気ダクト1内に音波を放出する状態に、二次音源スピーカ(以下、単に、スピーカと言う。)5が設けられている。そして、このスピーカ5に、上記適応フィルタ3の出力信号ykが、図示しないD/A変換器によりアナログ信号に変換され、図示しない増幅器により増幅された後、入力される。スピーカ5は、これに入力される上記信号ykに応じて上記制御音を放出する。この排気ダクト1内に放出された制御音が、当該排気ダクト1内を伝搬している排気音に干渉することによって、当該排気音が打ち消される。
【0007】
更に、排気ダクト1の出口側には、エラーマイクロホン6が配置されている。このエラーマイクロホン6は、上記制御音により排気音を打ち消した後の音、つまりは排気音のうち制御音によって完全に打ち消されずに残った所謂残留雑音を検出する。そして、この残留雑音を検出して得たエラーマイクロホン6の出力信号、所謂エラー信号ekは、上述したLMS演算部4に供給される。LMS演算部4には、このエラー信号ekの他に、後述する例えばFIR型のディジタルフィルタ(以下、単に、FIRフィルタと言う。)7により上記騒音信号xkを処理した後の信号(以下、この信号を、フィルタード・リファレンスと言う。)rkも、供給される。
【0008】
LMS演算部4は、上記フィルタード・リファレンスrkとエラー信号ekの大きさとに応じて、当該エラー信号ek(残留雑音)が極力小さくなるように、適応フィルタ3の伝達関数Wkを適応制御する。具体的には、LMS演算部4は、適応フィルタ3の伝達関数Wkと後述する二次音路(secondary path、またはerror pathとも言う。)の伝達関数(以下、単に、二次音路と言う。)Cとの合成による伝達関数[C×Wk]が、排気ダクト1内のリファレンスマイクロホン2からエラーマイクロホン6までの間に存在する一次音路(primary path)の伝達関数(以下、単に、一次音路と言う。)Pと相補になるように、即ちP≒−C×Wkとなるように、例えば次の数2で表されるLMSアルゴリズムに従って、適応フィルタ3のフィルタ係数wk(i)を更新し、即ちwk+1(i)を求める。
【0009】
【数2】
Figure 0004350917
【0010】
なお、この数2において、μwは、適応フィルタ3のステップ・サイズ・パラメータである。
【0011】
このように、図12に示す消音装置においては、適応フィルタ3の伝達関数Wkと二次音路Cとの合成伝達関数[C×Wk]を、一次音路Pと相補にすることによって初めて、排気ダクト1内を伝搬する排気音をスピーカ5の放射する制御音により打ち消すことができる。ただし、このように適応フィルタ3の伝達関数Wkを適応制御することによって、上記合成伝達関数[C×Wk]と一次音路Pとを相補にするには、当該合成伝達関数[C×Wk]を構成する二次音路Cを、何らかの方法により同定(推定)する必要がある。
【0012】
即ち、図12に示す構成においては、スピーカ5の音波放射面(出力側)からエラーマイクロホン6の収音部分(入力側)までの間(厳密には、適応フィルタ3の出力側からスピーカ5及び排気ダクト1の一部(下流側)を経てエラーマイクロホン6の収音部分までの間)に、上記二次音路Cが存在する。従って、この二次音路Cを何らかの方法により同定して補償しなければ、上記のような適応制御により合成伝達関数[C×Wk]と一次音路Pとを相補にすることはできない。そこで、この消音装置においては、上記リファレンスマイクロホン2とLMS演算部4との間に、上述したFIRフィルタ7を設けている。そして、例えば一般に知られているM系列信号(MLS信号)や白色雑音等のランダムな疑似信号mkを発生する疑似信号発生器8を設け、この疑似信号mkを、図12に点線で示す経路で処理することによって、二次音路Cを同定する。これについて、図13を参照して説明する。
【0013】
同図は、上記図12に点線で示す経路、即ち二次音路Cを同定するための制御系の部分を、抜粋したものである。同図に示すように、この制御系においては、二次音路Cを同定するためのFIRフィルタ7を、例えば上記LMS演算部4とは異なる演算部9により適応制御される適応フィルタ構成としている。そして、上記疑似信号発生器8の発生する疑似信号mkを、スピーカ5、FIRフィルタ7及び上記LMS演算部9に供給すると共に、このときのエラーマイクロホン6の出力信号ekと、上記疑似信号mkをFIRフィルタ7で処理した後の信号とを、比較器10で比較して両者の誤差εkを求め、この誤差信号εkを上記LMS演算部9に供給している。LMS演算部9は、これに供給される疑似信号mkと誤差信号εkとに基づいて、当該誤差信号εkの大きさが極力小さくなるように、換言すれば二次音路C内に疑似信号mkを通過させた後の信号と、疑似信号mkをFIRフィルタ7で処理した後の信号と、が近似するように、例えば次の数3で表されるLMSアルゴリズムに従って、FIRフィルタ7のフィルタ係数chk(i)を更新し、即ちchk+1(i)を求める。
【0014】
【数3】
Figure 0004350917
【0015】
なお、この数3において、μcは、FIRフィルタ7のステップ・サイズ・パラメータである。
【0016】
この数3に基づいて、FIRフィルタ7のフィルタ係数chk(i)を更新することによって、当該FIRフィルタ7の伝達関数Chと二次音路Cとが略等価となり、即ち二次音路Cの同定を実現できる。そして、このように二次音路Cを同定して得た所謂同定伝達関数Chを有するFIRフィルタ7により上記騒音信号xkを処理した後、この処理後の上記フィルタード・リファレンスrkをLMS演算部4に供給することによって、当該LMS演算部4により適応フィルタ3のフィルタ係数wk(i)を正確に適応制御でき、ひいては良好な消音効果を得ることができる。このようなFIRフィルタ7を備えた制御系は、一般に、filtered-x LMSアルゴリズム構成の制御系と呼ばれている。FIRフィルタ7は、次の数4に示す畳み込み演算を行なうことにより、上記フィルタード・リファレンスrkを生成する。
【0017】
【数4】
Figure 0004350917
【0018】
この数4において、Nは、FIRフィルタ7のフィルタタップ数である。ここでは、このタップ数Nを、適応フィルタ5と同じタップ数Nに設定している。
【0019】
なお、上記のようなfiltered-x LMSアルゴリズム構成の制御系においては、例えば排気ダクト1内の温度変化等によって当該排気ダクト1内の音響特性に変化が生じたり、或いはスピーカ5の放音特性に変化が生じたりすることによって、二次音路Cが変化することがある。そして、このように二次音路Cが変化すると、当該二次音路CとFIRフィルタ7の伝達関数Chとが乖離して、消音効果が悪化する。このような場合には、改めて二次音路Cを同定し直せばよい。即ち、当該排気ダクト1内の温度変化等に応じて適宜に、または、定期的に、二次音路Cを同定し直せば、常に安定した消音効果を得ることができる。また、上記FIRフィルタ7として、騒音信号xkを処理することによりフィルタード・リファレンスrkを生成するものと、二次音路Cを同定するために疑似信号mkを処理するものとを、それぞれ別個に設けてもよい。このようにすれば、適応消音動作と二次音路Cの同定動作とを同時にしかも安全かつ確実に実行でき、より安定した消音効果を得ることができる。
【0020】
以上は、飽くまでエラーマイクロホン6が排気ダクト1の排出口1aの近傍に位置する場合のことであって、例えば図14に示すように、エラーマイクロホン6が排気ダクト1内の途中に設けられており、当該エラーマイクロホン6と上記排出口1aとの間が開いている場合には、次のような問題が生じる。
【0021】
即ち、排気音のうち制御音によって打ち消されずに残った残留雑音は、最終的に上記排出口1aから外部に排出される。しかし、この排出口1a付近においては音響インピーダンスが急変するため、残留雑音の一部は、同図に矢印1bで示すように、当該排気口1aにおいて反射して、排気ダクト1内をそれまでとは反対の方向(同図の左側、即ち上流側)に向かって伝搬する。そして、この反対方向に向かって伝搬する所謂反射成分と、排気ダクト1内を上流側から下流側へと正規の方向に向かって伝搬する上記残留雑音と、が干渉し、これによって、エラーマイクロホン6の配置位置において当該残留雑音の音圧が極端に小さくなる周波数が存在するようになる。このような周波数においては、LMS演算部4は、排気音を十分に消音できているものと言わば誤認識する。従って、適応フィルタ3の伝達関数Wkは、当該周波数において、排気音を打ち消すようには成長しない。これにより、エラーマイクロホン6の配置位置においては、この消音装置が消音の対象としている全周波数帯域にわたって一様に排気音を消音できているように見えるが、排気口1a付近を含む他の位置においては、上記周波数の排気音が残り、十分な消音効果が得られない、という問題がある。
【0022】
上記エラーマイクロホン6と排出口1aとの間が開くことによって、二次音路Cも、次のような影響を受ける。即ち、二次音路Cの同定時において、上記疑似信号mkに応じてスピーカ5から放出させる音波、所謂同定音、もまた、その一部が上記排出口1aで反射して、排気ダクト1内を上流側に向かって伝搬する。従って、当該二次音路Cを同定して得られる同定伝達関数Chには、上記同定音の反射成分の伝搬経路であるところの上記エラーマイクロホン6と排出口1aとの間の空間、に係る伝達関数も含まれる。ここで、例えば、排気ダクト1内の温度が変化する等、当該排気ダクト1内の環境が変化するとする。すると、上述したように、この環境変化に伴い、二次音路C(特に、位相特性)も変化する。エラーマイクロホン6が排出口1aの近傍に位置する場合には、当該二次音路Cの変化は、主に、スピーカ5の出力側からエラーマイクロホン6の収音部分までの区間内における環境変化の影響を受ける。しかし、上記のようにエラーマイクロホン6と排出口1aとの間が開いている場合には、これらエラーマイクロホン6と排出口1aとの間における環境変化も、二次音路Cに大きく影響し、その分、当該環境変化が二次音路Cに与える影響が大きくなる。従って、例えば、エラーマイクロホン6が排出口1aの近傍に位置する場合(特に、スピーカ5の出力側からエラーマイクロホン6の収音部分までの距離が短い場合)には、二次音路Cの特性に然程大きな影響を与えない程度の環境変化であっても、エラーマイクロホン6と排出口1aとの間が開いていることによって、二次音路Cが大きく変化することがある。そして、この二次音路Cが極端に変化することにより、当該二次音路CとFIRフィルタ7の伝達関数Chとが乖離して、本消音装置全体の制御系が発散し、ひいては制御不能となる可能性がある。この傾向は、エラーマイクロホン6と排出口1aとの間隔が大きいほど、顕著になる。このことについて、以下、数式を交えてより論理的に説明する。
【0023】
例えば、今、図14において、排気ダクト1内におけるスピーカ5の出力側からエラーマイクロホン6の収音部分までの区間の音響伝達関数(即ち、図12における二次音路C)を、直接音路と呼び、これを符号Caで表すとする。そして、排気ダクト1内におけるエラーマイクロホン6の収音部分から当該排気ダクト1の排出口1aに至り、この排出口1aにおいて反射して再度エラーマイクロホン6の収音部分に戻るまでの区間の音響伝達関数を、反射音路と呼び、これを符号Pで表すとする。この場合、上記二次音路Cは、次の数5で表される。
【0024】
【数5】
Figure 0004350917
【0025】
ここで、この二次音路Cの同定時に、エラーマイクロホン6から出力されるエラー信号Ek(ただし、Ekは、上記エラー信号ekで構成されるベクトルをフーリエ変換することにより周波数領域の値に変換したものである。)は、当該二次音路Cの同定処理に係る部分についてのみ言えば(即ち、上記残留雑音を検出して得られる成分を除けば)、次の数6で表される。
【0026】
【数6】
Figure 0004350917
【0027】
なお、この数6において、Mkは、疑似信号mkで構成されるベクトルをフーリエ変換することにより周波数領域の値に変換したものである。
【0028】
そして、この数6における二次音路Cに、上記数5を代入すると、当該数6は、次の数7に示すようになる。
【0029】
【数7】
Figure 0004350917
【0030】
この数7からも明らかなように、二次音路Cの同定時におけるエラー信号Ekは、上記直接音路Caを介して上記同定音を直接的に検出して得た成分[Ca・Mk]と、この直接的な成分[Ca・Mk]に上記反射音路Pを掛け合わせた成分[P・Ca・Mk]と、の和になる。即ち、当該二次音路Cの同定時において、上記反射音路Pが影響することが判る。
【0031】
なお、上記数5で表される二次音路Cを同定して得られる伝達関数Chは、次の数8で表される。
【0032】
【数8】
Figure 0004350917
【0033】
この数8において、Cahは、上記直接音路Caの同定値(推定値)であり、Phは、反射音路Pの同定値(推定値)である。
【0034】
一方、図14において、排気ダクト1内におけるリファレンスマイクロホン2の収音部分からエラーマイクロホン6の収音部分までの区間の音響伝達関数(即ち、図12における一次音路P)を、主一次音路と呼び、これを符号Pで表すとする。この場合、当該消音装置の消音動作において、上記合成伝達関数[C×Wk]による相補の対象となる一次音路Pは、次の数9で表される。
【0035】
【数9】
Figure 0004350917
【0036】
そして、この消音動作時に、エラーマイクロホン6から出力されるエラー信号Ek(ただし、上記同定音を検出して得られる成分を除く。)は、次の数10で表される。
【0037】
【数10】
Figure 0004350917
【0038】
なお、この数10において、Xkは、騒音信号xkで構成されるベクトルをフーリエ変換することにより周波数領域の値に変換したものである。
【0039】
そして、この数10における一次音路Pに、上記数9を代入すると共に、二次音路Cに、数5を代入すると、当該数10は、次の数11に示すようになる。
【0040】
【数11】
Figure 0004350917
【0041】
この数11からも明らかなように、当該消音動作時におけるエラー信号Ekは、上記残留雑音を直接的に検出して得た成分[(P+Ca・Wk)Xk]と、この直接的な成分[(P+Ca・Wk)Xk]に上記反射音路Pを掛け合わせた成分[P(P+Ca・Wk)Xk]と、の和になる。即ち、当該消音動作においても、上記反射音路Pが影響することが判る。
【0042】
ところで、上記図14(図12)に示す制御系のように、騒音信号Xkを入力とし、エラー信号Ekを出力とする制御系においては、当該制御系全体の伝達関数Hkの経時的な変化は、次の数12で表されることが知られている。
【0043】
【数12】
Figure 0004350917
【0044】
この数12において、Chは、FIRフィルタ7の伝達関数(二次音路Cを同定して得た同定伝達関数)Chの複素共役である。また、GRは、所謂公比(Geometric Ratio)であって、即ち、LMS演算部4による適応フィルタ3の伝達関数Wkの適応動作を1回実行すると、当該制御系全体の伝達関数Hkが、[1−2μw・|Xk|・C・Ch]倍されることを示す。なお、当該公比GRは、周波数領域の関数であって、即ち各周波数毎にそれぞれ異なる値となる。
【0045】
上記数12によれば、公比GRの値によって、当該消音装置の制御系が(各周波数毎に)発散傾向にあるか否かを判断することができる。具体的には、当該公比GRの絶対値が1よりも小さい(|GR|<1)場合には、制御系は収束する傾向にあり、安定した消音効果を期待できる。一方、当該公比GRの絶対値が1よりも大きい(|GR|>1)場合には、制御系は発散する傾向にあり、場合によっては制御不能となる可能性がある。公比GRの絶対値が1(|GR|=1)の場合には、制御系は収束傾向にも発散傾向にもなく、よって消音効果は向上することはなく悪化することもない。
【0046】
上記公比GRの絶対値が1よりも小さいか否かは、当該公比GRを構成する上記二次音路Cとこれを同定して得た同定伝達関数Chとの位相誤差θ(=∠C・Ch;ここで、*は、複素共役を表す。)によって判断できる。具体的には、当該位相誤差θの絶対値がπ/2より小さい(|θ|<π/2)とき、上記公比GRの絶対値は1より小さくなる。一方、当該位相誤差θの絶対値がπ/2以上(|θ|≧π/2)のとき、上記公比GRの絶対値は1以上となる。従って、この位相誤差θの絶対値がπ/2よりも小さいか否かによって、制御系が収束傾向にあるかそうでないかを判断できる。ただし、この位相誤差θによる判断は、ステップ・サイズ・パラメータμwの大きさが1に比べて十分小さく設定されている場合にのみ有効である。
【0047】
ここで、上記公比GRを構成する二次音路Cとこれを同定して得た伝達関数Chとに、それぞれ上記数5と数8とを代入すると、当該公比GRは、次の数13に示すようになる。
【0048】
【数13】
Figure 0004350917
【0049】
この数13からも明らかなように、公比GRは、反射音路Pと、この反射音路Pの推定値Phと、の影響を受けることが判る。従って、例えば、二次音路Cを構成する直接音路Caと反射音路Pとのうち、直接音路Caについてはその推定値Cahと略等価であり、即ち当該直接音路Caとその推定値Cahとの位相差∠CaCahの絶対値がπ/2より小さい(|∠CaCah|<π/2)、としても、上記反射音路Pとその推定値Phとが乖離している場合には、これらの大きさ|P|、|Ph|及び位相∠P、∠Phの如何によっては、上記位相誤差θの絶対値がπ/2よりも大きくなって(即ち|GR|>1となって)、制御系が発散する可能性がある。
【0050】
このことをより詳細に説明するために、例えば、今、図14の構成において、スピーカ5の音波放射面からエラーマイクロホン6の収音部分まで間の距離Laが比較的に短く、この距離Laに比べて、エラーマイクロホン6の収音部分から排気ダクト1の排出口1aまでの間を往復する距離Lの方が比較的に長い(La<L)とする。これにより、例えば排気ダクト1内の温度変化や気流の変化等、当該排気ダクト1内の音響伝搬特性を変化させる要因となる環境変化が生じたとき、直接音路Caは然程変化しないものの(Ca≒Cah)、反射音路Pについては大きく変化する(P≠Ph)とする。この場合、上記排気ダクト1内の環境変化により実際の二次音路Cが変化して、FIRフィルタ7の伝達関数Chとの間に差異が生じたとしても、その差異の殆どは、上記反射音路Pとその推定値Phとの差異によるものと見なすことができる。従って、上記位相差θは、次の数14のように表すことができる。
【0051】
【数14】
Figure 0004350917
【0052】
この数14の関係を複素平面で表した一例を、図15に示す。同図に示すように、上記反射音路Pとその推定値Phとは、それぞれ実軸(Re)上における1を中心とする円の円周上を回転する。この円の半径は、反射音路Pと推定値Phとの各大きさ(絶対値)|P|、|Ph|を表し、これらは1よりも小さい。排気ダクト1の排出口1aにおける音響反射率の大きさが1よりも小さく、即ち上記同定音が当該排出口1aで全て反射することはないからである。なお、ここでは、当該図面を簡素化して見易くするために、上記反射音路Pと推定値Phとの各大きさ(上記円の半径)|P|、|Ph|を、それぞれ等しくしてある。
【0053】
この図15によれば、上記反射音路Pとその推定値Phとの各大きさ|P|、|Ph|及び各位相∠P、∠Phの如何によっては、上記位相誤差θの絶対値(≒|∠{(1+P)(1+Ph)}|)がπ/2よりも大きくなることが、予想される。例えば、反射音路Pと推定値Phとの各大きさ|P|、|Ph|が大きく、かつ、それぞれの位相∠P、∠Phの差異により上記[1+P]と[1+Ph]との各偏角∠(1+P)、∠(1+Ph)が実軸を境に略対称的に大きな値を取るような場合等、がこれに当たる。そして、このように位相誤差θの絶対値がπ/2よりも大きくなると、上記のように(或る周波数において)制御系が発散し、(当該或る周波数において)制御不能となる可能性がある。
【0054】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、本発明が解決しようとする問題点は、上記のようにエラーマイクロホン6の配置位置と排気ダクト1の排出口1aとの間(L/2)が開いている場合に、これら両者間に形成される反射音路Pの影響により、或る特定の周波数において制御系が発散して、制御不能となる可能性がある、という点である。そして、この問題は、上記反射音路Pに係る距離Lが長いほど、顕著になる。
【0055】
そこで、本発明は、上記のような反射音路Pが存在しても、少なくともこの反射音路Pの影響により制御系が発散するのを防止できる能動型雑音除去装置を提供することを目的とする
【0056】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の能動型雑音除去装置は、
第1の伝達関数を有する伝送路に入力される被制御信号を検出する第1の検出手段と、
上記伝送路の途中において当該伝送路内を伝搬する信号を検出する第2の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を処理し、この処理して得た制御用信号を、上記伝送路内における上記第1及び第2の各検出手段間の或る地点に放出する適応フィルタ手段と、
上記第1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、上記適応フィルタ手段の伝達関数と、この適応フィルタ手段の出力側から上記伝送路を経て上記第2の検出手段の検出部分までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
疑似信号を生成して上記第2の伝達関数に入力する疑似信号生成手段と、
上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記第2の伝達関数を補償する上記ディジタルフィルタ手段を含み、該ディジタルフィルタ手段に上記疑似信号を入力して、このディジタルフィルタ手段により当該疑似信号を処理した後の信号とそのときの上記第2の検出手段の出力信号とが近似する状態に、上記疑似信号と上記第2の検出手段の出力信号とに基づいてディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御することにより上記第2の伝達関数を同定する同定フィルタ制御手段と、を具備する。
そして、この同定フィルタ制御手段によって同定して得た同定伝達関数のうち、上記疑似信号が上記第2の検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射して折り返し再度該第2の検出手段により検出されるまでの反射経路に係る部分、を排除する反射経路関数排除手段と、
この反射経路関数排除手段によって上記同定伝達関数から上記反射経路に係る部分を排除した後の伝達関数を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する伝達関数設定手段と、
を具備するものである。
【0057】
なお、上記ディジタルフィルタ手段は、例えばDSP(ディジタル信号処理装置)等によって構成でき、同定フィルタ制御手段及び反射経路関数排除手段は、例えばCPU(中央演算処理装置)等によって構成できる。また、上記適応フィルタ手段は、例えばDSP等によって構成でき、適応フィルタ制御手段及び伝達関数設定手段は、例えばCPU等によって構成できる。さらに、上記伝送路内を伝搬する信号が例えば音波である場合には、上記第1及び第2の各検出手段は、マイクロホンや音圧センサ等により構成できる。
【0058】
即ち、本発明の能動型雑音除去装置によれば、第1の検出手段が、伝送路に入力される被制御信号、即ち当該能動型雑音除去装置が除去対象とする信号、を検出する。そして、第2の検出手段が、伝送路の途中(上記被制御信号の伝搬方向で言うところの上記第1の検出手段よりも下流側)において、当該伝送路内を伝搬する信号を検出する。更に、伝送路の上記第1の検出手段が設けられている位置と第2の検出手段が設けられている位置との間の或る地点には、適応フィルタ手段によって上記第1の検出手段の出力信号を処理して得た制御用信号が、放出される。なお、この適応フィルタ手段の出力側から伝送路の下流側の一部を経て第2の検出手段の検出部分までの間には、第2の伝達関数が存在する。そして、適応フィルタ制御手段が、第1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と第2の検出手段の出力信号とに応じて、適応フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補するように、適応フィルタ手段の伝達関数を、例えばLMSアルゴリズム等の演算式に基づいて制御する。このように、適応フィルタ手段の伝達関数と第2の伝達関数との合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補することによって初めて、適応フィルタ手段から伝送路内に放出される上記制御用信号により、当該伝送路内を伝搬している上記被制御信号を、打ち消すことができる。
【0059】
ただし、上記のように適応フィルタ手段の伝達関数を適応制御することによって、当該適応フィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成伝達関数を上記第1の伝達関数と相補にするには、当該適応制御において、上記第2の伝達関数を何らかの方法により同定してこれを補償する必要がある。そこで、本発明では、上記第1の検出手段と適応フィルタ制御手段との間に、上記第2の伝達関数を補償するための上記ディジタルフィルタ手段を設ける。即ち、本発明の能動型雑音除去装置全体の制御系を、上述したfiltered-x LMSアルゴリズム構成とするのである。そして、疑似信号生成手段が生成する疑似信号を用いて、当該ディジタルフィルタ手段により上記第2の伝達関数を補償すべく伝達関数を同定する。この第2の伝達関数の同定は、上記ディジタルフィルタ手段を備えた同定フィルタ制御手段が行う。具体的には、ディジタルフィルタ手段と第2の伝達関数とに、それぞれ上記疑似信号を入力する。そして、この状態で、当該ディジタルフィルタ手段により疑似信号を処理した後の信号と、そのときの上記第2の検出手段の出力信号とが近似するように、上記疑似信号と第2の検出手段の出力信号とに基づいてディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する。これにより、ディジタルフィルタ手段の伝達関数と第2の伝達関数とが略等価となって、当該第2の伝達関数の同定が実現される。
【0060】
しかし、この第2の伝達関数の同定時においては、上記第2の検出手段は、上記疑似信号生成手段から当該第2の伝達関数を経て直接的に検出する疑似信号の他に、この疑似信号の一部が伝送路の出力側端部において反射して当該伝送路内に向かって折り返し再度第2の検出手段側に戻ってくる所謂反射成分をも、同時に検出する。従って、上記同定フィルタ制御手段によって同定して得た伝達関数には、当該反射成分の伝搬経路である所謂反射経路、に係る伝達関数も含まれる。よって、この反射経路を含む伝達関数を上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定し、この状態で上記適応フィルタ手段の伝達関数を適応制御(所謂適応雑音除去動作を実行)した場合、当該反射経路の影響により、制御系が発散して、制御不能となる可能性がある。
【0061】
そこで、本発明の能動型雑音除去装置においては、上記同定フィルタ制御手段により上記第2の伝達関数を同定して得た同定伝達関数のうち、上記反射経路に係る部分を排除する反射経路関数排除手段を、設ける。そして、この反射経路関数排除手段によって上記同定伝達関数から上記反射経路に係る部分を排除した後の伝達関数を、上記第2の伝達関数のうち、上記適応フィルタの出力側から第2の検出手段の検出部分までに至る所謂直接的な部分の伝達関数とする。そして、伝達関数設定手段が、当該反射経路に係る部分を排除した後の直接的な伝達関数を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する。このようにすれば、少なくとも上記反射経路の影響により、当該能動型雑音除去装置の制御系が発散するのを防止できる。このことは、後述するように、模型を用いた実測実験、及び計算機によるシミュレーション実験によっても、確認できた。
【0062】
なお、本発明において、上記反射経路関数排除手段は、例えば次のような構成により実現できる。
即ち、上記同定伝達関数が、例えば周波数領域の関数である場合には、これを逆フーリエ変換する等の所定の変換処理を施すことにより、時間領域の関数で表す手段、を設ける。
そして、この時間領域で表される同定伝達関数において、上記反射経路に係る部分を特定する反射経路特定手段と、
上記時間領域で表される同定伝達関数を構成するフィルタタップのうち、少なくとも上記反射経路特定手段によって特定して得た上記反射経路に係る部分のフィルタタップのフィルタ係数を概略零に置換し、または、少なくとも上記反射経路に係る部分以降のフィルタタップを削除する、換言すれば当該フィルタタップのタップ長を上記反射経路に係る部分の直前までとする、ことにより、上記同定伝達関数から上記反射経路に係る部分を排除する排除実行手段と、
によって構成できる。
【0063】
更に、上記反射経路特定手段については、例えば次のように構成してもよい。即ち、上記時間領域で表される同定伝達関数、所謂インパルス応答特性には、いくつかのピーク成分が含まれる。これら各ピーク成分のうち、最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分は、上記疑似信号生成手段から伝送路を経て直接的に検出手段に入力される疑似信号に対応するものである。そして、2番目に大きいピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分以降が、上記伝送路の出力側端部による疑似信号の反射成分に対応するものである、と考えられる。そこで、上記インパルス応答特性において、当該2番目に大きいピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が存在する部分以降の部分を、上記反射経路に係る部分として特定するよう、当該反射経路特定手段を構成してもよい。或いは、インパルス応答特性において、上記2番目に大きいピーク成分が存在する部分を含む所定区間、例えば当該2番目に大きいピーク成分が存在する部分以降の部分でインパルス応答特性の絶対値が比較的に大きい区間等を、上記反射経路に係る部分として特定してもよい。
【0064】
上記反射経路特定手段は、次のようにも構成できる。即ち、上記時間領域で表される同定伝達関数において、上記直接的成分に対応する最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点から、上記反射成分に対応する2番目に大きいピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点まで、の時間的な間隔は、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射して折り返し再度上記検出手段の検出部分にまで到達するのに要する時間に、略相当する。そこで、上記最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点を基準とし、この基準時点から、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射して折り返し再度上記検出手段の検出部分にまで到達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分以降の部分、または当該時点に略対応する部分を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定するよう、当該反射経路特定手段を構成してもよい。ここで、上記検出手段の検出部分を通過した疑似信号の一部が、伝送路の出力側端部で反射して再度検出手段の検出部分にまで到達するのに要する時間は、上記反射経路の距離とこの反射経路における疑似信号の伝搬速度(例えば平均速度)との関係から予測できる。具体的には、上記検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部までの距離の略2倍(即ち往復分)の距離を、この区間における疑似信号の伝搬速度(例えば平均速度)で除算することにより、当該時間を導出できる。
【0065】
また、反射経路特定手段は、次のようにも構成できる。即ち、まず、上記時間領域で表される同定伝達関数において、上記基準時点から、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射して折り返し再度上記検出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分を特定する。これにより、上記反射経路に係る部分を、大まかに特定し、所謂当たりを付ける。そして、この当たりを付けた部分を含む或る区間内、例えば当該当たりを付けた部分の前後付近において、ピーク・トゥー・ピーク値が最も大きいピーク成分を探し出し、この探し出したピーク成分の存在する部分以降の部分、または当該探し出したピーク成分の存在する部分を含む所定区間を、最終的に上記反射経路に係る部分として特定するよう、構成してもよい。
【0066】
なお、上記排除実行手段は、所定の窓関数により、構成できる。この所定の窓関数としては、例えば一般に知られている矩形窓や指数窓、或いはガウス(Gauss)窓、ハニング(Hanning)窓、ハミング(Hamming)窓、二乗余弦(Raised cosine)窓、ブラックマン(Blackman)窓等の、各種窓関数がある。これら任意の窓関数を用いることにより、上記同定伝達関数を所定の形態に処理して、上記反射経路に係る部分を排除することができる。
【0067】
【発明の実施の形態】
本発明を例えば上記能動型消音装置に応用する場合の一実施の形態について、各図を参照しながら説明する。図1に、本実施の形態の概略構成を示す。同図に示すように、本実施の形態は、上述した図14に示す従来の消音装置において、LMS演算部9による演算結果に応じてFIRフィルタ7の伝達関数Chを制御するタップ制御部11を設けたものである。なお、これ以外の構成については、上記図14に示す従来技術と同様であるので、これら同等な部分については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0068】
即ち、まず、上述した従来技術と同様の手順により二次音路Cを同定する。そして、この二次音路Cの同定後、即ち現実の二次音路Cとこれを同定して得たFIRフィルタ7の伝達関数Chとが略等価な状態において、当該同定伝達関数Chに係る情報を、LMS演算部9からタップ制御部11に与える。これにより、タップ制御部11は、二次音路Cの推定値である同定伝達関数Chを認識する。タップ制御部11は、この同定伝達関数Chを、例えば逆フーリエ変換することにより、時間領域の関数に変換して、例えば図2に示すようなインパルス応答特性を得る。なお、タップ制御部11が、LMS演算部9から上記同定伝達関数Chを直接時間領域で取り込むことができる場合には、これをそのまま利用してもよい。
【0069】
同図に示すように、上記二次音路Cを同定して得た伝達関数Chのインパルス応答特性は、概ね2つの比較的に大きいピーク成分20、30を有する。これら各ピーク成分20、30は、それぞれ時間間隔Tを隔てて現れる。このうち、先に現れるピーク成分20は、二次音路Cの同定時にスピーカ5から放出される同定音(疑似信号mk)が、上述した直接音路Caを経て直接的にエラーマイクロホン6に入力される、所謂直接的成分、に相当する。一方、このピーク成分20よりも遅れて現れるピーク成分30は、上記エラーマイクロホン6の収音部分を通過した同定音の一部が、排気ダクト1の排出口1aで反射して折り返し再度エラーマイクロホン6に入力される、所謂上述した反射成分、に対応する。
【0070】
なお、上記各ピーク成分20、30間の時間的間隔Tは、上記同定音が、エラーマイクロホン6の収音部分を通過してから排気ダクト1の排出口1aで反射して折り返し再度エラーマイクロホン6の収音部分にまで到達するのに要する時間、に相当する。また、各ピーク成分20、30の各ピーク・トゥー・ピークの絶対値Ua、Uを比較すると、直接的成分に対応するピーク成分20の絶対値Uaの方が、反射成分に対応するピーク成分30の絶対値Uよりも大きい(Ua>U)。これは、上記排気ダクト1の排出口1aにおける音響反射率の大きさが1よりも小さく、即ち当該排出口1aに到達した同定音がここで全て反射することはないからである。
【0071】
タップ制御部11は、上記インパルス応答特性のうち、上述した反射音路Pに係る部分を、特定する。この特定は、例えば当該インパルス応答特性に含まれる各ピーク成分のうち、上記ピーク・トゥー・ピーク値が2番目に大きいピーク成分30を捉え、このピーク成分30を含むそれ以降のインパルス応答特性を、反射音路Pに係る部分と見なすことで、実現できる。
【0072】
また、これに代えて、例えば上記インパルス応答特性のうち、上記直接的成分に対応するピーク成分20が現れる時点tを基準とし、この基準時点tから上記時間間隔Tを隔てた時点t、に対応する部分以降の部分を、上記反射音路Pに係る部分として特定してもよい。この時間間隔Tは、例えば当該反射音路Pの距離Lを、この反射音路P内における同定音の平均伝搬速度で除算することにより、導出できる。
【0073】
更に、上記反射音路Pに係る部分は、次の方法よっても特定できる。即ち、まず、上記インパルス応答特性において、上記基準時点tから上記時間間隔Tを隔てた時点t、に対応する部分を、概略的に特定する。これにより、上記反射音路Pに係る部分を、大まかに特定し、所謂当たりを付ける。そして、この当たりを付けた部分の例えば前後付近において、最もピーク・トゥー・ピーク値の大きい部分(即ち上記ピーク成分30)を探し出し、この最も大きい部分以降の部分を、最終的に上記反射音路Pに係る部分として特定してもよい。このように、上記反射音路Pに係る部分を特定する方法は、いろいろあるが、これら以外の方法により、当該反射音路Pに係る部分を特定してもよい。
【0074】
このようにインパルス応答特性のうち上記反射音路Pに係る部分を特定した後、タップ制御部11は、この特定して得た反射音路Pに係る部分を排除する。具体的には、例えば、当該インパルス応答特性のうち、上記ピーク成分30が現れる時点t以降の部分、または当該時点tよりも少し前の時点taからそれ以降の部分、について、これらの部分に対応するフィルタタップのフィルタ係数chk(i)を、全て零(0)に置換する。この置換は、例えば一般に知られている矩形窓や指数窓等の窓関数で上記インパルス応答特性を処理することにより、実現できる。また、当該窓関数として、例えばガウス窓やハニング窓等の所定の特性を有する窓を用いれば、上記インパルス応答特性を所定の形態に加工することもできる。
【0075】
上記のように時点tまたはta以降の部分に対応するフィルタタップのフィルタ係数chk(i)を全て零に置換するのではなく、上記ピーク成分30を含む所定区間のみ、例えば上記時点ta以降の部分でインパルス応答特性の絶対値Uが比較的に大きく、換言すれば反射音路Pによる影響が比較的に大きいと思われる区間Tpのみ、に対応するフィルタタップのフィルタ係数chk(i)を、零(0)に置換するようにしてもよい。このようにすれば、上記時点tまたはta以降の部分に対応するフィルタタップのフィルタ係数chk(i)を全て零に置換する場合に比べて、当該置換処理に係る時間を短縮できると共に、タップ制御部11の負担を軽減できる。これは、特に上記フィルタタップのタップ長が長いほど、有効である。
【0076】
また、上記のようにフィルタ係数chk(i)を零に置換するのではなく、上記反射音路Pに係る部分に対応するフィルタタップを削除することにより、当該反射音路Pに係る部分を排除してもよい。具体的には、上記時点tまたはta以降の部分に対応するフィルタタップを全て削除して、このフィルタタップのタップ長を上記時点tまたはtaまでの長さとする。
【0077】
そして、上記のように反射音路Pに係る部分を排除した後、タップ制御部11は、当該反射音路Pに係る部分を排除して得た時間領域の伝達関数を、FIRフィルタ7に設定し直す。これにより、FIRフィルタ7には、上記二次音路Cを同定して得た伝達関数Chのうち、反射音路Pに係る部分(即ち上述したPh)を排除して、上述した直接音路Caに係る部分のみを同定して得たのと等価な伝達関数、所謂上述したCahが、設定される。なお、FIRフィルタ7に代えて、IIR(Infinite Impulse
Response:巡回)型のディジタルフィルタを用いてもよい。また、当該FIRフィルタ7の代わりに、周波数領域で処理を行うフィルタを用いてもよい。この場合、上記時間領域の伝達関数Cahを、例えばフーリエ変換する等、所定の変換処理を施すことにより、周波数領域の関数に変換した後、この周波数領域の関数を、上記FIRフィタ7の代わりに配置した周波数領域で処理を行うフィルタに、設定する。
【0078】
なお、上記反射音路Pに係る部分Phを排除する方法として、例えば上記FIRフィルタ7のタップ長を制限する方法を採用する場合には、二次音路Cを同定する度に、当該FIRフィルタ7のタップ長を元のタップ長に戻す。そして、このように元のタップ長に戻した状態で、二次音路Cを同定し直し、この同定後に、上記反射音路Pに係る部分Phを排除すべくFIRフィルタ7のタップ長を制限するようにしてもよい。このようにすれば、二次音路Cを同定する毎に反射音路Pが変化しても、この変化に十分に対応でき、正確な同定を実現できる。
【0079】
上記のように、本実施の形態においては、本来、上記反射音路Pをも含む二次音路C全体を補償するためのFIRフィルタ7に対して、直接音路Caのみを同定して得たのと等価な伝達関数Cahを設定する。即ち、上記反射音路Pに係る部分については、当該FIRフィルタ7による補償の対象外となる。従って、例えば上記FIRフィルタ7により上記反射音路Pをも含む二次音路C全体を補償する場合に比べて、当該消音装置による消音効果が低下する可能性が有り得る。しかし、本実施の形態によれば、上記反射音路Pが例えば排気ダクト1内の温度変化等の環境変化により大きく変化しても、元々当該反射音路Pを補償する手段(即ち上述したPh)が存在しないので、これら両者P及びPhが乖離することはない。従って、FIRフィルタ7に設定されている伝達関数Cahが上記直接音路Caと或る程度近似している状態にある限り、少なくとも上記反射音路Pの影響により、消音装置の制御系が発散することはなく、安定した消音効果を期待できる。このことについて、以下、数式等を交えてより論理的に説明する。
【0080】
即ち、本実施の形態においては、上記反射音路Pの推定値PhをPh=0とするので、上述した数14で表される位相誤差θは、次の数15で表される。
【0081】
【数15】
Figure 0004350917
【0082】
この数15の関係を複素平面上に表した一例を、図3に示す。同図に示すように、上記反射音路Pは、上述した図15と同様、実軸上における1を中心としかつ半径が1よりも小さい円の円周上を回転する。ここで、当該反射音路Pの推定値Phについては、上記のようにPh=0であるので、数15からも明らかなように、上記位相誤差θは、当該数15における[1+P]の偏角∠(1+P)に略等しい(θ≒∠(1+P))。そして、上記のように当該反射音路Pの絶対値|P|が1よりも小さいこと、換言すれば当該反射音路P(上記円)が虚軸(Im)よりも正実数側(即ち第1象限または第4象限)に位置すること、を鑑みると、上記位相誤差θの絶対値は、必ずπ/2よりも小さい値(|θ|<π/2)となる。このように、本実施の形態によれば、上記位相誤差θは、常に「|θ|<π/2」という条件を満足するので、少なくとも当該消音装置の制御系が発散するのを防止でき、常に安定した消音効果を期待できる。
【0083】
なお、上記は、飽くまでFIRフィルタ7に設定されている伝達関数Cahが現実の直接音路Caと略等価(Cah≒Ca)である場合についての説明である。従って、実際の上記位相誤差θには、次の数16に示すように、上記FIRフィルタ7の伝達関数Cahと現実の直接音路Caとの位相差も含まれる。
【0084】
【数16】
Figure 0004350917
【0085】
ただし、上述したように、例えばスピーカ5の音波放射面からエラーマイクロホン6の収音部分まで間の距離Laが比較的に短い場合には、例えば排気ダクト1内に温度変化等が生じたとしても、消音対象としている比較的に低い周波数に関して、上記直接音路Caは然程変化しないものと考えられる。従って、上記数16で表される位相誤差θの絶対値は、「|θ|<π/2」という条件を十分に満足し、安定した消音効果が期待できると考えられる。
【0086】
なお、本実施の形態において、リファレンスマイクロホン1が、特許請求の範囲に記載の第1の検出手段に対応し、エラーマイクロホン6が、特許請求の範囲に記載の検出手段及び第2の検出手段に対応する。そして、適応フィルタ3が、特許請求の範囲に記載の適応フィルタ手段に対応し、LMS演算部4が、特許請求の範囲に記載の適応フィルタ制御手段に対応する。そして、排気音が、特許請求の範囲に記載の被制御信号に対応し、制御音が、特許請求の範囲に記載の制御用信号に対応する。また、一次音路P、二次音路C及び反射音路Pが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の第1の伝達関数、第2の伝達関数及び反射経路に対応する。
【0087】
更に、疑似信号発生器8が、特許請求の範囲に記載の疑似信号生成手段に対応する。そして、FIRフィルタ7が、特許請求の範囲に記載のディジタルフィルタ手段に対応し、このFIRフィルタ7、LMS演算部9及び比較器10から成る部分が、特許請求の範囲に記載の同定フィルタ制御手段に対応する。そして、タップ制御部11が、特許請求の範囲に記載の反射経路関数排除手段及び伝達関数設定手段に対応する。
【0088】
なお、本実施の形態における適応フィルタ3及びFIRフィルタ7は、例えばDSPにより構成できる。そして、これらを制御する各LMS演算部4、9は、例えばCPUにより構成できる。なお、これら各LMS演算部4、9により各フィルタ3、7の各伝達関数Wk、Chkを制御するのに、LMSアルゴリズムを用いたが、これ以外の適応制御アルゴリズムを用いてもよい。特に、FIRフィルタ7の伝達関数Chkについては、一般に知られているM系列信号を用いた相関法により更新制御を行えば、極めて簡単な構成でかつ高速に、当該更新制御(即ち、二次音路Cを同定)を実現できる。また、本実施の形態において新たに追加したタップ制御部11についても、CPUにより構成できる。従って、本実施の形態において当該フィルタ制御手段11を追加しても、消音装置全体が大型化したり、極端に高コスト化したりすることはない。このフィルタ制御手段11は、LMS演算部9に内蔵することもできる。
【0089】
更に、本実施の形態では、本発明を能動型消音装置に応用する場合について説明したが、これに限らない。例えば、一般に知られているエコーキャンセラ等の他の雑音除去装置についても、本発明を応用できる。更に、上記二次音路C(直接音路Ca)等のような任意の信号伝送路の伝達関数を同定することを目的とする装置にも、本発明を応用できる。
【0090】
【実施例】
本実施の形態の実施例として、本実施の形態による効果を立証するための実験を2つ行なったので、以下に説明する。
【0091】
[第1の実験について]
第1の実験として、「本実施の形態によれば、反射音路Pが変化しても、少なくとも消音装置の制御系が発散することはない。」、ということを立証するための実験を行なった。なお、当該制御系が発散するか否かは、上述した公比GRを評価することにより判断する。図4に、この第1の実験において実際に使用した模型の概略構成を示す。
【0092】
同図に示すように、この模型は、上記図1に示す消音装置を模擬したもので、排気ダクト1として、両端1a、1cが開口した円筒状の塩化ビニルパイプを、用いたものである。そして、このビニルダクト1の一端(同図における左側端部)1cに、当該一端1cからビニルダクト1内に音波を放出する状態に騒音源スピーカ50を設け、このスピーカ50に対して、信号発生装置51から騒音信号xkを供給し、これにより、当該スピーカ50から放出される音波を上記排気音として代用する。また、本第1の実験では、信号発生装置51の発生する騒音信号xkを、図1におけるリファレンスマイクロホン2の出力信号としても代用し、これをコントローラ52に供給する。
【0093】
コントローラ52は、図1における各フィルタ3、7、各LMS演算部4、9、疑似信号発生器8、加算器10及びタップ制御部11から成る部分を、内蔵したもので、これに供給される上記騒音信号xkは、当該コントローラ52内に内蔵されている(図4には示さない)各フィルタ3、7に入力される。コントローラ52(適応フィルタ3)は、この騒音信号xkに対して上述した数1に示す畳み込み演算を施し、その処理後の信号ykを、二次音源スピーカ5に入力する。なお、本第1の実験においては、スピーカ5をビニルダクト1に対して直接結合させるのではなく、当該ビニルダクト1から分岐した状態の所謂枝管53を介して、これらスピーカ5とビニルダクト1とを結合している。この枝管53もまた、ビニルダクト1と同様の塩化ビニルパイプ製である。
【0094】
そして、ビニルダクト1内における上記枝管53との結合部分(スピーカ5の放出する制御音とビニルダクト1内を伝搬する騒音との干渉点)と他端(同図における右側端部)1aとの間であって、当該ビニルダクト1と枝管53との結合部分寄りの位置に、エラーマイクロホン6を設ける。そして、このエラーマイクロホン6の出力信号ekを、上記コントローラ52に供給し、詳しくは当該コントローラ52に内蔵されている(図4には示さない)LMS演算部4と加算器10とに入力する。
【0095】
なお、上記ビニルダクト1を構成する塩化ビニルパイプは、その内径が71mmのものであって、当該ビニルダクト1の全長Lは、L=5511mmである。そして、このビニルダクト1の一端(騒音源スピーカ50の音波放射面)1cから上記枝管53との結合部分までの距離、即ち主一次音路Pの音路長Lは、L=2270mmであり、当該ビニルダクト1と枝管53との結合部分からエラーマイクロホン6の収音部分までの距離Laは、La=177mmである。更に、当該エラーマイクロホン6の収音部分からビニルダクト1の他端1aまでの距離、即ち反射音路Pの略1/2の音路長L/2は、L/2=3064mmである。そして、枝管53長さ寸法Lsは、Ls=148mmである。この枝管53の長さ寸法Lsと、上記ビニルダクト1と枝管53との結合部分からエラーマイクロホン6の収音部分までの距離Laとの和(Ls+La)が、概ね直接音路Caの音路長に対応する。
【0096】
上記構成において、まず、二次音路Cを十分に同定する。そして、この同定終了後、ビニルダクト1の上記反射音路Pに係る音路長Lを、L/2=3064mmからL/2=2043mmに変更し、これにより、例えばビニルダクト1内の環境変化により当該反射音路P(当該区間Lにおける音響的距離)が変化した状態を、シミュレートする。なお、直接音路Ca(即ち、音路長[Ls+La])については、不変とする。
【0097】
上記状態においては、現実の反射音路Pに係る音路長LがL/2=2043mmであるにも係らず、上記FIRフィルタ7には、当該反射音路Pに係る音路長LがL/2=3064mmであるときの同定伝達関数Ch(=Cah(1+Ph))が、設定されている状態にある。即ち、現実の二次音路Cと、これを補償するためのFIRフィルタ7の伝達関数Chとでは、それぞれを構成する直接音路Ca、Cahに係る部分については互いに等価(Ca=Cah)であるものの、上記反射音路P、Phに係る部分ついては乖離している状態(P≠Ph)にある。この状態で、上述した数12に基づいて、公比GRの絶対値を導出する。その結果を、図5(a)に示す。なお、この導出に際しては、数12におけるステップ・サイズ・パラメータμwをμw=0.005とし、疑似信号|Xk|を|Xk|=1として、当該導出を行った。
【0098】
この図5(a)から明らかなように、現実の反射音路Pとその推定値Phとが乖離している場合には、所々の周波数(消音対象周波数)fにおいて、例えばf=80Hz、405Hz、440Hz、490Hz及び595Hzにおいて、公比GRの絶対値が1を超える(|GR|>1)ことが判る。従って、これらの周波数fにおいては、制御系が発散する可能性があることが予想される。
【0099】
次に、上記反射音路Pに係る音路長LがL/2=3064mmであるときに二次音路Cを同定して得た同定伝達関数Chから、当該反射音路Pに係る部分Phを排除し、これによって、直接音路Caのみを同定したのと略等価な伝達関数Cahを求める。なお、上記反射音路Pに係る部分Phの排除は、例えば上述した矩形窓により、FIRフィルタ7を構成する各タップのうち、92タップ目(上述した時間taに換算するとta=約15ms:サンプリング周波数fs=6133Hz)以降のタップに係る各フィルタ係数chk(i)を、全て零に置換することによって、実現する。そして、この求めて得た伝達関数Cahを、FIRフィルタ7に設定し、この状態で、上記数12に基づいて、公比GRの絶対値を導出する。その結果を、図5(b)に示す。ここでも、ステップ・サイズ・パラメータμwをμw=0.005とし、疑似信号|Xk|を|Xk|=1として、上記公比|GR|の絶対値を導出した。
【0100】
この図5(b)に示すように、上記同定伝達関数Chから反射音路Pに係る部分Phを排除して、直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場合には、上記公比GRの絶対値が1を超える周波数fは存在しない、という結果が得られた。従って、いずれの周波数fにおいても、制御系は発散せず、安定した消音効果を期待できる。
【0101】
ただし、上記図5(a)及び図5(b)に表示されている全周波数帯域にわたって、上記公比GRの絶対値を全体的に観察すると、その平均値は、図5(a)の場合の方が図5(b)の場合よりも小さい、という感がある。これは、上述したように、本実施の形態のように直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場合には、制御系の発散を確実に防止することはできるものの、その反面、上記反射音路Pを補償すべく手段を備えていないので、当該反射音路Pを相殺することができず、その分、上記公比GRの絶対値が大きくなるものと考えられる。なお、この公比GRの絶対値が、大きいほど、制御系の収束速度は遅くなるが、当該公比GRの絶対値が1よりも小さい限り、確実に消音効果を得ることができる。
【0102】
本第1の実験では、上記図4に示す模型を使用するのと同様な条件を、計算機によりシミュレートすることも試みた。このシミュレーションにより上記公比GRの絶対値を求めた結果を、図6に示す。なお、同図において、(a)が、現実の反射音路Pと、FIRフィルタ7に設定されている当該反射音路Pの推定値Phと、が乖離している場合の、シミュレーション結果である。そして、同図(b)が、上記直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場合の、シミュレーション結果である。
【0103】
同図からも明らかなように、現実の反射音路Pとその推定値Phとが乖離している場合(同図(a)の場合)には、所々の周波数fにおいて公比GRの絶対値が1を超えてしまう。一方、上記直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場合には、同図(b)に示すように、いずれの周波数fにおいても上記公比GRの絶対値が1を超えることはない。そして、この公比GRの絶対値を全体的に見ると、同図(b)の場合に比べて、同図(a)の場合の方が小さい、という上記図4に示す模型を使用しての実験結果(即ち図5のグラフ)と略同様の結果が得られた。
【0104】
更に、図7及び図8に、それぞれ、現実の反射音路PとFIRフィルタ7に設定されている当該反射音路Pの推定値Phとが乖離している場合と、上記直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場合とでの、上記各公比GRの絶対値を、複素平面に表した図を示す。なお、各図において、(a)は、上記図4に示す模型を使用して実験を行った結果を示すデータ、(b)は、計算機によるシミュレーション結果のデータである。
【0105】
これら各図に示すように、上記図4に示す模型を使用しての実験においても、計算機によるシミュレーションにおいても、上記公比GRの絶対値は略同様な軌跡を示す。これは、まさしく、本実施の形態の技術的根拠、即ち上記二次音路Cを同定して得た伝達関数Chのうち、上記反射音路Pに係る部分Phを排除して直接音路Caのみに係る部分Cahを導出し、これを上記FIRフィルタ7に設定すれば、少なくとも消音装置の制御系が発散するのを防止できる、という理論、の正当性を証明するデータであると言える。なお、図7及び図8の各(a)と(b)とにおいて、それぞれの目盛りの値が異なるのは、上記模型による実験と、計算機によるシミュレーションとで、アンプゲイン等の諸条件が異なるためである。
【0106】
[第2の実験について]
第2の実験として、「本実施の形態によれば、反射音路Pが変化しても、常に安定した消音効果が得られる。」、ということを立証するための実験を行なった。なお、当該消音効果が得られるか否かは、エラーマイクロホン6の出力するエラー信号ekの信号レベルeを評価することにより判断する。
【0107】
即ち、まず、上記図1に示す消音装置と同様の制御系を、計算機によりシミュレートして形成する。ここで、排気ダクト1内におけるリファレンスマイクロホン2からエラーマイクロホン6までの間の主一次音路Pを、20タップ目に値1のインパルスを有する所謂単純遅延とする。一方、二次音路Cについては、図9(a)に示すように、二次音源スピーカ5から放出された同定音が、10タップ目に値1でエラーマイクロホン6の収音部分に到達した後、排気ダクト1の排出口1aにおいて反射して、最終的に20タップ目に値−0.9で再度エラーマイクロホン6の収音部分にまで戻ってくる、というモデルをシミュレートする。
【0108】
そして、FIRフィルタ7に、上記図9(a)と全く同様のインパルス応答特性を有する伝達関数Ch(=C)を設定し、この状態で、適応消音動作を計算機上で実行する。これとは別に、上記図9(a)に示すインパルス応答特性のうち、上記20タップ目に値−0.9で現れる反射成分(P)を排除したのと等価な伝達関数Cahを、FIRフィルタ7に設定し、この状態で、適応消音動作を計算機上で実行する、というシミュレーションを行なう。そして、これら各条件による消音効果を、エラー信号Ekのレベルに基づいて、評価する。
【0109】
なお、上記反射成分Pの排除は、上記20タップ目の値(−0.9)を零に置換する(換言すれば10タップ目以外の各タップの値を零とする)ことにより、実現する。また、上記適応消音動作に係る各パラメータの設定条件は、次の通りとする。即ち、適応フィルタ3のタップ長wtapを、wtap=128とし、FIRフィルタ7のタップ長ctapを、ctap=128とする。また、これら各フィルタ3、7により疑似信号xkを処理する際に、一時的に当該疑似信号xk(データ)を保存しておくための所謂入力バッファについても、そのバッファ長bをb=128とする。更に、ステップ・サイズ・パラメータμwについては、μw=0.1と比較的に大き目の値に設定する。このようにステップ・サイズ・パラメータμwの値を大き目の値に設定するのは、上記シミュレーション結果(消音効果)を短時間で確認するためである。そして、これらの条件の下、上述した数2に基づいて、厳密には当該数2を周波数領域で表した演算式に基づいて、適応フィルタ3のフィルタ係数Wkを更新する。
【0110】
図10に、上記フィルタ係数Wkの更新処理を4回実行したときのシミュレーション結果を示す。なお、同図において、(a)が、FIRフィルタ7に、上記図9(a)と全く同様のインパルス応答特性を有する伝達関数Ch(=C)を設定した場合のシミュレーション結果である。そして、同図(b)が、当該インパルス応答特性Cのうち上記反射成分Pを排除したのと等価な伝達関数Cahを、FIRフィルタ7に設定した場合のシミュレーション結果である。なお、各図の横軸の値は、周波数(消音対象周波数)fをタップ長換算した値を示し、縦軸の値は、上記エラー信号ekの信号レベルeを周波数領域で表した値を示す。
【0111】
同図(a)に示すように、FIRフィルタ7に設定されている伝達関数Chと、現実の二次音路Cとが等価な場合(Ch=C)には、いずれの周波数fにおいてもエラーレベルEが元のレベルよりも大きくなること(即ち制御系が発散すること)がなく、しかも、最大で−40dB強という非常に大きな消音効果が得られる。一方、現実の二次音路Cのうち直接音路Caのみを同定したのと等価な伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場合にも、同図(b)に示すように、いずれの周波数fにおいてもエラーレベルEが元のレベルよりも大きくなることはない。しかし、この同図(b)の場合には、FIRフィルタ7に設定されている伝達関数Chと現実の二次音路Cとが、必ずしも等価ではない(Ch≠C)ため、同図(a)の場合ほど大きな消音効果を期待することはできない。ただし、最大で−20dB近い消音効果が得られることは、明らかである。
【0112】
次に、図9(b)に示すように、排気ダクト1の排出口1aにおいて反射した同定音が、19タップ目に値−0.9でエラーマイクロホン6の収音部分にまで戻ってくる、という二次音路Cのモデルをシミュレートする。即ち、同図(a)のモデルと比較して、当該反射成分が現れるタップ数を20タップから19タップに1タップずらすことにより、例えば排気ダクト1内の環境変化等により上記反射音路Pが変化した状態を、シミュレートする。そして、FIRフィルタ7に設定する伝達関数や、各フィルタ3、7の各タップ長wtap、ctap等については、前回と全く同じ条件で、適応消音動作を実行する。
【0113】
図11に、この図9(b)のモデルについてフィルタ係数Wkの更新処理を4回実施したときのシミュレーション結果を示す。なお、同図において、(a)が、FIRフィルタ7に、上記図9(a)と全く同様のインパルス応答特性を有する伝達関数Chを設定した場合のシミュレーション結果である。そして、この図11の(b)が、上記10タップ目以外の各タップの値を全て零とした伝達関数Cahを、FIRフィルタ7に設定した場合のシミュレーション結果である。
【0114】
上記図11(a)から明らかなように、反射音路Pが変化したにも係らず、未だ当該変化前の二次音路Cと等価な伝達関数ChがFIRフィルタ7に設定されている場合には、周波数によってはエラーレベルEが元のレベルよりも大きくなり、即ち制御系が発散傾向になることが判る。一方、FIRフィルタ7に、現実の二次音路Cのうち直接音路Caのみを同定したのと等価な伝達関数Cahが設定されている場合には、同図(b)に示すように、いずれの周波数fにおいてもエラーレベルEが元のレベルよりも大きくなることはなく、上記図10(b)の場合と略同様な消音効果が得られることが判る(ただし、消音効果がピークとなる周波数fは異なる)。
【0115】
このように、第1の実験、及び第2の実験により、「本実施の形態によれば、反射音路Pが変化しても、少なくとも消音装置の制御系が発散することはなく、常に安定した消音効果が得られる。」、という本実施の形態の効果を確認できた。
【0116】
【発明の効果】
以上のように、本発明の能動型雑音除去装置は、第2の伝達関数を補償するためのディジタルフィルタ手段を有するfiltered-x LMSアルゴリズム構成の制御系において、当該第2の伝達関数を同定して得た伝達関数のうち、反射経路に係る部分を排除して、これを当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する。これにより、少なくとも上記反射経路の影響により、能動型雑音除去装置の制御系が発散するのを防止でき、常に安定した雑音除去動作を実現できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を能動型消音装置に応用する場合の一実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】 同実施の形態において、二次音路Cを同定して得た伝達関数Chを時間領域で表したインパルス応答特性図である。
【図3】 同実施の形態の制御系に対する反射音路の影響を示す複素平面図である。
【図4】 同実施の形態の実施例として、同実施の形態による効果を立証するための第1の実験において使用した模型の概略構成を示す図である。
【図5】 図5の模型による実験結果を示す図である。
【図6】 図5の模型を使用するのと同様の実験を、計算機によりシミュレートした結果である。
【図7】 図5の模型による実験結果と、計算機によるシミュレーション結果と、の比較データであって、反射音路Pを含む二次音路Cを同定して得た伝達関数Chを用いた場合のデータである。
【図8】 図7とは別の条件下での、図5の模型による実験結果と、計算機によるシミュレーション結果と、の比較データであって、二次音路Cのうち直接音路Caのみを同定して得たのと等価な伝達関数Cahを用いた場合のデータである。
【図9】 同実施の形態の実施例として、同実施の形態による効果を立証するための第2の実験におけるシミュレーションの条件を模式的に示す図である。
【図10】 同第2の実験によるシミュレーション結果を示す図で、(a)は、反射音路Pを含む二次音路Cを同定して得た伝達関数Chを用い、二次音路Cと伝達関数Chとが等しい条件下で、適応消音動作を実行した場合のシミュレーション結果、(b)は、二次音路Cのうち直接音路Caのみを同定して得たのと等価な伝達関数Cahを用い、二次音路Cと伝達関数Chとが等しい条件下、即ち直接音路Caと伝達関数Cahとが等しい条件下で、適応消音動作を実行した場合のシミュレーション結果、である。
【図11】 同第2の実験によるシミュレーション結果を示す図で、(a)は、反射音路Pを含む二次音路Cを同定して得た伝達関数Chを用い、直接音路Caと伝達関数Cahとは等しいが、反射音路Pと伝達関数Phとが異なる条件下で、適応消音動作を実行した場合のシミュレーション結果、(b)は、二次音路Cのうち直接音路Caのみを同定して得たのと等価な伝達関数Cahを用い、直接音路Caと伝達関数Cahとが等しく、かつ、現実の反射音路Pを変化させるという条件下で、適応消音動作を実行した場合のシミュレーション結果、である。
【図12】 従来の能動型消音装置の概略構成図である。
【図13】 図12の構成において、二次音路を同定するための部分を抜粋した図である。
【図14】 図12の構成において、反射音路Pが形成される場合を示す図である。
【図15】 図14の制御系において、当該制御系に対する反射音路の影響を示す複素平面図である。
【符号の説明】
1 排気ダクト
2 リファレンスマイクロホン
3 適応フィルタ
4 LMS演算部
5 二次音源スピーカ
6 エラーマイクロホン
7 FIRディジタルフィルタ
8 疑似信号発生器
9 LMS演算部
11 タップ制御部
主一次音路
反射音路
Ca 直接音路

Claims (6)

  1. 第1の伝達関数を有する伝送路に入力される被制御信号を検出する第1の検出手段と、
    上記伝送路の途中において該伝送路内を伝搬する信号を検出する第2の検出手段と、
    上記第1の検出手段の出力信号を処理し、この処理して得た制御用信号を、上記伝送路内における上記第1及び第2の各検出手段間の或る地点に放出する適応フィルタ手段と、
    上記第1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手段により処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、上記適応フィルタ手段の伝達関数と、この適応フィルタ手段の出力側から上記伝送路を経て上記第2の検出手段の検出部分までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
    疑似信号を生成して上記第2の伝達関数に入力する疑似信号生成手段と、
    上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記第2の伝達関数を補償する上記ディジタルフィルタ手段を含み、該ディジタルフィルタ手段に上記疑似信号を入力して、該ディジタルフィルタ手段により該疑似信号を処理した後の信号とそのときの上記第2の検出手段の出力信号とが近似する状態に、上記疑似信号と上記第2の検出手段の出力信号とに基づいて該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御することにより上記第2の伝達関数を同定する同定フィルタ制御手段と、
    この同定フィルタ制御手段によって同定して得た同定伝達関数のうち、上記疑似信号が上記第2の検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端部において反射して折り返し再度第2の検出手段により検出されるまでの反射経路に係る部分、を排除する反射経路関数排除手段と、
    この反射経路関数排除手段によって上記同定伝達関数から上記反射経路に係る部分を排除した後の伝達関数を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する伝達関数設定手段と、
    を具備する能動型雑音除去装置。
  2. 上記反射経路関数排除手段は、
    上記同定伝達関数を時間領域で表す手段を有し、
    この時間領域で表される同定伝達関数において、上記反射経路に係る部分を特定する反射経路特定手段と、
    上記時間領域で表される同定伝達関数を構成するフィルタタップのうち、少なくとも上記反射経路特定手段によって特定して得た上記反射経路に係る部分のフィルタタップのフィルタ係数を概略零に置換し、または、少なくとも該反射経路に係る部分以降のフィルタタップを削除することにより、上記同定伝達関数から該反射経路に係る部分を排除する排除実行手段と、
    から成る、請求項1に記載の能動型雑音除去装置。
  3. 上記反射経路特定手段は、上記時間領域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含まれるピーク成分のうちピーク・トゥー・ピーク値が2番目に大きいピーク成分の存在する部分以降の部分、または該2番目に大きいピーク成分の存在する部分を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状態に構成された、請求項2に記載の能動型雑音除去装置。
  4. 上記反射経路特定手段は、上記時間領域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、この基準時点から、上記疑似信号が上記第2の検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端部において反射して折り返し再度上記第2の検出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分以降の部分、または該時点に略対応する部分を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状態に構成された、請求項2に記載の能動型雑音除去装置。
  5. 上記反射経路特定手段は、上記時間領域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、この基準時点から、上記疑似信号が上記第2の検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端部において反射して折り返し再度上記第2の検出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応する部分を含む或る区間内で最もピーク・トゥー・ピーク値の大きいピーク成分が存在する部分、以降の部分、または該或る区間内で最も大きいピーク成分が存在する部分、を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状態に構成された、請求項2に記載の能動型雑音除去装置。
  6. 上記排除実行手段は、所定の窓関数により、上記同定伝達関数のうち少なくとも上記反射経路に係る部分を排除する状態に構成された、請求項2に記載の能動型雑音除去装置。
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