JP2002333887A - 伝達関数同定装置及び能動型雑音除去装置 - Google Patents

伝達関数同定装置及び能動型雑音除去装置

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JP2002333887A JP2001138490A JP2001138490A JP2002333887A JP 2002333887 A JP2002333887 A JP 2002333887A JP 2001138490 A JP2001138490 A JP 2001138490A JP 2001138490 A JP2001138490 A JP 2001138490A JP 2002333887 A JP2002333887 A JP 2002333887A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Filtered-x LMSアルゴリズム構成の制御系に
おいて、当該制御系が発散するのを防止する。 【解決手段】 適応フィルタ3の伝達関数Wkと、この
適応フィルタ3の出力側からスピーカ5及び排気ダクト
1の一部を経てエラーマイクロホン6までの間に存在す
る二次音路C=Ca(1+P)と、の合成伝達関数
[C×Wk]が、排気ダクト1内のリファレンスマイク
ロホン2からエラーマイクロホン6までの間の一次音路
P=P(1+P)と相補になるよう、適応フィルタ
3の伝達関数Wkを制御する。これにより、排気ダクト
1内を伝搬する排気音を、スピーカ5の放出する制御音
で打ち消すことができる。そして、二次音路Cを補償す
るためのFIRフィルタ7に、直接音路Caのみを同定
したのと等価な伝達関数Cahを設定すれば、反射音路P
の影響により制御系が発散するのを防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伝送路の伝達関数
を同定(推定)する伝達関数同定装置、及びこの伝達関
数同定装置の技術を利用した能動型雑音除去装置(Acti
ve Noise Controller:ANC)に関する。
【0002】
【従来の技術】上記のような能動型雑音除去装置とし
て、例えば図12に示すような能動型消音装置が知られ
ている。同図に示すように、この装置は、排気ダクト1
内をその入口側(同図の左側)から出口側(同図の右
側)に向かって伝搬する騒音、例えば図示しないエンジ
ン等の排気音、に対して、これと実質的に等大で逆位相
の音波、所謂制御音、を干渉させることによって、当該
排気音を打ち消すものである。
【0003】このような能動的な消音動作を実現するた
めに、この消音装置は、排気ダクト1内において上記排
気音を収音するためのリファレンスマイクロホン2を、
備えている。このリファレンスマイクロホン2の出力信
号、即ち上記排気音を収音して得た所謂騒音信号xk
(kは、時刻を表すタイム・インデックスである。)
は、図示しない増幅器によって増幅され、図示しないA
/D変換器によってディジタル信号に変換された後、例
えばFIR(Finite Impulse Response:非巡回)型の
適応ディジタルフィルタ(以下、単に、適応フィルタと
言う。)3に入力される。適応フィルタ3は、これに入
力される上記騒音信号xkに対して、後述するLMS演
算部4により設定されるフィルタ係数を用いて所定のフ
ィルタリング処理、例えば次の数1で表されるような畳
み込み演算を施し、その演算結果ykを出力する。
【0004】
【数1】
【0005】なお、この数1において、Nは、適応フィ
ルタ3のタップ数で、iは、当該フィルタタップのタッ
プ番号(順番)を表すタップ・インデックスである。そ
して、wk(i)が、適応フィルタ3のフィルタ係数を表
し、詳しくは、時刻kにおける当該適応フィルタ3のi
番目のタップのフィルタ係数を表す。
【0006】排気ダクト1の上記リファレンスマイクロ
ホン2が設けられている位置よりも当該排気ダクト1の
出口側(同図の右側)、即ち排気音の伝搬方向で言うと
ころの下流側には、排気ダクト1内に音波を放出する状
態に、二次音源スピーカ(以下、単に、スピーカと言
う。)5が設けられている。そして、このスピーカ5
に、上記適応フィルタ3の出力信号ykが、図示しない
D/A変換器によりアナログ信号に変換され、図示しな
い増幅器により増幅された後、入力される。スピーカ5
は、これに入力される上記信号ykに応じて上記制御音
を放出する。この排気ダクト1内に放出された制御音
が、当該排気ダクト1内を伝搬している排気音に干渉す
ることによって、当該排気音が打ち消される。
【0007】更に、排気ダクト1の出口側には、エラー
マイクロホン6が配置されている。このエラーマイクロ
ホン6は、上記制御音により排気音を打ち消した後の
音、つまりは排気音のうち制御音によって完全に打ち消
されずに残った所謂残留雑音を検出する。そして、この
残留雑音を検出して得たエラーマイクロホン6の出力信
号、所謂エラー信号ekは、上述したLMS演算部4に
供給される。LMS演算部4には、このエラー信号ek
の他に、後述する例えばFIR型のディジタルフィルタ
(以下、単に、FIRフィルタと言う。)7により上記
騒音信号xkを処理した後の信号(以下、この信号を、
フィルタード・リファレンスと言う。)rkも、供給さ
れる。
【0008】LMS演算部4は、上記フィルタード・リ
ファレンスrkとエラー信号ekの大きさとに応じて、当
該エラー信号ek(残留雑音)が極力小さくなるよう
に、適応フィルタ3の伝達関数Wkを適応制御する。具
体的には、LMS演算部4は、適応フィルタ3の伝達関
数Wkと後述する二次音路(secondary path、またはerr
or pathとも言う。)の伝達関数(以下、単に、二次音
路と言う。)Cとの合成による伝達関数[C×Wk]
が、排気ダクト1内のリファレンスマイクロホン2から
エラーマイクロホン6までの間に存在する一次音路(pr
imary path)の伝達関数(以下、単に、一次音路と言
う。)Pと相補になるように、即ちP≒−C×Wkとな
るように、例えば次の数2で表されるLMSアルゴリズ
ムに従って、適応フィルタ3のフィルタ係数wk(i)を更
新し、即ちwk+1(i)を求める。
【0009】
【数2】
【0010】なお、この数2において、μwは、適応フ
ィルタ3のステップ・サイズ・パラメータである。
【0011】このように、図12に示す消音装置におい
ては、適応フィルタ3の伝達関数Wkと二次音路Cとの
合成伝達関数[C×Wk]を、一次音路Pと相補にする
ことによって初めて、排気ダクト1内を伝搬する排気音
をスピーカ5の放射する制御音により打ち消すことがで
きる。ただし、このように適応フィルタ3の伝達関数W
kを適応制御することによって、上記合成伝達関数[C
×Wk]と一次音路Pとを相補にするには、当該合成伝
達関数[C×Wk]を構成する二次音路Cを、何らかの
方法により同定(推定)する必要がある。
【0012】即ち、図12に示す構成においては、スピ
ーカ5の音波放射面(出力側)からエラーマイクロホン
6の収音部分(入力側)までの間(厳密には、適応フィ
ルタ3の出力側からスピーカ5及び排気ダクト1の一部
(下流側)を経てエラーマイクロホン6の収音部分まで
の間)に、上記二次音路Cが存在する。従って、この二
次音路Cを何らかの方法により同定して補償しなけれ
ば、上記のような適応制御により合成伝達関数[C×W
k]と一次音路Pとを相補にすることはできない。そこ
で、この消音装置においては、上記リファレンスマイク
ロホン2とLMS演算部4との間に、上述したFIRフ
ィルタ7を設けている。そして、例えば一般に知られて
いるM系列信号(MLS信号)や白色雑音等のランダム
な疑似信号mkを発生する疑似信号発生器8を設け、こ
の疑似信号mkを、図12に点線で示す経路で処理する
ことによって、二次音路Cを同定する。これについて、
図13を参照して説明する。
【0013】同図は、上記図12に点線で示す経路、即
ち二次音路Cを同定するための制御系の部分を、抜粋し
たものである。同図に示すように、この制御系において
は、二次音路Cを同定するためのFIRフィルタ7を、
例えば上記LMS演算部4とは異なる演算部9により適
応制御される適応フィルタ構成としている。そして、上
記疑似信号発生器8の発生する疑似信号mkを、スピー
カ5、FIRフィルタ7及び上記LMS演算部9に供給
すると共に、このときのエラーマイクロホン6の出力信
号ekと、上記疑似信号mkをFIRフィルタ7で処理し
た後の信号とを、比較器10で比較して両者の誤差εk
を求め、この誤差信号εkを上記LMS演算部9に供給
している。LMS演算部9は、これに供給される疑似信
号mkと誤差信号εkとに基づいて、当該誤差信号εkの
大きさが極力小さくなるように、換言すれば二次音路C
内に疑似信号mkを通過させた後の信号と、疑似信号mk
をFIRフィルタ7で処理した後の信号と、が近似する
ように、例えば次の数3で表されるLMSアルゴリズム
に従って、FIRフィルタ7のフィルタ係数chk(i)を
更新し、即ちchk+1(i)を求める。
【0014】
【数3】
【0015】なお、この数3において、μcは、FIR
フィルタ7のステップ・サイズ・パラメータである。
【0016】この数3に基づいて、FIRフィルタ7の
フィルタ係数chk(i)を更新することによって、当該F
IRフィルタ7の伝達関数Chと二次音路Cとが略等価
となり、即ち二次音路Cの同定を実現できる。そして、
このように二次音路Cを同定して得た所謂同定伝達関数
Chを有するFIRフィルタ7により上記騒音信号xkを
処理した後、この処理後の上記フィルタード・リファレ
ンスrkをLMS演算部4に供給することによって、当
該LMS演算部4により適応フィルタ3のフィルタ係数
wk(i)を正確に適応制御でき、ひいては良好な消音効果
を得ることができる。このようなFIRフィルタ7を備
えた制御系は、一般に、filtered-x LMSアルゴリズム構
成の制御系と呼ばれている。FIRフィルタ7は、次の
数4に示す畳み込み演算を行なうことにより、上記フィ
ルタード・リファレンスrkを生成する。
【0017】
【数4】
【0018】この数4において、Nは、FIRフィルタ
7のフィルタタップ数である。ここでは、このタップ数
Nを、適応フィルタ5と同じタップ数Nに設定してい
る。
【0019】なお、上記のようなfiltered-x LMSアルゴ
リズム構成の制御系においては、例えば排気ダクト1内
の温度変化等によって当該排気ダクト1内の音響特性に
変化が生じたり、或いはスピーカ5の放音特性に変化が
生じたりすることによって、二次音路Cが変化すること
がある。そして、このように二次音路Cが変化すると、
当該二次音路CとFIRフィルタ7の伝達関数Chとが
乖離して、消音効果が悪化する。このような場合には、
改めて二次音路Cを同定し直せばよい。即ち、当該排気
ダクト1内の温度変化等に応じて適宜に、または、定期
的に、二次音路Cを同定し直せば、常に安定した消音効
果を得ることができる。また、上記FIRフィルタ7と
して、騒音信号xkを処理することによりフィルタード
・リファレンスrkを生成するものと、二次音路Cを同
定するために疑似信号mkを処理するものとを、それぞ
れ別個に設けてもよい。このようにすれば、適応消音動
作と二次音路Cの同定動作とを同時にしかも安全かつ確
実に実行でき、より安定した消音効果を得ることができ
る。
【0020】以上は、飽くまでエラーマイクロホン6が
排気ダクト1の排出口1aの近傍に位置する場合のこと
であって、例えば図14に示すように、エラーマイクロ
ホン6が排気ダクト1内の途中に設けられており、当該
エラーマイクロホン6と上記排出口1aとの間が開いて
いる場合には、次のような問題が生じる。
【0021】即ち、排気音のうち制御音によって打ち消
されずに残った残留雑音は、最終的に上記排出口1aか
ら外部に排出される。しかし、この排出口1a付近にお
いては音響インピーダンスが急変するため、残留雑音の
一部は、同図に矢印1bで示すように、当該排気口1a
において反射して、排気ダクト1内をそれまでとは反対
の方向(同図の左側、即ち上流側)に向かって伝搬す
る。そして、この反対方向に向かって伝搬する所謂反射
成分と、排気ダクト1内を上流側から下流側へと正規の
方向に向かって伝搬する上記残留雑音と、が干渉し、こ
れによって、エラーマイクロホン6の配置位置において
当該残留雑音の音圧が極端に小さくなる周波数が存在す
るようになる。このような周波数においては、LMS演
算部4は、排気音を十分に消音できているものと言わば
誤認識する。従って、適応フィルタ3の伝達関数Wk
は、当該周波数において、排気音を打ち消すようには成
長しない。これにより、エラーマイクロホン6の配置位
置においては、この消音装置が消音の対象としている全
周波数帯域にわたって一様に排気音を消音できているよ
うに見えるが、排気口1a付近を含む他の位置において
は、上記周波数の排気音が残り、十分な消音効果が得ら
れない、という問題がある。
【0022】上記エラーマイクロホン6と排出口1aと
の間が開くことによって、二次音路Cも、次のような影
響を受ける。即ち、二次音路Cの同定時において、上記
疑似信号mkに応じてスピーカ5から放出させる音波、
所謂同定音、もまた、その一部が上記排出口1aで反射
して、排気ダクト1内を上流側に向かって伝搬する。従
って、当該二次音路Cを同定して得られる同定伝達関数
Chには、上記同定音の反射成分の伝搬経路であるとこ
ろの上記エラーマイクロホン6と排出口1aとの間の空
間、に係る伝達関数も含まれる。ここで、例えば、排気
ダクト1内の温度が変化する等、当該排気ダクト1内の
環境が変化するとする。すると、上述したように、この
環境変化に伴い、二次音路C(特に、位相特性)も変化
する。エラーマイクロホン6が排出口1aの近傍に位置
する場合には、当該二次音路Cの変化は、主に、スピー
カ5の出力側からエラーマイクロホン6の収音部分まで
の区間内における環境変化の影響を受ける。しかし、上
記のようにエラーマイクロホン6と排出口1aとの間が
開いている場合には、これらエラーマイクロホン6と排
出口1aとの間における環境変化も、二次音路Cに大き
く影響し、その分、当該環境変化が二次音路Cに与える
影響が大きくなる。従って、例えば、エラーマイクロホ
ン6が排出口1aの近傍に位置する場合(特に、スピー
カ5の出力側からエラーマイクロホン6の収音部分まで
の距離が短い場合)には、二次音路Cの特性に然程大き
な影響を与えない程度の環境変化であっても、エラーマ
イクロホン6と排出口1aとの間が開いていることによ
って、二次音路Cが大きく変化することがある。そし
て、この二次音路Cが極端に変化することにより、当該
二次音路CとFIRフィルタ7の伝達関数Chとが乖離
して、本消音装置全体の制御系が発散し、ひいては制御
不能となる可能性がある。この傾向は、エラーマイクロ
ホン6と排出口1aとの間隔が大きいほど、顕著にな
る。このことについて、以下、数式を交えてより論理的
に説明する。
【0023】例えば、今、図14において、排気ダクト
1内におけるスピーカ5の出力側からエラーマイクロホ
ン6の収音部分までの区間の音響伝達関数(即ち、図1
2における二次音路C)を、直接音路と呼び、これを符
号Caで表すとする。そして、排気ダクト1内における
エラーマイクロホン6の収音部分から当該排気ダクト1
の排出口1aに至り、この排出口1aにおいて反射して
再度エラーマイクロホン6の収音部分に戻るまでの区間
の音響伝達関数を、反射音路と呼び、これを符号P
表すとする。この場合、上記二次音路Cは、次の数5で
表される。
【0024】
【数5】
【0025】ここで、この二次音路Cの同定時に、エラ
ーマイクロホン6から出力されるエラー信号Ek(ただ
し、Ekは、上記エラー信号ekで構成されるベクトルを
フーリエ変換することにより周波数領域の値に変換した
ものである。)は、当該二次音路Cの同定処理に係る部
分についてのみ言えば(即ち、上記残留雑音を検出して
得られる成分を除けば)、次の数6で表される。
【0026】
【数6】
【0027】なお、この数6において、Mkは、疑似信
号mkで構成されるベクトルをフーリエ変換することに
より周波数領域の値に変換したものである。
【0028】そして、この数6における二次音路Cに、
上記数5を代入すると、当該数6は、次の数7に示すよ
うになる。
【0029】
【数7】
【0030】この数7からも明らかなように、二次音路
Cの同定時におけるエラー信号Ekは、上記直接音路Ca
を介して上記同定音を直接的に検出して得た成分[Ca
・Mk]と、この直接的な成分[Ca・Mk]に上記反射
音路Pを掛け合わせた成分[P・Ca・Mk]と、の
和になる。即ち、当該二次音路Cの同定時において、上
記反射音路Pが影響することが判る。
【0031】なお、上記数5で表される二次音路Cを同
定して得られる伝達関数Chは、次の数8で表される。
【0032】
【数8】
【0033】この数8において、Cahは、上記直接音路
Caの同定値(推定値)であり、P hは、反射音路P
の同定値(推定値)である。
【0034】一方、図14において、排気ダクト1内に
おけるリファレンスマイクロホン2の収音部分からエラ
ーマイクロホン6の収音部分までの区間の音響伝達関数
(即ち、図12における一次音路P)を、主一次音路と
呼び、これを符号Pで表すとする。この場合、当該消
音装置の消音動作において、上記合成伝達関数[C×W
k]による相補の対象となる一次音路Pは、次の数9で
表される。
【0035】
【数9】
【0036】そして、この消音動作時に、エラーマイク
ロホン6から出力されるエラー信号Ek(ただし、上記
同定音を検出して得られる成分を除く。)は、次の数1
0で表される。
【0037】
【数10】
【0038】なお、この数10において、Xkは、騒音
信号xkで構成されるベクトルをフーリエ変換すること
により周波数領域の値に変換したものである。
【0039】そして、この数10における一次音路P
に、上記数9を代入すると共に、二次音路Cに、数5を
代入すると、当該数10は、次の数11に示すようにな
る。
【0040】
【数11】
【0041】この数11からも明らかなように、当該消
音動作時におけるエラー信号Ekは、上記残留雑音を直
接的に検出して得た成分[(P+Ca・Wk)Xk]
と、この直接的な成分[(P+Ca・Wk)Xk]に上
記反射音路Pを掛け合わせた成分[P(P+Ca
・Wk)Xk]と、の和になる。即ち、当該消音動作にお
いても、上記反射音路Pが影響することが判る。
【0042】ところで、上記図14(図12)に示す制
御系のように、騒音信号Xkを入力とし、エラー信号Ek
を出力とする制御系においては、当該制御系全体の伝達
関数Hkの経時的な変化は、次の数12で表されること
が知られている。
【0043】
【数12】
【0044】この数12において、Chは、FIRフ
ィルタ7の伝達関数(二次音路Cを同定して得た同定伝
達関数)Chの複素共役である。また、GRは、所謂公比
(Geometric Ratio)であって、即ち、LMS演算部4
による適応フィルタ3の伝達関数Wkの適応動作を1回
実行すると、当該制御系全体の伝達関数Hkが、[1−
2μw・|Xk|・C・Ch]倍されることを示す。
なお、当該公比GRは、周波数領域の関数であって、即ち
各周波数毎にそれぞれ異なる値となる。
【0045】上記数12によれば、公比GRの値によっ
て、当該消音装置の制御系が(各周波数毎に)発散傾向
にあるか否かを判断することができる。具体的には、当
該公比GRの絶対値が1よりも小さい(|GR|<1)場合
には、制御系は収束する傾向にあり、安定した消音効果
を期待できる。一方、当該公比GRの絶対値が1よりも大
きい(|GR|>1)場合には、制御系は発散する傾向に
あり、場合によっては制御不能となる可能性がある。公
比GRの絶対値が1(|GR|=1)の場合には、制御系は
収束傾向にも発散傾向にもなく、よって消音効果は向上
することはなく悪化することもない。
【0046】上記公比GRの絶対値が1よりも小さいか否
かは、当該公比GRを構成する上記二次音路Cとこれを同
定して得た同定伝達関数Chとの位相誤差θ(=∠C・
Ch;ここで、*は、複素共役を表す。)によって判
断できる。具体的には、当該位相誤差θの絶対値がπ/
2より小さい(|θ|<π/2)とき、上記公比GRの絶
対値は1より小さくなる。一方、当該位相誤差θの絶対
値がπ/2以上(|θ|≧π/2)のとき、上記公比GR
の絶対値は1以上となる。従って、この位相誤差θの絶
対値がπ/2よりも小さいか否かによって、制御系が収
束傾向にあるかそうでないかを判断できる。ただし、こ
の位相誤差θによる判断は、ステップ・サイズ・パラメ
ータμwの大きさが1に比べて十分小さく設定されてい
る場合にのみ有効である。
【0047】ここで、上記公比GRを構成する二次音路C
とこれを同定して得た伝達関数Chとに、それぞれ上記
数5と数8とを代入すると、当該公比GRは、次の数13
に示すようになる。
【0048】
【数13】
【0049】この数13からも明らかなように、公比GR
は、反射音路Pと、この反射音路Pの推定値Ph
と、の影響を受けることが判る。従って、例えば、二次
音路Cを構成する直接音路Caと反射音路Pとのう
ち、直接音路Caについてはその推定値Cahと略等価で
あり、即ち当該直接音路Caとその推定値Cahとの位相
差∠CaCahの絶対値がπ/2より小さい(|∠CaC
ah|<π/2)、としても、上記反射音路Pとその
推定値Phとが乖離している場合には、これらの大き
さ|P|、|Ph|及び位相∠P、∠Phの如何
によっては、上記位相誤差θの絶対値がπ/2よりも大
きくなって(即ち|GR|>1となって)、制御系が発散
する可能性がある。
【0050】このことをより詳細に説明するために、例
えば、今、図14の構成において、スピーカ5の音波放
射面からエラーマイクロホン6の収音部分まで間の距離
Laが比較的に短く、この距離Laに比べて、エラーマイ
クロホン6の収音部分から排気ダクト1の排出口1aま
での間を往復する距離Lの方が比較的に長い(La<
)とする。これにより、例えば排気ダクト1内の温
度変化や気流の変化等、当該排気ダクト1内の音響伝搬
特性を変化させる要因となる環境変化が生じたとき、直
接音路Caは然程変化しないものの(Ca≒Cah)、反射
音路Pについては大きく変化する(P≠Ph)と
する。この場合、上記排気ダクト1内の環境変化により
実際の二次音路Cが変化して、FIRフィルタ7の伝達
関数Chとの間に差異が生じたとしても、その差異の殆
どは、上記反射音路Pとその推定値Phとの差異に
よるものと見なすことができる。従って、上記位相差θ
は、次の数14のように表すことができる。
【0051】
【数14】
【0052】この数14の関係を複素平面で表した一例
を、図15に示す。同図に示すように、上記反射音路P
とその推定値Phとは、それぞれ実軸(Re)上にお
ける1を中心とする円の円周上を回転する。この円の半
径は、反射音路Pと推定値Phとの各大きさ(絶対
値)|P|、|Ph|を表し、これらは1よりも小
さい。排気ダクト1の排出口1aにおける音響反射率の
大きさが1よりも小さく、即ち上記同定音が当該排出口
1aで全て反射することはないからである。なお、ここ
では、当該図面を簡素化して見易くするために、上記反
射音路Pと推定値Phとの各大きさ(上記円の半
径)|P|、|Ph|を、それぞれ等しくしてあ
る。
【0053】この図15によれば、上記反射音路P
その推定値Phとの各大きさ|P |、|Ph|及び
各位相∠P、∠Phの如何によっては、上記位相誤
差θの絶対値(≒|∠{(1+P)(1+P
h)}|)がπ/2よりも大きくなることが、予想
される。例えば、反射音路Pと推定値Phとの各大
きさ|P|、|Ph|が大きく、かつ、それぞれの
位相∠P、∠Phの差異により上記[1+P]と
[1+Ph]との各偏角∠(1+P)、∠(1+
h)が実軸を境に略対称的に大きな値を取るよう
な場合等、がこれに当たる。そして、このように位相誤
差θの絶対値がπ/2よりも大きくなると、上記のよう
に(或る周波数において)制御系が発散し、(当該或る
周波数において)制御不能となる可能性がある。
【0054】
【発明が解決しようとする課題】即ち、本発明が解決し
ようとする問題点は、上記のようにエラーマイクロホン
6の配置位置と排気ダクト1の排出口1aとの間(L
/2)が開いている場合に、これら両者間に形成される
反射音路Pの影響により、或る特定の周波数において
制御系が発散して、制御不能となる可能性がある、とい
う点である。そして、この問題は、上記反射音路P
係る距離Lが長いほど、顕著になる。
【0055】そこで、本発明は、上記のような反射音路
が存在しても、少なくともこの反射音路Pの影響
により制御系が発散するのを防止できる能動型雑音除去
装置を提供することを目的とする。また、かかる能動型
雑音除去装置を実現するために、上記二次音路Cを同定
する際に、この二次音路Cから上記反射音路Pを排除
して得た伝達関数を同定することのできる伝達関数同定
装置を提供することも、本発明の目的とするところであ
る。
【0056】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の伝達関数同定装置は、疑似信号を生成し
て、これを伝達関数の同定対象である伝送路に入力する
疑似信号生成手段と、上記伝送路の途中において当該伝
送路内を伝搬する信号を検出する検出手段と、上記疑似
信号が入力されるディジタルフィルタ手段を含み、この
ディジタルフィルタ手段により当該疑似信号を処理した
後の信号と上記検出手段の出力信号とが近似するよう
に、上記疑似信号と上記検出手段の出力信号とに基づい
てディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御することに
より上記伝送路の伝達関数を同定する同定フィルタ制御
手段と、を具備する。そして、上記同定フィルタ制御手
段によって同定して得た同定伝達関数、即ち、上記ディ
ジタルフィルタ手段により上記疑似信号を処理した後の
信号と上記検出手段の出力信号とが或る程度近似してい
る状態にあるときに当該ディジタルフィルタ手段に設定
されている伝達関数、のうち、上記疑似信号が上記検出
手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬
して当該出力側端部において反射して折り返し再度上記
検出手段により検出されるまでの反射経路に係る部分、
を排除する反射経路関数排除手段と、この反射経路関数
排除手段によって上記同定伝達関数から上記反射経路に
係る部分を排除した後の伝達関数に係る情報を出力する
情報出力手段と、を具備するものである。
【0057】なお、上記ディジタルフィルタ手段は、例
えばDSP(ディジタル信号処理装置)等によって構成
でき、同定フィルタ制御手段及び反射経路関数排除手段
は、例えばCPU(中央演算処理装置)等によって構成
できる。また、上記伝送路内を伝搬する信号が例えば音
波である場合には、上記検出手段は、マイクロホンや音
圧センサ等により構成できる。
【0058】即ち、本発明の伝達関数同定装置によれ
ば、疑似信号生成手段が生成する疑似信号は、伝送路内
を伝搬して、当該伝送路内の途中に設けられている検出
手段によって検出される。これと同時に、疑似信号は、
ディジタルフィルタ手段にも入力される。そして、同定
フィルタ制御手段が、当該疑似信号と上記検出手段の出
力信号とに基づいて、当該検出手段の出力信号と、ディ
ジタルフィルタ手段により上記疑似信号を処理した後の
信号とが、互いに等しくなるように、当該ディジタルフ
ィルタ手段の伝達関数を制御し、即ち上記伝送路の伝達
関数を同定(推定)する。
【0059】しかし、上記検出手段は、疑似信号生成手
段から伝送路を経て直接的に検出する疑似信号の他に、
この疑似信号が伝送路の出力側端部において反射して当
該伝送路内に向かって折り返し再度検出手段側に戻って
くる所謂反射成分をも、同時に検出する。従って、上記
同定フィルタ制御手段によって同定して得た同定伝達関
数には、上記反射成分の伝搬経路である反射経路に係る
伝達関数も含まれる。
【0060】そこで、本発明では、上記同定フィルタ制
御手段により同定して得た同定伝達関数のうち、上記反
射経路に係る部分を排除する反射経路関数排除手段を、
設ける。そして、情報出力手段が、当該反射経路関数排
除手段によって上記同定伝達関数から上記反射経路に係
る部分を排除した後の伝達関数に係る情報を、例えば表
示する等の視覚的形態により、または音声等の聴覚的形
態により、或いはディジタル処理が可能なデータとし
て、出力する。従って、この情報出力手段の出力する情
報から、上記伝送路の伝達関数であって、上記反射経路
に係る部分を排除した後の伝達関数を、認識したり、或
いは利用したりすることができる。なお、この情報出力
手段から出力される上記伝達関数に係る情報は、時間領
域の情報でも周波数領域の情報であってもよい。
【0061】なお、本発明において、上記反射経路関数
排除手段は、例えば次のような構成により実現できる。
即ち、上記同定伝達関数が、例えば周波数領域の関数で
ある場合には、これを逆フーリエ変換する等の所定の変
換処理を施すことにより、時間領域の関数で表す手段、
を設ける。そして、この時間領域で表される同定伝達関
数において、上記反射経路に係る部分を特定する反射経
路特定手段と、上記時間領域で表される同定伝達関数を
構成するフィルタタップのうち、少なくとも上記反射経
路特定手段によって特定して得た上記反射経路に係る部
分のフィルタタップのフィルタ係数を概略零に置換し、
または、少なくとも上記反射経路に係る部分以降のフィ
ルタタップを削除する、換言すれば当該フィルタタップ
のタップ長を上記反射経路に係る部分の直前までとす
る、ことにより、上記同定伝達関数から上記反射経路に
係る部分を排除する排除実行手段と、によって構成でき
る。
【0062】更に、上記反射経路特定手段については、
例えば次のように構成してもよい。即ち、上記時間領域
で表される同定伝達関数、所謂インパルス応答特性に
は、いくつかのピーク成分が含まれる。これら各ピーク
成分のうち、最大のピーク・トゥー・ピーク値を有する
ピーク成分は、上記疑似信号生成手段から伝送路を経て
直接的に検出手段に入力される疑似信号に対応するもの
である。そして、2番目に大きいピーク・トゥー・ピー
ク値を有するピーク成分以降が、上記伝送路の出力側端
部による疑似信号の反射成分に対応するものである、と
考えられる。そこで、上記インパルス応答特性におい
て、当該2番目に大きいピーク・トゥー・ピーク値を有
するピーク成分が存在する部分以降の部分を、上記反射
経路に係る部分として特定するよう、当該反射経路特定
手段を構成してもよい。或いは、インパルス応答特性に
おいて、上記2番目に大きいピーク成分が存在する部分
を含む所定区間、例えば当該2番目に大きいピーク成分
が存在する部分以降の部分でインパルス応答特性の絶対
値が比較的に大きい区間等を、上記反射経路に係る部分
として特定してもよい。
【0063】上記反射経路特定手段は、次のようにも構
成できる。即ち、上記時間領域で表される同定伝達関数
において、上記直接的成分に対応する最大のピーク・ト
ゥー・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点から、
上記反射成分に対応する2番目に大きいピーク・トゥー
・ピーク値を有するピーク成分が現れる時点まで、の時
間的な間隔は、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分
から伝送路の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部
において反射して折り返し再度上記検出手段の検出部分
にまで到達するのに要する時間に、略相当する。そこ
で、上記最大のピーク・トゥー・ピーク値を有するピー
ク成分が現れる時点を基準とし、この基準時点から、上
記疑似信号が上記検出手段の検出部分から伝送路の出力
側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反射して
折り返し再度上記検出手段の検出部分にまで到達するの
に要する時間を隔てた時点、に略対応する部分以降の部
分、または当該時点に略対応する部分を含む所定区間
を、上記反射経路に係る部分として特定するよう、当該
反射経路特定手段を構成してもよい。ここで、上記検出
手段の検出部分を通過した疑似信号の一部が、伝送路の
出力側端部で反射して再度検出手段の検出部分にまで到
達するのに要する時間は、上記反射経路の距離とこの反
射経路における疑似信号の伝搬速度(例えば平均速度)
との関係から予測できる。具体的には、上記検出手段の
検出部分から上記伝送路の出力側端部までの距離の略2
倍(即ち往復分)の距離を、この区間における疑似信号
の伝搬速度(例えば平均速度)で除算することにより、
当該時間を導出できる。
【0064】また、反射経路特定手段は、次のようにも
構成できる。即ち、まず、上記時間領域で表される同定
伝達関数において、上記基準時点から、上記疑似信号が
上記検出手段の検出部分から上記伝送路の出力側端部に
まで伝搬して当該出力側端部において反射して折り返し
再度上記検出手段の検出部分にまで達するのに要する時
間を隔てた時点、に略対応する部分を特定する。これに
より、上記反射経路に係る部分を、大まかに特定し、所
謂当たりを付ける。そして、この当たりを付けた部分を
含む或る区間内、例えば当該当たりを付けた部分の前後
付近において、ピーク・トゥー・ピーク値が最も大きい
ピーク成分を探し出し、この探し出したピーク成分の存
在する部分以降の部分、または当該探し出したピーク成
分の存在する部分を含む所定区間を、最終的に上記反射
経路に係る部分として特定するよう、構成してもよい。
【0065】なお、上記排除実行手段は、所定の窓関数
により、構成できる。この所定の窓関数としては、例え
ば一般に知られている矩形窓や指数窓、或いはガウス
(Gauss)窓、ハニング(Hanning)窓、ハミング(Hamm
ing)窓、二乗余弦(Raised cosine)窓、ブラックマン
(Blackman)窓等の、各種窓関数がある。これら任意の
窓関数を用いることにより、上記同定伝達関数を所定の
形態に処理して、上記反射経路に係る部分を排除するこ
とができる。
【0066】本発明は、上記伝達関数同定装置に係る技
術を利用した能動型雑音除去装置にも供する。即ち、本
発明の能動型雑音除去装置は、第1の伝達関数を有する
伝送路に入力される被制御信号を検出する第1の検出手
段と、上記伝送路の途中において当該伝送路内を伝搬す
る信号を検出する第2の検出手段と、上記第1の検出手
段の出力信号を処理し、この処理して得た制御用信号
を、上記伝送路内における上記第1及び第2の各検出手
段間の或る地点に放出する適応フィルタ手段と、上記第
1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手段によ
り処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力信号と
が入力され、これらに応じて、上記適応フィルタ手段の
伝達関数と、この適応フィルタ手段の出力側から上記伝
送路を経て上記第2の検出手段の検出部分までの間に存
在する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数が、上
記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応フィルタ
手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、疑
似信号を生成して上記第2の伝達関数に入力する疑似信
号生成手段と、上記第1の検出手段と上記適応フィルタ
制御手段との間に介在して上記第2の伝達関数を補償す
る上記ディジタルフィルタ手段を含み、該ディジタルフ
ィルタ手段に上記疑似信号を入力して、このディジタル
フィルタ手段により当該疑似信号を処理した後の信号と
そのときの上記第2の検出手段の出力信号とが近似する
状態に、上記疑似信号と上記第2の検出手段の出力信号
とに基づいてディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御
することにより上記第2の伝達関数を同定する同定フィ
ルタ制御手段と、を具備する。そして、この同定フィル
タ制御手段によって同定して得た同定伝達関数のうち、
上記疑似信号が上記検出手段の検出部分から上記伝送路
の出力側端部にまで伝搬して当該出力側端部において反
射して折り返し再度上記第2の検出手段により検出され
るまでの反射経路に係る部分、を排除する反射経路関数
排除手段と、この反射経路関数排除手段によって上記同
定伝達関数から上記反射経路に係る部分を排除した後の
伝達関数を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数と
して設定する伝達関数設定手段と、を具備するものであ
る。
【0067】なお、上記適応フィルタ手段は、例えばD
SP等によって構成でき、適応フィルタ制御手段及び伝
達関数設定手段は、例えばCPU等によって構成でき
る。また、上記伝送路内を伝搬する信号が例えば音波で
ある場合には、上記第1及び第2の各検出手段は、マイ
クロホンや音圧センサ等により構成できる。
【0068】即ち、本発明の能動型雑音除去装置によれ
ば、第1の検出手段が、伝送路に入力される被制御信
号、即ち当該能動型雑音除去装置が除去対称とする信
号、を検出する。そして、第2の検出手段が、伝送路の
途中(上記被制御信号の伝搬方向で言うところの上記第
1の検出手段よりも下流側)において、当該伝送路内を
伝搬する信号を検出する。更に、伝送路の上記第1の検
出手段が設けられている位置と第2の検出手段が設けら
れている位置との間の或る地点には、適応フィルタ手段
によって上記第1の検出手段の出力信号を処理して得た
制御用信号が、放出される。なお、この適応フィルタ手
段の出力側から伝送路の下流側の一部を経て第2の検出
手段の検出部分までの間には、第2の伝達関数が存在す
る。そして、適応フィルタ制御手段が、第1の検出手段
の出力信号をディジタルフィルタ手段により処理した後
の信号と第2の検出手段の出力信号とに応じて、適応フ
ィルタ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成伝
達関数が、上記第1の伝達関数と相補するように、適応
フィルタ手段の伝達関数を、例えばLMSアルゴリズム
等の演算式に基づいて制御する。このように、適応フィ
ルタ手段の伝達関数と第2の伝達関数との合成伝達関数
が、上記第1の伝達関数と相補することによって初め
て、適応フィルタ手段から伝送路内に放出される上記制
御用信号により、当該伝送路内を伝搬している上記被制
御信号を、打ち消すことができる。
【0069】ただし、上記のように適応フィルタ手段の
伝達関数を適応制御することによって、当該適応フィル
タ手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成伝達関
数を上記第1の伝達関数と相補にするには、当該適応制
御において、上記第2の伝達関数を何らかの方法により
同定してこれを補償する必要がある。そこで、本発明で
は、上記第1の検出手段と適応フィルタ制御手段との間
に、上記第2の伝達関数を補償するための上記ディジタ
ルフィルタ手段を設ける。即ち、本発明の能動型雑音除
去装置全体の制御系を、上述したfiltered-x LMSアルゴ
リズム構成とするのである。そして、疑似信号生成手段
が生成する疑似信号を用いて、当該ディジタルフィルタ
手段により上記第2の伝達関数を補償すべく伝達関数を
同定する。この第2の伝達関数の同定は、上記ディジタ
ルフィルタ手段を備えた同定フィルタ制御手段が行う。
具体的には、ディジタルフィルタ手段と第2の伝達関数
とに、それぞれ上記疑似信号を入力する。そして、この
状態で、当該ディジタルフィルタ手段により疑似信号を
処理した後の信号と、そのときの上記第2の検出手段の
出力信号とが近似するように、上記疑似信号と第2の検
出手段の出力信号とに基づいてディジタルフィルタ手段
の伝達関数を制御する。これにより、ディジタルフィル
タ手段の伝達関数と第2の伝達関数とが略等価となっ
て、当該第2の伝達関数の同定が実現される。
【0070】しかし、この第2の伝達関数の同定時にお
いては、上記第2の検出手段は、上記疑似信号生成手段
から当該第2の伝達関数を経て直接的に検出する疑似信
号の他に、この疑似信号の一部が伝送路の出力側端部に
おいて反射して当該伝送路内に向かって折り返し再度第
2の検出手段側に戻ってくる所謂反射成分をも、同時に
検出する。従って、上記同定フィルタ制御手段によって
同定して得た伝達関数には、当該反射成分の伝搬経路で
ある所謂反射経路、に係る伝達関数も含まれる。よっ
て、この反射経路を含む伝達関数を上記ディジタルフィ
ルタ手段の伝達関数として設定し、この状態で上記適応
フィルタ手段の伝達関数を適応制御(所謂適応雑音除去
動作を実行)した場合、当該反射経路の影響により、制
御系が発散して、制御不能となる可能性がある。
【0071】そこで、本発明の能動型雑音除去装置にお
いては、上記本発明の伝達関数同定装置と同様、上記同
定フィルタ制御手段により上記第2の伝達関数を同定し
て得た同定伝達関数のうち、上記反射経路に係る部分を
排除する反射経路関数排除手段を、設ける。そして、こ
の反射経路関数排除手段によって上記同定伝達関数から
上記反射経路に係る部分を排除した後の伝達関数を、上
記第2の伝達関数のうち、上記適応フィルタの出力側か
ら第2の検出手段の検出部分までに至る所謂直接的な部
分の伝達関数とする。そして、伝達関数設定手段が、当
該反射経路に係る部分を排除した後の直接的な伝達関数
を、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定
する。このようにすれば、少なくとも上記反射経路の影
響により、当該能動型雑音除去装置の制御系が発散する
のを防止できる。このことは、後述するように、模型を
用いた実測実験、及び計算機によるシミュレーション実
験によっても、確認できた。
【0072】なお、本発明の能動型雑音除去装置を構成
する上記反射経路関数排除手段は、上記本発明の伝達関
数同定装置を構成する反射経路関数排除手段と同様の反
射経路特定手段及び排除実行手段等によって、構成でき
る。
【0073】
【発明の実施の形態】本発明を例えば上記能動型消音装
置に応用する場合の一実施の形態について、各図を参照
しながら説明する。図1に、本実施の形態の概略構成を
示す。同図に示すように、本実施の形態は、上述した図
14に示す従来の消音装置において、LMS演算部9に
よる演算結果に応じてFIRフィルタ7の伝達関数Ch
を制御するタップ制御部11を設けたものである。な
お、これ以外の構成については、上記図14に示す従来
技術と同様であるので、これら同等な部分については同
一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0074】即ち、まず、上述した従来技術と同様の手
順により二次音路Cを同定する。そして、この二次音路
Cの同定後、即ち現実の二次音路Cとこれを同定して得
たFIRフィルタ7の伝達関数Chとが略等価な状態に
おいて、当該同定伝達関数Chに係る情報を、LMS演
算部9からタップ制御部11に与える。これにより、タ
ップ制御部11は、二次音路Cの推定値である同定伝達
関数Chを認識する。タップ制御部11は、この同定伝
達関数Chを、例えば逆フーリエ変換することにより、
時間領域の関数に変換して、例えば図2に示すようなイ
ンパルス応答特性を得る。なお、タップ制御部11が、
LMS演算部9から上記同定伝達関数Chを直接時間領
域で取り込むことができる場合には、これをそのまま利
用してもよい。
【0075】同図に示すように、上記二次音路Cを同定
して得た伝達関数Chのインパルス応答特性は、概ね2
つの比較的に大きいピーク成分20、30を有する。こ
れら各ピーク成分20、30は、それぞれ時間間隔T
を隔てて現れる。このうち、先に現れるピーク成分20
は、二次音路Cの同定時にスピーカ5から放出される同
定音(疑似信号mk)が、上述した直接音路Caを経て直
接的にエラーマイクロホン6に入力される、所謂直接的
成分、に相当する。一方、このピーク成分20よりも遅
れて現れるピーク成分30は、上記エラーマイクロホン
6の収音部分を通過した同定音の一部が、排気ダクト1
の排出口1aで反射して折り返し再度エラーマイクロホ
ン6に入力される、所謂上述した反射成分、に対応す
る。
【0076】なお、上記各ピーク成分20、30間の時
間的間隔Tは、上記同定音が、エラーマイクロホン6
の収音部分を通過してから排気ダクト1の排出口1aで
反射して折り返し再度エラーマイクロホン6の収音部分
にまで到達するのに要する時間、に相当する。また、各
ピーク成分20、30の各ピーク・トゥー・ピークの絶
対値Ua、Uを比較すると、直接的成分に対応するピ
ーク成分20の絶対値Uaの方が、反射成分に対応する
ピーク成分30の絶対値Uよりも大きい(Ua>
)。これは、上記排気ダクト1の排出口1aにおけ
る音響反射率の大きさが1よりも小さく、即ち当該排出
口1aに到達した同定音がここで全て反射することはな
いからである。
【0077】タップ制御部11は、上記インパルス応答
特性のうち、上述した反射音路Pに係る部分を、特定
する。この特定は、例えば当該インパルス応答特性に含
まれる各ピーク成分のうち、上記ピーク・トゥー・ピー
ク値が2番目に大きいピーク成分30を捉え、このピー
ク成分30を含むそれ以降のインパルス応答特性を、反
射音路Pに係る部分と見なすことで、実現できる。
【0078】また、これに代えて、例えば上記インパル
ス応答特性のうち、上記直接的成分に対応するピーク成
分20が現れる時点tを基準とし、この基準時点t
から上記時間間隔Tを隔てた時点t、に対応する部
分以降の部分を、上記反射音路Pに係る部分として特
定してもよい。この時間間隔Tは、例えば当該反射音
路Pの距離Lを、この反射音路P内における同定
音の平均伝搬速度で除算することにより、導出できる。
【0079】更に、上記反射音路Pに係る部分は、次
の方法よっても特定できる。即ち、まず、上記インパル
ス応答特性において、上記基準時点tから上記時間間
隔T を隔てた時点t、に対応する部分を、概略的に
特定する。これにより、上記反射音路Pに係る部分
を、大まかに特定し、所謂当たりを付ける。そして、こ
の当たりを付けた部分の例えば前後付近において、最も
ピーク・トゥー・ピーク値の大きい部分(即ち上記ピー
ク成分30)を探し出し、この最も大きい部分以降の部
分を、最終的に上記反射音路Pに係る部分として特定
してもよい。このように、上記反射音路Pに係る部分
を特定する方法は、いろいろあるが、これら以外の方法
により、当該反射音路Pに係る部分を特定してもよ
い。
【0080】このようにインパルス応答特性のうち上記
反射音路Pに係る部分を特定した後、タップ制御部1
1は、この特定して得た反射音路Pに係る部分を排除
する。具体的には、例えば、当該インパルス応答特性の
うち、上記ピーク成分30が現れる時点t以降の部
分、または当該時点tよりも少し前の時点taからそ
れ以降の部分、について、これらの部分に対応するフィ
ルタタップのフィルタ係数chk(i)を、全て零(0)に
置換する。この置換は、例えば一般に知られている矩形
窓や指数窓等の窓関数で上記インパルス応答特性を処理
することにより、実現できる。また、当該窓関数とし
て、例えばガウス窓やハニング窓等の所定の特性を有す
る窓を用いれば、上記インパルス応答特性を所定の形態
に加工することもできる。
【0081】上記のように時点tまたはta以降の部
分に対応するフィルタタップのフィルタ係数chk(i)を
全て零に置換するのではなく、上記ピーク成分30を含
む所定区間のみ、例えば上記時点ta以降の部分でイン
パルス応答特性の絶対値Uが比較的に大きく、換言すれ
ば反射音路Pによる影響が比較的に大きいと思われる
区間Tpのみ、に対応するフィルタタップのフィルタ係
数chk(i)を、零(0)に置換するようにしてもよい。
このようにすれば、上記時点tまたはta以降の部分
に対応するフィルタタップのフィルタ係数chk(i)を全
て零に置換する場合に比べて、当該置換処理に係る時間
を短縮できると共に、タップ制御部11の負担を軽減で
きる。これは、特に上記フィルタタップのタップ長が長
いほど、有効である。
【0082】また、上記のようにフィルタ係数chk(i)
を零に置換するのではなく、上記反射音路Pに係る部
分に対応するフィルタタップを削除することにより、当
該反射音路Pに係る部分を排除してもよい。具体的に
は、上記時点tまたはta以降の部分に対応するフィ
ルタタップを全て削除して、このフィルタタップのタッ
プ長を上記時点tまたはtaまでの長さとする。
【0083】そして、上記のように反射音路Pに係る
部分を排除した後、タップ制御部11は、当該反射音路
に係る部分を排除して得た時間領域の伝達関数を、
FIRフィルタ7に設定し直す。これにより、FIRフ
ィルタ7には、上記二次音路Cを同定して得た伝達関数
Chのうち、反射音路Pに係る部分(即ち上述したP
h)を排除して、上述した直接音路Caに係る部分のみ
を同定して得たのと等価な伝達関数、所謂上述したCah
が、設定される。なお、FIRフィルタ7に代えて、I
IR(Infinite Impulse Response:巡回)型のディジ
タルフィルタを用いてもよい。また、当該FIRフィル
タ7の代わりに、周波数領域で処理を行うフィルタを用
いてもよい。この場合、上記時間領域の伝達関数Cah
を、例えばフーリエ変換する等、所定の変換処理を施す
ことにより、周波数領域の関数に変換した後、この周波
数領域の関数を、上記FIRフィタ7の代わりに配置し
た周波数領域で処理を行うフィルタに、設定する。
【0084】なお、上記反射音路Pに係る部分Ph
を排除する方法として、例えば上記FIRフィルタ7の
タップ長を制限する方法を採用する場合には、二次音路
Cを同定する度に、当該FIRフィルタ7のタップ長を
元のタップ長に戻す。そして、このように元のタップ長
に戻した状態で、二次音路Cを同定し直し、この同定後
に、上記反射音路Pに係る部分Phを排除すべくF
IRフィルタ7のタップ長を制限するようにしてもよ
い。このようにすれば、二次音路Cを同定する毎に反射
音路Pが変化しても、この変化に十分に対応でき、正
確な同定を実現できる。
【0085】上記のように、本実施の形態においては、
本来、上記反射音路Pをも含む二次音路C全体を補償
するためのFIRフィルタ7に対して、直接音路Caの
みを同定して得たのと等価な伝達関数Cahを設定する。
即ち、上記反射音路Pに係る部分については、当該F
IRフィルタ7による補償の対象外となる。従って、例
えば上記FIRフィルタ7により上記反射音路Pをも
含む二次音路C全体を補償する場合に比べて、当該消音
装置による消音効果が低下する可能性が有り得る。しか
し、本実施の形態によれば、上記反射音路Pが例えば
排気ダクト1内の温度変化等の環境変化により大きく変
化しても、元々当該反射音路Pを補償する手段(即ち
上述したPh)が存在しないので、これら両者P
びPhが乖離することはない。従って、FIRフィル
タ7に設定されている伝達関数Cahが上記直接音路Ca
と或る程度近似している状態にある限り、少なくとも上
記反射音路Pの影響により、消音装置の制御系が発散
することはなく、安定した消音効果を期待できる。この
ことについて、以下、数式等を交えてより論理的に説明
する。
【0086】即ち、本実施の形態においては、上記反射
音路Pの推定値PhをPh=0とするので、上述し
た数14で表される位相誤差θは、次の数15で表され
る。
【0087】
【数15】
【0088】この数15の関係を複素平面上に表した一
例を、図3に示す。同図に示すように、上記反射音路P
は、上述した図15と同様、実軸上における1を中心
としかつ半径が1よりも小さい円の円周上を回転する。
ここで、当該反射音路Pの推定値Phについては、
上記のようにPh=0であるので、数15からも明ら
かなように、上記位相誤差θは、当該数15における
[1+P]の偏角∠(1+P)に略等しい(θ≒∠
(1+P))。そして、上記のように当該反射音路P
の絶対値|P|が1よりも小さいこと、換言すれば
当該反射音路P(上記円)が虚軸(Im)よりも正実
数側(即ち第1象限または第4象限)に位置すること、
を鑑みると、上記位相誤差θの絶対値は、必ずπ/2よ
りも小さい値(|θ|<π/2)となる。このように、
本実施の形態によれば、上記位相誤差θは、常に「|θ
|<π/2」という条件を満足するので、少なくとも当
該消音装置の制御系が発散するのを防止でき、常に安定
した消音効果を期待できる。
【0089】なお、上記は、飽くまでFIRフィルタ7
に設定されている伝達関数Chaが現実の直接音路Caと
略等価(Cha≒Ca)である場合についての説明であ
る。従って、実際の上記位相誤差θには、次の数16に
示すように、上記FIRフィルタ7の伝達関数Chaと現
実の直接音路Caとの位相差も含まれる。
【0090】
【数16】
【0091】ただし、上述したように、例えばスピーカ
5の音波放射面からエラーマイクロホン6の収音部分ま
で間の距離Laが比較的に短い場合には、例えば排気ダ
クト1内に温度変化等が生じたとしても、消音対象とし
ている比較的に低い周波数に関して、上記直接音路Ca
は然程変化しないものと考えられる。従って、上記数1
6で表される位相誤差θの絶対値は、「|θ|<π/
2」という条件を十分に満足し、安定した消音効果が期
待できると考えられる。
【0092】なお、本実施の形態において、リファレン
スマイクロホン1が、特許請求の範囲に記載の第1の検
出手段に対応し、エラーマイクロホン6が、特許請求の
範囲に記載の検出手段及び第2の検出手段に対応する。
そして、適応フィルタ3が、特許請求の範囲に記載の適
応フィルタ手段に対応し、LMS演算部4が、特許請求
の範囲に記載の適応フィルタ制御手段に対応する。そし
て、排気音が、特許請求の範囲に記載の被制御信号に対
応し、制御音が、特許請求の範囲に記載の制御用信号に
対応する。また、一次音路P、二次音路C及び反射音路
が、それぞれ、特許請求の範囲に記載の第1の伝達
関数、第2の伝達関数及び反射経路に対応する。
【0093】更に、疑似信号発生器8が、特許請求の範
囲に記載の疑似信号生成手段に対応する。そして、FI
Rフィルタ7が、特許請求の範囲に記載のディジタルフ
ィルタ手段に対応し、このFIRフィルタ7、LMS演
算部9及び比較器10から成る部分が、特許請求の範囲
に記載の同定フィルタ制御手段に対応する。そして、タ
ップ制御部11が、特許請求の範囲に記載の反射経路関
数排除手段及び伝達関数設定手段に対応する。
【0094】なお、本実施の形態における適応フィルタ
3及びFIRフィルタ7は、例えばDSPにより構成で
きる。そして、これらを制御する各LMS演算部4、9
は、例えばCPUにより構成できる。なお、これら各L
MS演算部4、9により各フィルタ3、7の各伝達関数
Wk、Chkを制御するのに、LMSアルゴリズムを用い
たが、これ以外の適応制御アルゴリズムを用いてもよ
い。特に、FIRフィルタ7の伝達関数Chkについて
は、一般に知られているM系列信号を用いた相関法によ
り更新制御を行えば、極めて簡単な構成でかつ高速に、
当該更新制御(即ち、二次音路Cを同定)を実現でき
る。また、本実施の形態において新たに追加したタップ
制御部11についても、CPUにより構成できる。従っ
て、本実施の形態において当該フィルタ制御手段11を
追加しても、消音装置全体が大型化したり、極端に高コ
スト化したりすることはない。このフィルタ制御手段1
1は、LMS演算部9に内蔵することもできる。
【0095】更に、本実施の形態では、本発明を能動型
消音装置に応用する場合について説明したが、これに限
らない。例えば、一般に知られているエコーキャンセラ
等の他の雑音除去装置についても、本発明を応用でき
る。更に、上記二次音路C(直接音路Ca)等のような
任意の信号伝送路の伝達関数を同定することを目的とす
る装置にも、本発明を応用できる。
【0096】
【実施例】本実施の形態の実施例として、本実施の形態
による効果を立証するための実験を2つ行なったので、
以下に説明する。
【0097】[第1の実験について]第1の実験とし
て、「本実施の形態によれば、反射音路Pが変化して
も、少なくとも消音装置の制御系が発散することはな
い。」、ということを立証するための実験を行なった。
なお、当該制御系が発散するか否かは、上述した公比GR
を評価することにより判断する。図4に、この第1の実
験において実際に使用した模型の概略構成を示す。
【0098】同図に示すように、この模型は、上記図1
に示す消音装置を模擬したもので、排気ダクト1とし
て、両端1a、1cが開口した円筒状の塩化ビニルパイ
プを、用いたものである。そして、このビニルダクト1
の一端(同図における左側端部)1cに、当該一端1c
からビニルダクト1内に音波を放出する状態に騒音源ス
ピーカ50を設け、このスピーカ50に対して、信号発
生装置51から騒音信号xkを供給し、これにより、当
該スピーカ50から放出される音波を上記排気音として
代用する。また、本第1の実験では、信号発生装置51
の発生する騒音信号xkを、図1におけるリファレンス
マイクロホン2の出力信号としても代用し、これをコン
トローラ52に供給する。
【0099】コントローラ52は、図1における各フィ
ルタ3、7、各LMS演算部4、9、疑似信号発生器
8、加算器10及びタップ制御部11から成る部分を、
内蔵したもので、これに供給される上記騒音信号xk
は、当該コントローラ52内に内蔵されている(図4に
は示さない)各フィルタ3、7に入力される。コントロ
ーラ52(適応フィルタ3)は、この騒音信号xkに対
して上述した数1に示す畳み込み演算を施し、その処理
後の信号ykを、二次音源スピーカ5に入力する。な
お、本第1の実験においては、スピーカ5をビニルダク
ト1に対して直接結合させるのではなく、当該ビニルダ
クト1から分岐した状態の所謂枝管53を介して、これ
らスピーカ5とビニルダクト1とを結合している。この
枝管53もまた、ビニルダクト1と同様の塩化ビニルパ
イプ製である。
【0100】そして、ビニルダクト1内における上記枝
管53との結合部分(スピーカ5の放出する制御音とビ
ニルダクト1内を伝搬する騒音との干渉点)と他端(同
図における右側端部)1aとの間であって、当該ビニル
ダクト1と枝管53との結合部分寄りの位置に、エラー
マイクロホン6を設ける。そして、このエラーマイクロ
ホン6の出力信号ekを、上記コントローラ52に供給
し、詳しくは当該コントローラ52に内蔵されている
(図4には示さない)LMS演算部4と加算器10とに
入力する。
【0101】なお、上記ビニルダクト1を構成する塩化
ビニルパイプは、その内径が71mmのものであって、
当該ビニルダクト1の全長Lは、L=5511mmであ
る。そして、このビニルダクト1の一端(騒音源スピー
カ50の音波放射面)1cから上記枝管53との結合部
分までの距離、即ち主一次音路Pの音路長Lは、L
=2270mmであり、当該ビニルダクト1と枝管5
3との結合部分からエラーマイクロホン6の収音部分ま
での距離Laは、La=177mmである。更に、当該エ
ラーマイクロホン6の収音部分からビニルダクト1の他
端1aまでの距離、即ち反射音路Pの略1/2の音路
長L/2は、L/2=3064mmである。そし
て、枝管53長さ寸法Lsは、Ls=148mmである。
この枝管53の長さ寸法Lsと、上記ビニルダクト1と
枝管53との結合部分からエラーマイクロホン6の収音
部分までの距離Laとの和(Ls+La)が、概ね直接音
路Caの音路長に対応する。
【0102】上記構成において、まず、二次音路Cを十
分に同定する。そして、この同定終了後、ビニルダクト
1の上記反射音路Pに係る音路長Lを、L/2=
3064mmからL/2=2043mmに変更し、こ
れにより、例えばビニルダクト1内の環境変化により当
該反射音路P(当該区間Lにおける音響的距離)が
変化した状態を、シミュレートする。なお、直接音路C
a(即ち、音路長[Ls+La])については、不変とす
る。
【0103】上記状態においては、現実の反射音路P
に係る音路長LがL/2=2043mmであるにも
係らず、上記FIRフィルタ7には、当該反射音路P
に係る音路長LがL/2=3064mmであるとき
の同定伝達関数Ch(=Cah(1+Ph))が、設定さ
れている状態にある。即ち、現実の二次音路Cと、これ
を補償するためのFIRフィルタ7の伝達関数Chとで
は、それぞれを構成する直接音路Ca、Cahに係る部分
については互いに等価(Ca=Cah)であるものの、上
記反射音路P、Phに係る部分ついては乖離してい
る状態(P≠Ph)にある。この状態で、上述した
数12に基づいて、公比GRの絶対値を導出する。その結
果を、図5(a)に示す。なお、この導出に際しては、
数12におけるステップ・サイズ・パラメータμwをμw
=0.005とし、疑似信号|Xk|を|Xk|=1とし
て、当該導出を行った。
【0104】この図5(a)から明らかなように、現実
の反射音路Pとその推定値Phとが乖離している場
合には、所々の周波数(消音対象周波数)fにおいて、
例えばf=80Hz、405Hz、440Hz、490
Hz及び595Hzにおいて、公比GRの絶対値が1を超
える(|GR|>1)ことが判る。従って、これらの周波
数fにおいては、制御系が発散する可能性があることが
予想される。
【0105】次に、上記反射音路Pに係る音路長L
がL/2=3064mmであるときに二次音路Cを同
定して得た同定伝達関数Chから、当該反射音路P
係る部分Phを排除し、これによって、直接音路Caの
みを同定したのと略等価な伝達関数Cahを求める。な
お、上記反射音路Pに係る部分Phの排除は、例え
ば上述した矩形窓により、FIRフィルタ7を構成する
各タップのうち、92タップ目(上述した時間taに換
算するとta=約15ms:サンプリング周波数fs=6
133Hz)以降のタップに係る各フィルタ係数chk
(i)を、全て零に置換することによって、実現する。そ
して、この求めて得た伝達関数Cahを、FIRフィルタ
7に設定し、この状態で、上記数12に基づいて、公比
GRの絶対値を導出する。その結果を、図5(b)に示
す。ここでも、ステップ・サイズ・パラメータμwをμw
=0.005とし、疑似信号|Xk|を|Xk|=1とし
て、上記公比|GR|の絶対値を導出した。
【0106】この図5(b)に示すように、上記同定伝
達関数Chから反射音路Pに係る部分Phを排除し
て、直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIRフィ
ルタ7に設定した場合には、上記公比GRの絶対値が1を
超える周波数fは存在しない、という結果が得られた。
従って、いずれの周波数fにおいても、制御系は発散せ
ず、安定した消音効果を期待できる。
【0107】ただし、上記図5(a)及び図5(b)に
表示されている全周波数帯域にわたって、上記公比GRの
絶対値を全体的に観察すると、その平均値は、図5
(a)の場合の方が図5(b)の場合よりも小さい、と
いう感がある。これは、上述したように、本実施の形態
のように直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIR
フィルタ7に設定した場合には、制御系の発散を確実に
防止することはできるものの、その反面、上記反射音路
を補償すべく手段を備えていないので、当該反射音
路Pを相殺することができず、その分、上記公比GRの
絶対値が大きくなるものと考えられる。なお、この公比
GRの絶対値が、大きいほど、制御系の収束速度は遅くな
るが、当該公比GRの絶対値が1よりも小さい限り、確実
に消音効果を得ることができる。
【0108】本第1の実験では、上記図4に示す模型を
使用するのと同様な条件を、計算機によりシミュレート
することも試みた。このシミュレーションにより上記公
比GRの絶対値を求めた結果を、図6に示す。なお、同図
において、(a)が、現実の反射音路Pと、FIRフ
ィルタ7に設定されている当該反射音路Pの推定値P
hと、が乖離している場合の、シミュレーション結果
である。そして、同図(b)が、上記直接音路Caのみ
に係る伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場合
の、シミュレーション結果である。
【0109】同図からも明らかなように、現実の反射音
路Pとその推定値Phとが乖離している場合(同図
(a)の場合)には、所々の周波数fにおいて公比GRの
絶対値が1を超えてしまう。一方、上記直接音路Caの
みに係る伝達関数CahをFIRフィルタ7に設定した場
合には、同図(b)に示すように、いずれの周波数fに
おいても上記公比GRの絶対値が1を超えることはない。
そして、この公比GRの絶対値を全体的に見ると、同図
(b)の場合に比べて、同図(a)の場合の方が小さ
い、という上記図4に示す模型を使用しての実験結果
(即ち図5のグラフ)と略同様の結果が得られた。
【0110】更に、図7及び図8に、それぞれ、現実の
反射音路PとFIRフィルタ7に設定されている当該
反射音路Pの推定値Phとが乖離している場合と、
上記直接音路Caのみに係る伝達関数CahをFIRフィ
ルタ7に設定した場合とでの、上記各公比GRの絶対値
を、複素平面に表した図を示す。なお、各図において、
(a)は、上記図4に示す模型を使用して実験を行った
結果を示すデータ、(b)は、計算機によるシミュレー
ション結果のデータである。
【0111】これら各図に示すように、上記図4に示す
模型を使用しての実験においても、計算機によるシミュ
レーションにおいても、上記公比GRの絶対値は略同様な
軌跡を示す。これは、まさしく、本実施の形態の技術的
根拠、即ち上記二次音路Cを同定して得た伝達関数Ch
のうち、上記反射音路Pに係る部分Phを排除して
直接音路Caのみに係る部分Cahを導出し、これを上記
FIRフィルタ7に設定すれば、少なくとも消音装置の
制御系が発散するのを防止できる、という理論、の正当
性を証明するデータであると言える。なお、図7及び図
8の各(a)と(b)とにおいて、それぞれの目盛りの
値が異なるのは、上記模型による実験と、計算機による
シミュレーションとで、アンプゲイン等の諸条件が異な
るためである。
【0112】[第2の実験について]第2の実験とし
て、「本実施の形態によれば、反射音路Pが変化して
も、常に安定した消音効果が得られる。」、ということ
を立証するための実験を行なった。なお、当該消音効果
が得られるか否かは、エラーマイクロホン6の出力する
エラー信号ekの信号レベルeを評価することにより判
断する。
【0113】即ち、まず、上記図1に示す消音装置と同
様の制御系を、計算機によりシミュレートして形成す
る。ここで、排気ダクト1内におけるリファレンスマイ
クロホン2からエラーマイクロホン6までの間の主一次
音路Pを、20タップ目に値1のインパルスを有する
所謂単純遅延とする。一方、二次音路Cについては、図
9(a)に示すように、二次音源スピーカ5から放出さ
れた同定音が、10タップ目に値1でエラーマイクロホ
ン6の収音部分に到達した後、排気ダクト1の排出口1
aにおいて反射して、最終的に20タップ目に値−0.
9で再度エラーマイクロホン6の収音部分にまで戻って
くる、というモデルをシミュレートする。
【0114】そして、FIRフィルタ7に、上記図9
(a)と全く同様のインパルス応答特性を有する伝達関
数Ch(=C)を設定し、この状態で、適応消音動作を
計算機上で実行する。これとは別に、上記図9(a)に
示すインパルス応答特性のうち、上記20タップ目に値
−0.9で現れる反射成分(P)を排除したのと等価
な伝達関数Cahを、FIRフィルタ7に設定し、この状
態で、適応消音動作を計算機上で実行する、というシミ
ュレーションを行なう。そして、これら各条件による消
音効果を、エラー信号Ekのレベルに基づいて、評価す
る。
【0115】なお、上記反射成分Pの排除は、上記2
0タップ目の値(−0.9)を零に置換する(換言すれ
ば10タップ目以外の各タップの値を零とする)ことに
より、実現する。また、上記適応消音動作に係る各パラ
メータの設定条件は、次の通りとする。即ち、適応フィ
ルタ3のタップ長wtapを、wtap=128とし、FIRフ
ィルタ7のタップ長ctapを、ctap=128とする。ま
た、これら各フィルタ3、7により疑似信号xkを処理
する際に、一時的に当該疑似信号xk(データ)を保存
しておくための所謂入力バッファについても、そのバッ
ファ長bをb=128とする。更に、ステップ・サイズ
・パラメータμwについては、μw=0.1と比較的に大
き目の値に設定する。このようにステップ・サイズ・パ
ラメータμwの値を大き目の値に設定するのは、上記シ
ミュレーション結果(消音効果)を短時間で確認するた
めである。そして、これらの条件の下、上述した数2に
基づいて、厳密には当該数2を周波数領域で表した演算
式に基づいて、適応フィルタ3のフィルタ係数Wkを更
新する。
【0116】図10に、上記フィルタ係数Wkの更新処
理を4回実行したときのシミュレーション結果を示す。
なお、同図において、(a)が、FIRフィルタ7に、
上記図9(a)と全く同様のインパルス応答特性を有す
る伝達関数Ch(=C)を設定した場合のシミュレーシ
ョン結果である。そして、同図(b)が、当該インパル
ス応答特性Cのうち上記反射成分Pを排除したのと等
価な伝達関数Cahを、FIRフィルタ7に設定した場合
のシミュレーション結果である。なお、各図の横軸の値
は、周波数(消音対象周波数)fをタップ長換算した値
を示し、縦軸の値は、上記エラー信号ekの信号レベル
eを周波数領域で表した値を示す。
【0117】同図(a)に示すように、FIRフィルタ
7に設定されている伝達関数Chと、現実の二次音路C
とが等価な場合(Ch=C)には、いずれの周波数fに
おいてもエラーレベルEが元のレベルよりも大きくなる
こと(即ち制御系が発散すること)がなく、しかも、最
大で−40dB強という非常に大きな消音効果が得られ
る。一方、現実の二次音路Cのうち直接音路Caのみを
同定したのと等価な伝達関数CahをFIRフィルタ7に
設定した場合にも、同図(b)に示すように、いずれの
周波数fにおいてもエラーレベルEが元のレベルよりも
大きくなることはない。しかし、この同図(b)の場合
には、FIRフィルタ7に設定されている伝達関数Ch
と現実の二次音路Cとが、必ずしも等価ではない(Ch
≠C)ため、同図(a)の場合ほど大きな消音効果を期
待することはできない。ただし、最大で−20dB近い
消音効果が得られることは、明らかである。
【0118】次に、図9(b)に示すように、排気ダク
ト1の排出口1aにおいて反射した同定音が、19タッ
プ目に値−0.9でエラーマイクロホン6の収音部分に
まで戻ってくる、という二次音路Cのモデルをシミュレ
ートする。即ち、同図(a)のモデルと比較して、当該
反射成分が現れるタップ数を20タップから19タップ
に1タップずらすことにより、例えば排気ダクト1内の
環境変化等により上記反射音路Pが変化した状態を、
シミュレートする。そして、FIRフィルタ7に設定す
る伝達関数や、各フィルタ3、7の各タップ長wtap、ct
ap等については、前回と全く同じ条件で、適応消音動作
を実行する。
【0119】図11に、この図9(b)のモデルについ
てフィルタ係数Wkの更新処理を4回実施したときのシ
ミュレーション結果を示す。なお、同図において、
(a)が、FIRフィルタ7に、上記図9(a)と全く
同様のインパルス応答特性を有する伝達関数Chを設定
した場合のシミュレーション結果である。そして、この
図11の(b)が、上記10タップ目以外の各タップの
値を全て零とした伝達関数Cahを、FIRフィルタ7に
設定した場合のシミュレーション結果である。
【0120】上記図11(a)から明らかなように、反
射音路Pが変化したにも係らず、未だ当該変化前の二
次音路Cと等価な伝達関数ChがFIRフィルタ7に設
定されている場合には、周波数によってはエラーレベル
Eが元のレベルよりも大きくなり、即ち制御系が発散傾
向になることが判る。一方、FIRフィルタ7に、現実
の二次音路Cのうち直接音路Caのみを同定したのと等
価な伝達関数Cahが設定されている場合には、同図
(b)に示すように、いずれの周波数fにおいてもエラ
ーレベルEが元のレベルよりも大きくなることはなく、
上記図10(b)の場合と略同様な消音効果が得られる
ことが判る(ただし、消音効果がピークとなる周波数f
は異なる)。
【0121】このように、第1の実験、及び第2の実験
により、「本実施の形態によれば、反射音路Pが変化
しても、少なくとも消音装置の制御系が発散することは
なく、常に安定した消音効果が得られる。」、という本
実施の形態の効果を確認できた。
【0122】
【発明の効果】以上のように、本発明の伝達関数同定装
置によれば、伝送路内に設けられている検出手段と当該
伝送路の出力側端部との間が開いており、これら両者間
に所謂反射経路が形成されている場合でも、この反射経
路に係る部分を排除して、真に同定の対象としている伝
送路内の所定の部分(疑似信号の入力部分から検出手段
の検出部分までの区間)のみの伝達関数を導出できる、
という効果がある。また、上記反射経路に係る部分を排
除する反射経路関数排除手段は、例えばCPU等を用い
てソフトウェア的に実現できるので、当該反射経路関数
排除手段を付加しても装置全体の構成が大型化すること
はなく、かつ比較的に低コストで本発明を実現できる。
【0123】本発明の能動型雑音除去装置は、第2の伝
達関数を補償するためのディジタルフィルタ手段を有す
るfiltered-x LMSアルゴリズム構成の制御系において、
当該第2の伝達関数を同定するのに、上記伝達関数同定
装置を利用するものである。即ち、上記第2の伝達関数
に対して実際に反射経路が影響する場合に、当該第2の
伝達関数を同定して得た伝達関数のうち、当該反射経路
に係る部分を排除して、これを上記ディジタルフィルタ
手段の伝達関数として設定する。これにより、少なくと
も上記反射経路の影響により、当該能動型雑音除去装置
の制御系が発散するのを防止でき、常に安定した雑音除
去動作を実現できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を能動型消音装置に応用する場合の一実
施の形態を示す概略構成図である。
【図2】同実施の形態において、二次音路Cを同定して
得た伝達関数Chを時間領域で表したインパルス応答特
性図である。
【図3】同実施の形態の制御系に対する反射音路の影響
を示す複素平面図である。
【図4】同実施の形態の実施例として、同実施の形態に
よる効果を立証するための第1の実験において使用した
模型の概略構成を示す図である。
【図5】図5の模型による実験結果を示す図である。
【図6】図5の模型を使用するのと同様の実験を、計算
機によりシミュレートした結果である。
【図7】図5の模型による実験結果と、計算機によるシ
ミュレーション結果と、の比較データであって、反射音
路Pを含む二次音路Cを同定して得た伝達関数Chを用
いた場合のデータである。
【図8】図7とは別の条件下での、図5の模型による実
験結果と、計算機によるシミュレーション結果と、の比
較データであって、二次音路Cのうち直接音路Caのみ
を同定して得たのと等価な伝達関数Cahを用いた場合の
データである。
【図9】同実施の形態の実施例として、同実施の形態に
よる効果を立証するための第2の実験におけるシミュレ
ーションの条件を模式的に示す図である。
【図10】同第2の実験によるシミュレーション結果を
示す図で、(a)は、反射音路P を含む二次音路Cを
同定して得た伝達関数Chを用い、二次音路Cと伝達関
数Chとが等しい条件下で、適応消音動作を実行した場
合のシミュレーション結果、(b)は、二次音路Cのう
ち直接音路Caのみを同定して得たのと等価な伝達関数
Cahを用い、二次音路Cと伝達関数Chとが等しい条件
下、即ち直接音路Caと伝達関数Cahとが等しい条件下
で、適応消音動作を実行した場合のシミュレーション結
果、である。
【図11】同第2の実験によるシミュレーション結果を
示す図で、(a)は、反射音路P を含む二次音路Cを
同定して得た伝達関数Chを用い、直接音路Caと伝達関
数Cahとは等しいが、反射音路Pと伝達関数Phと
が異なる条件下で、適応消音動作を実行した場合のシミ
ュレーション結果、(b)は、二次音路Cのうち直接音
路Caのみを同定して得たのと等価な伝達関数Cahを用
い、直接音路Caと伝達関数Cahとが等しく、かつ、現
実の反射音路Pを変化させるという条件下で、適応消
音動作を実行した場合のシミュレーション結果、であ
る。
【図12】従来の能動型消音装置の概略構成図である。
【図13】図12の構成において、二次音路を同定する
ための部分を抜粋した図である。
【図14】図12の構成において、反射音路Pが形成
される場合を示す図である。
【図15】図14の制御系において、当該制御系に対す
る反射音路の影響を示す複素平面図である。
【符号の説明】
1 排気ダクト 2 リファレンスマイクロホン 3 適応フィルタ 4 LMS演算部 5 二次音源スピーカ 6 エラーマイクロホン 7 FIRディジタルフィルタ 8 疑似信号発生器 9 LMS演算部 11 タップ制御部 P 主一次音路 P 反射音路 Ca 直接音路

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 疑似信号を生成して伝送路に入力する疑
    似信号生成手段と、 上記伝送路の途中において該伝送路内を伝搬する信号を
    検出する検出手段と、 上記疑似信号が入力されるディジタルフィルタ手段を含
    み、該ディジタルフィルタ手段により上記疑似信号を処
    理した後の信号と上記検出手段の出力信号とが近似する
    状態に、上記疑似信号と上記検出手段の出力信号とに基
    づいて該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する
    ことにより上記伝送路の伝達関数を同定する同定フィル
    タ制御手段と、 この同定フィルタ制御手段によって同定して得た同定伝
    達関数のうち、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分
    から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端
    部において反射して折り返し再度上記検出手段により検
    出されるまでの反射経路に係る部分、を排除する反射経
    路関数排除手段と、 この反射経路関数排除手段によって上記同定伝達関数か
    ら上記反射経路に係る部分を排除した後の伝達関数に係
    る情報を出力する情報出力手段と、を具備する伝達関数
    同定装置。
  2. 【請求項2】 上記反射経路関数排除手段は、 上記同定伝達関数を時間領域で表す手段を有し、 この時間領域で表される同定伝達関数において、上記反
    射経路に係る部分を特定する反射経路特定手段と、 上記時間領域で表される同定伝達関数を構成するフィル
    タタップのうち、少なくとも上記反射経路特定手段によ
    って特定して得た上記反射経路に係る部分のフィルタタ
    ップのフィルタ係数を概略零に置換し、または、少なく
    とも該反射経路に係る部分以降のフィルタタップを削除
    することにより、上記同定伝達関数から該反射経路に係
    る部分を排除する排除実行手段と、から成る、請求項1
    に記載の伝達関数同定装置。
  3. 【請求項3】 上記反射経路特定手段は、上記時間領域
    で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含
    まれるピーク成分のうちピーク・トゥー・ピーク値が2
    番目に大きいピーク成分の存在する部分以降の部分、ま
    たは該2番目に大きいピーク成分の存在する部分を含む
    所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状
    態に構成された、請求項2に記載の伝達関数同定装置。
  4. 【請求項4】 上記反射経路特定手段は、上記時間領域
    で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含
    まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピーク
    値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、この
    基準時点から、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分
    から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端
    部において反射して折り返し再度上記検出手段の検出部
    分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応
    する部分以降の部分、または該時点に略対応する部分を
    含む所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定す
    る状態に構成された、請求項2に記載の伝達関数同定装
    置。
  5. 【請求項5】 上記反射経路特定手段は、上記時間領域
    で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含
    まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピーク
    値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、この
    基準時点から、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分
    から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端
    部において反射して折り返し再度上記検出手段の検出部
    分にまで達するのに要する時間を隔てた時点、に略対応
    する部分を含む或る区間内で最もピーク・トゥー・ピー
    ク値の大きいピーク成分が存在する部分、以降の部分、
    または該或る区間内で最も大きいピーク成分が存在する
    部分、を含む所定区間を、上記反射経路に係る部分とし
    て特定する状態に構成された、請求項2に記載の伝達関
    数同定装置。
  6. 【請求項6】 上記排除実行手段は、所定の窓関数によ
    り、上記同定伝達関数のうち少なくとも上記反射経路に
    係る部分を排除する状態に構成された、請求項2に記載
    の伝達関数同定装置。
  7. 【請求項7】 第1の伝達関数を有する伝送路に入力さ
    れる被制御信号を検出する第1の検出手段と、 上記伝送路の途中において該伝送路内を伝搬する信号を
    検出する第2の検出手段と、 上記第1の検出手段の出力信号を処理し、この処理して
    得た制御用信号を、上記伝送路内における上記第1及び
    第2の各検出手段間の或る地点に放出する適応フィルタ
    手段と、 上記第1の検出手段の出力信号をディジタルフィルタ手
    段により処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力
    信号とが入力され、これらに応じて、上記適応フィルタ
    手段の伝達関数と、この適応フィルタ手段の出力側から
    上記伝送路を経て上記第2の検出手段の検出部分までの
    間に存在する第2の伝達関数と、の合成による伝達関数
    が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応フ
    ィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段
    と、 疑似信号を生成して上記第2の伝達関数に入力する疑似
    信号生成手段と、 上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間
    に介在して上記第2の伝達関数を補償する上記ディジタ
    ルフィルタ手段を含み、該ディジタルフィルタ手段に上
    記疑似信号を入力して、該ディジタルフィルタ手段によ
    り該疑似信号を処理した後の信号とそのときの上記第2
    の検出手段の出力信号とが近似する状態に、上記疑似信
    号と上記第2の検出手段の出力信号とに基づいて該ディ
    ジタルフィルタ手段の伝達関数を制御することにより上
    記第2の伝達関数を同定する同定フィルタ制御手段と、 この同定フィルタ制御手段によって同定して得た同定伝
    達関数のうち、上記疑似信号が上記検出手段の検出部分
    から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該出力側端
    部において反射して折り返し再度上記第2の検出手段に
    より検出されるまでの反射経路に係る部分、を排除する
    反射経路関数排除手段と、 この反射経路関数排除手段によって上記同定伝達関数か
    ら上記反射経路に係る部分を排除した後の伝達関数を、
    上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数として設定する
    伝達関数設定手段と、を具備する能動型雑音除去装置。
  8. 【請求項8】 上記反射経路関数排除手段は、 上記同定伝達関数を時間領域で表す手段を有し、 この時間領域で表される同定伝達関数において、上記反
    射経路に係る部分を特定する反射経路特定手段と、 上記時間領域で表される同定伝達関数を構成するフィル
    タタップのうち、少なくとも上記反射経路特定手段によ
    って特定して得た上記反射経路に係る部分のフィルタタ
    ップのフィルタ係数を概略零に置換し、または、少なく
    とも該反射経路に係る部分以降のフィルタタップを削除
    することにより、上記同定伝達関数から該反射経路に係
    る部分を排除する排除実行手段と、から成る、請求項7
    に記載の能動型雑音除去装置。
  9. 【請求項9】 上記反射経路特定手段は、上記時間領域
    で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に含
    まれるピーク成分のうちピーク・トゥー・ピーク値が2
    番目に大きいピーク成分の存在する部分以降の部分、ま
    たは該2番目に大きいピーク成分の存在する部分を含む
    所定区間を、上記反射経路に係る部分として特定する状
    態に構成された、請求項8に記載の能動型雑音除去装
    置。
  10. 【請求項10】 上記反射経路特定手段は、上記時間領
    域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に
    含まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピー
    ク値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、こ
    の基準時点から、上記疑似信号が上記第2の検出手段の
    検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該
    出力側端部において反射して折り返し再度上記第2の検
    出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた
    時点、に略対応する部分以降の部分、または該時点に略
    対応する部分を含む所定区間を、上記反射経路に係る部
    分として特定する状態に構成された、請求項8に記載の
    能動型雑音除去装置。
  11. 【請求項11】 上記反射経路特定手段は、上記時間領
    域で表される同定伝達関数において、該同定伝達関数に
    含まれるピーク成分のうち最大のピーク・トゥー・ピー
    ク値を有するピーク成分が現れる時点を基準として、こ
    の基準時点から、上記疑似信号が上記第2の検出手段の
    検出部分から上記伝送路の出力側端部にまで伝搬して該
    出力側端部において反射して折り返し再度上記第2の検
    出手段の検出部分にまで達するのに要する時間を隔てた
    時点、に略対応する部分を含む或る区間内で最もピーク
    ・トゥー・ピーク値の大きいピーク成分が存在する部
    分、以降の部分、または該或る区間内で最も大きいピー
    ク成分が存在する部分、を含む所定区間を、上記反射経
    路に係る部分として特定する状態に構成された、請求項
    8に記載の能動型雑音除去装置。
  12. 【請求項12】 上記排除実行手段は、所定の窓関数に
    より、上記同定伝達関数のうち少なくとも上記反射経路
    に係る部分を排除する状態に構成された、請求項8に記
    載の能動型雑音除去装置。
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