JP3725959B2 - 伝達関数同定装置及び能動型雑音除去装置 - Google Patents
伝達関数同定装置及び能動型雑音除去装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝送路の伝達関数を同定する際に、特に外乱雑音の存在する環境の下で上記伝送路の伝達関数を同定するのに適した伝達関数同定装置と、この伝達関数同定装置の技術を利用した能動型雑音除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような能動型雑音除去装置として、従来、例えば図8に示すようなアクティブ消音装置(Active Noise Controller :ANC)が知られている。このアクティブ消音装置は、騒音、例えばエンジン(図示せず)等の排気音に対して、これと実質的に等大で逆位相の音波を干渉させることによって上記排気音を打ち消すものである。なお、同図において、この消音装置が消音の対象とする排気音は、例えば排気ダクト1内を左側から右側に向かって伝搬するものとする。
【0003】
このアクティブ消音装置は、排気ダクト1の入口側(同図の左側)において上記排気音をリファレンスマイクロホン2によって収音し、このリファレンスマイクロホン2によって収音された騒音信号xk (ただし、kは、時間を表すインデックスである。)が入力されるFIR適応型ディジタルフィルタ(以下、適応フィルタと称す。)3を有している。この適応フィルタ3は、入力された騒音信号xk に対して、後述するLMS演算部4により設定されるフィルタ係数を用いて所定のフィルタリング処理、例えば畳み込み和演算を施すもので、その演算結果yk を二次音源スピーカ(以下、スピーカと称す。)5に供給する。スピーカ5は、上記信号yk に応じた音波を排気ダクト1内に放音し、即ち排気ダクト1内を伝搬している排気音に干渉させ、これによって上記排気音を打ち消す。
【0004】
更に、排気ダクト1の出口側にはエラーマイクロホン6が配置されており、このエラーマイクロホン6によって、上記排気音をスピーカ5の放射音で打ち消した後の音、つまりは排気音とスピーカ5の放射音との誤差成分を検出する。このエラーマイクロホン6の出力は、エラー信号ek として上述したLMS演算部4に供給される。また、このLMS演算部4には、上記エラー信号ek の他に、騒音信号xk を後述するFIRフィルタ7で処理して得た信号rk も供給される。
【0005】
LMS演算部4は、供給されたエラー信号ek と上記信号rk とに応じて、適応フィルタ3の伝達関数Wk と後述する二次音路(error path)の伝達関数(以下、単に二次音路と称す。)Cとの合成による伝達関数(両者を掛けて得られる伝達関数、即ち[Wk ×C])が、排気ダクト1内のリファレンスマイクロホン2からエラーマイクロホン6までの間に存在する一次音路(primary path)の伝達関数(以下、単に一次音路と称す。)Pと相補になるように、LMSアルゴリズムに従って適応フィルタ3のフィルタ係数を更新する。このように、適応フィルタ3の伝達関数Wk と二次音路Cとの合成による伝達関数[Wk ×C]を、一次音路Pと相補にすることによって初めて、排気ダクト1内の排気音をスピーカ5の放射音で打ち消すことができる。また、排気ダクト1内の音響特性に例えば経時的な変化が生じ、これによって一次音路Pが変化しても、その変化に応じて上記適応フィルタ3の伝達関数Wk も上記フィルタ係数の更新により変化するので、常に安定した消音効果を得ることができる。
【0006】
ただし、上記のような適応動作を実現するには、このアクティブ消音装置の制御系をFiltered-x LMSアルゴリズムの構成とする必要があることが知られている。このFiltered-x LMSアルゴリズムの制御系においては、適応フィルタ3の出力端子からスピーカ5及び排気ダクト1の一部(スピーカ5から騒音の下流側)を経てエラーマイクロホン6までの間に、上述した二次音路Cが存在する。従って、この二次音路Cを補償する(二次音路Cの影響を打ち消す)ために、この二次音路Cと等価な伝達関数Seを有するフィルタ、例えばFIRフィルタ7を、リファレンスマイクロホン2とLMS演算部4との間に設ける必要がある。
【0007】
ところで、上記二次音路Cは、例えば排気ダクト1内の温度変化や、この温度変化によるスピーカ5の出力特性の変化等によって、経時的に変化することが知られている。従って、安定した消音効果を得るためには、この二次音路Cの変化に応じて、上記FIRフィルタ7の伝達関数Seも変化させる、即ち上記二次音路Cを同定する必要がある。また、この同定(推定又は測定)を実行する際には、このアクティブ消音装置自体の消音動作時(つまりはエンジンが動作している状態)と同じ環境下で上記同定を行うことが望ましい。そこで、このアクティブ消音装置においては、上記二次音路Cを同定するために、例えば一般に知られているM系列信号(MLS)の疑似信号(疑似ランダムノイズ)mk を発生する疑似信号発生器8を設け、この疑似信号mk を、図8に点線で示す経路で処理することによって、上記二次音路Cを同定している。これについて、図9を参照して説明する。
【0008】
図9は、上記図8に点線で示す経路、即ち二次音路Cの同定時の制御系について、その説明を判り易くするために抜粋したものである。同図に示すように、この制御系においては、二次音路Cを同定するためのFIRフィルタ7を、例えば上述したLMS演算部4とは異なる演算部9により例えばLMSアルゴリズムに従って適応制御される適応フィルタ構成としている。そして、疑似信号発生器8が発生する疑似信号mk を、スピーカ5、FIRフィルタ7及び上記LMS演算部9に供給すると共に、エラーマイクロホン6の出力信号と、上記疑似信号mk をFIRフィルタ7で処理した後の信号とを、演算器10で比較して両者の誤差εk を求め、これをLMS演算部9に供給している。LMS演算部9は、上記誤差信号εk が小さくなるように、即ち疑似信号mk を二次音路Cを通過させた後の信号と、疑似信号mk をFIRフィルタ7で処理した後の信号とが互いに等しくなるように、FIRフィルタ7のフィルタ係数を更新する。これによって、FIRフィルタ7の伝達関数Seが、二次音路Cと略等価なものとなり、即ちFIRフィルタ7による二次音路Cの同定を実現できる。
【0009】
なお、上述した適応フィルタ3、LMS演算部4、FIRフィルタ7、LMS演算部9及び演算部10については、例えばDSP(ディジタル信号処理装置)やCPU(中央演算処理装置)等によって構成されている。そして、これらのDSPやCPU等は、図示しないメモリ等の記憶部に記憶されたプログラムに従って動作し、即ち上述の適応動作や二次音路Cの同定等を実行する。
【0010】
ところが、上述したようにエンジンが動作している状態、即ちエンジンの排気音が存在する環境の下で、上記図9の制御系(図8に点線で示す制御系)により二次音路Cを同定すると、この制御系に対して上記排気音は外乱雑音として作用する。即ち、排気音は、一般に、エンジンの回転数に依存する特定の周波数領域において、極端にレベルが大きくなることが知られている。例えば、比較的に規模の大きい発電用のディーゼルエンジン等では、上記特定の周波数領域における音圧レベルが、150乃至160dBSPL(Sound Pressure Level)という非常に大きいレベルにまで達するのも珍しくない。
【0011】
このように非常に大きいレベルの排気音が存在する場合、例えば図10に示すように、或る周波数領域、即ち上記特定の周波数領域(同図において約400Hz以下の領域)において、上記排気音のレベルが、疑似信号mk (疑似ランダム信号)に基づくスピーカ5の放出音(以下、この放出音を同定音と称す。)のレベルよりも大きくなってしまうことがある。このように、同定音が排気音に埋もれた状態になってしまうと、その周波数領域において、正確な二次音路Cの同定が実現できず、ひいては安定した消音効果が得られないという問題がある。なお、上記のように特定の周波数領域に存在する非常にレベルの大きい排気音が、この消音装置によって本来最も消音したい排気音であることについては、言うまでもない。
【0012】
この問題の対応策の一つとして、例えば図11に誇張して示すように、上記同定音のレベルを、排気音の最大レベルにまで持ち上げるという方法が考えられる。しかし、このように全ての周波数領域(詳しくは、同定(消音)の対象とする周波数領域)にわたって、上記排気音の最大レベルと略同等のレベルを有する音波を放出するには、スピーカ5等の音波出力系に対して非常に大きい負担が掛かる。また、上記音波出力系として、それだけ大容量(大出力)のものを用いなければならず、現実的に無理がある。更に、元々同定音が排気音に埋もれていない周波数領域(図10における400Hz以上の領域)については、同定音を必要以上に大きいレベルで放出することになり、非常に効率が悪い。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、本発明が解決しようとする問題点は、上記排気音のように特定の周波数領域において極端に大きなレベルを有する外乱雑音が存在する環境の下で、上記二次音路Cのような伝達関数を同定する際に、外乱雑音の影響によって、正確な同定が実現できなくなるという点である。また、このように二次音路Cの同定が十分に成されていない状態で、これを図8に示すようなアクティブ消音装置に用いた場合に、十分な消音効果が得られないという点も、本発明が解決しようとする問題点である。
【0014】
そこで、本発明は、上記のような外乱雑音が存在しても、この外乱雑音の影響を受けずに、上記二次音路Cを従来よりも高い精度で同定することのできる伝達関数同定装置を提供することを目的とする。また、この伝達関数同定装置の技術を利用することによって、上記外乱雑音の有無に関係無く、十分な雑音除去効果を得ることのできる能動型雑音除去装置を提供することも、本発明の目的とするところである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ランダム信号である疑似信号を生成する疑似信号生成手段と、
上記疑似信号を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理すると共にこの処理によって得られた補正後疑似信号を外乱雑音の存在する伝送路に入力する疑似信号補正手段と、
上記外乱雑音を検出する第1の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を分析して、補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記外乱雑音のレベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記疑似信号補正手段の伝達関数と上記伝送路の伝達関数との合成による合成伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する同定フィルタ制御手段と、
を具備する。
そして、同定フィルタ制御手段は、疑似信号をディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と第2の検出手段の出力信号とを比較して、両者の誤差が小さくなるように当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する、
伝達関数同定装置である。
【0016】
なお、ここで言う所定の周波数領域とは、例えば、この伝達関数同定装置自体が同定の対象としている周波数領域のことを言う。
【0017】
即ち、本請求項1に記載の発明によれば、疑似信号生成手段は、ランダム信号である疑似信号を生成し、この疑似信号は、疑似信号補正手段によって処理された後、伝送路を経て、第2の検出手段により検出される。従って、第2の検出手段は、上記疑似信号補正手段によって処理(補正)された後の補正後疑似信号と、伝送路内に存在する外乱雑音との両方を、同時に検出する。そして、同定フィルタ制御手段が、疑似信号と第2の検出手段の出力信号とに応じて、ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する。具体的には、同定フィルタ制御手段は、疑似信号をディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と、第2の検出手段の出力信号とを、比較する。そして、これら両者の誤差が小さくなるように、当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する。これによって、ディジタルフィルタ手段の伝達関数は、疑似信号補正手段の伝達関数と伝送路の伝達関数とを掛け合わせたのと略等価になる。つまり、当該疑似信号補正手段の伝達関数と伝送路の伝達関数との合成による合成伝達関数が、同定される。そして、このディジタルフィルタ手段の伝達関数を、疑似信号補正手段の伝達関数で除算すると、伝送路の伝達関数が得られることになる。
【0018】
ところで、上述したように、疑似信号を用いて伝送路の伝達関数を同定するには、その同定の対象とする各周波数において、伝送路に入力される疑似信号、つまり補正後疑似信号のレベルが、伝送路内に存在する外乱雑音のレベルと略同じレベル以上でなければ、正確な同定を実現できない。そこで、本請求項1に記載の発明では、補正制御手段によって、第1の検出手段の出力信号を分析し、この分析して得た外乱雑音のレベルに比べて、補正後疑似信号のレベルが、上記各周波数において略同レベル以上となる状態に、当該補正後疑似信号を出力する疑似信号補正手段を制御している(詳しくはこの制御を実現するための補正信号を生成している)。従って、上記各周波数において、補正後疑似信号が外乱雑音に埋もれてしまうようなことはなく、正確な同定を実現できる。
【0019】
なお、上記各周波数における補正後疑似信号のレベルは、少なくとも外乱雑音と略同レベルであればよく、極端に大きいレベルである必要はない。従って、上記各周波数において当該補正後疑似信号のレベルが外乱雑音と略同レベルとなるように、即ち補正後疑似信号の周波数特性及びレベルが外乱雑音の周波数特性及びレベルと略等価になるように、疑似信号を補正することによって、効率の良い同定を実現できる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、疑似信号を生成する疑似信号生成手段と、
上記疑似信号を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理すると共にこの処理によって得られた補正後疑似信号を外乱雑音の存在する伝送路に入力する疑似信号補正手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記補正後疑似信号が上記伝送路に対して非入力状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号を分析して、上記補正後疑似信号が上記伝送路に入力される際の当該補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記分析された出力信号に対応する上記伝送路内の信号レベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記疑似信号補正手段の伝達関数と上記伝送路の伝達関数との合成による合成伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記補正後疑似信号が上記疑似信号補正手段を介して上記伝送路に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、上記合成伝達関数と上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数とが近似する状態に、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する同定フィルタ制御手段と、
を具備する伝達関数同定装置である。
【0021】
なお、ここで言う所定の周波数領域とは、例えば、この伝達関数同定装置自体が同定の対象としている周波数領域のことを言う。
【0022】
即ち、本請求項2に記載の発明も、疑似信号、厳密には補正後疑似信号を用いて上記請求項1に記載の発明と同様な手順で、疑似信号補正手段の伝達関数と伝送路の伝達関数との合成による合成伝達関数を同定する。
【0023】
ただし、本請求項2に記載の発明によれば、伝送路に対して補正後疑似信号が非入力状態にあるとき、即ち伝送路内に外乱雑音のみが存在するときに、この外乱雑音を第2の検出手段で検出する。そして、この第2の検出手段の出力信号、つまりは外乱雑音を、補正制御手段により分析する。補正制御手段は、補正後疑似信号が伝送路に入力される際に、当該補正後疑似信号の信号レベルが、上記各周波数において、上記外乱雑音のレベルと略同レベル以上となるように、疑似信号補正手段を制御する(詳しくはこの制御を実現するための補正信号を生成する)。従って、上記各周波数において、補正後疑似信号が外乱雑音に埋もれてしまうようなことはなく、正確な同定を実現できる。即ち、本請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明における第1の検出手段を設けることなく、請求項1に記載の発明と同様な作用を奏する。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明の伝達関数同定装置において、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数を、上記疑似信号補正手段の伝達関数で除算する除算手段を設けたこと、を特徴とするものである。
【0025】
即ち、除算手段による除算結果が、伝送路の伝達関数となる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、第1の伝達関数を有する伝送路に入力される信号を検出する第1の検出手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を処理して出力する適応型フィルタ手段と、
上記適応型フィルタ手段の出力を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理した後、これを上記伝送路に放出する疑似信号補正手段と、
上記第1及び第2の検出手段の出力信号が入力され、これらに応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、上記疑似信号補正手段の伝達関数と、上記疑似信号補正手段の出力側から上記伝送路を経て上記第2の検出手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による第1の合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
ランダム信号である疑似信号を生成してこれを上記疑似信号補正手段によって処理した後上記第2の伝達関数に入力する疑似信号生成手段と、
上記第1の検出手段の出力信号と、上記疑似信号を上記疑似信号補正手段によって処理した後の補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に対して非入力状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号と、のうちのいずれか一方を分析して、上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力される際の当該補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記一方の出力信号に対応する上記伝送路内の信号レベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記疑似信号補正手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成による第2の合成伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する同定フィルタ制御手段と、
を具備する。
そして、同定フィルタ制御手段は、疑似信号をディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と補正後疑似信号が第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの第2の検出手段の出力信号とを比較して、両者の誤差が小さくなるように当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する、
能動型雑音除去装置である。
【0027】
なお、ここで言う所定の周波数領域とは、例えば、この能動型雑音除去装置自体が雑音除去の対象としている周波数領域のことを言う。
【0028】
即ち、本請求項4に記載の発明によれば、第1の検出手段が、伝送路に入力される信号、例えば雑音除去の対象としている雑音を検出し、第2の検出手段が、第1の伝達関数を有する伝送路を経て出力される信号を検出する。そして、伝送路には、適応型フィルタ手段によって上記第1の検出手段の出力信号を処理した信号が、疑似信号補正手段を介して放出される。なお、疑似信号補正手段の出力側から伝送路の一部を経て第2の検出手段までの間には、第2の伝達関数が存在している。そして、適応フィルタ制御手段が、第1及び第2の検出手段の出力信号に応じて、適応型フィルタ手段の伝達関数と疑似信号補正手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成による第1の合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、適応型フィルタ手段の伝達関数を制御する。このように第1の合成伝達関数と第1の伝達関数とを互いに相補することによって、適応型フィルタ手段から疑似信号補正手段を介して伝送路内に放出される信号により上記雑音を打ち消すことができる。更に、第1の検出手段と適応フィルタ制御手段との間に、上記疑似信号補正手段の伝達関数と第2の伝達関数との合成による第2の合成伝達関数を同定するためのディジタルフィルタ手段を設けており、これによって、この能動型雑音除去装置全体の制御系をFiltered-x LMSアルゴリズム構成としている。
【0029】
ところで、本請求項4に記載の発明においては、ディジタルフィルタ手段によって上記第2の合成伝達関数を同定するために、ランダム信号である疑似信号を用いている。即ち、かかる疑似信号を生成するための疑似信号生成手段を設け、この疑似信号を、疑似信号補正手段によって処理した後、この処理によって得られた補正後疑似信号を、第2の伝達関数に入力する。そして、この第2の伝達関数に入力された補正後疑似信号を、第2の検出手段で検出している。従って、この同定時においては、第2の検出手段は、少なくとも疑似信号補正手段によって処理(補正)された後の補正後疑似信号と、上記雑音とを、同時に検出する。そして、同定フィルタ制御手段が、上記疑似信号とこの補正後疑似信号が第2の伝達関数に入力されているときの当該第2の検出手段の出力信号とに応じて、ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する。具体的には、同定フィルタ制御手段は、疑似信号をディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と、補正後疑似信号が第2の伝達関数に入力されているときの第2の検出手段の出力信号とを、比較する。そして、これら両者の誤差が小さくなるように、当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する。これによって、ディジタルフィルタ手段の伝達関数は、疑似信号補正手段の伝達関数と第2の伝達関数とを掛け合わせたのと略等価になる。つまり、これら疑似信号補正手段の伝達関数と第2の伝達関数との合成による第2の合成伝達関数が、同定される。
【0030】
なお、上記のように疑似信号を用いて第2の合成伝達関数(第2の伝達関数)の同定を行う際には、上述したように、同定の対象とする各周波数、即ちここで雑音除去の対象としている各周波数において、上記第2の伝達関数に入力される疑似信号、つまり補正後疑似信号の信号レベルが、第2の伝達関数に存在する雑音のレベルと略同レベル以上でなければ、正確な同定を実現できない。
【0031】
そこで、本請求項4に記載の発明によれば、補正制御手段によって、まず、第1及び第2の検出手段のうちのいずれか一方、例えば第1の検出手段の出力信号を分析する。この第1の検出手段は、上記雑音を検出するので、その出力信号を分析することによって、補正制御手段は、上記雑音の周波数特性及びレベルを認識する。そして、補正制御手段は、上記各周波数において、補正後疑似信号の信号レベルが、分析によって得た雑音レベルと略同レベル以上となるように、即ち補正後疑似信号が雑音に埋もれないように、上記疑似信号補正手段を制御する(詳しくはこの制御を実現するための補正信号を生成する)。従って、上記各周波数において補正後疑似信号が雑音に埋もれてしまうことがないので、正確な同定を実現でき、ひいては高精度な雑音除去を実現できる。
【0032】
この状態においては、上記第2の合成伝達関数を同定するのに、上述した請求項1に記載の発明の伝達関数同定装置を応用したのと概略等価な構成となる。なお、補正後疑似信号の信号レベルは、上記各周波数において少なくとも上記雑音と略同レベルであればよいという点については、請求項1に記載の発明の場合と同様である。従って、上記各周波数において、補正後疑似信号と上記雑音との周波数特性及びレベルが互いに略等価になるように、上記疑似信号補正手段を制御すれば、請求項1に記載の発明と同様に、効率の良い同定を実現できる。
【0033】
一方、補正制御手段によって、補正後疑似信号が第2の伝達関数に入力されていない状態にあるときの第2の検出手段の出力信号を分析する場合には、次のようになる。即ち、本請求項4に記載の発明の能動型雑音除去装置において、ある程度の雑音除去効果が得られている場合、第2の伝達関数には、この雑音除去装置自体が除去の対象としている全雑音のうち、完全に除去し得なかった雑音のみが存在する。そして、この状態で、上記第2の伝達関数を含む第2の合成伝達関数を同定する場合、上記除去し得ずに残留している雑音が、上記同定動作に対して外乱雑音として作用する。従って、厳密には、第2の合成伝達関数を正確に同定するには、上記各周波数において、補正後疑似信号の信号レベルを上記残留している雑音のレベルと略同レベル以上とすればよく、決して当該補正後疑似信号の信号レベルを上述したように元の雑音レベル以上とする必要はない。
【0034】
そこで、上記のように補正後疑似信号が第2の伝達関数に入力されていない状態にあるときは、伝送路からは、上記除去し得ずに残留している雑音のみが出力されるので、これを第2の検出手段によって検出する。そして、このときの第2の検出手段の出力信号を、補正制御手段によって分析することにより、補正制御手段は、上記残留している雑音の周波数特性とレベルとを認識する。そして、補正制御手段は、補正後疑似信号が第2の伝達関数に入力される際に、当該補正後疑似信号の信号レベルが、上記各周波数において、上記残留している雑音のレベルと略同レベル以上となるように、即ち補正後疑似信号が上記残留している雑音に埋もれないように、疑似信号補正手段を制御する(詳しくはこの制御を実現するための補正信号を生成する)。従って、この場合も、正確な同定を実現でき、ひいては高精度な雑音除去を実現できる。
【0035】
この状態においては、上記第2の合成伝達関数を同定するのに、上述した請求項2に記載の発明の伝達関数同定装置を応用したのと概略等価な構成となる。(ただし、この場合、本請求項4に記載の発明における上記残留している雑音が、請求項2に記載の発明における外乱雑音に対応する。)なお、補正後疑似信号の信号レベルは、上記各周波数において、少なくとも上記残留している雑音と略同レベルであればよい。従って、上記各周波数において、補正後疑似信号と残留している雑音との周波数特性及びレベルが互いに略等価になるように、上記疑似信号補正手段を制御することによって、効率の良い同定を実現できる。
【0036】
なお、上記のように、ある程度の雑音除去効果が得られている場合には、上記除去し得ずに残留している雑音のレベルは、除去する以前の元の雑音のレベルよりも小さくなる。従って、この場合、補正制御手段によって第2の検出手段の出力信号を分析する方が、第1の検出手段の出力信号を分析するのに比べて、補正後疑似信号の信号レベルは、小さくて済む。
【0037】
請求項5に記載の発明は、第1の伝達関数を有する伝送路に入力される信号を検出する第1の検出手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を処理してこれを上記伝送路へ放出する適応型フィルタ手段と、
上記第1及び第2の検出手段の出力信号が入力され、これらに応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、上記適応型フィルタ手段の出力側から上記伝送路を経て上記第2の検出手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による第3の合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
ランダム信号である疑似信号を生成する疑似信号生成手段と、
上記疑似信号を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理すると共にこの処理によって得られた補正後疑似信号を上記第2の伝達関数に入力する疑似信号補正手段と、
上記第1の検出手段の出力信号と、上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に対して非入力状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号と、のうちのいずれか一方を分析して、上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力される際の当該補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記一方の出力信号に対応する上記伝送路内の信号レベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記第2の伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とが入力されこれらに応じて上記疑似信号補正手段の伝達関数及び上記第2の伝達関数の合成による第2の合成伝達関数と略等価な伝達関数を算出する伝達関数算出手段と、この伝達関数算出手段によって算出して得た伝達関数を上記疑似信号補正手段の伝達関数で除算する除算手段と、この除算によって得た伝達関数を上記ディジタルフィルタ手段に設定する設定手段と、を備えた同定フィルタ制御手段と、
を具備する。
そして、伝達関数算出手段は、疑似信号をディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と補正後疑似信号が第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの第2の検出手段の出力信号とを比較して、両者の誤差が小さくなるように当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御し、この制御によって得られた当該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を上記第2の合成伝達関数と略等価な伝達関数とする、
能動型雑音除去装置である。
【0038】
なお、ここで言う所定の周波数領域とは、例えば、この能動型雑音除去装置自体が雑音除去の対象としている周波数領域のことを言う。
【0039】
即ち、本請求項5に記載の発明の能動型雑音除去装置も、上記請求項4に記載の発明の能動型雑音除去装置と同様に、装置全体の制御系をFiltered-x LMSアルゴリズム構成としている。ただし、本請求項5に記載の発明においては、適応型フィルタ手段の出力を疑似信号補正手段を介さずに直接伝送路に放出しており、この点が、適応型フィルタ手段の出力を疑似信号補正手段を介して伝送路に放出する上記請求項4に記載の発明と異なる点である。そして、この点に伴い、上記請求項4に記載の発明では、疑似信号補正手段の伝達関数と第2の伝達関数との合成による第2の合成伝達関数をディジタルフィルタ手段による同定対象としているのに対して、本請求項5に記載の発明では、第2の伝達関数のみをディジタルフィルタ手段による同定対象としている。このため、本請求項5に記載の発明においては、上記第2の合成伝達関数を疑似信号補正手段の伝達関数で除算することによって、上記第2の伝達関数のみを同定して、これを上記ディジタルフィルタ手段に設定している。
【0040】
従って、本請求項5に記載の発明の能動型雑音除去装置は、第2の伝達関数を同定するのに、上述した請求項3に記載の発明の伝達関数同定装置を応用したのと概略等価な構成である。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明に係る伝達関数同定装置及び能動型雑音除去装置を例えばアクティブ消音装置に応用した場合について、その第1の実施の形態を、図1から図4を参照して説明する。
【0042】
図1は、上記アクティブ消音装置の概略構成を示す図である。同図に示すように、この消音装置は、上述した図8に示す従来の消音装置において、疑似信号発生器8とスピーカ5の入力側との間に周波数特性補正手段、例えばイコライザ11を介在させたものである。即ち、疑似信号発生器8の出力する疑似信号mk をイコライザ11で処理した後、これをスピーカ5に供給している。そして、リファレンスマイクロホン2から出力される騒音信号xk を取り込んでその周波数特性とレベルとを分析する周波数特性分析部12と、この周波数特性分析部12による分析結果に応じて上記イコライザ11の伝達関数(周波数特性とゲイン)EQを制御する補正信号を生成するイコライザ制御部13とを設けている。更に、この消音装置では、適応フィルタ3の出力yk も、上記イコライザ11を介してスピーカ5に供給している。なお、これ以外の構成については、上記従来装置と同様であるので、同等部分については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0043】
上記のように構成された消音装置において、例えば、今、上述した図10に示す排気音のように、特定の周波数領域(図10においては400Hz以下)に非常に大きいレベルを有する排気音が、排気ダクト1内を、図1における左側から右側に向かって伝搬しているものとする。このような環境の下で、排気音を精度よく消音するには、上述したようにFIRフィルタ7によって二次音路Cを正確に同定する必要がある。この二次音路Cの同定について、図2を参照して説明する。
【0044】
図2は、上記図1に点線で示す経路、即ち二次音路Cの同定時の制御系について、その説明を判り易くするために抜粋したものである。同図に示すように、この制御系においては、これに外乱雑音として作用する上記排気音をリファレンスマイクロホン2で収音し、その出力信号(騒音信号)xk 、つまりは上記排気音の周波数特性(スペクトル)及びレベルを、周波数特性分析部12で分析している。そして、この分析結果に応じて、イコライザ制御部13が、イコライザ11の伝達関数EQを制御する、詳しくはこの制御のための上述した補正信号を生成してこれをイコライザ11に供給する。このイコライザ制御部13によるイコライザ11の制御は、次の通りである。
【0045】
即ち、イコライザ11は、上記補正信号に応じて疑似信号mk の周波数特性を変更すると共に、レベルを調整して、これをスピーカ5に供給する。そして、イコライザ制御部13は、イコライザ11の出力によってスピーカ5から放出される放出音、つまりは同定音が、この消音装置自体が消音の対象としている周波数領域、例えば20Hz乃至1kHzの範囲内の各周波数において、上記排気音と等価なレベルとなるように(厳密には、エラーマイクロホン6が設けられている位置での(即ちエラーマイクロホン6に検出される)同定音のレベルと排気音のレベルとが、上記各周波数において互いに等しくなるように)、上記補正信号を生成する。このように、同定音と排気音との周波数特性及びレベルを等価にする、即ち、上記各周波数における同定音のレベルと排気音のレベルとを同レベルにすることによって、上記各周波数において同定音が排気音に埋もれるのを防ぐことができる。従って、排気音が、上記のように特定の周波数領域において非常に大きいレベルを有していても、この排気音の影響を受けずに正確な二次音路Cの同定を実現でき、ひいては消音装置全体として安定した消音効果が得られる。
【0046】
ところで、図2の制御系によれば、FIRフィルタ7(詳しくはFIRフィルタ7の伝達関数Seを制御するLMS演算部9)は、二次音路Cだけではなく、イコライザ11の伝達関数EQをも含んだ伝達関数、つまりはイコライザ11の伝達関数EQと二次音路Cとの合成による合成伝達関数[EQ×C]を、同定することになる。従って、この制御系による同定によって得られるFIRフィルタ7の伝達関数Seは、次の数1のようになる。
【0047】
【数1】
Se=(EQ×C)’
【0048】
ここで、記号’(ダッシュ)は、合成伝達関数[EQ×C]の推定値であることを示す。
【0049】
このように、FIRフィルタ7が同定(補償)の対象とするのは、イコライザ11の伝達関数EQと二次音路Cとの合成による合成伝達関数[EQ×C]であるので、消音装置全体としてFiltered-x LMSアルゴリズムの制御系を確保するために、上述したように、適応フィルタ3の出力側とスピーカ5の入力側との間にもイコライザ11が介在するよう構成している。従って、消音時に上記適応フィルタ3の伝達関数Wk (フィルタ係数)を適応制御(更新)するLMS演算部4は、適応フィルタ3の伝達関数Wk とイコライザ11の伝達関数EQと二次音路Cとの合成による伝達関数[Wk ×EQ×C]が、一次音路Pと相補になるように、上記伝達関数Wk を制御することになる。
【0050】
なお、本第1の実施の形態における一次音路P及び二次音路Cが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の第1及び第2の伝達関数に対応する。また、適応フィルタ3の伝達関数Wk とイコライザ11の伝達関数EQと二次音路Cとの合成による伝達関数[Wk ×EQ×C]が、特許請求の範囲に記載の、第1の合成伝達関数に対応し、イコライザ11の伝達関数EQと二次音路Cとの合成による合成伝達関数[EQ×C]が、合成伝達関数及び第2の合成伝達関数に対応する。
【0051】
そして、リファレンスマイクロホン2及びエラーマイクロホン6が、それぞれ特許請求の範囲に記載の第1及び第2の検出手段に対応する。更に、適応フィルタ3及びこれを制御するLMS演算部4が、それぞれ特許請求の範囲に記載の適応型フィルタ手段及び適応フィルタ制御手段に対応する。そして、FIRフィルタ7が、特許請求の範囲に記載のディジタルフィルタ手段に対応し、このFIRフィルタ7及びこれを制御するLMS演算部9と、演算部10との組み合わせによる構成が、同定フィルタ制御手段に対応する。
【0052】
また、疑似信号発生器8が、特許請求の範囲に記載の疑似信号生成手段に対応し、イコライザ11が、疑似信号補正手段に対応する。そして、周波数特性分析部12及びイコライザ制御部13の組み合わせが、特許請求の範囲に記載の補正制御手段に対応する。
【0053】
なお、図1に示す消音装置においては、FIRフィルタ7は、上記合成伝達関数[EQ×C]の同定時には、疑似信号mk を処理し、消音の適応動作時(LMS演算部4による適応フィルタ3の適応制御時)には、騒音信号xk を処理する。従って、この構成では、上記合成伝達関数[EQ×C]の同定と、消音の適応動作とを、同時に実行することはできない。このような場合は、最初に、合成伝達関数[EQ×C]の同定を行い、その後に、消音の適応動作を行えば、安定した消音効果が得られる。即ち、最初に、LMS演算部4による適応フィルタ3の適応動作を停止して、この適応フィルタ3を伝達関数Wが固定の単なる例えばFIRフィルタとして機能させた状態で、LMS演算部9によるFIRフィルタ7の適応動作を実行する。そして、その後に、LMS演算部9によるFIRフィルタ7の適応動作を停止して、このFIRフィルタ7を伝達関数Seが固定の単なるFIRフィルタとして機能させて、LMS演算部4による適応フィルタ3の適応動作を実行するのである。また、時間の経過と共に、二次音路Cが変化し、これによって消音装置自体の消音効果が低下した場合には、再度、合成伝達関数[EQ×C]の同定を行えばよい。
【0054】
しかし、上記のように、上記合成伝達関数[EQ×C]の同定と、消音の適応動作とを、交互に実行するには、その都度、上記各LMS演算部4及び9による各フィルタ3及び7の適応動作を切り換えなければならず、その制御が必要となる。そこで、例えば図3に示すような構成とすることによって、合成伝達関数[EQ×C]の同定と消音の適応動作とを同時に実行する所謂オンライン同定(またはリアルタイム同定、或はバックグラウンド同定とも言う)を実現でき、上記各フィルタ3及び7の適応動作を切り換える必要が無くなる。
【0055】
即ち、この図3に示す消音装置は、図1におけるFIRフィルタ7に代えて、これとは別のFIRフィルタ14を、リファレンスマイクロホン2とLMS演算部4の入力側との間に設けたものである。そして、FIRフィルタ7については、純粋に合成伝達関数[EQ×C]の同定(測定)用としてのみ機能させ、このFIRフィルタ7で合成伝達関数[EQ×C]を同定して得た伝達関数Seを、上記FIRフィルタ14に設定し、このFIRフィルタ14を合成伝達関数[EQ×C]の補償用として機能させる。なお、イコライザ11、周波数特性分析部12、イコライザ制御部13及びFIRフィルタ14についても、適応フィルタ3等と同様に、例えばDSPやCPU等によって構成しており、これらの動作は、図示しない記憶部に記憶されたプログラムに従って実行される。これ以外の構成については、上記図1と同様である。
【0056】
なお、本第1の実施の形態においては、上記のようにアクティブ消音装置について説明したが、この技術は、例えばエコーキャンセラ等のような他の用途にも応用できる。また、上述した図2に示す制御系により、二次音路C(合成伝達関数[EQ×C])に限らず、他の伝達関数を求めるだけの所謂伝達関数同定装置を構成してもよい。
【0057】
また、合成伝達関数[EQ×C]を同定するのにLMSアルゴリズムを用いたが、これ以外のアルゴリズムによって上記合成伝達関数[EQ×C]を同定してもよい。そして、これらのアルゴリズムを用いた適応動作に限らず、他の方法によって、上記合成伝達関数[EQ×C]を同定してもよい。例えば、疑似信号mk と誤差信号εk との相関によって上記合成伝達関数[EQ×C]を同定(推定)する、所謂M系列信号を用いた相関法により上記合成伝達関数[EQ×C]を同定してもよい。また、合成伝達関数[EQ×C]の出力信号(合成伝達関数[EQ×C]を通過させた後の疑似信号mk )を、合成伝達関数[EQ×C]の入力信号(即ち疑似信号mk )で除算する(詳しくは、これら各入出力信号を周波数領域に変換した上で上記除算を行う)ことによっても、上記合成伝達関数[EQ×C]を求めることができる。更に、一般に知られているクロススペクトル法を用いて、上記合成伝達関数[EQ×C]を求めてもよい。
【0058】
更に、イコライザ11の伝達関数EQは、その出力によってスピーカ5から放出される同定音が、排気音と等価な周波数特性及びレベルとなるように制御したが、これに限らない。即ち、この消音装置では、これ自体が消音の対象としている各周波数において、同定音のレベルが、少なくとも排気音のレベルと同レベル以上であれば、正確な同定を実現でき、安定した消音効果が得られる。従って、イコライザ11の伝達関数EQは、上記各周波数における同定音の出力レベルが、上記各周波数における排気音のレベルと同レベル以上になるように制御すればよい。
【0059】
ただし、上記同定音と排気音とを略等価な周波数特性及びレベルとすることによって、排気音の大きい周波数領域に対してのみ同定音のレベルを大きくし、排気音の小さい周波数領域に対しては同定音のレベルを小さくた排気音の特性に合わせた効率の良い消音動作を実現できる。これは、スピーカ5の出力する同定音の平均レベルを抑えることになるので、スピーカ5等の音波出力系に対する負担を軽減でき、ひいてはこれら出力系の保護にもつながる。
【0060】
また、周波数特性分析部12によって、騒音信号xk (排気音)の周波数特性とレベルとを分析する際、この騒音信号xk を周波数領域である程度平均した後の信号を分析してもよい。即ち、騒音信号xk は、元々変動(振動)の激しい信号であるので、これを平均することによって、上記変動をある程度抑えることができ、この方が、排気音の周波数特性及びレベルを分析するのに都合の良い場合がある。
【0061】
そして、本第1の実施の形態においては、疑似信号mk としてM系列信号(MLS)を用いたが、このM系列信号については、その周期を、FIRフィルタ7(LMS演算部9)による合成伝達関数[EQ×C]の同定動作時間よりも長くするのが望ましい。即ち、正確な同定を行うには、一般に、疑似信号mk が完全なランダム信号でなければならないことが知られているが、これに対して、M系列信号は、厳密には疑似的なランダム信号である。しかし、このM系列信号は、その一周期内においては略完全にランダムな信号であることが知られている。従って、このM系列信号の周期を上記同定動作よりも十分に長く設定して、M系列信号の一周期内に上記同定動作を終了させることによって、合成伝達関数[EQ×C]の同定精度を向上させることができる。
【0062】
なお、上記疑似信号mk については、ランダムな信号であれば、上記M系列信号に限らないことは言うまでもない。
【0063】
更に、上記においては、リファレンスマイクロホン2の出力信号(騒音信号)xk を周波数特性分析部12によって分析したが、図4に示すように、エラーマイクロホン6の出力信号(誤差信号ek )を周波数特性分析部12で分析して、この分析結果に基づいて、イコライザ制御部13によってイコライザ11の伝達関数EQを制御するよう構成してもよい。なお、この構成により、次のような利点が得られる。
【0064】
即ち、本第1の実施の形態のような消音装置において、ある程度の消音効果が得られている場合、二次音路Cには、この消音装置自体が消音の対象としている全排気音のうち、スピーカ5の放射音によって完全に消音し得なかった排気音(全排気音とスピーカ5の放射音との誤差成分)のみが存在する。そして、この状態で、上述した同定音を用いて上記二次音路Cを含む合成伝達関数〔EQ×C〕を同定する場合には、全排気音のうち、上記完全に消音されずに未だ排気ダクト1内に残留している排気音が、この同定動作に対する外乱雑音として作用する。
【0065】
従って、上記同定を正確に行うには、この消音装置自体が消音の対象としている各周波数において、同定音のレベルを、上述したような全排気音(元の排気音)のレベルと略同レベル以上とする必要はなく、上記消音されずに残留している排気音のレベルと略同レベル以上とすればよい。つまり、上記各周波数において、同定音のレベルを上記残留している排気音のレベルと略同レベルとしても、正確な同定を実現できる。
【0066】
そこで、図4に示す装置においては、上記残留している排気音を、エラーマイクロホン6で検出して、このエラーマイクロホン6の出力信号ek を、周波数特性分析部12で分析している。そして、イコライザ制御部13が、上記分析結果に応じて、スピーカ5から放射される同定音が上記残留している排気音と略等価な周波数特性及びレベルになるように、イコライザ11を制御する(詳しくはこの制御を実現するための補正信号を生成する)。
【0067】
ただし、エラーマイクロホン6を用いて上記残留している排気音を検出する際に、スピーカ5から同定音が放出されていると、この同定音が、上記エラーマイクロホン6の検出動作に対して外乱雑音として作用する。従って、エラーマイクロホン6によって上記残留している排気音を検出する際には、上記同定音を非出力状態とするのが望ましい。
【0068】
即ち、まず最初に、イコライザ11の伝達関数EQを例えば1(スルー)とすると共に、FIRフィルタ7を伝達関数Seが固定の単なるFIRフィルタとして機能させ、このときの伝達関数Seを、例えば予め二次音路Cをある程度の精度で同定して得た値(初期値)とする。そして、この状態で、LMS演算部4による適応フィルタ3の適応動作(消音の適応動作)を実行して、ある程度の消音を行う。更に、このときに、例えば疑似信号発生器8の動作(疑似信号mk の発生)を停止する等により排気ダクト1に対して同定音を非出力状態とし、この状態で、エラーマイクロホン6の出力信号ek を周波数特性分析部12で分析する。この分析によって、周波数特性分析部12は、上記残留している排気音の周波数特性を認識する。次に、疑似信号発生器8を動作させてスピーカ5から同定音を放出する際、この同定音と上記分析によって得た残留している排気音との周波数特性及びレベルが、互いに略等価になるように、イコライザ制御部13によりイコライザ11の伝達関数EQを制御する(詳しくはこの制御を実現するための補正信号を生成する)。そして、この状態で、上記消音の適応動作を停止して、上記合成伝達関数〔EQ×C〕の同定を行えばよい。即ち、LMS演算部4による適応フィルタ3の適応動作を停止して、この適応フィルタ3を伝達関数Wが固定の(適応動作を停止した時点での伝達関数Wとする)単なる例えばFIRフィルタとして機能させた状態で、LMS演算部9によるFIRフィルタ7の適応動作を実行すれば、高精度な同定を実現できる。
【0069】
なお、上記同定動作を終了した後に、再度、消音の適応動作(LMS演算部4による適応フィルタ3の適応制御)を実行すると、それ以前よりも大きな消音効果が得られ、その分だけ、上記排気音の残留分は小さくなる。従って、この状態で再度上記同定動作を実行すると、このときにスピーカ5から放出される同定音レベルは、前回の同定動作時よりも小さくなる。よって、それだけ小さいエネルギで正確な同定を実現でき、スピーカ5等の音波出力系に対する負担も更に軽減されるという利点がある。そして、これは、上記同定と消音の適応動作とを繰り返す毎に顕著になる。
【0070】
また、例えば図2において、リファレンスマイクロホン2に代えて、エラーマイクロホン6の出力を周波数特性分析部12に供給するよう構成したものが、図4における上記同定制御系の部分を抜粋したものになる。この構成によれば、リファレンスマイクロホン2を設けずに、合成伝達関数[EQ×C](二次音路C)を同定できる伝達関数同定装置を実現できる。
【0071】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図5から図7を参照して説明する。
【0072】
これら図5、図6及び図7は、それぞれ、上述した図1、図3及び図4における適応フィルタ3とスピーカ5とを結ぶ線路からイコライザ11を外すと共に、FIRフィルタ7の同定対象を二次音路Cのみとしたものである。即ち、イコライザ11の伝達関数EQは、イコライザ制御部13によって求められるので、このイコライザ制御部13の求めた上記伝達関数EQを、各図に一点鎖線で示すように、LMS演算部9に供給する。そして、このLMS演算部9において、上述した数1を上記伝達関数EQで除算することにより、二次音路Cのみを求める(同定する)ことができる。従って、ここでは、LMS演算部9によって求められるFIRフィルタ7の伝達関数Seは、数2のようになる。
【0073】
【数2】
Se=(EQ×C)’/EQ≒C
【0074】
なお、このように、FIRフィルタ7が、二次音路Cのみを同定(補償)の対象とする場合には、上述した従来技術と同様に、適応フィルタ3の伝達関数Wk (フィルタ係数)を適応制御(更新)するLMS演算部4は、適応フィルタ3の伝達関数Wk と二次音路Cとの合成による伝達関数[Wk ×C]が、一次音路Pと相補になるように、上記伝達関数Wk を制御する。この合成伝達関数[Wk ×C]が、特許請求の範囲に記載の第3の合成伝達関数に対応する。これ以外については、上述した第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
【発明の効果】
上記のように請求項1に記載の発明の伝達関数同定装置によれば、疑似信号の周波数特性とレベルとを補正する疑似信号補正手段を設け、この補正手段によって、同定の対象とする各周波数において、補正後疑似信号が伝送路内に存在する外乱雑音に埋もれないようにしている。従って、伝送路内に、例えば上述した排気音のように特定の周波数領域において極端に大きなレベルを有する外乱雑音が存在しても、この外乱雑音の影響を受けることなく、正確な伝達関数の同定を実現できるという効果がある。また、上記各周波数における補正後疑似信号のレベルは、少なくとも外乱雑音のレベルと略同レベルであればよいので、当該補正後疑似信号の周波数特性を外乱雑音の特性と略等価とすることによって、効率の良い同定が実現できる。
【0076】
請求項2に記載の発明の伝達関数同定装置によれば、上記請求項1に記載の発明における第1の検出手段を設けることなく、請求項1に記載の発明と同様な同定動作を実現できる。従って、上記請求項1に記載の発明に比べて、装置自体の構成要素を削減できるという効果がある。
【0077】
請求項3に記載の発明の伝達関数同定装置は、上記請求項1及び2に記載の発明において同定して得た伝達関数を、上記疑似信号補正手段の伝達関数で除算する除算手段を設けている。従って、伝送路のみの伝達関数を同定する際に、この同定を正確に行うことができるという効果がある。
【0078】
請求項4に記載の発明の能動型雑音除去装置は、疑似信号補正手段の伝達関数と第2の伝達関数との合成による第2の合成伝達関数を同定するのに、上述した請求項1又は2に記載の発明の伝達関数同定装置を応用したのと概略等価な構成である。従って、本請求項4に記載の発明によれば、第2の伝達関数を含む上記第2の合成伝達関数を正確に同定でき、ひいては雑音除去の対象とする全周波数において高精度な雑音除去を実現できるという効果がある。
【0079】
請求項5に記載の発明の能動型雑音除去装置は、第2の伝達関数を同定するのに、上述した請求項3に記載の発明の伝達関数同定装置を応用したのと概略等価な構成である。従って、本請求項5に記載の発明によれば、上記第2の伝達関数を正確に同定でき、ひいては雑音除去の対象とする全周波数において高精度な雑音除去を実現でき、即ち上記請求項4に記載の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の一実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の一部分を抜粋した図である。
【図3】図2の別の例を示す図である。
【図4】図1及び図3とは異なる例を示す図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態を示す概略構成図である。
【図6】図5の別の例を示す図である。
【図7】図5及び図6とは異なる例を示す図である。
【図8】従来のアクティブ消音装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】図8の一部分を抜粋した図である。
【図10】従来の問題点を説明するための参考図である。
【図11】図10の状態を誇張して表わした図である。
【符号の説明】
1 排気ダクト
2 リファレンスマイクロホン
3 適応フィルタ
4 LMS演算部
5 二次音源スピーカ
6 エラーマイクロホン
7 FIRディジタルフィルタ
8 疑似信号発生器
9 LMS演算部
10 演算部
11 イコライザ
12 周波数特性分析部
13 イコライザ制御部
Claims (5)
- ランダム信号である疑似信号を生成する疑似信号生成手段と、
上記疑似信号を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理すると共にこの処理によって得られた補正後疑似信号を外乱雑音の存在する伝送路に入力する疑似信号補正手段と、
上記外乱雑音を検出する第1の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を分析して、上記補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記外乱雑音のレベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記疑似信号補正手段の伝達関数と上記伝送路の伝達関数との合成による合成伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する同定フィルタ制御手段と、
を具備し、
上記同定フィルタ制御手段は、上記疑似信号を上記ディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と上記第2の検出手段の出力信号とを比較して、両者の誤差が小さくなるように該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する、
伝達関数同定装置。 - 疑似信号を生成する疑似信号生成手段と、
上記疑似信号を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理すると共にこの処理によって得られた補正後疑似信号を外乱雑音の存在する伝送路に入力する疑似信号補正手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記補正後疑似信号が上記伝送路に対して非入力状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号を分析して、上記補正後疑似信号が上記伝送路に入力される際の該補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記分析された出力信号に対応する上記伝送路内の信号レベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記疑似信号補正手段の伝達関数と上記伝送路の伝達関数との合成による合成伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記補正後疑似信号が上記伝送路に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、上記合成伝達関数と上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数とが近似する状態に、上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する同定フィルタ制御手段と、
を具備する伝達関数同定装置。 - 上記ディジタルフィルタ手段の伝達関数を、上記疑似信号補正手段の伝達関数で除算する除算手段を設けたこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の伝達関数同定装置。
- 第1の伝達関数を有する伝送路に入力される信号を検出する第1の検出手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を処理して出力する適応型フィルタ手段と、
上記適応型フィルタ手段の出力を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理した後、これを上記伝送路に放出する疑似信号補正手段と、
上記第1及び第2の検出手段の出力信号が入力され、これらに応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、上記疑似信号補正手段の伝達関数と、上記疑似信号補正手段の出力側から上記伝送路を経て上記第2の検出手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による第1の合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
ランダム信号である疑似信号を生成してこれを上記疑似信号補正手段によって処理した後上記第2の伝達関数に入力する疑似信号生成手段と、
上記第1の検出手段の出力信号と、上記疑似信号を上記疑似信号補正手段によって処理した後の補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に対して非入力状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号と、のうちのいずれか一方を分析して、上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力される際の該補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記一方の出力信号に対応する上記伝送路内の信号レベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記疑似信号補正手段の伝達関数と上記第2の伝達関数との合成による第2の合成伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とが入力され、これらに応じて、該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する同定フィルタ制御手段と、
を具備し、
上記同定フィルタ制御手段は、上記疑似信号を上記ディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とを比較して、両者の誤差が小さくなるように該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を制御する、
能動型雑音除去装置。 - 第1の伝達関数を有する伝送路に入力される信号を検出する第1の検出手段と、
上記伝送路から出力される信号を検出する第2の検出手段と、
上記第1の検出手段の出力信号を処理してこれを上記伝送路へ放出する適応型フィルタ手段と、
上記第1及び第2の検出手段の出力信号が入力され、これらに応じて、上記適応型フィルタ手段の伝達関数と、上記適応型フィルタ手段の出力側から上記伝送路を経て上記第2の検出手段までの間に存在する第2の伝達関数と、の合成による第3の合成伝達関数が、上記第1の伝達関数と相補する状態に、上記適応型フィルタ手段の伝達関数を制御する適応フィルタ制御手段と、
ランダム信号である疑似信号を生成する疑似信号生成手段と、
上記疑似信号を補正信号によって決定される伝達関数に基づいて処理すると共にこの処理によって得られた補正後疑似信号を上記第2の伝達関数に入力する疑似信号補正手段と、
上記第1の検出手段の出力信号と、上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に対して非入力状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号と、のうちのいずれか一方を分析して、上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力される際の該補正後疑似信号の信号レベルが、所定の周波数領域内の各周波数において、上記一方の出力信号に対応する上記伝送路内の信号レベルと略同レベル以上になる状態に上記補正信号を生成する補正制御手段と、
上記第1の検出手段と上記適応フィルタ制御手段との間に介在して上記第2の伝達関数を同定するディジタルフィルタ手段を含み、上記疑似信号と上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とが入力されこれらに応じて上記疑似信号補正手段の伝達関数及び上記第2の伝達関数の合成による第2の合成伝達関数と略等価な伝達関数を算出する伝達関数算出手段と、この伝達関数算出手段によって算出して得た伝達関数を上記疑似信号補正手段の伝達関数で除算する除算手段と、この除算によって得た伝達関数を上記ディジタルフィルタ手段に設定する設定手段と、を備えた同定フィルタ制御手段と、
を具備し、
上記伝達関数算出手段は、上記疑似信号を上記ディジタルフィルタ手段によって処理した後の信号と上記補正後疑似信号が上記第2の伝達関数に入力されている状態にあるときの上記第2の検出手段の出力信号とを比較して、両者の誤差が小さくなるように該ディジ タルフィルタ手段の伝達関数を制御し、この制御によって得られた該ディジタルフィルタ手段の伝達関数を上記第2の合成伝達関数と略等価な伝達関数とする、
能動型雑音除去装置。
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