このように、電子部品の十分な冷却や温度の安定化、均一化を図るために、従来では、プリント配線板の放熱技術には、各種の方法が用いられていたが、次のような問題点があった。
上述したプリント配線板自体、または、これに搭載される発熱部品に、ヒートシンクや空冷ファン等を取り付けて冷却する方法では、巨大なヒートシンクや大型ファンを取り付けることが一般的になっており、場合によって、空冷のヒートシンクの代わりに、ヒートシンク内に冷媒を流し、プリント配線板外部に設置したラジエータで冷媒を冷却する水冷/液冷のものが用いられることがあった。しかしながら、ヒートシンクやファンの大型化等のため、騒音の発生や、機器小型化の阻害、重量の増加等の問題点がある。加えて、大きなスペースが必要となったり、取扱性の悪化やコスト高、組立性の悪化という問題があった。
また、冷媒を流す配管を予め金属管等で作り、これを樹脂等でモールドし、これを配線板の基材として用いることも可能ではあるが、スルホール等の位置を避けるように、その都度、配管設計を行い、これを内蔵した樹脂板を作るのは、プリント配線板の製造の直前に配線パターンが決まることに鑑みると、工程的・日程的・費用的にみて実用的ではなかった。
本発明は、上述した従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、搭載された電子部品の熱を効率的に放出することができ、軽量化・小型化を図ることができるようなプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のプリント配線板の製造方法の説明をするのに際して、まず、本発明のプリント配線板の製造方法の対象であるプリント配線板について説明する。このプリント配線板は、絶縁層と導体層とが少なくとも1層以上交互に積層されて構成されたプリント配線板において、前記絶縁層内の特定の領域に金属製の細管が配置されていることを特徴とする。より具体的には、前記細管の両端部は、当該プリント配線板の端面または表面まで達しており、該端面または表面に前記細管の開口部が設けられていることを特徴とする。ここで、前記細管の一部を、他の部分に比べて、配線板表面に近接して配置してもよい。
このような構成のプリント配線板によれば、プリント配線板のすべての構成材料が、通常のプリント配線板の製造に用いる材料と同じであり、かつ、通常のプリント配線板の工程と略同様であるため、プリント配線板を容易に製造できるとともに、プリント配線板の電子部品の実装時の耐熱性や、使用時の絶縁特性等、ほとんど全ての性能を、従来のプリント配線板と同等に確保できる。
また、従来の巨大なヒートシンクや大型ファンを取り付ける構成と比べて、全体的に軽量化・小型化・スリム化(薄型化)を図ることができる。さらに、搭載される電子部品に対して、大型のヒートシンクや冷却デバイスを直接取り付けないため、プリント配線板や電子部品に対するストレスが少なくなる。
また、上記のプリント配線板において、前記細管は、冷媒が流れる管として設けられていることを特徴とする。より具体的には、当該プリント配線板内の前記細管と、プリント配線板外の外部配管とが前記開口部にて接続され、前記外部配管により、冷媒循環装置と、冷媒冷却装置と、冷媒タンクとが接続され、前記循環装置により、冷媒が前記細管と前記外部配管とを循環されることを特徴とする。ここで、前記細管を流れる冷媒は、水、空気、不活性液体、フロンもしくは代替フロン系の液体である。
このような構成のプリント配線板によれば、プリント配線板に実装された電子部品が発熱すると、この熱が絶縁樹脂層を通って、細管内の冷媒に伝達される。熱を吸収した冷媒は、冷媒循環装置により、細管を流れ、開口部を経てプリント配線板の外部へ送られる。プリント配線板の外部では、外部配管を流れて冷媒冷却装置に至り、この冷媒冷却装置での熱交換により熱が外部へ放出され、冷媒が冷却される。冷却された冷媒は、外部配管を流れ、開口部を経て、再びプリント配線板の細管へ送られる。このように、循環装置により冷媒を強制的に循環させることによって、プリント配線板の内部で熱を吸収し、プリント配線板の外部で熱を放出するというサイクルが繰り返される。これにより、プリント配線板の電子部品が発した熱を、効率的にプリント配線板の外部へ放出できる。
また、上記のプリント配線板の内部には、前記細管の配置されている部分を除く全部分または一部分に金属層が設けられていることを特徴とする。
このような構成のプリント配線板によれば、絶縁樹脂板を積層して内層コア材を形成すると、内層コア材の内部には、ヒートコレクタとしての金属層が形成される。これにより、プリント配線板において、効率よく熱を外部へ放出できる一方、細管内の冷媒の流速や、細管の配置を工夫することによって、プリント配線板全体の温度を均一化することができる。そして、プリント配線板全体の温度を均一化することで、例えば、特に高熱を発する電子部品があるなど、温度係数が異なる素子で構成された回路を安定動作させることができる。
また、上記のプリント配線板において、前記細管の内壁には、凹凸や溝が形成されていることを特徴とする。
このような構成のプリント配線板によれば、細管の内壁の凹凸や溝により、細管の内壁の表面積を増やしたり、細管内の冷媒の流れに渦や乱流を起こしたりして放熱効率を上げることができる。
また、上記のプリント配線板において、前記細管は銅製であることを特徴とする。つまり、熱伝導性の高い銅で細管の内壁を形成して、搭載電子部品等の熱を効率的に放出するようにしている。
また、上記のプリント配線板において、前記細管の断面形状を、円形、楕円形、長円形、矩形、菱形、台形、三角形、もしくはこれら各形状の角の部分を丸めた形状、または前記各形状を組み合わせた形状としてもよい。
また、上記のプリント配線板において、前記細管の内壁表面には、金属材料または非金属材料からなる防錆保護層が形成されていることを特徴とする。より具体的には、前記材料は、クロム、ニッケル、金、または樹脂であることを特徴とする。つまり、防錆メッキを施すという一般的な方法によって、細管の内壁が錆び付くのを防止している。
また、上記のプリント配線板において、前記細管の内壁は、該細管に印加された電圧により電気防蝕されていることを特徴とする。すなわち、上述した防錆メッキを施す方法では、銅等の熱伝導性の高い材料で細管を形成しても、防錆皮膜の材料としてクロムやニッケルを用いると熱伝導を却って妨げてしまう。これに対して、上記のような構成のプリント配線板によれば、細管の熱伝導性を悪化させることなく、細管の内壁が錆び付きを防止できる。
また、上記のプリント配線板の表面のうち、少なくとも当該プリント配線板に実装される電子部品の下の部分に金属層が形成されていることを特徴とする。
このような構成のプリント配線板によれば、プリント配線板の表面のうち電子部品の下の部分においては、搭載電子部品からの熱を効率的に細管へ伝達できる。
また、上記のプリント配線板において、その表面、または前記電子部品の下の部分に金属層が設けられている場合における該金属層と、前記細管、または当該プリント配線板の内部に設けられている前記金属層とが、熱伝導性の高い物質を介して接続されていることを特徴とする。この場合、プリント配線板の表面とは、部品搭載部およびその近傍の部分である。熱伝導性の高い物質は、例えばサーマルスルホール等に充填される。
このように、熱伝導性の高い物質を介してプリント配線板の表面と内部とを熱的に結合することで、プリント配線板の表面に搭載された電子部品からの熱を、効率よくプリント配線板の内部の細管や金属層(ヒートコレクタ)へ伝達できる。
次に、本発明のプリント配線板の製造方法について説明する。本発明のプリント配線板の製造方法は、用意した2枚の絶縁樹脂板の少なくとも1枚の一方の表面に、完成状態のプリント配線板における金属細管に形成される溝であって、両端が完成状態のプリント配線板の外形まで達している溝を形成する溝加工工程と、前記溝が内側となるように2枚の絶縁樹脂板を積層接着して内層コア材を形成する積層工程と、前記内層コア材の内部に形成された空洞を、メッキまたはスパッタにより金属細管として形成する金属化工程と、前記内層コア材の表面に、配線パターンを形成した後、外形加工を行って金属細管の開口部を形成する仕上げ工程とを含むことを特徴とする。
このようなプリント配線板の製造方法によれば、プリント配線板のすべての構成材料が、通常のプリント配線板の製造に用いる材料と同じであり、かつ、通常のプリント配線板の工程と略同様であるため、プリント配線板を容易に製造できるとともに、プリント配線板の電子部品の実装時の耐熱性や、使用時の絶縁特性等、ほとんど全ての性能を、従来のプリント配線板と同等に確保できる。また、従来の巨大なヒートシンクや大型ファンを取り付ける場合と比べて、全体的に軽量化・小型化・スリム化(薄型化)を図ることができる。
本発明のプリント配線板の製造方法は、用意した3枚の絶縁樹脂板の1枚に、完成状態のプリント配線板における金属細管に形成される貫通穴であって、両端が完成状態のプリント配線板の外形まで達している貫通穴を形成する穴加工工程と、前記貫通穴が形成された絶縁樹脂板の両面に、残りの2枚の絶縁樹脂板を積層接着して内層コア材を形成する積層工程と、前記内層コア材の内部に形成された空洞を、メッキまたはスパッタにより金属細管として形成する金属化工程と、前記内層コア材の表面に、配線パターンを形成した後、外形加工を行って金属細管の開口部を形成する仕上げ工程とを含むことを特徴とする。
このようなプリント配線板の製造方法によれば、上述の2枚の絶縁樹脂板を用意する場合と略同様の作用効果を奏する。また、2枚の絶縁樹脂板を用意する場合と比べると、3枚全ての絶縁樹脂板に対して溝加工を行う必要がなく、しかも、絶縁樹脂板への穴加工は金型加工で可能であるため、絶縁樹脂板に対する加工を容易に行うことができる。さらに、絶縁樹脂板を積層接着する際にも、上述の2枚の絶縁樹脂板を用意する場合には、2枚の絶縁樹脂板の溝位置を確実に位置合わせをする必要があるのに対して、このような位置合わせの必要がなくなり、したがって、量産性に優れる。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記用意した絶縁樹脂板の少なくとも1枚は、半硬化(Bステージ)のプリプレグであってもよい。また、用意した絶縁樹脂板の少なくとも1枚には、接着剤が付着されていてもよい。また、用意した絶縁樹脂板の少なくとも1枚は、積層後に内層コア材の外側となる面に銅箔が積層された銅張り板であってもよい。また、用意した絶縁樹脂板の少なくとも1枚には、積層後に形成される空洞内壁をメッキ処理するための触媒処理を施していてもよい。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記積層工程の前に、前記絶縁樹脂板に形成された溝の内壁に、予めメッキ前処理、触媒処理を行った後、メッキ処理を施して金属層を形成すること特徴とする。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記積層工程の前に、前記絶縁樹脂板に形成された溝または貫通穴の壁面部分を含む絶縁樹脂板表面の全部または一部に、予めメッキ前処理、触媒処理を行った後、メッキ処理を施して金属層を形成することを特徴とする。
このようなプリント配線板の製造方法によれば、絶縁樹脂板を積層して内層コア材を形成すると、内層コア材の内部には、ヒートコレクタとしての金属層が形成される。これにより、プリント配線板において、効率よく熱を外部へ放出できる一方、金属細管内の冷媒の流速や、金属細管の配置を工夫することによって、プリント配線板全体の温度を均一化することができる。そして、プリント配線板全体の温度を均一化することで、例えば、特に高熱を発する電子部品があるなど、温度係数が異なる素子で構成された回路を安定動作させることができる。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記積層工程の前に、前記絶縁樹脂板に形成された溝または貫通穴の壁面部分を含む絶縁樹脂板表面の全部に、予めメッキ前処理、触媒処理を行った後、メッキ処理を施して金属層を形成し、その後、形成された金属層の不要な部分をエッチング除去することを特徴とする。
このようなプリント配線板の製造方法によれば、絶縁樹脂板を積層して内層コア材を形成すると、内層コア材の内部には、ヒートコレクタとしての金属層が形成される。これにより、プリント配線板において、効率よく熱を外部へ放出できる一方、金属細管内の冷媒の流速や、金属細管の配置を工夫することによって、プリント配線板全体の温度を均一化することができる。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記絶縁樹脂板として、少なくとも溝を形成する側の面に銅箔が積層されている銅張り積層板を用意し、前記積層工程の前に、前記銅張り積層板に形成された溝の壁面部分を含む銅張り積層板表面の全部に、予めメッキ前処理、触媒処理を行った後、メッキ処理を施して金属層を形成し、その後、形成された金属層の不要な部分をエッチング除去することを特徴とする。
このようなプリント配線板の製造方法によれば、銅張り積層板を積層して内層コア材を形成すると、内層コア材の内部には、ヒートコレクタとしての金属層が形成される。これにより、プリント配線板において、効率よく熱を外部へ放出できる一方、金属細管内の冷媒の流速や、金属細管の配置を工夫することによって、プリント配線板全体の温度を均一化することができる。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記溝加工工程において、前記絶縁樹脂板に、両端が完成状態のプリント配線板の外形まで達している溝を形成する代わりに、前記絶縁樹脂板の表面に完成状態のプリント配線板の外形まで達していない溝を形成し、かつ、一方の絶縁樹脂板の溝の両端部に該一方の絶縁樹脂板を貫通する穴を形成してもよい。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記穴加工工程において、前記絶縁樹脂板に、両端が完成状態のプリント配線板の外形まで達している貫通穴を形成する代わりに、前記絶縁樹脂板に完成状態のプリント配線板の外形まで達していない貫通穴を形成し、かつ、該貫通穴の両端部に対応させて、残りの絶縁樹脂板の一方に、該絶縁樹脂板を貫通する穴を形成してもよい。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記積層工程において、前記絶縁樹脂板の積層接着を接着剤にて行ってもよい。
また、本発明のプリント配線板の製造方法において、前記積層工程において、前記絶縁樹脂板の積層接着を金属ろうにて行ってもよい。より具体的には、前記積層工程の前に、前記金属ろうの層を、電解メッキ、無電解メッキ、溶着、または塗布によって、前記金属層または前記銅箔の表面に形成する。前記金属ろうとしては、無鉛または有鉛の半田が用いられる。
また、上記のプリント配線板を備えている電子機器を形成することができる。
本発明のプリント配線板の製造方法の対象であるプリント配線板は、上述のような構成であるから、冷媒を強制的に循環させることによって、プリント配線板の内部で熱を吸収し、プリント配線板の外部で熱を放出するというサイクルが繰り返され、これにより、プリント配線板の電子部品が発した熱を、効率的にプリント配線板の外部へ放出することができる。また、従来の巨大なヒートシンクや大型ファンを取り付ける構成と比べて、全体的に軽量化・小型化・スリム化(薄型化)を図ることができる。
しかも、プリント配線板のすべての構成材料が、通常のプリント配線板の製造に用いる材料と同じであり、かつ、通常のプリント配線板の工程と略同様であるため、プリント配線板を容易に製造できるとともに、プリント配線板の電子部品の実装時の耐熱性や、使用時の絶縁特性等、ほとんど全ての性能を、従来のプリント配線板と同等に確保できる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係わるプリント配線板を示している。プリント配線板は、絶縁層と導体層とが少なくとも1層以上交互に積層されて形成されており、片面板でも両面板でも多層板であってもよい。図1では、プリント配線板の内層・外層の配線パターンやレジスト、シルク印刷等は図示を省略している。
プリント配線板10の絶縁層内の特定の領域には、金属製の細管(金属細管)21が設けられている。金属細管21は冷媒が流れる細管であり、一方の開口部22から他方の開口部22に至っている。金属細管21の両端の開口部22は、プリント配線板10の端面(図1では、側面)に形成されている。この開口部22に、後述する外部冷却装置が接続される。図1では、金属細管21は、細長くその一部が屈曲されて形成され、プリント配線板10の内部の略全域にわたって配置されている。開口部22は、プリント配線板10に最低限2つ形成されていればよく、基本的には、金属細管21の両端に設けられている。
なお、金属細管21の配置や形状、開口部22の位置等は限定されず、例えば、金属細管21をプリント配線板の一部分にのみ形成したり、金属細管21の一部を他の部分よりもプリント配線板10の表面に近接して配置するようにしてもよい。また、図2、図3に示すように、プリント配線板10´の表面に開口部22´を設けたり、プリント配線板10´の側面に一方の開口部、表面に他方の開口部を設けるようにしてもよい。
次に、プリント配線板の放熱機構について説明する。図4は、外部冷却装置を取り付けたプリント配線板の冷却システムを模式的に示した図である。
図4に示すように、ラジエータ(冷却装置)41と、冷媒タンク42と、循環ポンプ(循環装置)43が外部配管44により接続されている。外部配管44は、プリント配線板10の開口部22にて金属細管21と2箇所で接続されている。金属細管21と外部配管44には冷媒が充填されており、冷媒は循環ポンプ43により強制的に循環させられる。冷媒は、プリント配線板10内部では、金属細管21内を流れ、プリント配線板10外部では、外部配管44内を流れる。具体的な循環経路は、金属細管21→一方の開口部22→外部配管44→ラジエータ41→冷媒タンク42→循環ポンプ43→外部配管44→他方の開口部22→金属細管21となっている。このように、冷媒がプリント配線板10の内外を循環する構成となっている。この例では、金属細管21を流れる冷媒として、水を用いているが、これ以外に、代替フロン、ハイドロフルオロエーテルのような不活性液体等の液体、あるいは、液体以外にも清浄乾燥空気や溶剤蒸気のような気体を用いてもよい。
プリント配線板10に実装された電子部品が発熱すると、この熱が絶縁樹脂層を通って、金属細管21内の冷媒に伝達される。熱を受け取った冷媒は、循環ポンプ43により、金属細管21を流れ、一方の開口部22を経てプリント配線板10の外部へ送られる。プリント配線板10の外部では、外部配管44を流れてラジエータ41に至り、さらに、冷媒タンク42に送られる。ラジエータ41での熱交換により熱が外部へ放出され、冷媒が冷却される。冷却された冷媒は、冷媒タンク42から循環ポンプ43、外部配管44を流れ、他方の開口部22を経て、再びプリント配線板10の金属細管21へ送られる。このように、冷媒を循環させることによって、プリント配線板10の内部で熱を吸収し、プリント配線板10の外部で熱を放出するというサイクルが繰り返される。これにより、プリント配線板10の電子部品が発した熱を、プリント配線板10の外部へ放出している。
次に、プリント配線板(両面配線板)の製造過程について、図5〜図7を用いて説明する。
まず、2枚の絶縁樹脂板11a、11bを用意する(用意工程)。絶縁樹脂板11a、11bは、完成状態におけるプリント配線板10の層間絶縁層となるものである。なお、絶縁樹脂板11a、11bは、Bステージのプリプレグであってもよい。また、絶縁樹脂板11a、11bには、片面(積層後に外側となる面)に銅箔が積層された絶縁樹脂板を用いてもよく、絶縁樹脂板11a、11bの代わりに、適切な触媒層や接着剤層を持つ材料を用いてもよい。なお、絶縁樹脂板11a、11bは、従来のプリント配線板の製造過程の場合と同じように、最終製品(完成状態のプリント配線板)よりも大きなものとなっており、外形加工において実外形位置で切断されて最終製品の大きさになる。このため、場合によっては、いわゆるワークシートに複数の絶縁樹脂板11a、11bが配置されるものであってもよい。
次に、一方の絶縁樹脂板11aの片面(銅箔が積層された絶縁樹脂板11aを用いる場合には、銅箔のない側)に、レーザー加工、サンドブラスト加工、ミリング等の方法で、図5に示すような溝21aを形成する(溝加工工程)。溝21aは、細長くその一部が屈曲されて形成されており、その両端は、絶縁樹脂板11aの端面まで達している。この溝21aが、冷媒が通る金属細管21となる。ただし、溝21aの両端は、完成状態におけるプリント配線板10の端面(外形)まで達していればよく、したがって、絶縁樹脂板11aの端面まで達している必要はない。
また、溝21aの形状は特に限定されないが、図5に示すように一部で屈曲して形成されているのは、完成状態のプリント配線板10に形成される部品脚の取り付け穴、スルホール等を避けるためである。なお、図5では、絶縁樹脂板11aの略全面にわたって溝21aを形成しているが、例えば、CPUやチップセット、電源部のように、特定部分のみ発熱が多い場合には、その特定部分に対応した部分だけに溝21aを形成するようにしてもよい。
続いて、他方の絶縁樹脂板11bの片面(銅箔が積層された絶縁樹脂板11bを使う場合には、銅箔のない側)に、上述した絶縁樹脂板11aの場合と同様にして、溝21bを形成する。この溝21bは、後述のように両絶縁樹脂板11a、11bを貼り合わせたとき、その貼り合わせ面に対して、上記の絶縁樹脂板11aの溝21aと面対称となるように形成される。
次に、両溝21a、21bの位置合わせをし、両絶縁樹脂板11a、11bを接着剤にて貼り合わせて内層コア材11を形成する(積層工程)。図6は、両絶縁樹脂板11a、11bを積層接着した状態の断面図、つまり、内層コア材11の断面図を示している。図4に示すように、内層コア材11の両絶縁樹脂板11a、11bの間に、接着層16が形成され、内層コア材11の内部に、溝21a、21bにより細管(空洞)26が形成されている。
なお、必要となる細管26の大きさや、内層コア材11の厚さ方向の細管仕様によっては、上述した絶縁樹脂板11a、11bの溝加工の過程において、上下に貼り合わせる絶縁樹脂板11a、11bの内、一方には、溝を形成せずに、平面のままで貼り合わせてもよい。また、部分的に溝を形成したり、溝の深さを変えたりしてもよい。
こうして形成された内層コア材11に、必要に応じてスルホール穴加工を施し、その後、適切なメッキ前処理、無電解・電解メッキ処理を施して、図7に示すようなスルホール15の形成を行うとともに、細管26内壁の金属化を行って金属層23を形成する(金属化工程)。このメッキ処理は、スルホール15を形成する部分と、細管26内壁とに対して同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。また、スルホールと細管26内壁とでメッキ金属を変えてもよい。あるいは、防錆のために、細管26内壁にさらに別のコーティングを行ってもよい。なお、金属層23をスパッタ等の方法で形成してもよい。
図7は、パネルメッキ処理を施してスルホール15を形成するとともに、細管26内壁の金属化を行い、さらに、細管26内壁に防錆皮膜としてクロムメッキを施した内層コア材11の断面図を示している。図7に示すように、細管26の内壁表面には、金属層23が形成されており、この細管26内壁の金属化により、細管26が金属細管21となる。このとき、熱伝導性の高い銅で金属細管21の内壁をメッキすれば、電子部品等からの熱を効率的に放出できる。なお、この例では、金属細管21(金属層23)の防錆皮膜層をクロムにより形成しているが、ニッケル、金、樹脂等の金属材料または非金属材料により形成してもよい。
その後の製造過程は、従来の両面配線板・多層配線板の製造過程と同様である。すなわち、内層コア材11の表面に、エッチングレジストを形成し、配線パターンをエッチング形成して、さらに、ソルダレジスト印刷、シルク印刷、表面処理、外形加工を施して、プリント配線板10を完成させる(仕上げ工程)。外形加工によりプリント配線板10の端面に開口部22が形成される。
なお、以上の製造過程において、エッチング液等が金属細管21内に入って、金属細管21の内壁金属を腐蝕させたり、金属細管21を詰まらせたりしないように、内層コア材11端面に形成されている金属細管21の開口部22を適当な封止部材で塞いで、金属細管21を適切に保護するようにしておく。そして、プリント配線板10に電子部品等の実装を行った後、保護用の封止部材を取り除く。
さらに、多層配線板を製造する場合には、上述のように配線パターンが形成された両面配線板を内層コア材として、従来より知られている方法で、この両面配線板に絶縁層と導体層を重ねて形成することによって製造する。多層化手法としては、ビルドアップ法を用いることができる。
以上のようにして、製造されたプリント配線板10には、図1に示すように、端面(側面)に開口部22が設けられている。この開口部22に、上述した外部配管44が接続される。なお、図2、図3に示すように、プリント配線板10´の表面に開口部22´を設けてもよい。開口部22´をプリント配線板10´の表面に設ける場合には、絶縁樹脂板11aの溝加工の時点で、その位置に一方の絶縁樹脂板11aに貫通穴を形成するか、スルホール穴加工の時点で一方の絶縁樹脂板11aに貫通穴を形成すればよい。
図8は、溝加工の時点で貫通穴24を形成した絶縁樹脂板11aの断面図を示している。絶縁樹脂板11aの表面に形成された溝21aは、完成状態におけるプリント配線板10の外形(端面)まで達していない。この溝21aの両端に貫通穴24が形成されており、絶縁樹脂板11aの表裏を貫通している。このように形成された貫通穴24に上述したようなメッキ処理等が施されて、プリント配線板10の表面に形成される金属細管21の開口部22´となる。なお、この場合、貫通穴24は、他方の絶縁樹脂板11bには形成せずに一方の絶縁樹脂板11aにのみ形成し、また、絶縁樹脂板11bの溝21bは、完成状態におけるプリント配線板10の外形(端面)まで達しないように形成する。
上述したようなプリント配線板10の製造方法によれば、プリント配線板10のすべての構成材料が、通常のプリント配線板の製造に用いる材料と同じであり、かつ、通常のプリント配線板の工程と略同様であるため、プリント配線板10を容易に製造できるとともに、プリント配線板10の電子部品の実装時の耐熱性や、使用時の絶縁特性等、ほとんど全ての性能を、従来のプリント配線板と同等に確保できる。
以上のような構成のプリント配線板10によれば、プリント配線板10に実装された電子部品が発熱すると、この熱が絶縁樹脂層を通って、金属細管21内の冷媒に伝達される。熱を吸収した冷媒は、金属細管21を流れ、一方の開口部22を経てプリント配線板10の外部へ送られる。プリント配線板10の外部では、外部配管44を流れてラジエータ41に至り、さらに、冷媒タンク42に送られる。ラジエータ41での熱交換により熱が外部へ放出され、冷媒が冷却される。冷却された冷媒は、冷媒タンク42から循環ポンプ43、外部配管44を流れ、他方の開口部22を経て、再びプリント配線板10の金属細管21へ送られる。このように、循環ポンプ43により冷媒を強制的に循環させることによって、プリント配線板10の内部で熱を吸収し、プリント配線板10の外部で熱を放出するというサイクルが繰り返される。これにより、プリント配線板10の電子部品が発した熱を、効率的にプリント配線板10の外部へ放出できる。
また、従来の巨大なヒートシンクや大型ファンを取り付ける構成と比べて、全体的に軽量化・小型化・スリム化(薄型化)を図ることができる。さらに、プリント配線板10に搭載される電子部品に対して、大型のヒートシンクや冷却デバイスを直接取り付けないため、プリント配線板10や電子部品に対するストレスが少なくなる。
[実施形態2]
次に、プリント配線板の金属細管を形成する別の例について説明する(実施形態2)。この実施形態2では、3枚の絶縁樹脂板より内層コア材、金属細管を形成する点で上記実施形態1と異なる。図9は、貫通穴が形成された絶縁樹脂板を示す図、図10は、3枚の絶縁樹脂板より形成された内層コア材を示す図である。なお、上記実施形態1と同じ構成による部分については、説明を省略し、異なる構成による部分について詳しく説明する。
この例では、プリント配線板の製造する過程において、まず、3枚の絶縁樹脂板111a、111b、111cを用意する(用意工程)。このうち、中間に配置される絶縁樹脂板111cに、図9に示すような細長くその一部が屈曲された形状の貫通穴121cを形成し、残りの絶縁樹脂板111a、111bには、穴や溝を形成しない(穴加工工程)。絶縁樹脂板111cに形成された貫通穴121cは、完成状態のプリント配線板において金属細管121となる穴であり、貫通穴121cの両端が、完成状態におけるプリント配線板の外形(実外形位置)まで達している。なお、完成状態におけるプリント配線板の外形まで達していればよく、絶縁樹脂板111cの端面まで達している必要はない。
そして、貫通穴121cが形成された絶縁樹脂板111cの両面に、穴が形成されていない絶縁樹脂板111a、111bを接着剤にてそれぞれ貼り合わせて内層コア材111を形成する(積層工程)。こうして3枚の絶縁樹脂板111a、111b、111cが積層接着されて形成された内層コア材111には、その内部に、絶縁樹脂板111cの貫通穴121cによる細管(空洞)126が形成されている。また、絶縁樹脂板111a、111cの間、絶縁樹脂板111b、111cの間にそれぞれ接着層116が形成されている。
次に、上記実施形態1の場合と同様にして、パネルメッキ処理が施されてスルホール115が形成されるとともに、細管126内壁の金属化が行われ(金属化工程)、さらに、細管126内壁に防錆皮膜としてクロムメッキが施されて、図10に示すような内層コア材111が形成される。このようにして形成された内層コア材111は、接着層116の位置を除けば、上記実施形態1で製造された内層コア材11と略同様の断面形状となっている(図7参照)。つまり、細管126の内壁表面には、金属層123が形成されており、この細管126内壁の金属化により、細管126が金属細管121となる。その後のプリント配線板の製造過程は、上記実施形態1と同じである。
このような、3枚の絶縁樹脂板より製造されるプリント配線板によれば、上記実施形態1で述べたような利点に加えて、次のような利点がある。すなわち、上記実施形態1の場合と比べると、全ての絶縁樹脂板に対して溝加工を行う必要がなくなり、しかも、絶縁樹脂板111cへの穴加工は金型加工で可能であるため、絶縁樹脂板に対する加工を容易に行うことができる。また、絶縁樹脂板を積層接着する際に、上記実施形態1の場合には、2枚の絶縁樹脂板の溝位置を確実に位置合わせをする必要があるのに対して、この例では、このような位置合わせの必要がなく、量産性に優れている。ただし、上述の金型加工で絶縁樹脂板111cに貫通穴121cを形成する場合には、加工できる穴の幅に限度があるため、形成される金属細管121の形状が扁平状になることがある点に注意する。
なお、プリント配線板の表面に金属細管121の開口部を設ける場合には、絶縁樹脂板111cに、両端が完成状態のプリント配線板の外形まで達している貫通穴121cを形成する代わりに、この絶縁樹脂板111cに完成状態のプリント配線板の外形まで達していない貫通穴121cを形成し、かつ、この貫通穴121cの両端に対応させて、残りの絶縁樹脂板111a、111bのいずれか一方に、この絶縁樹脂板を貫通する穴を形成する。このように形成された絶縁性樹脂を貫通する穴に上述したようなメッキ処理等が施されて、プリント配線板の表面に設けられる金属細管121の開口部となる。
[実施形態3]
次に、プリント配線板(多層配線板)を製造する手順について詳しく説明する(実施形態3)。図11は、多層配線板の断面図である。なお、上記実施形態1と同じ構成による部分については同じ符号を付して説明する(図1〜図8参照)。
まず、上記実施形態1と同様の手順にて、2枚の絶縁樹脂板11a、11bに対して溝加工を行い、両絶縁樹脂板11a、11bを貼り合せたものを内層コア材11として用意する。この場合、絶縁樹脂板11a、11bは、予め外側になる側に銅箔が積層されたものでも、内層コア材11に形成される細管26の内壁をメッキする際、同時にメッキするものでもよい。
次に、内層コア材11の端面に形成された金属細管21の開口部22(図1参照、図2、図3の場合には、表面に形成された開口部22´)を適当な封止部材で塞ぐ。このとき、封止部材を後の工程で取り除くことができるような方法で開口部22を塞ぐようにする。このように開口部22を塞ぐことによって、この後の工程で、金属細管21内にインクや処理液、樹脂等が進入して、開口部22や金属細管21内が汚染、腐蝕、閉塞されることを防ぐようにしている。なお、プリント配線板を複数まとめてワーク形態で加工する場合や、単体であっても少なくとも金属細管21の開口部22側に捨て板が存在する場合には、開口部22を完全に永久閉塞しまってもよい。これは、多層配線板200の外形加工を行うときに、開口部22を塞いだ位置よりも内側(配線板側)の多層配線板200の実外形位置で切断を行うため、塞いだ部分も切断され、金属細管21に新たな開口が形成されるからである。
次に、内層コア材11にスルホールをまだ形成しておらず、かつ、内層にインナーバイアホールを形成する場合には、その位置にドリル加工やレーザー加工等で穴を開けて、パネルメッキを行う。この状態の内層コア材11の断面形状は、上記実施形態1の場合と同同じものになる(図7参照)。一方、内層コア材11を形成した時点で、すでにこの工程を行っている場合は、この穴加工、メッキ処理は不要である。
次に、内層コア材11の表面に、エッチングレジストを形成し、内層パターンをエッチング形成する。この後の工程は、上記実施形態1で述べたように、従来の多層配線板を製造する工程と同様である。すなわち、上記工程を経て内層パターンが形成された内層コア材11を用いて、この内層コア材11の両面にプリプレグと銅箔を積層し、回路をエッチングする方法や、絶縁層の形成、バイアホール加工、メッキ処理、エッチング処理を繰り返すビルドアップ法等が利用できる。
図9は、ビルドアップ法を用いて製造した多層配線板の断面図を示している。図9では、ソルダレジスト等、外層配線層より外側の層の図示を省略している。ビルドアップ法を用いて製造した多層配線板200においては、内層コア材11の両面に内層パターン31が形成され、内層コア材11に積層されたビルドアップ絶縁層32の両面に外層パターン33が形成されている。また、インナーバイアホール35、バイアホール36が形成されている。
[実施形態4]
次に、プリント配線板内部に設けられる金属細管の形状を変更した例について説明する(実施形態4)。なお、上記実施形態1と同じ構成による部分については同じ符号を付して説明する(図1〜図8参照)。
この例の金属細管21の壁面には、図12に示すように、多数の細かい溝25が形成されている。このような溝25を金属細管21に形成するには、上記実施形態1で述べた絶縁樹脂板11a、11bに溝21a、21bを形成する際に、この溝21a、21bの壁面に多数の細かい溝を、レーザー加工等で形成しておく。このように溝21a、21bの壁面に形成された細かい溝は、細管26内壁を金属メッキする際に、金属細管21の溝25として形成される。なお、溝25の代わりに、数十ミクロン〜数百ミクロンの細かい凹凸を設けてもよい。
プリント配線板10において冷媒を強制的に循環させると、金属細管21が細長く形成されているため、金属細管21内では、冷媒は比較的静かに流れ、その流れが層流になる可能性が高い。このため、金属細管21の表面付近では冷媒があまり流れていなかったり、流速の異なる各層間での熱移動が少なかったりすることによって、流れている冷媒の一部しか熱移送に有効に関わらないという問題や、効率よく金属細管21から冷媒へ熱が伝達されないという問題が起こる可能性がある。
しかしながら、この例では、金属細管21の壁面に細かい溝25を形成することで、冷媒が金属細管21を流れる際に、冷媒の流れに渦や乱流を発生させたり、金属細管21の熱伝達に関わる表面積を増加させたりすることができ、これにより、金属細管21による熱の移送効率を向上させることができる。
[実施形態5]
次に、プリント配線板に金属細管を形成する別の手順について説明する(実施形態5)。この実施形態5では、細管内壁の金属メッキを絶縁樹脂板の積層よりも先に行う点で上記実施形態1と異なる。図13は、溝に銅メッキと防錆用のコーティングが施された絶縁樹脂板の断面図である。なお、上記実施形態1と同じ構成による部分については、説明を省略し、異なる構成による部分について詳しく説明する。
図13に示すように、絶縁樹脂板311aの溝321aには、銅メッキ323とニッケルメッキ324が形成されている。絶縁樹脂板311aに溝321aを形成した後、溝321aの内壁に適切なメッキ前処理、触媒処理を施し、メッキ処理を施して、溝321aに銅メッキ323を形成する。さらに、防錆のためのコーティングを施して、銅メッキ323の上に、防錆皮膜としてのニッケルメッキ324を薄く形成する。この例では、溝321aをメッキする金属、つまり、内層コア材の金属細管を構成する金属には、熱伝導性を考慮して銅を用いている。なお、防錆皮膜は、ニッケル以外に、クロムや金、樹脂を用いて形成してもよい。
このようなメッキ処理をもう一方の絶縁樹脂板311bの溝321bに対しても行った後、両絶縁樹脂板311a、311bを積層して内層コア材を形成する。内層コア材の内部には、銅メッキ323とニッケルメッキ324が形成された溝321a、321bにより金属細管が形成される。
[実施形態6]
次に、プリント配線板の内部に金属層(ヒートコレクタ)を設ける例について説明する(実施形態6)。図14は、金属層が形成された絶縁樹脂板の斜視図、図15は、内部に金属層が設けられた内層コア材の断面図である。なお、上記実施形態1と同じ構成による部分については、説明を省略し、異なる構成による部分について詳しく説明する。
図14に示すように、絶縁樹脂板411aの表面には、ヒートコレクタとして金属層425が形成されている。絶縁樹脂板411aに溝421aを形成した後、溝421aが形成された部分を含む絶縁樹脂板411a表面のうち、次の部分426、427を除く全部分または必要部分に、後述する方法で金属層425を形成する。
絶縁樹脂板411aの表面には、金属層425を形成しない第1の部分426、第2の部分427がある。第1の部分426は、プリント配線板において、電子部品を搭載しない部分や、プリント配線板実外形位置よりも外側の捨て板の部分である。第2の部分427は、バイアホールやスルホール、部品取り付け穴等とその周囲の部分であり、バイアホール、スルホール等が接触して短絡するのを防止するために金属層425を形成しないようにしている。
絶縁樹脂板411aに金属層425を形成する方法には、絶縁樹脂板411aに溝421aを形成した後、金属層425が不要な部分426、427に相当する部分にメッキレジストを形成し、適切な前処理、触媒処理、活性化処理を施した後、メッキを行う方法がある。溝421aを形成した絶縁樹脂板411aの表面に全面メッキを行った後、金属層425が不要な部分426、427をエッチングによって除去する方法を用いてもよい。また、ヒートコレクタ部分の金属層425を厚く形成してより効率よく熱を集めるためや、メッキ処理を容易にするため等に、絶縁樹脂板411aとして、少なくとも溝を形成する側の面に予め銅箔が積層されている銅張り積層板を用いるようにしてもよい。
このような金属層425をもう一方の絶縁樹脂板411bに対しても形成した後、両絶縁樹脂板411a、411bを積層して内層コア材411を形成する。内層コア材411の内部には、金属細管421とヒートコレクタとしての金属層425とが形成される。この例では、両絶縁樹脂板411a、411bの互いの接着面に金属層425が形成されているため、接着剤以外にも、金属ろうを用いて接着することができる。例えば、金属層425の表面に予め、電解メッキ、無電解メッキ、溶着、塗布等の方法で、半田の層を薄く形成した後、この面を互いに接触させるように2枚の絶縁樹脂板411a、411bを積層した後、加圧・加熱して接着する。半田には、高融点の無鉛または有鉛のものが用いられる。
図15は、上述の銅張り積層板を用いた場合の内層コア材の断面図を示している。内層コア材411の内部には、ヒートコレクタとして、銅張り積層板に予め積層してあった銅箔層424と、メッキ等により形成された金属層425とが配置されている。金属層425は、隣り合う2つの金属細管421(金属層423)を繋ぐように設けられている。上述したように、絶縁樹脂板411aの表面には、金属層425の不要な部分426、427を除く全部分または一部分に、金属層425を形成するため、内層コア材411の内部には、金属細管421の配置されている部分を除く全部分または一部分に金属層425が設けられている。
このように、内層コア材411の内部に金属層425を設けることで、プリント配線板において、効率よく熱を外部へ放出できる一方、金属細管421内の冷媒の流速や、金属細管421の配置を工夫することによって、プリント配線板全体の温度を均一化することができる。そして、プリント配線板全体の温度を均一化することで、例えば、特に高熱を発する電子部品があるなど、温度係数が異なる素子で構成された回路を安定動作させることができる。
なお、上記実施形態2のように、3枚の絶縁樹脂板より内層コア材を形成する場合には、次のようにして、内層コア材の内部に、ヒートコレクタとしての金属層を形成する。すなわち、3枚の絶縁樹脂板の積層前に、絶縁樹脂板に形成された貫通穴の壁面部分を含む絶縁樹脂板表面の全部または一部に金属層を形成する。この場合にも、絶縁樹脂板に貫通穴を形成した後、金属層が不要な部分に相当する部分にメッキレジストを形成し、適切な前処理、触媒処理、活性化処理を施した後、メッキ処理を行う方法や、貫通穴を形成した絶縁樹脂板の表面に全面メッキを行った後、金属層が不要な部分をエッチングによって除去する方法を用いることができる。
[実施形態7]
次に、プリント配線板にサーマルパッド、サーマルスルホール等を設ける例について説明する(実施形態7)。図16は、完成状態のプリント配線板の断面図である。図16では、プリント配線板のレジスト、シルク印刷等は図示を省略している。なお、上記実施形態1と同じ構成による部分については、説明を省略し、異なる構成による部分について詳しく説明する。
図16に示すように、プリント配線板500の部品搭載部Aには、サーマルパッド526を介して電子部品Eが搭載されている。サーマルパッド526は、電子部品Eが搭載される部品搭載部Aに設けられ、プリント配線板500の配線パターンのエッチング形成と同時に形成される。この例では、サーマルパッド526は銅箔で形成されている。なお、サーマルパッド526を熱伝導性の高いシリコンシート等で形成して、プリント配線板500と電子部品Eとの間に挟み込むように配置してもよい。また、銅箔とシリコンシートを組み合わせて用いてもよい。
プリント配線板500(内層コア材511)の内部には、金属細管521と、上記実施形態6で述べたヒートコレクタ525が設けられている。ヒートコレクタ525は、隣り合う2つの金属細管521を繋ぐように設けられている。また、プリント配線板500には、スルホール515とサーマルスルホール527が形成されている。
サーマルスルホール527は、サーマルパッド526とヒートコレクタ525との間、およびサーマルパッド526と金属細管521との間に介装されている。サーマルスルホール527には、熱伝導性の高い物質が充填されている。つまり、サーマルスルホール527を介して、電子部品Eが搭載されるサーマルパッド526と、ヒートコレクタ525および金属細管521とが接続されている。なお、この例では、プリント配線板500にサーマルパッド526とサーマルスルホール527を両方設けているが、いずれか一方のみを設けるようにしてもよい。また、サーマルスルホール527を設けずに、サーマルパッド526と、ヒートコレクタ525および金属細管521とを、熱伝導性の高い物質で接続するようにしてもよい。
サーマルスルホール527は、通常のスルホール515の場合と同様の方法で形成することができ、プリント配線板500の配線パターンを形成する過程で、スルホール515とともに形成される。なお、配線パターンに利用するスルホール515が、内層コア材511の内部のヒートコレクタ525や金属細管521に電気的に接触すると、回路短絡等の問題が起きるため、スルホール515をヒートコレクタ525や金属細管521と干渉しないように設ける必要があるのに対して、サーマルスルホール527は、ヒートコレクタ525や金属細管521に積極的に接続するように設けられるという違いがある。
このように、サーマルスルホール527により、サーマルパッド526と、プリント配線板500の内部のヒートコレクタ525および金属細管521とを熱的に結合することによって、サーマルパッド526上に実装された電子部品Eからの発熱が、サーマルパッド526に伝わると、この熱がサーマルパッド526下の絶縁層や、サーマルパッド526に接続されるサーマルスルホール527に伝達される。そして、サーマルスルホール527に接続されるヒートコレクタ525や金属細管521に伝達され、効率よく熱を外部へ放出できる。
[実施形態8]
次に、プリント配線板にヒートシンクを設ける例について説明する(実施形態8)。この実施形態8は、上記実施形態7で述べたプリント配線板にヒートシンクを設けた例について説明することとし、上記実施形態7と同じ構成による部分には同じ符号を付して説明する(図16参照)。図17は、完成状態のプリント配線板の断面図である。図17では、プリント配線板のレジスト、シルク印刷等は図示を省略している。
図17に示すように、プリント配線板500´の部品搭載部Aには、上記実施形態7で述べたサーマルパッド526を介して電子部品Eが搭載されている。サーマルパッド526は、例えば銅箔で形成されており、電子部品Eが搭載される部品搭載部Aに設けられている。プリント配線板500´(内層コア材511´)の内部には、金属細管521と、上記実施形態6で述べたヒートコレクタ525が設けられている。ヒートコレクタ525は、隣り合う2つの金属細管521を繋ぐように設けられている。なお、上記実施形態7と同様に、サーマルスルホールを形成し、サーマルスルホールを介して、電子部品Eが搭載されるサーマルパッド526と、ヒートコレクタ525および金属細管521とを熱的に結合するようにしてもよい(図16参照)。
プリント配線板500´の電子部品E上にはヒートシンク528が設けられている。プリント配線板500´には、ヒートシンク528の取り付け脚529が挿入される取り付け穴516が形成されている。ヒートシンク528の取り付け脚529は、プリント配線板500´の取り付け穴516に挿入され、シリコン樹脂や導電性ペースト、接着剤、半田等の熱伝導性の高い材料を用いてプリント配線板500´に固定される。このように、プリント配線板500´にヒートシンク528を設けることで、プリント配線板500´の表面からも電子部品Eの熱を逃がすことができる。なお、ヒートシンク528の取り付け脚529を、上記実施形態7におけるサーマルスルホール(図16参照)に挿入し、半田等で固定してもよく、この場合には、さらに効率よく熱を外部へ放出できる。
[実施形態9]
次に、プリント配線板の金属細管に電気防蝕を施した例について説明する(実施形態9)。この実施形態9は、上記実施形態1で述べた金属細管を電気防蝕する例について説明することとし、上記実施形態1と同じ構成による部分には同じ符号を付して説明する(図1〜図8参照)。
金属細管21の内壁の電気防蝕は、プリント配線板10(内層コア材11)の内部の金属細管21に電極を接続し、金属細管に適当な電位を与えることによって行われる。上記実施形態6で述べたように、プリント配線板(内層コア材)の内部の金属細管に電気的に接続する金属層(ヒートコレクタ)を設ける場合には、ヒートコレクタに電極を接続してもよい。
プリント配線板10の金属細管21の腐蝕を防ぐ方法としては、上記実施形態1、2等で述べたように、防錆メッキを施すのが一般的な方法である。ところが、銅等の熱伝導性の高い材料で金属細管21(金属層23)を形成しても、防錆皮膜の材料としてクロムやニッケルを用いると熱伝導を却って妨げてしまう。この例では、プリント配線板10の金属細管21を電気防蝕することで、金属細管21の熱伝導性を悪化させないようにしている。
[実施形態10]
次に、プリント配線板の金属細管の断面形状の変形例について、図18を用いて説明する(実施形態10)。上記実施形態1〜9では、プリント配線板(内層コア材)の内部に設けられる金属細管の断面形状を、角の部分を丸めた矩形としているが(図7等参照)、この形状に限定されるものではない。例えば、金属細管の断面形状を、円形、楕円形、長円形、矩形、菱形、台形、三角形、もしくはこれら各形状の角の部分を丸めた形状、または前記各形状を組み合わせた形状としてもよい。
図18(a)〜(h)に示すように、金属細管の断面形状は、絶縁樹脂板に金属細管となる溝を形成する際、その溝の形状を変更することによって、種々に変えることができる。図18(a)に示す金属細管621aは断面略円形であり、プリント配線板(内層コア材)の内部に金属細管621aがパイプ状に形成される。図18(b)に示す断面略正方形の金属細管621b、図17(c)に示す断面略長方形の金属細管621c、図18(d)に示す断面略菱形の金属細管621dは、エンドミルやドリル等で絶縁樹脂板に溝加工をする際に最も簡単に形成できる。図18(e)に示す断面略楕円形の金属細管621e、図18(f)に示す断面略長方形の金属細管621fは、電子部品Eからの熱をより受け取りやすいように、扁平な形状となっている。図18(g)に示す断面略台形の金属細管621g、図18(h)に示す断面略三角形の金属細管621hは、プリント配線板部品搭載面側よりの吸熱効果を大きくすることができる。