JP4350231B2 - 異方性の優れた電池用di成形用鋼板及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主に乾電池に使用されるDI(Draw and Ironing)成形用材料に関し、異方性に優れた薄肉化DI成形缶に適した鋼板及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、乾電池用内装缶の成形法として、製造コスト低減を目的として、軽量化、製造工程の短縮、及び充填剤容量増加が可能なDI成形缶の製造技術が実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなDI成形法または深絞り成形法により製造される2ピース缶においては、絞り或いはしごき加工後の缶円周方向の缶高さが不揃いになること(以下イヤリング)が問題となる。このイヤリング不良が発生した場合、不良缶の搬送が困難となり、生産性を阻害するばかりでなく、正常品に比べ不良缶はトリム代を大きく取る必要があり、歩留まりを低下させる。また、このイヤリングは、コイルの幅方向中央部に比べて、幅方向端部のイヤリングが大きくなる傾向がある。
【0004】
このイヤリングを防止する技術として、例えば特開平6−344003号公報、特開平9−241757号公報、特開平9−241758号公報、特開平9−241759号公報、特開平9−241760号公報等が提案されている。しかし、それぞれ冷延率や成分の規制等が記述されているが、イヤリング不良を完全に解消することは困難である。
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、コイル内で均一で優れたイヤリング性を有する鋼板及びその製造法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電池用DI成形用鋼板のイヤリング性の向上を目的に鋭意研究の結果、低炭素鋼の鋼中Al量と熱延巻取温度、冷延率及び、箱型焼鈍条件を選択し組み合わせることで、上記イヤリングの課題を解決し満足できるDI成形性を有する鋼板の製造方法を見出した。
請求項1の異方性の優れた電池用DI成形用鋼板は、
C:0.015〜0.06%(質量%、以下同じ)、Si:≦0.03%、Mn:0.1〜0.5%、P:≦0.02%、S:≦0.04%、Al:0.015〜0.03%、N:≦0.0030%、B:5ppm≦B−(11/14)×N≦30ppm、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、熱間仕上げ圧延をAr3点以上、巻き取り温度540〜680℃にて熱間圧延し、酸洗後、81〜90%の圧延率で冷間圧延し、その後580〜680℃で箱型焼鈍を行い、調質圧延後Niめっきを施し、次いでNiの拡散処理後、板の表面平均粗さRaが0.02〜0.06μmの範囲となるように調質圧延を行うことによって形成されたものであることを特徴とする。
請求項2の異方性の優れた電池用DI成形用鋼板の製造法は、
C:0.015〜0.06%(質量%、以下同じ)、Si:≦0.03%、Mn:0.1〜0.5%、P:≦0.02%、S:≦0.04%、Al:0.015〜0.03%、N:≦0.0030%、B:5ppm≦B−(11/14)×N≦30ppm、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、熱間仕上げ圧延をAr3点以上、巻き取り温度540〜680℃にて熱間圧延し、酸洗後、81〜90%の圧延率で冷間圧延し、その後580〜680℃で箱型焼鈍を行い、調質圧延後Niめっきを施し、次いでNiの拡散処理後、板の表面平均粗さRaが0.02〜0.06μmの範囲となるように調質圧延を行うことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
熱延鋼板の成分は、それぞれ質量%で、C:0.015〜0.06%、Si:≦0.03%、Mn:0.1〜0.5%、P:≦0.2%、S:≦0.04%、Al:0.015〜0.03%、N:≦0.0030%、B:5ppm≦B−(11/14)×N≦30ppm、残部Feおよび不可避的不純物からなることがこのましい。
以下に鋼成分の規制理由を述べる。
Cは、DI成形缶の強度及び成形性、耐食性に大きく影響を及ぼす元素であり、0.015%未満では、必要な強度が得られない。且つ、イヤリング性も劣化する。また、0.06%を超えると炭化物の増大により、耐食性と加工性が低下する。このため、C量は0.015〜0.06%とすることが好ましい。
Siは、耐食性に有害な元素であるが、Alキルド鋼としては不可避的に含有される元素であり、上限を0.03%とすることが好ましい。
Mnは、不純物であるSによる熱延中の赤熱脆性を防止するために必要な成分である。一方、0.5%を超えると絞り加工性を劣化する。このことから下限を0.1%、上限を0.5%とすることが好ましい。
Pは、結晶粒微細化に有効な成分であり、また原板の強度を高めることから一定の割合で添加することがこのましい。一方、耐食性を阻害するため、本発明用途としてはPが0.02%を上限とすることが好ましい。
Sは、熱延中の赤熱脆性を生じる不純物成分であり、極力少ないことが望ましいが、不可避的に含有される元素であり、上限を0.04%とすることが好ましい。
Alは、製鋼に際し、脱酸剤として鋼浴中に添加され、スラグとして除かれるが、添加量が少ないと安定した脱酸効果が得られない。またAlは熱延中にAlNの窒化物を形成し、冷延後の焼鈍時の再結晶集合組織形成に影響を及ぼし、イヤリング性を安定する。このためには、0.015%以上の添加が必要である。一方、0.03%を超えて添加しても、効果が小さく、むしろ、過剰なAlによる強度上昇を招き成形性を劣化させ、経済上も好ましくないので上限を0.03%とすることが好ましい。
Nは、Alと窒化物をつくり、固溶Nを減少させ、時効性を低減し耐圧強度の上昇を抑制する効果がある。このため極力少なくすることが望ましい。また、0.003%を超えると固溶Nが増加し、AlN析出量が増えてイヤリング性の安定化を阻害する。このため上限を0.003%とすることが好ましい。
Bは、5ppm≦B−(11/14)×N≦30ppmの範囲で含有させることが好ましい。Bは上記範囲を外れると、硬質化し成形性が劣化するため、この範囲に限定することが好ましい。残部は、Fe及びイヤリング性を損なわない程度に不可避的に含有される元素は規制しない。
【0007】
(熱間圧延工程)
スラブ加熱温度、熱間圧延条件は、本発明では特定するものではないが、スラブ加熱温度は、1100℃より低いと熱間圧延性が悪化し、熱間圧延温度を確保する観点からも1100℃より高くすることが望ましい。またスラブ加熱温度が高すぎると窒化物の分解、再固溶を促進してしまうので、1220℃を越えないことが望ましい。
熱間圧延仕上げ温度をAr3 点以下にすると、熱延板の結晶組織が混粒化するとともに粗大化し、深絞り性も劣化するので熱間圧延仕上げ温度はAr3 点以上とすることが好ましい。
巻取温度は、熱延時のコイル幅方向および長手方向の品質安定性を考慮して下限を540℃とすることが好ましい。一方、680℃を超えると脱スケール性が劣悪となり、また結晶粒が粗大化し、イヤリング性を不安定にする。このため、540〜680℃の範囲とすることが望ましい。
【0008】
(冷間圧延工程)
冷間圧延における冷延率は、焼鈍後の再結晶集合組織に大きく影響を及ぼす。また、イヤリング性にも大きく影響を及ぼす。これらの特性を安定して得るために、圧延率を81〜90%とすることが好ましい。
【0009】
(箱型焼鈍工程)
箱型焼鈍は、再結晶温度以上の焼鈍温度が必要である。焼鈍温度が高すぎると結晶粒が粗大化し、イヤリング性を不安定にする。このため、680℃を超えないことが望ましい。従って、580〜680℃とすることが好ましい。焼鈍時間は、コイル内が均一に所定の温度に到達すれば問題ないため、特に限定しないが8時間〜15時間を目安とすることが望ましい。。
【0010】
(調質圧延工程)
焼鈍後の調質圧延は、ストッレッチャーストレインを防止できれば良く、圧延率は特に限定しないが、通常0.8〜2.0%の範囲とすることが望ましい。
【0011】
(Niめっき及び拡散処理工程)
Niめっき及び拡散処理は、DI成形後の耐食性を確保出来るものであれば、特に限定はしないが、少なくとも拡散処理後に、下地の鋼板とNiめっき層の間にFe−Ni合金層があることが望ましい。Niめっき浴の種類は、特に限定しないが、公知のめっき浴で良く、硫酸浴、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴が使える。また、光沢めっきあるいは無光沢めっきのどちらでも良い。Niめっきの厚みは特に限定しないが、通常、電池缶内面側では0.5〜3μmの範囲とすることが好ましい。電池缶外面側では1〜4μmの範囲とすることが望ましい。
【0012】
(拡散処理後の調質圧延工程)
拡散処理後の調質圧延は、表面平均粗さRaの付与を目的に、板の表面平均粗さRaが0.02〜0.06μmとなるように実施することが望ましい。圧延率はストッレッチャーストレインを防止できれば良く、特に限定しないが、通常0.8〜2.0%が望ましい。
【0013】
【実施例】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。表1に示す化学成分をもつ鋼片を、熱間圧延にて、2.3mmの熱延鋼板とし、酸洗後、冷間圧延し板厚が0.4mmの冷延板とした。その後、焼鈍、調質圧延、Niめっき、拡散処理後、調質圧延(2回目)してDI成形用鋼板を作製し、表2に示す。なお、拡散処理は530℃で6時間行った。調質圧延率は1%とした。
比較例1は、鋼片1を使って、巻取り温度が低すぎ、かつ表面平均粗さRaが高すぎる例である。比較例2は、鋼片1を使って、冷間圧延率が低すぎ、かつ表面平均粗さRaが高すぎる例である。比較例3は、鋼片1を使って、表面平均粗さRaが低すぎる例である。比較例4及び比較例5は、BとNの含有量の関係式が適正でない例を示す。
(イヤリング性評価)
DI成形法による電池ケースの成形は、表2で作製した鋼板を用いて、直径41mmのブランク径から直径20.5mmのカッピング後、DI成形機でリドローおよび2段階のしごき成形を行って、外径13.8mm、ケース壁0.2mm、高さ56mmに成形した。缶の側壁高さにおいて、最も高い箇所の缶高さと最も低い箇所の缶高さの差でイヤリング性を評価した。下式において、試験した試料数10枚とも4以下を○、試験した10枚中1枚でも4を超えると×として評価した。
イヤリング性=(最も高い箇所の缶高さ−最も低い箇所の缶高さ)×100/最も高い箇所の缶高さ
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
【発明の効果】
表2に示すように、C:0.015〜0.06%(質量%、以下同じ)、Si:≦0.03%、Mn:0.1〜0.5%、P:≦0.02%、S:≦0.04%、Al:0.015〜0.03%、N:≦0.0030%、B:5ppm≦B−(11/14)×N≦30ppm、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、熱間仕上げ圧延をAr3点以上、巻き取り温度540〜680℃にて熱間圧延し、酸洗後、81〜90%の圧延率で冷間圧延し、その後580〜680℃で箱型焼鈍を行い、調質圧延後Niめっきを施し、次いで箱型焼鈍にてNiの拡散処理後、板の表面平均粗さRaが0.02〜0.06μmの間となるように調質圧延を行なった電池用DI成形用鋼板はイヤリング性が良好であった。
Claims (2)
- C:0.015〜0.06%(質量%、以下同じ)、Si:≦0.03%、Mn:0.1〜0.5%、P:≦0.02%、S:≦0.04%、Al:0.015〜0.03%、N:≦0.0030%、B:5ppm≦B−(11/14)×N≦30ppm、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、熱間仕上げ圧延をAr3点以上、巻き取り温度540〜680℃にて熱間圧延し、酸洗後、81〜90%の圧延率で冷間圧延し、その後580〜680℃で箱型焼鈍を行い、調質圧延後Niめっきを施し、次いでNiの拡散処理後、板の表面平均粗さRaが0.02〜0.06μmの範囲となるように調質圧延を行うことによって形成された異方性の優れた電池用DI成形用鋼板。
- C:0.015〜0.06%(質量%、以下同じ)、Si:≦0.03%、Mn:0.1〜0.5%、P:≦0.02%、S:≦0.04%、Al:0.015〜0.03%、N:≦0.0030%、B:5ppm≦B−(11/14)×N≦30ppm、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、熱間仕上げ圧延をAr3点以上、巻き取り温度540〜680℃にて熱間圧延し、酸洗後、81〜90%の圧延率で冷間圧延し、その後580〜680℃で箱型焼鈍を行い、調質圧延後Niめっきを施し、次いでNiの拡散処理後、板の表面平均粗さRaが0.02〜0.06μmの範囲となるように調質圧延を行うことを特徴とする異方性の優れた電池用DI成形用鋼板の製造法。
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JP28432499A JP4350231B2 (ja) | 1999-10-05 | 1999-10-05 | 異方性の優れた電池用di成形用鋼板及びその製造法 |
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1999
- 1999-10-05 JP JP28432499A patent/JP4350231B2/ja not_active Expired - Fee Related
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