JP4135434B2 - 熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンプレッサシェルなど厳しい深絞り成形がなされ、しかも成形後の低温靱性が要求されるだけでなく、ロウ付けなど部分的にでも高温に加熱される接合を伴う用途に最適な熱延鋼板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、深絞り用の熱延鋼板としては、0.02〜0.06%程度のCを含有する低炭素鋼が用いられてきた。しかし、エアコン用のコンプレッサシェルなど超深絞り成形がなされる部品については、その加工性は十分であるとはいえない。
【0003】
そこで、C含有量を0.01%以下まで下げて軟質化した極低炭素鋼が用いられるようになったが、今度は深絞り後の低温靱性が不十分であるだけでなく、高温強度が低いという問題が発生した。
【0004】
これらの問題を解決する手段としては、例えば、特開平1-312057号公報にTi、Bを添加する方法が示されている。しかし、この方法はBの添加量が少ないために高温強度が低い。また、A系介在物の低減を全く考慮していないため、厳しい低温靱性が要求される部品には対応できない。
【0005】
また、特開平8-283846号公報には、0.0040%を超えるCを添加する方法が開示されている。しかし、この方法では、析出物が多くなりすぎて成形性が劣化するとともに、最近の厳しい低温靱性が要求される部品には対応できない。
【0006】
成形性を向上させる方法としては、例えば、特開昭63-290223 号公報にBを添加する方法が示されている。しかし、この方法は、低温靱性に大きな影響を及ぼすA系介在物の低減を全く考慮していないだけでなく、通常のMn含有量のため、低温靱性が不十分である。
【0007】
さらに、特開平3-61347 号公報には、Mnの含有量を下げてCrを添加する方法が示されている。しかし、この方法は成形性の改善には0.10%以上のCrの添加が必要であるとし、低温靱性の改善が全く考慮されていないため、低温靱性が十分でない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い高温強度を有しながら超深絞り加工に耐え、しかも超深絞り後においても十分な低温靱性を有する熱延鋼板とその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)の熱延鋼板、および下記(2)の熱延鋼板の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.1 %以下、Mn:0.14%以下、P:0.025 %以下、S:0.008 %以下、Al:0.003 〜0.1 %、N:0.0005〜0.0060%、Ti:0.021 〜0.08%で、かつ下記の(1) 式を満たす量、B:0.0021〜0.0050%を含み、残部はFeおよび不純物である鋼からなり、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物の量が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上である熱延鋼板。
【0010】
Ti≧(S×48/32)+(N×48/14)・・・・・(1)
(2)上記(1)に記載の化学組成を有する鋼片を、1000〜1250℃に加熱した後粗圧延を開始し、1100〜950 ℃で粗圧延を終了し、粗圧延終了から5秒以上経過してから連続熱間仕上圧延を開始し、(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃の温度域で仕上圧延を終了した後、平均冷却速度5℃/秒以上で冷却し、400 〜650 ℃で巻き取る、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物の量が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上の熱延鋼板の製造方法。
【0011】
上記(1)の本発明の熱延鋼板は、素材の鋼が、Cr:0.005 〜0.09%、Mo:0.005 〜0.09%およびNi:0.005 〜0.09%のうちの1種以上、または/およびNb:0.002 〜0.03%およびV:0.002 〜0.03%のうちの1種以上を含むものであることが好ましく、この場合の熱延鋼板は低温靱性が特に良好である。
【0012】
また、上記(2)の本発明の製造方法においては、粗圧延終了後の粗バーを加熱して10〜90℃昇温させてから仕上圧延に供するのが好ましく、この場合には低温靱性が良好な製品をより一層安定して製造可能である。
【0013】
本発明者らは、超深絞り成形に耐えうる熱延鋼板としての極低炭素鋼にTiとBを添加した熱延鋼板に、高い高温強度と優れた低温靱性を具備させる手段について種々検討した。その結果、以下の知見を得て上記の本発明を完成させた。
【0014】
(a) 金属組織を、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号で5.5 番以上の組織にすると、超深絞り成形されるコンプレッサシェルなどに使用しても良好な成形性を発揮し、しかも超深絞り成形後においても低温靱性が良好である。
【0015】
(b) 上記のような金属組織は、適量のTiとB、具体的には0.021 %以上のTiと0.0021%以上のBを複合添加すると確保でき、しかも所望の高温強度も確保される。
【0016】
(c) 超深絞り成形後における低温靱性は、MnSに代表されるA系介在物の量を少なくすると大きく向上し、特にJIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物の量を0.015 %以下にすると、低温靱性が一段と向上する。
【0017】
(d) 上記のA系介在物は、SをTiSとして固定することにより低減でき、特にMnの含有量を低く制限した上でTiの含有量を上記の(1) 式を満たす量にすると、顕著に減少する。
【0018】
(e) フェライト結晶粒度番号が5.5 番以上の金属組織は、素材の鋼を1000〜1250℃に加熱して粗圧延をおこない、1100〜950 ℃で粗圧延を終了し、5秒以上経過してから連続熱間仕上圧延をおこない、(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃の温度域で仕上圧延を終了し、平均冷却速度5℃/秒以上で冷却した後、400 〜650 ℃で巻き取れば、安定して確保される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を上記のように定めた理由を詳細に説明する。なお、以下において、「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0020】
1.化学組成
C:0.0005〜0.0040%
CはTiCとして析出し、細粒化に寄与して低温靱性を向上させる。その効果は0.0005%未満の含有量では得られない。一方、0.0040%を超えると成形性を劣化させる。従って、C含有量は0.0005〜0.0040%とした。好ましいのは0.0005〜0.0035%、より好ましいのは0.0005〜0.0028%である。
【0021】
Si:0.1 %以下
Siは低温靱性を劣化させる好ましくない元素であるので、できるだけ少ない方がよい。0.1 %は許容上限値である。好ましい上限は0.02%である。
【0022】
Mn:0.14%以下
MnはA系介在物であるMnSを形成し、低温靱性を劣化させる好ましくない元素である。従って、従来鋼よりも低くすることが重要であるが、0.14%までであれば許容できるので、その上限を0.14%とした。好ましい上限は0.10%である。
【0023】
P:0.025 %以下
Pも靱性を劣化させる好ましくない元素であるので、0.025 %以下とする。好ましいのは0.012 %以下である。
【0024】
S:0.008 %以下
Sは前述したようにMnSを形成し、低温靱性を低下させる。このため、0.008 %以下とする。好ましい上限は0.004 %である。
【0025】
Al:0.003 〜0.1 %
Alは脱酸のために添加されるが、0.003 %未満の含有量ではその効果が不十分である。一方、0.1 %を超えると効果が飽和し、コスト的に不利になる。このため、Al含有量は0.003 〜0.1 %とした。好ましいのは0.01〜0.06%である。なお、本発明にいうAl含有量とは、全Al(Total Al)の含有量のことである。
【0026】
N:0.0005〜0.0060%
NはTiと結合してTiNを形成し、熱延前の加熱時における粗粒化を防止する働きがある。その効果を発揮するには0.0005%以上の含有量が必要である。一方、過剰なNは多量のTiNを形成し、割れの起点となる。このため、N含有量は0.0005〜0.0060%とした。好ましいのは0.0005〜0.0035%である。
【0027】
Ti:0.021 〜0.08%
TiはTiN、TiSおよびTiCとして析出して、細粒化による低温靱性改善に寄与する。また、TiはBと複合添加することで再結晶と高温での粒成長を著しく抑えるので、高温強度を確保するためにも必要である。これらの効果を得るためには最低でも0.021 %の含有量が必要である。さらに、TiSとして析出するTiは、靱性を低下させるMnSの析出を抑制するが、この効果を得るためには、Tiの含有量を「(S×48/32)+(N×48/14)」%以上とする必要がある。一方、0.08%を超えると、析出物が多くなりすぎ、かえって低温靱性が劣化する。このため、Ti含有量は0.021 〜0.08%で、かつ前記の(1) 式を満たす量と定めた。
【0028】
なお、好ましい下限は0.027%、より好ましい下限は0.030%である。しかし、TiSの一部がTi として析出することを考慮すると、Tiの含有量は「Ti≧(2×S×48/32)+(N×48/14)」を満たす量とするのが望ましい。一方、好ましい上限は0.06%、より好ましい上限は0.05%である。
【0029】
また、Mn量が多いときはTiの含有量も多くする方が好ましく、Tiの含有量は「Ti/Mn≧0.25」を同時に満たす量とするのが望ましい。
【0030】
B:0.0021〜0.0050%
Bはフエライト粒界に偏析し、粒界を強化する重要な元素である。また、BはTiとの複合添加で再結晶と粒成長を抑え、高温強度を確保するのに必要である。特に本発明の熱延鋼板のようにMnの含有量が低くTiの含有量が多い鋼では、粒界に大きい析出物が析出しやすく、厳しい深絞り後の低温靱性の確保やロウ付け性を確保するためには、0.0021%以上の含有が必須である。ただし、含有量が多すぎると、異方性が増大し成形性に問題が生じる。このため、B含有量は0.0021〜0.0050%とした。好ましいのは0.0025〜0.0045%、より好ましいのは0.0030〜0.0045%である。
【0031】
Cr、Mo、Ni:
これらの元素はいずれもAr3変態点を下げる作用があるので、必要に応じて1種以上を添加する任意添加成分である。即ち、本発明の熱延鋼板は、低温靱性を確保するためにMnの含有量を低くしているのでAr3変態点が高くなっており、熱延の仕上温度を高くする必要があつて粗粒化しやすい。従って、仕上温度を低くして粗粒化を確実に避けたい場合に、Cr、MoおよびNiの1種以上を添加する。その効果はいずれの元素も0.005 %以上の含有量で得られるが、いずれの元素も0.09%を超えて含有させると、鋼板が硬くなりすぎて加工性が低下する。このため、添加する場合のこれら元素の含有量はいずれの元素も0.005〜0.09%とするのがよい。
【0032】
Nb、V:
これらの元素はいずれも炭化物を形成して鋼を細粒にし、低温靱性を向上させる作用がある。このため、低温靱性をより一層向上させたい場合に1種以上を添加する任意添加成分である。その効果はいずれの元素も0.002 %以上の含有量で得られる。しかし、いずれの元素も0.03%を超えて含有させると、鋼板が硬くなりすぎて加工性が低下する。従って、添加する場合のこれら元素の含有量はいずれの元素も0.002〜0.03%とするのがよい。
【0033】
上記の成分以外は実質的にFeである。即ち、残部はFeと不純物であり、不純物としては、例えば、0.11%までのCu、0.01%までのO(酸素)、0.01%までのCa、0.01%までのSn、0.01%までのZrなどを挙げることができる。
【0034】
以上に説明した組成の鋼は、例えば転炉、電気炉および平炉などにより溶製される。鋼種も、リムド鋼、キャップド鋼、セミキルド鋼およびキルド鋼のいずれでもよい。また、鋼片は、造塊−分塊圧延法および連続鋳造法のいずれの方法によって製造してもよい。
【0035】
2.金属組織
金属組織は、JIS G O552に規定されるフェライト結晶粒度番号で5.5 番以上、JlS G O555に規定される点算法により求められるA系介在物の量が0.015%以下でなければならない。これは、上記のフェライト結晶粒度番号が5.5 番を下回る粗粒では十分な低温靱性が確保できず、A系介在物の量が0.015 %を超えると割れの起点が多くなって低温靱性が劣化するからである。このことは、後述する実施例からも明らかである。
【0036】
好ましいフェライト結晶粒度は、6.0 番以上、より好ましくは6.5 番以上である。また、好ましいA系介在物の量は、0.01%以下、より好ましくは0.005 %以下である。
【0037】
3.機械的性質
本発明の熱延鋼板は、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での高温引張試験における最大公称応力が50MPa 以上でなければならない。これは、前記の遷移温度が−70℃以下でないとコンプレッサシェルなど深絞り後の低温靱性が要求される用途には使用できないからであり、室温での引張強さが340MPa以下でないと深絞り成形に耐えられないからであり、700 ℃での最大公称応力が50MPa 未満ではロウ付けなど高温にさらされる用途には使用できないからである。好ましい遷移温度は−100℃以下であり、好ましい室温での引張強さは320MPa以下であり、好ましい700 ℃での最大公称応力は65MPa 以上、より好ましくは80MPa以上である。
【0038】
700 ℃での最大公称応力は高ければ高いほどよく、遷移温度は低ければ低いほどよい。このため、700 ℃での最大公称応力の上限、および遷移温度の下限は、いずれも規定しない。室温での引張強さは、純鉄の強度より若干高い270MPa以上が通常剛性を保つために要求させる。
【0039】
4.製造条件
4-1.鋼片の加熱温度
加熱温度が1250℃を超えるとオーステナイトが粗大になりすぎ、フェライト結晶粒度番号で5.5 番以上の製品が得られない。一方、1000℃未満の加熱では、後述する(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃の仕上温度の確保が困難になる。従って、素材の鋼片の加熱温度は1000〜1250℃とした。
【0040】
4-2.粗圧延の終了温度
粗圧延時には転位が導入されてTiSの析出核が生成する。しかし、終了温度が1100℃を超えると、TiSの析出核の生成量が少なく、950 ℃を下回ると拡散が遅くなる。その結果、粗圧延終了後に次に述べる時間だけ放置しても、粗圧延で導入された転位へのTiSの析出が不十分となってMnSなどのA系介在物が減少しない。このため、粗圧延の終了温度は1100〜950 ℃とした。
【0041】
4-3.粗圧延終了の放置時間
上記したように、粗圧延終了後に放置するのは、粗圧延で導入された転位にTiSを析出させることでMnSなどのA系介在物を減少させるためである。しかし、放置時間が5秒未満では粗圧延で導入された転位へのTiSの析出が不十分で、A系介在物が減少しない。従って、粗圧延終了の放置時間は5秒以上とした。好ましいのは10秒以上、より好ましいのは15秒以上である。
【0042】
放置時間の上限は特に規定しない。しかし、5分を超えると粗バーが冷えすぎて後述する(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃の仕上温度の確保が困難となる。このため、放置時間は長くても5分とするのが望ましい。
【0043】
なお、この粗圧延終了の放置は、粗圧延で生じた集合組織を再結晶により消失させて異方性を低減させる処理でもある。
【0044】
4-4.粗バーの加熱昇温
この工程は必須ではない。しかし、粗バーヒータなどを用いて粗バーを加熱して昇温させれば拡散速度が上昇し、粗圧延で導入された転位へのTiSの析出が促進されてA系介在物がより一層減少する。このため、A系介在物をより一層減少させたい場合は粗バーを加熱昇温するのが望ましい。しかし、昇温温度が10℃未満では効果がなく、90℃を超えるとTiCを含めた析出物の再固溶が始まり好ましくない。従って、粗バーを加熱昇温する場合の昇温温度は10〜90℃とするのがよい。また、仕上げ温度を確保するため、昇温前の粗バー温度は900 ℃以上とするのが好ましい。なお、粗バーの加熱昇温は、後述する(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃の仕上温度の確保を容易にする効果もあるが、粗バーが冷えすぎた場合における補熱手段としてもよい。
【0045】
4-5.仕上圧延温度
連続熱間仕上圧延は、通常、パス間時間5秒以内、好ましくは3秒以内で3台以上の圧延機を用いて連続的におこなわれ、短時間で大圧下の加工であるので細粒化に有効である。しかし、仕上温度が(Ar3−40)℃を下回ると、フェライトに歪が生じ、再結晶での粗大化や加工歪が残留して伸びの低下が生じる。一方、(Ar3+80)℃を上回ると、細粒化が不十分で、所望の低温靱性が確保できない。このため、仕上圧延温度は(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃とした。好ましいのは(Ar3−10)℃〜(Ar3+60)℃である。
【0046】
4-6.仕上圧延後の冷却速度
仕上圧延後の冷却速度の平均冷却速度5℃/秒未満では、フェライト結晶粒度番号で5.5 番以上の細粒組織が確保できない。このため、仕上圧延後の冷却速度は5℃/秒以上とした。冷却速度は早すぎると設備上のコストの増大を招いたり、室温で硬くなったりするので、200 ℃/秒以下が好ましい。なお、仕上圧延後の冷却は、圧延終了後4秒以内、望ましくは2秒以内に開始するのがよく、この場合には細粒化がより確実になり、低温靱性が一段と向上する。また、本発明にいう平均冷却速度とは、仕上温度から巻取温度までで平均した冷却速度のことである。
【0047】
4-7.巻取温度
巻取温度が650 ℃を上回ると、フェライト結晶粒度番号で5.5 番以上の細粒組織が確保できない。これは、650 ℃を超えると巻き取り後の粒成長が著しいためである。また、巻取温度が400 ℃を下回ると、硬くなって、室温で340MPa以下の引張強さの確保が困難となる。従って、巻取温度は400 〜650 ℃とした。好ましい上限は590 ℃である。
【0048】
以上のことは後述する実施例からもあきらかである。なお、巻取後の熱延鋼板は、常法に従ってスキンパス圧延による形状矯正および酸洗による脱スケール処理をおこない、その後表面に防錆油が塗布されて出荷される。
【0049】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する16種類の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により厚さ250 mm、幅1250mmのスラブを製造した。なお、表1に示したAr3変態点は、1100℃に3分保持した後、1℃/秒で冷却した時の熱膨張の変化より求めた値である。
【0050】
製造したスラブは、表2および表3に示す種々の条件で粗圧延と仕上圧延をおこない、厚さ3.6 mmの熱延鋼板とした。その際、粗バーは、厚さ32mm、幅1235mmとした。
【0051】
得られた熱延鋼板は、平坦度を矯正のための伸び率0.7 %のスキンパス圧延と酸洗による脱スケール処理を施し、下記の試験に供した。
【0052】
フエライト結晶粒度番号は、JIS G 0552に規定される方法に従って測定し、A系介在物の量は、JIS G 0555に規定される点算法に従って測定した。
【0053】
強度は、圧延方向からJIS Z 2201に規定される5号引張試験片を採取し、引張試験を室温と700 ℃の両方でおこない、室温下での降伏応力(YP:MPa )、引張強さ(TS:MPa )および伸び(EL:%)、並びに700 ℃での最大公称応力(TSmax:MPa )を測定した。
【0054】
低温靱性は、絞り比2.0 での円筒絞り後、980Jの落重試験を温度を種々変えておこない、延性破壊から脆性破壊に移行する延性−脆性遷移温度を測定した。
【0055】
以上の結果を表2および表3に併せて示した。なお、表2および表3には、参考のために、集合組織の異方性の程度を示す下記の(2) 式で定義される△rを示した。
【0056】
△r=(r+r90−2r45)/2 ・・・・・・ (2)
ここで、rは圧延方向のランクフォード値、r90は圧延方向と直交する方向方法のランクフォード値、r45は圧延方向の45゜位相する方向のランクフォード値である。
【0057】
表2および表3からわかるように、本発明の方法に従って製造された鋼板(試験番号1〜6および15〜24)は、延性−脆性遷移温度が−70℃以下で良好な低温靱性を示した。
【0058】
これに対し、加熱温度の高い試験番号7と仕上温度の高い試験番号10、および冷却速度の遅い試験番号12と巻取温度の高い試験番号14の鋼板は、粒が粗大で低温靱性に劣る。粗圧延後の保持時間の短い試験番号9の鋼板は、A系介在物が多く低温靱性に劣る。仕上温度の低い試験番号8および11の鋼板は、粒が粗大で低温靱性に劣り、伸びも低い。巻取温度の低い試験番号13の鋼板は析出物が多く硬くなって低温靱性が低い。
【0059】
また、Cが多すぎる試験番号25の鋼板は、硬くなって成形性および低温靱性が不十分である。A系介在物が多い試験番号26の鋼板は、低温靱性に劣る。Tiが少なすぎる試験番号27の鋼板は、粒が粗大化して低温靱性に劣る。SとTiが多すぎる試験番号29の鋼板は、やや細粒であるがA系介在物が多く、低温靱性に劣る。Bが少なすぎる試験番号28の鋼板は、粒界強度が弱く、低温靱性に劣る。また、TiまたはBが少なすぎる試験番号27、28および29の鋼板は、高温強度も低い。
【0060】
【表1】
Figure 0004135434
【0061】
【表2】
Figure 0004135434
【0062】
【表3】
Figure 0004135434
【0063】
【発明の効果】
本発明の熱延鋼板は、高強度にもかかわらず成形性に優れており、成形後の低温靱性も良好で、しかも高温強度も高い。このため、厳しい深絞り成形がおこなわれ、成形後の低温靱性が良好なことと、ロウ付けなど高温にさらされるコンプレッサシェルなどの用途に使用して最適である。また、本発明の製造方法によれば、前記の特性を備えた熱延鋼板を安定して製造することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.1 %以下、Mn:0.14%以下、P:0.025 %以下、S:0.008 %以下、Al:0.003 〜0.1 %、N:0.0005〜0.0060%、Ti:0.021 〜0.08%で、かつ下記の(1) 式を満たす量、B:0.0021〜0.0050%を含み、残部はFeおよび不純物である鋼からなり、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物の量が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上であることを特徴とする熱延鋼板。
    Ti≧(S×48/32)+(N×48/14)・・・・・(1)
  2. 質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.1 %以下、Mn:0.14%以下、P:0.025 %以下、S:0.008 %以下、Al:0.003 〜0.1 %、N:0.0005〜0.0060%、Ti:0.021 〜0.08%で、かつ下記の(1) 式を満たす量、B:0.0021〜0.0050%を含み、さらに、Cr:0.005 〜0.09%、Mo:0.005 〜0.09%およびNi:0.005 〜0.09%のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不純物である鋼からなり、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物の量が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上であることを特徴とする熱延鋼板。
    Ti≧(S×48/32)+(N×48/14)・・・・・(1)
  3. 質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.1 %以下、Mn:0.14%以下、P:0.025 %以下、S:0.008 %以下、Al:0.003 〜0.1 %、N:0.0005〜0.0060%、Ti:0.021 〜0.08%で、かつ下記の(1) 式を満たす量、B:0.0021〜0.0050%を含み、さらに、Nb:0.002 〜0.03%およびV:0.002 〜0.03%のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不純物である鋼からなり、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上であることを特徴とする熱延鋼板。
    Ti≧(S×48/32)+(N×48/14)・・・・・(1)
  4. 質量%で、C:0.0005〜0.0040%、Si:0.1 %以下、Mn:0.14%以下、P:0.025 %以下、S:0.008 %以下、Al:0.003 〜0.1 %、N:0.0005〜0.0060%、Ti:0.021 〜0.08%で、かつ下記の(1) を満たす量、B:0.0021〜0.0050%を含み、さらに、Cr:0.005 〜0.09%、Mo:0.005 〜0.09%およびNi:0.005 〜0.09%のうちの1種以上、ならびにNb:0.002 〜0.03%およびV:0.002 〜0.03%のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不純物である鋼からなり、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上であることを特徴とする熱延鋼板。
    Ti≧(S×48/32)+(N×48/14)・・・・・(1)
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の化学組成を有する鋼片を、1000〜1250℃に加熱した後粗圧延を開始し、1100〜950 ℃で粗圧延を終了し、粗圧延終了から5秒以上経過してから連続熱間仕上圧延を開始し、(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃の温度域で仕上圧延を終了した後、平均冷却速度5℃/秒以上で冷却し、400 〜650 ℃で巻き取ることを特徴とする、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物の量が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上の熱延鋼板の製造方法。
  6. 請求項1から4までのいずれかに記載の化学組成を有する鋼を、1000〜1250℃に加熱した後粗圧延を開始し、1100〜950 ℃で粗圧延を終了し、粗圧延終了から5秒以上経過してから粗バーを加熱して10〜90℃昇温させて連続熱間仕上圧延を開始し、(Ar3−40)℃〜(Ar3+80)℃の温度域で仕上圧延を終了した後、平均冷却速度5℃/秒以上で冷却し、400 〜650 ℃で巻き取ることを特徴とする、JIS G 0552に規定されるフェライト結晶粒度番号が5.5 番以上、JIS G 0555に規定される点算法により求められるA系介在物の量が0.015 %以下、絞り比2.0 の円筒絞り後の延性−脆性遷移温度が−70℃以下、室温での引張強さが340MPa以下、700 ℃での最大公称応力が50MPa 以上の熱延鋼板の製造方法。
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