JP4349511B2 - 排ガス処理装置とその運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス中の有害成分を除去する排ガス処理装置に係わり、特に、循環タンクの内部構造を適正化することにより、循環ポンプへの気泡混入の低減、長い液滞留時間の確保、ならびに循環ポンプ停止時における石膏堆積防止を可能とする機能を備えた排ガス処理装置とその運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来技術の排ガス処理装置の公知例として、図7に燃焼排ガス中の硫黄酸化物(SO2)を除去する湿式排煙脱硫装置を示す。
この湿式排煙脱硫装置は、主に吸収塔本体1、入口ダクト2、出口ダクト3、吸収液循環ポンプ5、循環タンク7、攪拌機8、空気吹き込み管9、ミストエリミネータ10、吸収液抜き出し管11、循環配管14、スプレヘッダー15、スプレノズル16、吸込み配管19等から構成される。攪拌機8、空気吹込み管9および吸込み配管19は吸収液6が滞留する循環タンク7に設置される。
【0003】
図示していないボイラから排出される排ガスは、図示していない脱硫ファンにより入口ダクト2から吸収塔本体1内にほぼ水平方向に導入され、塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。この間、吸収液循環ポンプ5から送られる炭酸カルシウムを含んだ吸収液6がスプレノズル16から噴射され、吸収液6と排ガスの気液接触により吸収液6は排ガス中のSO2を選択的に吸収する。SO2を吸収した吸収液は一旦循環タンク7内に溜まり、酸化用攪拌機8によって攪拌されながら、空気吹込み管9から供給される空気中の酸素により酸化されて硫酸カルシウム(石膏)を生成する。
【0004】
炭酸カルシウムおよび石膏が共存する循環タンク7内の吸収液6の一部は、吸収液循環ポンプ5によって再びスプレノズル16に送られ、一部は吸収液抜き出し管11より図示していない廃液処理・石膏回収系へと送られる。また、スプレノズル16からの噴射によって微粒化された吸収液6の中で、液滴径の小さいものは排ガスに同伴されるが、出口ダクト3に設けられたミストエリミネータ10によって補集される。
【0005】
最近の湿式排煙脱硫装置では、吸収塔本体1の塔高を低減することを目的として、攪拌機8および空気吹込み管9を循環タンク7の従来よりも低位置の側壁面に設置して循環タンク7の液深を下げているが、攪拌機8および空気吹込み管9は循環ポンプ5の吸込み配管19とほぼ同じ高さとなるため、空気吹込み管9から吹込まれた空気の気泡18が吸込み配管19を経由して吸収液循環ポンプ5に吸込まれやすい条件になっている。
【0006】
また、近年における燃料の多様化、環境規制の激化、省エネルギー化などに伴い、脱硫装置に対して厳しい運転条件が要求されるようになり、下記原因によって、さらに気泡18が吸い込まれやすい条件となりつつある。
【0007】
(1)排ガス中の硫黄酸化物(SO2)濃度が近年高くなり、循環タンク7から循環配管14を通り、スプレノズル16に供給される吸収液循環量が増加し、これに伴い循環タンク7内での吸収液の下降速度が上昇する。そのため、循環タンク7内に供給する酸化用の空気量が増加するため、気泡量も増加する。
【0008】
(2)脱硫装置からの排水量を低減する要求に対応した構成になっているので、吸収液中の塩濃度が増加して気泡の微細化を促している。
(3)循環タンク7内の高塩濃度の吸収液の液面へスプレノズル16からの噴霧吸収液滴が突入するときに、排ガスを巻込むことにより泡沫層が形成されやすくなる。
【0009】
循環ポンプ5に気泡18が混入するとキャビテーションによって循環ポンプ5の寿命が短縮するだけでなく、吸収液循環量が少なくなるため、脱硫性能が大きく低下し、脱硫性能の維持のために循環ポンプ5の動力が大きくなる。従って、前記(1)〜(3)の条件下においても吸収液循環ポンプ5への気泡18の吸込みを防止できる手段を講じる必要がある。
【0010】
これらの点に関しては、例えば特公平5−26525号公報記載の発明のように、循環タンク6の底部にバッフル23(図7参照)を立設して液溜部24を形成し、この液溜部24に吸込み配管19を設ける技術が提案されている。
【0011】
上記特公平5−26525号公報記載の発明では液溜部24の下降流速を気泡18の平均上昇速度を下回るように設定することで、空気吹込み管9から吹込まれた酸化空気の気泡18のうち、平均的な大きさの気泡18がポンプ5へ吸込まれるのを防止できるが、微細化された気泡18については上記(2)の原因によって循環ポンプ5への吸込み防止を図ることは難しい。また、上記(3)の泡沫層が形成されることに関しても、その気泡18の大きさが小さいことと、液溜部24の上方から吸収液6を吸込もうとする構造上の問題から微細な気泡18の吸込みを防止することは困難である。
【0012】
循環タンク7内の液溜部24の上方から吸収液6を吸い込もうとする構造上の問題は、さらに吸収液6の液面上に落下する亜硫酸濃度の高い吸収液6を直接吸込もうとするショートパス流れを誘引することになる。亜硫酸の酸化に必要な充分な時間が確保できなくなると、亜硫酸を完全に酸化できず、吸収液循環ポンプ5から吐出される吸収液6中に亜硫酸が残存することになり、脱硫性能を低下或いは循環ポンプ5の動力を増加させるばかりでなく、スプレノズル16や塔壁などへのスケーリングの発生、吸収液抜出し管11から排出される吸収液6を脱水する図示していない脱水機での脱水性能の低下などの問題を生じることになる。
【0013】
これらの問題を解決する方法として、例えば特開平9−10546号公報記載の発明では、循環タンク壁面に設けた吸収液の吸込み配管の開口部の上側を覆うような傾斜板を循環タンク内の吸収液中に設置している。この発明の傾斜板前面側の下端部と傾斜板裏面との間は開口しているが、それ以外の傾斜板の側面と傾斜板で囲まれる空間は閉空間を構成しているので、吸込み配管に設けた吸収液吸込み用の循環ポンプの運転が停止される脱硫装置の運転停止時には傾斜板下部の流れが停滞し、吸収液中の副生品である石膏粒子が循環タンク内に沈降・堆積することになる。最も流れが停滞しやすい吸込み配管近傍に石膏が堆積すると、脱硫装置の再起動時に循環ポンプを運転しようとしても吸込み配管19から吸収液6を吸引できなくなり、大きな問題となる。従って、前記(1)〜(3)の条件下においても吸収液循環ポンプ5への気泡18の吸込みを防止できる手段を講じる必要がある。
【0014】
図7に示したようなバッフル内攪拌機17を図7における液溜部24または特開平9−10546号公報における傾斜板の下部に設け、脱硫装置の運転停止時に、バッフル内攪拌機17を運転することで石膏の堆積を防止することができるが、その分設備費が高価になると共に、脱硫装置停止時の運転動力が大きくなる。
【0015】
また、本出願人は、脱硫装置の運転停止時には必要最小限度のバッフル内攪拌機17を運転することで経済的に運転ができる気泡の吸収液吸込み管内に流入防止効果のある発明(特開2001−120946号公報記載の発明)および吸込み管の近傍の循環タンク内に配置するバッフル内に流入する吸収液の流速を液中での気泡の上昇速度以下とすることで、循環ポンプへの気泡の流入を抑制することができる発明(特開2000−288337号公報記載の発明)を特許出願している。
【0016】
【特許文献1】
特公平5−26525号公報
【0017】
【特許文献2】
特開平9−10546号公報
【0018】
【特許文献3】
特開2001−120946号公報
【0019】
【特許文献4】
特開2000−288337号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、吸収液循環ポンプへの気泡吸込み、亜硫酸の酸化に必要なタンク内液滞留時間、脱硫装置停止時の石膏堆積に関して、まだ改良の余地があり、キャビテーションによる吸収液循環ポンプの寿命の短縮、吸収液循環量の減少による脱硫性能低下の問題を完全に解決したとは言い難い。
【0021】
本発明の課題は、設備費を大幅に増加させることなく循環ポンプへの気泡吸込みを抑制すると共に、亜硫酸の酸化に必要な循環タンク内液の滞留時間を確保し、脱硫装置停止時に石膏を循環タンク内に堆積させることなく、攪拌動力を低減することで、脱硫装置停止時も含めた総合的な運転コストの削減に寄与できる排ガス処理装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、次の構成により解決される。
すなわち、請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガス中の特定成分を吸収除去するために前記排ガスと吸収液の気液を接触させる気液接触部のある吸収塔と、該吸収塔の下側に配置した吸収液を貯留する循環タンクと、該循環タンク内の吸収液を前記吸収塔の気液接触部に送るための循環ポンプと循環タンクの外壁側に少なくとも1つ配置される循環ポンプの吸込み配管と該吸込配管から前記気液接触部へ吸収液を送る循環配管を備えた吸収液循環系とを備えた排ガス処理装置において、循環タンクの壁面に複数の吸収液攪拌用の攪拌機を設け、循環タンクの壁面に設けた循環ポンプの吸込み配管の接続開口部を覆うように、循環タンクの内壁側から循環タンク内の中心部に向けて斜め下方に伸び、前面下端部が循環タンク底面に達していなく、両側外縁の下方部分が循環タンク内壁に接していない傾斜板を設け、かつ、該傾斜板の両側の前記循環タンクの内壁に接していない下方部分の外縁と循環タンク底面に両端が接するように、ほぼ鉛直方向に伸びる側板を立設し、さらに、側板と循環タンクの内壁との間および側板同士の間には吸収液が流れる間隙を設けた排ガス処理装置である。
【0023】
前記側板の傾斜板との接続端部側には前記間隙が形成されていない構成とすることができる。
【0024】
また、吸収塔は、循環タンクの上側にボイラなどの燃焼装置から排出される排ガスをほぼ水平方向に導入する入口ダクトと排ガスをほぼ水平方向に排出させる出口ダクトと、前記入口ダクトと出口ダクトの間に排ガス流路と、その排ガス流路を入口ダクト側と出口ダクト側の二室に分割するために天井部側に開口部を有する鉛直方向に立てた仕切板をそれぞれ設け、該仕切板で入口ダクトから導入される排ガスが上向きに流れる上昇流領域と天井側の開口部で反転した後に出口ダクトに向けて下向きに排ガスが流れる下降流領域を形成し、噴出する吸収液スラリが排ガスと上昇流領域では向流接触し、下降流領域では並流接触するように前記各領域にスプレノズルを設けた二室式吸収塔であり、傾斜板と側板を、出口ダクトがある吸収塔側面の下方の循環タンクの側面に配置した構成にしても良い。
【0025】
また、吸収塔は、前記二室式吸収塔であり、傾斜板と側板を、入口ダクトがある吸収塔側面の下方の循環タンクの側面に配置した構成にしても良い。
【0026】
請求項5記載の発明は、循環ポンプの運転停止時に循環ポンプの吸込み配管が配置された循環タンク壁面に対向する循環タンク壁面に配置されている攪拌機を少なくとも1台以上運転する請求項1記載の排ガス処理装置の運転方法である。
【0027】
【作用】
特公平5−26525号公報記載の発明のような従来技術(図7参照)における吸収液循環ポンプ5への気泡吸込みの原因は、基本的に循環タンク7の上方から吸収液を吸い込もうとしている点にある。これに対し、本発明では、傾斜板を設置することによって吸収液の吸込み配管への吸収液の流れが実質的に循環タンクの底部側にでき、しかも循環タンクの底部近傍から水平方向に吸収液が吸込み配管へ吸込まれる。このため、循環ポンプの吸込み配管近傍での下降流速がほぼゼロとなり、微細な気泡を吸込む割合が極端に少なくなり、液面の泡沫層を直接吸引するようなこともない。
【0028】
また、特公平5−26525号公報記載の発明などの従来技術における亜硫酸の酸化に必要な循環タンク内での吸収液の滞留時間を短縮することになるショートカット流れが生じる原因も同じく循環タンク上方から吸収液を吸込み配管へ吸い込もうとしていることによる。この点に関しても、本発明では、傾斜板の設置によって吸収液の吸込み配管への吸収液の流れが実質的に循環タンクの底部側にでき、循環タンク底部近傍から水平方向に吸込み配管へ向けた吸収液の流れが生じる。そのため、循環タンク内の吸収液の液面から流入する亜硫酸を多く含んだ噴霧吸収液は、傾斜板を避けるように流れ、一旦循環タンク底部まで下降した後、ほぼ水平方向に流れながら傾斜板の裏面側に流れこみ、吸込み配管を経由して吸収液循環ポンプに吸い込まれることになる。従って、ショートカット流れは生じなく、亜硫酸の酸化に必要な充分な液滞留時間を確保できる。
【0029】
また、循環タンクが円筒形の場合、一般に滞留吸収液の攪拌効率を向上させるため、循環タンク壁面への攪拌機の回転軸の挿入角度をタンク半径方向より偏心させ、ある一定の方向に循環タンク内で旋回流れを形成させるように多数の攪拌機を同じ傾斜角度で配置することが多い。旋回流れが存在する場合、傾斜板だけでは気泡の浸入を防止することは難しく、旋回流れに同伴される気泡がタンクの円周方向から吸込み配管に浸入しやすくなる。
【0030】
これに対して、本発明では、傾斜板の側端部に旋回流を遮るように側板を配置し、かつ側板を傾斜板とタンク底面に接するように立設しているため、旋回流に同伴される気泡の周方向からの浸入を防止することが可能である。
【0031】
また、特開平9−10546号公報記載の発明における脱硫装置運転停止時に、バッフル内攪拌機17を運転しないと石膏が堆積してまう原因は、傾斜板の前面の下端部とタンク底面の間に間隙があるだけで、実質的に傾斜板の裏面側と循環タンク内壁面とで囲まれた空間は閉空間を形成しており、傾斜板の裏面側の吸収液の流れが停滞しやすい点にある。
【0032】
これに対して本発明では、まず、上記側板の循環タンク内壁側に間隙を設け、傾斜板の裏面の空間は、傾斜板前面と両側面の三箇所に循環タンク中央部に向いた間隙がある。更に、循環ポンプ停止時に循環ポンプの吸込み配管に相対する側に配置されている攪拌機を運転することにより、攪拌機によって押出された液が傾斜板裏面側の空間に流入し、傾斜板両側の間隙から抜けるようにしている。したがって、傾斜板裏面側の空間での吸収液の流れが促進され、吸収液中の石膏が沈降・堆積するようなことはない。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例の排ガス中の硫黄酸化物をカルシウム系脱硫剤で処理する湿式排煙脱硫装置における吸収塔の側面を示したものである。図2は図1における循環タンク部の平面を示したものである。図3は脱硫装置の運転停止時の循環タンク内の吸収液の液流れを示したものである。
【0034】
図1および図2に示す実施例は、循環タンク7の内壁側における循環ポンプ5の吸込み配管19の接続開口部を覆うように、循環タンク7の内壁側から循環タンク7の中心部に向けて斜め下方に伸びる傾斜板20を設け、傾斜板20と循環タンク7の底面に接するように、ほぼ鉛直方向に伸びる側板21を傾斜板20の両側端に立設し、さらに、側板21の循環タンク7の内壁側は、循環タンク7底面から傾斜板20に達する間隙22を設けている点で従来技術と異なる。
【0035】
傾斜板20の設置によって液面から流入する亜硫酸を多く含んだ吸収液6は、傾斜板20を避けるように流れ、一旦循環タンク7の底部まで下降した後、間隙22からほぼ水平方向に傾斜板20の下部(傾斜板裏面側)に流入し、循環タンク7の壁面から吸込み配管19を経由して吸収液循環ポンプ5に吸い込まれることになる。従って、循環タンク7内での液滞留時間の短縮の原因となるショートカット流れは生じなく、亜硫酸の酸化に必要な充分な液滞留時間を確保できる。
【0036】
傾斜板20の設置によって循環タンク7内の底部付近から水平方向に吸収液6を流して吸込み配管19から吸収液を循環配管14に吸い込むようにしているため、吸込み配管19近傍での下降流速がほぼゼロとなり、微細な気泡18を吸込む割合が極端に少なくなり、循環タンク7内の吸収液の液面の泡沫層を直接吸込み配管19に吸引するようなこともない。
【0037】
また、本実施例は循環タンク7が円筒形であり、攪拌効率を向上させるため、循環タンク7の側壁面に配置される攪拌機8の回転軸の側壁への挿入角度を循環タンク7の円筒の半径方向から偏心させ、水平方向での旋回流れを形成させようとしている。旋回流れが存在する場合に傾斜板20だけでは気泡18の浸入を防止することは難しく、旋回流れに同伴される気泡18が周方向から吸込み配管19に浸入しやすくなるが、本実施例では傾斜板20の側端部に対して旋回流を遮るような側板21を傾斜板20と循環タンク7底面に接するように立設しているため、旋回流に同伴される気泡18の周方向からの浸入を防止することが可能である。
【0038】
また、本実施例では、側板21の循環タンク7の内壁側に間隙22を設け、傾斜板20の下側の空間に対して傾斜板20の前面下端部にある循環タンク底面との間の吸収液通過可能な間隙25を含めて三箇所の間隙22、22、25を持たせている(図3)。循環ポンプ5の運転停止時に循環ポンプ5の吸込み配管19に相対する側の壁面に配置されている攪拌機8を運転することにより、攪拌機8によって押出された吸収液6が傾斜板20の下側の空間に間隙25から流入し、両側の間隙22から抜け出るようにしている。したがって、傾斜板20の下側空間での流れが促進され、吸収液6中の石膏が前記空間内で沈降・堆積するようなことはない。
【0039】
図4は循環タンク7の側壁への間隙22の設け方を変えた他の実施例である。図4に示す実施例は、間隙22の上端側を傾斜板20まで到達させず、傾斜板20側の側板21の接続部を一部残した点で図1に示した実施例と異なる。傾斜板20近傍での吸収液流れからの圧力は、傾斜板20の下側に比べて上側が高くなり、常時傾斜板20に対しては上から下に向けて力がかかることになるが、間隙22の上側に側板21の一部を残しているため、図1に示した実施例に比べて構造上有利であり、圧力変動による振動に対しても強い。また、間隙22からも傾斜板20の下側の空間に若干吸収液6を吸い込むことになるが、間隙22の上端を傾斜板20にまで到達させると、循環タンク7の上部からも吸収液6を吸い込むことになるため、条件によっては泡沫層を吸込む可能性、又は亜硫酸濃度の高い吸収液を吸い込む可能性がある。しかし、本実施例のように間隙22の高さを主に吸収液6を吸込む傾斜板20の前面の間隙25の高さとほぼ同等にしておけば、上述のような心配はない。
【0040】
図5は湿式排煙脱硫装置における二室型吸収塔に本発明を適用した実施例である。図5に示す実施例の吸収塔は二室型吸収塔であるが、二室型吸収塔は循環タンク7の上側に排ガスをほぼ水平方向に導入する入口ダクト2と排ガスをほぼ水平方向に排出させる出口ダクト3が設けられ、前記入口ダクト2と出口ダクト3の間に設けた排ガス流路を入口ダクト2側と出口ダクト3側の二室に分割するために天井部側に開口部を有する鉛直方向に立てた仕切板4を設けられている。
【0041】
図5に示す二室型吸収塔では、塔内の排ガス流路が仕切板4で入口ダクト2から導入される排ガスが上向きに流れる上昇流領域12と天井側の開口部で反転した後に出口ダクト3に向けて下向きに排ガスが流れる下降流領域13に仕切られることに特徴があり、上昇流領域12ではスプレヘッダ15に設けたスプレノズル16から噴出する吸収液スラリが排ガスと向流接触し、下降流領域13では並流接触するため、比較的小さな空間内で排ガスの脱硫処理が可能となる。
【0042】
二室型吸収塔の場合、循環タンク7内の吸収液の液面近傍での排ガスの漏れを防ぐため、液面より数m下まで仕切板4が液中に浸漬した状態に挿入されているが、この仕切板4によって循環タンク7内の吸収液の液面近傍での吸収液6の混合が阻害され、下降流領域13から循環タンク7内に落下した吸収液6は、上昇流領域12から落下してきた吸収液6と混ざることなく、そのまま吸込み配管19に吸込まれるようになる。その結果、下降流領域13から落下する吸収液6は循環タンク7内の滞留時間が短くなり、酸化反応に必要な充分な時間が確保できなくなり、吸収液6中に亜硫酸が残存したままスプレノズル16に送られ、脱硫性能の低下を招く原因となる。しかし、本実施例では、下降流領域13を落下してきた吸収液6は、傾斜板20によって一旦上昇流領域12側に曲げられるため、上昇流領域12を落下してきた吸収液6と混合するようになり、さらに循環タンク7内における滞留時間も長くなる。
【0043】
図6は循環ポンプ5を入口ダクト2側に配置した場合の二室型吸収塔に適用した他の実施例である。図6に示す実施例は、循環ポンプ5、吸込み配管19、傾斜板20および側板21を入口ダクト2側、即ち上昇流領域12の下部に設けた点で図5に示した実施例と異なる。循環タンク7の吸収液中に落下する吸収液6中の亜硫酸濃度は、下降流領域13に比べて上昇流領域12の方が高い。したがって、上昇流領域12から落下した吸収液6が下降流領域13の吸収液6と混ざることなく吸込み配管19に吸い込まれると、亜硫酸の酸化反応時間不足による吸収液6中への亜硫酸の残存量が図5に示す実施例よりも多くなり、更に大幅な脱硫性能の低下をもたらす原因となりかねない。
【0044】
しかし、図6に示す本実施例では、図5の実施例における作用と同様に、上昇流領域12を落下してきた吸収液6は、傾斜板20によって一旦下降流領域13側に曲げられるため、下降流領域13を落下してきた吸収液6と混合するようになり、更に循環タンク7内における滞留時間も長くなる。そのため、循環ポンプ5からスプレノズル16に送られる吸収液6中に亜硫酸が残存するようなことはない。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、シンプルな循環タンク構造で循環ポンプへの気泡吸込みを抑制し、亜硫酸の酸化に必要な循環タンク内液滞留時間を確保し、脱硫装置停止時に石膏を堆積させることなく攪拌動力を低減できるため、吸収液循環量減少による脱硫性能の低下がなく、性能維持のための循環ポンプ動力増加の必要もなく、設備費の大幅な低減だけでなく、脱硫装置停止時も含めた総合的な運転コストの削減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の湿式排煙脱硫装置における吸収塔と循環タンクの側面図である。
【図2】 図1の循環タンク部の平面図である。
【図3】 図1の脱硫装置停止時の循環タンク内吸収液の液流れを示す図である。
【図4】 本発明の実施の形態の循環タンクの側板への間隙の設け方を変えた例である。
【図5】 本発明の実施の形態の湿式排煙脱硫装置における二室型吸収塔に適用した例である。
【図6】 本発明の実施の形態の湿式排煙脱硫装置における二室型吸収塔に適用した例である。
【図7】 従来技術の湿式排煙脱硫装置における吸収塔の側面図である。
【符号の説明】
1 吸収塔本体 2 入口ダクト
3 出口ダクト 4 仕切板
5 吸収液循環ポンプ 6 吸収液
7 循環タンク 8 攪拌機
9 空気吹込み管 10 ミストエリミネータ
11 吸収液抜き出し管 12 上昇流領域
13 下降流領域 14 循環配管
15 スプレヘッダー 16 スプレノズル
17 バッフル内攪拌機 18 気泡
19 吸込み配管 20 傾斜板
21 側板 22、25 間隙
23 バッフル 24 液溜部

Claims (5)

  1. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガス中の特定成分を吸収除去するために前記排ガスと吸収液の気液を接触させる気液接触部のある吸収塔と、
    該吸収塔の下側に配置した吸収液を貯留する循環タンクと、
    該循環タンク内の吸収液を前記吸収塔の気液接触部に送るための循環ポンプと循環タンクの外壁側に少なくとも1つ配置される循環ポンプの吸込み配管と該吸込配管から前記気液接触部へ吸収液を送る循環配管を備えた吸収液循環系と
    を備えた排ガス処理装置において、
    循環タンクの壁面に複数の吸収液攪拌用の攪拌機を設け、
    循環タンクの壁面に設けた循環ポンプの吸込み配管の接続開口部を覆うように、循環タンクの内壁側から循環タンク内の中心部に向けて斜め下方に伸び、前面下端部が循環タンク底面に達していなく、両側外縁の下方部分が循環タンク内壁に接していない傾斜板を設け、かつ、
    該傾斜板の両側の前記循環タンクの内壁に接していない下方部分の外縁と循環タンク底面に両端が接するように、ほぼ鉛直方向に伸びる側板を立設し、さらに、
    側板と循環タンクの内壁との間および側板同士の間には吸収液が流れる間隙を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。
  2. 側板の傾斜板との接続端部側には前記間隙が形成されていないことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
  3. 吸収塔は、循環タンクの上側にボイラなどの燃焼装置から排出される排ガスをほぼ水平方向に導入する入口ダクトと排ガスをほぼ水平方向に排出させる出口ダクトと、前記入口ダクトと出口ダクトの間に排ガス流路と、その排ガス流路を入口ダクト側と出口ダクト側の二室に分割するために天井部側に開口部を有する鉛直方向に立てた仕切板をそれぞれ設け、該仕切板で入口ダクトから導入される排ガスが上向きに流れる上昇流領域と天井側の開口部で反転した後に出口ダクトに向けて下向きに排ガスが流れる下降流領域を形成し、噴出する吸収液スラリが排ガスと上昇流領域では向流接触し、下降流領域では並流接触するように前記各領域にスプレノズルを設けた二室式吸収塔であり、
    傾斜板と側板を、出口ダクトがある吸収塔側面の下方の循環タンクの側面に配置したことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
  4. 吸収塔は、循環タンクの上側にボイラなどの燃焼装置から排出される排ガスをほぼ水平方向に導入する入口ダクトと排ガスをほぼ水平方向に排出させる出口ダクトと、前記入口ダクトと出口ダクトの間に排ガス流路と、その排ガス流路を入口ダクト側と出口ダクト側の二室に分割するために天井部側に開口部を有する鉛直方向に立てた仕切板をそれぞれ設け、該仕切板で入口ダクトから導入される排ガスが上向きに流れる上昇流領域と天井側の開口部で反転した後に出口ダクトに向けて下向きに排ガスが流れる下降流領域を形成し、噴出する吸収液スラリが排ガスと上昇流領域では向流接触し、下降流領域では並流接触するように前記各領域にスプレノズルを設けた二室式吸収塔であり、
    傾斜板と側板を、入口ダクトがある吸収塔側面の下方の循環タンクの側面に配置したことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
  5. 循環ポンプの運転停止時に循環ポンプの吸込み配管が配置された循環タンク壁面に対向する循環タンク壁面に配置されている攪拌機を少なくとも1台以上運転することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置の運転方法。
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