JP3942778B2 - 湿式排煙脱硫装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式排煙脱硫装置の吸収塔内において硫黄酸化物(以下、SOという。)を吸収した吸収液を一定量保有し、吸収したSOを酸化、中和する工程を有する液溜部に係わり、特に液溜部が水平方向の断面で角形の形状を有する構造である場合、攪拌機を水平方向で循環ポンプと対向する位置に配置することにより液溜部内の吸収液の攪拌性能を向上させることを可能にした湿式排煙脱硫装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球を取り巻く自然環境の悪化が問題になり、特に世界各地に設置された火力発電所等において、化石燃料の燃焼に伴って発生する排ガス中のSO及びばいじんは大気汚染等の環境悪化問題の主原因の一つである。
【0003】
特に、最近ではSO及びばいじん排出値の低濃度化が要求される一方でボイラの大容量化が進められており、高性能かつ低コストな湿式排煙脱硫装置の開発が急務である。
【0004】
従来技術の湿式排煙脱硫装置の一例を図7(側断面図)及び図8(図7のA−A線矢視図)に示す。湿式排煙脱硫装置は吸収塔本体1、ガス入口部2、ガス出口部3、吸収液スプレ部4、スプレノズル5、循環ポンプ6、液溜部7、酸化用攪拌機8、空気吹き込み管9、ミスト捕集部10、スラリ攪拌機11、循環ポンプによる吸収液抜き出し用配管(以下、単に循環ポンプ抜き出し配管という。)12を主体として構成される。図示していないボイラの排ガスはガス入口部2から導入され、吸収液スプレ部4のスプレノズル5から噴霧される吸収液と気液接触し、清浄なガスとなりミスト捕集部10によって同伴されるミストを除去された後、排出される。
【0005】
また、前記気液接触した吸収液は吸収塔本体1内を下降して液溜部7に一時的に溜められる。液溜部7では空気吹き込み管9より供給される空気が酸化用攪拌機8によって微細化され、吸収液中に溶解する。液溜部7では吸収したSOにより亜硫酸カルシウムが生成されるが、吸収液中に溶解した酸素により酸化され、さらに図示していない炭酸カルシウム供給系統より液溜部7に供給される炭酸カルシウムにより中和されて石こうを生成する。
【0006】
また、石こう等の固形物が沈降し、液溜部7の底部に堆積するのを防ぐため液溜部7の下部にスラリ攪拌機11を複数台設置している。スラリ攪拌機11の回転翼は通常、液溜部7の外周壁と液溜部の中心を結ぶ直線に対して15°程度傾けて設置し、液溜部7内の吸収液に対して旋回流13を発生させ、吸収液中の石こう等の固形物が沈降して液溜部7の底部に堆積しないよう配慮している。石こう及び未反応の炭酸カルシウムが共存する液溜部7内の吸収液は循環ポンプ6によって再びスプレノズル5に送られ、一部は図示していない石こう回収系統へ送られる。
【0007】
吸収塔本体1は、今後、製作、据付工程の短縮及び低コスト化より角形が主流になると予想される。液溜部7内の吸収液の攪拌は脱硫性能に係わる、亜硫酸塩の酸化及び中和工程において重要な因子であり、角形の吸収塔においても効率の良い攪拌方法を適用する必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、水平方向の断面が丸形の液溜部7であるので、液溜部7内で撹拌される吸収液が停滞することは無いが、水平方向の断面形状が角形の液溜部7に対して同様な攪拌機11を配置すると、吸収液に旋回流が発生しても角部では液が停滞するため、固形物が堆積する。固形物が堆積すると、その堆積部がデッドスペースとなり液溜部7の有効容量が低下することにより、酸化及び中和反応に必要な滞留時間が確保できなくなり脱硫性能の低下原因になる。
【0009】
また、液溜部7の攪拌効果が低下して液溜部7に供給する石灰石が液溜部7の底部に沈降するとSOを吸収した吸収液と石灰石との反応が有効に行われないため吸収液のpHが回復せず、脱硫性能の低下及び石灰石の過剰投入による原料費の増加要因になる。さらに、固形物が液溜部7の底部に沈降し、堆積しやすくなることにより液溜部7下部に設置する配管等の閉塞が発生する可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、角形液溜部においてスラリ攪拌時のデッドスペースを無くすことにより吸収液の酸化及び中和反応を促進させ、かつ石こう等の固形物の沈降を防止することにより脱硫装置の安定した運用ができるようにすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、ボイラ等から排出される排ガスを導入し、該排ガス中の硫黄酸化物及びばいじん等を噴霧吸収液により除去する吸収塔と、硫黄酸化物を吸収した吸収液を溜める液溜部と、液溜部から抜き出された吸収液を吸収塔に循環供給する循環ポンプを備えた吸収液循環供給部を設けた湿式排煙脱硫装置において、(a)液溜部の水平方向の断面が角形の構造を有し、(b)該液溜部の下部に複数の攪拌機と複数の吸収液抜出し用配管を設置し、(c)前記複数の攪拌機と複数の吸収液抜出し用配管を液溜部の角形構造の対向する側面のほぼ同じ高さ位置に配置し、(d)前記攪拌機を水平又は水平よりやや下向きに傾斜させて配置し、(e)前記撹拌機により押し流される吸収液が衝突して上方に流れるように、循環ポンプによる吸収液の抜出し用配管を配置した液溜部の壁面に該抜出し用配管の下端部から液溜部底面にかけて傾斜面を持つガイドプレートを設置する湿式排煙脱硫装置により達成される。
【0012】
本発明の湿式排煙脱硫装置において、液溜部に設置する複数の攪拌機は空気吹き込み管を伴う液酸化用攪拌機と空気吹き込み管を伴わない攪拌機からなり、空気吹き込み管を伴う液酸化用攪拌機を該循環ポンプによる吸収液の抜出し用配管より上部に設置し、空気吹き込み管を伴わない攪拌機を液溜部の底部近傍に設置し、かつ、空気吹き込み管を伴わない攪拌機を、複数の吸収液抜出し用配管と液溜部の角形構造の対向する側面のほぼ同じ高さ位置に配置することが望ましい。
【0016】
【作用】
本発明によれば、水平断面が角形の形状を有する液溜部においてスラリ攪拌機を、該撹拌機からの吸収液押し流し方向が循環ポンプによる吸収液の抜出し用配管と水平方向で対向する位置に配置することによりスラリ攪拌機から循環ポンプによる吸収液の抜き出し用配管の方向へ吸収液を押し流す流れが発生し、さらに循環ポンプが液を吸い込む吸引力により液は循環ポンプの方向へ流れようとする。そのため液溜部において、特にその底部での液の停滞部が発生しにくくなり、石こう等の固形物が沈降しにくくなる。
このことより液溜部に供給された石灰石についても液溜部での滞留時間が増加するため、吸収液のpHが回復しやすくなる。
【0017】
また、吸収液の酸化用攪拌機及び空気吹き込み管を循環ポンプによる吸収液抜き出し用配管より上部に設置すると、空気吹き込み管から供給した空気が前記循環ポンプ内へ混入することを防ぎ、吸収液内にキャビテーション現象を発生させることがなく、キャビテーションのためポンプ吐出圧が減少することにより、吸収塔内で噴霧される吸収液量が減少し、脱硫性能が低下する現象の発生を防ぐことができる。
【0019】
また、循環ポンプによる吸収液の抜出し用配管を配置した壁面の前記抜出し用配管の下端部から液溜部底面にかけて傾斜面を持つガイドプレートを設置することにより、攪拌機が押し出した吸収液は、ガイドプレートに衝突し、上方へ流れようとする。従って、液溜部内の液流れは、縦方向の旋回流が発生しやすくなり、一様に攪拌されることにより固形物の堆積を防止することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態及び参考例を図面を用いて説明する。図1は本発明の参考例の湿式排煙脱硫装置の液溜部の断面側面図、図2は図1のA−A線矢視図である。図1、図2において、符号1から符号12は、図7、図8に示す従来技術のものと同一の部材、装置を表す。
【0021】
このような構造において、スラリ攪拌機11は循環ポンプ抜き出し配管12に対して水平方向で対向する位置に全て同じ高さに配置するのが好ましい。スラリ攪拌機11は液溜部7のなるべく下部に配置するが、通常は攪拌翼径の寸法と同じ高さとする。すなわち、攪拌翼径が760mmであれば設置高さは底面から760mmとする。
【0022】
しかしながら、スラリ濃度増加による性能向上の観点から近年では、吸収液スラリ濃度の増加(20〜30%)を行った場合、脱硫装置の運転停止時に攪拌機11のインペラが固形物層に埋まらないような位置(底部より1.5〜2m)に設置し、その代わりに攪拌機11をやや下向きに設置することもある。
【0023】
また、週末における脱硫装置の運転停止時等、プラントの運転を停止する場合は省電力化のため通常、循環ポンプ6は停止する。循環ポンプ6が停止すると循環ポンプ抜出し配管12の吸引力が無くなるため、スラリ攪拌機11から押し出されるスラリの流れが循環ポンプ抜出し配管12付近で停滞し、固形物が沈降し、堆積する可能性がある。
【0024】
そこで、隣接配置される複数の循環ポンプ抜出し配管12の中間付近にもスラリ攪拌機11を配置し、循環ポンプ6が停止すると同時にスラリ攪拌機11を起動させ、堆積しようとするスラリを攪拌させる。図1及び図2では、スラリ攪拌機11を隣接する2つの循環ポンプ抜出し配管12の中間に配置しているが、液溜部7の循環ポンプ抜出し配管12と直交する側面の循環ポンプ6の近傍に配置しても良い。
【0025】
液溜部7は処理ガス量、入口SO濃度及び脱硫率が増加することにより水平方向の断面積を大きくする必要があるが、スラリ攪拌機11から循環ポンプ抜き出し配管12方向の寸法(図2中の長さx)は一定とし、直交する方向の寸法(図2中の長さy)を大きくするのが好ましい。従って前記直交方向の長さyに見合って攪拌機11の設置台数を増減することになる。
【0026】
参考例ではスラリ攪拌機11を液溜部7の下部に設置し、酸化用攪拌機8及び空気吹き込み管9を循環ポンプ抜き出し配管12より上部に設置している。これは、空気吹き込み管9から供給した空気が循環ポンプ6内へ混入してスラリ内にキャビテーション現象を発生させ、ポンプ吐出圧が減少することにより、スプレノズル5より噴霧される吸収液量が減少し、脱硫性能が低下するのを防ぐためである。
【0027】
参考例は、酸化用空気を攪拌機8のインペラ背面より導入する方式を示しているが、この方式以外の、例えば空気をインペラ前面に吹き込んで分散させる方式やスパージャパイプ等の酸化方式を用いても同様の効果が得られる。
【0028】
図3は本発明の実施の形態に係わる湿式排煙脱硫装置の液溜部の断面側面図、図4は図3のA−A線矢視図である。図3、図4において、符号1から符号12は、図7、図8に示す従来技術のものと同一の部材、装置を表す。符号15はガイドプレートである。
【0029】
図1では週末において循環ポンプ6が停止する時等の補助攪拌手段として、循環ポンプ抜出し配管12近傍にもスラリ攪拌機11を配置したが、図3及び図4では液溜部7の底面の循環ポンプ抜出し配管12側の角部に上方に、傾斜した形状のガイドプレート15を設置するものである。ガイドプレート15を配置することにより、スラリ攪拌機11が押し出したスラリは、ガイドプレート15に衝突し上方へ流れようとする。従って、液溜部7内の液流れは、縦方向の旋回流が発生しやすくなり、一様に攪拌されることにより固形物の堆積を防止することができる。
【0030】
また、図5は参考例に係わる湿式排煙脱硫装置の液溜部の断面側面図、図6は図5のA−A線矢視図である。図5、図6において、符号1から符号10及び符号12は、図7、図8に示す従来技術のものと同一の部材、装置を表す。符号14はバッフルである。
【0031】
図1ではスラリ攪拌機11を液溜部7の下部に設置し、酸化用攪拌機8及び空気吹き込み管9を循環ポンプ抜き出し配管12より上部に設置することを説明した。これは、空気吹き込み管9から供給した空気が循環ポンプ6内へ混入してキャビテーション現象が発生し、ポンプ吐出圧が減少することにより、スプレノズル5より噴霧される吸収液量が減少し、脱硫性能が低下するのを防ぐためである。しかしながら、図5及び図6に示すように入口SO濃度が低い排ガス性状等、酸化用空気量が少ないプラントにおいては、循環ポンプ抜き出し配管12入口に空気の混入を防止するバッフル14を設置する場合に限り、酸化用攪拌機8をスラリ用攪拌機11と同じ高さに設置しても良い。即ちスラリ攪拌機11と酸化用攪拌機8は同じ機能を合わせ持つことになる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、液溜部が角形の形状を有する構造にあっても円滑な攪拌が行われ、かつ、液溜部の液溜部の攪拌を乱すことがないため、酸化及びpH回復が効率良く行うことが可能である。また、液溜部内の液流れは、縦方向の旋回流が発生しやすくなり、一様に攪拌されることにより固形物の堆積を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例を示した断面側面図である。
【図2】 図1のA−A線矢視図である。
【図3】 本発明の一実施の形態を示した断面側面図である。
【図4】 図3のA−A線矢視図である。
【図5】 本発明の参考例を示した断面側面図である。
【図6】 図5のA−A線矢視図である。
【図7】 従来技術の一例を示した断面側面図である。
【図8】 図7のA−A線矢視図である。
【符号の説明】
1 吸収塔本体 2 ガス入口部
3 ガス出口部 4 吸収液スプレ部
5 スプレノズル 6 循環ポンプ
7 液溜部 8 酸化用攪拌機
9 空気吹き込み管 10 ミスト捕集部
11 スラリ攪拌機 12 循環ポンプ抜き出し配管
13 旋回流 14 バッフル
15 ガイドプレート x、y 液溜部の水平方向寸法

Claims (2)

  1. ボイラ等から排出される排ガスを導入し、該排ガス中の硫黄酸化物及びばいじん等を噴霧吸収液により除去する吸収塔と、硫黄酸化物を吸収した吸収液を溜める液溜部と、液溜部から抜き出された吸収液を吸収塔に循環供給する循環ポンプを備えた吸収液循環供給部を設けた湿式排煙脱硫装置において、
    (a)液溜部の水平方向の断面が角形の構造を有し、
    (b)該液溜部の下部に複数の攪拌機と複数の吸収液抜出し用配管を設置し、
    (c)前記複数の攪拌機と複数の吸収液抜出し用配管を液溜部の角形構造の対向する側面のほぼ同じ高さ位置に配置し、
    (d)前記攪拌機を水平又は水平よりやや下向きに傾斜させて配置し、
    (e)前記撹拌機により押し流される吸収液が衝突して上方に流れるように、循環ポンプによる吸収液の抜出し用配管を配置した液溜部の壁面に該抜出し用配管の下端部から液溜部底面にかけて傾斜面を持つガイドプレートを設置することを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
  2. 液溜部に設置する複数の攪拌機は空気吹き込み管を伴う液酸化用攪拌機と空気吹き込み管を伴わない攪拌機からなり、空気吹き込み管を伴う液酸化用攪拌機を該循環ポンプによる吸収液の抜出し用配管より上部に設置し、空気吹き込み管を伴わない攪拌機を液溜部の底部近傍に設置し、かつ、空気吹き込み管を伴わない攪拌機を、複数の吸収液抜出し用配管と液溜部の角形構造の対向する側面位置にほぼ同じ高さに配置することを特徴とする請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置。
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