JP3580914B2 - 湿式排煙脱硫装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は湿式排煙脱硫装置に係り、特に、吸収された物質を酸化する吸収塔に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球を取り巻く自然環境の悪化は著しく、中でも世界各地に設置された火力発電所から排出されるSOガスはその絶対量も多いことから環境に与える影響も大きいと考えられ、排煙脱硫装置を用いたSOガス放出量の低減は環境汚染対策を行っていく上で絶対不可欠になっている。
【0003】
従来の湿式排煙脱硫装置においては、図4に示されるように、ボイラー等で発生した排ガスAは、吸収塔1の側面の吸入口8から流入し、循環ポンプ2によりスプレーノズル3を経て噴霧される、石灰石(CaCO)を含む吸収剤スラリーと向流接触する。
【0004】
この向流接触により、硫黄酸化物が吸収・除去された排ガスBは、吸収剤スラリーミストをミストセパレータ(デミスター)4にて除去された後に、吸収塔1の塔頭より系外に排出される。
【0005】
一方、硫黄酸化物を吸収した吸収剤スラリーは、落下して吸収塔1の底部より吸収塔循環タンク5に一旦溜められ、循環ポンプ2を介して再びスプレーノズル3より噴霧され、硫黄酸化物の吸収処理が繰り返し行われる。
【0006】
ここで、循環タンク5では固形物の沈降防止を行う必要がある。そのため、循環タンク5の上方には酸化用攪拌機6、下方には通常の攪拌機7が設けられている。このとき、酸化用攪拌機6により吸収塔循環タンク5内に微細空気が吹き込まれ、石膏を生成する。
【0007】
上記の一連の反応を化学式で表すと、下式となる。
【0008】
SO+2HO+CaCO+1/2O→CaCO・2HO+CO
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の脱硫装置では、循環タンク5に酸化用攪拌機6と攪拌機7を上下に設置し、上方の酸化用攪拌機6から空気を吹き込んで、反応生成スラリーを石膏スラリーにするものであるが、このように、上方の酸化用攪拌機6から空気を吹き込ませていることにより、吸収塔循環タンク5の底部に設置されている、循環ポンプ2の吸込配管より循環ポンプ2に多量の空気が送り込まれるのを防ぎ、これによってキャビテーションの発生による循環ポンプ2の振動及び破損を防ぐようしてある。
【0010】
しかし、このように上方に位置する酸化用攪拌機6から空気を吹き込むことは、循環タンク5内全体に空気が混ざりにくいことと、空気吹き込み位置から液面までの距離が短くなるという欠点があり、この欠点により吸収塔循環タンク5に供給した空気の利用効果が低下するため、余分に空気を供給しなければならず、酸化用空気供給設備のコスト高等につながっていた。
【0011】
そこで、本発明の目的は、循環ポンプの多量の空気吸い込みによる、キャビテーションの発生を防止し、しかも、循環タンク内の酸化効率を下げないようにすることができる湿式排煙脱硫装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、被処理ガス吸入口とスプレーノズルを有する吸収塔と、その吸収塔の底部に設けられ、吸収液の吸込配管と循環ポンプを有する循環タンクと、その循環タンクの内部に空気を送り込む酸化用攪拌機と、タンク内部の吸収液を攪拌する沈降防止用攪拌機を備え、前記攪拌機により循環タンク内の吸収液の流れに旋回を与えて、前記循環ポンプにより吸収液を被処理ガス吸入口上部のスプレーノズルより噴霧して、被処理ガス中の硫黄酸化物と反応させて石膏として回収する湿式排煙脱硫装置において、前記酸化用攪拌機と沈降防止用攪拌機を略同一高さに配置し、前記吸込配管に最も近接した攪拌機は、インペラの背面に空気を吹き込まない沈降防止用攪拌機であることにより達成される。
【0013】
例えば、循環タンク内の吸収液を旋回させ、循環ポンプ吸込口(吸込配管)の上流側の1m以上離した位置にスラリー沈降用攪拌機を、また下流側の2m以上離した位置に酸化用攪拌機を設けることにより、循環ポンプのサクションに気泡が吸い込まれることを防止でき、これにより、それぞれの攪拌機を横型1段にでき、設置位置を循環タンク下部に設置できるため、従来型よりも空気利用率を高めることができる。
【0014】
【作用】
本発明においては、循環タンク内の吸収液を旋回させ、ポンプ吸込口の上流方向にスラリー沈降防止用攪拌機を、下流側に酸化用攪拌機を設置することにより、ポンプ吸込口にポンプ許容値以上の空気を吸い込ませないようにでき、これにより、それぞれの攪拌機を略同一高さで1段に設置できるようになり、循環タンク内下部に酸化用攪拌機を設置できるため、空気利用率の上昇を可能にする。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例に係る湿式排煙脱硫装置の概略正面図、図2は同、循環タンクの横断上面図である。
【0017】
本実施例においては、図1に示すように、酸化用攪拌機6と沈降防止用攪拌機7は同一高さに配置してある。
【0018】
図2に示すように、酸化用攪拌機6と沈降防止用攪拌機7とは、吸収液旋回方向上流側から順に交互に配置してある。但し、吸込配管9の近傍(1m離れた位置)の攪拌機7aとそれに隣接する上流側の攪拌機7bの間には、酸化用攪拌機6は設けない。
【0019】
このような構成により、沈降防止用攪拌機7のインペラの背面からそれぞれ空気を吹き込ませるが、循環ポンプ2に近接した沈降防止用攪拌機7aからは空気を吹き込ませないようにすることができる。これにより、循環ポンプ2の吸込配管9付近の空気を低減させることができ、循環ポンプ2に規定値以上の空気を吸い込ませないことを可能にすることができる。さらに、それに付け加え、酸化効率を良くすることができる。
【0020】
このように、本発明では、スラリー液中の空気を循環ポンプ2に規定値以上吸い込ませないよう、循環ポンプ2の吸込配管9に近接した攪拌機7のインペラの背面からは空気を吹き込まないようにして、それぞれの攪拌機6,7を略同一高さに設置したものである。
【0021】
循環ポンプ2の吸込配管9に近接した位置に空気を吹き込まない攪拌機7aを設けることにより、循環ポンプ2の吸込配管9近くの気泡を吹き飛ばす作用が働き、循環ポンプ2の吸込口付近の気泡を最低限に減らすことができ、また、横型攪拌機6,7を複数台平行して並べ、さらに攪拌機6,7のシャフトを中心線に対して10〜20度傾け、循環タンク5内の吸収液の流れを旋回させることから、気泡は上昇していくという性質を生かして、ポンプ吸い込み高さより下には気泡を送り込まないようにすることができる。
【0022】
以下に、詳細な取り付け位置について説明する。
【0023】
沈降防止用攪拌機7は、通常2〜8台であり、取り付け位置は循環タンク5内吸収液の旋回方向の吸込配管9より上流へ1m以上離してある。また、酸化用攪拌機6は、吸収されるSO量によって異なるが、1〜12台の数であり、吸込配管9より下流へ2m以上離したところへ取り付ける。また、上記以外に必要とされる、沈降防止用攪拌機7及び酸化用攪拌機6の取り付け位置は、条件により固定できないため、特に限定はしないものとする。
【0024】
取り付け高さ位置としては、沈降防止用攪拌機7及び酸化用攪拌機6共に同一高さにするため、両者共に通常は循環タンク5の底部より0.5m〜2mの間の範囲で取り付けるものとする。
【0025】
なお、吸込配管9付近で、吸収液がポンプ2に吸い込まれる流れが生じており、この近辺に沈降防止用攪拌機7を設置すると沈降防止用攪拌機7の攪拌動力が低下するために、吸込配管9より1m以上離して沈降防止用攪拌機7を設置する必要がある。
【0026】
酸化用攪拌機6を吸い込み部分より吸収液の旋回方向の下流側へ離す理由は、吸込配管9への気泡混入率を0.3%以下にすることで、ポンプ2のキャビテーションを防止できることによる。
【0027】
酸化用攪拌機6から吸込配管9までの距離と吸込配管9への気泡混入率の関係を図3に示す。
【0028】
酸化用攪拌機6からポンプ吸込配管9までの距離を2m以上にすることで、吸込配管9への気泡混入率を0.3%以下にすることが可能となる。これにより、吸収液の酸化能率を上昇しつつ、ポンプ2のキャビテーションを防ぐことが達成できる。
【0029】
以上述べたように、酸化用攪拌機6と、沈降防止用攪拌機7を同一高さに設置するにあたり、吸込配管9との距離等の位置を指定することで、最適の効果を発揮することが可能となる。
【0030】
また、攪拌機6,7の羽根の直径は0.5〜2mであるので、少なくともこの分を考慮して、攪拌機6,7をタンク5の底部より0.5〜2mの位置に取り付けるものである。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、酸化用攪拌機と沈降防止用攪拌機を同一高さに配置し、かつ、吸込配管に最も近接した攪拌機をインペラの背面に空気を吹き込まない沈降防止用攪拌機とすることにより、循環タンク内の酸化効率を向上させることが可能となる。
【0032】
これにより、空気の利用率が上がるために、酸化用攪拌機の容量を小さくでき、運転時における、運転費用の低減と、台数の低減を図ることができる。また、据付時の費用も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る湿式排煙脱硫装置の概略正面図である。
【図2】同、循環タンクの横断上面図である。
【図3】酸化用攪拌機から吸込配管までの距離と空気混入率の関係を示す特性図である。
【図4】従来の湿式排煙脱硫装置の概略正面図である。
【符号の説明】
1 吸収塔
6 酸化用攪拌機
7 沈降防止用攪拌機
9 吸込配管

Claims (2)

  1. 被処理ガス吸入口とスプレーノズルを有する吸収塔と、
    その吸収塔の底部に設けられ、吸収液の吸込配管と循環ポンプを有する循環タンクと、
    その循環タンクの内部に空気を送り込む酸化用攪拌機と、タンク内部の吸収液を攪拌する沈降防止用攪拌機を備え、
    前記攪拌機により循環タンク内の吸収液の流れに旋回を与えて、
    前記循環ポンプにより吸収液を被処理ガス吸入口上部のスプレーノズルより噴霧して、被処理ガス中の硫黄酸化物と反応させて石膏として回収する湿式排煙脱硫装置において、
    前記酸化用攪拌機と沈降防止用攪拌機を略同一高さに配置し、前記吸込配管に最も近接した攪拌機は、インペラの背面に空気を吹き込まない沈降防止用攪拌機であることを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
  2. 被処理ガス吸入口とスプレーノズルを有する吸収塔と、
    その吸収塔の底部に設けられ、吸収液の吸込配管と循環ポンプを有する循環タンクと、
    その循環タンクの内部に空気を送り込む酸化用攪拌機と、タンク内部の吸収液を攪拌する沈降防止用攪拌機を備え、
    前記攪拌機により循環タンク内の吸収液の流れに旋回を与えて、
    前記循環ポンプにより吸収液を被処理ガス吸入口上部のスプレーノズルより噴霧して、被処理ガス中の硫黄酸化物と反応させて石膏として回収する湿式排煙脱硫装置において、
    前記酸化用攪拌機と沈降防止用攪拌機を略同一高さに配置し、
    前記吸込配管に近接した攪拌機の取り付け位置を、
    吸収液旋回方向上流側にはインペラの背面に空気を吹き込まない沈降防止用攪拌機を吸込配管より上流へ1m以上離して設け、吸収液旋回方向下流側には酸化用攪拌機を吸込配管より下流へ2m以上離して設けたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
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