JP3676020B2 - 湿式排煙脱硫装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボイラ等の燃焼排ガスの脱硫装置に係り、特に排ガス中の硫黄酸化物を除去するのに好適なスプレ式吸収塔を備えた排煙脱硫装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気汚染防止のための排ガス中の硫黄酸化物の除去装置として、湿式石灰石−石膏法脱硫装置が広く実用化されている。この脱硫装置の主要機器である従来技術のスプレ方式自立円筒型脱硫装置を図6〜図8に示す。
【0003】
火力発電所等から発生した硫黄酸化物(SO2)および煤じんを含む未処理排ガスg1は脱硫装置のスプレ式吸収塔1にガス入口部2から導入される。吸収塔1内では多数のスプレノズル11を備えた吸収液スプレ配管7がガス流れと直交する方向に少なくとも2段以上設置されており、スプレノズル11から微細な液滴として噴霧される硫黄酸化物吸収剤(石灰石:CaCO3など)を含む吸収液と、未処理排ガスg1を対向流あるいは並行流で気液接触させることで、排ガス中の硫黄酸化物は吸収液の噴霧液の滴表面から吸収除去され、煤じんは前記液滴との衝突により物理的に除去される。また、排ガス流れに同伴する微小な液滴は吸収塔1の上部に設置されたミストエリミネータ13で除去され、浄化された処理排ガスg2はガス出口3から排出され、必要に応じて吸収塔後流側に設置された図示していない再加熱設備により昇温されて、煙突より排出される。
【0004】
一方、スプレノズル11から噴霧された大部分の液滴は硫黄酸化物を吸収した後、吸収塔1の下部に設けられた吸収塔循環タンク4に落下する。
吸収液に吸収された硫黄酸化物は、吸収剤供給配管10を通して吸収塔循環タンク4に供給される石灰石(CaCO3)と反応して、同時に酸化用撹拌機9から供給される酸化用空気12によって酸化されて石膏(CaSO4・2H2O)となる。また吸収塔循環タンク4内の吸収液中には固形物としての石膏が存在するため、スラリ用撹拌機8で沈澱防止が図られている。また、吸収液は循環ポンプ5により循環配管6で再び吸収液スプレ配管7に導かれて繰り返し使用される。
【0005】
従来は、脱硫装置の塔高Hは(a)吸収液スプレ配管の段数、(b)吸収塔ガス入口部2の高さ及び(c)吸収塔循環タンク高さの合計で決定されていた。しかし、ボイラの大容量化に伴って吸収塔の直径Dが大きくなるだけでなく、塔高Hも高くなってきた。そこで、コスト的に有利な脱硫装置を提供するため、つまり吸収塔径Dと塔高Hを必要以上に大きくしないために、次のような対策が採られていた。
(a)吸収塔ガス入口部2の開口の水平方向長さBLを長くし、ガス入口部2の開口の鉛直方向高さBHを低くする(図6、図7)。
(b)吸収塔循環タンク4の直径DTを吸収塔径Dより大きくする(図8)。
【0006】
しかし、ガス入口部2の開口の水平方向長さBLが塔径Dに近づくと、ガス入口部2の大きな開口の影響でガス入口部2の開口の周辺の強度が大幅に低下することから、この部分を強固に補強することを余儀なくされていた。
【0007】
吸収塔循環タンク4の容量は吸収したSO2の中和あるいは石膏の晶析のために必要な液の滞留時間で決まるが、この容量が大きくなるにつれて吸収塔循環タンク4の直径DTを大きくしても塔高Hも必然的に高くなった。
【0008】
また、吸収液は10〜20%濃度の吸収剤を含むスラリ液であることから、吸収塔循環タンク4の直径DTが20数mと大きくなる場合は、スラリ用撹拌機8の配置箇所によってはスラリ液が十分撹拌されず、吸収塔循環タンク4の底面に沈降堆積する現象が見られた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、ボイラの大容量化に伴うスプレ式脱硫装置の大型化(例えば、塔径20数m〜30mクラス)を図る際に、次に述べるような種々の解決すべき課題があった。
(a)ガス入口部2の開口の水平方向長さBLが塔径Dに近づくと、ガス入口部2の断面の大きな開口の影響で吸収塔ガス入口部2の開口部周辺の缶体(シェル)強度が大幅に低下する。
(b)特に、未処理排ガスg1を図9(脱硫装置縦断面図)および図10(図9のI−I線矢視図)に示すように、吸収塔1の左右2箇所のガス入口部2a、2bの開口から流入させると、吸収塔1の缶体(シェル)全周にわたって大きな穴が開くようになり、構造的に吸収塔1の缶体自体の成立が極めて困難になる可能性がある。
【0010】
(c)吸収塔シェルの構造強度面から、ガス入口部2a、2bの開口の水平方向長さBLを短くすれば、ガス流速の最大値が決められているため、ガス入口部2の開口の垂直方向高さBHを大きくする必要がある。そのため塔高Hが高くなり、それに比例して吸収液スプレ配管7の設置レベルが上昇し、循環ポンプ5の揚程も大きくなり、前記ポンプ5の電動機の設置費および運転維持費が上がる。
(d)吸収塔循環タンク4の直径DTを大きくすると、スラリ用撹拌機8の配置の仕方によっては、吸収塔循環タンク4底面中央部付近へスラリ液中の固形物が堆積し、堆積物の山が形成される場合が生じる。
【0011】
(e)上記(d)に述べた堆積物の山が形成される場合、この堆積物の量は循環タンク4の有効容積を減少させるため、その分だけ、さらにタンク4を大きくする必要がある。また、この結果、ますます塔高Hを高くする必要が生じ、設備費がかさむことになる。
(f)タンク4の容量を大きくすると酸化用空気の撹拌混合効率も低下するため、酸化性能も悪くなる。
【0012】
また、図11、図12(図11の脱硫装置の部分を示す数字に対応した部分の分割されたパネル群を示す))は従来型の自立式円筒形の吸収塔の製作・据え付け方法を示したものだが、形状が円筒形なので製作時には次のような問題点があった。
(a)半円筒あるいは完全な円筒にするためには、広い敷地を有した工場や、輸送を考慮すると道路幅で制限されるため海上輸送が可能な岸壁に近い工場で製作を余儀なくされていた。
(b)陸上輸送で行う場合には、上記道路幅の制限より、各半割リングの脱硫装置をさらに小さく細切れにする必要が生じる。細かくしても円弧状のパネルなのでかさ張る容積を有していることから、輸送トラックの台数が多く必要であった。
【0013】
そこで、本発明の課題は吸収塔の被処理ガスの処理量を従来通りまたはそれ以上としながら、できるだけそのサイズを小さくし、しかも被処理ガス入口部などを構造強度的に丈夫な吸収塔と該吸収塔を備えた排煙脱硫装置を提供することである。
【0014】
また、本発明の課題は吸収塔の被処理ガスの処理量を従来通りとしながら、できるだけその大きさを小さくし、しかも排煙脱硫装置の初期投資設備費、運転中の維持費、そして定期検査時のメンテナンス費等を低減すると共に長期間安定した脱硫性能やスラリ撹拌/酸化性能が維持でき、かつ、より低廉型のスプレ式吸収塔と該吸収塔を備えた排煙脱硫装置を提供することである。
さらに、本発明の課題は建設用用地が狭くて良く、また構成部品の輸送が比較的低廉なスプレ式吸収塔と該吸収塔を備えた排煙脱硫装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、次の構成によって解決される。すなわち、被処理ガスと吸収剤を含む吸収液とを接触させ、該ガス中の硫黄酸化物を除去する吸収塔と吸収塔下部に吸収液循環タンクを備えた湿式排煙脱硫装置において、吸収塔は自立式の円筒形または角形の箱状とし、吸収液循環タンクは自立式の角形の箱状とし、吸収液循環タンクは吸収塔の下部の缶壁より張り出した張り出し部を吸収塔の両側に有する湿式排煙脱硫装置である。
【0016】
前記被処理ガスの入口部は矩形状開口部を有するようにすると、前記開口部は構造強度的に安定である。また、被処理ガスの入口部の矩形状開口部の水平方向の長さを高さ方向の長さより長くすることで、従来技術に比して吸収液スプレ配管群の設置レベルを下げることができ、吸収塔循環ポンプの揚程も小さくなり、循環ポンプ運転用の電動機の設備費や運転維持費を下げることができる。
【0017】
本発明の湿式排煙脱硫装置において、吸収液循環タンクの張り出し部は設置場所の地形、他の装置との配置の関係などに応じて、吸収塔における被処理ガス流入方向と略直交する方向、ガス流入方向と同じ方向または所定の角度を有する方向に張り出して設けることができるだけでなく、吸収塔循環タンクの高さを著しく低くすることができ、かつ、吸収塔循環タンクの前記張り出し部の天井にはスラリ沈澱防止用の縦型撹拌機が容易に設置でき、スラリの撹拌性能が従来技術に比して一層向上する。
【0018】
また、このとき吸収液循環タンクの張り出し部の側壁に酸化用横型撹拌機を設置し、余裕があればさらに前記側壁にスラリ用横型撹拌機を設置することで、従来技術に比してスラリの撹拌性能を維持、向上させた上にスラリ内部の亜硫酸塩の酸化性能も向上させることができる。
【0019】
本発明の湿式排煙脱硫装置は吸収塔の吸収液循環タンクとの接続部の近傍には被処理ガスの少なくとも1つの入口部を設け、吸収塔の頂部には少なくとも1つの出口部を設けた構成とすることができる。
そして、吸収液循環タンクは角形の箱状であるので、吸収液循環タンクは自立式であり、その上部の吸収塔も自立式のものとすることができる。
【0020】
また、角形の箱状の吸収塔と循環タンクを用いる場合は、吸収塔の塔高を低くできるためにガス入口部の開口部の水平方向長さを吸収塔の水平方向の長さに一致させても、ガス入口部の開口部の補強は吸収塔の断面が矩形形状なので、平面的な2次元の補強が吸収塔の水平方向の幅方向や奥行き方向で簡単に行え、構造強度的に安定させることができ、さらに、当該構成部品を主に平板状に近い形のものを組み立てることができ、円筒形のものに比較して狭い建設用用地を確保するだけで良く、また重層状にして輸送できるので輸送費用が廉価となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を分かり易くするため図面で説明すると、例えば図1(本図では、大容量のスプレ式吸収塔を備えた脱硫装置を想定し、ガス入口部と出口部がそれぞれ2箇所ある。)に示すように、第1に角形の箱状をした吸収塔では、塔高を低くするためにガス入口部2a、2bの開口の水平方向長さBLを吸収塔の水平方向の長さALに一致させても、ガス入口部2の開口部の補強は吸収塔の断面が矩形形状なので、平面的な2次元の補強が吸収塔の水平方向の幅AL方向や奥行きAW方向で簡単に行え、構造強度的に安定させることができる。
【0022】
第2に、ガス入口部2の開口の鉛直方向高さBHを小さくすることにより、吸収液スプレ配管7の設置レベルが図6に示す従来技術に比べて下がり、吸収塔循環ポンプ5の揚程も図6に示す従来技術に比べて小さくなり、循環ポンプ5運転用の電動機の設備費や運転維持費を下げることができる。
【0023】
第3に、ガス入口部2a、2bの下部に設置される吸収塔循環タンク4の形状を(a)ガス流入方向と直角方向、図示していないが(b)ガス流入方向と同じ方向または(c)ガス流入方向と所定の角度で吸収塔缶壁より張り出した張り出し部を設けることにより、吸収塔循環タンク4の高さを著しく低くすることができ、かつ、吸収塔循環タンク4の前記張り出し部の天井にはスラリ沈澱防止用の縦型撹拌機8a、8bが容易に設置できる。前記撹拌機8a、8bにより循環タンク4内のスラリ液を均一に撹拌できることから、スラリ撹拌性能がより一層向上する。そして吸収塔循環タンク4の側面には、循環タンク4内のスラリ液を均一に撹拌されるという状態を維持したまま酸化用の横型撹拌機9a〜9fを設置することができ、酸化性能も最大限に発揮することができる。
【0024】
なお、スラリ用撹拌機8および酸化用撹拌機9の台数は、それぞれスラリ撹拌および酸化性能が最大限に発揮できる範囲で決め、また吸収塔の奥行きAWそして吸収塔の幅ALを任意に変化させて前記形状寸法を決定すればよい。
【0025】
吸収塔の幅ALの大きさ、または循環タンク4の大きさによっては、循環タンク4の側壁面にスラリ用横型撹拌機8を追加設置することができる。
【0026】
このように、本発明の脱硫装置は、その塔高を著しく低くすることができ、吸収塔循環ポンプ用電動機の小型化や運転維持費の低減ができ、そして循環タンク底面中央部付近にスラリ液中の固形物の堆積の山が生じないため循環タンク内の有効容積の安定維持が図れ、またスラリ撹拌効率が高いため酸化用空気の利用率向上が図れることから必要空気量の低減、つまり空気ブロワ動力費低減も図れ、長期間安定した脱硫性能および酸化性能を維持供給することができると共に、最初に述べた塔高低減ができることから、より低廉型のスプレ式吸収塔を備えた脱硫装置を提供することができる。
【0027】
また、本発明の吸収塔循環タンクは、角形箱状であるので補助の支持構造体を用いることなく自立型のものとすることができる。
実施例1
本発明の一実施例のスプレ式吸収塔を備えた脱硫装置の概略図を図1に示す。図1に示す大容量の自立型で、角形の箱状の吸収塔は、断面矩形のガス入口部2と出口部3をそれぞれ2箇所づつ設けてあるが、被処理ガス量に応じてガス入口部2と出口部3の設置数を決めることができ、それぞれ1箇所つづ設けても良い。以下全体の構成について詳述する。
【0028】
硫黄酸化物および煤じんを含む未処理排ガスg1は脱硫装置のスプレ式吸収塔1のガス入口部2a、2bに導かれる。吸収塔1内では多数のスプレノズル11を備えた吸収液スプレ配管7がガス流れと直交する方向に少なくとも2段以上設置されており、スプレノズル11から微細な液滴として噴霧される吸収液と未処理排ガスg1を対向流あるいは並行流で気液接触させることで、排ガス中の硫黄酸化物は吸収液滴表面から吸収液に吸収除去され、また排ガス中の煤じんは吸収液滴との衝突により物理的に除去される。排ガス流れに同伴される微小な液滴は吸収塔1の上部に設置されたミストエリミネータ13a、13bで除去され、浄化された排ガスg2は必要により吸収塔後流側に設置される図示しない再加熱設備により昇温されて、煙突より排出される。
【0029】
一方、スプレノズル11から噴霧された大部分の吸収液の液滴は硫黄酸化物(SO2)を吸収したのち吸収塔1の下部に設けられた吸収塔循環タンク4に落下する。
【0030】
吸収液に吸収された硫黄酸化物(SO2)は、吸収剤供給配管10を通して吸収塔循環タンク4に供給される石灰石(CaCO3)と反応し、同時に酸化用撹拌機9a〜9fから供給される酸化用空気12によって酸化されて石膏(CaSO4・2H2O)となる。
【0031】
循環タンク4内の吸収液は循環ポンプ5により循環配管6で再び吸収液スプレ配管7に導かれ、繰り返し使用される。また、吸収塔1で除去された煤じんは吸収液とともに吸収塔循環タンク4に落下する。
【0032】
本実施例では、ガス入口部2a、2bの下部に設けられる吸収塔循環タンク4はガス流入方向に直交する方向に吸収塔缶壁から張り出した形状をしている。そして、循環タンク4の前記張り出し部分の天井にスラリ撹拌用縦型撹拌機8a、8bおよび循環タンク4の側壁面に空気を吹き込む酸化用横型撹拌機9a〜9fおよび/またはスラリ撹拌用横型撹拌機8c、8dを設置している。
【0033】
図1に示す角形の箱状の吸収塔は、塔高を低くするために断面矩形のガス入口部2a、2bの開口の水平方向の長さBLを吸収塔1の水平方向の幅ALに一致させている。
ガス入口部2の開口の補強は吸収塔1の縦断面が矩形形状なので、平面的な2次元の補強が吸収塔1の幅AL方向や奥行きAW方向で容易に構築でき、構造強度的に安定させることができる。
【0034】
そして、ガス入口部2の開口の鉛直方向高さBHを図6などに示す従来技術のそれより小さくすることができるので、吸収液スプレ配管群7の設置レベルも従来のものよりも下げることができる。そのため、吸収液スプレ配管群7の設置位置と循環タンク4内の液面との間の距離も短くなる。このことから、吸収塔循環ポンプ5の揚程も小さくなり、吸収塔循環ポンプ5用の電動機の設備費や運転維持費を下げることができる。
【0035】
次に、ガス入口部2a、2bの下部に設置される吸収塔循環タンク4をガス流入方向と直交する方向に吸収塔缶壁から張り出した形状としたことにより、吸収塔循環タンク4の天井には、スラリ沈澱防止用の縦型撹拌機8a、8bが容易に設置でき、スラリ撹拌性能が図6などに示す従来の循環タンク4に比べて一段と向上する。また、吸収塔循環タンク4の側面には、前記撹拌条件で酸化用の横型撹拌機9a〜9fを設置することから、常に循環タンク4のスラリ用撹拌機8a〜8dの撹拌効果を最大限に引き出し、吸収塔循環タンク4の底面中央部付近にスラリ液中の固形物の堆積の山を形成させない。
【0036】
従って、吸収塔循環タンク4の有効容積を所定の値に安定維持させることができる。また、吸収塔循環タンク4の吸収液の撹拌効率が最大限に発揮されているため、空気による酸化作用も向上し、酸化用空気の利用率向上が図られる。また高圧の空気を不必要に供給することがなく、空気ブロワ動力低減が図れる。
【0037】
また、ガス入口部2の下部にある循環タンク4に張り出し部を設けたことから、必要保有液量に対して脱硫装置の塔高Hが著しく低くでき、またガス入口部2の開口の水平方向長さBLを吸収塔1の幅ALあるいは奥行きAWと同じにするとガス入口部2の鉛直方向高さBHを低くできるので、吸収塔1の塔高Hも低くできる。このため、吸収塔全体として、初期設備投資費、運転維持費および定期検査時のメンテナンス費等が低減できる。
【0038】
スラリ用撹拌機8および酸化用撹拌機9の台数は、それぞれスラリ撹拌および酸化性能が最大限に発揮できる範囲で吸収塔1の奥行きAWそして吸収塔1の幅ALを任意に変化させて、その大きさに合致するように決めれば良い。吸収塔の幅ALによっては、循環タンク4の側面にスラリ用撹拌機8c、8d他を追加設置し、撹拌効果を上げることもできる。例えば、吸収塔1の幅ALが長いとき、酸化用撹拌機9a、9cの間にスラリ用撹拌機8cを1台設置するだけではなく2台にするなどして、スラリ撹拌性能を発揮するために必要な台数の撹拌機8cを設置する(酸化用撹拌機9d〜9f間に設置するスラリ用撹拌機8dも同様)。
【0039】
本実施例ではこのように、図6などに示す従来技術に比較して脱硫装置の塔高Hを著しく下げることができると同時に、吸収塔循環ポンプ5の揚程も従来技術に比べて低くすることができるので前記電動機も小型化が可能となり、そして運転維持費も低減できる。
【0040】
また、スラリ用撹拌機8および酸化用撹拌機9を数多く設置できるので、スラリ撹拌効率が高くなり、酸化用空気の利用率向上も図られることから、必要空気量の低減、つまり空気ブロワ動力費低減も図れ、長期間安定して脱硫性能および酸化性能を維持供給することができ、よりコンパクトで経済的にもさらに低廉化な吸収塔が提供できる。
【0041】
波及効果として塔高Hが比較的小さくなれば、吸収塔1周辺の出入口ダクトを補強支持するための図示しない支持鉄骨等の高さも下げることができるため、脱硫装置の初期設備投資費、定期検査時のメンテナンス費(足場等)が低減できる。
【0042】
図1に示す実施例ではガス入口部2と出口部3とをそれぞれ2箇所設けた事例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また図1には吸収塔循環タンク4の吸収塔缶壁からの張り出した部分の張り出し方向をガス流入と直角方向に設けた例で説明したが、ガス流入方向と同じ方向にあるいはその他の任意の方向に前記張り出し部を設けても良く、張り出し部の張り出し方向は特に限定されるものではない。
【0043】
また、図11、図12は従来型の自立式円筒形の吸収塔と循環タンク一体型の脱硫装置の製作・据え付け方法を示したものだが、形状が円筒形なので製作時には次のような問題点があった。
(a)脱硫装置の建設に際して、半円筒あるいは完全な円筒にするためには、広い敷地を有した工場や輸送を考慮すると道路幅で制限されるため、海上輸送が可能な岸壁に近い工場で製作を余儀なくされていた。
(b)陸上輸送で行う場合には、上記道路幅の制限より、各半割リングの吸収塔をさらに小さく細切れにする必要が生じる。細かくしても、円弧状のパネルなのでかさ張る容積を有していることから、輸送トラックの台数が多く必要であった。
【0044】
一方、本実施例の脱硫装置では、図2に示すようにその断面形状が矩形であることから次のような利点がある。
(a)全てのブロックは平たいパネルで製作できる。
(b)工場の製作能力や現地までの輸送形態(陸送、海上輸送)を考慮しながら図2、図3(図2の脱硫装置の部分を示す数字に対応した部分の分割されたパネル群を示す)に示すように任意の大きさのパネルに分割できる。
(c)輸送時、高さや長さの制限内で何段にでも図3に示す分割された長いパネルを積み重ねることができ、輸送効率がよい。
つまり、製作・輸送・据え付け面でも、より低廉型の脱硫装置が提供できる。
【0045】
本発明の他の実施例を図4に示す。本実施例は図1で示したガス入口部2の下部に設けた角形箱状の吸収塔循環タンク4を(a)ガス流入方向に対して直角方向に吸収塔缶壁からの張り出し部を設けたものと同じ考え方を適用したものまたは(b)図示していないがガス流入方向と同じ方向に吸収塔缶壁からの張り出し部を設けたものと同じ考え方を適用した脱硫装置の構造であるが、吸収塔循環タンク4内のスラリ用撹拌機8および酸化用撹拌機9を全て吸収塔循環タンク4の側面に設置される横型の撹拌機として用いたものである。
図4の事例も、スラリ用横型撹拌機8で保有スラリ液が均一に撹拌できる範囲で本特許と同じ効果が得られる。
【0046】
本発明のさらに他の実施例を図5に示す。本実施例は図1で示したガス入口部2の上部に従来の丸型スプレー式吸収塔1を設置したもので、吸収塔1の下部に図1に示す循環タンク4と同じ角形箱状のものを適用したものである。
以上、本発明では吸収塔1をスプレ方式を例に取り説明したが、吸収部での脱硫方式は、例えば濡れ壁方式やバブリング方式等限定するものではない。
【0047】
また、上記本発明の各実施例において、吸収塔循環タンク4の吸収塔缶壁からの張り出し部は地上に設置するだけのものに限定することはなく、張り出し部を地下に設置しても上記本発明の各実施例と同じ効果が得られる。
【0048】
なお、本発明は▲1▼吸収液スプレノズル配管7の方式や構造仕様、▲2▼吸収塔1および循環タンク4の補強形状や補強構造仕様、▲3▼撹拌機8、9の型式、台数、構造等の仕様は上記実施例に限定されるものではない。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、吸収塔の吸収液スプレ配管下部にガス入口を取り付け、そしてガス入口下部に角形箱状の吸収塔循環タンク部を吸収塔下部の缶体より張り出して設けることにより、
(a)脱硫装置吸収塔の大きさに影響されず、塔高Hを低くするため、ガス入口部の開口の水平方向の長さBLを吸収塔の幅ALあるいは奥行きAWに一致させ、また、ガス入口部の開口が吸収塔の左右、前後、あるいは、その組合せの2箇所になっても構造強度面で安定した吸収塔が提供できる。
(b)ガス入口部の開口の鉛直方向の高さBHを下げることにより、吸収塔循環ポンプの揚程が小さくなり、前記電動機の設備費や運転維持費を下げることができる。
【0050】
(c)吸収塔循環タンクにおいては、常にスラリ用撹拌機の撹拌効果を最大限に引き出し、吸収塔循環タンク底面中央部付近にスラリ液中の固形物の堆積の山を形成させない。
(d)従って、吸収塔循環タンクの有効容積を所定の値に安定維持させることができる。
【0051】
(e)吸収塔循環タンク内のスラリの撹拌効率が最大限に発揮されているため、空気による酸化作用も向上し、酸化用空気の利用率向上が図られる。また高圧の空気を不必要に供給することがなく、空気ブロワ動力低減が図れる。
(f)ガス入口部の下部の循環タンクに張り出し部を設けたことから、必要保有液量に対して吸収塔の塔高が著しく低くでき、またガス入口部の開口の水平方向長さは吸収塔の幅あるいは奥行きと同じにできるためガス入口部の高さが、つまり塔高が、この循環タンク部でもさらに低くでき、吸収塔全体として、初期設備投資費、運転維持費および定期検査時のメンテナンス費等が低減できる。
(g)角形箱状の吸収塔および/または吸収塔循環タンクの場合は、その構成部品は平たいパネルで製作でき、設置面積の低減と輸送効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例のスプレ式自立型角形箱状の吸収塔の立体図である。
【図2】 本発明一実施例のスプレ式自立型角形箱状の吸収塔の製作、輸送、据え付け時の分割要領例である。
【図3】 本発明一実施例のスプレ式自立型角形箱状の吸収塔の製作、輸送、据え付け時の分割要領例である。
【図4】 本発明の一実施例のスプレ式自立型角形箱状の吸収塔の立体図である。
【図5】 本発明の一実施例のスプレ式自立型円筒形と角形箱状を組み合わせた吸収塔の立体図である。
【図6】 従来技術のスプレ式自立型円筒形吸収塔の側面図である。
【図7】 従来技術のスプレ式自立型円筒形吸収塔の立体図である(吸収塔径Dと循環タンク径DTが同じタイプ)。
【図8】 従来技術のスプレ式自立型円筒形吸収塔の立体図である。(循環タンク径DTが吸収塔径Dより大きいタイプ)。
【図9】 従来技術の大容量スプレ式自立型円筒形吸収塔の側面図である。
【図10】 図9のI−I線矢視図である。
【図11】 従来技術のスプレ式自立型円筒形吸収塔の製作、輸送、据え付け時の分割要領例である。
【図12】 従来技術のスプレ式自立型円筒形吸収塔の製作、輸送、据え付け時の分割要領例である。
【符号の説明】
1 スプレ式吸収塔 2 ガス入口部
3 ガス出口部 4 循環タンク
5 吸収液循環ポンプ 6 循環配管
7 吸収液スプレ配管 8 スラリ撹拌機
9 酸化用撹拌機 10 吸収剤供給配管
11 スプレノズル 12 酸化用空気
13 ミストエリミネータ
Claims (4)
- 被処理ガスと吸収剤を含む吸収液とを接触させ、該ガス中の硫黄酸化物を除去する吸収塔と吸収塔下部に吸収液循環タンクを備えた湿式排煙脱硫装置において、吸収塔は自立式の円筒形または角形の箱状とし、吸収液循環タンクは自立式の角形の箱状とし、吸収液循環タンクは吸収塔の下部の缶壁より張り出した張り出し部を吸収塔の両側に有することを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
- 吸収液循環タンクの張り出し部は吸収塔における被処理ガス流入方向と略直交する方向、ガス流入方向と同じ方向または所定の角度を有する方向に張り出したことを特徴とする請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置。
- 吸収液循環タンクの張り出し部の天井にスラリ用縦型撹拌機を設置したことを特徴とする請求項1または2に記載の湿式排煙脱硫装置。
- 吸収液循環タンクの張り出し部の側壁に酸化用横型撹拌機およびスラリ用横型撹拌機を設置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の湿式排煙脱硫装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04206197A JP3676020B2 (ja) | 1997-02-26 | 1997-02-26 | 湿式排煙脱硫装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04206197A JP3676020B2 (ja) | 1997-02-26 | 1997-02-26 | 湿式排煙脱硫装置 |
Publications (2)
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