JP3776793B2 - 湿式排煙脱硫装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ボイラなどの燃焼装置から排出される排ガス中の二酸化硫黄(SO2)を除去する湿式排煙脱硫装置に係わり、特に、循環タンク液面に生ずる泡沫層低減に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所等において、化石燃料の燃焼に伴って発生する排煙中の硫黄酸化物、中でも特に二酸化硫黄(SO2)は、大気汚染・酸性雨等の環境問題における主原因の一つである。排煙中の硫黄酸化物を取り除く排煙脱硫システムは石灰石−石膏法による湿式法が主流を占めており、中でも最も実績が多く、信頼性の高いスプレ方式が世界的にも多く採用されている。しかしながら、燃料の多様化、排水量低減などに伴い、排煙脱硫装置に対して厳しい運転条件が要求されるようになり、脱硫性能の維持とトラブルの発生を防止するためには、さらに高度な技術開発が必要である。
【0003】
従来技術のスプレ方式を採用した湿式排煙脱硫装置の公知例として、脱硫装置を構成する吸収塔の側面図を図14に示す。この湿式排煙脱硫装置は、主に吸収塔本体1、入口ダクト2、出口ダクト3、吸収液循環ポンプ4、循環タンク6、攪拌機7、空気供給管8、ミストエリミネータ9、吸収液抜出し管10、循環配管11、スプレヘッダー12、スプレノズル13、吸込み配管14等から構成される。
【0004】
ボイラから排出される排ガスは、入口ダクト2から吸収塔本体1に導入され、塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。この間、吸収液循環ポンプ4から送られる炭酸カルシウムを含んだ吸収液5がスプレノズル13から噴射され、吸収液5と排ガスの気液接触が行われる。このとき吸収液5は排ガス中の硫黄酸化物(SO2)を吸収し、亜硫酸イオン(SO3 2-)を生成する。吸収液5は一旦循環タンク6に溜まり、酸化用攪拌機7によって攪拌されながら、空気供給管8から供給される空気中の酸素により亜硫酸カルシウムCa(HSO3)2が酸化され、硫酸カルシウム(石膏)を生成する。このとき、酸化空気は攪拌機インペラの背後から供給されているため細かな気泡となっており、酸化効率が高められている。
【0005】
一方、循環タンク6内には、酸化空気に加えて微細気泡である泡沫層16が生じている。泡沫層16は循環タンク6に落下する吸収液が液面に衝突することにより、吸収塔内の排ガスをタンク内の液中に巻き込んで生成される。したがって、循環タンク6内の吸収液5中には酸化空気の気泡と泡沫層16の微細気泡が混在する。これらの気泡は、吸収液循環ポンプ4への気泡吸込みとホールドアップ量増加の原因となる。このうち、泡沫層16を形成する微細気泡は吸収塔内のガスが主成分であることから気泡中には酸素がほとんどないため、SO3 2-の酸化には貢献しない。その一方で、泡沫層16中の微細気泡は循環ポンプ4に吸込まれて循環液量を減少させ、液レベルを増加(ホールドアップ)させる原因となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術において、循環ポンプ4への気泡吸込みは、吸収液循環ポンプ4を備えた循環タンク6の壁面に開口した吸込み配管14の接続部を囲うバッフルプレート17によって防止されているが、前記ホールドアップに関しては考慮されていない。前記ホールドアップ量が多くなり、循環タンク6内の液レベルが上昇すると、入口ダクト2への吸収液5の逆流が発生するため、循環タンク6は前記微細気泡によるホールドアップ量を加えても液レベルが入口ダクト2設置部に達しないタンク容量となるように設計されている。前記ホールドアップ量は吸収液5の種類によって異なるが、循環タンク6内の液量の20〜40%増にもなる場合がある。
【0007】
上記従来技術では、泡沫層16の発生に関して十分考慮されておらず、必要以上の循環タンク6の容量を確保しなければならなかった。
【0008】
本発明の課題は、泡沫層の発生を抑制し、コンパクトで信頼性が高く安定した運転が可能な湿式排煙脱硫装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、ボイラを含む燃焼装置から排出される硫黄酸化物含有排ガスを導入する入口ダクトと該入口ダクトから導入された排ガスとカルシウム系吸収液を接触させる気液接触領域を設けた吸収部と該吸収部で浄化された排ガスを排出する出口ダクトを備えた吸収塔と、該吸収塔の下部に前記吸収塔で排ガスの浄化処理に用いられた吸収液を貯留する循環タンクと、該循環タンク内の吸収液の一部を前記吸収塔の気液接触領域に循環供給する吸収液循環系を備えた湿式排煙脱硫装置において、循環タンク側壁面の内周方向のほぼ全体にわたり設置した水平に対して傾斜面を有し、吸収塔の壁面を伝って循環タンク内に落下する液を回収する液回収用樋と、該液回収用樋の傾斜面の最低部に接続し、循環タンクの液内に下端の出口を浸漬させて回収した液を循環タンク内へ流し込む液排出管とを設けて該循環タンク液面への落下距離を小さくする湿式排煙脱硫装置により解決される。
【0010】
吸収塔の塔壁を伝って循環タンク内に落下する液を、一旦、液回収用樋によって回収して循環タンク内の液面に直接流れ込むことを防ぎ、該液回収用樋から速やかに循環タンク内の液中に回収液を流し込むことで、塔壁を伝う吸収液による吸収塔内のガスの巻き込みが無くなり、循環タンク液面上で泡沫層が発生することを抑制できる。
【0011】
前記液回収用樋は、循環タンク側壁面の内周方向のほぼ全体にわたり設置し、水平に対して傾斜面を有する構成とし、また、該液回収用樋の傾斜面の最低部に循環タンクの液内に下端の出口を浸漬させた液排出管を接続した構成により、循環タンク壁面のほぼ全面を伝って循環タンク液面に流れ落ちる吸収液を無くして、この間における塔内のガスの巻き込みを皆無にして、より効果的に循環タンク液面上で泡沫層が発生することを抑制できる。
【0012】
また、液回収用樋に回収された吸収液は液排出管から垂直方向下方に吐出されると、排出管の出口付近に強い下降流が発生し、循環タンク内の液流動によっては、吸収液の流れはそのまま吸収液循環系に吸込まれるため、液排出管から吐出した液の滞留時間が亜硫酸イオン(SO3 2-)の酸化に不十分となるおそれがある。これを防ぐために液排出管出口を水平方向に向け、下降流の発生を防止することもできる。
【0013】
また、入口ダクトの上方の吸収塔内壁面に液回収用の樋(図6の液遮蔽板20など)を設け、該樋から循環タンク壁面に設けた液回収用樋に回収液を排出する液排出管を接続した構成により、吸収塔の塔壁を伝って流れ落ちる吸収液のうち、入口ダクトが接続した開口部を落下する液が無いので入口ダクトから導入される排ガス流れに圧力損失が生じない。また、液滴状の吸収液を吸収塔内壁面に液回収用の樋(図6の液遮蔽板20など)と液回収用樋で回収して循環タンク内に流し込むため、前記泡沫層の発生が抑制される。
【0014】
さらに、循環タンク内の吸収液の一部を吸収塔の気液接触領域に循環供給する吸収液循環系の循環タンク接続部から遠ざけた位置に液排出管の下端出口を設けた構成にしても良い。
【0015】
前記液回収用樋で回収した液には酸素含有量の少ない気泡が若干量含まれているが、この回収液を吸収液循環系の循環タンク接続部から遠ざけた位置から液排出管を介して循環タンク内の吸収液中に流し込むと、酸素含有量の少ない気泡を含んだ回収液が液排出管から直接吸収液循環系の循環タンク内に入り込む割合が少なくなり、脱硫率に悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0016】
また、前記液排出管から循環タンク内に流れ込む液と共に塔内のガスが混入することがあるので、液排出管の液回収用樋との接続部には回収した液の一時的貯留部を設けておくと、液回収用樋で回収した液が一旦液溜め部に溜まるため、液と共に塔内のガスが循環タンク内の液中に流れ込むことを防ぐことができる。
【0017】
本発明の前記液回収用樋は、循環タンク側壁面と底面と欄干からなる構成又は循環タンク壁面と平板を断面逆三角形状に接続した構成とすることができる。
【0018】
縦断面が逆三角形である底面を持たない液回収用樋は構造が比較的簡単であるため循環タンク側壁面と底面と欄干からなる構成からなる液回収用樋より低コストとなる。
【0019】
また、液回収用樋は、循環タンクの壁面全周に対して二以上に分割して配置され、その各分割された樋の両端部は上下方向に他の樋の両端部と互いに重複した位置に配置される構成としても良い。
【0020】
この場合には、塔壁面の鉛直方向から見て二以上に分割配置された液回収用樋の両端部が一部重複する位置に配置されているため、液回収用樋が上下方向によりコンパクトな構成となる。
【0021】
また、液回収用樋は、該液回収用樋の傾斜面の最低部を循環タンクの液内に浸漬させた構成にしても良い。この場合には液排出管を設ける必要が無くなる。
【0022】
また、この場合の液回収用桶は、液の回収と同時に、壁を伝って流れ落ちる吸収液の流下速度を減少させることが可能であり、高速で流れ落ちる液を一旦停止させ、流下速度を低くし、タンク液面に落下させる。これにより、ガスの巻き込みを減少させ、泡沫層を少なくする効果が得られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の湿式排煙脱硫装置の実施の形態について図面を用いて説明する。図1、図2に示す実施例において、図1は吸収塔壁に液回収用樋を設け、該液回収用樋によって回収した液を循環タンクに流し込む配管を設置した吸収塔の側面を示したものである。図2は、図1のA−A線断面矢視図である。
【0024】
図1に示す実施例は、吸収塔壁面に液回収用樋18を設けた点および回収した液を循環タンク6へと供給する液排出管19を設けた点で図14に示す従来技術と異なる。なお、図14で説明した部材と同一の部材については同一番号を付してその説明は省略する
【0025】
スプレノズル13から噴射された吸収液5は、吸収塔内で排ガス中のSO2を吸収してCa(HSO3)2が生成され、循環タンク6に落下する。循環タンク6内では、空気吹込み管8から空気15が供給されており、落下した吸収液中のCa(HSO3)2は、攪拌機7によって微細化された気泡中の酸素によって酸化されて硫酸カルシウムとなる。循環タンク6内に存在する気泡としては、酸化空気の気泡に加えて泡沫層16がある。泡沫層16は循環タンク6内の液面上にスプレノズル13から噴射された吸収液5が落下する際に吸収塔内のガスを巻き込むことによって生ずる微細気泡である。泡沫層16を形成する微細気泡は吸収塔内の低酸素濃度ガスが主成分であることから亜硫酸イオン(SO3 2-)の酸化には貢献しない。その一方で、泡沫層16を形成する微細気泡は循環ポンプ4に吸込まれてスプレノズル13から噴射するための吸収液5の循環液量を減少させ、かつ循環タンク6内の液レベルを増加(ホールドアップ)させる原因となる。
【0026】
循環ポンプ4への気泡吸い込みに関しては、バッフルプレート17を循環タンク壁面の循環ポンプ4吸い込み口付近に設置して液と気泡を分離し、液のみを循環ポンプ4に吸込むことによって対応している。一方、ホールドアップに関しては、入口ダクト2設置部の吸収塔壁面よりも液レベルが高くなると、液が入口ダクト2内に逆流するので、これを防ぐため従来技術では、ホールドアップによる液レベルの増加量を考慮したタンク容量を循環タンク6の設計値としている。
【0027】
しかしながら、循環タンク6のタンク容量の増加は吸収塔高さを増加させることから、脱硫装置のコンパクト化の障害となる。ホールドアップを最小限にするためには、亜硫酸イオン(SO3 2-)の酸化に全く寄与していない泡沫層16の気泡量を減少させなければならない。泡沫層16は循環タンク6内の液面への落下液によって生じるが、落下液は循環タンク6中央部に落下するスプレノズル13から噴射されたままの液滴状の吸収液5と、塔壁を伝って循環タンク6へと流れ込む吸収液の二種類に分類される。液滴状の吸収液はタンク中央部に分散して落下するのに対して、塔壁を伝って循環タンク6へと流れ込む吸収液5は壁近傍の狭い領域に集中して流れ込む。さらに、塔壁を伝う吸収液の量は、スプレノズル13から噴射された液量の20〜30%にも達する。循環タンク6の壁近傍に全循環液量の1/4〜1/3もの液量がタンク壁近傍の狭い領域に集中して流れ込むため、多量のガスを巻き込み、泡沫層16を生じさせる主原因となっている。
【0028】
図1に示す実施例では、吸収塔本体1の塔壁を伝って循環タンク6内に落下する液を、一旦、桶状の液回収用樋18によって回収し、塔壁を伝う吸収液が循環タンク6内の液面に直接流れ込むことを防いでいる。液回収用樋18には液排出管19に向かって傾斜が付けてあり、吸収液中の石膏が回収部に堆積するのを防ぐとともに、図2に示すように回収した液を循環タンク6に複数配置した液排出管19へと流し込んでいる。
【0029】
液排出管19の下端の出口を循環タンク6の液面よりも下方まで延長することにより、吸収液が液排出管19内を通過して循環タンク6内へと速やかに流れ込むため、吸収塔内のガスを巻き込むことが無く、泡沫層16の発生が抑制される。液回収用樋18の大きさは、スプレノズル13から放出される吸収液の量、塔径、ガス流速等によって異なるが、幅300〜1000mm、高さ200〜500mm程度であり、液排出管19の直径は300mm〜500mm程度である。
【0030】
図3は従来技術と本発明の上記実施例の泡沫層16の気泡量を、従来技術を1として比較したものである。
【0031】
本発明による液回収用樋18を設置することにより、泡沫層16の発生が抑制されていることが分かる。このため、ホールドアップが減少し、従来技術よりも循環タンク6の高さを低く設定でき、よりコンパクトな吸収塔となる。
【0032】
図4に示す実施例は、液排出管19の出口を水平方向に向けた点で図1、2に示した実施例と異なり、その他の構成は図1、2に示す実施例と同一である。図1、2に示す実施例では、吸収塔本体1の壁面を伝って液回収用樋18に回収された吸収液は液排出管19から垂直方向に吐出される。このとき、液排出管19の出口付近に強い下降流が発生する。循環タンク6内の液流動によっては、吸収液の流れはそのまま吸込み配管14から循環ポンプ4に吸込まれるため、液排出管19から吐出した液の滞留時間が亜硫酸イオン(SO3 2-)の酸化に不十分となる。これを防ぐため、図4では液排出管出口を水平方向に向け、下降流の発生を防止している。
【0033】
本発明の別の実施例の要部を図5に示すが、本実施例は液回収用樋18を水平方向に対して傾斜させ、吸込み配管14に接続される循環ポンプ吸込み口から遠ざけた位置である液回収用樋18の最低部位に液排出管19を設けた点で図1〜図4に示した実施例と異なる。その他の構成は図1、2に示す実施例と同一である。
【0034】
液回収用樋18によって回収された液中には若干の酸素含有量の少ない気泡が含まれる。このため、循環ポンプ吸込み配管14付近に液排出管19の出口を設けず、循環タンク6の吸込み配管14を設置した部位の反対側の液回収用樋18に液排出管19を設けて、該液排出管9から循環タンク6内の吸収液中に液回収用樋18内の液を流し込むことにより、酸素含有量の少ない気泡を含んだ回収液が循環ポンプ14へ混入する割合を減少させることが可能となる。
【0035】
図6に要部を示す実施例は入口ダクト2上部に設けられた液遮蔽板20から流出する液を、液回収用樋18で回収した液と共にタンク内に流し込んでいる点で図1〜図5に示した実施例と異なる。その他の構成は図1、2に示す実施例と同一である。
【0036】
吸収塔本体1の塔壁を伝って流れ落ちる吸収液のうち、入口ダクト2を設置した吸収塔本体1の開口部を落下する液は吸収塔内に流れ込む排ガス流れを遮断するため、排ガス流れの圧力損失が高くなる。
【0037】
これを防ぐために図6に示す実施例では、入口ダクト2を設置した吸収塔本体1の開口部上部に液遮蔽板20と該液遮蔽板20の両端部に液排出管21を設け、さらに入口ダクト2を設置した吸収塔本体1の開口部より下方に液遮蔽板20の両端部に設けた液排出管21から落下する液を回収し、同時にその他の吸収塔本体1の壁面を伝って流下する吸収液を回収する液回収用樋18を設ける。また液回収用樋18には他の実施例と同様に適宜の数の液排出管19を接続する。
【0038】
こうして、スプレノズル13から噴射されたままの液滴状の吸収液を液遮蔽板20と液回収用樋18で回収して循環タンク6内に流し込むため、泡沫層16の発生が抑制される。
【0039】
図7要部を示す実施例は、液回収用樋18と液排出管19との間に液溜め部22を設けた点で図1〜図6に示した実施例と異なる。図1〜図6に示した実施例では、液回収用樋18で回収された液は、そのまま液排出管19の開口部へと流れ込む。このとき、液と共に塔内のガスが混入することがある。液溜め部22を設置すると、液回収用樋18で回収した液が一旦液溜め部に溜まるため、液と共に排ガスが循環タンク6内の液中に流れ込むことを防ぐことができる。
【0040】
図8に示す実施例は、液回収用樋18を鉛直上方に開口部を持ち、塔壁に対して角度を持たせた平板で構成して、縦断面が逆三角形である底面を持たない構成とした点で図1〜図7に示した実施例と異なる。本実施例の液回収用樋18は吸収液吸込み配管14が接続した壁面側が最高部位にあり、入口ダクト2が接続した壁面側が最低部位にある傾斜状の液回収用樋18である。
【0041】
本実施例では液回収用樋18を平板で構成することにより、図1〜図7に示した実施例より構造が簡単となるため、低コストとなる。
【0042】
図9に示す実施例は、液回収用樋18を循環タンク6の側壁の内周面方向に二分割し、塔壁面の鉛直方向から見て液回収用樋18の桶の両端部が一部上下に重複する位置に配置されていることに特徴がある。
【0043】
例えば、図5に示した実施例では、液回収用樋18は液排出管19に向けて傾斜がつけてあるため、液回収用樋18は上下方向に高くなり吸収塔本体1又は循環タンク6の高さが高くなる。しかし図9に示した実施例では液回収用樋18を円周方向に分割し、各液回収用樋18a、18bは傾斜配置されているため、その最低部に接続した液排出管19a、19bから回収液が循環タンク6内に落下する。
【0044】
しかも、塔壁面の鉛直方向から見て液回収用樋18a、18bの桶の両端部が一部重複する位置に配置されているため、液回収用樋18を上下方向に、コンパクトにできる。
【0045】
また、液回収用樋18の循環タンク6の側壁の内周面方向に分割する分割数は2以上の適宜の数にしても良い。
【0046】
図10に示す実施例は、液回収用樋18の最低部が循環タンク6内の吸収液中に浸漬するように液回収用樋18が傾斜配置され、液排出管を設置していない例である。
【0047】
液回収用樋18で回収した液を傾斜に沿ってそのまま循環タンク6の液面(斜線部)に流し込むことにより、液排出管19を省略して循環タンク6の上下方向高さを減少させ、液回収用樋18の、より簡単化および循環タンク6のコンパクト化が図れる。
【0048】
図11に示す実施例は、図10に示す実施例と同様に液回収用樋18の最低部が循環タンク6内の吸収液中に浸漬するように又は液面付近にあるように液回収用樋18が傾斜配置され、液排出管を設置していない例である。図11に示す実施例が図10に示す実施例と異なるところは、液回収用樋18を循環タンク6の側壁の内周方向に二分割(二以上の分割でもよい)したことであり、循環タンク6の上下方向高さを減少させ、液回収用樋18の、より簡単化および循環タンク6のコンパクト化が図れる。
【0049】
図12に示す実施例は、液回収用樋18を塔壁に対して垂直な平板としている点、および液排出管が無い点で図1〜図10に示した実施例と異なる。図12に示す実施例では、液回収用樋18を壁面に対して垂直な平板としており、塔壁をつたって流れ落ちる液は、一旦、液回収用樋18に衝突して落下速度が減少し、その後、平板の端から落下する。このとき、循環タンク6内の液面に落下する液の速度は液回収用樋18が無い場合よりも遅いため、液中へ巻き込む塔内のガス量も少なくなり、発生する泡沫層16が減少する。他の実施例と比較すると、その効果は劣るものの、液回収用樋18の構造を簡単化し、従って液回収用樋18の設置コストを低廉化させることを優先させたい場合に有効である。
【0050】
図13に示す実施例は、吸収塔本体1の径よりも循環タンク6の径が大きい脱硫装置に本発明を適用した点で図1〜図6に示した実施例と異なる。循環タンク6の直径が吸収塔本体1の直径よりも大きい場合、図13に示すように吸収塔本体1の吸収部と循環タンク6の側壁間には段差が生じる。前記吸収部の塔壁を伝って流れ落ちる吸収液は、この段差によって、一旦壁面から離れて循環タンク6内に落下する。このとき、ガスを多量に巻き込むため、壁面を伝って循環タンク6内に流れ込む段差が無い吸収塔よりも泡沫層16の気泡量が多くなる。
【0051】
そこで、液排出管19付きの液回収用樋18を設けることによって泡沫層16の発生を抑制することができ、かつその効果は図1〜図12に示した実施例よりも大きい。
【0052】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、循環タンク内の吸収液面上に泡沫層が発生することを抑制することができる。泡沫層の微細気泡量が少なくなることによりホールドアップ量が減少するため、循環タンク容量が少なくてすみ、脱硫装置のコンパクト化が図れる。さらに、泡沫層の循環ポンプへの吸い込みが減少するため、循環液量の減少および脱硫率の低下が防止でき、信頼性が高く、高性能な湿式排煙脱硫装置となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の吸収塔壁に液回収用樋を設け、該回収用樋によって回収した液を循環タンクに流し込む液排出管を設置した吸収塔の側面図である。
【図2】 図1のA−A線断面矢視図である。
【図3】 従来技術と本発明の泡沫層の気泡量を従来技術を1として比較した図である。
【図4】 本発明の実施例の液排出管出口を水平方向に向けた液回収用樋を示した吸収塔の側面図である。
【図5】 本発明の実施例の循環ポンプ吸込み口の反対側に回収した液を流し込む排出配管を設けた液回収用樋を示した吸収塔の略図である。
【図6】 本発明の実施例の入口ダクト上部に設けられた液遮蔽板が設置してある吸収塔の略図である。
【図7】 本発明の実施例の液回収用樋と液排出管との間に液溜め部を設けた吸収塔の略図である。
【図8】 本発明の実施例の液回収用樋を、鉛直上方に開口部を持ち塔壁に対して角度を持たせた平板とした吸収塔の略図である。
【図9】 本発明の実施例の液回収用樋を循環タンク側壁の内周面方向に分割した場合の吸収塔の略図である。
【図10】 本発明の実施例の液排出管を省略した吸収塔の略図である。
【図11】 本発明の実施例の液排出管を省略した吸収塔の略図である。
【図12】 本発明の実施例の液回収用樋を塔壁に対して垂直な平板とした吸収塔の側面図である。
【図13】 本発明の実施例の吸収塔の径よりも循環タンクの径が大きい脱硫装置の側面図である。
【図14】 従来技術の脱硫装置の側面図である。
【符号の説明】
1 吸収塔本体 2 入口ダクト
3 出口ダクト 4 吸収液循環ポンプ
5 吸収液 6 循環タンク
7 攪拌機 8 空気供給管
9 ミストエリミネータ 10 吸収液抜出し管
11 循環配管 12 スプレヘッダー
13 スプレノズル 14 吸込み配管
15 酸化空気気泡 16 泡沫層
17 バッフルプレート 18 液回収用樋
19 液排出管 20 液遮蔽板
21 液排出管 22 液溜部
Claims (10)
- ボイラを含む燃焼装置から排出される硫黄酸化物含有排ガスを導入する入口ダクトと該入口ダクトから導入された排ガスとカルシウム系吸収液を接触させる気液接触領域を設けた吸収部と該吸収部で浄化された排ガスを排出する出口ダクトを備えた吸収塔と、該吸収塔の下部に前記吸収塔で排ガスの浄化処理に用いられた吸収液を貯留する循環タンクと、該循環タンク内の吸収液の一部を前記吸収塔の気液接触領域に循環供給する吸収液循環系を備えた湿式排煙脱硫装置において、
循環タンク側壁面の内周方向のほぼ全体にわたり設置した水平に対して傾斜面を有し、吸収塔の壁面を伝って循環タンク内に落下する液を回収する液回収用樋と、
該液回収用樋の傾斜面の最低部に接続し、循環タンクの液内に下端の出口を浸漬させて回収した液を循環タンク内へ流し込む液排出管と
を設けて該循環タンク液面への落下距離を小さくすることを特徴とする湿式排煙脱硫装置。 - 液排出管の下端の出口を水平方向に向けたことを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
- 入口ダクトの上方の吸収塔内壁面に液回収用樋を設け、該樋から循環タンク壁面に設けた液回収用樋に回収液を排出する液排出管を接続したことを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
- 循環タンク内の吸収液の一部を吸収塔の気液接触領域に循環供給する吸収液循環系の循環タンク接続部から遠ざけた位置に液排出管の下端出口を設けたことを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
- 液排出管の液回収用樋との接続部には回収した液の一時的貯留部を設けたことを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
- 液回収用樋は、循環タンク側壁面と底面と欄干からなる構成又は循環タンク壁面と平板を断面逆三角形状に接続した構成からなることを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
- 液回収用樋は、循環タンクの壁面全周に対して二以上に分割して配置され、各分割された樋の両端部は上下方向に他の樋の両端部と互いに重複した位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
- 各分割された樋の最低部に液排出管を接続したことを特徴とする請求項7記載の湿式排煙脱硫装置。
- ボイラを含む燃焼装置から排出される硫黄酸化物含有排ガスを導入する入口ダクトと該入口ダクトから導入された排ガスとカルシウム系吸収液を接触させる気液接触領域を設けた吸収部と該吸収部で浄化された排ガスを排出する出口ダクトを備えた吸収塔と、該吸収塔の下部に前記吸収塔で排ガスの浄化処理に用いられた吸収液を貯留する循環タンクと、該循環タンク内の吸収液の一部を前記吸収塔の気液接触領域に循環供給する吸収液循環系を備えた湿式排煙脱硫装置において、
吸収塔の壁面を伝って循環タンク内に落下する液を回収して循環タンク内へ流し込むために、循環タンク側壁面の内周方向の一部もしくは全体にわたり設置した水平に対して傾斜面を有し、傾斜面の最低部を循環タンクの液内に浸漬させた液回収用樋を設けたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置。 - ボイラを含む燃焼装置から排出される硫黄酸化物含有排ガスを導入する入口ダクトと該入口ダクトから導入された排ガスとカルシウム系吸収液を接触させる気液接触領域を設けた吸収部と該吸収部で浄化された排ガスを排出する出口ダクトを備えた吸収塔と、該吸収塔の下部に前記吸収塔で排ガスの浄化処理に用いられた吸収液を貯留する循環タンクと、該循環タンク内の吸収液の一部を前記吸収塔の気液接触領域に循環供給する吸収液循環系を備えた湿式排煙脱硫装置において、
吸収塔の壁面を伝って循環タンク内に落下する液を回収して循環タンク内へ流し込むために、循環タンク側壁面の内周方向のほぼ全体にわたり設置した水平に対して傾斜面を有 し、循環タンクの側壁面に対して略垂直方向に立てた平板からなる液回収用樋を設けたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
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