JP4348331B2 - コンクリート構造体の補強構造および補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼繊維補強モルタルの如き繊維含有水硬性組成物の硬化体からなるパネル(プレキャストパネル)を用いた、既存のコンクリート構造体の補強構造および補強方法に関する。
日本国内には、1960年代〜1970年代にかけての高度成長期に建てられ、現在、更新または補修の時期を迎えている集合住宅が数多く存在する。
これらの集合住宅は、1981年の新たな耐震基準の前に建築されているため、大地震に遭遇した場合、倒壊や、簡単な修復では済まない大きな損傷を受ける可能性がある。そのため、補強工事を予め行ない、大地震の遭遇時に受ける損傷の程度を小さく抑えることが望まれている。このような事情下において、既存の建築物を補強するための技術が、種々提案されている。
例えば、建築物の壁にアンカーボルトを取り付け、このアンカーボルトによって鋼板を前記壁と略平行に取り付け、この壁と前記鋼板との間にコンクリート又はモルタルを充填してなることを特徴とする建築物の耐震補強構造が、提案されている(特許文献1)。
また、高靭性セメントボードを、既設構造物の表面から所定の間隔を隔てて配置し、前記間隔内にコンクリート、モルタルなどの硬化性材料を充填して、前記硬化性材料を硬化させることにより、前記高靭性セメントボードを前記既設構造物に一体化させることを特徴とする既設構造物の補強工法が、提案されている(特許文献2)。この補強工法で用いる高靭性セメントボードとして、PVA繊維をセメントマトリックス中に2次元的にランダム配向させた、約10mm程度の厚みを有するセメントボードが例示されている。
特開平10−219929号公報 特開2004−52310号公報
特許文献1に記載されている補強構造では、アンカーボルトに多数の鋼板を取り付ける必要があるので、工事に手間がかかるという問題がある。また、アンカーボルトが露出するので、美観性が低下するという問題もある。
特許文献2に記載されている既設構造物の補強工法では、セメントボードを係止するためのアンカーが露出するので、美観性が低下するという問題がある。また、セメントボードを相互に接合するための繊維シートを必要とするなど、施工時の部材の数が多く、工事の工程の数の削減にも限界がある。さらに、連続的な広い施工面を有する橋脚部の補強には適しているが、比較的狭い補強対象面が断続的に存在する既設建築物(例えば、集合住宅の壁)への適用は困難である。
そこで、本発明は、短時間で容易に施工することができ、施工後の美観性が良好であり、比較的狭い補強対象面が断続的に存在する集合住宅等の既設建築物に対しても適用することができ、さらには、少量の部材および材料で効果的な補強をなし得る、コンクリート構造体の補強構造および補強方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上下一対のコンクリート梁と、該一対のコンクリート梁の間に介在する、該コンクリート梁よりも小さな厚みを有するコンクリート壁とからなる既設のコンクリート構造体に対して、特定のパネルと、アンカー部材と、グラウト材を用いて補強構造を形成すればよいことに想到し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] 上下一対のコンクリート梁と、該一対のコンクリート梁の間に介在する、該コンクリート梁よりも小さな厚みを有するコンクリート壁とからなる既設のコンクリート構造体の補強構造であって、上記一対のコンクリート梁の間に介在し、かつ上記コンクリート壁の面に対して所定の距離を隔てて対向して配設された繊維含有水硬性組成物からなるパネルと、上記コンクリート壁と上記パネルの間に少なくとも部分的に介在するグラウト材からなる接合部と、上記コンクリート壁と上記接合部とに亘って埋設されたアンカー部材と、上記パネルと上記接合部とに亘って埋設されたアンカー部材、を含むことを特徴とするコンクリート構造体の補強構造。
[2] 上記コンクリート梁と上記接合部とに亘って埋設されたアンカー部材を含む上記[1]のコンクリート構造体の補強構造。
[3] 上記パネルが、上記コンクリート壁に対向する固着用の面を有する平板部と、該平板部の上端にて折曲して形成された、上側の上記コンクリート梁の下面に対して所定の距離を隔てて対向する固着用の面を有する上側の水平リブ部と、該平板部の下端にて折曲して形成された、下側の上記コンクリート梁の上面に対して所定の距離を隔てて対向する固着用の面を有する下側の水平リブ部を備えている上記[1]又は[2]のコンクリート構造体の補強構造。
[4] 上記パネルが、上記上側の水平リブ部の縁にて上方に折曲して形成された上側の鉛直リブ部と、上記下側の水平リブ部の縁にて下方に折曲して形成された下側の鉛直リブ部を備えている上記[3]のコンクリート構造体の補強構造。
[5] 上記パネルが、上側の上記コンクリート梁の下面と、下側の上記コンクリート梁の上面の間の空間内に収容された状態に配設されている上記[1]〜[4]のいずれかのコンクリート構造体の補強構造。
[6] 上記パネルを、複数の階を有するコンクリート建築物に対して鉛直方向に複数配設してなる上記[1]〜[5]のいずれかのコンクリート構造体の補強構造。
[7] 上下一対のコンクリート梁と、該一対のコンクリート梁の間に介在する、該コンクリート梁よりも小さな厚みを有するコンクリート壁とからなる既設のコンクリート構造体の補強方法であって、(a)上記コンクリート壁の面のうち、上側の上記コンクリート梁との境界線の少なくとも一部と、それに対向する下側の上記コンクリート梁との境界線の少なくとも一部とを、輪郭線として含む領域を、補強対象面として定める補強面決定工程と、(b)上記コンクリート壁に対して、その補強対象面から適宜の長さの突出部分が形成されるようにアンカー部材を挿着するアンカー部材挿着工程と、(c)上記補強対象面の形状に対応する固着用の面を有し、かつ、該固着用の面に適宜の長さの突出部分が形成されるようにアンカー部材を挿着してなる、繊維含有水硬性組成物からなるパネルを準備するパネル準備工程と、(d)上記補強対象面に対して、所定の距離を隔てて上記固着用の面を対向させて、上記パネルを配設するパネル配設工程と、(e)上記補強対象面と上記パネルの間の少なくとも上記アンカー部材を含む空間領域内に、グラウト材を充填して、コンクリート構造体の補強構造を完成させるグラウト材充填工程、を含むことを特徴とするコンクリート構造体の補強方法。
本発明のコンクリート建築物の補強構造および補強方法によれば、既存のコンクリート壁の面に対して適宜定められる補強対象面にアンカー部材を打ち込んだ後、該補強対象面と繊維含有水硬性組成物からなるパネルの間にグラウト材を充填するだけで補強構造が完成するので、短時間で容易に施工することができる。
また、施工後には、繊維含有水硬性組成物からなるパネルのみが外方から見えるので、美観性に優れている。
また、断続的に分布する補強対象面に対しても、繊維含有水硬性組成物からなるパネルの大きさを単位として断続的に施工することができるので、集合住宅、商業ビル、総合病院等に対する耐震補強工事に広く適用することができる。
また、上下一対のコンクリート梁と、その間に介在するコンクリート壁とに亘って補強構造を形成しているので、補強領域が小さくても補強効果が大きく、比較的少量の部材および材料によって、目的とする補強を実現することができる。
さらに、繊維含有水硬性組成物からなるパネルを、複数の階を有するコンクリート建築物に対して鉛直方向に複数配設して、補強構造を構築するようにすれば、繊維含有水硬性組成物からなるパネルを各階に1枚ずつ配設するだけで大きな補強効果を得ることができる。ただし、コンクリート建築物の幅が大きい場合には、各階に2枚以上配設することもある。
以下、本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明のコンクリート構造体の補強構造の一例を示す正面図、図2は、図1中のA−A線で切断した状態を示す水平断面図、図3は、図1中のB−B線で切断した状態を示す鉛直断面図、図4は、図2に示すパネルの変形例を示す図、図5は、図2に示すパネルの更なる変形例を示す図、図6は、本発明のコンクリート構造体の補強構造の他の例を示す正面図、図7は、本発明のコンクリート構造体の補強方法の一例を示すフロー図、図8は、5階建てのコンクリート建築物における補強領域の一例を示す正面図である。
なお、図中、同一の名称を有する各部は、原則として同一の符号を付してある。
図1〜図3中、本発明のコンクリート構造体の補強構造1は、上下一対のコンクリート梁2,3と、一対のコンクリート梁2,3の間に介在する、コンクリート梁2,3よりも小さな厚みを有するコンクリート壁4とからなる既設のコンクリート構造体を補強するためのものである。本発明の補強構造1は、コンクリート柱20(図6参照)を補強対象物として含めることもある。
なお、図3中、コンクリート梁2,3の各々の上部には、水平方向に床スラブ5が固着されている。図3中、コンクリート梁2,3、コンクリート壁4および床スラブ5の各部の境界には、点線を付してある。
コンクリート梁2,3、コンクリート壁4およびコンクリート柱20は、少なくともコンクリートを含むものであればよく、例えば、鉄筋コンクリート(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)等によって構成することができる。
本発明のコンクリート構造体の補強構造1は、繊維含有水硬性組成物からなるパネル6と、グラウト材7からなる接合部と、アンカー部材8と、アンカー部材9を含む。
パネル6は、一対のコンクリート梁2,3の間に介在し、かつコンクリート壁4の面に対して所定の距離を隔てて対向して配設された繊維含有水硬性組成物からなるパネルである。
パネル6は、図1〜図3に示すように、所定の厚みを有する矩形の平板部6aと、平板部6aの上端で折曲して形成された、コンクリート梁2の下面に対して所定の距離を隔てて対向する固着用の面を有する水平リブ部6b(図3参照)と、水平リブ部6bの縁にて上方に折曲して形成された鉛直リブ部6cと、平板部6aの下端にて折曲して形成された、コンクリート梁3の上面に対して所定の距離を隔てて対向する固着用の面を有する水平リブ部6dと、水平リブ部6dの縁にて下方に折曲して形成された鉛直リブ部6eと、平板部6aの左右の縁に形成された補強用リブ部6f,6f(図1、図2参照)を備えている。
なお、パネル6の幅が大きい場合には、補強用リブ部6f,6fの中間にさらに補強用リブ部6fを1つ以上追加してもよい。
パネルとしては、他の種々の形態を有するパネルを用いることができる。
例えば、図4に示すパネル11は、パネル6の補強用リブ部6fの代わりに、補強用リブ部11b(補強用リブ部6と同様のもの)および固着側リブ部11cを備えている。固着側リブ部11cを設けることによって、パネル6の強度を向上させ、かつ施工後に外方から見える接合部(グラウト材の硬化体)の領域を小さくし目立たないようにすることができる。
図5に示すパネル12は、平板部12aの固着面側に、固着側リブ部12b(両縁に形成したもの)および固着側リブ部12c(中央に帯状に形成したもの)を形成させたものであり、固着面と反対側の表面にはリブ部を設けていない。この場合、上端のリブ部と下端のリブ部の間の外表面は、平滑な面となる。
本発明において、パネルは、コンクリート柱に隣接して配設してもよい。
図6中、上下一対のコンクリート梁2,3とコンクリート柱20によって囲まれた領域内に、パネル21を配設し、本発明の補強構造を構築している。パネル21は、平板部21aと、柱側リブ部21bと、上下一対の梁側リブ部21c,21cと、補強用リブ部21dを備えている。このうち、柱側リブ部21bおよび梁側リブ部21cの構造は、各々、図3に示す水平リブ部6bと鉛直リブ部6cを組み合わせた部分の構造と同じである。補強用リブ部21dの構造は、図2に示す補強用リブ部6fの構造と同じである。
パネル6には、パネルの強度の向上のために、鉄筋を埋設することもできる。
パネル6の平板部6aの厚さは、好ましくは3〜10cm、より好ましくは4〜8cmである。該厚さが3cm未満では、パネルの強度や耐久性が低下し、補強の効果が低下する。該厚さが10cmを超えると、パネルの質量が大きくなり、またコストも増大するので、好ましくない。
パネル6の幅は、補強の効果、コストの削減、施工作業の効率性等の観点から、好ましくは40〜250cm、より好ましくは60〜200cmである。
次に、本発明で使用するパネル6の材料について、詳しく説明する。
本発明で使用するパネル6は、補強用の繊維を含有するモルタル、コンクリート等の水硬性組成物を硬化させてなるプレキャスト板である。
パネル6の材料である繊維含有水硬性組成物の好適な例としては、セメント、細骨材、補強用繊維、減水剤及び水を必須成分として含み、かつ、必要に応じて配合される成分として、ポゾラン質微粉末、平均粒径が1mm以下の繊維状粒子または薄片状粒子、その他の無機粉末、及び粗骨材を含むものが挙げられる。
セメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。
本発明において、組成物の早期強度を向上させようとする場合には、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、組成物の作業性を向上させようとする場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜5,000cm/g、より好ましくは3,000〜4,500cm/gである。該値が2,500cm/g未満では、水和反応が不活性になって、硬化後の強度発現性が低下する等の欠点があり、5,000cm/gを超えると、セメントの粉砕時に時間がかかり、また、所定の流動性を得るための水量が多くなるため、硬化後の強度発現性が低下する等の欠点がある。
細骨材の例としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂またはこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
本発明においては、組成物の流動性や、硬化後の強度発現性及び耐久性等の観点から、最大粒径が2mm以下の細骨材を使用することが好ましく、最大粒径が1.5mm以下の細骨材を用いることがより好ましい。
細骨材の配合量は、組成物の作業性や、自己収縮や、硬化後の強度発現性及び耐久性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは80〜200質量部である。
補強用繊維の例としては、金属繊維等が挙げられる。
金属繊維の例としては、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、強度に優れ、低コストで入手し易いことから、好ましく用いられる。
金属繊維の寸法は、組成物中における金属繊維の材料分離の防止や、硬化後の曲げ強度の向上等の観点から、直径が0.01〜1.0mm、長さが2〜30mmであることが好ましく、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mmであることがより好ましい。
金属繊維のアスペクト比(繊維の長さ/繊維の直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150である。
金属繊維の形状は、直線状よりも、何らかの物理的付着力を付与する形状(例えば、螺旋状や波形)が好ましい。螺旋状等の形状にすれば、金属繊維とマトリックスとが引き抜けながら応力を担保するため、曲げ強度が向上する。
金属繊維の好適な例としては、例えば、直径が0.5mm以下、引張強度が1〜3.5GPaの鋼繊維からなり、かつ、120MPaの圧縮強度を有するセメント系硬化体のマトリックスに対する界面付着強度(付着面の単位面積当たりの最大引張力)が3MPa以上であるものが挙げられる。本例において、金属繊維は、波形や螺旋形の形状に加工することができる。また、本例の金属繊維の周面上に、マトリックスに対する運動(長手方向の滑り)に抵抗するための溝または突起を付けることもできる。また、本例の金属繊維は、鋼繊維の表面に、鋼繊維のヤング係数よりも小さなヤング係数を有する金属層(例えば、亜鉛、錫、銅、アルミニウム等から選ばれる1種類以上からなるもの)を設けたものとしてもよい。
金属繊維の配合量は、組成物中の体積百分率で、好ましくは0.5〜4%、より好ましくは1〜3%である。該配合量が0.5%未満では、金属繊維による曲げ強度等の向上の効果を十分に得ることができない。該配合量が4%を超えると、流動性を確保するために単位水量が増大するうえ、配合量を増やしても金属繊維による補強効果が向上しないため、経済的でなく、さらに、組成物中でいわゆるファイバーボールを生じ易くなるので、好ましくない。
減水剤の例としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。中でも、減水効果の大きな高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することが好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することがより好ましい。
減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して固形分換算で、好ましくは0.1〜4.0質量部、より好ましくは0.1〜1.0質量部である。該配合量が0.1質量部未満では、混練が困難になるとともに、組成物の作業性が極端に低下する等の欠点がある。該配合量が4.0質量部を超えると、材料分離や著しい凝結遅延が生じ、また、硬化後の強度発現性が低下することもある。
なお、減水剤は、液状と粉末状のいずれも使用することができる。
水量は、セメント100質量部に対して、好ましくは10〜35質量部、より好ましくは12〜30質量部である。該量が10質量部未満では、混練が困難になるとともに、組成物の作業性が極端に低下する等の欠点がある。該量が35質量部を超えると、硬化後の強度発現性が低下する。
ポゾラン質微粉末の例としては、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゲル、沈降シリカ等が挙げられる。
一般に、シリカフュームやシリカダストは、そのBET比表面積が5〜25m/gであり、粉砕等をする必要がないので、好ましく用いられる。
ポゾラン質微粉末のBET比表面積は、好ましくは5〜25m/g、より好ましくは5〜15m/gである。該値が5m/g未満では、硬化後の強度発現性が低下する等の欠点があり、該値が25m/gを超えると、所定の流動性を得るための水量が多くなるため、硬化後の強度発現性が低下する等の欠点がある。
ポゾラン質微粉末の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは3〜50質量部である。該配合量が3質量部未満では、硬化後の強度発現性が低下する等の欠点がある。該配合量が50質量部を超えると、コンクリートの作業性の低下や、自己収縮の増大や、硬化後の強度発現性の低下等の欠点がある。
平均粒度が1mm以下の繊維状粒子または薄片状粒子は、組成物の硬化後の靭性を高める観点から配合される。
ここで、粒子の粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に繊維状粒子ではその長さ)である。
繊維状粒子の例としては、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。
薄片状粒子の例としては、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
繊維状粒子または薄片状粒子の配合量(これらの粒子を併用する場合はその合計量)は、組成物の作業性や、硬化後の強度発現性、耐久性及び靭性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは0〜35質量部、より好ましくは1〜25質量部である。
なお、繊維状粒子としては、硬化後の靭性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いることが好ましい。
その他の無機粉末(具体的には、セメントと、ポゾラン質微粉末と、平均粒度が1mm以下の繊維状粒子または薄片状粒子のいずれにも属さない無機粉末)の例としては、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。中でも、スラグ、石灰石粉末及び石英粉末は、コストや硬化後の品質安定性の観点から好ましく用いられる。
該無機粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜30,000cm/g、より好ましくは4,500〜20,000cm/gである。該値が2,500cm/g未満では、組成物の作業性の低下や、硬化後の強度発現性の低下等の欠点がある。該値が30,000cm/gを超えると、粉砕に手間がかかるため材料の入手が難しくなったり、組成物の作業性が低下する等の欠点がある。
該無機粉末の配合量は、組成物の作業性や、自己収縮や、硬化後の強度発現性及び耐久性の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは0〜55質量部、より好ましくは10〜50質量部である。該配合量が55質量部を超えると、硬化後の強度発現性が低下する等の欠点がある。
本発明においては、その他の無機粉末として、ブレーン比表面積が異なる2種の無機粉末A(ブレーン比表面積が大きい粉末)および無機粉末B(ブレーン比表面積が小さい粉末)を併用することができる。
この場合、無機粉末Aと無機粉末Bは、同じ種類の粉末(例えば、石灰石粉末)を使用してもよいし、異なる種類の粉末(例えば、石灰石粉末及び石英粉末)を使用してもよい。
無機粉末Aのブレーン比表面積は、好ましくは5,000〜30,000cm/g、より好ましくは6,000〜20,000cm/gである。該値が5,000cm/g未満では、セメントや無機粉末Bとのブレーン比表面積の差が小さくなり、1種の無機粉末のみを用いる場合と比べて、組成物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性を向上させる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粉末を用いているために、材料の準備に手間がかかるので、好ましくない。該値が30,000cm/gを超えると、粉砕に手間がかかるため、材料が入手し難くなったり、組成物の作業性が低下する等の欠点がある。
無機粉末Bのブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜4,500cm/gである。該値が2,500cm/g未満では、組成物の作業性の低下や、硬化後の強度発現性の低下等の欠点がある。該値が4,500cm/gを超えると、ブレーン比表面積の数値が無機粉末Aに近づくため、1種の無機粉末のみを用いる場合と比べて、組成物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性を向上させる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粉末を用いているために、材料の準備に手間がかかるので、好ましくない。
セメントと無機粒子Bとのブレーン比表面積の差は、好ましくは100cm/g以上、より好ましくは200cm/g以上である。該値が好ましい数値範囲内であると、組成物を構成する粒子の充填性が向上し、組成物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性を向上させることができる。
無機粉末Aの配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは3〜50質量部、より好ましくは5〜45質量部である。無機粉末Bの配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは3〜40質量部、より好ましくは5〜35質量部である。無機粉末A及び無機粉末Bの配合量が前記の好ましい数値範囲外では、1種の無機粉末のみを用いる場合と比べて、組成物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性の向上の効果が小さくなるばかりか、2種の無機粉末を用いているために、材料の準備に手間がかかるので、好ましくない。
なお、無機粉末Aと無機粉末Bの合計量は、セメント100質量部に対して、好ましくは6〜55質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
粗骨材の例としては、川砂利、海砂利、砕石等が挙げられる。
粗骨材の最大粒径は、組成物の作業性や、硬化後の強度発現性及び耐久性等の観点から、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
粗骨材の配合量は、組成物の作業性や、自己収縮や、硬化後の強度発現性及び耐久性の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは0〜30質量部、より好ましくは0〜10質量部である。
パネルの材料である繊維含有水硬性組成物の硬化体の圧縮強度は、好ましくは100N/mm以上、より好ましくは120N/mm以上である。該値が100N/mm未満では、強度を確保するためにパネルの厚さが大きくなり、施工後に建築物の基礎を補強することが必要になるなどの問題が生じうるので、好ましくない。
パネルの材料である繊維含有水硬性組成物の硬化体の曲げ強度は、好ましくは15N/mm以上、より好ましくは20N/mm以上である。該値が15N/mm未満では、強度を確保するためにパネルの厚さが大きくなり、施工後に建築物の基礎を補強することが必要になるほか、補強用鉄筋が多数必要となり、施工が煩雑になるなどの問題が生じうるので、好ましくない。
本発明で使用するパネル6の製造方法について説明する。
本発明で使用するパネル6は、上記材料を混練してなる繊維含有水硬性組成物を所定の型枠に投入して成形し、硬化させることによって得ることができる。
繊維含有水硬性組成物の混練方法は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)水、減水剤以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材、水及び減水剤を、ミキサに投入し、混練する方法、(2)粉末状の減水剤を用意し、水以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材及び水をミキサに投入し、混練する方法、(3)各材料を各々個別にミキサに投入し、混練する方法等を採用することができる。
混練に用いるミキサは、通常のコンクリートの混練に用いられるどのタイプのものでもよく、例えば、揺動型ミキサ、パンタイプミキサ、二軸練りミキサ等が用いられる。
繊維含有水硬性組成物の成形方法は、特に限定されるものではなく、例えば、振動成形等を行えばよい。
繊維含有水硬性組成物の養生方法は、特に限定されるものではなく、例えば、気中養生、湿空養生、水中養生、加熱促進養生(蒸気養生、オートクレープ養生)等の慣用手段またはこれらを併用したものを行えばよい。
グラウト材7からなる接合部は、コンクリート壁4とパネル6の間に充填されたグラウト材7が硬化して形成されている。
グラウト材7の好適な例としては、無収縮モルタルが挙げられる。無収縮モルタルの市販品の例としては、「プレユーロックス」(商品名;太平洋マテリアル社製)が挙げられる。
接合部の厚さは、好ましくは5〜15cm、より好ましくは5〜10cmである。なお、本明細書において、接合部の厚さとは、コンクリート壁4と、パネル6(具体的には、パネル6の平板部6aの固着用の面)の間の距離を意味する。
アンカー部材8は、コンクリート壁4と接合部7とに亘って埋設されている。また、アンカー部材8は、コンクリート梁2,3の各々と、接合部7とに亘っても埋設されている。
アンカー部材8としては、例えば、汎用のコンクリート用アンカーが用いられる。コンクリート用アンカーの一例としては、挿着対象物であるコンクリート壁等に穿設した孔に打ち込んで埋設するための、内周面が螺刻された円筒部材と、該円筒部材と螺合するボルト部材とを組み合わせてなるものが挙げられる。
ここで、円筒部材は、ボルト部材を螺入するにつれて、最深地点の端部が拡開し、挿着対象物に対する固着力を強めるようになっている。
また、ボルト部材は、円筒部材に螺入するための螺刻されたボルト部分と、該ボルト部分の端部と反対側の端部に形成されている頭部を有する。頭部は、ボルト部分の径よりも大きな径を有する部分であり、コンクリート柱等の建築材の表面から所定の長さだけ突き出た地点に位置し、グラウト材7からなる接合部が形成されたときにアンカーの役割を果たすものである。
アンカー部材8は、アンカー部材の頭部同士を結ぶ板体によって相互に結合させてもよい。この場合、アンカーの作用を強めることができる。
アンカー部材9は、パネル6と接合部7とに亘って埋設されている。
アンカー部材9としては、例えば、大径の頭部を有する鉄筋(例えば、径が10mm、長さが200mm程度のもの)や、コンクリート用アンカーのボルト部材(例えば、アンカー部材8を構成するボルト部材と同じもの)等が挙げられる。アンカー部材は、パネル6の製造時に、パネル6の固着用の面から所定の高さの地点に頭部が位置するように、パネル6に対して一体的に取り付けられる。
アンカー部材9は、アンカー部材の頭部同士を結ぶ板体によって相互に結合させてもよい。この場合、アンカーの作用を強めることができる。
次に、図7を参照しつつ、本発明のコンクリート構造体の補強方法の好適な一例について説明する。
図7中、まず、上下一対のコンクリート梁2,3(図1参照)の間のコンクリート壁4上における適宜の幅を有する表面領域を、補強対象面として定める。
次に、コンクリート壁4に対して、補強対象面に適宜の長さの突出部分が形成されるように、アンカー部材8を挿着する(図7中の(A))。
一方、補強対象面の形状に対応する固着用の面を有し、かつ、該固着用の面に適宜の長さの突出部分が形成されるようにアンカー部材9を挿着してなる、繊維含有水硬性組成物からなるパネル6を準備する。このパネル6には、グラウト材を注入するための注入口31が設けられている。そして、補強対象面に対して、適宜の距離を隔てて、固着用の面を対向させてパネル6を配設する(図7中の(B))。
この際、補強対象面とパネル6の間の空間と外部空間との連通口32を塞ぐために、連通口32に対して外方から断面矩形の棒状部材30を当接させる。なお、連通口32を設けることによって、補強対象面とパネル6の周縁の間にグラウト材7が充填され、補強対象面に対して一体的にパネル6を固着することができる。すなわち、補強対象面にパネル6を当接させた場合には、補強対象面とパネル6の縁の間に、グラウト材7が充填されない隙間が生じることがある。ただし、グラウト材7からなる接合部を目立たなくするために、図5に示すように固着側リブ部12bを設けることもある。
次いで、補強対象面とパネル6の間の空間領域内に、注入口31を通じてグラウト材7を充填する(図7中の(C))。なお、充填作業の最後に、注入口31をグラウト材7で塞ぎ、パネル6の表面を平滑にする。グラウト材7が硬化して接合部が形成された後、棒状部材30を取り外せば、本発明の補強構造1が完成する(図7中の(D))。
なお、グラウト材7は、アンカー部材8,9を含む部分的な空間領域内にのみ充填してもよい。この場合、グラウト材7の使用量が減少し、材料コストの削減を図ることができる。
本発明の補強構造の応用例としては、複数の階を有するコンクリート建築物に対して、パネル6を鉛直方向に複数配設し、最上階から最下階に亘る帯状の補強構造を構築させたものが挙げられる。図8は、地盤40上の5階建てのコンクリート建築物41を構成するコンクリート梁42およびコンクリート柱43の格子状の集合体を模式的に示したものである。コンクリート壁4は、コンクリート梁42とコンクリート柱43に囲まれた、窓等の開口部分を除いた領域内に形成されている。1階から5階までの中央のコンクリート壁4に沿って、5枚のパネル6を直列に帯状に配設し、これらのパネル6を含む本発明の補強構造を、図7中に斜線部として示す領域に形成するだけで、十分な補強効果を得ることができる。
本発明で使用するパネル6の材料の実験例を説明する。以下の調製例1、2で調製された繊維含有水硬性組成物、および上述のアンカー部材9を用いて、パネル6を作製した後、上述の方法に従って、パネル6とグラウト材7とアンカー部材8を用いて施工することによって、本発明の補強構造を構築することができる。
[1.使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製;ブレーン比表面積:3,200cm/g)
(2)ポゾラン質微粉末;シリカフューム(平均粒径:0.25μm、BET比表面積:11m/g)
(3)石英粉末A(ブレーン比表面積:7,500cm/g)
(4)石英粉末B(ブレーン比表面積:3,500cm/g)
(5)細骨材;珪砂(最大粒径0.6mm)
(6)繊維状粒子;ウォラストナイト(平均長さ:0.3mm、長さ/直径の比:4)
(7)減水剤;ポリカルボン酸系高性能減水剤
(8)水;水道水
(9)金属繊維;鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
[金属繊維含有水硬性組成物の調製例1]
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末Aを32質量部、細骨材120質量部、ウォラストナイト24質量部、鋼繊維2%(組成物中の体積割合)、高性能減水剤1.0質量部(固形分換算)、水22質量部を二軸ミキサに投入し混練して、組成物を調製した。この組成物の0打フロー値は、250mmであった。
調製した組成物を鋼製の型枠(φ50×100mm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生した。得られた硬化体の圧縮強度(3本の試験体の平均値)は、230N/mmであった。
調製した組成物を鋼製の型枠(4×4×16cm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生した。得られた硬化体の曲げ強度(3本の試験体の平均値)は、45N/mmであった。
[繊維含有水硬性組成物の調製例2]
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末Aを23質量部、石英粉末Bを9質量部、細骨材120質量部、ウォラストナイト24質量部、鋼繊維2%(組成物中の体積割合)、高性能減水剤1.0質量部(固形分換算)、水22質量部を二軸ミキサに投入し混練して、組成物を調製した。この組成物の0打フロー値は、270mmであった。
調製した組成物を鋼製の型枠(φ50×100mm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生した。得られた硬化体の圧縮強度(3本の試験体の平均値)は、235N/mmであった。
調製した組成物を鋼製の型枠(4×4×16cm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生した。得られた硬化体の曲げ強度(3本の試験体の平均値)は、45N/mmであった。
本発明のコンクリート構造体の補強構造の一例を示す正面図である。 図1中のA−A線で切断した状態を示す水平断面図である。 図1中のB−B線で切断した状態を示す鉛直断面図である。 図2に示すパネルの変形例を示す図である。 図2に示すパネルの更なる変形例を示す図である。 本発明のコンクリート構造体の補強構造の他の例を示す正面図である。 本発明のコンクリート構造体の補強方法の一例を示すフロー図である。 5階建てのコンクリート建築物における補強領域の一例を示す正面図である。
符号の説明
1 本発明のコンクリート建築物の補強構造
2,3 コンクリート梁
4 コンクリート壁
5 床スラブ
6 繊維含有水硬性組成物からなるパネル
6a 平板部
6b,6d 水平リブ部
6c,6e 鉛直リブ部
6f 補強用リブ部
7 グラウト材(接合部)
8,9 アンカー部材
11 繊維含有水硬性組成物からなるパネル
11a 平板部
11b 補強用リブ部
11c 固着側リブ部
12 繊維含有水硬性組成物からなるパネル
12a 平板部
12b,12c 固着側リブ部
21 繊維含有水硬性組成物からなるパネル
21a 平板部
21b 柱側リブ部
21c 梁側リブ部
21d 補強用リブ部
30 棒状部材
31 注入口
32 連通口
40 地盤
41 コンクリート建築物
42 コンクリート梁
43 コンクリート柱

Claims (7)

  1. 上下一対のコンクリート梁と、該一対のコンクリート梁の間に介在する、該コンクリート梁よりも小さな厚みを有するコンクリート壁とからなる既設のコンクリート構造体の補強構造であって、
    上記一対のコンクリート梁の間に介在し、かつ上記コンクリート壁の面に対して所定の距離を隔てて対向して配設された繊維含有水硬性組成物からなるパネルと、
    上記コンクリート壁と上記パネルの間に少なくとも部分的に介在するグラウト材からなる接合部と、
    上記コンクリート壁と上記接合部とに亘って埋設されたアンカー部材と、
    上記パネルと上記接合部とに亘って埋設されたアンカー部材、
    を含むことを特徴とするコンクリート構造体の補強構造。
  2. 上記コンクリート梁と上記接合部とに亘って埋設されたアンカー部材を含む請求項1に記載のコンクリート構造体の補強構造。
  3. 上記パネルが、上記コンクリート壁に対向する固着用の面を有する平板部と、該平板部の上端にて折曲して形成された、上側の上記コンクリート梁の下面に対して所定の距離を隔てて対向する固着用の面を有する上側の水平リブ部と、該平板部の下端にて折曲して形成された、下側の上記コンクリート梁の上面に対して所定の距離を隔てて対向する固着用の面を有する下側の水平リブ部を備えている請求項1又は2に記載のコンクリート構造体の補強構造。
  4. 上記パネルが、上記上側の水平リブ部の縁にて上方に折曲して形成された上側の鉛直リブ部と、上記下側の水平リブ部の縁にて下方に折曲して形成された下側の鉛直リブ部を備えている請求項3に記載のコンクリート構造体の補強構造。
  5. 上記パネルが、上側の上記コンクリート梁の下面と、下側の上記コンクリート梁の上面の間の空間内に収容された状態に配設されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリート構造体の補強構造。
  6. 上記パネルを、複数の階を有するコンクリート建築物に対して鉛直方向に複数配設してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンクリート構造体の補強構造。
  7. 上下一対のコンクリート梁と、該一対のコンクリート梁の間に介在する、該コンクリート梁よりも小さな厚みを有するコンクリート壁とからなる既設のコンクリート構造体の補強方法であって、
    (a) 上記コンクリート壁の面のうち、上側の上記コンクリート梁との境界線の少なくとも一部と、それに対向する下側の上記コンクリート梁との境界線の少なくとも一部とを、輪郭線として含む領域を、補強対象面として定める補強面決定工程と、
    (b) 上記コンクリート壁に対して、その補強対象面から適宜の長さの突出部分が形成されるようにアンカー部材を挿着するアンカー部材挿着工程と、
    (c) 上記補強対象面の形状に対応する固着用の面を有し、かつ、該固着用の面に適宜の長さの突出部分が形成されるようにアンカー部材を挿着してなる、繊維含有水硬性組成物からなるパネルを準備するパネル準備工程と、
    (d) 上記補強対象面に対して、所定の距離を隔てて上記固着用の面を対向させて、上記パネルを配設するパネル配設工程と、
    (e) 上記補強対象面と上記パネルの間の少なくとも上記アンカー部材を含む空間領域内に、グラウト材を充填して、コンクリート構造体の補強構造を完成させるグラウト材充填工程、
    を含むことを特徴とするコンクリート構造体の補強方法。
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