JP4347469B2 - ワンマン車両の運賃箱仕切構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、路面電車を始めとするワンマン車両の運賃箱仕切構造に係り、詳しくは、ワンマン車両をワンマンと非ワンマンとに切り換えて運行する際に、運転手がワンマン運行時に運賃の徴収に用いる運賃箱の使用または不使用を、乗客が明確に区別できるようにしたワンマン車両の運賃箱仕切構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のワンマン車両として、例えば図11及び図12に示すものがある。このワンマン車両1は、運転席2の一側部近傍に、運賃箱3を支軸4にて回動可能に支持しており、日中などの比較的乗客数が少ないワンマンでの運行では、運賃箱3を乗客室5に対峙する図11の実線の使用位置へ回動して、運転手自身が運賃の徴収を取り扱い、また乗客数が多い朝晩などで車掌が同乗する非ワンマンでの運行では、運賃箱3を図11の想像線に示す運転席2の側部の不使用位置に退避させて、車掌が運賃の徴収を取り扱うようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成にあっては、同乗の車掌が運賃の徴収を取り扱う非ワンマン時に、運賃箱を運転席近傍の不使用位置へ退避させて、この運賃箱では運賃の支払いを取り扱わないということを示すものの、運賃箱が乗客の乗車位置によって見え隠れする中途半端な退避位置であるために、乗客が運賃をどこへ支払ったらよいのか迷うことがあった。また、運転手が運賃の徴収を直接取り扱うワンマン走行では、運賃箱が運転席から遠く離れて位置するために、運転手がその都度運転席を立って運賃箱の前に移動する必要があるため、乗客との対応に時間がかかり、その結果、運行時間が延びるという不具合がある。
【0004】
さらに、重量物である運賃箱を、ワンマンと非ワンマンの運行を切り換える度に使用位置と退避位置とへ移動させるという操作上の煩わしさがあり、しかも運賃箱を移動するためのガイドレールを床面に敷設するため、床面に凹凸を生じて歩きにくくなったり、清掃がしにくくなるという不具合を生じる。
【0005】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、ワンマン運行時と非ワンマン運行時における運賃箱の取り扱いを、乗客が混同することのないよう明確に認識できるようにし、また運賃箱の使用と不使用の切り換えを容易に行うことのできるワンマン車両の運賃箱仕切構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のワンマン車両の運賃箱仕切構造の第1の構成は、上述の目的に従って、運転席の近傍にワンマン運行時に用いる運賃箱を固設し、該運転席と乗客室とを、前記運賃箱の乗客室側面を開閉可能に覆う仕切扉と、該仕切扉上方の運賃投入スペースを開閉可能に覆う、前記仕切扉とは別体の仕切窓とにて仕切り、前記仕切扉の一側部を車体にヒンジにて取り付けるとともに、前記運賃投入スペースの仕切窓開き側に、上ガイドレールと下ガイドレールとを平行に設け、該上ガイドレールを運賃投入スペースの上方へ延設して、該上ガイドレールに前記仕切窓の上部2箇所をスライド可能に吊持し、前記下ガイドレールに前記仕切窓の下部一側部をスライド可能に支持せしめたことを特徴としている。この構成によれば、前記仕切扉は開き戸のような回動式で、前記仕切窓は引き戸のようなスライド式である。
【0007】
また、第2の構成は、運転席の近傍にワンマン運行時に用いる運賃箱を固設し、該運転席と乗客室とを、前記運賃箱の乗客室側面を開閉可能に覆う仕切扉と、該仕切扉上方の運賃投入スペースを開閉可能に覆う仕切窓とにて仕切り、前記仕切扉を前記仕切窓に一体に形成し、前記運賃投入スペースの仕切窓開き側に、上ガイドレールと下ガイドレールとを平行に設け、該上ガイドレールを運賃投入スペースの上方へ延設して、該上ガイドレールに前記仕切窓の上部2箇所をスライド可能に吊持し、前記下ガイドレールに前記仕切窓の下部一側部をスライド可能に支持せしめたことを特徴ととしている。この構成によれば、前記仕切扉及び前記仕切窓は引き戸のようなスライド式である。
【0008】
さらに、第3の構成は、運転席の近傍にワンマン運行時に用いる運賃箱を固設し、該運転席と乗客室とを、前記運賃箱の乗客室側面を開閉可能に覆う仕切扉と、該仕切扉上方の運賃投入スペースを開閉可能に覆う仕切窓とにて仕切り、前記仕切扉の一側部を車体にヒンジにて取り付けるとともに、前記仕切窓を前記仕切扉に一体に形成したことを特徴としている。この構成によれば、前記仕切扉及び前記仕切窓は開き戸のような回動式である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一形態例を、図1〜図10に基づいて説明する。図中、図1はワンマン車両の乗務員室と乗客室の一部を示す平面図、図2は乗務員室と乗客室との仕切を乗務員室側から見た側面図、図3は乗務員室と乗客室との仕切を乗客室側から見た側面図、図4は仕切扉の開き状態を乗客室側から見た側面図、図5は図4のV−V断面図、図6は仕切窓の閉じ状態を運転室側から見た側面図、図7は図6のVII−VII断面図、図8は仕切窓の開き状態を運転室側から見た側面図、図9は図8のIX−IX断面図、図10は仕切扉と仕切窓の双方を開いた状態を乗客室側から見た側面図である。
【0011】
ワンマン車両10は、車体11の前部に運転室12と車掌室13とからなる乗務員室14が、これに続く乗客室15との間を仕切壁16,17や乗務員室扉18等によって仕切られており、乗客室15の前部両側には、乗客の乗降に用いるスライド開閉式の乗降口19,19が配設されている。運転室12の前後部には、運転操作盤20や運転席21が配設され、該運転席21の近傍位置である右斜め後方には、ワンマン運行時に運転手が取り扱う運賃箱22が適宜な固定手段を用いて固設されている。
【0012】
運賃箱22には、上面に紙幣・硬貨両替口22aや金額表示部22b等が設けられ、乗客室側面の上側に、両替金返却口22cや両替金受け取り口22d等が開口して設けられており、運賃箱22の乗客室側と乗務員室扉側の2面とが、乗務員室扉18の車体左側で運転室12と乗客室15とを隔てる仕切壁16にて矩折りに囲まれている。
【0013】
仕切壁16の乗務員室扉側には、運賃箱22の乗客室側面上部に対向する部分と、その上方部分とが縦方向に連続して開口しており、運賃箱22の乗客室側面上部に対向して開口する矩形の下部スペース23aが仕切扉24にて開閉可能に覆われると共に、その上方で矩形に開口する運賃投入用の上部スペース23bが、仕切窓25にて開閉可能に覆われている。
【0014】
仕切扉24には不透明な矩形の扉体が用いられ、該扉体の上部に回動用のグリップ26が固設されており、一側部を下部スペース23aの車体左側縁にヒンジにて取り付けて、該下部スペース23a内から車体外側に隣接する仕切壁16の乗客室側面までの凡そ190度の範囲を回動できるようにしている。
【0015】
仕切扉24は、下部スペース23a内の閉じ位置と、仕切壁16の乗客室側面車体左側部寄りの開き位置とで固定できるようになっており、非ワンマンでの運行では、仕切扉24を下部スペース23a内の閉じ位置へ回動することにより、仕切扉24が運賃箱22の乗客室側面上側を覆って、運賃箱22の両替金返却口22cや両替金受け取り口22d等が、乗客室15から見えないように運転室12内に隠され(図1,図5の実線、図2〜図4)、またワンマンでの運行では、仕切扉24を運転室用仕切壁16の乗客室側面車体左側部寄りの開き位置へ反転させることにより、下部スペース23aが全開して、運転室12内の運賃箱22の両替金返却口22cや両替金受け取り口22d等が、乗客室15側へ露出する(図1,図5の想像線、図10)。
【0016】
上部スペース23bの仕切窓開き側である運転席後方の仕切壁16には、上述の仕切窓25のスライドを案内する上ガイドレール27と下ガイドレール28とが、運転席側面に車体幅方向へ平行に設けられている。このうち、上ガイドレール27は、仕切壁16の車体外側端近傍から上部スペース23bの上方を通って乗務員室扉18の近傍位置へ達する長さで形成され、また下ガイドレール28は、仕切壁16の車体外側端近傍から下部スペース23aの近傍位置までの長さに形成されており、上ガイドレール27には、仕切窓25の上部両端に固着したブラケット29,29がスライド可能に吊持され、また下ガイドレール28には、仕切窓25の下部車体左側端に固着したブラケット30がスライド可能に支持されている。
【0017】
上述のように取り付けされた仕切窓25は、上部スペース23bを塞ぐ閉じ位置と、仕切壁16の運転室側面車体左側部寄りの開き位置のそれぞれで、運転室12側から固定できるようになっており、非ワンマンでの運行では、仕切窓25を上部スペース23b内の閉じ位置へスライドすることにより、運賃投入用スペースとしての上部スペース23bが塞がれ(図1,5の実線、図2〜図4、図6,図7)、またワンマンでの運行では、仕切窓25を仕切壁16の乗客室側面車体左側部寄りの開き位置へスライドさせることにより、上部スペース23bが運賃投入スペースとして全開する(図5の想像線、図8〜図10)。
【0018】
本形態例は、以上のように構成されており、車掌が同乗する非ワンマンでの運行では、仕切扉24と仕切窓25の双方を閉じ位置へ移動することにより、仕切扉24が運賃箱22の乗客室側面を、また仕切窓25が仕切扉上方の運賃投入スペースである上部スペース23bをそれぞれ覆って、運賃箱22と乗客室15との間をこれらが仕切るので、運賃箱22の使用ができない状態が明確となる。
【0019】
また、運転手が運賃の徴収を直接取り扱うワンマンでの運行では、仕切扉24と仕切窓25とを開くことにより、仕切扉24が運賃箱22の乗客室側面から、さらに仕切窓25が仕切扉上方の上部スペース23bからそれぞれ退避し、運賃箱22が乗客室側へ露出して、運賃箱の使用が可能となる。
【0020】
これにより、車両10の乗客は、運賃の徴収が同乗の車掌の取り扱いか運転手が運賃箱22を用いて行うかを、迷うことなく容易に識別できるようになり、乗客へのサービスの向上と乗降時間の短縮とが図れる。
【0021】
また運賃箱22は、運転席21の近傍位置に固定されているため、ワンマン走行での運賃の徴収を、運転手が運転席21に座ったままで簡便に取り扱うことができ、しかも乗客との対応時間を短くできるので、運行時間の短縮が図れる。さらに、重量物である運賃箱22の位置を、ワンマン運行と非ワンマン運行とに切り換える度に移動させる必要がないので、操作上の煩わしさがなくなり、また床面に運賃箱22を移動するガイドレールの凹凸がないので、歩き易く清掃がし易いものとなる。
【0022】
さらに本形態例は、仕切窓25のスライド開閉を上ガイドレール27と下ガイドレール28で案内するにも拘わらず、下ガイドレール28を仕切壁16の下部スペース23aの近傍位置で終える長さに形成して、下ガイドレール28が下部スペース23aに突出しない構造としたから、仕切扉24と仕切窓25を開位置へ移動した際には、下部スペース23aと上部スペース23bとが連続して開放されるので、乗客が運賃を支払う際の利便性がより高まる。
【0023】
尚、本発明の運賃箱は、運転手が運転席に座ったまま運賃の徴収を取り扱える運転席の近傍位置であればよく、上述の形態例で示した運転席の斜め後方位置以外に、例えば運転席の車体内側側部に設けることもできる。また、本形態例では、前記仕切扉の開閉をヒンジ取り付けによる開き戸のような回動式で、前記仕切窓は引き戸のようなスライド式で説明したが、スライド式の仕切窓に仕切扉を一体に形成した場合は、前記仕切扉は仕切窓と共にスライドし、回動式の仕切扉に仕切窓を一体に形成した場合は、前記仕切窓は仕切扉と一体に回動する。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るワンマン車両の運賃箱仕切構造によれば、ワンマンでの運行と非ワンマンでの運行の切り換えに合わせて仕切扉と仕切窓とを開閉することにより、運転席近傍の運賃箱を乗客室側へ露出または運転席側へ隠蔽するので、運賃の徴収が同乗の車掌の取り扱いか運転手が運賃箱を用いて行うかを乗客が明確に識別できるようになり、乗客が運賃の支払いを迷うことがなくるので、乗客へのサービスの向上と乗降時間の短縮とが図れる。
【0025】
さらに運賃箱は、運転席の近傍位置に固定されているので、ワンマン運行時の運転手が運転席に座ったままで簡便に取り扱うことができ、運転手が運賃の徴収の度に運転席を立って運賃箱前へ移動するという従来の煩わしさがなくなるので、運転手の労力を軽減できるばかりか、乗客との対応時間を短くできて、運行時間の短縮が図れる。さらに、重量物である運賃箱の位置を、ワンマン運行と非ワンマン運行とに切り換える度に移動させる必要がないので、操作上の煩わしさがなくなり、しかも床面に運賃箱を移動するガイドレールの凹凸がないので、歩き易く且つ清掃がし易いものとなる。
【0026】
また、運賃投入スペースの延長線上に、上ガイドレールと下ガイドレールとを平行に設け、該上ガイドレールを運賃投入スペースの上方へ延設して、該上ガイドレールに仕切窓の上部2箇所をスライド可能に吊持し、下ガイドレールに仕切窓の下部一側部をスライド可能に支持することにより、仕切扉と仕切窓とを開位置へ移動した運賃箱の使用時には、下ガイドレールが下部スペースに突出せず、運賃を支払うための上下のスペースが連続して開放されるので、乗客の利便性と安全性とに優れ、さらに材料費の削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態例を示すワンマン車両の乗務員室と乗客室の一部を示す平面図
【図2】 本発明の一形態例を示すワンマン車両の乗務員室と乗客室との仕切を乗務員室側から見た側面図
【図3】 本発明の一形態例を示すワンマン車両の乗務員室と乗客室との仕切を乗客室側から見た側面図
【図4】 本発明の一形態例を示すワンマン車両の仕切扉の開き状態を乗客室側から見た側面図
【図5】 本発明の一形態例を示す図4のV−V断面図
【図6】 本発明の一形態例を示すワンマン車両の仕切窓の閉じ状態を運転室側から見た側面図
【図7】 本発明の一形態例を示す図6のVII−VII断面図
【図8】 本発明の一形態例を示すワンマン車両の仕切窓の開き状態を運転室側から見た側面図
【図9】 本発明の一形態例を示す図8のIX−IX断面図
【図10】 本発明の一形態例を示すワンマン車両の仕切扉と仕切窓の双方を開いた状態を乗客室側から見た側面図
【図11】 従来の一形態例を示すワンマン車両の乗務員室と乗客室の一部を示す平面図
【図12】 従来の一形態例を示すワンマン車両の乗務員室を乗客室側から見た側面図
【符号の説明】
10…ワンマン車両
11…車体
12…運転室
13…車掌室
14…運転室12と車掌室13とからなる乗務員室
15…乗客室
16,17…仕切壁
18…乗務員室扉
21…運転席
22…運賃箱
22a…紙幣・硬貨両替口
22b…金額表示部
22c…両替金返却口
22d…両替金受け取り口
23a…仕切壁16に運賃箱22の乗客室側面上部に対向して開口する下部スペース
23b…下部スペース23aの上方に連続して開口する上部スペース(本発明の運賃投入用スペース)
24…仕切扉
25…仕切窓
27…上ガイドレール
28…下ガイドレール
29,30…ブラケット
Claims (3)
- 運転席の近傍にワンマン運行時に用いる運賃箱を固設し、該運転席と乗客室とを、前記運賃箱の乗客室側面を開閉可能に覆う仕切扉と、該仕切扉上方の運賃投入スペースを開閉可能に覆う、前記仕切扉とは別体の仕切窓とにて仕切り、前記仕切扉の一側部を車体にヒンジにて取り付けるとともに、前記運賃投入スペースの仕切窓開き側に、上ガイドレールと下ガイドレールとを平行に設け、該上ガイドレールを運賃投入スペースの上方へ延設して、該上ガイドレールに前記仕切窓の上部2箇所をスライド可能に吊持し、前記下ガイドレールに前記仕切窓の下部一側部をスライド可能に支持せしめたことを特徴とするワンマン車両の運賃箱仕切構造。
- 運転席の近傍にワンマン運行時に用いる運賃箱を固設し、該運転席と乗客室とを、前記運賃箱の乗客室側面を開閉可能に覆う仕切扉と、該仕切扉上方の運賃投入スペースを開閉可能に覆う仕切窓とにて仕切り、前記仕切扉を前記仕切窓に一体に形成し、前記運賃投入スペースの仕切窓開き側に、上ガイドレールと下ガイドレールとを平行に設け、該上ガイドレールを運賃投入スペースの上方へ延設して、該上ガイドレールに前記仕切窓の上部2箇所をスライド可能に吊持し、前記下ガイドレールに前記仕切窓の下部一側部をスライド可能に支持せしめたことを特徴とするワンマン車両の運賃箱仕切構造。
- 運転席の近傍にワンマン運行時に用いる運賃箱を固設し、該運転席と乗客室とを、前記運賃箱の乗客室側面を開閉可能に覆う仕切扉と、該仕切扉上方の運賃投入スペースを開閉可能に覆う仕切窓とにて仕切り、前記仕切扉の一側部を車体にヒンジにて取り付けるとともに、前記仕切窓を前記仕切扉に一体に形成したことを特徴とするワンマン車両の運賃箱仕切構造。
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