JP4344152B2 - ハイポイドギヤドモータのシリーズ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイポイドギヤドモータのシリーズに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動ドアのタイミングベルト、あるいはコンベアの搬送用ベルト等を駆動するために用いるギヤドモータには、一般に、モータのモータ軸と減速機の出力軸とが直交関係にあるいわゆる直交型のギヤドモータが用いられる。それは、この種の自動ドア、あるいはコンベアは、そのタイミングベルトや搬送用ベルトが移動する方向には、スペース上比較的余裕があるため、この方向にモータ軸の方向を一致させ、且つその出力を直交変換することによってタイミングベルトや搬送用ベルトを回転させるためのローラやスプロケットを駆動するようにすると、スペース上合理的な設置ができるためである。
【0003】
モータと、モータ軸と一体的に回転するハイポイドピニオンと、該ハイポイドピニオンとオフセットされた状態で噛み合うハイポイドギヤと、該ハイポイドギヤに設けられた出力軸と、を有する1段形のハイポイドギヤドモータは、この種の直交型ギヤドモータの1つであり、モータの回転軸の直交変換と回転速度の減少とを同時に行なうことができる。
【0004】
ハイポイドギヤドモータは、同様の目的で用いられるウォームギヤドモータと比較してより効率が高く、又ベベルギヤドモータと比較してより低騒音で且つより高い減速比を得ることができる等の面で優れる。
【0005】
例えば特許文献1に、図4に示されるようなハイポイドギヤドモータHD1が開示されている。
【0006】
モータ2のモータ軸4は、軸受6、8によってモータケーシング10に支持されている。モータ軸4の先端にはハイポイドピニオン12が直接歯切りされており、ハイポイドピニオン12は出力軸14に装着されたハイポイドギヤ16と噛合している。この結果、モータ軸4の回転が直交方向に変換され、且つ減速された状態で出力軸14から出力される。
【0007】
減速機18は、減速機ケーシング20中にこのハイポイドピニオン12及びハイポイドギヤ16からなるハイポイドギヤセットS1を収容している。ハイポイドギヤセットS1は、1段でも幅広い減速比を形成することができるため、この基本的な構成だけで多くの用途に適用できる。
【0008】
なお、モータケーシング10と減速機ケーシング20はボルト24により一体化されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−124155号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この公知例を含め、従来提案されているハイポイドギヤドモータは、いずれも単体で存在することを前提としていたため、ユーザのニーズに応じて若干出力の異なるモータ、あるいは若干減速比や容量の異なる減速機を用意しようとした場合に、ハイポイドギヤドモータ全体を設計し直さなければならず、その結果、コストがかかるだけでなく納期も遅延してしまうという問題があった。
【0011】
より具体的に説明すると、上記公知例のように、一般に、ハイポイドギヤドモータにおいては、モータ軸方向長さの短縮及び部品点数の削減のために、ハイポイドピニオンをモータ軸に直接歯切りするようにしている。即ち、ハイポイドピニオンの軸心は、モータ軸の軸心と一致している。ここで、モータの容量を例えばより小さめに変更しようとした場合、ハイポイドピニオンの大きさ(径)が小さくなることに伴ってハイポイドギヤの大きさも小さく設計され、その結果ハイポイドギヤセットのオフセット量も小さくなる。すると、減速機の入力軸と出力軸の軸心の位置関係がずれてしまうことから、結局高コストな減速機のケーシングも別途設計し直さなければならない、というのが従来の設計の実情であった。
【0012】
一方、「モータ容量を小さくする」というのは、一般には、より低騒音にしたいという要求に基づくことが多いが、後述するように、従来の設計手法では、このようにして小型のモータに変更したとしても、なお「低騒音化」という要求に必ずしも十分に応えた効果を得ることができないことが多いという事情もあった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、ハイポイドギヤドモータをメーカーがシリーズとして展開する場合に、該シリーズの構成要素である個々のハイポイドギヤドモータ間において、部材の共用化を促進でき、結果として低コストのハイポイドギヤドモータを短い納期で納めることを可能とし、合わせて、個々のハイポイドギヤドモータが、それぞれに定性的に要求される作用効果を合理的に備えているようなシリーズ構成を提供することをその課題としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モータと、該モータのモータ軸と一体的に回転するハイポイドピニオンと、該ハイポイドピニオンとオフセットされた状態で噛み合うハイポイドギヤと、該ハイポイドギヤに設けられた出力軸と、前記ハイポイドピニオンと前記ハイポイドギヤとからなるハイポイドギヤセットを収容する減速機ケーシングと、を有する1段形のハイポイドギヤドモータのシリーズであって、第1のハイポイドギヤセットを有する第1のハイポイドギヤドモータと、該第1のハイポイドギヤセットと形状は異なるがオフセット量は同一とされた第2のハイポイドギヤセットを有する第2のハイポイドギヤドモータとを当該シリーズの構成要素として少なくとも有し、前記第1のハイポイドギヤドモータと第2のハイポイドギヤドモータとは、減速比が同一とされるとともに、モータ容量の違いに応じてハイポイドピニオンの外径が異なり、さらにハイポイドギヤの外径を異ならせることにより、前記オフセット量が同一とされ、前記第1のハイポイドギヤドモータの減速機ケーシングと前記第2のハイポイドギヤドモータの減速機ケーシングとが同一形状であることにより、上記課題を解決したものである。
【0016】
本発明においては、例えば、モータの容量を変えることによって第1、第2のハイポイドギヤセットのハイポイドピニオンが異なるようになったとしても、ハイポイドギヤ側を調整することによって、第1、第2のハイポイドギヤセット間でそのオフセット量が変わらないように意図的に設計する。これにより、減速機ケーシングは、その入力軸と出力軸との位置関係を共通に維持することができるようになり、両ギヤドモータにおいて共用化できるようになる。
【0017】
本発明において、オフセット量不変の構成を具体的に実現しようとすると、例えばモータ容量を小さく変更してより低騒音化を実現しようとした場合には、ハイポイドピニオンが小さくなっても、これに合わせてハイポイドギヤを小さくせず、敢えて通常ペアとなるハイポイドギヤよりも大きめのハイポイドギヤを組合わせることになる。この結果、噛合い率がより大きくなって、一層低騒音化できる。
【0018】
一方、これを大小の基準を逆にして観察すると、モータ容量を大きく変更してより高出力化を実現しようとした場合には、ハイポイドピニオンが大きくなっても、これに合わせてハイポイドギヤを大きくせず、敢えて通常ペアとなるハイポイドギヤよりも小さめのハイポイドギヤを組合わせることになる。この結果、噛合い率がより小さくなってより高効率の駆動系を形成することができる。
【0019】
これらの定性的傾向は、モータと減速機との組合せを標準的な組合せから変更しようとする意図を、より効果的に実現する方向と一致しており、それぞれの組合せにおいて意図した効果を十分に発揮させることに寄与する。
【0020】
特に、例えば、前記オフセット量が同一とされた第1、第2のハイポイドギヤドモータが、それぞれの前記ハイポイドピニオン及びハイポイドギヤの双方が互いに異なり、且つ減速比がそれぞれ同一とされている場合には、被駆動側の駆動速度を不変としたまま、この定性的効果を端的に得ることができる。
【0021】
又、前記オフセット量が同一とされた第1、第2のハイポイドギヤドモータがそれぞれ、前記減速機ケーシングの他、前記モータのケーシングをも含めて同一とされた共通なケーシングを有しているハイポイドギヤドモータをその構成要素として有する場合には、減速機ケーシングをモータケーシングごと共用化することができるようになり、ハイポイドギヤドモータ全体としての共用化を一層促進させることができる。
【0022】
なお、前記オフセット量が同一とされた第1、第2のハイポイドギヤドモータが、それぞれ前記減速機ケーシングに相手機械への取付孔を有し、且つ、該取付孔の位置及び大きさがそれぞれ同一とされているような構成とすると、取付(交換)の互換性も確保できるため、一層良好である。
【0023】
なお、前記同一とされたオフセット量と、前記第1、第2のハイポイドギヤセットのそれぞれのハイポイドギヤの相当傘歯車円錐距離との比は、共に、0.5以下、より好ましくは、0.20〜0.50の範囲に設定するようにすると、それぞれのハイポイドギヤドモータにおいて、高効率且つ低騒音を適宜に両立させた特性を得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明に係るハイポイドギヤドモータのシリーズの実施形態を詳細に説明する。
【0025】
図1及び図2に本シリーズの構成要素となる具体的なハイポイドギヤドモータの代表的な2種(第1、第2ハイポイドギヤドモータ)の構成例をそれぞれ示す。第1、第2ハイポイドギヤドモータHG101、HG201共、モータ102、202のモータ軸104、204の先端にハイポイドピニオン112、212が直接歯切りされており、このハイポイドピニオン112、212と噛合するハイポイドギヤ116、216を介して、該ハイポイドギヤ116、216が装着された出力軸114、214が駆動される構成とされている。
【0026】
説明の便宜上、図2に記載された第2ハイポイドギヤドモータHG201の方から説明する。
【0027】
第2ハイポイドギヤドモータHG201は、モータ202と減速機218とを連結したものである。減速機218は、ハイポイドピニオン212及びハイポイドギヤ216からなる1段の(第2の)ハイポイドギヤセットS201を有している。
【0028】
モータ202のケーシング(モータケーシング)210は、60Wの出力を発生し得るモータ本体203を収容するのに最適な大きさに設計されている。又、減速機218のケーシング(減速機ケーシング)220も、当該60Wのモータ202に従来一般的に連結される大きさに設計したハイポイドギヤセットS201を収容するのに最適な大きさとされている。
【0029】
減速機ケーシング220は、ケーシング本体220aと出力軸カバー220bとに分離されている。出力軸カバー220bはボルト232を介してケーシング本体220aと連結されている。モータケーシング210と減速機ケーシング220(の本体220a)は、ボルト等による連結によってではなく、当初より一体成形され、単一のケーシング230を形成している。
【0030】
減速機218の出力軸214は、軸受206、208を介してモータ軸204とオフセット量δ201をもって直交する態様で減速機ケーシング220に収容されている。軸受206は減速機ケーシング220の本体220aに、軸受208は出力軸カバー220bにそれぞれ装着されている。なお、図の符号260a〜260dは、第2ハイポイドギヤドモータHG201を相手機械に取付けるための取付孔である。なお、本実施形態では、この取付孔260a〜260dは出力軸カバー220bと本体220aを連結するボルト232のボルト穴を共用している。
【0031】
モータ202のモータ軸204は、その本体203部分の外径がd201であり、軸受236、238を介して軸方向移動不能にモータケーシング210に支持されている。軸受238による支持部分の外径はd202、ハイポイドピニオン212の外径はd203、その軸方向の形成長さはL201である。
【0032】
又、ハイポイドギヤ216の外径はd204、相当傘歯車円錐距離はGL202である。この相当傘歯車円錐距離GL202とは、図3に示されるように、ハイポイドギヤ216の中心GC201から外周216aまでを、円錐の角度α201の方向に沿って測った距離のことである。
【0033】
ハイポイドギヤセット222のオフセット量はδ201、減速比はI201である。又、オフセット量δ201とハイポイドギヤ216の相当傘歯車円錐距離GL202との比は0.2程度である。又、減速機ケーシング220の内周側には、ハイポイドギヤ216の軸心GC201、即ち出力軸214の軸心と同心の円筒形の空間S201が形成されている。この空間S201の直径はD201である。
【0034】
一方、図1には本シリーズの構成要素の1つである40Wのハイポイドギヤドモータ(第1ハイポイドギヤドモータ)HG101が示されている。
【0035】
この第1ハイポイドギヤドモータHG101は、既に説明した60Wの第2ハイポイドギヤドモータHG201と比べて、その構成部材の一部の寸法が異なっているだけで、基本的な構造は全く同一である。従って、図中で同一又は類似する部分に下2桁が同一の100番台の符号を付して重複説明は省略することとし、以下異なっている部分について詳細に説明する。
【0036】
第1ハイポイドギヤドモータHG101と第2ハイポイドギヤドモータHG201とで異なっているのは次の部分である。
【0037】
第1ハイポイドギヤドモータHG101は、第2ハイポイドギヤドモータHG201と比較し、モータ102の容量が小さい分、該モータ102のモータ本体103の軸方向長L102が第2ハイポイドギヤドモータHG201のモータ202のモータ本体203の軸方向長L202よりも小さく形成されている(L102<L202)。又、ハイポイドピニオン112の外径d103は、(モータ容量が小さくなったことから)第2ハイポイドギヤドモータHG201のハイポイドピニオン212の外径d203よりも小さく形成されている(d103<d203)。
【0038】
しかしながら、オフセット量δ101、及びこの実施形態では減速比I101をも第2ハイポイドギヤドモータHG201と同一にするべく、ハイポイドギヤ116の外径d104が、ハイポイドギヤ216の外径d204よりも小さく、且つ、ハイポイドピニオン112の軸方向の形成長さL101がハイポイドピニオン212の軸方向の形成長さL201よりも長くなるように形成してある(d104<d204、L101>L201)。
【0039】
なお、第1ハイポイドギヤドモータHG101のオフセット量δ101とハイポイドギヤ116の相当傘歯車円錐距離GL102(図3参照)との比は0.27程度である。
【0040】
第1ハイポイドギヤドモータHG101と第2ハイポイドギヤドモータHG201との差異は、基本的にこれだけである。即ち、モータケーシング110、210及び減速機ケーシング120、220を含むケーシング130、230、モータ軸104、204のハイポイドピニオン112、212が形成されている部分以外の部分、及び出力軸114、214は全て同一の寸法に形成され、それぞれ第1ハイポイドギヤドモータHG101と第2ハイポイドギヤドモータHG201に対して共用化されている。即ち、オフセット量δ101=δ201、減速比I101=I201、減速機ケーシング120、220内の空間S101、S201の内径D101=D201、ケーシングの軸方向長L103=L203である。
【0041】
又、出力軸114、214を支持している軸受106、206、108、208、及びモータ軸104、204を支持している軸受136、236、138、238もそれぞれ同一寸法のものが使用されている。又、オイルシール150、250、152、252もそれぞれ同一寸法のものが使用されており、減速機ケーシング118、218の相手機械に対する取付孔160a〜160b、260a〜260dの形成位置及び大きさも同一寸法とされている。
【0042】
次に、この実施形態に係る第1、第2ハイポイドギヤドモータHG101、HG201のシリーズの作用を説明する。
【0043】
理解を容易にするために、図1及び図2に示された第1、第2ハイポイドギヤドモータHG101、HG201に加え、図5に記載されたハイポイドギヤドモータHG9を合わせて参照しながら説明する。ハイポイドギヤドモータHG9は、40Wのハイポイドギヤドモータを、従来の設計手法で設計した構成例に相当している。なお、図1、図2と同一又は類似する部分には、便宜上下2桁が同一の900番台の符号が付されている。このハイポイドギヤドモータHG9は、図2に記載された90Wの第2ハイポイドギヤドモータHG201に比べ、モータ本体903の軸方向長L902、ハイポイドピニオン912の外径d903及び軸方向の形成長さL901、及び、ハイポイドギヤ916の外径(相当傘歯車円錐距離)GL901が異なっている。
【0044】
又、ハイポイドピニオン912の外径d903が小径化されたことに伴い、ハイポイドギヤセットHG9のオフセット量δ901が小さくなっている。この結果、減速機918の入力軸(即ちモータ軸)904の軸心と出力軸914の軸心との位置関係が図2に示した90Wの第2ハイポイドギヤドモータHG201と異なってくるため、第2ハイポイドギヤドモータHG201側の減速機ケーシング220を共用することができず、減速機ケーシング920部分を専用設計する必要が生じてきている。
【0045】
なお、図5に例では、この専用設計の必要性を利用して、減速機ケーシング920の部分をより小型化するようにしている。しかしながら、この部分の小型化の効果より、むしろ、高コストの減速機ケーシング920を別途設計・制作し、これに伴って軸受206、208、236、238、オイルシール250、252等を別途・設計・製作することによるコストの増大の影響の方が大きい(後述)。
【0046】
これに対し、図1に記載された第1ハイポイドギヤドモータHG101は、オフセット量δ101が第2ハイポイドギヤドモータHG201と同一(δ101=δ201)に設定されていることから、減速機118の入力軸(即ちモータ軸)104と出力軸114との位置関係をそれぞれのギヤドモータHG101、HG201とで同一に維持することができている。その結果、減速機ケーシング120、220、出力軸114、214、その軸受106、206、108、208、オイルシール150、250等が全て第1ハイポイドギヤドモータHG101と第2ハイポイドギヤドモータHG201に対して共用化できる。即ち、第1ハイポイドギヤドモータHG101と第2ハイポイドギヤドモータHG201とで異なっているのは、ハイポイドギヤセットS101、S201のみとすることができる。
【0047】
更には、この実施形態においては、モータケーシング110、210や、モータ軸104、204のハイポイドピニオン112、212が形成されている部分以外の部分についても共用化(寸法の同一化)がなされている。これにより、結果として減速機ケーシング118、218を含めた全体のケーシング130、230のみならず、モータ軸104、204を支持している軸受136、236、138、238等についても共用化が実現されている。
【0048】
ここで、図1から明らかなように、この実施形態に係る特に第1ハイポイドギヤドモータHG101の減速機ケーシング120及びモータケーシング110は、(従来手法の)図5に記載されたハイポイドギヤドモータHG9と比べて大きくなっている(D101=D201>D901、及び、L103=L203>L903)。しかしながら、これは、「ハイポイドギヤドモータ」の使用状況を考慮した場合には、ほとんどデメリットとはならない。
【0049】
即ち、前述したように、この種のハイポイドギヤドモータは、一般に、自動ドアのタイミングベルト、あるいはコンベアの搬送用ベルト等を所定の方向に直線駆動するために用いることが多い。この種の自動ドアあるいはコンベアは、タイミングベルトや搬送用ベルトが移動する方向(即ちモータ軸の軸方向)には、一般にスペース上比較的余裕がある。そのため、40Wの第1ハイポイドギヤドモータHG101のケーシング130(具体的にはその軸方向長さL103)を60Wの第2ハイポイドギヤドモータHG201のケーシング230(同軸方向長さL203)と同一に設定したとしても、実用上支障が生じることはほとんどない。
【0050】
又、第1ハイポイドギヤドモータHG101の減速機ケーシング120は、確かに図5に記載されたハイポイドギヤドモータHG9の減速機ケーシング920のような小型化はされていないものの、モータケーシング210の軸方向投影面からはほとんど逸脱していないため、これも大きなデメリットとはならない。むしろ、相手機械(自動ドア、あるいはコンベア等)に対する取付ボルト孔160a〜160dの位置及び大きさが第2ハイポイドギヤドモータHG201の取付ボルト孔260a〜260dと同一であることから、交換取付が可能(取付の互換性がある)というメリットが得られる。このメリットは、モータ容量を変更したとしても、相手機械に対しアダプタ等を介在させることなく、あるいは相手機械に新たなボルト孔等を形成したりすることなく、第1ハイポイドギヤドモータHG101をダイレクトに取り付けられることを意味し、実用上の意義は非常に大きい。
【0051】
即ち、この実施形態に係るハイポイドギヤドモータのシリーズは、その使用される用途、あるいは設置状況を考慮した場合に、実用上の支障をほとんど生じさせることなく、ケーシング130、230を含む大半の部材の共用を可能とし、且つ取付の互換性の確保していることになる。
【0052】
しかも、40Wの第1ハイポイドギヤドモータHG101は、60Wの第2ハイポイドギヤドモータHG201とそのオフセット量δ101、δ201が同一に設定されているため、結果として40Wの第1ハイポイドギヤドモータHG101の方が60Wの第2ハイポイドギヤドモータHG201よりも噛合い率が高くなり、より低騒音化が実現できる。一般に、より容量の小さなモータを使おうとするときには、低騒音化が特に要求されるため、この定性的傾向は当該要求に合致している。
【0053】
逆に、60Wの第2ハイポイドギヤドモータHG201は、40Wの第1ハイポイドギヤドモータHG101よりも噛合い率が低い分、より高効率の駆動が実現できる。一般に、より容量の大きなモータを使おうとするときには、高トルク化及び高効率化が要求されるため、この定性的傾向は、この点でも当該要求に合致している。
【0054】
なお、上記実施形態においては、減速機ケーシングのみならず、モータケーシングをも含めてケーシング全体を共用化するようにしていたが、本発明においてはモータケーシングの部分についてまでは、必ずしも共用化を要求するものではない。又、減速機ケーシングとモータケーシングは、必ずしも一体成形されている必要はなく、ボルト等で連結される構造であってもよい。
【0055】
又、この実施形態では、オフセット量とハイポイドギヤの相当傘歯車円錐距離との比が0.2と0.27程度に設定されていたが、この比についても特にこの値には限定されない。但し、この比が0.5以上となると効率が大きく低下してくるため、0.5以下に設定するのが望ましい。又、この比が0に近づくと、噛合い騒音が増大し、ハイポイドギヤドモータとしての本来の定性音特性を享受できなくなるため、0.2以上に設定するのが望ましい。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、ハイポイドギヤドモータのシリーズの構成要素である個々のハイポイドギヤドモータ間において、部材の共用化を促進し、結果としてより低コストのハイポイドギヤドモータを短い納期で納めることができるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るハイポイドギヤドモータのシリーズの構成要素の一例を示すもので、(A)が平断面図、(B)は正断面図
【図2】本発明の実施形態に係るハイポイドギヤドモータのシリーズの他の構成要素の一例を示すもので、(A)が平断面図、(B)は正断面図
【図3】ハイポイドギヤの相当傘歯車円錐距離を説明するための断面図
【図4】従来の(単体の)ハイポイドギヤドモータの構成を示す閉断面図
【図5】従来の設計手法により40Wのハイポイドギヤドモータを設計した場合の設計例を示すもので、(A)が閉断面図、(B)は正断面図
【符号の説明】
HG101…第1ハイポイドギヤドモータ
HG201…第2ハイポイドギヤドモータ
101、102…モータ
104、204…モータ軸
110、210…モータケーシング
112、212…ハイポイドピニオン
114、214…出力軸
116、216…ハイポイドギヤ
118、218…減速機
120、220…減速機ケーシング
δ101、δ201…オフセット量
GL102、GL202…相当傘歯車円錐距離

Claims (4)

  1. モータと、該モータのモータ軸と一体的に回転するハイポイドピニオンと、該ハイポイドピニオンとオフセットされた状態で噛み合うハイポイドギヤと、該ハイポイドギヤに設けられた出力軸と、前記ハイポイドピニオンと前記ハイポイドギヤとからなるハイポイドギヤセットを収容する減速機ケーシングと、を有する1段形のハイポイドギヤドモータのシリーズであって、
    第1のハイポイドギヤセットを有する第1のハイポイドギヤドモータと、
    該第1のハイポイドギヤセットと形状は異なるがオフセット量は同一とされた第2のハイポイドギヤセットを有する第2のハイポイドギヤドモータとを当該シリーズの構成要素として少なくとも有し、
    前記第1のハイポイドギヤドモータと第2のハイポイドギヤドモータとは、減速比が同一とされるとともに、モータ容量の違いに応じてハイポイドピニオンの外径が異なり、さらにハイポイドギヤの外径を異ならせることにより、前記オフセット量が同一とされ、
    前記第1のハイポイドギヤドモータの減速機ケーシングと前記第2のハイポイドギヤドモータの減速機ケーシングとが同一形状であることを特徴とするハイポイドギヤドモータのシリーズ。
  2. 請求項において、
    前記オフセット量が同一とされた第1、第2のハイポイドギヤドモータが、それぞれ前記減速機ケーシングのほか、前記モータのケーシングをも含めて同一とされた共通のケーシングを有している
    ことを特徴とするハイポイドギヤドモータのシリーズ。
  3. 請求項1または2のいずれかにおいて、
    前記オフセット量が同一とされた第1、第2のハイポイドギヤドモータが、それぞれ前記減速機ケーシングに相手機械への取付孔を有し、且つ、該取付孔の位置及び大きさがそれぞれ同一とされている
    ことを特徴とするハイポイドギヤドモータのシリーズ。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、
    前記第1、第2のハイポイドギヤセットのオフセット量と、前記第1、第2のハイポイドギヤセットのそれぞれのハイポイドギヤの相当傘歯車円錐距離との比が、共に、0.5以下に設定されていることを特徴とするハイポイドギヤドモータのシリーズ。
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