ところが、上記の空気入りタイヤは、ブロックの接地時に凹部が変形をするが、凹部が一定の幅で設けられているため、凹部の角部から最も離れている部分に負荷が集中し易くなり、変形と元の形状に戻ることを繰り返すことにより、その部分にクラックが発生する虞がある。また、前記凹部が設けられている部分の角部付近の踏面は、接地圧が高くなるため、他の部分よりもこの部分が早く摩耗し、ヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を生じる虞がある。このような偏摩耗を抑制するためには、接地圧が高い部分の接地圧を低減させることが効果的であるが、上記の凹部の形状による接地圧の低減よりも、当該角部から離れるに従って連続的に漸次低減させる必要があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を抑制できる空気入りタイヤ及び重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部に複数の方向に形成された溝を有する空気入りタイヤにおいて、前記溝の壁面には、当該溝の溝深さ方向における中腹部に切欠きが形成されており、前記切欠きは、複数の方向に形成された前記溝同士が交差する部分に形成される角部から、当該溝の形成方向に沿って形成され、さらに、当該切欠きは、前記角部から離れるに従って切欠きの幅が狭くなり、且つ、深さが浅くなって形成されていることを特徴とする。
この発明では、溝の壁面の角部に切欠きが形成されているので、前記トレッド部の踏面に荷重がかかった際に、その荷重がタイヤ径方向内方に伝わり、前記切欠きが形成されている部分では、当該切欠きの幅が小さくなる方向に切欠きが変形をする。このように変形することにより、当該切欠きが形成されている部分の踏面、即ち、前記角部付近の踏面はタイヤ径方向内方に潰れるように変形する。このため、前記角部が接地した際に荷重が角部に集中することなく、荷重をより広い範囲の踏面で受けることができる。これにより、前記角部付近にかかる荷重が減少する。
また、前記切欠きは、角部から離れるに従って幅が狭くなり、深さも浅くなっている。空気入りタイヤが踏面を接地させながら回転をした場合には、例えば、トレッド部がブロックパターンで形成されている空気入りタイヤの場合は、踏面のタイヤ周方向端部から接地する。さらに、このタイヤ周方向端部の、タイヤ幅方向端部は溝と隣接しており、他のブロックと離れているため、この部分に荷重が集中し易い。このタイヤ周方向端部の、タイヤ幅方向端部は角部として形成されており、前記のように荷重はこの角部に集中し、角部から離れるに従って減少していく。前記切欠きは、上記のように踏面に荷重がかかることにより変形をするが、当該踏面は上記のように、角部から離れるに従って幅が狭くなり、深さも浅くなっており、踏面への荷重も角部から離れるに従って減少している。このため、踏面への荷重が大きい部分の切欠きは幅が広く、深さが深くなっており、荷重が比較的小さい部分の切欠きは幅が狭く、深さが浅くなっている。即ち、切欠きは幅が広く、深さが深いほど変形し易いが、踏面への荷重が大きい部分の切欠きは幅が広く、深さが深いため、トレッド部のうち、切欠きの幅が広く、深さが深く形成されたこの部分は、変形し易くなっている。また、切欠きは幅が狭く、深さが浅いほど変形し難いが、踏面への荷重が比較的小さい部分の切欠きは幅が狭く、深さが浅いため、トレッド部のうち、切欠きの幅が狭く、深さが浅く形成されたこの部分は、比較的変形し難くなっている。これにより、踏面への荷重が大きい角部は大きく変形し、角部から離れるに従って荷重が低減すると同時に、変形も低減する。従って、踏面の荷重の均一化を図ることができる。この結果、接地圧の不均一に起因するヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部に複数の方向に形成された溝を有する空気入りタイヤにおいて、前記溝の壁面には、当該溝の溝深さ方向における中腹部に窪みが形成されており、前記窪みは、複数の方向に形成された前記溝同士が交差する部分に形成される角部近傍から、当該溝の形成方向に沿って複数形成され、さらに、前記窪みは、前記角部から離れるに従って窪みの体積が小さくなって形成されていることを特徴とする。
この発明では、溝の壁面の角部近傍に窪みが複数形成されているので、上記の切欠きと同様に、路面に荷重がかかった際に窪みが変形することにより、荷重が角部周辺に集中することを抑制できる。これにより、前記角部付近にかかる荷重が減少する。また、窪みは、体積が大きいほど変形し易く、体積が小さいほど変形し難いが、前記窪みの体積は、角部から離れるに従って小さくなっている。このため、上記の切欠きと同様に、踏面にかかる荷重が大きい部分から小さい部分にいくに従って体積が小さくなっていることになる。これにより、踏面への荷重が大きい角部付近は大きく変形し、角部から離れるに従って荷重が低減すると同時に、変形も低減する。従って、踏面の荷重が均一化を図ることができる。この結果、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部に複数の方向に形成された溝を有する空気入りタイヤにおいて、前記溝の壁面には、当該溝の溝深さ方向における中腹部に窪みが形成されており、前記窪みは、複数の方向に形成された前記溝同士が交差する部分に形成される角部近傍から、当該溝の形成方向に沿って複数形成され、さらに、前記窪みは、前記角部から離れるに従って、前記溝の形成方向における同一位置に形成される数が減少することを特徴とする。
この発明では、複数形成された前記窪みの数を、角部から離れるに従って減少させている。より具体的には、溝の形成方向における同一位置に形成される窪みの数を、角部から離れるに従って減少させている。この窪みが設けられている部分は、窪みの数が多い程変形し易く、数が少ない程変形し難いが、前記窪みは、上記のように角部から離れるに従って数が減少している。また、踏面への荷重は、角部が大きく、角部から離れるに従って減少している。このため、上記の切欠きと同様に、踏面にかかる荷重が大きい部分から小さい部分にいくに従って窪みの数が減少していることになる。これにより、踏面への荷重が大きい角部付近は大きく変形し、角部から離れるに従って荷重が低減すると同時に、変形も低減する。従って、踏面の荷重の均一化を図ることができる。この結果、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記切欠きは、当該切欠きを構成する面のうち、トレッド部の踏面方向の面を切欠き外方面とし、前記溝部の溝底方向の面を切欠き内方面とし、前記切欠き外方面が前記壁面の延長線に対して形成している角度をα、前記切欠き内方面が前記壁面の延長線に対して形成している角度をβとした場合に、前記βは90°以下で形成され、且つ、α≦βで形成されていることを特徴とする。
この発明では、前記切欠きは、前記切欠き外方面及び切欠き内方面と溝の壁面の延長線と角度が所定の角度で形成されている。つまり、切欠き外方面と前記壁面との交点、及び切欠き内方面と前記壁面との交点の、2つの交点を結ぶ線である前記延長線に対して、前記欠き外方面及び切欠き内方面は、所定の角度で形成されている。この角度は、切欠き内方面と前記延長線とが90°以下で形成されており、さらに、切欠き外方面と延長線とで形成する角度よりも、切欠き内方面と延長線とで形成する角度の方が大きく形成されている。これにより、空気入りタイヤの製造時に、切欠きに入り込んで当該切欠きを成形する金型を容易に抜くことができる。これにより、前記切欠きを、より確実に形成することができる。この結果、接地圧の均一化を図ることができる空気入りタイヤを容易に、且つ、より確実に製造することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記切欠き、または窪みは、最大深さが1mm以上4mm以下で形成されていることを特徴とする。
この発明では、前記切欠き、または窪みの最大深さを1mm以上4mm以下で形成することにより、上記のような踏面の荷重の均一化をより確実に図ることができる。即ち、切欠きや窪みの最大深さが1mm未満の場合には、踏面に荷重がかかった場合でも、変形が小さいため踏面の荷重を分散しきれず、前記角部周辺の荷重を分散できない。また、前記切欠きや前記窪みの最大深さが4mmより深い形状で形成すると、空気入りタイヤの製造時に、当該切欠き等の部分の金型を切欠きや窪みから取り出すのが困難になり、切欠き等の形状の品質の安定が困難になる。切欠き等の形状が一様でない場合には、踏面に荷重がかかった際の切欠き等の変形が一定でなくなり、踏面の荷重の均一化を図ることが困難になる。そこで、前記切欠き等の最大深さを1mm以上4mm以下で形成することにより、踏面の荷重の均一化をより確実に図ることができる。この結果、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記切欠き、または窪みは、前記溝の溝底から当該溝の開口部の方向に、溝深さの0.3倍以上0.7倍以下の範囲内に形成されていることを特徴とする。
この発明では、前記切欠き、または窪みを上記の範囲に形成することにより、踏面の荷重の均一化をより確実に図ることができる。即ち、前記切欠き等が溝底から開口部に向けて溝深さの0.3倍未満の位置に形成されている場合には、踏面が荷重を受けた際に、当該踏面が設けられている陸部、例えば、ブロックパターンではブロックが安定しないため、操縦安定性が低下する。また、前記切欠き等が溝底から開口部に向けて溝深さの0.7倍よりも高い位置に形成されている場合には、走行中に踏面が摩耗することによって踏面が短時間で切欠きに達してしまう。この場合、切欠き等の変形による踏面の接地圧の均一化が図れなくなる。そこで、切欠き等を溝の溝底から開口部方向に当該溝の溝深さの0.3倍以上0.7倍以下の範囲内に形成することにより、操縦安定性の維持、或いは、荷重の均一化をより確実に図ることができる。この結果、操縦安定性を維持しつつ、接地圧の不均一に起因する偏摩耗をより確実に抑制することができる。
また、この発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、上記の空気入りタイヤにおいて、前記溝は、溝深さが14mm以上25mm以下で形成されており、前記トレッド部は、当該トレッド部を形成するトレッドゴムのJIS A硬度が58以上73以下で形成されていることを特徴とする。
この発明では、主にトラックやバスなどに使用する重荷重用空気入りタイヤに、上記の切欠き、或いは窪みを形成する。これにより、前記重荷重用空気入りタイヤでも、前記角部付近にかかる荷重を減少させることができる。また、踏面の荷重の均一化を図ることができる。この結果、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を抑制することができる。
本発明にかかる空気入りタイヤ及び重荷重用空気入りタイヤは、切欠き、或いは窪みを角部付近に設けて踏面の荷重に均一化を図ることにより、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を抑制する、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤ及び重荷重用空気入りタイヤの実施をするための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能且つ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、空気入りタイヤ及び重荷重用空気入りタイヤのトレッドパターンは、ブロックパターンやリブラグパターン等があるが、以下の説明は、本発明に係る空気入りタイヤ及び重荷重用空気入りタイヤの一例として、トレッドパターンがブロックパターンで形成される空気入りタイヤを説明する。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤのタイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、前記タイヤ回転軸と直交する方向をいう。図1は、本発明にかかる空気入りタイヤのトレッド部を示す図である。この空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側にトレッド部2が形成されており、このトレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した場合に、路面と接触する部分は踏面10として形成されている。このトレッド部2には、所定の方向に形成された溝からなる溝部20が設けられており、この溝部20は、タイヤ周方向に形成される縦溝21と、タイヤ幅方向に形成される横溝22とによって形成される。また、トレッド部2には、この縦溝21及び横溝22によって区画されたブロック30が形成されている。なお、この縦溝21と横溝22は、正確にタイヤ周方向、或いは、タイヤ幅方向に形成されていなくてもよい。縦溝21は概ねタイヤ周方向に形成されていればよく、タイヤ幅方向に斜めに形成されている場合や、曲線で形成されていてもよい。横溝22は概ねタイヤ幅方向に形成されていればよく、タイヤ周方向に斜めに形成されている場合や、曲線で形成されていてもよい。
図2は、図1のH−H断面図である。図3は、図1のブロックの斜視図である。前記ブロック30の縦溝21に面する或いは縦溝21を形成する壁面31と、横溝22に面する或いは横溝22を形成する壁面31とが交差する部分は、角部32として形成されている。このため、1つの壁面31が面する溝部20の形成方向の両端には、角部32が形成されている。また、この壁面31の中腹部、即ち、壁面31の、溝部20の深さ方向における中央部付近には切欠き40が形成されている。この切欠き40は、前記壁面31の両端に位置する2つの角部32の一方の角部32から、他方の角部32の方向に向けて形成されている。即ち、前記切欠き40は、壁面31の周囲の辺33で、溝部20の深さ方向に形成される2つの辺33のうちの一方の辺33から、対向する他方の辺33に向けて形成されている。この切欠き40が、1つの角部32から当該角部32を形成する2つの壁面31、即ち、縦溝21方向の壁面31と横溝22方向の壁面31の両方向の壁面に形成されている。また、このように1つの角部32に対して2方向に形成される切欠き40は、1つのブロックに形成される4つの角部32の全ての角部32に形成される。
これらの切欠き40が形成される範囲は、切欠き40が形成される側の角部32から他方の角部32に向けて、当該壁面31の両端に位置する2つの角部32間の距離fの50%以内の範囲に形成されている。また、溝部20の深さ方向における、この切欠き40が形成される位置は、当該切欠き40が形成されている壁面31によって形成される溝部20の、溝底25から当該溝部20の開口部26に向けて、当該溝部20の溝深さdの0.3倍以上0.7倍以下の範囲内に形成されるのが好ましい。
図4は、図2のJ−J断面図である。図5は、図2のK−K断面図である。この切欠き40を、当該切欠き40の形成方向に見た断面の形状は、前記切欠き40が壁面31に対して開口している切欠き開口部41を形成している。なお、この切欠き開口部41の開口している方向の寸法、即ち、前記溝部20の深さ方向の切欠き40の寸法を、切欠き40の幅とする。また、当該切欠き40は、切欠き40の深さ方向に向かうに従って幅が小さくなっており、切欠き40の深さ方向の底の部分である切欠き底部42では、略角状となって形成されている。つまり、切欠き40は、切欠き底部42が底となる谷状の形状で形成されている。
また、切欠き40を図4の方向から見た場合のさらに詳細な形状は、切欠き開口部41の前記踏面10側の辺である外方辺45と、前記切欠き底部42との間に形成される面は、切欠き外方面43として形成されており、当該切欠き開口部41の前記溝底25側の辺である内方辺46と、前記切欠き底部42との間に形成される面は、切欠き内方面44として形成されている。
この切欠き外方面43と切欠き内方面44の角度は、前記切欠き開口部41の形成される壁面31の仮想の延長線47に対して所定の角度で形成されている。この延長線47は、具体的には、図4の方向或いはJ−J断面で見た場合の、前記切欠き開口部41の外方辺45から内方辺46までの仮想線である。J−J断面で見た場合の、この延長線47に対する前記切欠き外方面43の角度をαとし、前記延長線47に対する前記切欠き内方面44の角度をβとした場合に、α及びβは共に90°以下で形成されている。さらに好ましくは、βは90°以下で形成され、α≦βの関係になるように形成されていることが好ましい。これらの角度で切欠き外方面43と切欠き内方面44とを形成することによって、切欠き外方面43と切欠き内方面44とが切欠き40の深さ方向の所定の位置で交差し、前記切欠き底部42は、上記のように略角状の形状で形成される。
また、前記切欠き40は、切欠き40が形成される壁面31の溝部20形成方向の両端に位置する角部32のうちの一方の角部32、つまり、切欠き40が形成されている角部32から、上記のように他方の角部32に向かうに従って、切欠き40の幅が小さくなっている。即ち、溝部20の深さ方向における切欠き40の寸法が、切欠き40が形成される辺33から、対向する辺33に向かうに従って小さくなりながら形成されている。また、このように切欠き40が形成される角部32から、壁面31を介した他方の角部32の方向に向かうに従って当該切欠き40の幅が小さくになるに従って、切欠き40の深さも浅くなっている。そして、切欠き40が形成される角部32と、前記他方の角部32との間に位置する切欠き端部48で、切欠き40の幅及び深さの双方の大きさが0mmになる。
つまり、切欠き40を壁面31に面する方向から見た場合には、当該切欠き40は切欠き端部48で、切欠き開口部41の前記外方辺45と前記内方辺46とが略角状となって形成されており、切欠き40を図5の方向或いはK−K断面で見た場合には、当該切欠き40は前記切欠き端部48で、壁面31と前記切欠き底部42とが略角状となって形成されている。これにより、切欠き40は、当該切欠き40が形成されている角部32から、切欠き端部48に向かうに従って、切欠き40を形成する空間の体積が小さくなっている。つまり、前記切欠き40は、切欠き端部48を頂点とした略三角錐状の形状で形成されている。なお、上記のように角部32から切欠き端部48に向かって深さが浅くなる切欠き40の最大深さは、1mm以上4mm以下で形成されていることが好ましい。また、前記切欠き端部48は、同一壁面31の対向する辺33に形成され、それぞれ対向する辺33に向けて形成される切欠き40の双方の切欠き端部48同士は、図2や図3に示すように接触していても離れていてもよい。
この空気入りタイヤ1を車両に装着して当該空気入りタイヤ1が路面に接触した場合は、前記踏面10が路面に接触する。このように踏面10が路面に接触した場合には、当該踏面10には空気入りタイヤ1及び前記車両の重量がかかる。さらに、前記車両が走行をした場合には、前記ブロック30のタイヤ周方向の端部である周方向端部35から順次路面に接触していく。このため、踏面10のうち、ブロック30の周方向端部35には、路面と接触し始める際に大きな荷重がかかる。また、前記ブロック30のタイヤ幅方向の端部である幅方向端部36には縦溝21が形成されており、この部分では踏面10が連続して形成されていないため、縦溝21を挟んで対向する壁面31と前記踏面10とが交差する部分、即ち、幅方向端部36には、荷重がかかり易くなっている。このように、ブロック30の周方向端部35、及び幅方向端部36には、荷重がかかり易くなっており、これらの端部が交差する部分であるブロック30の角部32は、特に荷重がかかり易くなっている。また、荷重は、角部32から離れるに従って小さくなっている。
上記のようにブロック30の踏面10に荷重がかかった際には、ブロック30はタイヤ径方向内方に圧縮され、この方向に潰れるように変形をする。また、当該ブロック30には、角部32を含む角部32付近のタイヤ径方向内方に、切欠き40が形成されている。上記のように踏面10に荷重がかかった際には、その荷重によってブロック30がタイヤ径方向に潰れるように変形すると同時に、この切欠き40も当該切欠き40の幅が狭くなる方向に変形をする。踏面10にかかる荷重は、角部32が特に大きく、角部32から離れるに従って小さくなっている。また、切欠き40の形状も、角部32の部分は切欠き40の幅が大きく、深さが深く形成されており、角部32から離れるに従って幅が狭く、深さが浅くなっている。このため、大きい荷重がかかる角部32は、その荷重によって切欠き40が大きく変形し、角部32から離れるに従って荷重が小さくなるにつれて切欠き40の変形も小さくなっている。
このように切欠き40が変形をすることによって、踏面10に荷重がかかった際に、角部32付近はタイヤ径方向内方に逃げ易くなる。即ち、踏面10の角部32付近に荷重がかかった際に、ブロック30をタイヤ径方向内方に変形させようとする荷重に対して強く抵抗することなく、切欠き40が形成された角部32付近の踏面10は、切欠き40が、当該切欠き40の幅が狭くなる方向に変形する。これにより、角部32付近の踏面10は、タイヤ径方向内方の方向に変形をする。このように変形することにより、角部32付近の踏面10が路面に接地した際に、この部分の踏面10がタイヤ径方向内方に逃げることができるので、角部32付近のみでなく、その周囲の踏面10も路面に接地することができる。これにより、角部32付近で受ける荷重を、より広い範囲の踏面10で受けることができる。このように、荷重を広い範囲で受けることにより、1つのブロック30内での踏面10の接地圧の均一化を図ることができる。この結果、踏面10の接地圧の不均一に起因する、ヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制することができる。
また、前記切欠き40は、荷重が大きくかかる角部32に形成されている部分は大きく変形し、比較的小さい荷重がかかる、角部32の周囲の部分は小さく変形をする。ブロック30の切欠き40を有する部分は、このように荷重の大きさに応じた変形をする。これにより、踏面10の部位によってかかる荷重が異なっても、接地圧の均一化をより図り易くすることができる。この結果、踏面10の接地圧の不均一に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
また、前記切欠き40は、幅及び深さが、角部32から離れるに従って小さくなっているため、踏面10に荷重がかかった際の応力が、1ヶ所に集中し難い。この結果、切欠き40の一部に応力が集中することに起因するクラックの発生を抑制することができる。
また、前記切欠き40の最大深さは、1mm以上の深さで形成されているので、前記踏面10に荷重がかかった際に確実に切欠き40は幅が潰れる方向に変形をする。この深さが1mm未満で形成されている場合には、切欠き40やその周囲の形状によっては踏面10に荷重がかかっても切欠きはあまり変形しない可能性もあるが、上記の切欠き40は1mm以上の深さで形成されているので、確実に幅が潰れる方向に変形をする。この結果、より確実に切欠き40が変形をすることにより、踏面10の接地圧の不均一に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
また、前記切欠き40の最大深さは、4mm以下の深さで形成されているので、空気入りタイヤ1の製造時に切欠き40の形状を確実に形成することができる。この最大深さが4mmよりも深く形成されている場合には、空気入りタイヤ1の製造時に切欠き40に入り込むようにして当該切欠き40の形状を形成する金型等の部材を、切欠き40から取り出すのが困難になる。例えば、空気入りタイヤ1の加硫後に金型を取り出す際に、切欠き40の最大深さが4mmよりも深く形成されている場合には、金型を切欠き40から取り出すのが困難になる。このため、切欠き40の形状が一様でなくなる可能性があり、この場合、路面に荷重がかかった際の切欠き40の変形が一定でなくなり、踏面10に荷重がかかった際の切欠き40の変形が一定でなくなり、踏面10の接地圧の均一化を図ることが困難になる。そこで、上記のように切欠き40の深さを4mm以下で形成することにより、前記空気入りタイヤ1の製造時に切欠き40を形成する金型等を当該切欠き40から容易に取り出すことができる。この結果、切欠き40の形成が容易になり、また、切欠き40の形状を一定の形状に保つことができるので、品質が安定する。さらに、切欠き40の形状を一定の形状に保つことにより、踏面10に荷重がかかった際に切欠き40は荷重に対して一定の変形をするので、踏面10の接地圧の均一化を、より確実に図ることができ、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
また、前記切欠き40は、壁面31の延長線47と切欠き外方面43との角度αと、前記延長線47と切欠き内方面44との角度βとは、βが90°以下で形成され、さらにα≦βの関係になるように形成することにより、空気入りタイヤ1の製造時に切欠き40に入り込む前記金型等の部材を容易に抜くことができる。これにより、切欠き40の形成がより容易になり、品質、即ち切欠き40の形状を一定の形状で成形することができる。この結果、接地圧の均一化を図ることができる空気入りタイヤ1を、容易に、且つ、より確実に製造することができ、さらに、品質を高い水準で安定させることができる。
また、前記切欠き40は、切欠き開口部41から切欠き底部42に向かう従って幅が狭くなる形状で形成されているため、空気入りタイヤ1の製造時に当該切欠き40に入り込む前記金型等を容易に抜くことができる。この結果、上記と同様に、切欠き40の形成がより容易になるので、接地圧の均一化を図ることができる空気入りタイヤ1を、容易に、且つ、より確実に製造することができ、さらに、品質を高い水準で安定させることができる。
また、ブロック30に対して切欠き40を形成する位置を、当該切欠き40が設けられている壁面31によって形成される溝部20の溝底25から溝部20の開口部26の方向に、当該溝部20の溝深さの0.3倍以上の位置に設けることにより、操縦安定性を維持することができる。切欠き40の位置を前記溝底25から溝深さの0.3倍未満の位置に設けた場合には、前記ブロック30の根元付近に切欠き40が存在することになるため、踏面10に荷重がかかった場合にブロック30が安定せず、操縦安定性が低下する。そこで、上記のように切欠き40を形成する位置を、前記溝部20の溝底25から溝部20の開口部26の方向に当該溝部20の溝深さの0.3倍以上の位置に設けることにより、踏面10に荷重がかかった際でも、ブロック30を安定させることができる。この結果、操縦安定性を維持しつつ、偏摩耗を抑制することができる。
また、ブロック30に対して前記切欠き40を形成する位置を、前記溝部20の溝底25から溝部20の開口部26の方向に、当該溝部20の溝深さの0.7倍以下の位置に設けることにより、長時間に渡り耐偏摩耗性を維持することができる。切欠き40の位置を前記溝底25から溝深さの0.7倍よりも高い位置に設けた場合には、当該空気入りタイヤ1を装着した車両が走行をすることによって踏面10が摩耗した際に、短時間で切欠き40が形成されている部分まで摩耗してしまう。このように踏面10が切欠き40まで摩耗した場合には、切欠き40が上記の形状と変わってしまう、または、摩耗により切欠き40が無くなってしまうので、踏面10に荷重がかかった際の切欠き40の変形による踏面10の接地圧の均一化が図れなくなる。踏面10の接地圧の均一化が図れない場合には、偏摩耗が発生し易くなり、耐偏摩耗性が低下する。そこで、上記のように切欠き40を形成する位置を、前記溝部20の溝底25から溝部20の開口部26の方向に当該溝部20の溝深さの0.7倍以下の位置に設けることにより、車両の走行により踏面10が摩耗した場合でも、踏面10が、切欠き40が形成されている部分まで摩耗する時間を長くすることができる。この結果、長時間に渡り耐偏摩耗性を維持することができる。
図6は、1つの壁面に切欠きを複数形成した図である。なお、前記切欠き40は、1つの角部32から1つの壁面31に複数形成してもよい。例えば、図6に示すように、溝部20の深さ方向に列を成して複数の切欠き40を形成してもよい。溝部20の溝深さやブロック30の形状、踏面10にかかる荷重などを考慮して、切欠き40の数を調整することにより、偏摩耗を、より効果的に抑制することができる。このように切欠き40は、1つ1つが上記の形状で形成され、当該切欠き40の形成される範囲が上記の範囲内であれば、その数及び詳細な寸法は問わない。
図7は、壁面に複数の窪みを形成した図である。図8は、図7のブロックの斜視図である。図9は、図7のM−M断面図である。下記で説明している部分以外の構成は図2と同様なので、その説明を省くとともに同一の符号を付す。本発明の空気入りタイヤは上記以外の形態でも実施でき、図7のような形態でも実施できる。即ち、図2の空気入りタイヤ1は、ブロック30の壁面31に切欠き40を形成しているが、図7の空気入りタイヤ51では、壁面31に複数の窪み60を形成している。この窪み60は、ブロック30の壁面31の中腹部の、当該壁面31の辺33のうち、溝部20の深さ方向に沿って形成される辺33の近傍から、当該辺33と対向する辺33の方向に向けて、複数の窪み60が並んで形成されている。つまり、前記窪み60は、ブロック30の壁面31の中腹部の角部32近傍から、当該壁面31によって形成される溝部20に沿って複数の窪み60が並んで形成されている。
この窪み60は、壁面31に対しては略円形に窪み開口部61が形成されており、壁面31と直交する方向に深さを有する略半球状の形状で形成されている。また、複数形成されるこの窪み60は、前記角部32近傍に形成される窪み60の体積が最も大きく、角部32から離れるに従って順次体積が小さくなっている。つまり、角部32近傍の窪み開口部61の径、及び窪み60の深さが共に最も大きく、角部32から離れるに従って、順次双方が共に小さくなっている。このように形成される窪み60が、上記の空気入りタイヤ1に形成される切欠き40と同様、角部32を形成する2つの壁面31の双方に形成されており、さらに、ブロック30の角部32のうち、溝部20の深さ方向に沿って形成される角部32の全ての角部32に同様に形成される。なお、この窪み60の深さは、深さが最も深い窪み60の深さ、即ち、角部32に最も近い位置に形成される窪み60の深さが、1mm以上4mm以下で形成されるのが好ましい。この窪み60の深さが、複数形成される窪み60の最大深さとなる。
これらの窪み60が形成される範囲は、近傍に窪み60が形成される側の角部32或いは辺33から、同一壁面31のうち当該辺33と対向する辺33に向けて、この辺33同士間の距離fの50%以内の範囲に形成されている。また、溝部20の深さ方向における、この窪み60が形成される位置は、当該窪み60が形成されている壁面31によって形成される溝部20の、溝底25から当該溝部20の開口部26に向けて、当該溝部20の溝深さdの0.3倍以上0.7倍以下の範囲内に形成されるのが好ましい。
この空気入りタイヤ51を車両に装着して当該空気入りタイヤ51が路面に接触した場合には、上記の空気入りタイヤ1と同様に、ブロック30の周方向端部35、及び幅方向端部36に荷重がかかり易くなっている。さらに、これらの端部が交差する部分であるブロック30の角部32は、特に荷重がかかり易くなっている。また、この荷重は、角部32から離れるに従って小さくなっている。
前記空気入りタイヤ51の前記ブロック30には、前記角部32近傍の壁面31に複数の窪み60が形成されている。前記ブロック30は上記にように踏面10に荷重がかかると、その荷重によってブロック30がタイヤ径方向に潰れるように変形すると同時に、前記窪み60もタイヤ径方向に潰れるように変形をする。踏面10にかかる荷重は、前記空気入りタイヤ1と同様に角部32が特に大きく、角部32から離れるに従って小さくなるが、複数形成される窪み60の体積も、角部32近傍の窪み60が最も大きく、角部32から離れるに従って小さくなっている。このため、大きい荷重がかかる角部32近傍は、その荷重によって角部32近傍にある窪み60が大きく変形し、角部32から離れて荷重が小さくなるに従って窪み60の変形も小さくなっている。
複数形成される前記窪み60がこのように変形することにより、前記空気入りタイヤ1に前記切欠き40が形成されている場合と同様に、角部32近傍の踏面10が路面に接地した際に、この部分の踏面10がタイヤ径方向内方に逃げることができる。このため、角部32近傍のみでなく、その周囲の踏面10も路面に接地することができる。これにより、角部32付近で受ける荷重を、より広い範囲の踏面10で受けることができる。このように、荷重を広い範囲で受けることにより、踏面10の接地圧の均一化を図ることができる。この結果、踏面10の接地圧の不均一に起因する、ヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制することができる。
また、複数形成されている前記窪み60は、荷重が大きくかかる角部32近傍に形成されている窪み60は大きく変形し、比較的小さい荷重がかかる、角部32から離れて角部32の周囲に形成される窪み60は小さく変形をする。ブロック30の窪み60を有する部分は、このように荷重の大きさに応じた変形をする。これにより、踏面10の部位によってかかる荷重が異なっても、接地圧の均一化をより図り易くすることができる。この結果、踏面10の接地圧の不均一に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
また、前記窪み60は、最大深さが1mm以上の深さで形成されているので、最大深さが1mm以上で形成されている上記の切欠き40が、確実に幅が潰れる方向に変形するのと同様に、当該窪み60も確実にタイヤ径方向に潰れる方向に変形をする。この結果、より確実に窪み60が変形をすることにより、踏面10の接地圧の不均一に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
また、前記窪み60は、最大深さが4mm以下の深さで形成されているので、最大深さが4mm以下で形成されている上記の切欠き40から、空気入りタイヤ1の製造時に当該切欠き40を形成する金型等を容易に取り出すことができるのと同様に、前記窪み60から、当該窪み60を形成する金型等を容易に取り出すことができる。この結果、窪み60の形成が容易になり、また、窪み60の形状を一定の形状に保つことができるので、品質が安定する。さらに、窪み60の形状を一定の形状に保つことにより、踏面10に荷重がかかった際に窪み60は荷重に対して一定の変形をするので、踏面10の接地圧の均一化を、より確実に図ることができ、接地圧の不均一に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
また、前記窪み60は、ブロック30に対して形成する位置を、当該窪み60が設けられている壁面31によって形成される溝部20の溝底25から溝部20の開口部26の方向に、当該溝部の溝深さdの0.3倍以上の位置に設けることにより、上記の切欠き40が同様な位置に形成されている場合と同様に、踏面10に荷重がかかった際でも、ブロック30を安定させることができる。この結果、操縦安定性を維持しつつ、偏摩耗を抑制することができる。
また、ブロック30に対して前記窪み60を形成する位置を、前記溝部20の溝底25から溝部20の開口部26の方向に当該溝部20の溝深さdの0.7倍以下の位置に設けている。これにより、上記の切欠き40が同様な位置に形成されている場合と同様に、車両の走行により踏面10が摩耗した場合でも、踏面10が、窪み60が形成されている部分まで摩耗する時間を長くすることができる。この結果、長時間に渡り耐偏摩耗性を維持することができる。
図10〜図13は、窪みを溝部の溝深さ方向に複数形成した図である。なお、前記窪み60は、1つの角部32近傍から1つの壁面31に、溝部20の溝深さ方向に複数形成しつつ、上記の窪み60と同様に角部32から離れる方向に複数形成してもよい。例えば、図10に示すように、同じ体積で形成される窪み60を、角部32近傍には溝深さ方向に最も多く設け、当該角部32から離れるに従って前記溝深さ方向の数は減らして形成してもよい。また、このように溝深さ方向に窪み60を複数設ける際には、溝深さ方向、及び角部32から離れる方向の両方向において、それぞれ窪み60の直径や深さ、或いは体積を異ならせて設けてもよい。例えば、図11に示すように、溝深さ方向に複数設ける窪み60の体積を異ならせ、さらに、角部32から離れる方向に複数設ける窪み60の体積を、角部32から離れるに従って小さくなるように形成してもよい。また、このように溝深さ方向に複数形成しつつ、角部32から離れる方向にも複数形成する窪み60の配置は、どのように配置してもよい。例えば、図12、図13に示すように、角部32近傍に溝深さ方向に複数設けられた窪み60の最も踏面10側の窪み60、または、最も溝底25側の窪み60から、前記角部32から離れる方向に複数の窪み60を設け、さらに、前記角部32から離れるに従って溝深さに複数形成される窪み60を、前記角部32から離れるに従って数が減少するように設けてもよい。
要は、壁面31に複数形成される窪み60を全体的に見て、溝深さ方向の窪み60の合計の体積が、角部32近傍から、当該角部32から離れるに従って減少傾向になるように形成されていればよい。溝深さ方向の窪み60の合計の体積が大きい方が、踏面10に荷重がかかった際により大きく潰れる方向に変形することができるので、窪み60をこのように形成することにより、荷重が大きくかかる角部32近傍の窪み60を大きく変形させ、角部32から離れるに従って変形を小さくすることができる。踏面10にかかる荷重も角部32から離れるに従って小さくなるので、これにより、荷重が大きい部分が大きく変形して踏面10の接地圧を大きく減少させ、荷重が小さい部分は小さく変形して前記接地圧を少しだけ減少させるので、踏面10の接地圧の均一化を図ることができる。この結果、接地圧の不均一に起因するヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制することができる。
また、複数形成する窪み60の1つ1つを上記の大きさで形成し、溝深さ方向に複数設ける位置は、上記の範囲に設けることにより、操縦安定性を維持しつつ、より効果的に偏摩耗を抑制し、さらに、耐偏摩耗性を長時間に渡り維持する窪み60を、容易に形成することができる。
また、複数設けられる窪み60の大きさや位置が上記にように形成されていれば、数や形状はどのように形成されていてもよい。溝部20の溝深さやブロック30の形状、踏面10にかかる荷重などを考慮して、窪み60の大きさや数、配置を調整することにより、偏摩耗を、より効果的に抑制することができる。このように窪み60は、1つ1つが上記の形状で形成され、当該窪み60の形成される範囲が上記の範囲内であれば、その数及び詳細な寸法は問わない。
なお、上記の切欠き40及び窪み60は、乗用車等に使用する空気入りタイヤのみでなく、トラック等に使用する重荷重用空気入りタイヤのブロック30に形成してもよい。この重荷重用空気入りタイヤは、例えば、前記溝部20の溝深さdが14mm以上25mm以下で形成されており、トレッド部2を形成するゴムのJIS A硬度(JIS K 6253)が58以上73以下で形成されている空気入りタイヤである。この重荷重用空気入りタイヤに、上記の空気入りタイヤ1、51に切欠き40或いは窪み60を形成する場合と同様に、切欠き40或いは窪み60を形成することにより、当該重荷重用空気入りタイヤにおいても、踏面10の角部32付近にかかる荷重を減少させ、踏面10の接地圧の均一化を図ることができる。この結果、踏面10の接地圧の不均一に起因する偏摩耗を抑制することができる。
また、切欠き40または窪み60の大きさや形状、配置等を、上記の空気入りタイヤ1、51に形成されるものと同様に形成することにより、操縦安定性を維持しつつ、より効果的に偏摩耗を抑制し、さらに、耐偏摩耗性を長時間に渡り維持する切欠き40または窪み60を有する重荷重用空気入りタイヤを、容易に、高水準な品質で形成することができる。
以下、上記の空気入りタイヤについて、従来の空気入りタイヤと本発明の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、耐偏摩耗性、操縦安定性の2項目について行なった。
試験方法は、11R22.5のサイズのタイヤを22.5×7.50のリムに組付けて内圧を800kPaに設定したのち、車両形式2D4のトラックに取り付けて走行をする。耐偏摩耗性については、3万km走行した後、各空気入りタイヤの摩耗状態を調査し、結果を指数で示した。指数が大きい程、耐偏摩耗性が優れている。操縦安定性については、上記のトラックで走行後、テストドライバーによるフィーリング評価を行い、点数付けを行なった。点数が高い程、操縦安定性が優れている。この評価試験を、ブロック30の壁面31に切欠き40が形成されたタイプと、ブロック30の壁面31に窪み60が形成されたタイプとの、それぞれについて行なう。切欠き40または窪み60は、双方とも1つのブロック30が有する4箇所の角部32に形成する。
図14は、切欠きが形成される空気入りタイヤの各部の記号を示す図である。図15は、図14のP−P断面図である。試験をする空気入りタイヤは、切欠き40が形成されたタイプでは、本発明が3種類、従来例が1種類、本発明と比較する比較例が3種類を用いて、上記の方法で試験する。試験をする本発明の空気入りタイヤ、従来例及び比較例の空気入りタイヤは、ブロック30の1つの角部32を形成する2つの壁面31のうち、一方の壁面31の幅Lが40mm、他方の壁面の幅Wが35mm、当該壁面によって形成される溝部の溝深さdが15mmで形成されている。
従来例は、壁面31に切欠き40が形成されていない従来の空気入りタイヤであり、耐偏摩耗性の指数は100、操縦安定性の点数は3として、この従来例の試験結果が基準となって指数表示及び点数付けを行なっている。また、耐偏摩耗性は、指数がこの従来例よりも5以上高くなった場合に、効果があるものとする。
比較例1は、上記2つの壁面31の双方に形成される切欠き40のうち、幅L側の壁面31に形成される切欠き40の長さA、即ち、切欠き40が形成されている部分の角部32から切欠き端部48までの距離Aが5mm、幅W側の壁面31に形成される切欠き40の長さBが5mmで形成されている。さらに、当該切欠き40の最大深さCは2.5mm、最小深さは0mm、切欠き40の最大幅Eは3mmで形成されており、当該切欠き40が形成される位置は、溝部20の溝底25から開口部26方向の1〜3mmの範囲に形成されている。比較例2は、切欠き40の長さA及びBは共に10mm、最大深さC及び最小深さが共に2.5mmで、切欠き40の最大幅Eは3mmで形成されており、当該切欠き40が形成される位置は、溝部20の溝底25から開口部26方向の6〜9mmの範囲に形成されている。即ち、比較例2の切欠き40は、一定の深さで形成されている。比較例3は、切欠き40の長さA及びBは共に10mm、最大深さCは2.5mm、最小深さは0mm、切欠き40の最大幅Eは3mmで形成されており、当該切欠き40が形成される位置は、溝部20の溝底25から開口部26方向の11〜13mmの範囲に形成されている。
本発明1は、切欠き40の長さA及びBは共に5mm、最大深さCは2.5mm、最小深さは0mm、切欠き40の最大幅Eは3mmで形成されており、当該切欠き40が形成される位置は、溝部20の溝底25から開口部26方向の6〜9mmの範囲に形成されている。本発明2は、切欠き40の長さA及びBは共に10mm、最大深さCは2.5mm、最小深さは0mm、切欠き40の最大幅Eは3mmで形成されており、当該切欠き40が形成される位置は、溝部20の溝底25から開口部26方向の6〜9mmの範囲に形成されている。本発明3は、切欠き40の長さA及びBは共に10mm、最大深さCは4mm、最小深さは0mm、切欠き40の最大幅Eは3mmで形成されており、当該切欠き40が形成される位置は、溝部20の溝底25から開口部26方向の6〜9mmの範囲に形成されている。これらの従来例、比較例1〜3、及び本発明1〜3の空気入りタイヤを、上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表1に示す。
各種空気入りタイヤの評価試験による試験結果は、従来例は、上記のように耐偏摩耗性、操縦安定性共にこの従来例の結果が基準となっており、耐偏摩耗性=100、操縦安定性=3となっている。比較例1では、耐偏摩耗性=103、操縦安定性=2となっている。比較例2では、耐偏摩耗性=102、操縦安定性=2.5となっている。比較例3では、耐偏摩耗性=102、操縦安定性=3となっている。本発明1では、耐偏摩耗性=105、操縦安定性=3となっている。本発明2では、耐偏摩耗性=110、操縦安定性=3となっている。本発明3では、耐偏摩耗性=107、操縦安定性=2.5となっている。
上記の試験では、比較例1では、切欠き40の位置が溝底25に近いため、操縦安定性が低下している。比較例2は、切欠き40が一定の深さで形成されているため、耐偏摩耗の効果が従来例と比較してあまり向上せず、操縦安定性は低下している。比較例3は、切欠き40を形成する高さが高過ぎる、つまり、溝部20の開口部26寄りの位置に形成されているため、耐偏摩耗の効果が従来例と比較してあまり向上していない。
上記の試験で明らかなように、本発明は、壁面31の中腹部に上記のような切欠き40を形成することによって、耐偏摩耗性を向上させることができ、且つ、操縦安定性を維持することができる。さらに、切欠き40を形成する位置を、溝底25から開口部26方向に向けて当該溝深さdの0.3倍〜0.7倍の範囲に形成することにより、操縦安定性を維持しつつ、より効果的に偏摩耗を抑制することができる。このように、ブロック30の壁面31の上記の範囲に、上記の切欠き40を形成することにより、接地圧の不均一に起因するヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制することができる。
図16は、窪みが形成される空気入りタイヤの各部の記号を示す図である。図17は、図16のQ−Q断面図である。また、試験をする空気入りタイヤは、窪み60が形成されたタイプでは、本発明が3種類、従来例が1種類、本発明と比較する比較例が1種類を用いて、上記の方法で試験する。各空気入りタイヤのブロック30の各寸法は、上記切欠き40が形成されたタイプの試験で用いた空気入りタイヤと同寸法で形成されている。
また、本発明及び比較例の空気入りタイヤの壁面31に形成される窪み60は、1つの壁面31において角部32の近傍から、当該角部32から離れる方向に3つずつ形成されている。各窪み60の寸法は、窪み60が形成される壁面31のうち、幅Lを有する壁面31に形成される窪み60の深さは、角部32近傍から離れるに従って、Ca1、Ca2、Ca3で表され、また、直径は、Da1、Da2、Da3で表される。また、窪み60が形成される壁面31のうち、幅Wを有する壁面31に形成される窪み60の深さは、角部32近傍から離れるに従って、Cb1、Cb2、Cb3で表され、直径は、Db1、Db2、Db3で表される。また、これらの窪み60が形成される位置は、全て溝部20の溝底25から開口部26方向の6〜9mmの範囲に形成されている。
従来例は、壁面31に窪み60が形成されていない従来の空気入りタイヤであり、上記の切欠き40が形成されたタイプの試験で用いた従来例の空気入りタイヤと同一のものである。また、上記の試験と同様に、この従来例の指数及び点数を基準として指数表示及び点数付けを行い、耐偏摩耗性は、指数がこの従来例よりも5以上高くなった場合に、効果があるものとする。
比較例は、窪み60が形成される範囲、即ち、角部32から窪み60の最も離れている部分までの距離は、幅Lを有する壁面31に形成される窪み60についての幅Fが15mm、同様に幅Wを有する壁面31に形成される窪み60についての幅Gも15mmで形成されている。また、各窪み60の深さは、Ca1、Ca2、Ca3、Cb1、Cb2、Cb3が全て2mmで形成されており、各窪み60の直径は、Da1、Da2、Da3、Db1、Db2、Db3が全て3mmで形成されている。
本発明4は、幅F及び幅Gが共に15mmで形成されている。また、各窪み60の深さは、Ca1=2mm、Ca2=1.5mm、Ca3=1mm、Cb1=2mm、Cb2=1.5mm、Cb3=1mmで形成されており、各窪み60の直径は、Da1=3.5mm、Da2=2.5、Da3=1.5mm、Db1=3.5mm、Db2=2.5mm、Db3=1.5mmで形成されている。本発明5は、幅F及び幅Gが共に15mmで形成されている。また、各窪み60の深さは、Ca1、Ca2、Ca3、Cb1、Cb2、Cb3が全て2mmで形成されており、各窪み60の直径は、Da1=3.5mm、Da2=2.5、Da3=1.5mm、Db1=3.5mm、Db2=2.5mm、Db3=1.5mmで形成されている。本発明6は、幅F及び幅Gが共に15mmで形成されている。また、各窪み60の深さは、Ca1=2mm、Ca2=1.5mm、Ca3=1mm、Cb1=2mm、Cb2=1.5mm、Cb3=1mmで形成されており、各窪み60の直径は、Da1、Da2、Da3、Db1、Db2、Db3が全て3mmで形成されている。これらの従来例、比較例、及び本発明4〜6の空気入りタイヤを、上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表2に示す。
各種空気入りタイヤの評価試験による試験結果は、従来例は、上記のように耐偏摩耗性、操縦安定性共にこの従来例の結果が基準となっており、耐偏摩耗性=100、操縦安定性=3となっている。比較例では、耐偏摩耗性=102、操縦安定性=2.5となっている。本発明4では、耐偏摩耗性=108、操縦安定性=3となっている。本発明5では、耐偏摩耗性=105、操縦安定性=3となっている。本発明6では、耐偏摩耗性=105、操縦安定性=3となっている。
上記の試験では、比較例では、複数形成される窪み60の深さと直径が全て同一、即ち、体積が同一なので、踏面10の接地圧の均一化を図ることが困難であるため、耐偏摩耗性があまり向上しない。また、複数形成される窪み60の体積が、大きめの体積で同一となっているため、ブロックの剛性が低下し、操縦安定性が低下している。
上記の試験で明らかなように、本発明は、壁面31の中腹部に上記のように所定の深さ及び直径によって形成される複数の窪み60を設けることによって、耐偏摩耗性を向上させることができ、且つ、操縦安定性を維持することができる。さらに、窪み60を形成する位置を、溝底25から開口部26方向に向けて当該溝深さdの0.3倍〜0.7倍の範囲に形成することにより、操縦安定性を維持しつつ、より効果的に偏摩耗を抑制することができる。このように、ブロック30の壁面31の上記の範囲に、上記の様に複数の窪み60を形成することにより、接地圧の不均一に起因するヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制することができる。
図18は、ジグザグ状に形成された溝部を有するトレッド部を示す図である。図19は、図18の陸部の壁面に切欠きを形成した場合の斜視図である。図20は、図18の陸部の壁面に窪みを形成した場合の斜視図である。なお、上記の説明は、トレッドパターンがブロックパターンで形成される空気入りタイヤ及び重荷重用空気入りタイヤを説明したが、トレッドパターンは、その他のパターン形状でもよい。前記溝部20は、直線で形成された縦溝21と横溝22とが交差して形成されているが、溝部20は、複数の方向に形成された溝同士が、交差する部分で結合され、この結合された溝同士が、当該結合された部分で屈曲した1つの溝部20となる形状で形成されてもよい。つまり、溝部20は、複数の方向に向かって形成し、複数の屈曲部75を有するジグザグ状で形成される溝部71で形成されていてもよい。
例えば、リブパターンやリブラグパターンにおいて、図18に示すように、溝部71がジグザグ状の形状で形成されている場合には、陸部70の、溝部71に面している部分は角部74を有する。この角部74のうち、溝部71側に凸となる角部74及び当該角部74を形成する壁面73に、図19に示すように、上記の切欠き40と同様な切欠き80を形成する、或いは、図20に示すように、上記の窪み60と同様な窪み90を形成してもよい。溝部71がジグザグ状の形状で形成されることによって形成される陸部70の角部のうち、角部の角度が180°以下で形成される角部74、即ち、溝部71側に凸となる角部74には、ブロック30の角部32と同様に踏面72に大きく荷重がかかる。そのため、この部分に切欠き80または窪み90を設けることにより、ブロック30の角部32に切欠き40や窪み60を設けた場合と同様に、踏面72の接地圧の均一化を図ることができる。この結果、踏面72の接地圧の不均一に起因するレールウェイ、リブパンチング摩耗等の偏摩耗を抑制することができる。
また、複数の陸部70に切欠き80や窪み90を設け、リブパターン或いはリブラグパターンの踏面72の接地圧の均一化を図った場合には、同時に溝部71を介して隣接する陸部70の踏面72同士の接地圧の均一化をも図るなど、異なる陸部70の踏面72同士の接地圧の均一化を図ることができる。この結果、異なる陸部70の踏面72同士の接地圧の不均一に起因するパンチング摩耗をも抑制することができる。
また、切欠き80または窪み90の大きさや形状、配置等を、上記の切欠き40または窪み60と同様にすることにより、操縦安定性を維持しつつ、より効果的に偏摩耗を抑制し、さらに、耐偏摩耗性を長時間に渡り維持する切欠き80または窪み90を有する重荷重用空気入りタイヤを、容易に、高水準な品質で形成することができる。
また、前記切欠き40は、略三角錐状の形状で形成されているが、切欠き40の形状は、切欠き端部48を頂点とする三角錐以外の角錐状の形状や、円錐または楕円錐の一部となる形状などの形状で形成してもよい。角部32から切欠き端部48に向かうに従って、切欠き40形成方向に見た場合の断面積が小さくなる形状であれば、その形状は問わない。また、前記窪み60は、略半球状の形状で形成されているが、窪み60の形状は、窪み開口部61は楕円形や多角形で形成されていてもよく、窪み60の断面形状も楕円の一部や多角形の一部となるような形状で形成されていてもよい。また、複数形成する窪み60の形状は、同一形状で形成されていてもよく、異なる形状で形成されていてもよい。また、窪み60を半球状の形状で形成する場合、複数の窪み60の各半球の半径の大きさは同一でも異なっていてもよい。要は、壁面31に複数形成される窪み60を全体的に見て、溝深さ方向の窪み60の合計の体積が、角部32近傍から、当該角部32から離れるに従って減少傾向になるように形成されていれば、窪み60の1つ1つの形状はどのような形状で形成されていてもよい。