JP4341473B2 - X線撮影装置 - Google Patents

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Description

この発明は、被検体にX線ビームを照射するX線管と、X線ビームの照射により生じる被検体の透過X線像を検出する2次元X線検出器とを備え、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号を収集してX線画像を取得するX線撮影装置に係り、特にX線管の焦点の位置の移動に起因するX線画像の画質低下を防止するための技術に関する。
この種のX線撮影装置のひとつにX線透視撮影装置がある。従来のX線透視撮影装置は、図6に示すように、被検体MにX線ビームXbを照射するX線管61と、X線ビームXbの照射により生じる被検体Mの透過X線像を検出するイメージインテンシファイア等の2次元X線検出器62とを備え、撮影テーブル63の上に載置された被検体MへのX線ビームXb照射に伴って2次元X線検出器62から出力されるX線検出信号を収集してX線透視画像を取得する構成とされている。
しかしながら、上記従来のX線透視撮影装置は、往々にして取得されたX線透視画像にX線管61の焦点61aの位置の移動に起因する画質低下が生じるという問題がある。
即ち、従来のX線透視撮影装置に装備されているX線管61の場合、電子ビームがターゲットに照射されることによりX線ビームXbが放射される構成とされている。ただ、電子ビームの軌道は常に一定ではなくて経時的に変化する。電子ビームの軌道が変化すると、X線管61のターゲット上の電子ビームの照射位置が変化するので、X線管61の焦点61aの位置が移動する。X線管61の焦点61aの位置が移動すると、被検体Mの撮影ポイントが移動することになり、その結果、被写体である被検体は撮影中にブレたことになるので、取得されるX線透視画像はボケる。X線透視撮影は、S/N比を向上させるため長時間露光を行なうことが多いので、X線管61の焦点61aの位置の移動の影響を強く受けることになり、X線透視画像はボケ易い。
このX線管61の焦点61aの位置の移動現象は、装置の起動時に顕著である。したがって、通常、装置の起動時は、X線管61の焦点61aの位置の移動現象が十分に収まるのを待って、X線透視画像取得用のX線検出信号の収集を開始するようにすることで、X線管61の焦点61aの位置の移動に起因するX線透視画像のボケを防止している。
しかし、X線管61の焦点61aの位置の移動現象は一定しておらず、十分な時間待ったつもりでも、X線管61の焦点61aの位置の移動現象は十分に収まっていないこともしばしばある。装置の起動から更に長い時間が経過するまで待てば、X線管61の焦点61aの位置の移動現象は十分に収まっているであろうけれど、それでは撮影時間が非常に長くなってしまう。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、X線管の焦点の位置の移動に起因するX線画像の画質低下を確実かつ適切に防止することができるX線撮影装置を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明に係るX線撮影装置は、被検体にX線ビームを照射するX線管と、X線ビームの照射により生じる被検体の透過X線像を検出する2次元X線検出器とを備え、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号を収集すると共に収集されたX線検出信号に基づいてX線画像を取得するX線撮影装置において、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいてX線管の焦点の位置が移動する速度である管球焦点の移動速度を計測する焦点速度計測手段と、焦点速度計測手段により計測された管球焦点の移動速度が予め定められた基準速度未満であるか否かを判定する焦点速度判定手段を備え、焦点速度判定手段により管球焦点の移動速度が基準速度未満であると判定された時から以降に2次元X線検出器からの本番画像取得用のX線検出信号の収集を開始することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明のX線撮影装置によりX線撮影を実行する場合、装置を起動した後、先ずX線管により被検体にX線ビームを照射する。そして、焦点速度計測手段により、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいてX線管の焦点の位置が移動する速度である管球焦点の移動速度を計測すると共に、焦点速度計測手段で計測された管球焦点の移動速度が予め定められた基準速度未満であるか否かを焦点速度判定手段により判定する。もし焦点速度判定手段により管球焦点の移動速度が基準速度未満であると判定された時は、2次元X線検出器からの本番画像取得用のX線検出信号の収集を開始すると共に、収集されたX線検出信号に基づいて本番画像としてのX線画像を取得する。
即ち、請求項1に記載の発明のX線撮影装置の場合、焦点速度計測手段により管球焦点の移動速度を計測すると共に、計測された管球焦点の移動速度が焦点速度判定手段により予め定められた基準速度未満である、つまりX線管の焦点の位置が十分に安定したと判定された時点以降に2次元X線検出器から本番画像取得用のX線検出信号の収集が行なわれる。その結果、本番用X線画像はX線管の焦点の位置が十分に安定した後で収集されたX線検出信号に基づいて取得されることになるので、X線管の焦点の位置の移動に起因する画質低下が本番用X線画像に生じることはない。
また、請求項1に記載の発明のX線撮影装置の場合、管球焦点の移動速度は、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいて計測するという実質的に既設の装備を利用して計測されるので、X線管自体やX線管の近傍に管球焦点の移動速度を計測する為の装備を新たに追加する必要がない。
加えて、放散性のX線ビームの照射で生じる透過X線像は拡大像となって2次元X線検出器に投影される。したがって、X線管の焦点の位置の動きは自ずと、2次元X線検出器から出力されるX線検出信号に拡大された状態で反映されるので、管球焦点の移動速度を計測する上で観測する必要がある管球焦点の移動状況が的確に把握できる。その結果、管球焦点の移動速度は、特に困難を伴わずに正確に計測される。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線撮影装置において、X線管として、電子ビームがターゲットの裏面に照射されるのに伴ってターゲットの表面からX線ビームが放射される透過型X線管が備えられているものである。
[作用・効果]請求項2の発明のX線撮影装置の場合、被検体にX線ビームを照射する透過型X線管は、X線ビームが照射される被検体をX線管の焦点が存在するターゲットの前面の極至近距離の処に配置して被検体とX線管の焦点の間の距離を短くすることにより、X線ビームの照射により生じる被検体の透過X線像の拡大率を大きくできるので、高倍率のX線画像が取得できる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のX線撮影装置において、焦点速度計測手段は、2次元X線検出器から出力されるX線検出信号にしたがって次々と取得される移動速度計測用X線透視画像のうち取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像のX線検出信号を用いて両画像の間の画像の一致度を求める信号処理を行なうと共に、信号処理で求められた画像の一致度と2枚のX線透視画像の間の時間差とにしたがって管球焦点の移動速度を計測するものである。
[作用・効果]請求項3の発明のX線撮影装置の場合、X線管の焦点の位置の移動に伴うX線検出信号の経時的変化は、取得タイミングの異なる2枚の移動速度計測用X線透視画像の間の画像の一致度の変動として現れる。また取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像の間の画像の一致度の程度は、管球焦点の移動速度および2枚のX線透視画像の間の時間差とそれぞれ反比例の関係にある。したがって、請求項3の発明のX線撮影装置によれば、取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像のX線検出信号を用いて信号処理を行なって求めた2枚のX線透視画像の間の画像の一致度と時間差にしたがって管球焦点の移動速度が速やかに計測できる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のX線撮影装置において、焦点速度計測手段は、2次元X線検出器から出力されるX線検出信号にしたがって次々と取得される移動速度計測用X線透視画像のうち取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像のX線検出信号を用いて両画像の中の特定像の位置ズレ量を求める信号処理を行なうと共に、信号処理で求められた画像の位置ズレ量と2枚のX線透視画像の間の時間差とにしたがって管球焦点の移動速度を計測するものである。
[作用・効果]請求項4の発明のX線撮影装置の場合、X線管の焦点の位置の移動に伴うX線検出信号の経時的変化は、取得タイミングの異なる2枚の移動速度計測用X線透視画像の中の特定像の位置ズレ量の変動として現れる。また取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像の中の特定像の位置ズレ量の程度は、管球焦点の移動速度および2枚のX線透視画像の間の時間差とそれぞれ反比例の関係にある。したがって、請求項4の発明のX線撮影装置によれば、取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像のX線検出信号を用いて信号処理を行なって求めた2枚のX線透視画像の中の特定像の位置ズレ量と時間差にしたがって管球焦点の移動速度が速やかに計測できる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のX線撮影装置において、焦点速度判定手段における基準速度は、〔取得されるX線画像における画素1個分の寸法〕/〔1枚のX線画像を取得するために行なわれるX線ビームの露光時間〕以下の速度に定められているものである。
[作用・効果]請求項5の発明のX線撮影装置の場合、1枚のX線画像を取得するために行なわれるX線ビームの露光時間の間にX線管の焦点の位置が取得するX線画像の1個の画素の内に留まることになるので、X線画像の各画素では、隣接する画素との間で画像のダブリを生じない。その結果、X線管の焦点の位置の移動に起因するX線画像の画質低下をより確実に防止できる。
請求項1の発明のX線撮影装置の場合、焦点速度計測手段により管球焦点の移動速度を計測すると共に、計測された管球焦点の移動速度が焦点速度判定手段により予め定められた基準速度未満である、つまりX線管の焦点の位置が十分に安定したと判定された時点以降に2次元X線検出器から本番画像取得用のX線検出信号の収集が行なわれる。その結果、本番用X線画像はX線管の焦点の位置が十分に安定した後で収集されたX線検出信号に基づいて取得されることになるので、X線管の焦点の位置の移動に起因する画質低下が本番用X線画像に生じることはない。
また、請求項1に記載の発明のX線撮影装置の場合、管球焦点の移動速度は、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいて計測するという実質的に既設の装備を利用して計測されるので、X線管ないしX線管の近傍に管球焦点の移動速度を計測する為の装備を新たに追加する必要がない。
加えて、放散性のX線ビームの照射で生じる透過X線像は拡大像として2次元X線検出器に投影される。したがって、X線管の焦点の位置の動きは自ずと、2次元X線検出器から出力されるX線検出信号に拡大された状態で反映されるので、管球焦点の移動速度を計測する上で観測する必要がある管球焦点の移動状況が的確に把握できる。その結果、管球焦点の移動速度は、特に困難を伴わずに正確に計測される。
よって、請求項1の発明のX線撮影装置によれば、X線管の焦点の位置の移動に起因するX線画像の画質低下を確実かつ適切に防止することができる。
この発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は実施例1に係る工業用のX線透視撮影装置の全体的な構成を示すブロック図である。
実施例1のX線透視撮影装置は、被検体Mにコーン状のX線ビームXBを照射する透過型X線管1と、X線ビームXBの照射により生じる被検体Mの透過X線像を検出する2次元X線検出器2と、撮影テーブル3の上に載置された被検体MへのX線ビームXB照射に伴って2次元X線検出器2から出力されるX線検出信号を収集するX線検出信号収集部4と、X線検出信号収集部4により収集されたX線検出信号に基づいてX線透視画像を取得するX線透視画像取得部5を備えている他、X線透視画像取得部5で取得されたX線透視画像やX線撮影に必要な操作メニューなどを画面に映し出す表示用モニタ6や、X線撮影に必要な指令やデータ等を入力する操作を行なう操作部7などを備えている。
透過型X線管1は、図1に示すように、電子ビームEBがターゲット1Aの裏面に照射されるのに伴ってターゲット1Aの表面からX線ビームXBが放射される構成とされている。透過型X線管1の場合、電子ビームEBはフィラメント1Bから放出された後、2段の偏向コイル1C,1Dにより電子線照射軸合わせの為のアライメントを受けてから、収束レンズ1Eで絞られながらアパーチュア1Fを通り抜けてターゲット1Aの裏面に当てられる。電子ビームEBの照射に伴ってターゲット1Aの表面からX線が放散しながらコーン状のX線ビームXBとなって前方の被検体Mに向けて進む。
X線撮影の実行の際には、高電圧電源(図示省略)を含むX線照射制御部8の制御を受けながら透過型X線管1がX線ビームXBを被検体Mに照射する。
2次元X線検出器2としては、イメージインテンシファイアやフラットパネル型X線検出器(FPD)等が用いられる。X線ビームXBの照射により生じる被検体Mの透過X線像が2次元X線検出器2のX線検出面に投影されて電気信号に変換された後、X線透視画像取得用などのX線検出信号として2次元X線検出器2から読み出されて出力される。
なお、X線ビームXBは放散性であるので、X線ビームXBの照射で生じる透過X線像は拡大像となって2次元X線検出器2に投影されることになる。
また、透過型X線管1の場合、X線ビームXBが照射される被検体MをX線管1の焦点が存在するターゲット1Aの前面の極至近距離の処に配置して被検体MとX線管1の焦点の間の距離を短くすることにより、X線ビームXBの照射により生じる被検体Mの透過X線像の拡大率をアップできるので、高倍率のX線透視画像を取得できるというメリットがある。
一方、X線撮影の被写体として撮影テーブル3の上に載せられる被検体Mとしては、例えば集積回路やボールグリッドアレイ等の電子デバイス類が典型的なものとして挙げられる。集積回路やボールグリッドアレイの場合、X線撮影して表示用モニタ6の画面に集積回路やボールグリッドアレイのX線透視画像を映し出しておいて、集積回路の内部欠陥やボールグリッドアレイのハンダ付け不良などを検査する。
そして、実施例1のX線透視撮影装置は、被検体MへのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器2から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいて透過型X線管1の焦点1aの位置が移動する速度である管球焦点の移動速度を計測する焦点速度計測部9と、焦点速度計測部9により計測された管球焦点の移動速度が予め定められた基準速度未満であるか否かを判定する焦点速度判定部10とを備え、焦点速度判定部10により管球焦点の移動速度が基準速度未満であると判定された時から以降に、X線検出信号収集部4が2次元X線検出器2からの本番透視画像取得用のX線検出信号の収集を開始する構成とされている。
透過型X線管1の場合、加熱されたフィラメント1Bが傾いたり、偏向コイル1C,1Dや収束レンズ1Eのコイルに流れる電流が電源出力のドリフトやコイルの発熱で変動し電子ビームEBにかかる磁界が変化することによって、電子ビームEBの軌道が経時的に変化する。電子ビームEBの軌道が変化すると、透過型X線管1のターゲット1Aに対する電子ビームEBの照射位置が変化するので、透過型X線管1の焦点1aの位置が移動する。透過型X線管1の焦点1aの位置が移動すると、被検体Mの撮影ポイントが移動する。
その結果、被写体である被検体Mは撮影中にブレたことになるので、取得されるX線透視画像がボケる。透過型X線管1の焦点1aの位置の移動は、装置の起動時に顕著であり、装置の起動開始後、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動が収まるまでには、例えば0.5秒〜10秒程度の時間がかかる。
しかし、実施例1のX線透視撮影装置の場合、以下に具体的に説明するように、焦点速度計測部9と焦点速度判定部10とを備えるこたとにより、透過型X線管1の焦点1aの位置が移動するのに起因してX線透視画像がボケることを確実に防止できる。
実施例1のX線透視撮影装置によりX線撮影を実行する場合、装置を起動した後、先ず透過型X線管1により被検体MにX線ビームXBを照射する。そして、焦点速度計測部9により、被検体MへのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器2から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいてX線管1の焦点の位置が移動する速度である管球焦点の移動速度を計測すると共に、焦点速度計測部9で計測された管球焦点の移動速度が予め定められた基準速度未満であるか否かを焦点速度判定部10により判定する。
そして、もし焦点速度判定部10により管球焦点の移動速度が基準速度未満であると判定された時は、X線検出信号収集部4が2次元X線検出器2からの本番透視画像取得用のX線検出信号の収集を開始すると共に、X線検出信号収集部4により収集されたX線検出信号に基づいてX線透視画像取得部5が本番用X線透視画像を取得する。X線透視画像取得部5により取得された本番用X線透視画像は、適時、表示用モニタ6の画面に映し出される。
即ち、実施例1のX線透視撮影装置の場合、焦点速度計測手段により管球焦点の移動速度を計測すると共に、計測された管球焦点の移動速度が焦点速度判定部10により予め定められた基準速度未満である、つまり透過型X線管1の焦点1aの位置が十分に安定したと判定された時点以降に2次元X線検出器2から本番透視画像取得用のX線検出信号の収集が行なわれる。その結果、本番用X線透視画像は透過型X線管1の焦点1aの位置が十分に安定した後で収集されたX線検出信号に基づいて取得されることになるので、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動に起因する画質低下が本番用X線透視画像に生じるようなことはない。
なお、主制御部11は、CPUと動作プログラムを中心に構成されており、撮影の進行状況や操作部7の入力操作に応じた指令信号やデータを各部へ送出し、装置全体の動きを統括し、装置が正常に稼働するように制御を実行する。
次に、焦点速度計測部9による管球焦点の移動速度の計測について具体的に説明する。即ち、実施例1の装置の場合、焦点速度計測部9は、2次元X線検出器2から出力されるX線検出信号にしたがって次々と取得される移動速度計測用X線透視画像のうち取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像のX線検出信号を用いて両画像の間の画像の一致度を求める信号処理を行なうと共に、信号処理で求められた画像の一致度と2枚のX線透視画像の間の時間差とにしたがって管球焦点の移動速度を繰り返す計測する構成とされている。
実施例1の装置の場合、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動に伴うX線検出信号の経時的変化は、図2および図3に示すように、取得タイミングの異なる2枚の移動速度計測用のX線透視画像PA,PBの間の画像の一致度の変動として現れる。図2のX線透視画像PAの直ぐ次に図3のX線透視画像PBが取得されていて、X線透視画像PAから左斜め上向きに動いてX線透視画像PBに移行しているので、透過型X線管1の焦点1aの位置は左斜め上方へ移動していることになる。
また取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像PA,PBの間の画像の一致度の程度は、管球焦点の移動速度および2枚のX線透視画像PA,PBの間の時間差とそれぞれ反比例の関係にある。したがって、実施例1の装置によれば、取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像PA,PBのX線検出信号を用いて信号処理を行なって求めた2枚のX線透視画像PA,PBの間の画像の一致度と時間差にしたがって管球焦点の移動速度が速やかに計測される。
なお、焦点速度計測部9は、移動速度計測用X線透視画像の為のX線検出信号の収集機能とX線透視画像の取得機能を自前で備えているが、焦点速度計測部9は、X線検出信号収集部4とX線透視画像取得部5により取得された移動速度計測用X線透視画像を用いて管球焦点の移動速度を計測する構成であってもよい。
X線透視画像PA,PBの間の画像の一致度Gは、例えば次のようにして求められる。先ず、X線透視画像PAの各画素PijについてX線検出信号が一定以上の信号強度(ピクセル値)を有する時の画素Pijと該当画素の合計個数Jを求める。合計個数Jは図2において斜線を施した領域の画素の総数である。
次にX線透視画像PAの各画素Pijに対応するX線透視画像PBの画素についてX線検出信号が一定以上の信号強度(ピクセル値)を有するか否かをチェックし、一定以上の信号強度を有する該当画素の合計個数jを求める。合計個数jは図3において斜線を施した領域の画素の総数である。
最後にX線透視画像PA,PBの間の画像の一致度G=(画素の合計個数j)÷(画素の合計個数J)なる演算を行なって画像の一致度Gを求める。透過型X線管1の焦点1aの位置の移動が完全に止まるとX線透視画像PA,PBは完全に一致し、画像の一致度G=1となり、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動が早くなるにつれ、X線透視画像PA,PBの間の画像の一致度が下がるので、画像の一致度Gの値も低下する。
一方、焦点速度計測部9では、透過型X線管1の焦点1aの位置が十分に安定したと判定する時の目安とする基準速度が、〔取得されるX線透視画像における画素1個分の寸法〕/〔1枚のX線透視画像を取得するために行なわれるX線ビームの露光時間〕以下の速度に定められている。したがって、1枚のX線透視画像を取得するために行なわれるX線ビームXBの露光時間の間に透過型X線管1の焦点1aの位置が取得するX線透視画像の1個の画素の内に留まることになるので、X線透視画像の各画素では、隣接する画素との間で画像のダブリを生じない。その結果、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動に起因する本番用X線透視画像のボケをより確実に防止することができる。
他方、実施例1の装置の場合、2枚のX線透視画像PA,PBの時間差を常に一定とすると共に、基準速度に対応する2枚のX線透視画像PA,PBの画像の一致度(の値)を予め求めておいて(つまり基準速度を2枚のX線透視画像PA,PBの画像の一致度に変換しておいて)、基準速度を画像の一致度で焦点速度判定部10に予め登録しておく。そして、焦点速度計測部9は2枚のX線透視画像PA,PBの画像の一致度を管球焦点の移動速度として計測し、そのまま焦点速度判定部10に送り込むことになる。したがって、実施例1の装置の焦点速度計測部9の場合、2枚のX線透視画像PA,PBの画像の一致度が即、管球焦点の移動速度となる。
しかし、2枚のX線透視画像PA,PBの画像の一致度と管球焦点の移動速度の対応関係を予め測定して焦点速度計測部9に登録しておくと共に、焦点速度判定部10には画像の一致度に変換せずに基準速度のまま登録しておいて、焦点速度計測部9が画像の一致度を登録した対応関係にしたがって管球焦点の移動速度に変換してから焦点速度判定部10に送り込む構成としてもよい。
以上に述べたように、実施例1の装置の場合、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動に起因するボケが本番用X線透視画像に生じることはないのに加え、管球焦点の移動速度は、被検体MへのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器2から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいて計測するという実質的に既設の装備を利用して計測する構成であるので、透過型X線管1ないし透過型X線管1の近傍に管球焦点の移動速度を計測する為の装備を新たに追加する必要がない。
さらに、放散性のX線ビームXBの照射で生じる透過X線像は拡大像として2次元X線検出器2に投影される。したがって、透過型X線管1の焦点1aの位置の動きは自ずと、2次元X線検出器2から出力されるX線検出信号に拡大された状態で反映されるので、管球焦点の移動速度を計測する上で観測する必要がある管球焦点の移動状況が的確に把握できる。その結果、管球焦点の移動速度は、特に困難を伴わずに正確に計測される。
よって、実施例1のX線透視撮影装置によれば、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動に起因する本番用X線透視画像のボケを確実かつ適切に防止することができる。
この発明の実施例2を図面を参照して説明する。図4および図5は、実施例2に係る工業用のX線透視撮影装置において、画像の中の特定像の位置ズレ量を求める対象としての2枚の画像の一方のX線透視画像paと他方のX線透視画像pbをそれぞれ示す模式図である。
実施例2のX線透視撮影装置は、焦点速度計測部9および焦点速度判定部10が以下に述べる方式で管球焦点の移動速度を計測する他は、実施例1の装置と実質的に同様の構成であるので、共通する点の説明は省略し、相違する点についてのみ説明する。
即ち、実施例2の装置は、焦点速度計測部9は、2次元X線検出器2から出力されるX線検出信号にしたがって次々と取得される移動速度計測用X線透視画像のうち取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像pa,pbのX線検出信号を用いて両画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量を求める信号処理を行なうと共に、信号処理で求められた画像の位置ズレ量と2枚のX線透視画像の間の時間差とにしたがって管球焦点の移動速度を繰り返し計測する。
実施例2の装置の場合、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動に伴うX線検出信号の経時的変化は、図4および図5に示すように、取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量の変動として現れる。図4のX線透視画像paの直ぐ次に図5のX線透視画像pbが取得されていて、X線透視画像paから右斜め下向きに動いてX線透視画像pbに移行しているので、透過型X線管1の焦点1aの位置は右斜め下方へ移動していることになる。
また2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量の程度は、管球焦点の移動速度および2枚のX線透視画像pa,pbの間の時間差とそれぞれ反比例の関係にある。したがって、実施例2の装置によれば、取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像pa,pbのX線検出信号を用いて信号処理を行なって求めた2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量と時間差にしたがって管球焦点の移動速度が速やかに計測できる。
より具体的には、2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量は、以下のようにして求められる。
先ず、X線透視画像を表示用モニタ6の画面に映し出しておいて、操作部7を使ってX線透視画像の中の適当な像をカーソルラインで囲むことにより、X線透視画像の中の特定像Qが指定されると、焦点速度計測部9が指定された特定像Qの輪郭を抽出・記憶する。更に、焦点速度計測部9は、記憶した特定像Qの輪郭に基づき2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像Qを割り出すと共に特定像Qの重心座標qを特定像の位置として求める。最後に、図5に示すように、2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像Qの重心座標qの間の距離を特定像Qの位置ズレ量ΔLとして算出する。
透過型X線管1の焦点1aの位置の移動がなくX線透視画像pa,pbが全く同じ画像であれば、2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の特定像Qの位置ズレ量ΔLは0となり、透過型X線管1の焦点1aの位置の移動が激しいほど、2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像Qの位置ズレ量ΔLは増大する。
一方、焦点速度計測部9では、透過型X線管1の焦点1aの位置が十分に安定したと判定する時の目安とする基準速度が、〔取得されるX線透視画像における画素1個分の寸法〕/〔1枚のX線透視画像を取得するために行なわれるX線ビームの露光時間〕以下の速度に定められている。
他方、実施例2の装置の場合、2枚のX線透視画像pa,pbの時間差を常に一定とすると共に、基準速度に対応する2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量を予め求めておいて(つまり基準速度を2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量に変換しておいて)、基準速度を画像の中の特定像の位置ズレ量でもって焦点速度判定部10に予め登録しておく。そして、焦点速度計測部9は2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像Qの位置ズレ量ΔLを管球焦点の移動速度として計測し、そのまま焦点速度判定部10に送り込むことになる。したがって、実施例2の装置の焦点速度計測部9の場合、2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像Qの位置ズレ量ΔLが即、管球焦点の移動速度となる。
しかし、2枚のX線透視画像pa,pbの中の特定像の位置ズレ量と管球焦点の移動速度の対応関係を予め測定して焦点速度計測部9に登録しておくと共に、焦点速度判定部10には特定像の位置ズレ量に変換せずに基準速度のまま登録しておいて、焦点速度計測部9が特定像Qの位置ズレ量ΔLを予め登録した対応関係にしたがって管球焦点の移動速度に変換してから焦点速度判定部10に送り込む構成としてもよい。
この発明は、上記の実施例に限られるものではなく、以下のように変形実施することも可能である。
(1)実施例1,2の装置は、透過型X線管1により被検体MにX線ビームXBが照射される構成であったが、透過型X線管1の代わりに反射型X線管を用いる他は実施例1,2と同じ構成である装置が、それぞれ変形例として挙げられる。
(2)実施例1,2の装置は、X線透視撮影装置であったが、この発明のX線撮影装置はX線透視撮影装置に限られるものではない。この発明は、2次元X線検出器2から収集したX線検出信号を、例えばFeldkampのコーンビーム再構成アルゴリズムに従って再構成処理を行なって被検体のX線断層画像を本番用X線画像として取得するコーンビーム式のX線CT装置に適用できる。
(3)実施例の装置は、工業用装置であったが、この発明は、工業用に限らず、医用や原子力用の装置にも適用できる。
実施例1のX線透視撮影装置の全体構成を示すブロック図である。 実施例1の装置において、画像の一致度を求める対象としての2枚のX線透視画像の一方の例を示す模式図である。 実施例1の装置において、画像の一致度を求める対象としての2枚のX線透視画像の他方の例を示す模式図である。 実施例2の装置において、画像の中の特定像の位置ズレ量を求める対象としての2枚のX線透視画像の一方の例を示す模式図である。 実施例2の装置において、画像の中の特定像の位置ズレ量を求める対象としての2枚のX線透視画像の他方の例を示す模式図である。 従来のX線透視撮影装置の撮影台の基本構成を示す模式図である。
符号の説明
1 … 透過型X線管
1A … ターゲット
1a … 焦点
2 … 2次元X線検出器
9 … 焦点速度計測部(焦点速度計測手段)
10 … 焦点速度判定部(焦点速度判定手段)
M … 被検体
PA,PB … X線透視画像
pa,pb … X線透視画像
Q … 特定像
ΔL … (特定像の)位置ズレ量
XB … X線ビーム
EB … 電子ビーム

Claims (5)

  1. 被検体にX線ビームを照射するX線管と、X線ビームの照射により生じる被検体の透過X線像を検出する2次元X線検出器とを備え、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号を収集すると共に収集されたX線検出信号に基づいてX線画像を取得するX線撮影装置において、被検体へのX線ビーム照射に伴って2次元X線検出器から出力されるX線検出信号の経時的変化に基づいてX線管の焦点の位置が移動する速度である管球焦点の移動速度を計測する焦点速度計測手段と、焦点速度計測手段により計測された管球焦点の移動速度が予め定められた基準速度未満であるか否かを判定する焦点速度判定手段を備え、焦点速度判定手段により管球焦点の移動速度が基準速度未満であると判定された時から以降に2次元X線検出器からの本番画像取得用のX線検出信号の収集を開始することを特徴とするX線撮影装置。
  2. 請求項1に記載のX線撮影装置において、X線管として、電子ビームがターゲットの裏面に照射されるのに伴ってターゲットの表面からX線ビームが放射される透過型X線管が備えられているX線撮影装置。
  3. 請求項1または2に記載のX線撮影装置において、焦点速度計測手段は、2次元X線検出器から出力されるX線検出信号にしたがって次々と取得される移動速度計測用X線透視画像のうち取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像のX線検出信号を用いて両画像の間の画像の一致度を求める信号処理を行なうと共に、信号処理で求められた画像の一致度と2枚のX線透視画像の間の時間差とにしたがって管球焦点の移動速度を計測するX線撮影装置。
  4. 請求項1または2に記載のX線撮影装置において、焦点速度計測手段は、2次元X線検出器から出力されるX線検出信号にしたがって次々と取得される移動速度計測用X線透視画像のうち取得タイミングの異なる2枚のX線透視画像のX線検出信号を用いて両画像の中の特定像の位置ズレ量を求める信号処理を行なうと共に、信号処理で求められた画像の位置ズレ量と2枚のX線透視画像の間の時間差とにしたがって管球焦点の移動速度を計測するX線撮影装置。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のX線撮影装置において、焦点速度判定手段における基準速度は、〔取得されるX線画像における画素1個分の寸法〕/〔1枚のX線画像を取得するために行なわれるX線ビームの露光時間〕以下の速度に定められているX線撮影装置。
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