JP4341099B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気、電子部品、半導体チップ等の絶縁封止、注型、含浸において長期貯蔵安定性を改善し、硬化速度に優れると同時に樹脂の耐湿性及び電気特性に優れるエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイスの封止材には、粉末固形エポキシ樹脂を用いたトランスファー成形が用いられてきた。近年のエレクトロニクスの発展に伴い、電子機器の高性能化の要求が高く、半導体パッケージの高集積化、小型化、薄型化が進んできており、プラスチックピングリッドアレイ、テープキャリアーパッケージ、プラスチックボールブリッドアレイ、フィリップチップ、チップスケールパッケージ等のスポット封止による実装形態へと移行してきている。これらの実装形態では、一般的に樹脂粘度が低く流動性の高い液状エポキシ樹脂組成物が用いられる。この場合、使用前にエポキシ樹脂と硬化剤の秤量、混合・分散、脱気などの作業が必要であるが、一旦、二液を混合すると室温でも徐々に反応が進行するため液粘度が上昇し、一液での貯蔵安定性が著しく悪化する問題があった。このため、室温での保存安定性に優れ、実際の硬化温度では短時間に硬化しうる潜在性硬化促進剤を使用したエポキシ樹脂の開発が行われている。例えば、イミダゾール類又はイミダゾリン類の有機酸塩類、特開昭63−304018号には有機ホスフィンと第3級アミン類の併用系が開示されている。しかしながら、上記の様な組成物を使用した場合においても、貯蔵安定性と速硬化性を十分に満足するものではなく、また、樹脂物性も未だ満足するものではなかった。
【0003】
また、電子材料の封止材において重要な樹脂物性である耐水性試験後の電気特性を低下させると言う問題があった。この様な保存安定性、耐水性を改善する目的から、特開平9−25334号にはテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート塩が提案されているが、速硬化性に劣るだけでなく非常に高価であると言う問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯蔵安定性、速硬化性に優れると同時に硬化物の耐水性、電気特性を改善するエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来の硬化促進剤の持つ様々な問題点を解決するために鋭意検討した結果、硬化促進剤として特定の構造を持つポリビニルイミダゾリン化合物を用いることにより、貯蔵安定性、速硬化性に優れると同時に硬化物の耐水性、電気特性が改善されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、更に必要に応じて他の助剤を配合するエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤として下記一般式(1)
【0007】
【化5】
Figure 0004341099
【0008】
(式中、R1〜R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアリール基を表し、nは5以上の整数を表す。)
で示されるポリビニルイミダゾリン化合物及び下記一般式(2)
【0009】
【化6】
Figure 0004341099
【0010】
(式中、R4〜R6は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアリール基を表し、nは5以上の整数を表す。)
で示されるポリビニルイミダゾリン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を使用することを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明において硬化促進剤として使用されるポリビニルイミダゾリン類は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるポリビニルイミダゾリン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であり、R1〜R6は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアリール基を表し、nは5以上の整数を表す。このアルキル基、アリール基において、炭素数は速硬化性の点から5以下であり、5を越えると速硬化性の点で問題がある。また、nは5以上であれば良く特に限定されるものではなく、nが5未満の場合は貯蔵安定性が悪化すると言う問題が発生する恐れがある。
【0013】
例えば、一般式(1)で示されるポリビニルイミダゾリン類は、α,β−不飽和ニトリル類のホモ又は共重合体であるポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル・メタクリロニトリル共重合物や、α,β−不飽和ニトリル類と他の不飽和化合物との共重合体とエチレンジアミン類との反応により得ることができる。また、一般式(2)で示されるポリビニルイミダゾリン類は、α,β−不飽和ニトリル類とエチレンジアミン類との付加体のホモ又は共重合により得ることができる。
【0014】
本発明において、ポリビニルイミダゾリン類の分子量は特に限定されるものではないが、保存安定性と速硬化性の点で重量平均分子量が500以上のものが好ましく、更に好ましくは500以上100万以下のものが好ましい。平均分子量が500以下では保存安定性が悪化し、100万以上では速硬化性の点で満足するものではない。
【0015】
本発明において、硬化促進剤の使用量は特に限定するものではないが、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、更に好ましくは0.1〜15重量部の範囲が貯蔵安定性、生産速度と経済性の点で好ましい。
【0016】
本発明において硬化促進剤として使用されるポリビニルイミダゾリン類は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるポリビニルイミダゾリン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であり、単独若しくは混合して又はこれらの有機酸塩として、本発明の目的と機能を損なわない範囲で適宜使用される。特に貯蔵安定性を改善する目的から有機酸塩であることが好ましい。有機酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、2−エチルヘキサン酸、オクチル酸、ラウリン酸、カプリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シアノ酢酸、クロトン酸、ピルビン酸、サリチル酸、安息香酸、ヒドロキシステアリン酸、アクリル酸、メタアクリル酸等のモノカルボン酸類、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、オキシ二酢酸、フマル酸、シュウ酸、マレイン酸,スベリン酸,ピメリン酸,グルタル酸,マロン酸等のジカルボン酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類等が挙げられる。
【0017】
本発明における硬化促進剤は、更に本発明の効果を損なわない範囲で公知の硬化促進剤とを併用又は混合して使用することができる。
【0018】
公知の硬化促進剤としては、トリエチルアミン、N,N,N',N'',N''',N'''−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N'−トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ラウリルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセンなどの第3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、等のイミダゾリン類、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン化合物が挙げられる。また、これらのアミン化合物のルイス酸塩、有機酸塩、及びエポキシ樹脂型、尿素型、イソシアネート型、酸無水物型、ヒドラジド型などのアダクト化による変性物、ベンジルホスホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩型のカチオン重合触媒、マイクロカプセル型、光重合型などの潜在性硬化促進剤も本発明の硬化促進剤の機能を失わない範囲で適宜使用される。
【0019】
本発明におけるエポキシ樹脂としては、特に制限されるものではないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ダイマー酸グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、ジグリシジルエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、等が好適に使用され、1種又は2種以上が混合して用いられる。
【0020】
なお、この一部に反応性希釈剤として用いる分子中に1個のエポキシ基を含む化合物が含まれても良い。エポキシ樹脂のエポキシ当量や粘度は、特に限定されるものではないが、樹脂の流動性、耐熱性、耐薬品性の点でエポキシ当量100〜3000の範囲のものが好ましい。
【0021】
本発明における硬化剤は、特に限定されるものではないが、有機酸無水物、フェノール樹脂、脂肪族アミン類、芳香族アミン類又はジシアンジアミド類等を使用することができるが、硬化物の電気的特性、耐熱性の点で有機酸無水物であることが好ましい。
【0022】
本発明における有機酸無水物は、特に限定されないが、例えばテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、エチレングリコールアンヒドロトリメリット、グリセリントリスアンヒドロトリメリットなどを用いることができる。
【0023】
有機酸無水物の添加量は、その使用目的や硬化特性、硬化剤の種類により適宜決定され、制限されるものではないがエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量、好ましくは0.6〜1.2当量が添加される。有機酸無水物の添加量がこの範囲以外では、樹脂の耐熱性、変色性及びその他の機械的・電気的特性が悪化する。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、通常のエポキシ樹脂組成物に用いられている他の添加剤、例えば、充填剤、有機溶剤、難燃剤、染料、顔料、変色防止剤、酸化防止剤、離型剤、可とう性付与剤、液状ゴム、レベリング剤、粘着付与剤、カップリング剤、消泡剤、反応性もしくは非反応性希釈剤などを適宜に配合することができる。
【0025】
充填剤としては、例えば結晶性シリカ、溶融シリカ、アルミナ、珪酸ジルコニウム、石英粉、鉱物性ケイ酸塩、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、コールタール、ガラス繊維、アスベスト繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、セルロース粉、アスベスト粉、スレート粉、石こう、エアロゾル、二酸化チタン、グラファイト、酸化鉄、アルミニウム粉などを挙げることができ、有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物を製造する場合、前記のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び必要に応じて充填剤や各種添加剤を公知の混練機で混練すればよく、特に限定されるものではない。例えば三本ロール、ニーダー、万能撹拌機、ボールミル、プラネタリミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパーなどで混合し、脱気して一液型エポキシ樹脂組成物を得ることができる。このようにして得られたエポキシ樹脂組成物は、ディスペンサー等の公知の成型法により、電気、電子部品等の絶縁封止、注型、含浸などに使用される。
【0027】
【実施例】
以下、実施例、比較例にもとづいて説明するが本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0028】
各実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂組成物を以下の項目で試験した。
【0029】
<ゲル化時間>:JIS K5059(1997)に準じ150℃で熱板法により測定した。
【0030】
<貯蔵安定性>:B型粘度計を用い25℃における樹脂組成物の粘度を測定し、樹脂組成物粘度が初期粘度の2倍になった時間(日)とする。
【0031】
<耐水性>:100×100×2mmの樹脂試験片を125℃、0.25MPa水蒸気圧×20時間の条件下でプレッシャークッカー試験(PCT試験)した後、体積抵抗値を測定し、PCT試験前の値と比較することにより評価した。体積抵抗値は、アドバンテスト社製R8340を用い、室温(20℃)下で500V電圧印加1分後の体積抵抗値を測定した。
【0032】
<硬化条件>:耐水性評価の試験片は、150℃、12MPa×2時間の条件下でホットプレス加圧成形することにより作製した。
【0033】
実施例1〜実施例5
表1の配合比率で3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物(新日本理化製品名MT−500)に常法により合成したポリビニルイミダゾリン類を添加し、ボールミルを用いて24時間混合分散させた。
【0034】
更に、表1の配合比率に従い有機酸無水物と硬化促進剤分散液にビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、エピコート828、エポキシ当量190)を混合し、ラボミキサーにて6500回転、1分間撹拌したのち、真空脱気してエポキシ樹脂組成物を調製し、その硬化性、25℃における貯蔵安定性、硬化物物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0035】
【表1】
Figure 0004341099
【0036】
比較例1〜比較例4
実施例1の配合比率で硬化促進として2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリンのトリメリット酸塩、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを使用して比較試験を行い、その結果を表1及び表2に示した。
【0037】
表1の実施例1〜実施例5に示すように、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化速度が比較的速く、優れた貯蔵安定性を示す。また、硬化物の物性でもPCT試験後の体積抵抗値の低下が小さく、耐水性、電気特性を著しく改善する。
【0038】
一方、表2の比較例1〜比較例4に示される、イミダゾール類やその有機酸塩、ボレート塩は、貯蔵安定性、速硬化性、硬化物物性の全てを同時に満足するものではなかった。
【0039】
【表2】
Figure 0004341099
【0040】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、室温付近での貯蔵安定性に優れるのみならず加熱時には短時間で硬化するもので、樹脂製造における操作性及び生産性を著しく改善する特徴を有する。また、得られた硬化物の耐水性及び電気特性を改善するものであり、電子部品の電気絶縁材料、半導体封止材料、注型、含浸材として有用である。

Claims (5)

  1. エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、更に必要に応じて他の助剤を配合するエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤として下記一般式(1)
    Figure 0004341099
    (式中、R1〜R3は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
    で示されるポリビニルイミダゾリン化合物及び下記一般式(2)
    Figure 0004341099
    (式中、R4〜R6は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
    で示されるポリビニルイミダゾリン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を使用することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  2. エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、更に必要に応じて他の助剤を配合するエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤として下記一般式(1)
    Figure 0004341099
    (式中、R1〜R3は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
    で示されるポリビニルイミダゾリン化合物の有機酸塩及び下記一般式(2)
    Figure 0004341099
    (式中、R4〜R6は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは5以上の整数を表す。)
    で示されるポリビニルイミダゾリン化合物の有機酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を使用することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  3. 硬化促進剤が、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 硬化剤が、有機酸無水物であり、エポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項2に記載の有機酸塩のアニオン種が、有機カルボン酸であることを特徴とする請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
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