JP4340475B2 - パン焼き窯 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパン焼き窯に関する。
【0002】
【従来の技術】
パン焼き窯については、耐熱性レンガにより形成される窯本体内部に薪などで加熱後の余熱によってパンを焼き上げる蓄熱式のパン焼き窯が知られている。このようなパン焼き窯においては、パン生地を加熱する調理室内の温度を全体にわたり均一にすることが重要であり、例えば、図5に示すパン焼き窯が提案されている(特許文献1参照)。すなわち、耐熱性レンガ2よりなる窯本体に加熱室3と調理室4とを備え、調理室4内に開口5より挿入されるパン生地を載置可能なテーブル6を設けて、このテーブル6を調理室4内で回転可能に設けたパン焼き窯である。このパン焼き窯では、テーブル6を回転させつつ調理室4でパン生地を加熱することができるので、調理室4の温度にムラがあってもパンを均一に極めて容易に焼くことができるとしている。
【0003】
しかし、このパン焼き窯では、同時に多数個のパンを焼き上げることができない、また、テーブルの回転機構が複雑であるなどといった問題がある。
【0004】
【特許文献1】
登録実用新案第3042022号公報(第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、極めて簡易な構造で、多数個のパンを同時にムラなく均一に焼くことのできるパン焼き窯を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のパン焼き窯は、第1炉壁によって区画された第1炉室を有する外側炉体と、第1炉室内で第1炉壁から空間部を隔てて設けられた第2炉壁によって区画された第2炉室を有する内側炉体と、外側炉体に配設され前記の内側炉体をこの内側炉体の外周から加熱する加熱手段とを有し、前記第1炉壁は、第1固定炉壁部と該第1固定炉壁部に対して開閉自在な第1可動炉壁部とからなり、前記第2炉壁は、第2固定炉壁部と該第2固定炉壁部に対して開閉自在で前記第1可動炉壁部と空間部を隔てて対向する位置に該第1可動炉壁部と開閉扉を構成するように一体的に設けられた第2可動炉壁部とからなり、前記第1可動炉壁部と前記第2可動炉壁部とを隔てる前記空間部は、前記第1固定炉壁部と前記第2固定炉壁部とを隔てる空間部と連続して前記内側炉体の全周囲を取り囲むように形成されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、加熱手段はバーナ又は電気ヒータとすることができる。
【0009】
また、第2炉壁は耐火性の無機材料で構成されており、耐火性の無機材料はコージライトまたはムライトであることが好ましい。そして、第2炉壁の内側面は凸部を有する面であることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のパン焼き窯の一実施の形態を図1及び図2に示す。図1はパン焼き窯の正面断面模式図であり、図2は側面断面模式図である。
【0011】
パン焼き窯1は、第1炉壁21に区画された第1炉室22を有する外側炉体20と、第1炉室22内で第1炉壁21から空間部23を隔てて設けられた第2炉壁31によって区画された第2炉室32を有する内側炉体30と、外側炉体20に配設され内側炉体30をこの内側炉体30の外周から加熱する加熱手段40とを有する。
【0012】
外側炉体20は、例えば、鉄板製の外殻と耐火性の断熱材で形成された第1炉壁21で構成されており、第1炉壁21の天井部24には燃焼ガスなどの排気口25が設けられている。
【0013】
内側炉体30は、支持台50で第1炉室22内に第1炉壁21と空間部23を隔てて保持されており、第2炉壁31によって区画された第2炉室32を有する。ここで、第2炉壁31は、いわゆるマッフル板であることが望ましい。すなわち、熱源により被加熱物を直接加熱するのではなく、まず先に被加熱物に対して熱源を遮るように配設されたマッフル板を加熱して、加熱されたマッフル板から放射される輻射熱で被加熱物を加熱する間接加熱方法である。
【0014】
加熱手段40は少なくとも第1炉室22の外側炉体20の第1炉壁床部26と内側炉体30との空間部23に設けることが望ましい。加熱手段40は特に限定はないが、ガスバーナあるいは電気ヒータ等による加熱が好ましい。
【0015】
ガスバーナによる加熱では、例えば、図2の矢印で示すように熱流Aが第1炉壁21と第2炉壁31との空間部23を内側炉体30を取り囲むように上昇し、第1炉壁の天井部24に設けられた排気口25から排気されるので、第2炉壁31は満遍なく加熱され、第2炉室32内の温度分布を略均一にすることができる。なお、窯の容積が大きくなるなどして、第2炉壁31の側面や天井面33の加熱が遅れ第2炉室32内の温度分布が不均一になるような場合には、第2炉壁の必要な壁面を加熱するようにバーナを増設することができる。
【0016】
一方、加熱手段40として、電気ヒータを用いる場合には、第1炉壁床部26に設置した電気ヒータのみの加熱では側面の空間部23に流れる熱量が不十分で第2炉室32内の温度分布が不均一となることがある。このような場合には、図3に示すように第1炉壁21と第2炉壁31との間の空間部23に適宜ヒータ41を増設して内側炉体30を加熱し、第2炉室32内の温度分布を均一にすることができる。なお、図2における加熱手段はバーナとしているが、図3では加熱手段を図2のバーナに代えて電気ヒータ41としただけであるのでパン焼き窯のその他の構成は図2と同じであるので付番は省略した。
【0017】
図3は、第1炉壁と第2炉壁との間で天井部及び側面部にも電気ヒータを増設した場合を示す概略図である。図3のようにヒータを配設することにより内側炉体30を全周囲から加熱することができるので第2炉室32内の温度分布をより均一にすることができる。これらのヒータ回線は一体的に連続していても、天井部、側面部あるいは床部のように配設された部位毎に独立した回線とすることもできる。配設部位毎にヒータ回線が独立している場合には、第2炉室32内に複数個の温度センサを設け、制御装置と組み合わせることにより第2炉室32内の温度分布をより均一に制御することができる。
【0018】
なお、第2炉壁31の天井部33には、被加熱物から発生する水蒸気などのガスを排出する排出管34が設けられている。排出管34の排出口35は外側炉体20に設けられた排出口25の内側に開口することができる。
【0019】
また、図2において、第1炉壁21は、第1固定炉壁部211とこの第1固定炉壁部211に対して開閉自在な第1可動炉壁部212とからなり、第2炉壁31は第2固定炉壁部311とこの第2固定炉壁部311に対して開閉自在で前記の第1可動炉壁部212と対向する位置に設けられた第2可動炉壁部312とからなり、第1可動炉壁部212と第2可動炉壁部312とで開閉扉60を構成する。そして、第1可動炉壁部212と第2可動炉壁部312とは支持部材70によって一体的に構成されている。
【0020】
第1可動炉壁部212と第2可動炉壁部312とは一体的に構成されているが、両者は空間部23を隔てて対向しているので、熱流Aは図2の矢印のように他の第2固定壁部311と同様に第2可動壁部312をも加熱することができる。このため、第2炉室32内の温度分布をより一層均一にすることができる。
【0021】
また、第2炉壁31は耐火性の無機材料で構成されていることが望ましい。耐火性の無機材料としては、耐熱性の金属やセラミックスあるいは両者の複合材などを用いることができる。金属材としては、鋳鉄、鋼、ステンレスなどを挙げることができる。また、セラミックスとしては、コージライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウムなどを例示することができる。なかでも、コージライト、ムライト、炭化珪素などは加熱によって遠赤外線を多量に発生し、また、耐熱衝撃性にも優れているのでより好ましい材料である。また、金属板にセラミックス材料をコーティングして複合材とすることや、金属製等の支持枠にセラミックス板を装着して第2炉壁とすることもできる。
【0022】
さらに、第2炉壁31の内側面は、床部36を除いて、凸部を有する面であることが望ましい。図4は第2炉壁31を形成するマッフル板の凸部形状の一例を示す部分斜視図である。313は、フィン形状の凸部でありこの凸部を有する面が第2炉室32の内面であることが好ましい。凸部を有することで第2炉壁31の表面積が増大するので、第2炉室32内への放射熱量が増加して被加熱物の伝熱効率が向上する。また、第2炉壁31から放射される熱が攪乱されて第2炉室32内の温度分布をより均一にすることができる。なお、凸部の形状は図4のようなフィン形状でなくても、第2炉室内への熱量を増大させると共に、炉室内の温度分布をより均一にするという凸部の作用を奏する形状であれば特に限定されるものではない。
【0023】
このような構成からなる本発明のパン焼き窯を用いて、例えば、以下の手順でパンを焼くことができる。
【0024】
まず、本発明のパン焼き窯の第2炉室32を加熱手段によって所定の温度(例えば、220〜250℃)に加熱する。次に、二次発酵を終了したパン生地をパン焼き窯1の開閉扉60を開け、前記の所定温度に加熱保持されている第2炉室32内に挿入して床部上に所望個数載置し、開閉扉60を閉じる。パンの種類によって異なるが、この状態で20〜25分間保持する。保持終了後開閉扉60を開として焼成したパンを取り出すとともに、次に焼成する二次発酵を終了したパン生地を第2炉室32内に挿入し順次この手順を繰り返す。
【0025】
このようにして、外皮の焼き色が良好で、かつ内部のきめの細かい美味しいパンを、第2炉室内の載置位置による焼きムラがなく、焼き上げることができる。
【0026】
【試験例】
図1および図2の構成からなるパン焼き窯を用いて、一度に15個のパンを焼成し、焼成後の各パンの外観と内相とを目視観察した。
(パン焼き窯及びパン焼き方法)
第1炉室は、幅550mm、奥行き750mm、高さ400mmであり、第2炉室は、幅500mm、奥行き700mm、高さ350mmであった。
【0027】
第2炉壁は、厚さ(t)30mmのコージライト質のマッフル板で形成されており、このマッフル板の第2炉室の内側面は、図4に示すフィン形状の凸部を有している。ここで、凸部の高さhは20mmであり、ピッチpは10mmであった。なお、加熱手段40はLPGガスバーナ方式であった。
【0028】
まずガスバーナ40を点火して内側炉体30を加熱し、第2炉室32内を240℃に加熱した。次に、二次発酵を終了したパン生地15個を、240℃に保持されている第2炉室32の所定の位置へ載置した。この状態で22分間保持した後、焼成したパンを取り出した。
(結果)
焼成された15個のパンの外観と内相とを目視観察したが、パンは焼き色、内相と共に食味も含めて第2炉室内の載置場所による差異はなく、焼きムラのない均一で美味しいパンが得られた。
【0029】
【発明の効果】
本発明のパン焼き窯は、外側炉体の中に内側炉体が内蔵された二重構造とし、パンは内側炉体の第2炉室内で焼くこととした。また、内側炉体を形成する炉壁をマッフル板とすることにより、第2炉室内の温度分布を均一にすることができるので、多数個のパンを同時に焼きムラ無く焼き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱手段がバーナである本発明のパン焼き窯の正面断面模式図である。
【図2】加熱手段がバーナである本発明のパン焼き窯の側面断面模式図である。
【図3】加熱手段が電気ヒータである本発明のパン焼き窯の側面断面模式図である。
【図4】マッフル板の凸部形状の一例を示す部分斜視図である。
【図5】従来技術になるパン焼き窯の断面模式図である。
【符号の説明】
1:パン焼き窯 20:外側炉体 22:第1炉室 23:空間部 212:第1可動炉壁部 30:内側炉体 31:第2炉壁 32:第2炉室 312:第2可動炉壁部 313:凸部 40:加熱手段 41:電気ヒータ 50支持台60:開閉扉 70支持部材 90:温度センサ
A:熱流

Claims (5)

  1. 第1炉壁によって区画された第1炉室を有する外側炉体と、
    該第1炉室内で該第1炉壁から空間部を隔てて設けられた第2炉壁によって区画された第2炉室を有する内側炉体と、
    前記外側炉体に配設され該内側炉体を該内側炉体の外周から加熱する加熱手段と、を有し、
    前記第1炉壁は、第1固定炉壁部と該第1固定炉壁部に対して開閉自在な第1可動炉壁部とからなり、
    前記第2炉壁は、第2固定炉壁部と該第2固定炉壁部に対して開閉自在で前記第1可動炉壁部と空間部を隔てて対向する位置に該第1可動炉壁部と開閉扉を構成するように一体的に設けられた第2可動炉壁部とからなり、
    前記第1可動炉壁部と前記第2可動炉壁部とを隔てる前記空間部は、前記第1固定炉壁部と前記第2固定炉壁部とを隔てる空間部と連続して前記内側炉体の全周囲を取り囲むように形成されていることを特徴とするパン焼き窯。
  2. 前記加熱手段はバーナ又は電気ヒータである請求項1に記載のパン焼き窯。
  3. 前記第2炉壁は耐火性の無機材料で構成されている請求項1に記載のパン焼き窯。
  4. 前記耐火性の無機材料はコージライトまたはムライトである請求項に記載のパン焼き窯。
  5. 前記第2炉壁の内側面は凸部を有する面である請求項1からのいずれかに記載のパン焼き窯。
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