JP4338359B2 - 動圧軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑流体の動圧によって回転軸を支持する動圧軸受部材を備えた動圧軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種回転駆動装置において、回転体を高速かつ高精度に回転させるための軸受装置として、潤滑流体に動圧を発生させて回転軸を支持する動圧軸受装置の開発が進められている。このような動圧軸受装置においては、装置全体の薄型化を図るなどの目的で、例えば図4に示されているような構造のスラスト軸受部SBを採用したものが提案されている。すなわち、図4に示されているスラスト軸受部SBにおいては、動圧軸受部材(軸受スリーブ)1により回転自在に支持された回転軸2に、回転部材(回転ハブ)3が接合されているとともに、その回転部材3の中心領域における軸方向内側(図4の下面側)の端面と、上記動圧軸受部材1の軸方向外端面(図4の上端面)とが、互いに近接対向するように配置されており、そのスラスト対向領域内に上記スラスト軸受部SBが形成されている。
【0003】
このスラスト動圧軸受部SBにおける軸受空間の内部側には、適宜の潤滑流体(図示省略)が注入されているとともに、その潤滑流体に対する動圧発生手段として、例えばスパイラル形状の動圧発生溝が周方向に沿って並列するように凹設されており、その動圧発生溝の加圧作用によって上記潤滑流体に対して動圧を発生させ、所望のスラスト浮上力を得るようしている。
【0004】
また、上記動圧軸受部材1の内周側壁面と、回転軸2の外周側壁面とが対向したラジアル対向領域には、軸方向に沿って2箇所のラジアル軸受部RB,RBが形成されており、それらの各ラジアル動圧軸受部RBの軸受空間の内部側には、上述したスラスト動圧軸受部SBから連続して潤滑流体(図示省略)が注入されている。そして、その潤滑流体に対する動圧発生手段として、例えばヘリングボーン形状の動圧発生溝が周方向に沿って並列するように凹設されており、その動圧発生溝の加圧作用によって上記潤滑流体に対して動圧を発生させ、所望のラジアル浮上力を得るようしている。
【0005】
このように、上述した動圧軸受装置では、2箇所のラジアル軸受部RB,RBからスラスト動圧軸受部SBにかけての軸受空間が、連続するように形成されており、その連続した軸受空間内に潤滑流体が連続的に注入された構成になされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような構造を有する動圧軸受装置では、上述したラジアル軸受部RBに設けられた動圧発生溝の溝形状(溝長さ)等が、製造時の加工誤差などによって軸方向にアンバランスな形状になされてしまうことがあり、それによって、例えば図示下側のラジアル軸受部RBにおいて、図5の矢印長さで表したようにポンピング作用力P1,P2が軸方向にアンバランス状態(P1>P2)となってしまい、そのラジアル軸受部RBにおけるアンバランス状態によって、スラスト動圧軸受部SBにおけるスラスト浮上量に影響を与えてしまうことがある。
【0007】
このようなラジアル軸受部RBのアンバランスに基づくスラスト浮上量の変動は、潤滑流体の粘度の変動にほぼ比例しており、例えば図6に示されているように、温度変動(横軸)に対するスラスト浮上量の変動(縦軸)は、低温側の領域においてより大きくなっている。また、この図6は、回転体の重量(g)をパラメータとしたものであるが、上述したようなスラスト浮上量の変動は、特に、回転体の重量が小さい小型・軽量の回転駆動装置において影響を受けやすいことがわかる。より直接的には、図7及び図8に示されているように、回転体のスラスト浮上量の変動(縦軸)は、回転体の重量(横軸)が小さいほど変動の傾斜が大きくなっており、特に低温になっていく際に、スラスト浮上量の急激に大きくなることがわかる。
【0008】
このようなラジアル軸受部RBのアンバランスに基づくスラスト浮上量の変動は、近年の回転駆動装置のように小型のスピンドルモータを用いて小径・軽量な回転体を駆動する構成になされたものにおいては極めて大きな問題となるおそれがあり、例えば、情報記録用ハードディスクを回転駆動するハードディスク駆動装置(HDD)では、特に低温環境下でハードディスクにヘッドが接触する等の危険性が発生するおそれがある。
【0009】
なお、このような動圧軸受装置におけるスラスト浮上量の変動を、永久磁石等を用いた磁気的吸引手段によって抑え込む構成を採用することも考えられるが、その磁気的吸引力を強くし過ぎると、スラスト浮上を行わせるのに必要な最低回転数が増大することとなって、起動又は停止時において回転体と動圧軸受部材とが接触している間の時間が増大し、動圧軸受部材等の摩耗が早期に進行するなどにより回転不良が発生してしまう。また、ラジアル軸受部RBのアンバランス量が大きい場合には、スラスト軸受部SBにおけるスラスト浮上が全く得られなくなってしまうおそれもある。
【0010】
そこで本発明は、簡易な構成によって、スラスト動圧軸受部SBのアンバランスによるスラスト浮上量への影響を、良好に防止することができるようにした動圧軸受装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1にかかる動圧軸受装置では、
動圧軸受部材と回転軸及び回転部材との間の対向領域のうち、軸受空間を含むスラスト動圧軸受部より内側の空間は、連続すると共に外気に触れず閉塞して形成され、当該内側の空間には、潤滑流体が途切れることなく連続して充填され、
内側の空間であって、スラスト動圧軸受部および2箇所のラジアル軸受部のうちの他方側のラジアル軸受部より他方側は、外気に開口せず、回転軸の他方側端部および動圧軸受部材の他方側端部が臨むと共に径方向に広がる空間を成し、
内側の空間には、潤滑流体で満たされた軸方向に伸びる圧力開放用バイパス通路が軸受空間とは別個に形成され、圧力開放用バイパス通路は、スラスト動圧軸受部より径方向内側且つラジアル軸受部より径方向外側、または、スラスト動圧軸受部且つラジアル軸受部より径方向内側、に配置され、
圧力開放用バイパス通路の一方側は、2箇所のラジアル軸受部のうちの一方側からスラスト動圧軸受部にかけての空間に開口し、他方側は、径方向に広がる空間に開口する。
すなわち、このような構成を有する請求項1にかかる動圧軸受装置によれば、例えばラジアル軸受部に設けられた動圧発生溝の溝形状(溝長さ)がアンバランス状態となっていても、それに起因するポンピング作用力のアンバランスに相当する量の潤滑流体が、圧力開放用バイパス通路を通って高圧側のラジアル軸受部から低圧側のラジアル軸受部に流動することとなり、2箇所のラジアル軸受部どうし間の圧力バランスがとられるようになっている。その結果、ラジアル軸受部のアンバランス状態によるスラスト軸受部への影響がなくなり、当該スラスト軸受部における浮上量の変動が防止されることとなる。
【0012】
た、動圧軸受装置では、圧力開放用バイパス通路が、動圧軸受部材又は回転軸のいずれかに軸方向に延在するように形成されていて、圧力開放用バイパス通路が動圧軸受部材又は回転軸のいずれに設けられた場合おいても同様な作用・効果が得られるようになっている。
【0013】
さらに、請求項にかかる動圧軸受装置では、上記請求項1にかかる動圧軸受部材の軸方向一方側端面であって、前記スラスト対向領域より半径方向内側の部位に、前記スラスト対向領域よりも軸方向間隔が大きくなるように形成された拡大隙間部が設けられ、その拡大隙間部に、上記圧力開放用バイパス通路の一方側が開口するように配置されていることから、それら圧力開放用バイパス通路と拡大隙間部との間における潤滑流体の流動が良好に行われるようになっている。
【0014】
さらにまた、請求項にかかる動圧軸受装置では、上記請求項1または2にかかる圧力開放用バイパス通路が、2箇所のラジアル軸受部の双方の間の部位に対応する軸受間空間内に向かって開口する連通孔を備えていることから、圧力開放用バイパス通路内における潤滑流体の流動がより一層良好に行われるようになっている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、それに先立って、まず本発明にかかる動圧軸受装置を採用した一例としてのハードディスク駆動装置(HDD)の概要を説明することとする。
【0016】
図1に示されている軸回転型のHDD駆動装置の全体は、固定部材としてのステータ組10と、そのステータ組10に対して図示上側から組み付けられた回転部材としてのロータ組20とから構成されている。そのうちステータ組10は、図示を省略した固定基台側にネジ止めされる固定フレーム11を有している。この固定フレーム11は、軽量化を図るためにアルミ系金属材料から形成されているが、当該固定フレーム11の略中央部分に立設するようにして形成された環状の軸受ホルダー12の内周面側には、中空円筒状に形成された動圧軸受部材としての軸受スリーブ13が、圧入又は焼嵌めによって上記軸受ホルダー12に接合されている。この軸受スリーブ13は、小径の孔加工等を容易化するためにリン青銅などの銅系材料から形成されている。
【0017】
また、前記軸受ホルダー12の外周取付面には、電磁鋼板の積層体からなるステータコア14が嵌着されているとともに、そのステータコア14に設けられた各突極部には、駆動コイル15がそれぞれ巻回されている。
【0018】
さらに、上記動圧軸受部材としての軸受スリーブ13に設けられた中心孔内には、上述したロータ組20を構成する回転軸21が回転自在に挿入されている。すなわち、上記軸受スリーブ13の内周壁部に形成された動圧面は、上記回転軸21の外周面に形成された動圧面に対して半径方向に対向するように配置されており、その微小隙間からなる軸受空間部分に、軸方向に適宜の間隔をあけて2箇所のラジアル動圧軸受部RB,RBが構成されている。より詳細には、上記ラジアル動圧軸受部RBにおける軸受スリーブ13側の動圧面と、回転軸21側の動圧面とは、数μmの微少隙間を介して周状に対向配置されており、その微少隙間からなる軸受空間内に、潤滑オイルや磁性流体等の潤滑流体が軸線方向に連続するように注入又は介在されている。
【0019】
さらにまた、上記軸受スリーブ13及び回転軸21の両動圧面の少なくとも一方側には、例えばへリングボーン形状からなるラジアル動圧発生用溝が、軸線方向に2ブロックに分けられて環状に凹設されており、回転時に、当該ラジアル動圧発生用溝のポンピング作用により図示を省略した潤滑流体が加圧されて動圧を生じ、その潤滑流体の動圧によって、上記回転軸21とともに後述する回転ハブ22が、上記軸受スリーブ13に対してラジアル方向に非接触状態で軸支持される構成になされている。
【0020】
このとき、上述した各ラジアル動圧軸受部RBにおけるラジアル動圧発生用溝のへリングボーン形状は、略「く」の字状をなす複数の溝部が環状に並列するように設けられたものであるが、その「く」の字状における中央部分の頂部に相当する位置を中心として、基本的には軸方向に対称な溝形状をなすように構成されており、その対称的な溝形状を備えたラジアル動圧発生用溝によるポンピング作用は、例えば、前述した図4中の矢印で示されているように、軸方向に対称的にバランスした状態になされる。
【0021】
従って、設計上では、上述した各ラジアル動圧軸受部RBによるバランスしたポンピング作用力によって、潤滑流体が軸方向の一方側に押し込まれていくことはないが、実際の製造を行うにあたっては、上記各ラジアル軸受部RBに設けられた動圧発生溝の溝形状(溝長さ)等が、製造誤差などによって軸方向にアンバランスな形状に成形されてしまうことがあり、それによって各ラジアル軸受部RBにおけるポンピング作用力がアンバランス状態となってしまうことがある。このようなことから本実施形態においては、上記軸受スリーブ13に対して、複数本の圧力開放用バイパス通路BPが軸方向に貫通するように形成されているが、それらの圧力開放用バイパス通路BPの詳細については後述する。
【0022】
一方、上記回転軸21とともにロータ組20を構成している回転ハブ22は、フェライト系ステンレスからなる略カップ状の部材から構成されており、当該回転ハブ22の中心部分に設けられた接合穴22aが、上記回転軸21の図示上端部分に対して圧入又は焼嵌めによって一体的に接合されている。この回転ハブ22は、図示を省略した磁気ディスク等の記録媒体ディスクを外周部に搭載する略円筒状の胴部22bを有しているとともに、その胴部22bから半径方向外方に張り出して記録媒体ディスクを軸線方向に支持するディスク載置部22cを備えており、図示上方側から被せるように螺子止めされたクランパ(図示省略)により図示上方側からの押圧力によって、上記記録媒体ディスクが固定されるようになっている。
【0023】
また、上記回転ハブ22の胴部22bの内周壁面側には、環状駆動マグネット22dが取り付けられている。この環状駆動マグネット22dの内周面は、前述したステータコア14における各突極部の外周側端面に対して環状に対向するように近接配置されているとともに、当該環状駆動マグネット22dの軸方向下端面は、上述した固定フレーム11側に取り付けられた磁気吸引板23と軸方向に対面する位置関係になされており、これら両部材22d,23どうしの間の磁気的吸引力によって、上述した回転ハブ22の全体が軸方向に引き付けられ、安定的な回転状態が得られる構成になされている。
【0024】
さらに、前記軸受スリーブ13の図示下端側に設けられた開口部は、カバー13aにより閉塞されており、上述した各ラジアル動圧軸受部RB内の潤滑流体が外部に漏出しない構成になされている。
【0025】
さらにまた、上記軸受スリーブ13の図示上端面と、上述した回転ハブ22の中心側部分における図示下端面とは、軸方向に近接した状態で対向するように配置されており、それら軸受スリーブ13の図示上端面と、回転ハブ22の図示下端面との間のスラスト対向領域内が、上述したラジアル軸受部RBから連続する軸受空間に形成されている。そして、そのラジアル軸受部RBから連続する軸受空間にスラスト動圧軸受部SBが設けられている。すなわち、上記スラスト対向領域を構成している両対向動圧面13,22の少なくとも一方側には、スパイラル形状、又はへリングボーン形状のスラスト動圧発生溝が形成されており、そのスラスト動圧発生溝を含む軸方向対向部分がスラスト動圧軸受部SBになされている。
【0026】
このようなスラスト動圧軸受部SBを構成している軸受スリーブ13の図示上端面側の動圧面と、それに近接対向する回転ハブ22の図示下端面側の動圧面とは、数μmの微少隙間を介して軸方向に対向配置されているとともに、その微少隙間からなる軸受空間内に、オイルや磁性流体等の潤滑流体が、上述したラジアル動圧軸受部RBから連続的に充填されていて、回転時に、上述したスラスト動圧発生溝のポンピング作用によって上記潤滑流体が加圧されて動圧を生じ、その潤滑流体の動圧によって、前記回転軸21及び回転ハブ22が、スラスト方向に浮上した非接触状態で軸支持される構成になされている。
【0027】
なお、本実施形態における上記スラスト動圧軸受部SBは、前述した軸受スリーブ13の図示上端面と、回転ハブ22の図示下端面との間のスラスト対向領域において、最も外周側に相当する部分に配置されていて、そのスラスト対向領域の最外周側部分において、上記スラスト動圧軸受部SBを含むスラスト対向領域内の全体に存在している潤滑流体を、半径方向内方側に向かって加圧するポンピング手段を兼用する構成になされている。
【0028】
さらに、上記動圧軸受部材としての軸受スリーブ13の最外周壁面によって、毛細管シール部24からなる流体シール部が画成されている。すなわち、この流体シール部としての毛細管シール部24は、前述したスラスト動圧軸受部SBを含む軸方向のスラスト対向領域に対して半径方向外方側から連設されるように設けられており、上記前記軸受スリーブ13の外周壁面と、その軸受スリーブ13の外周壁面と半径方向に対向するように形成された抜け止め部材としてのカウンタープレート25の内周壁面とにより、上記毛細管シール部24が画成されている。上記カウンタープレート25は、上述した回転ハブ22に設けられたフランジ部22eに固定されたリング状部材からなり、当該カウンタープレート25の内周壁面と、上述した軸受スリーブ13の外周壁面との間の隙間を、図示下方側の開口部に向かって連続的に拡大することによって、テーパ状のシール空間を画成している。そして、上記スラスト動圧軸受部SB内の潤滑流体が、毛細管シール部24に至るまで連続的に充填されている。
【0029】
またこのとき、上記軸受スリーブ13の図示上端部分には、半径方向外方側に張り出すようにして抜止め鍔部13bが設けられており、その抜止め鍔部13bの一部が、上述したカウンタープレート25の一部に対して軸方向に対向するように配置されている。そして、これらの両部材13b,25によって、前記回転ハブ22が軸方向に抜け出すことを防止する構成になされている。
【0030】
ここで、上述した軸受スリーブ13に設けられた複数本の圧力開放用バイパス通路BPは、上述した各ラジアル軸受部RBを含む軸受空間とは別個に、上記軸受スリーブ13を軸方向に貫通するように形成されており、上記軸受スリーブ13の軸方向両端面にそれぞれ開口部BP1,BP2を有するように形成されている。そして、それらの両開口部BP1,BP2のうち、前記軸受スリーブ13の図示上側端面に配置された開口部BP2は、上述したスラスト動圧軸受部SBと、そのスラスト動圧軸受部SBに隣接して配置された図示上側のラジアル軸受部RBとの間の軸受間空間内に開口するように配置されている。
【0031】
すなわち、この圧力開放用バイパス通路BPの図示上側の開口部BP2は、前述したスラスト動圧軸受部SBよりも半径方向内側の部位において上記スラスト動圧軸受部SBよりも軸方向間隔が大きく形成された拡大隙間部LSに開口しており、このような拡大隙間部LSが設けられていることによって、上記圧力開放用バイパス通路BPと軸受空間との間に良好な連通状態が形成され、潤滑流体の流動が良好に行われるようになっている。
【0032】
一方、上記圧力開放用バイパス通路BPの両開口部BP1,BP2のうち、軸受スリーブ13の図示下側端面に配置された開口部BP2は、当該軸受スリーブ13の図示下端面と前記カバー13aとにより画成された軸方向外方側の空間に向かって開口するように配置されている。
【0033】
このような構成を有する本実施形態では、各ラジアル軸受部RBに設けられた動圧発生溝の溝形状(溝長さ)がアンバランス状態となっていることなどによって、当該ラジアル軸受部RBにおけるポンピング作用力が、軸方向に高圧側・低圧側にアンバランス状態となっても、そのアンバランスに相当する量の潤滑流体が、上記2箇所のラジアル軸受部RB,RBどうしを連通する圧力開放用バイパス通路BPを通って、高圧側のラジアル軸受部RBから低圧側のラジアル軸受部RBに流動することとなり、上記2箇所のラジアル軸受部RB,RBどうし間の圧力バランスがとられるようになっている。その結果、上記ラジアル軸受部RBのアンバランス状態によるスラスト軸受部SBへの影響がなくなり、当該スラスト軸受部SBにおけるスラスト浮上量の変動が防止されることとなる。
【0034】
また、上述した実施形態と同一の構成物を同一の符号で表した図3に示された実施形態では、圧力開放用バイパス通路BP’が回転軸21を貫通するように形成されている。本実施形態における圧力開放用バイパス通路BP’は、断面略T字状をなすように形成されており、上記回転軸21の図示下端面に設けられた端面開口部BP’2から、当該回転軸21の中心軸線に沿って図示上方側に延出している。そして、その上方側延出端からは、半径方向外方側に向かって放射状に延在しており、それらの各延在端に設けられた側面開口部BP’1が、上述したスラスト動圧軸受部SBと、そのスラスト動圧軸受部SBに隣接して配置された図示上側のラジアル軸受部RBとの間の部位に設けられた拡大隙間部LS内に向かって開口している。このような実施形態においても、上述した実施形態と同様な作用・効果が得られる。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのは言うまでもない。
【0036】
例えば、上述した各実施形態における圧力開放用バイパス通路BPに、2箇所のラジアル軸受部RB,RBの双方の間の部位に対応する軸受空間内に向かって開口する連通孔を設けるようにしてもよい。このような連通孔を設けるようにすれば、圧力開放用バイパス通路BP内における潤滑流体の流動が、より一層良好に行われることとなる。
【0037】
また、上述した各実施形態は、HDDスピンドルモータに対して本発明を適用したものであるが、その他の多種多様な動圧軸受装置に対しても、本発明は同様に適用することができるものである。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1にかかる動圧軸受装置は、2箇所のラジアル軸受部どうしを連通する圧力開放用バイパス通路を設け、各ラジアル軸受部に設けられている動圧発生溝の溝形状(溝長さ)等がアンバランスな状態となっていても、それに起因するポンピング力のアンバランスに相当する量の潤滑流体を圧力開放用バイパス通路内に通して、高圧側のラジアル軸受部から低圧側のラジアル軸受部に流動させ、上記2箇所のラジアル軸受部どうし間の圧力バランスをとるようにしたことによって、ラジアル軸受部のアンバランス状態によるスラスト軸受部への影響をなくし、当該スラスト軸受部における浮上量の変動を防止するようにしたものであるから、簡易な構成によって、常時、安定したスラスト浮上量を得ることができ、動圧軸受装置の信頼性を大幅に高めることができる。
【0039】
た、動圧軸受装置では、圧力開放用バイパス通路が、動圧軸受部材又は回転軸のいずれかに軸方向に延在するように形成されていて、圧力開放用バイパス通路が動圧軸受部材又は回転軸のいずれに設けられた場合おいても同様な作用・効果が得られるようにしていることから、上述した効果に加えて、設計の自由度を高めることができる。
【0040】
さらに、請求項にかかる動圧軸受装置では、上記請求項1にかかる動圧軸受部材の軸方向端面であって、前記スラスト対向領域より半径方向内側の部位に、前記スラスト対向領域よりも軸方向間隔が大きくなるように形成された拡大隙間部が設けられ、その拡大隙間部に、上記圧力開放用バイパス通路が開口するように配置されていることによって、それら圧力開放用バイパス通路と拡大隙間部との間における潤滑流体の流動が良好に行われるようにしていることから、上述した効果を、より確実に得ることができる。
【0041】
さらにまた、請求項にかかる動圧軸受装置では、上記請求項1又は2にかかる圧力開放用バイパス通路が、2箇所のラジアル軸受部の双方の間の部位に対応する軸受空間内に向かって開口する連通孔を備えていることによって、圧力開放用バイパス通路内における潤滑流体の流動がより一層良好に行われるようにしたものであるから、上述した効果を更に確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる動圧軸受装置を備えた軸回転型のHDD用スピンドルモータの概要を表した縦断面説明図である。
【図2】図1に示されたHDD用スピンドルモータに用いられている動圧軸受装置を拡大して表した縦断面説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態における動圧軸受装置を拡大して表した縦断面説明図である。
【図4】一般の動圧軸受装置の構造、及びポンピング作用力を表した縦断面説明図である。
【図5】図4に示された動圧軸受装置においてラジアル軸受部のポンピング作用力がアンバランス状態となった場合を表した縦断面説明図である。
【図6】スラスト軸受部における浮上量の温度特性を表した線図である。
【図7】スラスト軸受部における浮上量の荷重特性を表した線図である。
【図8】ラジアル軸受部のアンバランスによるスラスト軸受部の浮上量の温度特性を表した線図である。
【符号の説明】
13 軸受スリーブ(動圧軸受部材)
RB ラジアル動圧軸受部
SB スラスト動圧軸受部
BP,BP’ 圧力開放用バイパス通路
BP1,BP2,BP1’,BP2’ 開口部
LS 拡大隙間部
21 回転軸
22 回転ハブ(回転体)
23 磁気吸引板

Claims (3)

  1. 動圧発生手段により潤滑流体を加圧して動圧を発生させ、その潤滑流体に発生した動圧によって回転軸を支持する動圧軸受部材を備えたものであって、
    上記動圧軸受部材の内周壁面と、前記回転軸の外周壁面との間のラジアル対向領域に、軸方向に沿って2箇所のラジアル軸受部が設けられているとともに、
    上記動圧軸受部材の軸方向一方側端面と、上記回転軸とともに一体回転する回転部材の軸方向他方側端面との間のスラスト対向領域に、上記ラジアル軸受部より半径方向外側に位置するスラスト動圧軸受部が設けられ、上記スラスト動圧軸受部は軸方向一方側に位置し、
    これら2箇所のラジアル軸受部から上記スラスト動圧軸受部にかけて連続するように形成された軸受空間内に、前記潤滑流体が連続的に注入された動圧軸受装置において、
    上記動圧軸受部材と上記回転軸及び上記回転部材との間の対向領域のうち、上記軸受空間を含む上記スラスト動圧軸受部より内側の空間は、連続すると共に外気に触れず閉塞して形成され、当該内側の空間には、上記潤滑流体が途切れることなく連続して充填され、
    上記内側の空間であって、上記スラスト動圧軸受部および上記2箇所のラジアル軸受部のうちの他方側のラジアル軸受部より他方側の空間は、外気に開口せず、上記回転軸の他方側端部および上記動圧軸受部材の他方側端部が臨むと共に径方向に広がる空間を成し、
    上記内側の空間には、上記潤滑流体で満たされた軸方向に伸びる圧力開放用バイパス通路が上記軸受空間とは別個に形成され、上記圧力開放用バイパス通路は、上記スラスト動圧軸受部より径方向内側且つ上記ラジアル軸受部より径方向外側、または、上記スラスト動圧軸受部且つ上記ラジアル軸受部より径方向内側、に配置され、
    上記圧力開放用バイパス通路の一方側は、上記2箇所のラジアル軸受部のうちの一方側から上記スラスト動圧軸受部にかけての空間に開口し、他方側は、上記径方向に広がる空間に開口することを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 前記動圧軸受部材の軸方向一方側端面であって、前記スラスト対向領域より半径方向内側の部位に、前記スラスト対向領域よりも軸方向間隔が大きくなるように形成された拡大隙間部が設けられ、
    その拡大隙間部に、上記圧力開放用バイパス通路の一方側が開口するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 前記圧力開放用バイパス通路は、前記2箇所のラジアル軸受部の双方の間の部位に対応する軸受間空間内に向かって開口する連通孔を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の動圧軸受装置。
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