JP4337183B2 - エンジンの制御装置及びエンジンの制御装置の異常診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの制御装置及びエンジンの制御装置の異常診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの気筒内燃焼室に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を設け、燃料を複数回に分けて噴射することにより、排気ガス中のHC(未燃燃料である炭化水素及び燃焼によって改質された炭化水素)量を増やすという技術が知られている。例えば、通常は圧縮行程上死点近傍でのメイン噴射のみを行ない、エンジンの運転状態に応じて必要なときに、メイン噴射後の膨張行程で後噴射を行なうことにより、排気ガス中のHC量を増大させる、というものである。このような排気ガス中のHCの増量は、排気通路に排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を吸収するNOxトラップ材を設けているときには、このトラップ材からNOxを放出させるために行なわれ、あるいはNOxを還元浄化するための触媒にHCを還元剤として供給するために行なわれる。
【0003】
特開平10−205384号公報には、前記メイン噴射と後噴射とを行なうことによって排気ガス中のHCを増やし、これをNOx還元触媒に還元剤として供給することが記載されている。また、前記後噴射を行なって排気ガス中のHC量を増やしたときには排気ガスの酸素濃度が変化することから、排気通路の触媒よりも上流側に酸素濃度センサを設け、その出力変化に基いて後噴射によるHC量を推定して後噴射量を補正するようにし、そのことによって、燃料噴射弁の個体差(ばらつき)、経時変化、制御系の誤差等による後噴射HCのずれを是正することが記載されている。
【0004】
特開平10−252544号公報には、後噴射によって生ずる排気ガスの酸素濃度の変化を排気通路の触媒よりも上流側に配置した酸素濃度センサによって検出し、その検出値に基いて後噴射量のフィードバック制御をすることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、後噴射によって排気ガス中のHC量が変化すると、その変化に対応して排気ガスの酸素濃度が変化するが、そのHC量の変化が小さい場合は酸素濃度センサの出力変化も小さいから、後噴射によって排気ガス中のHC量に予定する変化があったか否かを精度良く検出することができない。
【0006】
そこで、本発明は、エンジンの燃焼状態の変更など排気ガス組成の変更を招く制御が排気ガスのHC濃度の増大変化を招くものであるときに、酸素濃度センサ又はNOx濃度センサによってその増大変化を精度良く検出することができるようにして、エンジンの制御装置の異常診断を行なうこと、また、エンジンの制御を精度良く行なうことができるようにするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題に対して、本発明は、排気ガス中のHC濃度を増加させたときの酸素濃度又はNOx濃度の変化は、そのHCが排気ガス中の酸素又はNOxと反応したときに大きくなるから、そのような反応を積極的に生じさせることによって、その結果の酸素濃度又はNOx濃度を検出するようにしたものである。以下、具体的に説明する。
【0008】
この出願の発明は、エンジンの燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁と、前記エンジンの運転状態に応じて前記燃焼室から排出される排気ガスの組成を所定期間変更する制御手段とを備えているエンジンの制御装置の異常診断装置であって、
前記エンジンの排気通路に配設され、排気ガスの酸素成分又はNOx成分の濃度を検出する濃度センサと、
前記制御手段による排気ガス組成の変更制御が排気ガスのHC濃度の増大変化を招くものであるときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記変更制御の異常を判定する異常判定手段と、
前記排気ガス中の酸素又はNOxと前記HCとの反応を促進する反応促進手段とを備え、
前記異常判定手段が前記反応促進手段による前記反応促進後に前記濃度センサによって検出された前記濃度に基いて前記変更制御の異常を判定することを特徴とする。
【0009】
すなわち、制御手段による排気ガス成分の変更によって排気ガスのHC濃度が増大すると、排気ガスの酸素又はNOxの濃度が相対的に低下するが、反応促進手段によって排気ガス中の酸素又はNOxと前記HCとの反応を促進すると、排気ガスの酸素又はNOxの濃度がさらに低下する。このように濃度センサによって検出すべき排気ガス中の成分濃度の低下度合が大きくなるから、前記排気ガス組成の変更によって排気ガスのHC濃度が予定通りに増大したか否かを精度良く検出することができるようになる。よって、異常判定手段による診断誤差が少なくなる。
【0010】
前記制御手段による排気ガス中のHC量の増大を招くような排気ガス組成の変更は、例えば燃焼室における燃料の燃焼状態の変更は、前記燃料噴射弁による燃料噴射量の増加、燃料噴射回数の増加、燃料噴射時期の遅角など燃料噴射形態の変更によって、あるいは火花点火式エンジンにあってはその点火時期の遅角によって実行することができる。
【0011】
従って、異常判定手段によって異常の判定がされたときには、燃料噴射弁又は制御手段に異常があるということになり、火花点火式エンジンの場合には点火装置、燃料噴射弁又は制御手段に異常があるということになる。
【0012】
前記反応促進手段としては、前記HCの酸化反応を促進する触媒又は前記NOxの還元反応を促進する触媒を採用することができ、その場合には前記濃度センサを前記触媒よりも下流側の排気通路に配設することになる。HCの酸化反応を促進する触媒の場合、この触媒の作用により排気ガスのHCが排気ガス中の酸素又はNOxによって酸化され、そのために排気ガスの酸素又はNOxが消費されてその濃度が低下するものであり、また、NOxの還元反応を促進する触媒の場合、それによって排気ガス中のHCがNOxと反応し易くなり、排気ガスのNOx濃度が低下するものである。
【0013】
前記反応促進手段としては、前記異常判定手段による異常判定の際に排気ガス温度が上昇するように前記燃焼室における燃料の燃焼状態を変更するものを採用することができる。
【0014】
例えば、ディーゼルエンジンの場合、定常運転状態では排気ガス温度が200℃以下になることがあるが、そのときにはたとえ触媒を排気通路に設けていても、排気ガス中の酸素又はNOxとHCとの反応性は悪くなる。そこで、排気ガス温度を積極的に上昇させて排気ガス中の酸素又はNOxとHCとの反応を促進するものである。
【0015】
排気ガスの温度上昇を招くような燃焼状態の変更は、燃料噴射形態の変更によって達成することができる。すなわち、エンジンの気筒内燃焼室に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を設け、前記制御手段は、燃料を圧縮行程上死点近傍で噴射する第1噴射の後に、燃料を排気行程を終了するまでに噴射する第2噴射を行なうように前記燃料噴射弁を作動させることによって前記燃焼状態を変更させるものとし、前記反応促進手段は、前記異常判定の際に排気ガス温度が上昇するように前記第2噴射時期を変更するものとすることができる。
【0016】
例えば、ディーゼルエンジンにおいて、圧縮行程上死点付近でのメイン噴射を行なった後にATDC20゜〜50゜CA(クランク角度)付近でポスト噴射を行なう2分割噴射によって排気ガス中のHC量を増大させる場合、このポスト噴射時期を進角させるようにすれば、排気ガス温度の上昇が図れる。圧縮行程上死点付近で燃料を分割して噴射する多段噴射(先に噴射された燃料の燃焼が終了する前に次に噴射された燃料の燃焼が開始するような燃焼室内での燃焼の継続性を有する多段噴射)において、その分割回数を増やしたときにも排気ガス温度を上昇せしめることが可能であり、その際に噴射中断時間(燃料噴射弁の噴孔が閉じてから次に開くまでのインターバル)を長くして最後の噴射が終了する時期を遅くすれば、それだけ排気ガス温度が上昇する。
【0017】
前記排気ガスの一部を前記濃度センサよりも上流側の排気通路からエンジン吸気系に還流させる排気還流手段を備えている場合、前記燃焼状態の変更によって排気ガス中のHC量を増大させても、排気ガスの還流によって排気ガス中のHC量が減るから、前記濃度センサによる異常判定が難しくなる。また一方では、排気の還流によって新気量が減り、しかも還流された排気ガス中のHCによって燃焼室内で新気中の酸素が消費されるから、排気ガスの酸素濃度が減少し、また、NOxの発生も抑えられることになり、前記濃度センサによる異常判定が難しくなる。従って、排気還流量が所定値以上のときには、前記異常判定手段よる判定を抑制する、例えば異常判定の禁止する、又は異常という判定がされ難くなるように異常判定閾値を変更する異常判定抑制手段を設けることが好ましい。
【0018】
また、異常判定の際の排気還流量が所定値以上のときに、その排気ガスの還流を抑制(禁止又は還流量の低減)する排気還流抑制手段を設けるようにすることができる。これにより、異常判定の信頼性が高くなる。また、排気ガスのHC濃度が増大するようにしてもよい。
【0019】
また、この出願の発明は、ディーゼルエンジンの気筒内燃焼室に燃料を直接供給する燃料噴射弁と、前記エンジンの運転状態に応じて燃料を圧縮行程上死点付近において燃焼室での燃料の燃焼が継続するように複数回に分割して噴射するように前記燃料噴射弁を作動させる制御手段とを備えているエンジンの制御装置の異常診断装置であって、
前記エンジンの排気通路に配設され、排気ガスの成分濃度を検出する濃度センサと、
前記制御手段による燃料噴射形態の変更が行なわれたときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記燃料噴射形態の変更制御の異常を判定する異常判定手段とを備えていることを特徴とする。
【0020】
制御手段による燃料噴射形態の変更が行なわれると、それによって燃焼室での燃焼状態が変化して排気ガスの成分濃度に変化を生ずる。そこで、この発明では、この成分濃度の変化を検出し、その変化が当該燃料噴射形態の変更によって予定されるものか否かによって、当該変更制御に異常があるか否かを判定するようにしたものである。
【0021】
また、この出願の発明は、エンジンの燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁と、前記エンジンの運転状態に応じて前記燃焼室から排出される排気ガスの組成を所定期間変更する制御手段とを備えているエンジンの制御装置において、
前記エンジンの排気通路に配設され、排気ガスの酸素成分又はNOx成分の濃度を検出する濃度センサと、
前記制御手段による排気ガス組成の変更制御が排気ガスのHC濃度の増大変化を招くものであるときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記排気ガスのHC濃度が予定する増大変化をするように前記制御手段の制御を補正する補正手段と、
前記排気ガス中の酸素又はNOxと前記HCとの反応を促進する反応促進手段とを備え、
前記補正手段が前記反応促進手段による前記反応促進後に前記濃度センサによって検出された前記濃度に基いて前記制御手段の制御を補正することを特徴とする。
【0022】
すなわち、制御手段による排気ガス組成の変更によって排気ガスのHC濃度が増大すると、排気ガスの酸素又はNOxの濃度が相対的に低下するが、反応促進手段によって排気ガス中の酸素又はNOxと前記HCとの反応を促進すると、排気ガスの酸素又はNOxの濃度がさらに低下する。このように濃度センサによって検出すべき排気ガス中の成分濃度の低下度合が大きくなるから、前記排気ガス組成の変更制御によって排気ガスのHC濃度が予定通りに増大したか否かを精度良く検出することができ、制御手段の制御の補正に有利になる。
【0023】
【発明の効果】
以上のようにこの出願の発明によれば、エンジンの排気通路に排気ガスの酸素成分又はNOx成分の濃度を検出する濃度センサを設け、制御手段による排気ガス組成の変更制御が排気ガスのHC濃度の増大変化を招くものであるときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記変更制御の異常を判定するようにし、且つ前記排気ガス中の酸素又はNOxと前記HCとの反応を促進する反応促進手段を設け、その反応促進によって前記濃度変化が大きくなるようにしたから、前記排気ガス組成の変更によって排気ガスのHC濃度が予定通りに増大したか否かを精度良く検出することができるようになり、異常診断の信頼性が高まる。
【0024】
また、この出願の発明によれば、前記反応促進手段として触媒を採用し、この触媒よりも下流側の排気通路に前記濃度センサを設けるようにしたから、簡単な構成で異常診断の信頼性を高めることができる。
【0025】
また、この出願の発明によれば、前記反応促進手段として、異常判定の際に排気ガス温度が上昇するように燃焼状態を変更するものを採用したから、排気ガス中の酸素又はNOxとHCとの反応を促進して、異常診断の信頼性を高めることができる。
【0026】
また、この出願の発明によれば、排気ガスの還流量が多いときには異常判定を抑制するようにしたから、誤診断を避けることができる。
【0027】
また、この出願の発明によれば、ディーゼルエンジンの気筒内燃焼室に燃料を直接供給する燃料噴射弁と、エンジンの運転状態に応じて燃料をエンジンの圧縮行程上死点付近において燃焼室での燃料の燃焼が継続するように複数回に分割して噴射するように前記燃料噴射弁を作動させる制御手段とを備えているエンジンの制御装置において、前記エンジンの排気通路に排気ガスの成分濃度を検出する濃度センサを設け、前記制御手段による燃料噴射形態の変更が行なわれたときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記燃料噴射形態の変更制御の異常を判定するようにしたから、エンジンの燃焼制御の信頼性を高めることができる。
【0028】
また、この出願の発明によれば、エンジンの排気通路に排気ガスの酸素成分又はNOx成分の濃度を検出する濃度センサと、焼制御手段による排気ガス組成の変更制御が排気ガスのHC濃度の増大変化を招くものであるときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記排気ガスのHC濃度が予定する増大変化をするように前記制御手段の制御を補正する補正手段と、排気ガス中の酸素又はNOxとHCとの反応を促進する反応促進手段とを設け、この反応促進後に前記濃度センサによって検出された前記成分濃度に基いて前記制御手段の制御を補正するようにしたから、補正の信頼性が高まる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの制御装置Aの全体構成を示し、1は車両に搭載された多気筒ディーゼルエンジンである。このエンジン1は複数の気筒2(1つのみ図示する)を有し、その各気筒2内に往復動可能にピストン3が嵌挿されていて、このピストン3によって各気筒2内に燃焼室4が形成されている。また、燃焼室4の上面の略中央部には、インジェクタ(燃料噴射弁)5が先端部の噴孔を燃焼室4に臨ませて配設され、各気筒毎に所定の噴射タイミングで開閉作動されて、燃焼室4に燃料を直接噴射するようになっている。
【0031】
前記各インジェクタ5は高圧の燃料を蓄える共通のコモンレール(蓄圧室)6に接続されていて、そのコモンレール6には、内部の燃圧(コモンレール圧)を検出する圧力センサ6aが配設されているとともに、クランク軸7により駆動される高圧供給ポンプ8が接続されている。この高圧供給ポンプ8は、圧力センサ6aにより検出されるコモンレール6内の燃圧が所定値以上(例えば、アイドル運転時に約20MPa、それ以外の運転状態では50MPa以上)に保持されるように作動する。また、クランク軸7の回転角度を検出するクランク角センサ9が設けられており、このクランク角センサ9は、クランク軸7の端部に設けた被検出用プレート(図示省略)と、その外周に相対向するように配置され電磁ピックアップとからなり、その電磁ピックアップが被検出用プレートの外周部全周に所定角度おきに形成された突起部の通過に対応してパルス信号を出力するようになっている。
【0032】
また、10はエンジン1の燃焼室4に対しエアクリーナ(図示省略)で濾過した吸気(空気)を供給する吸気通路であり、この吸気通路10の下流端部は、図示しないがサージタンクを介して気筒毎に分岐して、それぞれ吸気ポートにより各気筒2の燃焼室4に接続されている。また、サージタンク内で各気筒2に供給される過給圧力を検出する吸気圧センサ10aが設けられている。前記吸気通路10には上流側から下流側に向かって順に、エンジン1に吸入される吸気流量を検出するホットフィルム式エアフローセンサ11と、後述のタービン21により駆動されて吸気を圧縮するブロワ12と、このブロワ12により圧縮した吸気を冷却するインタークーラ13と、吸気通路10の断面積を絞る吸気絞り弁(吸気量調節手段)14とがそれぞれ設けられている。この吸気絞り弁14は、全閉状態でも吸気が流通可能なように切り欠きが設けられたバタフライバルブからなり、後述のEGR弁24と同様、ダイヤフラム15に作用する負圧の大きさが負圧制御用の電磁弁16により調節されることで、弁の開度が制御されるようになっている。また、前記吸気絞り弁14の開度を検出するセンサ(図示省略)が設けられている。
【0033】
また、20は各気筒2の燃焼室4から排気ガスを排出する排気通路で、この排気通路20の上流端部は分岐して各気筒2の燃焼室4に接続されている。この排気通路20には、上流側から下流側に向かって順に、排気流により回転されるタービン21と、排気ガスの温度を検出する温度センサ17と、排気ガス中のHC、CO及びNOx並びにパティキュレートを浄化可能な触媒コンバータ22と、触媒コンバータ22よりも下流側の排気通路20の排気ガス中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ18とが配設されている。
【0034】
温度センサ17は触媒コンバータ22の入口の排気ガス温度を検出するものであり、従って、その検出温度は触媒温度に対応する。また、O2センサ18は排気ガス中の酸素濃度の増大に応じて比例して出力値が増大する特性を有する。
【0035】
前記触媒コンバータ22は、軸方向(排気ガスの流れ方向)に沿って互いに平行に延びる多数の貫通孔を有するハニカム構造のコージェライト製担体(図示せず)の各貫通孔壁面に2層の触媒層を形成したもので、排気ガス中の酸素濃度が高い酸素過剰雰囲気でNOxを吸収する一方、酸素濃度が前記酸素過剰雰囲気に比べて低いリッチ状態で吸収しているNOxを放出して、還元浄化する特性を有する。
【0036】
すなわち、前記ハニカム担体には、触媒金属としてのPtとNOxトラップ材としてのBaとをアルミナ及びセリアに担持させてなる内側触媒層と、Ptをゼオライトに担持させてなる外側触媒層とが形成されている。この触媒はHCを酸化させるための酸化触媒としての機能、並びに理論空燃比で燃焼した排気ガス雰囲気だけでなく、酸素過剰雰囲気でもNOxを還元浄化するNOx還元触媒としての機能を有するとともに、理論空燃比付近では三元触媒としても働く。
【0037】
前記タービン21及びブロワ12からなるターボ過給機25は、図2に示すように、タービン21を収容するタービン室21aに該タービン21aの全周を囲むように複数のフラップ21b,21b,…が設けられ、その各フラップ21bが排気流路のノズル断面積(A)を変化させるように回動するVGT(バリアブルジオメトリーターボ)である。このVGTの場合、同図(a)に示すように、フラップ21b,21b,…をタービン21に対し周方向に向くように位置付けてノズル断面積(A)を小さくすることで、排気流量の少ないエンジン1の低回転域でも過給効率を高めることができる。一方、同図(b)に示すように、フラップ21b,21b,…をその先端がタービン21の中心に向くように位置付けて、ノズル断面積(A)を大きくすることで、排気流量の多いエンジン1の高回転域でも過給効率を高めることができる。
【0038】
前記排気通路20のタービン21よりも上流側の部位からは、排気ガスの一部を吸気側に還流させる排気還流通路(以下EGR通路という)23が分岐し、このEGR通路23の下流端は吸気絞り弁14よりも下流側の吸気通路10に接続されている。EGR通路23の途中の下流端寄りには、開度調節可能な負圧作動式の排気還流量調節弁(排気還流量調節手段:以下EGR弁という)24が配置されていて、排気通路20の排気ガスの一部をEGR弁24により流量調節しながら吸気通路10に還流させるようになっている。
【0039】
前記EGR弁24は図3に示されており、弁箱を仕切るダイヤフラム24aに弁棒24bが固定され、この弁棒24bの両端にEGR通路23の開度をリニアに調節する弁本体24cとリフトセンサ26とが設けられている。前記弁本体24cはスプリング24dによって閉方向(図の下方)に付勢されている一方、弁箱の負圧室(ダイヤフラム24aよりも上側の室)には負圧通路27が接続されている。この負圧通路27は、負圧制御用の電磁弁28を介してバキュームポンプ(負圧源)29に接続されており、電磁弁28が後述のECU35からの制御信号(電流)によって負圧通路27を連通・遮断することによって、負圧室のEGR弁駆動負圧が調節され、それによって、弁本体24cによりEGR通路23の開度がリニアに調節されるようになっている。
【0040】
尚、前記ターボ過給機25のフラップ21b,21b,…にもEGR弁24と同様にダイヤフラム30が取り付けられていて、負圧制御用の電磁弁31によりダイヤフラム30に作用する負圧が調節されることで、前記フラップ21b,21b,…の作動量が調節されるようになっている。
【0041】
前記各インジェクタ5、高圧供給ポンプ8、吸気絞り弁14、EGR弁24、ターボ過給機25のフラップ21b,21b,…等はコントロールユニット(Engine Contorol Unit:以下ECUという)35からの制御信号によって作動するように構成されている。一方、このECU35には、前記圧力センサ6aからの出力信号と、クランク角センサ9からの出力信号と、エアフローセンサ11からの出力信号と、温度センサ17からの出力信号と、O2センサ18からの出力信号と、EGR弁24のリフトセンサ26からの出力信号と、車両の運転者による図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ32からの出力信号とが少なくとも入力されている。
【0042】
そして、インジェクタ5の作動による燃料噴射制御が行なわれて、燃料噴射量及び燃料噴射時期がエンジン1の運転状態に応じて制御されるとともに、高圧供給ポンプ8の作動によるコモンレール圧力、即ち燃量噴射圧の制御が行なわれ、これに加えて、吸気絞り弁14の作動による吸入空気量の制御と、EGR弁24の作動による排気還流量の制御と、ターボ過給機25のフラップ21b,21b,…の作動制御(VGT制御)とが行なわれるようになっている。
【0043】
前記ECU35には、エンジン1の目標トルク及び回転数の変化に応じて実験的に決定した最適な燃料噴射量Qを記録した燃料噴射量マップが、メモリ上に電子的に格納して備えられている。そして、通常は、アクセル開度センサ32からの出力信号に基づいて求めた目標トルクとクランク角センサ9からの出力信号に基づいて求めたエンジン回転数とに基づいて、前記燃料噴射量マップから基本燃料噴射量Qbaseが読み込まれ、この基本燃料噴射量Qbaseと圧力センサ6aにより検出されたコモンレール圧力とに基づいて、各インジェクタ5の励磁時間(開弁時間)が決定されるようになっている。この基本的な燃料噴射制御によって、エンジン1の目標トルクに対応する分量の燃料が供給され、エンジン1は燃焼室4における平均的空燃比がかなりリーンな状態(A/F≧18)で運転される。
【0044】
(燃料噴射制御及び異常診断)
本発明の特徴部分は、エンジンの運転状態(触媒の状態を含む。)に応じて燃料の噴射形態を変更することにより、排気ガスのHC濃度を増大させるようにした点、O2センサ18の出力変化に基いて前記噴射形態の変更制御に異常(インジェクタ5の異常を含む)があるか否か、さらには触媒コンバータ22が正常に働いているか否かを判定するようにした点、さらにO2センサ18の出力変化に基いて前記燃料の噴射制御を補正するようにした点にあり、特に前記判定及び補正の精度を高めるために反応促進手段を設けた点に重要な特徴がある。
【0045】
前記噴射形態の変更は、圧縮行程上死点近傍で燃料を噴射するメイン噴射のみを行なう噴射形態と、このメイン噴射に加えてその後の膨張行程又は排気行程において燃料を噴射するポスト噴射を行なう噴射形態との間で行なわれる。このメイン噴射とポスト噴射とを行なう噴射形態によって排気ガスのHC濃度の増大が図られるものである。
【0046】
反応促進手段の一つは触媒コンバータ22の触媒であり、他の反応促進手段は後述するポスト噴射形態の変更手段によって構成されている。
【0047】
以下に、前記ECU35の処理動作について図4乃至図8のフローチャートに沿って説明する。尚、この制御は各気筒毎に独立して所定クランク角で実行される。
【0048】
まず、スタート後のステップS1において、クランク角信号、O2センサ出力、エアフローセンサ出力、アクセル開度等を読み込む。続くステップS2において、アクセル開度から求めた目標トルクとクランク角信号から求めたエンジン回転数とに基づいて、燃料噴射量マップから基本燃料噴射量Qbaseを読み込む。燃料噴射量マップは、図9に例示するように、アクセル開度及びエンジン回転数の変化に応じて実験的に決定した最適な燃料噴射量Qを記録したものである。このマップにおいて、基本燃料噴射量Qbaseは、アクセル開度が大きいほど、またエンジン回転数が高いほど、多くなるように設定されている。
【0049】
続くステップS3では、ポスト噴射条件が成立しているか否かを判別する。このポスト噴射条件はエンジンが定常運転状態にあるとき所定時間毎に成立する。すなわち、エンジンの定常運転状態においては、メイン噴射のみを行なう噴射形態と、メイン噴射及びポスト噴射を行なう噴射形態とが交互にそれぞれ所定時間ずつ実行される。これは、触媒コンバータ22に供給される排気ガスのHC濃度を周期的に増大させ、そのことによって触媒のNOx浄化性能を高めるためである。すなわち、HC濃度が増大すると、その当初は触媒によるNOx浄化率が上昇するが、HC濃度が高い状態が続くと、NOx浄化率は低下していく。これに対して、HC濃度の増減が周期的に繰り返されると、NOx浄化率が高い状態を間欠的に形成することができ、全体としてみれば、NOx浄化率が高くなるものである。
【0050】
なお、触媒コンバータ22よりも下流側の排気通路20に排気ガスのNOx濃度を検出するNOxセンサを設け、このセンサの出力によりNOx濃度が所定値以上に増大したときに、前記メイン噴射及びポスト噴射を行なう噴射形態を所定時間実行するようにしてもよい。すなわち、触媒コンバータ22にはNOxトラップ材が含まれているから、NOx濃度が増大したということはこのNOxトラップ材のNOx吸収が飽和してきたことを意味する。そこで、噴射形態の変更によって排気ガスのHC濃度を増大させ、換言すれば、NOxトラップ材まわりの酸素濃度を低下させて、NOxの放出を促すものである。
【0051】
ステップS3でポスト噴射条件が成立していることが確認されると、続くステップS4では前記基本燃料噴射量Qbaseをキャンセルして、メイン噴射量Qr1及びポスト噴射量Qr2、並びにメイン噴射時期Tr1及びポスト噴射時期Tr2を設定する。
【0052】
メイン噴射量Qr1及びポスト噴射量Qr2は各々の燃料噴射量マップから読み込まれる。噴射量Qr2マップは、図10に例示するように、アクセル開度及びエンジン回転数の変化に応じて実験的に決定した最適なQr2を記録したものである。このマップにおいて、噴射量Qr2は、アクセル開度が大きいほど、またエンジン回転数が高いほど、多くなるように設定されている。噴射量Qr1マップの例示は省略するが、噴射量Qr2マップと同様のものである。但し、Qr1>Qr2であり、Qr2/Qr1の比は0.3〜0.5程度であり、その範囲でエンジン負荷が高いほどその比が小さくなるように設定されている。。
【0053】
メイン噴射時期Tr1は圧縮行程上死点付近に設定され、例えばBTDC5°CA(クランク角度)を基準として、噴射量Qr1が多いほど進角され、反対に噴射量Qr1が少ないほど遅角される。ポスト噴射時期Tr2は、前記メイン噴射の完了から膨張行程前半までの期間(例えばATDC60°CA〜ATDC90°CA)に設定され、エンジン負荷が高いほど進角され、反対にエンジン負荷が低いほど遅角される。
【0054】
このようにポスト噴射は、その時期Tr2が圧縮行程上死点からかなり遅角させて設定されているから、エンジン出力に対する寄与はそれだけ小さくなり、ポスト噴射燃料は排気ガス中のHC量を増大させることに主として利用されることになる。
【0055】
前記ステップS3においてポスト噴射条件が成立していないときにはステップS12に進み、後述するモニタ許可フラグFmon及びモニタ回数Nをクリア状態にし(Fmon←0,N←0)、メイン噴射量Qr1及びその噴射時期Tr1を設定し、その噴射タイミングになった時点でメイン噴射を実行する(ステップS13〜S15)。つまり、ポスト噴射条件が成立していないときにはメイン噴射のみが実行される。この場合のメイン噴射量Qr1としては先に設定した基本燃料噴射量Qbaseが採用され、その噴射時期Tr1は圧縮行程上死点付近に設定され、例えばBTDC5°CAを基準として、噴射量Qr1が多いほど進角され、反対に噴射量Qr1が少ないほど遅角される。
【0056】
前記ポスト噴射条件が成立している場合は、ステップS5においてモニタ条件が成立しているか否かを判別する。このモニタは、O2センサ18によって前記噴射形態の変更制御が正常に行なわれているか否かを監視するものであり、エンジンを始動してから未だ当該制御の異常診断が完了していないときにモニタ条件が成立する。また、触媒コンバータ22の酸化触媒機能の異常診断を行なう場合にはその異常診断が完了していることがモニタ条件となる。
【0057】
酸化触媒機能の異常診断は、排気通路20における触媒コンバータ22よりも上流側及び触媒コンバータ22よりも下流側の各々にリニアO2センサを配置し、燃焼室の空燃比を一定にしたエンジンの定常運転状態において、前記上流側の排気ガスの酸素濃度と前記下流側の排気ガスの酸素濃度との差に基いて行なう。すなわち、その差が所定値以上であるときに当該触媒機能が正常であると判定し、その差が所定値未満であるときに異常と判定するものである。酸化触媒機能が正常に働いている場合には、排気ガス中のHCやCO(一酸化炭素)が当該触媒コンバータ22を通過する間に酸化され、排気ガス中の酸素が消費されて前記上流側と下流側とで酸素濃度に差を生ずることを利用するものである。
【0058】
前記モニタ条件が成立しているときには図5に示すステップS6に進み、温度センサ17によって検出される触媒コンバータ22の入口の排気ガス温度Tcatが所定温度Tcatoよりも高いか否かを判別する。すなわち、本実施形態では触媒コンバータ22の触媒が排気ガス中の酸素又はNOxとHCとの反応を促進する反応促進手段の一つを構成しており、この触媒が十分に活性を呈する温度になっていないときには他の反応促進手段であるポスト噴射形態の変更制御によって排気ガス温度を上昇させるものである。この他の反応促進手段であるポスト噴射形態の変更制御を行なうか否かの判定のためにステップS6が存在する。所定温度Tcatoとしては、例えば触媒の浄化率がピークを示す温度よりも数十度低い温度を採用する。
【0059】
ステップS6において前記温度Tcatが所定温度Tcato以下であると判別されると、ステップS7に進んでポスト噴射形態の変更が行なわれる。すなわち、ポスト噴射量Qr2の増量(+Qα)及びポスト噴射時期Tr2の進角(−Tα)であり、このポスト噴射時期Tr2は例えばATDC20゜CA〜ATDC30゜CAとする。
【0060】
ステップS4において設定されるポスト噴射時期Tr2は、ATDC60°CA〜ATDC90°CAであって、圧縮行程上死点からかなり遅角されているから後燃えを生じ難く、逆に燃料蒸発のための潜熱が奪われるため、熱発生率は低い。これに対して、上述の如く、ポスト噴射時期Tr2を進角させた場合は後燃えを生じ易くなり、熱発生率が高くなって排気ガス温度の上昇に有効になる。ポスト噴射量Qr2の増量は後燃えによる排気ガス温度の上昇に寄与する。
【0061】
図11は2000ccの気筒内直噴式エンジンを回転数1500rpm、平均有効圧Pe=3で運転し、且つポスト噴射時期Tr2を変えたときの排気ガス温度(ターボ過給機前の温度)を示す。同図のA0〜A40は圧縮行程上死点からの遅角度(クランク角度)を表す。同図からポスト噴射時期Tr2を進角させると排気ガスの温度が上昇することがわかる。
【0062】
上述の如くモニタ条件が成立し且つ排気ガス温度Tcatが所定温度以下であるときには、ステップS4で設定されたメイン噴射量Qr1及びメイン噴射時期Tr1、ステップS7で設定された排気ガス昇温用のポスト噴射量Qr2及びポスト噴射時期Tr2によって、それぞれの噴射タイミングに至ったときにメイン噴射及びポスト噴射が実行される(ステップS8〜S11)。また、ステップS5においてモニタ条件が成立しないときには、モニタ回数NをクリアしてステップS4で設定されたメイン噴射量Qr1、メイン噴射時期Tr1、ポスト噴射量Qr2及びポスト噴射時期Tr2でメイン噴射及びポスト噴射が実行される(ステップS16→S8〜S11)。
【0063】
前記ステップS7によるポスト噴射形態の変更によって排気ガス温度Tcatが所定温度Tcato以上に上昇すると、ステップS6からステップS17に進み、先のステップS7で設定されたポスト噴射量Qr2及びポスト噴射時期Tr2がキャンセルされ、モニタのためのポスト噴射量Qr2及びポスト噴射時期Tr2が設定される。すなわち、先にステップS4で設定されたポスト噴射量Qr2の増量(+Qβ)及びポスト噴射時期Tr2の進角(−Tβ)がステップS17で行なわれる。このポスト噴射量Qr2の増量及びポスト噴射時期Tr2の進角は、モニタ中に排気ガス温度が大きく変化しないようにするためであり、従って、その増量及び進角の程度はステップS7における増量及び進角と同程度かそれ以下とする(Qα≧Qβ,Tα≧Tβ)。このモニタ用のポスト噴射時期Tr2は例えばATDC30°CA〜ATDC40°CAとなるようにすればよい。
【0064】
続くステップS18においてO2センサ18の出力に基いてポスト噴射量のF/B(フィードバック)補正値ΔQr2を設定し、ポスト噴射量Qr2の補正(Qr2←Qr2+ΔQr2)を行なう(ステップS19)。そうして、モニタ許可フラグFmonをオン(Fmon←1)するとともに、モニタ回数Nをインクリメントし、ステップS8に進む(ステップS20,S21)。
【0065】
すなわち、モニタ用の噴射量Qr2及び噴射時期Tr2でポスト噴射が行なわれてその噴射量Qr2がO2センサ18の出力に基いてフィードバック補正されるとともに、このモニタ用のポスト噴射が行なわれる度にモニタ回数Nが加算される。このモニタ回数Nはモニタ用のポスト噴射回数である。
【0066】
前記ステップS4は排気ガス中のHC量増大のための燃焼状態(燃料噴射形態)の変更手段を構成し、ステップS7は排気ガス昇温による反応促進手段を構成している。
【0067】
−F/B補正値ΔQr2設定フロー−
前記F/B補正値ΔQr2の設定フローは図6に示されている。スタート後のステップSA1において、クランク角信号、O2センサ出力、エアフローセンサ出力、アクセル開度等を読み込む。続くステップAS2において、ポスト噴射の影響がO2センサ18に現れる時間帯Tzを設定する。すなわち、ポスト噴射が行なわれると、それによって排気ガスのHC濃度が増大し、その影響がO2センサ18の出力変化となって現れるが、そのポスト噴射から影響が現れ始めるまでの時間Tz1及びその影響がなくなるまでの時間Tz2をマップにより設定する。このマップは影響出始め時間Tz1及びその影響消滅時間Tz2をエンジン回転数及びアクセル開度に対応させて予め実験により求めて電子的に格納したものであり、影響出始め時間Tz1及びその影響消滅時間Tz2は、エンジン回転数が高いほど、またアクセル開度が大きいほど早くなり、また、時間帯Tzはエンジン回転数が高いほど、またアクセル開度が大きいほど短くなる。
【0068】
続くステップSA3でO2センサ18の目標出力値Oxrefを設定する。この目標出力値Oxrefは、先のステップS17で設定したモニタ用のポスト噴射量Qr2及び噴射時期Tr2でポスト噴射を実行したときに予測される出力値であり、マップから読み込む。このマップは、アクセル開度及びエンジン回転数の変化に応じて実験的に決定した目標出力値Oxrefを記憶したものである。このマップにおいて、目標出力値Oxrefは、アクセル開度が大きいほど高くなるように設定されている。
【0069】
続くステップSA4でモニタ用のポスト噴射の実行が確認され、ステップSA5でその終了が確認されると、ステップSA6でタイマ値T1をインクリメントする。続くステップSA7でタイマ値T1がポスト噴射影響の出始め時間Tz1に達したことが確認されると、ステップSA8でO2センサ18の出力値Oxが入力されて記憶される。この出力値Oxの入力及び記憶はタイマ値T1がポスト噴射影響の消滅時間Tz2になるまで行なわれる(ステップSA9)。
【0070】
続くステップSA10で前記時間帯Tzの期間に記憶したO2センサ出力値Oxを積算し該出力値Oxの平均値Oxavを求める。続くステップSA11で、前記O2センサ18の目標出力値Oxrefと実際の平均出力値Oxavとの差に基いてマップからF/B補正値ΔQr2が演算される。このマップは、図12に例示するように目標出力値Oxrefが実際の平均出力値Oxavよりも多いときにはその偏差が大きいほどマイナス方向に大きくなり、目標出力値Oxrefが実際の平均出力値Oxavよりも少ないときにはその偏差が大きいほどプラス方向に大きくなるように設定されている。但し、目標出力値Oxrefと実際の平均出力値Oxavとの偏差が小さいところには不感帯が設けられている。
【0071】
しかる後、ステップSA12でタイマ値T1及びO2センサ出力値Oxの記憶をクリアする。
【0072】
−異常診断−
図7には図5のステップS11に続いて行なわれる異常診断フローが記載されている。すなわち、ステップS22でモニタ許可フラグFmonのオンを確認し、ステップS23でモニタ回数(モニタ用ポスト噴射回数)Nが所定回数Noに達しているか否かを確認する。モニタ回数Nが所定回数Noに達していなければ、その回数Noに達するまで各回のモニタ用ポスト噴射によって求められたF/B補正値ΔQr2を積算する(ステップS24)。
【0073】
モニタ回数Nが所定回数Noに達したときは、ステップS25でF/B補正値ΔQr2の積算値ΣΔQr2が所定の範囲(m<ΣΔQr2<n)に入っているか否かを判別し、入っていればステップS26で正常判定を行ない、入っていなければステップS27で劣化判定のワーニングを出し、しかる後、ステップS28でモニタ許可フラグFmon及びモニタ回数Nをクリアする。
【0074】
前記ステップS25〜S27は異常判定手段を構成している。
【0075】
以上のように、ポスト噴射が実行されたときには排気ガス中のHC量が増大するが、HC量が予定通りに増大したか否かの診断にあたって、排気ガス温度が低いときにはそのポスト噴射量の増量及びポスト噴射時期の進角(ステップS7)によって排気ガスの昇温が図られる。従って、この排気ガス温度の上昇によって触媒コンバータ22の触媒温度が上昇し、当該触媒の活性が高まる。これにより、排気ガス中のHCが触媒上で排気ガス中の酸素と効率良く反応して、排気ガスの酸素濃度が減少する状況になる。
【0076】
このような状況において、ポスト噴射がモニタ用ポスト噴射(ステップS17)に変更されてO2センサ18により排気ガスの酸素濃度が検出されるから、ポスト噴射によって排気ガス中のHC量が予定通り増大しているならば、そのHC量の増大によって排気ガス中の酸素量が低下し、O2センサ18の出力変化が大きくなる。つまり、ポスト噴射によるHC量増大の影響がO2センサ18の出力変化として明瞭に現れF/B補正値ΔQr2に反映されることになる。これにより、制御の診断誤差が回避されるものである。
【0077】
なお、触媒コンバータ22の異常診断を事前に行なわない場合には、触媒コンバータ22の機能に異常があるときは、O2センサ18の出力変化に影響が出ることになるから、前記異常判定があったときには、制御か触媒コンバータ22のいずれかに異常があるということになる。
【0078】
−ポスト噴射の補正−
次に前記F/B補正値ΔQr2を用いたポスト噴射量Qr2の補正について図8に示すフローチャートに沿って説明する。すなわち、図5のステップS11に続くステップSB22でモニタ許可フラグFmonのオンを確認し、ステップSB23でモニタ回数(モニタ用ポスト噴射回数)Nが所定回数N1に達しているか否かを確認する。モニタ回数Nが所定回数N1に達していなければ、その回数N1に達するまで各回のモニタ用ポスト噴射によって求められたF/B補正値ΔQr2を積算する(ステップSB24)。
【0079】
モニタ回数Nが所定回数N1に達したときは、ステップSB25でF/B補正値ΔQr2の積算値ΣΔQr2を回数N1で除してなる平均値ΔQr2avを求める。続くステップSB26で今回の平均値ΔQr2avに前回の平均値ΔQr2avを反映させるなまし処理を行なってF/B補正値の学習値ΔQr2lernを求める。続くステップSB27で学習値ΔQr2lernに基いて図10に例示するポスト噴射量Qr2マップを補正し、しかる後、ステップSB28でモニタ許可フラグFmon及びモニタ回数Nをクリアする。
【0080】
前記ステップSB25〜SB27は補正手段を構成している。
【0081】
従って、このポスト噴射量Qr2の補正においても、先に説明した異常診断の場合と同様にステップS7による排気ガスの昇温、並びに触媒によるHC酸化反応の促進により、ポスト噴射によるHC量増大をO2センサ18の出力変化として確実に捉えることができるから、補正の精度が高まることになる。
【0082】
−排気ガス昇温のための他の噴射制御−
上述の例ではポスト噴射形態を変更して排気ガス温度を高めるようにしたが、メイン噴射形態を変更して排気ガス温度を高めるようにしてもよい。すなわち、メイン噴射燃料を圧縮行程上死点付近において燃焼室での燃料の燃焼が継続するように複数回に分割して噴射するというものである。各回の噴射の開弁時間は800μ秒以下、噴射中断時間Δtは100〜1000μ秒とすることが好ましい。2回目の噴射は圧縮行程上死点以降に行なうことが好ましい。この分割噴射の基本的作用は次の通りである。
【0083】
インジェクタ5の噴孔から噴出した燃料は全体として円錐形状の噴霧を形成しながら燃焼室4に広がるとともに、空気との摩擦により分裂を繰り返して微小な油滴になり、それらの油滴の表面から燃料が蒸発して燃料蒸気が生成される。その際、燃料が分割して噴射されることで、最初に噴射された燃料による予混合燃焼の割合は相対的に少なくなり、燃焼初期に燃焼圧や燃焼温度が過度に上昇することがなくなるので、NOxの生成が低減する。
【0084】
噴射中断時間Δtが100μ秒以上に設定されているので、先に噴射された燃料油滴に後から噴射された燃料油滴が追いつくことは殆どない。特に、2回目の噴射を圧縮行程上死点以降に行なえば、この2回目の噴射燃料が直ちに燃焼し、燃焼室4の圧力が大きく上昇して圧縮空気の粘性が高くなるので、3回目の噴射燃料の油滴は直ちに減速され、先に噴射された燃料の油滴に追いつくことはない。各回の開弁時間が略800μ秒以下に設定されているので、各回の燃料噴射量が少なく、その燃料噴霧中での油滴同士の再結合も最小限に抑制されるので、例えば燃圧を高めて燃料の噴出速度を大きくすることにより、燃料の微粒化ひいては気化霧化を十分に促進して、燃料蒸気と空気との混合状態を大幅に改善することができる。噴射中断時間Δtが1000μ秒以下に設定されているので、先に噴射された燃料の燃焼が終了する前に次の噴射燃料が燃焼し始めるというように、各噴射による燃料が途切れることなく良好に燃焼される。
【0085】
要するに、主噴射を分割して行うことにより、噴射された燃料の燃焼状態を極めて良好なものにして、燃費改善とスモーク生成の抑制とを実現できる。また、噴射終了時期は相対的に遅くなるものの、その間に断続的に噴射される燃料は上述の如く良好に気化霧化されて拡散燃焼するので、燃料噴射時期を遅角補正した場合のように燃焼状態が悪くなることはなく、むしろ、燃焼室4の圧力が相対的に長い間、高い状態に維持されて、燃焼ガスの膨張力が極めて有効にピストン3に伝達されるようになり、機械効率の向上によっても燃費の改善が図られる。
【0086】
そうして、前記のように燃料が良好に燃焼されて燃焼エネルギーそのものが大きくなる上に、燃焼の終了時期が遅くなって、排気の一部が温度状態が高いうちに排気通路20に流出するようになるので、排気圧力及び排気ガス温度を上昇させて、触媒22の早期昇温を促すことができる。
【0087】
メイン噴射の分割回数及び噴射中断時間Δtが排気温度に及ぼす影響は図13に示されている。これは、エンジン1の目標トルクに対応する基本噴射量の燃料を略圧縮行程上死点から一括して噴射した場合(以下、一括噴射という)、2回に等分割して噴射した場合(以下、2分割噴射という)、3回に等分割して噴射した場合(以下、3分割噴射という)の各々について、噴射中断時間Δtを変更し、これに伴い変化する噴射終了時のクランク角度と、排気温度との関係を調べたものである。2分割噴射では、Δt=350,400,700,900μsecについて調べ、3分割噴射では、Δt=400,550,700,900μsecについて調べた。
【0088】
同図によれば、一括噴射よりも2分割噴射の方が排気温度が高く、その2分割噴射よりも3分割噴射の方がさらに排気温度が高くなっている。また、2分割噴射及び3分割噴射では、噴射中断時間Δtが350〜900μ秒の範囲であれば該Δtを拡げた方が排気温度が高くなることが分かる。
【0089】
−触媒がNOx還元触媒であるときのFmonについて−
酸化触媒や三元触媒であれば、その活性温度域が広いから、排気ガス温度Tcatが所定温度Tcatoを越えればよく、その温度を管理する必要性は少ない。しかし、NOx還元触媒の場合はその活性温度域が狭いことから、排気ガス温度Tcatがその活性温度域に存するときのみにモニタ許可フラグFmonをオンとすることが好ましい。すなわち、NOx還元触媒の活性温度域を越えて排気ガス温度が高くなると、排気ガス中のHCとNOxとの反応を促進することができないからである。このNOx還元触媒のみを反応促進手段として採用する場合には、排気ガスのNOx濃度を検出するセンサによってモニタをすることになる。
【0090】
−その他−
前記実施形態では異常診断のためのモニタをF/B補正値ΔQr2によって行なっているが、O2センサ18の出力値Oxの変化に基いてポスト噴射を直接モニタするようにしてもよい。
【0091】
(EGR制御)
以下に、前記ECU35によるEGR制御の処理動作について具体的に図14のフローチャートに沿って説明する。尚、この制御は所定時間毎に実行される。
【0092】
まず、スタート後のステップSC1において、クランク角信号、エアフローセンサ出力、アクセル開度等を読み込み、続くステップSC2において、アクセル開度とクランク角信号から求めたエンジン回転数とに基づいて、マップから基本EGR率EGRbを読み込む。このマップは、図15に例示するように、アクセル開度及びエンジン回転数に対応する最適なEGR率を予め実験的に決定して、ECU35のメモリに電子的に格納したものであり、基本EGR率EGRbはアクセル開度が小さいほど大きくなるように、また、エンジン回転数が低いほど大きくなるように設定されている。
【0093】
続いて、ステップSC3では、前記ステップSC2と同様にアクセル開度とエンジン回転数とに基づいて、マップから目標新気量qを読み込む。ここで、新気量とは燃焼室4に吸入される吸気のうち還流排気ガスを除いたもので、エアフローセンサ11により計測される吸入空気量のことである。前記マップも前記基本EGR率EGRbのマップと同様にメモリに格納されており、図16に例示するように目標新気量qはアクセル開度が大きいほど大きくなるように、また、エンジン回転数が高いほど大きくなるように設定されている。
【0094】
ここで、前記EGR率は還流される排気量(EGR量)の全吸気量に対する割合をいう。また、一般に、直噴式ディーゼルエンジンにおいては、排気還流量を増やして燃焼室の空燃比を小さくするほどNOxの生成を抑制できるが、その反面、図17に例示するように、空燃比があまり小さくなるとスモークの生成量が急増するという特性がある。そこで、前記ステップSC2,SC3における基本EGR率EGRb及び目標新気量qは、いずれもエンジン1の燃焼室4の空燃比がスモーク量の急増しない範囲でできるだけ小さな値になるように設定している。
【0095】
続くステップSC4では、エアフローセンサ出力から求められる実新気量を目標新気量qから減算した新気量偏差に基づいて、EGR率フィードバック補正値EGRf/bを図18に例示するマップから読み込む。このマップにおいて、EGR率フィードバック補正値EGRf/bは、目標新気量qが実新気量よりも多いときはその偏差が大きいほど小さくなるように、また、目標新気量qが実新気量よりも少ないときはその偏差が大きいほど大きくなるように設定されている。但し、目標新気量qが実新気量に近いところには不感帯がある。
【0096】
続いて、ステップSC5では、前記ステップSC2で設定した基本EGR率EGRbにステップSC4で求めたEGR率フィードバック補正値EGRf/bを加算して、目標EGR率EGRtを演算する。
【0097】
そうして、続くステップSC6において、O2センサ18によるモニタ中か否かを判別する。モニタ中であればステップSC7に進んで目標EGR率EGRtが所定のモニタ限界EGR率EGRmonよりも大きいか否かを判別する。大であればステップSC8に進んで目標EGR率EGRtをモニタ限界EGR率EGRmonに変更し、ステップSC9に進んで、変更された目標EGR率EGRtに対応する出力を負圧制御用の電磁弁28に出力して、EGR弁24を駆動し、しかる後にリターンする。モニタ中でないとき、並びに目標EGR率EGRtがモニタ限界EGR率EGRmon以下であるときには、ステップSC5で設定した目標EGR率EGRtによってEGR弁24を駆動する。
【0098】
このようなEGR制御によれば、モニタ中にEGR率が大きいときにはこれが所定値を越えないように変更されるため、つまりEGR量が抑えられるため、O2センサ18の出力に基づく制御の診断誤差が少なくなる。
【0099】
図17のフローにおけるSC6〜SC7の各ステップにより、排気還流量が多いときの異常診断を抑制する異常判定抑制手段が構成されている。
【0100】
(多段噴射の異常診断)
次に上述のディーゼルエンジンにおいて、圧縮行程上死点付近におけるインジェクタ5による燃料噴射を複数回に分割して行なう多段噴制御を行なう場合の、制御に異常があるか否かを排気ガス濃度センサに基いて診断する異常診断について説明する。
【0101】
この多段噴射は、先に説明したように、各回の噴射の開弁時間を例えば800μ秒以下とし、噴射中断時間Δtを例えば100〜1000μ秒とし、燃焼室内で先に噴射された燃料の燃焼と後から噴射された燃料の燃焼とが継続するように噴射を制御する、というものである。
【0102】
以下、図19に示すフローチャートに従って内容を具体的に説明する。尚、この制御は各気筒毎に独立して所定クランク角で実行される。
【0103】
まず、スタート後のステップSD1において、クランク角信号、O2センサ出力、エアフローセンサ出力、アクセル開度等を読み込む。続くステップSD2において、アクセル開度から求めた目標トルクとクランク角信号から求めたエンジン回転数とに基づいて、燃料噴射量マップから基本燃料噴射量Qbaseを読み込む。続くステップSD3では、各回の燃料噴射量及び噴射時期、すなわち、第1噴射量QT1、第2噴射量QT2、第1噴射時期IT1及び第2噴射時期IT2をそのときのエンジン運転状態に応じて設定する。図20には定常運転状態における噴射中断時間Δtを設定するためのマップが示されている。すなわち、エンジンの低負荷・低回転領域では排気ガス温度を高めるためにΔtは大に設定され、他の運転領域ではエンジン負荷が高くなるにつれて、また、エンジン回転数が高くなるにつれてΔtが小さくなるように設定して、排気ガス中のHC量及びCO量を低減するようになされている。
【0104】
続くステップSD4では、モニタ条件が成立しているか否かを判別する。このモニタは、O2センサ18によって多段噴射制御が正常に行なわれているか否かを監視するものであり、エンジンが定常運転状態にあること、エンジンを始動してから未だ当該制御の異常診断が完了していないことが成立条件となり、また、モニタ用のO2センサ18を触媒コンバータ22よりも下流側の排気通路20に設ける場合には、触媒コンバータ22の酸化触媒機能が正常であることが診断されていること、触媒が活性を示す所定温度範囲にあることをさらに成立条件とすることができる。
【0105】
モニタ条件が成立しているときにはステップSD5に進んで噴射形態変更のための目標A/F(空燃比)を設定する。本例の噴射形態の変更は排気ガス中のHC量(CO量)の変化を招くような噴射中断時間Δtの変更である。すなわち、図21は、図13の排気ガス温度の場合と同様にして、噴射の分割回数及び噴射中断時間Δtが排気ガス中のHC量に及ぼす影響を調べた結果を示すものである。同図によれば、2分割噴射及び3分割噴射では、噴射中断時間Δtが長くなるに従って排気ガス中のHC量が増大している。また、2分割噴射又は3分割噴射よりも一括噴射の方のHC量が多い。
【0106】
従って、例えば、現在の噴射形態が2分割噴射で噴射中断時間Δtが小であるときは、HC量が増大するように噴射中断時間Δtを拡大するものであり、そのために、当該噴射形態の変更によって増大するHC量に対応したA/Fを目標A/F(現在のA/Fよりもリッチ側の小さい目標A/F)を設定する。現在の噴射形態が2分割噴射で噴射中断時間Δtが大であるときは、HC量が減少するように噴射中断時間Δtを縮小するものであり、そのために、当該噴射形態の変更によって減少するHC量に対応したA/Fを目標A/F(現在の空燃比よりもリーン側の大きい目標A/F)を設定する。
【0107】
続くステップSD6ではモニタタイマ値T3をインクリメントし、続くステップSD7で目標A/FとO2センサ18の出力から求まる実A/F(現在の空燃比)とに基いてインターバル補正値(噴射中断時間Δtの補正値)Δtcを設定する。すなわち、目標A/Fから実A/Fを減算したA/F差がプラスのときには一定のプラス値のΔtcを設定し、このA/F差がマイナスのときには一定のマイナス値のΔtcを設定する。但し、A/Fの偏差が小さい領域はΔtc=0の不感帯を設けておく。そうして、続くステップSD8で2回目の噴射時期IT2にインターバル補正値Δtcを加算してこれを補正する。続くステップSD9では、ステップSD3で設定された第1噴射量QT1及び噴射時期IT1、第2噴射量QT2及びステップSD8で補正された第2噴射時期IT2により、多段噴射を実行する。
【0108】
前記インターバル補正値Δtcの設定及び第2噴射時期IT2の補正をタイマ値T3が所定値T30になるまで繰り返し(ステップSD10)、所定値T30になった時点でステップSD11に進んで第1噴射時期IT1と第2噴射時期IT2との噴射間隔(噴射中断時間)ΔITを算出する。
【0109】
そうして、ステップSD12において、噴射間隔(噴射中断時間)ΔITが所定の範囲に入っているか否か、つまり、目標A/Fに対応して拡大又は縮小されたか否かを判別し、所定範囲にあれば噴射形態の変更が予定通りに行なわれたとして正常判定しタイマ値T3を零に戻す一方(ステップSD13,SD14)、所定範囲になければ噴射形態の変更が予定通りに行なわれていないとして異常判定ワーニングをする(ステップSD15)。
【0110】
すなわち、ステップSD7,SD8による噴射形態の変更が正常に行なわれていれば、排気ガスのHC濃度に予定する増減があり、それがO2センサ18によって検出されるA/Fに現れ、噴射間隔(噴射中断時間)ΔITは所定の範囲に入るはずであるが、噴射形態の変更が正常に行なわれていないときには、排気ガスのHC濃度の増減が予定通りに行なわれず、O2センサ18によって検出されるA/Fが目標A/Fに近付かないことになり、噴射間隔(噴射中断時間)ΔITの異常となって現れるものである。
【0111】
ステップSD4でモニタ条件が成立していなければ、ステップSD16に進んでタイマ値T3をクリアし、インターバル補正をすることなくステップSD9に進み、ステップSDで設定した噴射条件によって多段噴射を実行することになる、
なお、前記フロー例ではO2センサの出力に基いてインターバル補正を行なって異常診断を行なうようにしたが、噴射形態を変更したときのO2センサの出力変化に基いて異常診断を行なうようにしてもよい。
【0112】
また、噴射形態の変更は2分割噴射における噴射中断間隔の変更に限らず、2分割噴射でΔt小の噴射形態から一括噴射への変更、2分割噴射でΔt大の噴射形態から3分割噴射でΔt小の噴射形態への変更など適宜の変更を行なうことができる。
【0113】
また、前記例ではO2センサ18を用いたが、排気ガスのNOx濃度を検出するセンサを用い、排気ガスのNOx濃度が変化するような噴射形態の変更を行なうようにしてもよい。図22は、図13の排気ガス温度の場合と同様にして、噴射の分割回数及び噴射中断時間Δtが排気ガス中のNOx量に及ぼす影響を調べた結果を示すものである。同図によれば、一括噴射よりも2分割噴射及び3分割噴射の方のNOx量が少なく、また、2分割噴射及び3分割噴射では、噴射中断時間Δtが長くなるに従ってNOx量が減少している。従って、このNOx量の変化特性を利用して噴射形態変更の異常診断をすることができる。
【0114】
また、上記実施形態では、触媒としてNOxトラップ材やNOx還元触媒を用い、これらよりも下流側に配置したO2センサの出力により異常診断をするようにしたが、このようなNOx浄化用触媒よりも上流側の排気マニホールド付近に170℃以上の温度で活性化する低温活性の酸化触媒を配置するとともに、この触媒よりも直ぐ下流側にO2センサを配置し、このO2センサの出力によって異常診断をするようにしてもよい。これにより、NOxトラップ材やNOx還元触媒の影響を受けることなく、比較的低温でも異常診断をすることができる。
【0115】
また、本発明はディーゼルエンジンだけでなく、ガソリンエンジンにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの制御装置の全体構成を示す図。
【図2】 ターボ過給機の一部を、A/R小の状態(a)、又はA/R大の状態(b)でそれぞれ示す説明図。
【図3】 EGR弁及びその駆動系の構成図。
【図4】 異常診断及び補正制御のための燃料噴射形態の変更制御の前半の処理手順を示すフローチャート図。
【図5】 異常診断及び補正制御のための燃料噴射形態の変更制御の後半の処理手順を示すフローチャート図。
【図6】 異常診断及び補正制御のためのフィードバック補正値算出の処理手順を示すフローチャート図。
【図7】 異常診断の処理手順を示すフローチャート図。
【図8】 補正制御の処理手順を示すフローチャート図。
【図9】 基本燃料噴射量Qbaseを設定するマップの一例を示す図。
【図10】 ポスト噴射量Qr2を設定するマップの一例を示す図。
【図11】 ポスト噴射タイミングと排気ガス温度との関係を示すグラフ図。
【図12】 F/B補正値ΔQr2を設定するマップの一例を示す図。
【図13】 燃料噴射の分割回数及び噴射中断時間が排気ガス温度に及ぼす影響を示すグラフ図。
【図14】 EGR制御の処理手順を示すフローチャート図。
【図15】 EGR率を設定するマップの一例を示す図。
【図16】 目標新気量を設定するマップの一例を示す図。
【図17】 燃焼室の空燃比とスモーク量との関係を示すグラフ図である。
【図18】 EGRフィードバック補正値を設定するマップの一例を示す図。
【図19】 多段噴射の異常診断制御の処理手順を示すフローチャート図。
【図20】 定常運転時における噴射中断時間Δtを設定するマップの一例を示す図。
【図21】 燃料噴射の分割回数及び噴射中断時間が排気ガス中のHC量に及ぼす影響を示すグラフ図。
【図22】 燃料噴射の分割回数及び噴射中断時間が排気ガス中のNOx量に及ぼす影響を示すグラフ図。
【符号の説明】
A 排気浄化装置
1 ディーゼルエンジン
2 気筒
4 燃焼室
5 インジェクタ(燃料噴射弁)
14 吸気絞り弁(吸気量調整手段)
17 温度センサ
18 O2センサ
20 排気通路
22 触媒コンバータ(NOxトラップ材及び触媒)
23 EGR通路(排気還流通路)
24 EGR弁(排気還流量調節手段)
35 ECU(コントロールユニット)
Claims (7)
- エンジンの燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁と、前記エンジンの運転状態に応じて前記燃焼室から排出される排気ガスの組成を所定期間変更する制御手段とを備えているエンジンの制御装置の異常診断装置であって、
前記エンジンの排気通路に配設され、排気ガスの酸素成分又はNOx成分の濃度を検出する濃度センサと、
前記制御手段による排気ガス組成の変更制御が排気ガスのHC濃度の増大変化を招くものであるときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記変更制御の異常を判定する異常判定手段と、
前記排気ガス中の酸素又はNOxと前記HCとの反応を促進する反応促進手段とを備え、
前記異常判定手段が前記反応促進手段による前記反応促進後に前記濃度センサによって検出された前記濃度に基いて前記変更制御の異常を判定することを特徴とするエンジンの制御装置の異常診断装置。 - 請求項1に記載されているエンジンの制御装置の異常診断装置において、
前記反応促進手段は、前記HCの酸化反応を促進する触媒又は前記NOxの還元反応を促進する触媒であり、
前記濃度センサが前記触媒よりも下流側の排気通路に配設されていることを特徴とするエンジンの制御装置の異常診断装置。 - 請求項1に記載されているエンジンの制御装置の異常診断装置において、
前記反応促進手段は、前記異常判定手段による異常判定の際に排気ガス温度が上昇するように前記燃焼室における燃料の燃焼状態を変更するものであることを特徴とするエンジンの制御装置の異常診断装置。 - 請求項1に記載されているエンジンの制御装置の異常診断装置において、
前記燃料噴射弁は、エンジンの気筒内燃焼室に燃料を直接噴射するように設けられ、
前記制御手段は、燃料を圧縮行程上死点近傍で噴射する第1噴射の後に、燃料を排気行程が終了するまでに噴射する第2噴射を行なうように前記燃料噴射弁を作動させることによって前記排気ガス組成を変更させるものであり、
前記反応促進手段は、前記異常判定の際に排気ガス温度が上昇するように前記第2噴射時期を変更するものであることを特徴とするエンジンの制御装置の異常診断装置。 - 請求項1に記載されているエンジンの制御装置の異常診断装置において、
前記排気ガスの一部を前記濃度センサよりも上流側の排気通路からエンジン吸気系に還流させる排気還流手段と、
前記異常判定手段による判定の際の前記排気還流手段による排気還流量が所定値以上のときに排気ガスの還流を抑制する排気還流抑制手段とを備えていることを特徴とするエンジンの制御装置の異常診断装置。 - ディーゼルエンジンの気筒内燃焼室に燃料を直接供給する燃料噴射弁と、前記エンジンの運転状態に応じて燃料を圧縮行程上死点付近において燃焼室での燃料の燃焼が継続するように複数回に分割して噴射するように前記燃料噴射弁を作動させる制御手段とを備えているエンジンの制御装置の異常診断装置であって、
前記エンジンの排気通路に配設され、排気ガスの成分濃度を検出する濃度センサと、
前記制御手段による燃料噴射形態の変更が行なわれたときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記燃料噴射形態の変更制御の異常を判定する異常判定手段とを備えていることを特徴とするエンジンの制御装置の異常診断装置。 - エンジンの燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁と、前記エンジンの運転状態に応じて前記燃焼室から排出される排気ガスの組成を所定期間変更する制御手段とを備えているエンジンの制御装置において、
前記エンジンの排気通路に配設され、排気ガスの酸素成分又はNOx成分の濃度を検出する濃度センサと、
前記制御手段による排気ガス組成の変更制御が排気ガスのHC濃度の増大変化を招くものであるときに、前記濃度センサによって検出される前記成分濃度の変化に基いて前記排気ガスのHC濃度が予定する増大変化をするように前記制御手段の制御を補正する補正手段と、
前記排気ガス中の酸素又はNOxと前記HCとの反応を促進する反応促進手段とを備え、
前記補正手段が前記反応促進手段による前記反応促進後に前記濃度センサによって検出された前記濃度に基いて前記制御手段の制御を補正することを特徴とするエンジンの制御装置。
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