JP4335966B1 - 模様付き椅子の製造方法及びその製造方法で製造された模様付き椅子 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明な材質でできており、その模様が材質のどちらの面からも鮮やかに見え、両面からの機械的接触に対して模様が損傷を受けない、精緻な模様(グラフィック)が付与された模様付き椅子を提供し、パーソナライズされたデザイン椅子を、小ロット多品種であっても安価に製造することができる模様付き椅子を提供することである。
【解決手段】模様の両面を透明樹脂AとBとで挟んだ形態を有する基材によって構成された椅子の製造方法であって、該基材が、該透明樹脂Aの射出成型時に模様が印刷されたフィルムを金型内に敷き込み、該透明樹脂Aの射出成型と同時に金型内で該透明樹脂Aの表面に模様を転写する工程(1)を行い、模様が印刷されたフィルムが敷き込まれた側の金型をずらして、透明樹脂A上の模様と金型との間に空隙を作り、その空隙に該透明樹脂Bを射出成型する工程(2)を行うことによって得られたものである模様付き椅子の製造方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、模様付き椅子の製造方法に関し、更に詳しくは、フィルムに印刷された模様の両面を透明樹脂で挟んだ形態を有する基材によって構成された、模様付き椅子の製造方法、及びその製造方法で製造された模様付き椅子に関する。
プラスチック製の椅子が普及し始めたのは1990年代である。家具の世界市場を持っていたイタリアの家具業界を中心に、可塑性の高いポリプロピレンによる独特な形態と低価格で世界中に広まっていった。一度に大量受注を目指すコントラクト市場での販売が中心であることから、低価格でシンプルな形状がこのタイプの椅子のスタイルであった。
金属製の脚を使用せず、脚から背もたれの先まで一体成型する試みもなされた。プラスチックのみで構造体にするため、構造部分を強化するためにガスインジェクションを用いて脚部と骨部を中空に成型していたが、このガス成型技術には1200トン以上の大型成型機が必要であり、金型が大型で高価のわりに、ポリプロピレンの質感が良くないので製品のイメージが優先されるデザイン椅子の市場では販売が困難な場合があった。
これに対し、イタリアのKartell社が質感を優先させ、材料をポリプロピレンからポリカーボネートに代えて、無色透明な一体型椅子が登場した。しかし、ポリカーボネートの流動性と透明さのためにガスインジェクションが使えず、剛性において問題がありながらも、新しい物好きのデザイン市場では「透明な椅子」としてヒット商品となった。その後、ポリカーボネートの透明性とポリプロピレンの柔軟性を併せ持つ素材も開発され、ガスインジェクションを使用した透明な一体成型の椅子も現れた。
しかしながら、ガスインジェクション法で椅子を作ろうとした場合、上記したような樹脂の開発にも関わらず、何れの樹脂でも、そもそもプラスチックによる一体成型の椅子は、屋外仕様の安価なガーデンチェアーのイメージが強く、大型の金型投資には見合わないという問題点があった。
一方、2005年ころ、イタリアのArper社が、座の内側と外側で色の違うプラスチック椅子を二色成型によって製造しコントラクト市場において大ヒット商品となった。その後、MAXDESIGN社が、透明なポリカーボネート材と二色成型の技術を合体させた。Arper社のものが不透明ポリプロピレンの2色であるのに対して、MAXDESIGN社のものは透明プラスチックの効果と格子デザイン効果が美しかった。しかしながら、これらは、当時としては斬新ではあったものの、二色成型の金型は高価であり、安価なイメージのあるプラスチック製チェアー市場では価格が高すぎるという問題点があった。
また、2枚の透明アクリル樹脂板の間にいろいろな素材(和紙、布、植物等)を挟んだ基材を、真空成型で椅子の「腰掛部分と背もたれ部分」の形状にして、金属の脚をつけて商品化した例があるが、どれも成功しなかった。
その理由は、以下のようなものであった。すなわち、第一に真空成型の好適な原材料のアクリル樹脂板の価格が高い(射出成型の約3〜5倍)。第二に3次元形状ができ難く複雑な形状ができない。第三にリブ等が付けられないので、脚の取り付けがきれいにできない。例えば、穴をあけて腰掛部分の上面からネジ止めせざるを得ないので、腰掛部分にネジが見える。第四に和紙、布、植物等の素材しか入らない。第五に板を曲げるので、各部の肉厚がほぼ一定であるか又は最も力がかかる「腰掛部分から背もたれ部分にかけての屈曲部」がむしろ薄くなり、その屈曲部の剛性がないため、そこが折れたり剥離したりする。
近年、先に上げたイタリアのメーカーを中心としたいろいろな製品開発によって、椅子は、本体の形状から、表面のディテールやそこに付された模様に新たな製品の魅力がシフトしつつあるが、初期投資としての金型製造の費用が大きくかかり、また、大型の二色成型機が高価で稀少であるという現実の壁があり、プラスチック製の椅子は、現在でもあまり生産されていない。すなわち本来的に、プラスチック製の椅子はコストの安い製品と言う認識が普通であり、いかに視覚効果を上げても「プラスチック椅子」としての販売価格には上限があり、この部分が二色成型の大きなウイークポイントであった。すなわち、二色成型の登場で、それまで金型によって成型される「形状」が主だった椅子のセールスポイントに、視覚効果としての模様(グラフィック)の効果が加わった。しかしながら、上記したように、種々の問題点があり、また製品の価格が上がってしまうという問題もあった。
従って、製品にオリジナリティーを与える視覚的効果を安価に得るには、金型そのものから作らねばならず、またその金型設計も複雑化するものであった。しかも、同じ金型を使用する限り常に一種類のデザインに固定されてしまうという問題点もあった。すなわち、椅子において視覚的効果を安価に得るには、同じ形状のものを多く製造しなければ、金型製造の初期投資を回収することができなかった。更に、もしその椅子の形状が市場に受け入れられなかった場合、金型から再度新しいものを作り直さねばならず、コスト的にも極めてリスクがあり問題であった。
そこで、視覚効果を完全に椅子の形状を作る金型から分離し、椅子の基材に模様(グラフィック)を付与することが考えられる。金型(形状)を変えずにプリントを変えることによって、小ロット多品種が可能となり、使用環境やユーザーの詳細な要望に合わせてデザイン変更が可能となり、同じ金型からいろいろなデザインを作り出すことが可能となる。この新しい「自己表現スタイル」は、これからの新しいトレンドに定着しつつある。様々なグラフィックがプリントされることによって個人の感性に響き、自己のメッセージの伝達手段ともなる。
しかしながら、椅子のように基材が肉厚で、形状も三次元的なものに関しては、実用的な方法で、その基材に緻密な模様(グラフィック)を付与することは難しかった。すなわち、肉厚で三次元的な形状の基材には、そもそも版胴を用い紙やフィルムのような薄い基材に印刷するための、グラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法等の解像性の高い印刷法は適用できるわけがなく、辛うじて適用可能なスクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の、直接椅子に印刷する方法(以下、「直接印刷法」と略記する)は、解像性が極めて悪く、椅子の基材に緻密な模様(グラフィック)を付与することなど到底できなかった。
また、従来の直接印刷法で行った場合、解像性が悪いのみならず、椅子は両面とも摩耗するためそこに付された模様が剥げるという問題点があった。また、三次元的形状を有する椅子に、1つずつ直接印刷すると時間がかかり、また高価になるという問題点もあった。
更なる、視覚効果の向上を求め、使用環境やユーザーの詳細な要望に合わせるデザイン椅子の分野には、高解像性を有した緻密な模様(グラフィック)を、両面の摩耗に強く、安価に模様だけを変えられる(代えられる)方法が求められるが、現在の技術ではそれは達成できていなかった。
一方、プラスチックの表面に、高解像性を有した緻密な模様(グラフィック)を付与する方法として、最近日本で開発された「インモールド成型法」がある。「インモールド成型法」は、金型内に挿入されたフィルムにグラビア印刷法等により高解像で印刷された模様(グラフィック)を、成型時の熱でプラスチックの表面に転写し、グラビア印刷法等による高解像度で精緻な模様であっても、それをプラスチックの表面を加飾する技術であり、主に携帯電話等の小さなエレクトロニクスのディスプレイ周辺部品を製造するために使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3を参照)。
しかしながら、「インモールド成型法」は、精緻な模様(グラフィック)でも転写できるという特長があるが、そのような精緻な模様(グラフィック)は、椅子等の大型品には不要という固定概念があり、椅子の製造には使用されていなかった。
また、「インモールド成型法」を使用して得られた製品は、模様(グラフィック)が付された側のプラスチック面、すなわち(又は)、模様(グラフィック)が印刷されたフィルムが貼りつけられた側のプラスチック面の機械的強度が極めて弱く、椅子のような両面が擦れるような用途には使用できなかった。携帯電話等の小さな部品では、その模様(グラフィック)は上からだけ見えればよく、下からは見えなくてもよいので、模様(グラフィック)が付与された強度的に弱い方のプラスチック面は、製品本体側(下側)にすることで保護できた。しかしながら、椅子ではその基材の両面が表面に露出していて擦られるので、解像性に優れた模様は実現できるものの片面が強度的に弱い「インモールド成型法」を椅子に応用することは、この点からもなされていなかった。
上記したように、使用環境やユーザーの詳細な要望に合わせてデザイン変更が可能な製品は、小ロット多品種の新しいトレンドと共に強く要望されており、特に、椅子、足ふきマット、文房具等においては、名入れ、商標、ロゴ、需要者の独特なデザイン等を付与したいという要望はますます高くなってきているが、上記したような公知技術では、基材の両面に機械的強度を持たせつつ、精緻な模様(グラフィック)をプラスチックに付与することは不十分であり、新たな技術の出現が望まれていた。
特に、デザインの美しさで売るプラスチック製のデザインチェアーにおいては、模様や図案の緻密さ・美しさ、コントラクト仕様にも耐えられる剛性・曲げ強度、高い生産性と低コスト等が条件であり、現在までのところこれらをクリアーしたものはなかった。
特開平10−119094号公報 特開2005−288745号公報 特開2008−260245号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、精緻な模様(グラフィック)が付与された模様付き椅子の製造方法を提供することにある。また、腰掛部分及び/又は背もたれ部分が透明な材質でできた「模様付き椅子」であって、その模様が材質のどちらの面からも奥行き感等を持って鮮やかに見え、腰掛部分及び/又は背もたれ部分において、その材質の両面からの機械的接触に対して、そこに付された模様が損傷を受けない、模様付き椅子の製造方法を提供することにある。また、エンドユーザー毎の要望に合わせるパーソナライズされたデザイン椅子を、小ロット多品種であっても安価に製造することができる模様付き椅子の製造方法を提供することにある。また、その製造方法を用いた模様付き椅子を提供することにある。
本発明者は、上記の問題点や課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高解像度で緻密な模様(グラフィック)を、コストを現実的な範囲に抑えてプラスチック椅子に付すことができる技術があれば、グラフィックデザインに特徴のある椅子がエンドユーザーに認められ、それをパーソナライズされた形で直接エンドユーザーに供給できることを見出した。
そして、椅子等の大型品には適用されていなかった、解像性の高いフィルム印刷で形成された模様を転写するインモールド成型法を用いれば、高解像度で緻密な模様(グラフィック)を、金型(形状)を変えずに模様(グラフィック)のみを変えることによって、椅子のような大型品でも、安価で小ロット多品種生産が可能となり、すなわち、同じ金型からいろいろなデザインを作り出すことが可能となり、パーソナライズされたデザイン椅子が実現できることを見出した。
しかしながら、プラスチック椅子に、携帯電話等に使用されている通常のインモールド成型法で模様を付与した場合、フィルムの厚みは10〜20μmしかないため、透明樹脂側から模様を見れば綺麗であり問題ないが、フィルム側から模様を見れば、模様に奥行き感が得られず、単なる直接印刷法と同じで安っぽいといった問題点が判明した。
更に、プラスチック椅子にインモールド成型法で模様を付与した場合、模様が印刷されたフィルムは薄くすぐ摩耗してしまい、使用者が座るたびに擦れて模様が持たないことが判明した(1週間程度)。また、椅子の基材の下面(裏側)に模様を付与することは、脚取り付け用のリブが必要となるためできないのと、特に腰掛部分の下面(裏面)から続く背もたれ部分の後ろ側は、人が触って擦れたり、椅子のスタッキング時に椅子同士が当たって擦れたりして、やはり同様に模様が持たないことも判明した。
そこで、本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記問題点と課題を解決し、特定の工法を2つ相乗的に組み合わせることによって、椅子に付された模様がどちらの面からも奥行き感等を持って鮮やかに見え、どちらの面からの機械的衝撃に対しても、その模様が損傷を受けない模様付き椅子ができることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、模様の両面を透明樹脂Aと透明樹脂Bとで挟んだ形態を有する基材によって、少なくとも腰掛部分及び/又は背もたれ部分が構成された模様付き椅子の製造方法であって、該基材が、該透明樹脂Aの射出成型時に模様が印刷されたフィルムを金型内に敷き込み、該透明樹脂Aの射出成型と同時に金型内で該透明樹脂Aの表面に該フィルムに印刷された模様を転写する工程(1)を行い、次いで、模様が印刷されたフィルムが敷き込まれた側の金型を後ろにずらして、透明樹脂A上の模様と金型との間に空隙を作り、その空隙に該透明樹脂Bを射出成型する工程(2)を行うことによって得られたものであることを特徴とする模様付き椅子の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする模様付き椅子を提供するものである。
本発明によれば、前記問題点を解消し、上記課題を解決し、透明樹脂層の中央部に模様を配置し、基材のどちらの面から見ても透明な樹脂層を通して、奥行き感があり鮮やかな模様を見ることができ、要すればどちらの面から見ても光沢があり、両面を「おもて面」として認識できる「模様付き椅子」を提供できる。また、模様が2つの透明樹脂層の中央部(層)に配置されており、直接印刷法等によって基材の表面に配置されている訳ではないので、基材の両面からの機械的接触に対して、模様が損傷を受けない「模様付き椅子」を提供することができる。また、通常、椅子のような大型家具には施されていないような、写真や文字、蒸着金属による模様、3Dホログラフィー等の精緻な模様(グラフィック)が付与された「模様付き椅子」を提供することができる。更に、企業の商標やロゴ等をエンドユーザー毎に対応して付すことによって多品種小ロット生産になったとしても、コスト的に実現可能となる。
また、椅子のデザイン要素を、椅子本体の形状や色ではなく、模様(グラフィック)とすることで、同一の金型から異なったデザインの模様付き椅子を製造することができる。また、制作にコストがかかる金型を代えずに、模様が印刷されたフィルムを代えるので、多品種小ロット生産であっても、椅子1脚当たりのコストダウンが可能である。その結果、同一の金型から異なったデザインを小ロットで生産できる特長を生かして、需要者の目的や好みに細かく対応しパーソナライズされたデザインの椅子を提供できる。また、エンドユーザーとメーカーが直接コンタクトして、「オーダーメイドデザインのプラスチック製デザインチェアー」という新しい産業分野を作ることができる。
椅子の流通は、通常、メーカー、問屋、小売店、エンドユーザーという流通経路によって供給されている。これに対し、デザインをパーソナライズできる椅子は、最初からエンドユーザーの要求を反映したデザインで生産することができるため、メーカーが直接エンドユーザーと結びつくことができ、更なるコストダウンが可能になり、また、エンドユーザーにマッチングした椅子を提供できるようになる。また、季節毎に新しいデザインを発表する、ファッション性の高いインテリア製品としての椅子の提供が可能になる。椅子の販売が直販になることで、流通システムが画期的に簡略化され、大幅な流通コストの削減ができ、流通システムを根本的に変えることができる。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明の製造方法の製造対象である「模様付き椅子」は、その椅子の少なくとも腰掛部分及び/又は背もたれ部分が、「模様の両面を透明樹脂Aと透明樹脂Bとで挟んだ形態を有する基材」(以下、括弧内を「模様入り基材」と略記することがある)によって構成されている。「模様付き椅子」の少なくとも腰掛部分及び/又は背もたれ部分が、模様入り基材で構成されていることが必須であり、椅子の脚の部分は模様入り基材で構成されていてもいなくてもよい。本発明の製造方法の後記する工程(1)及び工程(2)が適用し易い点で、椅子の脚の部分は模様入り基材で構成しない方が好ましい。
脚の部分は、模様が挟まれていない透明樹脂A及び/又は透明樹脂Bのみで構成してもよい。すなわち、脚の部分は、模様が印刷されたフィルムを使用せず、透明樹脂A及び/又は透明樹脂Bを射出成型して、脚まで一体成型してもよい。また、腰掛部分及び/又は背もたれ部分を製造した後に、別途製造された脚を固定してもよい。この場合、別途製造された脚の材質は特に限定されない。
「模様付き椅子」の少なくとも腰掛部分及び/又は背もたれ部分が、上記した基材で構成されていることが必須であり、腰掛部分又は背もたれ部分のどちらか一方のみが上記した基材で構成されていてもよい。また、腰掛部分と背もたれ部分はなだらかにつながって一体となっていてもよいし、別々に離れていて両方とも本発明の製造方法で製造されてもよい。また、腰掛部分のみしかない椅子であってもよい。図3に示したように、腰掛部分と背もたれ部分がなだらかにつながって一体となっているものが、一体となっていることにより1対の射出成型(後述の工程(1)と工程(2))で完了し、なだらかにつながっていることにより腰掛部分と背もたれ部分に、良好に透明樹脂が行き渡り射出成型がし易くなるために好ましい。また、デザイナーによっては優れたデザインの椅子が製造し易い場合がある。
図2に示したように、腰掛部分及び/又は背もたれ部分を構成する基材は、模様の両面を透明樹脂Aと透明樹脂Bとで挟んだ形態を有する。模様を2つの透明樹脂Bで挟むことによって、基材のどちらの面から見ても、すなわち椅子の上下から見ても、前後から見ても、透明な樹脂層を通して奥行き感があり鮮やかな模様を見ることができる。また、本発明の製造方法によれば、透明樹脂の表面を両面とも光沢面(模様が印刷されたフィルム面又は模様面ではなく樹脂面)にすることができるので、どの面を見ても光沢があり、両面を「おもて面」として認識できる。
また、模様は、透明樹脂Aと透明樹脂Bとで挟まれており、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の直接印刷法によって基材の表面に存在している訳ではないので、基材の両面からの機械的接触に対して、模様が損傷を受けることがない。すなわち、本発明の「模様付き椅子」は、上記模様が、模様付き椅子を構成する基材の何れの側の表面にも実質的に露出しておらず(又は数十μmの薄いフィルムを介して露出しておらず)、通常の椅子の使用では擦り減らないようになっている。
本発明の製造方法は、上記形態の基材が以下の工程(1)と工程(2)との協働により製造されることを特徴としている。工程(1)の次に工程(2)が行われる。
工程(1):透明樹脂Aの射出成型時に模様が印刷されたフィルムを金型内に敷き込み、該透明樹脂Aの射出成型と同時に金型内で該透明樹脂Aの表面に、該フィルムに印刷された模様を転写する工程
工程(2):模様が印刷されたフィルムが敷き込まれた側の金型を後ろにずらして、透明樹脂A上の模様と金型との間に空隙を作り、その空隙に該透明樹脂Bを射出成型する工程
図1(A)及び図1(B)に工程(1)の概略を示す。フィルムロール13には、模様(グラフィック)11が印刷されたフィルム12が巻かれている。1回の透明樹脂Aの射出成型時に、1回分の「模様11が印刷されたフィルム12」が、金型14aの上に敷き込まれる(図1(A))。なお、模様のフィルムへの印刷方法は特に限定はなく、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法等の解像性の高い通常の印刷方法が何れも好適に用いられ得る。
解像性の高い印刷方法が可能であると言うことは、今までのような、直接椅子に印刷する直接印刷法による低解像度の模様や色彩以外にも、写真、文字、絵、企業の商標やロゴ、ホログラフィー等、今まで椅子のデザインが内包することのできなかった、芸術的価値観、文学的価値観、商業的メッセージ、ジャーナリズム、視覚イリュージョン等を伝えることができるようになるため、商業空間における椅子の存在感や商品としての椅子の持つ価値観を大きく変えることができる。
その後、金型を締めて、透明樹脂Aを射出ゲート21から射出成型する(図1(B))。透明樹脂が固化すると、「模様11が印刷されたフィルム12」が透明樹脂Aの表面に転写される。すなわち、透明樹脂Aの射出成型と同時に、金型14aと金型14b内で、該透明樹脂Aの表面に、「模様11が印刷されたフィルム12」を転写する。
このとき、模様11が透明樹脂Aの表面に転写された後に、フィルム12を除いて、模様11のみが透明樹脂Aの表面に残存するようにしてもよい。すなわち、透明樹脂Aの射出成型と同時に、金型14内で該透明樹脂Aの表面に、少なくとも模様11を転写する。
模様11が印刷されたフィルム12が透明樹脂Aと透明樹脂Bとの間に残存する形態の場合、図6に示したように、模様が印刷されたフィルム12において、模様11のない部分に穴23をあけ、透明樹脂Aと透明樹脂Bが密着する部分を作ることが好ましい。その穴の存在により、完成された模様付き椅子に力が加わった時の変形で、基材がフィルム12の部分で剥離することを防止することができ、製造された椅子の強度を上げることができる。すなわち、本発明の模様付き椅子の製造方法において、射出成型時に金型14内に敷き込まれる「模様が印刷されたフィルム12」に穴があけられており、該穴を通して透明樹脂Aと透明樹脂Bが連結し密着するようになっていることが、基材の剥離防止等のために好ましい。
透明樹脂Aは、実質的に模様が見える程度の透明性を有すればよく、完全に透明(例えば、可視部のある波長で透過率50%以上)である必要はないが、本発明の特長を生かす点で、少なくとも可視部のある波長での透過率は50%以上であることが好ましい。また、無色透明である必要はなく、有色透明であってもよい。射出成型された透明樹脂Aの厚さは特に限定はないが、0.5mm〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましく、2〜5mmが特に好ましい。
透明樹脂Aの化学素材は実質的に透明なものであれば特に限定はないが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、それらの共重合体等が挙げられる。中でも、ポリエステル又はポリカーボネートが、その透明性、機械的強度、射出成型の容易さ等の点で特に好ましい。
射出成型の際の透明樹脂A及び/又は透明樹脂Bの温度は、その透明樹脂の種類に依存し特に限定はないが、160〜350℃が好ましく、180〜310℃がより好ましく、200〜270℃が特に好ましい。温度が低過ぎると透明樹脂が軟化しない場合があり、温度が高過ぎると、模様が印刷されたフィルム12や模様11を形作るインクが、融解・溶解により変形する場合がある。また、射出圧も特に限定はなく、通常の射出圧(10〜3000Kgf/c)が用いられる。
工程(1)は、「インモールド成型法」として知られている方法が好適に使用できる。この方法は、精緻な模様(グラフィック)でも転写できるので、携帯電話等の小型電気製品に使用されているが、その方法が上記工程(1)で使用できる。それによって、精緻な模様(グラフィック)を有する椅子が製造できるようになる。椅子のような3次元の構造体に直接印刷法で印刷をする場合は低解像度にならざるを得ないが、インモールド成型法におけるフィルムのように薄い媒体には、グラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法等の高解像度の印刷法が適用できる。従って、インモールド成型法を用いれば、そのように高解像度で印刷された模様を、3次元の構造体を形成する樹脂にも付与できる。インモールド成型法による模様の付与に関しては、大型製品に限れば、椅子が特にそれとマッチングしており、椅子にインモールド成型法により模様が付与されたとき、前記したように特に顕著な効果を発揮する。
工程(1)終了後のままでは、基材の片面にフィルムに印刷されている模様(又はフィルムに印刷されていた模様)が露出している。そのため、携帯電話等にはそのまま使用できるが椅子には使用できない。椅子は、腰掛部分の上面は腰掛けた時に尻が当たり、背もたれ部分の前面は背中が当たり、また、腰掛部分の下面や背もたれ部分の後面も椅子の移動時等に他のものに接触する可能性があるからである。すなわち、基材の両面が機械的衝撃や摩耗に曝された状態で使用されるからである。また、模様の上に透明樹脂がのっていないと、模様に鮮やかさが出ない場合がある。
本発明では、その欠点を補うため、以下の工程(2)を行う。工程(2)では、まず、図1(C)に示したように、「模様11が印刷されたフィルム12」が敷き込まれた側の金型14aを後ろにずらして、透明樹脂Aの上に転写された模様11と金型14aとの間に空隙15を作り、その空隙15内に射出ゲート21から透明樹脂Bを射出成型する。
工程(2)は、工程(1)で得られた「片面に模様11が付与された透明樹脂A」を金型14aと金型14b内に留めたまま行う。すなわち、工程(1)の後に、金型14aや金型14bから一旦取り出すことはしない。工程(2)では、図1(C)に示したように、「片面に模様11が付与された透明樹脂A」は、金型14bに実質的に密着したままであることが好ましい。工程(2)で用いられる金型14aも、工程(1)で用いた金型14aと同じものが用いられることが好ましい。すなわち、工程(1)と工程(2)は、同一の射出成型装置、同一の金型14と金型14bを用いて行うことが好ましい。
工程(2)で射出される透明樹脂Bは、実質的に模様が見える程度の透明性を有すればよく、完全に透明(例えば、可視部のある波長で透過率50%以上)である必要はないが、本発明の特長を生かす点で、少なくとも可視部のある波長での透過率は50%以上であることが好ましい。また、無色透明である必要はなく、有色透明であってもよい。射出成型された透明樹脂Bの厚さは特に限定はないが、0.5mm〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましく、2〜5mmが特に好ましい。
透明樹脂Bの化学素材は、上記した透明樹脂Aの化学素材と同様のものが使用し得る。好ましい化学素材も同様である。1つの椅子の基材の化学素材として、透明樹脂Aの化学素材と透明樹脂Bの化学素材は異なるものであってもよいが、同じものであることが、製造時に膨張率と収縮率が同じである点、使用中に歪みが出ない点、外観が奇麗である点等から好ましい。
上記工程(2)の装置は特に限定はないが、コアバック膨張成型法用の装置を用いて行われることが、装置製造の初期コストを抑えるために好ましい。当然、コアバック膨張成型法用の装置は、本発明の製造方法のために多少の変更は与えてもよく、変更した装置を用いた製造方法も本発明に含まれる。たまたま、工程(2)はコアバック膨張成型法の操作手段と酷似しているので、コアバック膨張成型法の技術のうち少なくとも金型移動する(後ろにずらす)技術が応用できる。従って、装置に変更を加えたとしても、少なくとも金型移動する(後ろにずらす)装置部分は存在したままにする必要がある。
「コアバック膨張成型法」とは、樹脂中で化学反応をして発泡する化合物、樹脂中に溶解されて減圧と共に気体になる超臨界液体等を成型しようとする樹脂中に溶解させ、その発泡性の樹脂を金型に充填した後、金型の容積を拡大して発泡をさせつつ樹脂を膨張させて成型する方法である。低密度でありながら物性の良い成型品が得られる成型方法であるといわれている。この金型の容積の拡大は、一般に一方の金型の移動により行うが、その手段、装置等が本発明に適用でき、従って、上記理由で、上記工程(2)が、コアバック膨張成型法用の装置を、必要とあれば変形して用いて行われることが好ましい。
図1を用いて説明すると、図1(B)で透明樹脂Aを射出成型した後、金型14aを図1(C)では上側に移動する。そして、模様が付された透明樹脂Aの上に空隙15を設ける。その後、その空隙に金型14aに設けられた射出ゲート21から透明樹脂Bを射出成型する。また、金型14aを上側に移動し、できるはずの空隙部分に、同時に透明樹脂Bを射出成型することも好ましい。装置を流用するからといって、当然、本発明において、透明樹脂Bは発泡性である必要はなく、発泡性でない方が透明性保持の点で好ましい。
インモールド成型法の模様が極めて美しく見える理由は、透明樹脂の厚みを通してその模様を見るからである。つまり、透明樹脂の裏側に模様が転写されている状況の時に、その模様は、奥行き感、立体感、高級感等を持って最も美しく見える。しかし、椅子は、携帯電話の筐体部品等のように、片側からしか見られるものではなく、腰掛部分の上下から、背もたれ部分の前後から、すなわち両側から見られる。つまり、表裏のない製品である。従って、工程(1)で透明樹脂Aを、工程(2)で透明樹脂Bを射出成型して、透明樹脂Aと透明樹脂Bとの間に模様を挟むことによって、椅子の前後上下どこから見ても、奥行き感、立体感、高級感等を持った模様を見せることができるようになった。
図1では、透明樹脂A(第1層)を射出する射出ゲート21と透明樹脂B(第2層)を射出する射出ゲート21が別々になっているが、図5に示したように、第1層目と同一の射出ゲート21で第2層目も成型できるようになっていてもよく、その方が一般の成型機が使えるので好ましい。また、図1では、工程(1)と工程(2)の射出ゲート21が平面のそれぞれ別の面側にあるが、図5に示したように側面(厚み部分)にあってもよく、その方が射出ゲート21部分に起因するざらざらや凸部22が、腰掛部分や背もたれ部分の面側に残存しないために好ましい。面側に存在すると、尻、腰、背等が、射出ゲート21部分に起因する凸部22にあたったり、その裏側であっても目立つので見苦しかったりする場合がある。すなわち、工程(1)で透明樹脂Aを射出する射出ゲート21と工程(2)で透明樹脂Bを射出する射出ゲート21が共通して1つだけあり、上記基材の側面に位置していることが好ましい。
上記した通り、射出ゲート21は、側面(厚み部分)にあった方が好ましいが、図5に示したように、膝の前の側面(厚み部分)にあることが、そこが最も目立たないので特に好ましい。すなわち、工程(1)で透明樹脂Aを射出する射出ゲート21と工程(2)で透明樹脂Bを射出する射出ゲート21が共通して1つだけあり、腰掛部分の前側の基材の側面に位置していることが特に好ましい。図5では、脚取り付け用の出っ張りがある図の左下が模様付き椅子の下方向で、図の右下が模様付き椅子の前方向である。図5では、椅子の前方向すなわち膝の前の厚み部分に射出ゲート21に起因する凸部22があり、図5(4)でその射出ゲート21に起因する凸部22を製品の椅子から切り取っている。
本発明は、形状毎に製造コストがかかり高価な金型を変えずに、模様が印刷されたフィルムを変えることで、椅子1脚当たりのコストダウンが可能となり、初めて多品種小ロット生産により需要者にパーソナライズされたデザインの椅子を提供できることを目的としている。従って、既存のコアバック膨張成型法用の装置が使用できたり、社内でコアバック膨張成型法も行いつつ装置を本発明の方法と併用できたりすることによって、初めてコスト的に上記目的を達成できる場合もあり、その点でも、上記工程(2)において、コアバック膨張成型法用の装置を要すれば改造して用いることが好ましい。
本発明における「模様」は、本発明の「模様付き椅子」の需要者がデザインしたものであるか、又は、上記模様付き椅子の供給者が個々の需要者向けにデザインしたものの中から該需要者が選択したものであることが、本発明の前記効果を奏するために好ましい。
本発明の「模様付き椅子」は、少なくとも腰掛部分及び/又は背もたれ部分を構成する基材が透明樹脂Aと透明樹脂Bとからできているので、その模様が、「模様付き椅子」を構成する基材の上下何れの側からでも見ることが可能であるため綺麗であり優れたデザインの創作が可能となる。
図3に、本発明の前記効果を奏する本発明の模様付き椅子の例を示した。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
<工程(1)>
金型内に模様が印刷されたロールフィルムを、テストとして模様が金型内の比較的平坦な部分に部分的に転写することを目的に装填し(図4(1))、無色透明のポリカーボネート樹脂を射出成型して第1層目を形成した(図4(2))。第1層の厚さは、中心部の腰部分は3mm、周辺部は1.8mmであった。
<工程(2)>
模様が転写された側の金型(コア)を後ろ(図4では左)にスライドさせて第2層目のための空隙を作った。この空隙に、同様の無色透明のポリカーボネート樹脂を射出成型して第2層目を成型した(図4(3))。第2層の厚さは、中心部の腰部分は3mm、周辺部は1.8mmであった。その後、製品を取り出し、周囲からはみ出したフィルムを除去した(図4(4))。
模様が第1層と第2層に挟まれ、前記した本発明の課題を解決し効果を奏するほぼ良好なものができた。得られた椅子の基材の厚さは、第1層と第2層の合計で、腰部(中心部)は6mm、周辺部は3.6mmであった。
実施例1は、第2層目の射出成型には、コアバック膨張成型法用の装置を変形して用いたが、かかる装置を用いなくても同様の結果が得られることは明らかである。
実施例2
<工程(1)>
腰掛部分と背もたれ部分に対応した金型14aと金型14bの間に模様が印刷されたフィルム12を装填し(図5(1))、透明樹脂Aとして無色透明のポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、Eastman−Durastar)を射出ゲート21から射出して、片側に第1層19を射出成型した(図5(2))。
<工程(2)>
転写された模様14aを後ろ(図5(3)では右)にずらして、第2層20の透明樹脂Bを射出成型するための空隙15を作った。この空隙に、工程(1)で透明樹脂Aを射出したのと同一の射出ゲート21より、透明樹脂Bとして、透明樹脂Aと同じ無色透明のポリエステル系樹脂を射出し、第2層20を射出成型した(図5(3))。
その後、製品である模様付き椅子を取り出し、周囲からはみ出した余分のフィルム及び射出ゲート21に起因する凸部22を除去した(図5(4))。得られた模様付き椅子の基材の厚さは、第1層と第2層の合計で、椅子全体の中心部は平均6mm、椅子全体の周辺部は平均3.5mmであった。
模様が第1層と第2層に挟まれ、前記した本発明の課題を解決し、前記した本発明の効果を奏する良好な模様付き椅子ができた。射出ゲート21が1箇所であり、しかも膝の前の基材の側面で、第1層と第2層の間(基材の厚み方向の真ん中)であるため、射出ゲート21に起因する凸部22を除去した形跡は比較的目立たなかった。
図6に示したように、模様が印刷されたフィルム12の中に穴23をあけておくと、その穴23を通して、透明樹脂Aと透明樹脂Bが連結して密着し(図6(3)、(4)参照)、完成された模様付き椅子に力が加わっても、基材がフィルム12の部分で剥離することを防止することができる。すなわち、基材の強度を上げることができる。
比較例1
実施例1において、第2層目を設けず、第1層の厚さを、腰部(中心部)は6mm、周辺部は1.8mmとして模様付き椅子を製造した。すなわち、実施例1とトータルの厚さは同じにした。
第2層のない側の模様が簡単に剥げてしまって模様が崩れ、デザイン性のある椅子としては極めて劣ったものになってしまった。
従来、椅子のデザインの要素は、「形状(金型)と色彩(マテリアル)」のみであったところ、本発明の製造方法を用いて製造された模様付き椅子の開発によって、椅子のデザインの要素は形状や色彩ではなく、内部に印刷された模様に代わる。これは、例えば、Tシャツと同じような存在になるということで、誰もTシャツのデザイン的価値を形や縫製に求めたりはせず、Tシャツに印刷された図柄(模様や写真)に求める。
本発明の製造方法を用いて製造された模様付き椅子のこの大きな特徴は、特に商業空間やファッション性の高いインテリア市場に、今までにはなかった市場を開拓することができる。例えば、ファーストフード店、ショールーム、レストラン等の商業施設で使用される椅子自体が企業宣伝としてのメッセージ媒体となったり、椅子が商業空間の内装と一体化されて装飾の一部として存在するようになったりする。
すなわち、本発明の製造方法を用いて製造された模様付き椅子は、パーソナライズされたデザインの椅子を提供できるため、独特なデザインの椅子を要望する需要者に広く利用されるものであり、本発明の模様付き椅子の製造方法は、椅子のデザイナーにも広く利用されるものである。
本発明の模様付き椅子の製造方法における工程(1)と工程(2)の概略を示す断面図である。(A):工程(1)において模様が印刷されたフィルムが、金型の上に敷き込まれ、透明樹脂Aが射出成型される前の状態を示す図である。 (B):型締めして透明樹脂Aを射出成型した状態を示す図である。 (C):一方の金型を後ろにずらして金型と模様付き透明樹脂Aとの間に空隙が設けられた状態を示す図である。 本発明の製造方法によって製造された模様付き椅子の一部の概略断面図である。 本発明の製造方法によって製造された模様付き椅子の例を示す図である。 実施例1の製造工程の一例を示す断面図である。 (1):模様が印刷されたフィルムを2つの金型の間に挿入したときの断面図である。 (2):工程(1)で透明樹脂Aを射出成型した後の断面図である。 (3):工程(2)で透明樹脂Bを射出成型した後の断面図である。 (4)余分なフィルムを切り落とした後の断面図である。 実施例2の射出ゲートが1つであり、透明樹脂Aと透明樹脂Bとを同一射出ゲートから射出する場合の製造工程の一例を示す断面図である。 (1):模様が印刷されたフィルムを2つの金型の間に挿入したときの断面図である。 (2):工程(1)で透明樹脂Aを射出成型した後の断面図である。 (3):工程(2)で透明樹脂Bを射出成型した後の断面図である。 (4)余分なフィルムと射出ゲートに起因する凸部を切り落とした後の断面図である。 模様が印刷されたフィルムに穴が設けられており、その穴を通して透明樹脂Aと透明樹脂Bが連結し密着する場合の製造工程の一例を示す断面図である。 (1):模様が印刷されたフィルムを2つの金型の間に挿入したときの断面図である。 (2):工程(1)で透明樹脂Aを射出成型した後の断面図である。 (3):工程(2)で透明樹脂Bを射出成型した後の断面図である。 (4)余分なフィルムと射出ゲートに起因する凸部を切り落とした後の断面図である。
符号の説明
11 模様
12 模様が印刷されたフィルム
13 フィルムロール
14a (工程(2)で後ろにずらす方の)金型
14b (工程(1)で透明樹脂A側の)金型
15 空隙
16 フィルム押さえプレート
17 透明樹脂A
18 透明樹脂B
19 第1層
20 第2層
21 射出ゲート
22 射出ゲートに起因する凸部
23 穴

Claims (7)

  1. 模様の両面を透明樹脂Aと透明樹脂Bとで挟んだ形態を有する基材によって、少なくとも腰掛部分及び/又は背もたれ部分が構成された模様付き椅子の製造方法であって、該基材、該透明樹脂Aの射出成型時に模様が印刷されたフィルムを金型内に敷き込み、該透明樹脂Aの射出成型と同時に金型内で該透明樹脂Aの表面に該フィルムに印刷された模様を転写する工程(1)を行い、次いで、模様が印刷されたフィルムが敷き込まれた側の金型を後ろにずらして、透明樹脂A上の模様と金型との間に空隙を作り、その空隙に該透明樹脂Bを射出成型する工程(2)を行うことによって得ること特徴とする模様付き椅子の製造方法。
  2. 上記模様が、上記模様付き椅子の需要者がデザインしたものであるか、又は、上記模様付き椅子の供給者が個々の需要者向けにデザインしたものの中から該需要者が選択したものである請求項1記載の模様付き椅子の製造方法。
  3. 工程(1)で透明樹脂Aを射出する射出ゲートと工程(2)で透明樹脂Bを射出する射出ゲートが共通して1つだけあり、上記基材の側面に位置している請求項1または請求項2記載の模様付き椅子の製造方法。
  4. 上記工程(2)が、コアバック膨張成型法用の装置を用いて行われる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の模様付き椅子の製造方法。
  5. 射出成型時に金型内に敷き込まれる上記模様が印刷されたフィルムに穴があけられており、該穴を通して透明樹脂Aと透明樹脂Bが連結し密着するようになっている請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の模様付き椅子の製造方法。
  6. 上記模様が、上記模様付き椅子を構成する基材の上下何れの側からでも見ることが可能な請求項1ないし請求項5の何れかの請求項記載の模様付き椅子の製造方法。
  7. 上記模様が、模様付き椅子を構成する基材の何れの側の表面にも実質的に露出しておらず、通常の椅子の使用では擦り減らないようになっている請求項1ないし請求項6の何れかの請求項記載の模様付き椅子の製造方法。
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