以下、本発明の実施の形態によるブレーキ装置およびマスタシリンダ装置を、車両のBBWシステム(ブレーキバイワイヤ方式のブレーキシステム)に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1〜図12に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態によるマスタシリンダ装置で、該マスタシリンダ装置1は、図1に示す如く後述のシリンダ2、第1,第2のピストン4,5、第1,第2の液圧室8A,8B、チルトバルブ19、ストロークシュミレータ21、迂回通路30およびスプール弁33等により構成されている。
2はマスタシリンダ装置1の主要部を構成するシリンダで、該シリンダ2は、例えば有底円筒状に形成され、所謂タンデム型マスタシリンダを構成している。そして、シリンダ2内には、後述のピストン4,5によって第1,第2の液圧室8A,8Bが画成されている。
3は内部にブレーキ液が収容された作動液タンクとしてのリザーバで、該リザーバ3は、図1に示す如く管路3A,3Bを介してシリンダ2内に接続され、シリンダ2内に向けてブレーキ液を補給するものである。また、リザーバ3には、後述の液圧ポンプ14A,14Bに向けてブレーキ液を供給する他の管路3C,3Dが設けられている。
4はシリンダ2内に摺動可能に設けられたピストンとしてのプライマリピストン(以下、第1のピストン4という)、5は第1のピストン4よりもシリンダ2の奥所側に位置してシリンダ2内に摺動可能に設けられた他のピストンとしてのセカンダリピストン(以下、第2のピストン5という)を示している。
そして、第1,第2のピストン4,5は、図1に示すようにシリンダ2の軸方向に互いに離間して配置され、両者の間には後述の戻しばね9Aが配設されている。また、第1のピストン4には、後述のブレーキペダル7との間に設けられるプッシュロッド6が接続されている。
7は車両のブレーキ操作時に運転者が踏込み操作するブレーキペダルで、該ブレーキペダル7は、第1のピストン4をプッシュロッド6を介してシリンダ2内へと軸方向(図1中の矢示A方向)に押込むように踏込み操作される。そして、ブレーキペダル7には、後述のブレーキ反力(ペダル反力)が第1のピストン4、プッシュロッド6を通じて伝達されるものである。
8A,8Bはシリンダ2内にピストン4,5により画成された第1,第2の液圧室で、該液圧室8A,8B内には、シリンダ2内でピストン4,5が軸方向に変位するに応じて液圧が発生するものである。そして、これらの液圧室8A,8Bには、後述するブレーキ配管11A,11Bの一端側が接続されている。
9Aはシリンダ2内に位置して第1のピストン4と第2のピストン5との間に配設された第1の戻しばね、9Bは第2のピストン5とシリンダ2の底部との間に配設された第2の戻しばねを示している。そして、これらの戻しばね9A,9Bは、ピストン4,5を図1中の矢示B方向に常時付勢し、ブレーキペダル7の踏込み操作を解除したときにピストン4,5を図1に示す初期位置に戻すものである。
10A,10Bは図1に示す如く車両の車輪側に設けられる第1,第2のホイールシリンダを示し、該ホイールシリンダ10A,10Bは、例えばドラムブレーキまたはディスクブレーキ等のシリンダ部を構成している。そして、ホイールシリンダ10A,10Bは、図1に示す第1,第2のブレーキ配管11A,11Bを介してブレーキ液圧が給排されることにより、車両に制動力を付与するものである。
12A,12Bはブレーキ配管11A,11Bの途中に設けられた第1,第2のフェイルセーフ弁で、該フェイルセーフ弁12A,12Bは、後述するコントロールユニット40からの制御信号により開弁位置(a)から閉弁位置(b)に切換えられる。即ち、フェイルセーフ弁12A,12Bは、システムの正常動作時には開弁位置(a)から閉弁位置(b)に切換えられ、システムの失陥時等には開弁位置(a)に復帰するものである。
13A,13Bはホイールシリンダ10A,10Bに液圧を供給するための液圧源を構成する第1,第2の液圧ユニットで、該液圧ユニット13A,13Bのうち第1の液圧ユニット13Aは、後述の液圧配管28、迂回通路30、スプール弁33等を介してホイールシリンダ10Aに接続されるものである。
そして、第1の液圧ユニット13Aは、図1に示す如くリザーバ3に管路3Cを介して接続された液圧ポンプ14Aと、該液圧ポンプ14Aの吐出側にチェック弁15Aを介して接続され常開の電磁弁からなるブレーキ液圧の供給弁16Aと、該供給弁16Aと管路3Cとの間に設けられた常閉の電磁弁からなるブレーキ液圧の排出弁17A等とにより構成されるものである。
また、第2の液圧ユニット13Bは、リザーバ3に管路3Dを介して接続された液圧ポンプ14Bと、該液圧ポンプ14Bの吐出側にチェック弁15Bを介して接続された常開の電磁弁からなるブレーキ液圧の供給弁16Bと、該供給弁16Bと管路3Dとの間に設けられた常閉の電磁弁からなる排出弁17B等とにより構成されている。
そして、第2の液圧ユニット13Bは、供給弁16Bと排出弁17Bとの間がホイールシリンダ10Bとフェイルセーフ弁12Bとの間に位置するブレーキ配管11Bの途中部位に接続され、ホイールシリンダ10Bに対して後述の如くブレーキ液圧を供給するものである。
18はシリンダ2の長さ方向中間部に設けられた通液路で、該通液路18は、シリンダ2内の液圧室8Aと後述のストロークシュミレータ21との間に配設され、シリンダ2内の液圧室8Aから後述のチルトバルブ19を介してストロークシュミレータ21に液圧を供給(流通)させるものである。
19は通液路18の途中にして設けられた開閉弁としてのチルトバルブで、該チルトバルブ19は、図1に例示するように第2のピストン5が初期位置にあるときに、該ピストン5によって開弁位置に保持され、シリンダ2内の液圧室8Aを通液路18を介して後述のストロークシュミレータ21に連通させる。
そして、第2のピストン5が戻しばね9Bに抗して図1中の矢示A方向に押動されると、チルトバルブ19は、これに追従して開弁位置から閉弁位置に切換わり、通液路18を閉塞することによってシリンダ2内の液圧室8Aをストロークシュミレータ21に対し遮断するものである。
20はシリンダ2に対してストロークシュミレータ21を取付けるための取付部材で、該取付部材20には、図2に示すように後述の筒形ケース22が液密に衝合した状態で取付けられるものである。また、取付部材20には、筒形ケース22との衝合面側に段付穴20Aが形成され、この段付穴20Aは通液路18の一部を構成している。
21はブレーキ操作時にブレーキ(ペダル)反力を発生させるストロークシュミレータで、該ストロークシュミレータ21は、シリンダ2に通液路18の位置で図2に示す如く取付部材20を介して外付けされたシュミレータケースとしての筒形ケース22と、該筒形ケース22の先端側となる端部を閉塞した蓋体23とを有している。
そして、ストロークシュミレータ21は、筒形ケース22内に摺動可能に挿嵌され筒形ケース22内を蓄圧室24とばね室25とに画成した可動隔壁としてのシュミレータピストン26(以下、有蓋ピストン26という)と、ばね室25内に配設され該有蓋ピストン26を蓄圧室24側に向けて常時付勢する弾性体としてのスプリング27等とを含んで構成されている。
また、ストロークシュミレータ21の筒形ケース22には、後述するスプール弁33の一部を構成するスプール摺動穴22Aが設けられ、このスプール摺動穴22Aは、取付部材20の段付穴20Aを蓄圧室24に常時連通させる軸方向通路として形成されている。そして、ストロークシュミレータ21は、ブレーキ操作によって第1の液圧室8A内に後述の如く液圧が発生すると、この液圧が通液路18、チルトバルブ19等を介して後述の軸孔36側から供給される。
このときストロークシュミレータ21は、液圧の大きさに応じてスプリング27が撓み変形されることにより有蓋ピストン26を摺動変位させ、蓄圧室24内に液圧を蓄圧する。そして、蓄圧室24内の圧力は、ブレーキ反力となってシリンダ2内の液圧室8Aから第1のピストン4を介してブレーキペダル7に伝達され、ペダル反力を生じさせるものである。
28は第1の液圧ユニット13Aに接続して設けられた液圧配管で、該液圧配管28は、図1に示すように一端側が供給弁16Bと排出弁17Bとの間に接続され、他端側は後述する径方向孔29に図2に示す如く接続されている。
29はストロークシュミレータ21の筒形ケース22に設けられた通液穴としての径方向孔で、該径方向孔29は、図2に示すように筒形ケース22に形成され、スプール摺動穴22Aの径方向に伸長している。そして、径方向孔29は、前記液圧配管28を介して液圧ユニット13Aに常時連通し、後述の迂回通路30にはスプール弁33を介して連通,遮断されるものである。
30はシリンダ2内の液圧室8Aをホイールシリンダ10Aにフェイルセーフ弁12Aを迂回して接続する迂回通路で、該迂回通路30は、後述するスプール34に形成した軸孔36、液孔37および環状溝38と、前記径方向孔29からスプール摺動穴22Aの軸方向に離間して筒形ケース22の径方向に穿設された他の通液穴としての径方向孔31と、該径方向孔31をホイールシリンダ10Aにフェイルセーフ弁12Aを迂回して接続するバイパス配管32とにより構成されている。
33は迂回通路30の途中に設けられ、シリンダ2内の液圧室8Aをホイールシリンダ10Aに対して連通,遮断する切換弁としてのスプール弁で、該スプール弁33は、図2に示すように筒形ケース22のスプール摺動穴22A内に挿嵌された段付筒状のスプール34と、取付部材20の段付穴20Aとスプール34との間に配設され、該スプール34をストロークシュミレータ21の有蓋ピストン26側(図2中の矢示C方向)に向けて常時付勢した弁ばね35とにより大略構成されている。
そして、スプール34の軸方向一側には、取付部材20の段付穴20A内に位置して径方向外向きに突出する環状の鍔部34Aが設けられ、該鍔部34Aは、図3、図4に示すようにスプール34がスプール摺動穴22A内を矢示C方向に変位したときに筒形ケース22の端面(衝合面)側に当接し、これ以上にスプール34が矢示C方向に変位するのを規制するものである。
また、スプール34には、その内周側に位置して前記段付穴20A(通液路18)をストロークシュミレータ21の蓄圧室24に常時連通させる軸孔36と、スプール34の径方向に穿設され該軸孔36に連通した液孔37と、スプール34の外周側に形成され軸方向で互いに離間した環状溝38,39とが設けられている。
ここで、スプール34の環状溝38は、液孔37を介して軸孔36と常時連通し、軸孔36、液孔37と共に前記迂回通路30の一部を構成するものである。また、スプール34の環状溝39は、径方向孔29、液圧配管28を介して液圧ユニット13Aに常時連通し、スプール34が図3、図4に示す如く矢示C方向に変位したときに径方向孔29,31間を連通させる。
即ち、切換弁となるスプール弁33は、図2に示すようにストロークシュミレータ21が作動(有蓋ピストン26がスプリング27に抗して摺動変位)する前の段階では、スプール34の環状溝38,39間で径方向孔29(液圧配管28)と径方向孔31(バイパス配管32)との間を遮断し、この径方向孔31を環状溝38、液孔37を介して軸孔36(図1に示すシリンダ2内の液圧室8A)連通させる。
しかし、図3、図4に示すようにストロークシュミレータ21が作動(有蓋ピストン26がスプリング27に抗して矢示C方向に摺動変位)したときには、スプール34が弁ばね35により有蓋ピストン26側に向けて矢示C方向に押動されるため、スプール34の環状溝39により径方向孔29,31間が互いに連通され、スプール34の軸孔36は径方向孔31(バイパス配管32)から遮断されるものである。
このようにストロークシュミレータ21に付設したスプール弁33は、ストロークシュミレータ21が作動するまでは、図1に示すシリンダ2内の液圧室8Aを迂回通路30を介してホイールシリンダ10Aに連通させ、液圧配管28を迂回通路30(バイパス配管32)に対して遮断する。そして、ブレーキ操作に伴ってストロークシュミレータ21が作動したときには、図1に示す液圧室8Aを迂回通路30から遮断し、液圧配管28を迂回通路30(バイパス配管32、ホイールシリンダ10A)に連通させるものである。
40はBBWシステムの制御装置を構成するコントロールユニットで、該コントロールユニット40は、例えばマイクロコンピュータ等により構成され、その入力側は、ブレーキペダル7の操作検出器(以下、ペダルセンサ41という)とホイールシリンダ10A,10B側の圧力センサ42A,42B等とに接続されている。
この場合、ペダルセンサ41は、ブレーキペダル7を踏込み操作したときのストロークまたは踏力を検出するものである。また、圧力センサ42A,42Bは、ホイールシリンダ10A,10Bに供給されるブレーキ液圧を検出する。そして、コントロールユニット40は、ペダルセンサ41、圧力センサ42A,42Bからの検出信号に従ってBBWシステムが正常に動作しているか否かを判別すると共に、後述の如くブレーキ液圧の制御処理等を行うものである。
また、コントロールユニット40は、出力側がフェイルセーフ弁12A,12Bおよび液圧ユニット13A,13B等に接続されている。そして、コントロールユニット40は、システムの正常動作時にフェイルセーフ弁12A,12Bを閉弁位置(b)に切換えると共に、液圧ユニット13A,13Bに給電を行って液圧ポンプ14A,14Bを作動させ、ホイールシリンダ10A,10Bのブレーキ液圧を増圧、保持または減圧するために供給弁16A,16B、排出弁17A,17Bを選択的に開,閉弁させるものである。
本実施の形態によるマスタシリンダ装置1を用いたBBWシステム(ブレーキ装置)は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、BBWシステムが正常に動作するときには、コントロールユニット40からの制御信号によりフェイルセーフ弁12A,12Bが図1に示す開弁位置(a)から閉弁位置(b)に切換えられ、シリンダ2内の液圧室8A,8Bは、ホイールシリンダ10A,10Bに対して遮断された状態となる。
そして、この状態で車両の制動時にブレーキペダル7が踏込み操作されると、シリンダ2内でピストン4,5が図1中の矢示A方向へと僅かに押動された段階で、液圧室8A,8Bはセンタバルブ(図示せず)等を介してリザーバ3の管路3A,3Bに対して遮断される。
このとき、第2の液圧室8Bは、フェイルセーフ弁12Bによりホイールシリンダ10Bに対し遮断されると共に、リザーバ3の管路3Bに対しても遮断されるので、第2のピストン5は液圧ロック状態となって、これ以上の摺動変位が抑制され、チルトバルブ19は図1に例示した開弁状態に保たれる。
そして、第1の液圧室8A内は、第1のピストン4が矢示A方向に摺動変位するに従って液圧が上昇し、この液圧室8A内の液圧は、通液路18、チルトバルブ19等を介してストロークシュミレータ21の筒形ケース22(蓄圧室24)内へと供給される。
このときストロークシュミレータ21は、筒形ケース22内のスプリング27が液圧の大きさに応じて撓み変形され、有蓋ピストン26を摺動変位させることにより、蓄圧室24内に液圧を蓄圧する。そして、この蓄圧室24内の圧力はブレーキ反力となって、シリンダ2内の液圧室8Aから第1のピストン4を介してブレーキペダル7に伝えられるので、ペダル反力を生じさせることができ、車両の運転者にブレーキの効き、所謂踏み応えを与えることができる。
ところで、この場合のペダルフィーリング(踏み応え)は、ブレーキペダル7の踏み初めが軽く、ブレーキペダル7を踏み込むに従って徐々に重くなるような踏み応えが望ましいものである。しかし、この場合のストロークシュミレータ21は、スプリング27がブレーキ操作に伴って撓み始めるまでにある程度の液圧が必要となり、ブレーキペダル7の踏み始めに操作感が重くなる傾向がある。
そこで、本実施の形態では、フェイルセーフ弁12Aを迂回してシリンダ2の液圧室8Aをホイールシリンダ10Aに接続する迂回通路30を、液圧室8Aとストロークシュミレータ21との間に設けると共に、迂回通路30の途中には液圧室8Aをホイールシリンダ10Aに対して選択的に連通,遮断する切換弁としてのスプール弁33を設ける構成としている。
即ち、この場合のスプール弁33は、図2〜図4に示すようにストロークシュミレータ21の筒形ケース22に付設され、スプール摺動穴22A内を矢示C,D方向に摺動変位する段付筒状のスプール34と、取付部材20の段付穴20Aとスプール34との間に配設され、該スプール34をストロークシュミレータ21の有蓋ピストン26側に向けて常時付勢した弁ばね35とにより構成されている。そして、スプール34には、軸孔36、液孔37および環状溝38,39等を設け、軸孔36、液孔37および環状溝38が前記迂回通路30の一部を構成している。
かくして、本実施の形態にあっては、ストロークシュミレータ21が作動(有蓋ピストン26がスプリング27に抗して摺動変位)する前の段階では、図2に示すようにスプール34の軸孔36(図1に示すシリンダ2内の液圧室8A)を液孔37、環状溝38、径方向孔31およびバイパス通路32(迂回通路30)を介してホイールシリンダ10Aに連通させる。
この結果、車両のブレーキ操作時にブレーキペダル7を踏み始めてストロークシュミレータ21のスプリング27が撓み始めるまでの段階では、図1に示す液圧室8A内に発生した液圧を迂回通路30を介してホイールシリンダ10A側に供給することができ、このときの液圧がストロークシュミレータ21と液圧室8Aとの間に封じ込められて重いペダル反力が生じるような事態をなくすことができる。
即ち、ブレーキペダル7を踏込み操作するときの操作量のうち、例えば最初の1mm程度の踏込み量に相当する踏み始め(無効入力)の段階では、図1に示す液圧室8A内に発生した液圧(無効入力)を迂回通路30を介してホイールシリンダ10A側に供給することにより、ブレーキペダル7の踏み始めに操作感(ペダルフィーリング)が重くなるのを抑えることができ、踏み始めにおける操作感を軽くすることができる。
そして、この段階でブレーキペダル7の踏込み操作を続けると、液圧室8A内にはさらに高い液圧が発生するので、ストロークシュミレータ21の有蓋ピストン26が、図3に示すようにスプリング27に抗して矢示C方向に摺動変位するようになり、これに伴ってスプール34が弁ばね35により有蓋ピストン26側に向けて矢示C方向に押動される。
このため、スプール34の環状溝39により径方向孔29,31間が互いに連通され、スプール34の軸孔36を径方向孔31(バイパス配管32)から遮断することができる。これにより、ブレーキペダル7の踏込み操作に対応したブレーキ液圧を、図1中の液圧ユニット13Aから液圧配管28、スプール弁33、バイパス配管32を介してホイールシリンダ10Aに供給できる。
そして、このときには液圧室8A内に発生する液圧に従ってストロークシュミレータ21のスプリング27を、図4に示すように矢示C方向へと大きく撓み変形させ、蓄圧室24内に液圧の一部を蓄えると共に、このときの反力をペダル反力としてブレーキペダル7に伝えることができ、ブレーキペダル7の操作感を向上することができる。
また、このようなブレーキ操作時には、ブレーキペダル7の踏込み操作をペダルセンサ41で検出することにより、コントロールユニット40から液圧ユニット13A,13Bに制御信号を出力して液圧ポンプ14A,14Bを作動できると共に、供給弁16A,16B、排出弁17A,17Bを選択的に開,閉弁することができる。
このため、車両の制動時等には、ブレーキペダル7の踏込み操作に従って液圧ポンプ14A,14Bからホイールシリンダ10A,10Bに供給するブレーキ液圧を増圧、保持または減圧でき、ブレーキペダル7の踏込み操作に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダ10A,10Bに供給できると共に、車両の制動力制御を高精度に行うことができる。
一方、例えば液圧源となる液圧ポンプ14A,14Bが故障したり、コントロールユニット40が故障したりした場合には、前述の如きBBWシステムによる自動的なブレーキ液圧の制御が失効する。そして、このようなシステムの失陥時には、コントロールユニット40からフェイルセーフ弁12A,12Bに制御信号が出力されず、フェイルセーフ弁12A,12Bは図1に示す開弁位置(a)に自動的に復帰する。
このため、マスタシリンダ装置1は、シリンダ2内の液圧室8A,8Bがホイールシリンダ10A,10Bに連通した状態となる。そして、この状態で車両の制動時等にブレーキペダル7が踏込み操作されると、シリンダ2内でピストン4,5が共に軸方向に押動され、液圧室8A,8Bには、ブレーキペダル7の踏込み操作に対応した液圧が発生する。
そして、液圧室8A,8B内に発生した液圧は、ブレーキ配管11A,11Bを介してホイールシリンダ10A,10Bにブレーキ液圧として供給され、この場合でも、ブレーキペダル7の踏込み操作に対応したブレーキ液圧をホイールシリンダ10A,10Bに供給することができる。
また、シリンダ2内の液圧室8Aとスプール弁33との間に通液路18を介して設けたチルトバルブ19は、第2のピストン5が戻しばね9Bに抗して図1中の矢示A方向に押動されることにより開弁位置から閉弁位置に切換わり、ストロークシュミレータ21に対して通液路18を閉塞する。
これにより、例えばシステムの失陥時等には、シリンダ2内の液圧室8Aをストロークシュミレータ21および迂回通路30に対しても遮断でき、液圧室8A内の液圧がストロークシュミレータ21側で余分に消費されるのを防止できると共に、液圧室8A内に発生した液圧をブレーキ配管11Aを介してホイールシリンダ10Aに対し効率的に供給することができる。
従って、本実施の形態によれば、車両のブレーキ操作時に、ブレーキペダル7の踏み始めにシリンダ2の液圧室8A内に発生する無効入力を、ホイールシリンダ10A側に迂回通路30を介して供給することにより、ブレーキペダル7の踏み始め(低踏力領域)における操作感を軽くでき、踏み始めの操作感を向上することができる。そして、車両の運転者にはブレーキ操作時に良好な踏み応えを与えることができ、良好なペダルフィーリングを確保することができる。
また、切換弁としてのスプール弁33を、シリンダ2の液圧室8Aとストロークシュミレータ21との間に位置して迂回通路30の途中に設ける構成としているので、例えばシリンダ2内の液圧室8Aとストロークシュミレータ21との間に取付部材20等を介してスプール弁33をコンパクトに収容でき、マスタシリンダ装置1全体を小型、軽量化し、組立時の作業性等を向上することができる。
次に、図5は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、迂回通路の途中に設ける切換弁を、ストロークシュミレータから離間した位置に配置した電磁弁により構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51は本実施の形態で採用したストロークシュミレータで、該ストロークシュミレータ51は、第1の実施の形態で述べたストロークシュミレータ21とほぼ同様に構成され、蓄圧室52、シュミレータピストンとしての有蓋ピストン53およびスプリング54等を有している。
しかし、この場合のストロークシュミレータ51は、後述の迂回通路55が蓄圧室52と通液路18(シリンダ2の液圧室8A)との間から分岐して設けられている。そして、後述の電磁弁59は、ストロークシュミレータ51から離間した位置で迂回通路55の途中に配設されているものである。
55は迂回通路で、該迂回通路55は、第1の実施の形態で述べた迂回通路30とほぼ同様に構成され、シリンダ2内の液圧室8Aをホイールシリンダ10Aにフェイルセーフ弁12Aを迂回して接続するものである。
しかし、この場合の迂回通路55は、ストロークシュミレータ51の蓄圧室52と通液路18との間から分岐し、後述する電磁弁59の位置まで外部に引出すように延びた分岐管路56と、一端側が該分岐管路56の先端側に電磁弁59を介して接続され、他端側がホイールシリンダ10Aにフェイルセーフ弁12Aを迂回して接続されたバイパス配管57とにより構成されている。
58は液圧配管で、該液圧配管58は、第1の実施の形態で述べた液圧配管28とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の液圧配管58は、その先端側が後述の電磁弁59に接続されている点で異なるものである。
59は迂回通路55の分岐管路56とバイパス配管57との間に設けられた切換弁としての電磁弁で、該電磁弁59は、シリンダ2内の液圧室8Aと液圧ユニット13Aとのいずれか一方をホイールシリンダ10Aに対し選択的に連通,遮断するため、分岐管路56と液圧配管58とのいずれか一方をバイパス配管57に連通させる構成としている。
即ち、電磁弁59は、後述するコントロールユニット60からの制御信号に従って切換位置(c),(d)のいずれかに切換制御され、切換位置(c)のときには迂回通路55の分岐管路56をバイパス配管57に連通させる。そして、電磁弁59が切換位置(c)から切換位置(d)に切換えられたときには、液圧ユニット13Aが液圧配管58、バイパス配管57を介してホイールシリンダ10Aに連通(接続)されるものである。
60は本実施の形態で採用した制御装置としてのコントロールユニットで、該コントロールユニット60は、第1の実施の形態で述べたコントロールユニット40とほぼ同様に構成され、フェイルセーフ弁12A,12Bの切換制御、液圧ユニット13A,13Bの作動制御等を行うものである。
しかし、この場合のコントロールユニット60は、ストロークシュミレータ51の作動に従って電磁弁59を切換制御するため、入力側が後述のストロークセンサ61に接続され、出力側が電磁弁59に接続されている。なお、電磁弁59は、通常の非励磁状態のときにばね等によって切換位置(c)におかれるものである。
61はストロークシュミレータ51の作動を検知する位置検知手段としてのストロークセンサで、該ストロークセンサ61は、例えば有蓋ピストン53の動きを検知することにより、ストロークシュミレータ51内で有蓋ピストン53がスプリング54に抗して摺動変位したか否かを検出し、この検出信号をストロークシュミレータ51の作動判別信号としてコントロールユニット60に出力するものである。ストロークセンサ61としては、例えばリミットスイッチ等の接触型センサ、ホール素子等の非接触型センサ等、種々のセンサを使用することができる。
かくして、このように構成される本実施の形態によるブレーキ装置でも、コントロールユニット60がストロークセンサ61からの検出信号に従って電磁弁59を切換位置(c)と切換位置(d)とに切換制御することにより、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
即ち、本実施の形態にあっては、車両のブレーキ操作時にブレーキペダル7を踏み始めてストロークシュミレータ51のスプリング54が撓み始めるまでの段階では、ストロークセンサ61によりストロークシュミレータ51が作動する前の状態(非作動状態)にあると検出されるので、電磁弁59は切換位置(c)におかれる。
これにより、シリンダ2の液圧室8Aは、通液路18、分岐管路56およびバイパス配管57を介してホイールシリンダ10Aに接続されるため、ブレーキペダル7の踏み始めに液圧室8A内に発生した液圧(無効入力)を、迂回通路55(分岐管路56、バイパス配管57)を介してホイールシリンダ10A側に供給することができ、ブレーキペダル7の踏み始めにおける操作感を軽くすることができる。
そして、この段階でブレーキペダル7の踏込み操作を続けると、液圧室8A内にはさらに高い液圧が発生するので、ストロークシュミレータ51の有蓋ピストン53がスプリング54に抗して摺動変位する。しかし、このときにはストロークシュミレータ51の作動を検出した信号がストロークセンサ61から出力されるので、電磁弁59は、切換位置(c)から切換位置(d)に切換わるようになり、分岐管路56をバイパス配管57から遮断することができる。
このため、ブレーキペダル7の踏込み操作により液圧室8A内に発生した液圧が迂回通路55の分岐管路56、バイパス配管57を介してホイールシリンダ10A側に流通することはなくなる。そして、このときにはブレーキペダル7の踏込み操作に対応したブレーキ液圧を、図5中の液圧ユニット13Aから液圧配管58、電磁弁59およびバイパス配管57を介してホイールシリンダ10Aに供給することができる。
また、ブレーキ操作を解除したときには、シリンダ2内のピストン4が矢示B方向に戻り、液圧室8A内の液圧が低下すると共に、ストロークシュミレータ51も初期位置に復帰し、電磁弁59を再び切換位置(c)に復帰させて次なるブレーキ操作時に備えることができる。
次に、図6ないし図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ホイールシリンダに液圧を供給する液圧源を、切換弁とホイールシリンダとの間で迂回通路の途中位置に設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、71は本実施の形態で採用したストロークシュミレータで、該ストロークシュミレータ71は、第1の実施の形態で述べたストロークシュミレータ21とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合のストロークシュミレータ71は、内部に蓄圧室24、ばね室25、有蓋ピストン26およびスプリング27等が設けられる後述の筒形ケース72を、異なる形状に形成しているものである。
72は蓋体23と共にストロークシュミレータ71の外殻を構成するシュミレータケースとしての筒形ケースで、該筒形ケース72は、第1の実施の形態で述べた筒形ケース22とほぼ同様に形成されている。しかし、この場合の筒形ケース72は、後述のポペット弁装置77に衝合して設けられ、その衝合面側には弁座72Aが形成されている。
73はシリンダ2に対しポペット弁装置77を介してストロークシュミレータ71を取付けるための取付部材で、該取付部材73は、第1の実施の形態で述べた取付部材20とほぼ同様に構成され、通液路18の一部となる段付穴73Aが設けられている。しかし、この場合の取付部材73には、図7に示すように後述のポペット弁装置77を介して筒形ケース72が衝合状態で取付けられるものである。
74はシリンダ2内の液圧室8Aをホイールシリンダ10Aにフェイルセーフ弁12Aを迂回して接続する迂回通路で、該迂回通路74は、後述するポペット弁装置77の弁ケース78に形成した弁体収容穴78A、径方向孔82と、この径方向孔82をホイールシリンダ10Aにフェイルセーフ弁12Aを迂回して接続するバイパス配管75とにより構成されている。
76は液圧ユニット13Aに接続された液圧配管で、該液圧配管76は、第1の実施の形態で述べた液圧配管28とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の液圧配管76は、その先端側がバイパス配管75の途中部位に接続されている点で異なるものである。
77は迂回通路30の途中に位置しシリンダ2内の液圧室8Aをホイールシリンダ10Aに対して連通,遮断する切換弁としてのポペット弁装置で、該ポペット弁装置77は、図7に示すようにストロークシュミレータ71の筒形ケース72と取付部材73との間に衝合(挟持)して設けられ、内部に弁体収容穴78Aが形成された弁ケース78と、該弁ケース78の弁体収容穴78A内に配置されたポペット型の弁体79と、該弁体79を筒形ケース72の弁座72Aに向けて常時付勢した弁ばね80とにより構成されている。
ここで、ポペット弁装置77の弁体79は、その基端側が取付部材73の段付穴73A内に摺動可能に挿嵌され、先端側は筒形ケース72の弁座72Aに離着座することにより通液路18をバイパス配管75に対して連通,遮断するものである。また、弁体79の先端側には、筒形ケース72の弁座72Aを介して蓄圧室24内へと突出する突部79Aが設けられている。
そして、弁体79の突部79Aは、その先端がストロークシュミレータ71の有蓋ピストン26に当接することにより、有蓋ピストン26が矢示D方向に変位している間は、図7に示す如く弁ばね80に抗して弁座72Aから離座した状態に保持されるものである。また、弁体79内には、通液路18をストロークシュミレータ71の蓄圧室24に連通させるため弁体79の軸方向および径方向に延びた液孔81が形成されている。
また、弁ケース78には、内部の弁体収容穴78Aと連通する径方向孔82が形成され、該径方向孔82にはバイパス配管75の一端側が接続されている。そして、この径方向孔82は、弁ケース78内の弁体収容穴78A等と共に迂回通路74の一部を構成するものである。
かくして、このように構成される本実施の形態では、ストロークシュミレータ71の筒形ケース72と取付部材73との間に設けたポペット弁装置77の弁体79が、筒形ケース72の弁座72Aに離着座し通液路18をバイパス配管75に対して連通,遮断することにより、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
即ち、切換弁となるポペット弁装置77は、図7に示すようにストロークシュミレータ71が作動する前の段階では、弁体79の突部79Aがストロークシュミレータ71の有蓋ピストン26に当接することにより、弁体79が弁ばね80に抗して弁座72Aから離座した状態に保持されるので、通液路18は、弁体79内の液孔81、弁体収容穴78A、径方向孔82およびバイパス配管75を介してホイールシリンダ10Aに連通される。
これにより、図6に示すシリンダ2の液圧室8Aは、通液路18、ポペット弁装置77および迂回通路74(バイパス配管75)を介してホイールシリンダ10Aに接続されるため、ブレーキペダル7の踏み始めに液圧室8A内に発生した液圧(無効入力)を、迂回通路74を介してホイールシリンダ10A側に供給することができ、ブレーキペダル7の踏み始めにおける操作感を軽くすることができる。
そして、この段階でブレーキペダル7の踏込み操作を続けると、液圧室8A内にはさらに高い液圧が発生するので、ストロークシュミレータ71の有蓋ピストン26がスプリング27に抗して図8中の矢示C方向に摺動変位する。そして、このときにはポペット弁装置77の弁体79が筒形ケース72の弁座72Aに着座することにより、通液路18を径方向孔82、バイパス配管75から遮断することができる。
また、このときに液圧ユニット13Aからのブレーキ液圧が、バイパス配管75、径方向孔82を介して弁体収容穴78A内に仮に逆流したとしても、図8に示す如く筒形ケース72の弁座72Aに着座したポペット型の弁体79は、弁体収容穴78A内で前,後の受圧面積がほぼ等しくなっているので、ブレーキ液圧の逆流に影響されることなく弁体79を閉弁状態に保持することができる。
このため、ブレーキペダル7の踏込み操作により液圧室8A内に発生した液圧が迂回通路74のバイパス配管75等を介してホイールシリンダ10A側に流通することはなくなる。そして、このときにはブレーキペダル7の踏込み操作に対応したブレーキ液圧を、図6中の液圧ユニット13Aから液圧配管76およびバイパス配管75を介してホイールシリンダ10Aに供給することができる。
また、このときには液圧室8A内に発生する液圧に従ってストロークシュミレータ71のスプリング27を、図9に示すように矢示C方向へと大きく撓み変形させ、蓄圧室24内に液圧の一部を蓄えると共に、このときの反力をペダル反力としてブレーキペダル7に伝えることができ、ブレーキペダル7の操作感を向上することができる。
一方、ブレーキ操作を解除したときには、液圧室8A内の液圧が低下するに伴ってストロークシュミレータ71の有蓋ピストン26が、スプリング27の付勢力により図7に示す初期位置へと押し戻され、弁体79の突部79Aを弁ばね80に抗して矢示D方向に押動し、次なるブレーキ操作時に備えることができる。
次に、図10ないし図12は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、迂回通路の途中に設ける切換弁を逆止弁として構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、91は本実施の形態で採用したストロークシュミレータで、該ストロークシュミレータ91は、第1の実施の形態で述べたストロークシュミレータ21とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合のストロークシュミレータ91は、内部に蓄圧室24、ばね室25、有蓋ピストン26およびスプリング27等が設けられる後述の筒形ケース92を、異なる形状に形成しているものである。
92は蓋体23と共にストロークシュミレータ91の外殻を構成するシュミレータケースとしての筒形ケースで、該筒形ケース92は、第1の実施の形態で述べた筒形ケース22とほぼ同様に形成されている。しかし、この場合の筒形ケース92は、後述の取付部材93に衝合される一端側に縮径部92Aが設けられ、この縮径部92A側に後述の逆止弁96等が設けられている。
93は本実施の形態で採用した取付部材で、該取付部材93は、第1の実施の形態で述べた取付部材20とほぼ同様に構成されれている。しかし、この場合の取付部材93には、通液路18の一部となる液路93Aが図10に示す如く軸方向に伸長して設けられ、筒形ケース92の縮径部92Aが後述の逆止弁96と共に衝合状態で取付けられている。
94は筒形ケース92の縮径部92A内に穿設された連通路で、該連通路94は、縮径部92A内を軸方向に伸長し取付部材93の液路93A(通液路18)をストロークシュミレータ91の蓄圧室24に連通させるものである。
95は連通路94の径方向に延びた入口側の径方向孔で、該径方向孔95は、筒形ケース92の縮径部92A内に位置して後述の弁体収容穴97と連通路94との間に形成され、後述のボール弁体100により連通路94に対して連通,遮断されるものである。そして、径方向孔95は後述する迂回通路102の一部を構成するものである。
96は筒形ケース92の縮径部92Aと取付部材93との間に設けられた切換弁としての逆止弁で、該逆止弁96は、縮径部92Aの外周面から径方向内向きに延びる凹溝として形成された弁体収容穴97と、該弁体収容穴97を閉塞するように縮径部92Aの外周面に嵌合して設けられ出口側の径方向孔98が穿設された筒状蓋体99と、ボール弁体100および弁ばね101とにより構成されている。
ここで、ボール弁体100は、弁体収容穴97内に配置され、弁ばね101により入口側の径方向孔95に向けて常時付勢されている。そして、ボール弁体100は、図10〜図12に示す如く弁体収容穴97内で入口側の径方向孔95と出口側の径方向孔98とを選択的に連通,遮断する構成となっている。
102は本実施の形態で採用した迂回通路で、該迂回通路102は、縮径部92A内の連通路94に連通する径方向孔95と、逆止弁96の弁体収容穴97および筒状蓋体99の径方向孔98と、前記第3の実施の形態で述べたバイパス配管75等とにより構成されている。
かくして、このように構成される本実施の形態では、ストロークシュミレータ91の筒形ケース92と取付部材93との間に設けた逆止弁96のボール弁体100が、弁体収容穴97内で入口側の径方向孔95と出口側の径方向孔98とを選択的に開,閉することにより、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
即ち、切換弁となる逆止弁96は、図10に示すようにストロークシュミレータ91が作動する前の段階で、通液路18(図6に例示した液圧室8A)に発生した液圧を連通路94、径方向孔95を介してボール弁体100が受圧すると、このときの液圧でボール弁体100が径方向孔95を開くように弁ばね101に抗して開弁される。
これにより、このときの液圧は、連通路94内から径方向孔95、弁体収容穴97および径方向孔98等を介してバイパス配管75、ホイールシリンダ10A側に流通する。このため、ブレーキペダル7の踏み始めに液圧室8A(図6参照)内に発生した液圧(無効入力)を、迂回通路102を介してホイールシリンダ10A側に供給することができ、ブレーキペダル7の踏み始めにおける操作感を軽くすることができる。
そして、この段階でブレーキペダル7の踏込み操作を続けると、液圧室8A内にはさらに高い液圧が発生するので、ストロークシュミレータ91の有蓋ピストン26がスプリング27に抗して図11中の矢示C方向に摺動変位しようとする。しかし、このときには液圧ユニット13Aからのブレーキ液圧が液圧室8A内の液圧を上回るようになり、このブレーキ液圧によってボール弁体100は、図12に示す如く径方向孔95側に着座することになる。
このため、通液路18(連通路94、径方向孔95側)を径方向孔98、バイパス配管75から遮断でき、ブレーキペダル7の踏込み操作により液圧室8A内に発生した液圧が迂回通路102のバイパス配管75等を介してホイールシリンダ10A側に逃げることはなくなる。そして、このときにはブレーキペダル7の踏込み操作に対応したブレーキ液圧を、図6に例示した液圧ユニット13Aから液圧配管76およびバイパス配管75を介してホイールシリンダ10Aに供給することができる。
また、このときには液圧室8A内に発生する液圧に従ってストロークシュミレータ91のスプリング27を、図12に示すように矢示C方向へと大きく撓み変形させ、蓄圧室24内に液圧の一部を蓄えると共に、このときの反力をペダル反力としてブレーキペダル7に伝えることができ、ブレーキペダル7の操作感を向上することができる。
一方、ブレーキ操作を解除したときには、液圧室8A内の液圧が低下するに伴ってストロークシュミレータ91の有蓋ピストン26が、スプリング27の付勢力により図10に示す初期位置へと押し戻され、逆止弁96のボール弁体100は、弁ばね101により径方向孔95に向けて付勢されたまま、次なるブレーキ操作時に備えることができる。
なお、前記第3の実施の形態では、ストロークシュミレータ71の筒形ケース72と取付部材73との間に切換弁としてのポペット弁装置77を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばストロークシュミレータ71と液圧配管76との間でバイパス配管75の途中位置に、シリンダ2内の液圧室8Aをホイールシリンダ10Aに対して連通,遮断する電磁弁等の切換弁を設ける構成としてもよい。そして、この点は前記第4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、迂回通路30の一端側(径方向孔31等)を通液路18とストロークシュミレータ21の蓄圧室24との間に接続する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば通液路18とは異なる位置で迂回通路の一端側をシリンダ2の液圧室8Aに接続し、この迂回通路の途中に切換弁を設ける構成としてもよい。そして、この点は前記第2〜第4の実施の形態についても同様である。