JP4334883B2 - 粘着シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着剤層表面に凹凸を設けた粘着シートに関する。特に、被着体に仮接着する際の接着力の安定性を改善でき、また、貼り付け時及び後のエア抜き性も確保可能な粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常の粘着シートに於ける粘着剤層の表面は、平坦面であり、粘着シートを被着体に貼り付けるときは、注意して貼らないと空気を抱き込み易い。また、一旦、被着体に接着した後は、粘着剤層の全面で被着体に接触して強固に接着することになるので、一旦貼り付けたものを剥がして貼り直す位置修正が事実上できない。
【0003】
そこで、粘着剤層表面を意識的に凹凸表面とすることで、空気の逃げ道を作ってエア抜き性を改善したり、或いは、被着体との接触面積を小さくして接着力を調整して、小さい貼り付け圧では接着面が小さく、強い貼り付け圧では粘着剤層が潰れて広い接着面を確保して最終的な接着力が得られる様にして、仮貼り可能な再剥離性を付与したりした、粘着シートが知られている(特許文献1、特許文献2、等参照)。例えば、特許文献2では、図9の斜視図で示す粘着シート30の様に、基材シート31上の粘着剤層32の表面に同じく粘着剤からなる粘着剤凸部32aを散在させる等した粘着剤層の表面凹凸形状を開示している。
【0004】
【特許文献1】
特許第3017717号公報(特許請求の範囲、段落番号0008〜0012、図3)
【特許文献2】
実用新案登録第2503717号公報(実用新案登録請求の範囲、段落番号0021、図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した様な凹凸表面の粘着剤層を設けた従来の粘着シートでは、必ずしも再剥離性が安定的と言えるものではなかった。それは、仮接着から本接着とすべく、弱い貼り付け圧から強い貼り付け圧に至る過程での、被着体との接着力を増加させるという接着力制御は成されてはいるが、予想に反して、仮接着時の接着力が強くなり過ぎたり、或いは逆に軽くなり過ぎたりし易かった。しかも、接着力は、加圧力、粘着性等が、季節、作業雰囲気温度、人による個人差等によって、変動するから、なおさらであった。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、特に、仮接着の為の再剥離性が安定的に得られ、また、貼り付け時或いは貼り付け後のエア抜き性も確保可能な、粘着シートを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明の粘着シートでは、基材シート上に、凹凸表面を有する粘着剤層が設けられた粘着シートにおいて、該粘着剤層は、その表面に多数の溝が設けられ、該多数の溝は深さが少なくとも2レベル以上異なる溝からなり、且つ該深さが2レベル以上異なる多数の溝が2方向に走る構成とした。
【0008】
この様な構成とすることで、粘着剤層表面に設けた多数の溝は、その深さが最低限2レベルと異なるので、貼り付け時の加圧力の増加につれて、溝の主として底部は、浅い溝の分から順に被着体に接触し接着していき、それにつれて、深さレベルがより深い溝も接着に関与する毎に接着力は段階的に増加する。この為、本接着前の仮接着段階において、貼り付け時の加圧力変化による接着力変化が、緩慢な安定領域が2レベル以上得られる。しかも、安定領域は2レベル以上と複数なので、季節、気温、個人差等の変動にも何れかのレベルで対向でき、これらの結果、安定的な仮接着力が得られ、再剥離性の安定性が得られる。また、溝は2方向であるので、溝内部の空気が逃げる方向が偏らず、上記の如き深さレベルの異なる溝による接着力の段階的増加が、貼り付け方向に左右されることも無い。また、少なくとも最も深い溝を最終的に残る様な溝とすれば、貼り付け時はもちろん貼り付け後のアウトガス等に対応可能なエア抜き性も確保できる。
【0009】
また、本発明の粘着シートは、上記構成に於いて更に、粘着剤層の表面に、該表面の凹凸形状とは逆凹凸形状の離型面を有するセパレータが積層されて成る構成とした。
この様な構成とすることにより、粘着剤層表面の溝の形成が容易となる上、更には、粘着シート保存時、流通時、使用時等に於いて、粘着剤層表面の溝による表面凹凸形状の維持が容易となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
〔粘着剤層の表面凹凸を形作る溝〕
先ず、図1は、本発明の粘着シート10を、その一形態で概念的に例示する斜視図である。図1では、基材シート11上に設けられた粘着剤層12は、その表面に、深さの段階が3レベル異なる多数の溝Vを2方向に設けた例である。なお、図1では、溝の深さが最も深いレベルのものを「0」、中位の深さレベルを「1」、最も浅いレベルを「2」、(溝が無い部分の)粘着剤層表面は平坦面で、その部分は溝からみれば凸部Tとなり、この部分のレベルを「3」と、表記してある(y軸方向に走る溝についてのみ表記。x軸方向に走る溝については表記省略。後述図3参照)。
そして、多数の溝Vは、粘着シート10の水平面をxy平面、垂直方向をz軸とするxyz直交座標系にて、x方向と、y方向の2方向に走る様に設けてある。
【0012】
なお、図1で一例を示した様な本発明の粘着シートは、図2の断面図でその一形態を例示した粘着シート10の如く、通常は、粘着剤層12の表面には、その表面凹凸形状とは逆凹凸形状の離型面を有するセパレータ13を積層した構成とする。
【0013】
次に、図3の平面図は、図1の様に、深さレベルが3段階の場合に、2方向に走る多数の溝の夫々について、深さレベルを割り振った一例を示す。図3中、「0」、「1」、「2」、「3」の数字は、前述図1の場合と同様である。深さは0が最も深く、1は中位、2は浅い。一方、3は凸部の上面である。また、この図3の例では、溝の走る方向は、x方向とy方向で、その交差角度θは90°である。
【0014】
また、各方向に走る溝同士の交差部分は、図3では、深い方の溝の深さとしてあるが、逆でも良いし、或いは更に深さレベルを追加するのであれば、中間の深さ等でも良い。但し、この様な深さの異なる多数の溝形状を最初に造形する母型を、粘着剤層側の形状として、金属等の材料に切削加工で溝切りして造るのであれば、結果として図3の様に交差部分は深い方の溝の深さとなる。よって、この様にして溝形状を造形するのが容易である点を考慮すると、交差部分は図3の様に深い方の溝の深さとなるのが、一般的となろう。
【0015】
なお、図1では深さ「0」のレベルでも、その溝底面は粘着剤層としてあるが、基材シート等であっても良く、必ずしも最深の溝の底面が粘着剤層である必要は無い。但し、通常、この様な表面凹凸の粘着剤層は、それと逆凹凸形状の離型面を設けたセパレータ側に粘着剤を塗布して形成するので、深さレベル0の部分に該当するセパレータ上の部分から粘着剤を掻き取らない限り、深さレベル0の部分も粘着剤層となる。また、最深の深さレベル0の底面が粘着剤層でない場合では、この部分を被着体と接触させても、これによる接着力の増大は無い。
【0016】
次に、図4及び図5は、深さレベルの異なる複数の溝Vによって、仮接着時の接着力が安定化する様子を概念的に示した図である。図4の断面図では、溝Vの深さは、0、1、2の3レベルである(3は粘着剤層12の凸部の上面)。被着体14への貼り付け圧として加圧力Pを強くしていくに従い、接着力は増加していく。そして、図4に対応して、加圧力P増加による接着力Tの変化を概念的に示したのが図5のグラフである。
【0017】
図4に戻って説明すると、図4中で左側に示した状態は、レベル3の凸部のみが被着体14に接着した状態であり、この時の粘着剤層と被着体との接着力はT1である。次に、加圧力Pを強くしていくと、図4中、左から2番目の状態となり、最初は一番浅い深さレベル2の溝が潰れて、その底部乃至はその周辺も含めて被着体にも接触し接着する様になり、これにより接着力はT2に増大する。なお、被着体と接着した状態の深さレベル2の溝は、その部分を分かり易い様に太い線分で描いてある。そして、この変化を、図5のグラフでは、加圧力PのP1からP2への増加に伴う、接着力TのT1からT2への段階的な増加として描いてある。
【0018】
以降、加圧力Pを更に増加していくに従い、深さの浅い溝から順に、その底部も被着体に接着する様になり、接着面積の増大によって接着力が増加していく。このとき、深さレベルが浅い溝の底部が接着に寄与し出す圧力時点毎に、接着力は段階的に急上昇していく。すなわち、加圧力Pが、P2→P3→P4と増加していくに従い、深さの浅い溝から順に被着体に接着し、接着力はT2→T3→T4と増加していき、最後は、完全接着の接着力T4にまで至る。従って、接着力の変化は、図5のグラフで概念的に示す様に、単調増加ではなく、溝に割り振った深さレベルの数に応じて、増大が緩慢な部分がでてくる。この部分は、加圧力で溝が変形しつつあるが、その溝の底部がまだ被着体に接触していない圧力範囲であるときに相当する。そして、この接着力増大が緩慢な部分では、加圧力の変化に対して接着力変化が少なく、従って、例えば、個人差等で加圧力が強すぎたり、或いは弱すぎたりしても、この領域の加圧力に於いては、意図した接着力を発現できることになる。つまり、この領域は接着力の「安定領域」となる。
【0019】
かくして、深さレベルを3段階とした場合には、本接着前の仮接着力に於いて、3段階の接着力レベルを創出できる。しかも、溝形状や凸部形状を適宜調整することで、各接着力レベルは調整できる。その結果、仮接着力が強、弱の少なくとも2段階、より好ましくは、強、中、弱の3段階あれば、いずれかの接着力レベルによって、季節、作業雰囲気温度、個人差等による加圧力の違いや、接着力の違いに応じた、安定的な仮接着力を得ることが可能となるのである。
【0020】
なお、従来の粘着シートでは、その溝の深さレベルは1種類であった。しかも、その溝は、特に貼り付け後のエア抜き性も考慮して被着体に貼着後も最後まで残す溝であり、その溝の底部分と被着体との接触による接着力の段階的な増大は起こらず、従って、加圧力の増大に伴う接着力の増加傾向は、単調増加のカーブを描き、上記の様な安定領域が得られるものではなかった。
また、仮に、深さレベルが1種類の溝で、その溝の底部を最終的に被着体と接触させ接着させるならば、そのときに段階的な接着力の増大は期待できるが、もはやそのときは、それ以上は接着力が増大せず貼り直しが効かない完全接着の状態であり、段階的な接着力の増大は、適度な仮接着力による再剥離性を実現するものでは無い。
【0021】
次に、溝の形状と凸部の形状の大きさであるが、これらは、要求される仮接着力等の要求性能等を適宜勘案して、適宜大きさとすれば良く、この点について、図6、図7、図8を参照して更に説明する。なお、以下の説明に、本発明は限定されるものではない。
【0022】
先ず、溝の深さであるが、3レベルの深さで例示する図6の断面図による説明図の如く、一番深いものから順に、レベル0の溝の深さをD0、レベル1の溝の深さをD1、レベル2の溝の深さをD2、で表現した場合、溝の深さの具体例を示せば、一番深い溝の深さD0は、10〜150μmである。また、異なる深さの溝同士の深さの差は、注目する溝とその次に浅い溝の深さの差で見た場合、例えば、D0−D1(z軸の位置座標Znで捉えれば、Z1−Z0、以下同様。)、D1−D2(Z2−Z1)は、3〜50μmである。なお、一番浅いレベル2の溝については、その次に浅い溝は無いが、同様に凸部Tの上面のレベル3との差で見れば、D2−D3(Z3−Z2)で同様に、3〜50μmである。
【0023】
なお、一番深い、レベル0の溝の底面部分の基材シート側も粘着剤層で良く、その場合、図6で示す様に、その(基底)部分の粘着剤層の厚さHBASEは、通常3〜50μmである。厚さHBASEは0でもよいのだが、その為には、粘着剤層の形成を、通常は粘着剤をセパレータ側に施して、これを基材シートと積層して粘着シートを製造する関係上、セパレータ上で基底部分に該当する部分の塗布厚みをゼロにすることが必要であり、それには、掻き取る等の特別な工夫が必要だから、HBASEは通常は有限な厚さとなる。また、あえて、HBASEを0にする必要もない。
【0024】
次に、溝の幅であるが、図6で深さの場合と同様に、一番深いものから順に、レベル0の溝の幅をW0、レベル1の溝の幅をW1、レベル2の溝の幅をW2、で表現した場合、溝の幅さの具体例を示せば、これらの溝の幅、W0(W1、W2)は各々、50μm≦W0(W1、W2)≦1000μmとするのが良い。50μm未満では、溝内部の空気が抜け難くなり、逆に1000μm超過では、図8の断面図で概念的に示す如く、溝Vの底部をまだ接触させたくないときに、自重等の軽い力で溝の形状が撓んでその底部で粘着剤層12が被着体14と接触してしまい、仮接着の作業性や、エア抜き性能がかえって低下する。
【0025】
次に、レベル3を与える凸部の大きさであるが、凸部は溝と溝との間であり、図6では、レベル0とレベル1の溝の間にて、P1で表現してある。なお、溝は2方向に走っているので、より詳細には凸部は、図7の斜視図で示す様に、2方向の大きさP1、P2を有する。このP1、P2は、通常、50〜500μmとするのが良い。また、凸部の大きさは、溝の幅との関係で決めるのが好ましく、P1或いはP2と、W0、W1或いはW2との夫々の比率をP1(P2)/W0(W1、W2)で表せば、P1(P2)/W0(W1、W2)=1/1〜5/1の範囲とするのが好ましい。この分数表示の比率にて、分子の数値が1未満であると(つまり、凸部の大きさが溝の幅よりも小さい)、前記したと同様に、図8の如く、溝Vの底部をまだ接触させたくないときに、自重等の軽い力で溝の形状が撓んでその底部で粘着剤層12が被着体14と接触してしまい、仮接着の作業性や、エア抜き性能がかえって低下する。逆に、該分子の数値が5超過であると(つまり、凸部の大きさが溝の幅の5倍よりも大きい)、溝内部の空気が抜け難くなる。
【0026】
以上の様な異なる深さレベルを有する溝は、図1や図3で例示の如く、粘着シートの水平面であるxy平面に於いて、2方向に走る様に設けるが、異なる方向の溝同士が交差する角度θは(図3参照)、図1や図3で例示の様な90°以外でも良い。但し、角度θは45〜90°の範囲とするのが良い。それは、角度θが45°未満であると、溝が不本意に潰れてしまい易く溝内部のエア抜きが難しくなり、仮接着が難しくなるからである。そして、溝が走る方向を2方向とすれば、1方向である場合の様に内部の空気が逃げる方向が偏らず、上記の如き深さレベルの異なる溝による接着力の段階的増加が、貼り付け方向に左右されることも無く、仮貼りも含めて貼り易い粘着シートとなる。
【0027】
なお、各溝の幅は同一でも不同一でも良く、また、各凸部の大きさは同一でも不同一でも良い。また、各凸部或いは各溝は、規則的配列でも良く、不規則配列でも良い。
【0028】
〔粘着剤層の材料及び形成法〕
粘着剤層12は、その凹凸表面に、上述の如き溝による表面凹凸形状を有するものであるが、この様な粘着剤層の形成に用いる粘着剤としては、従来公知のものを用途に応じて適宜使用すれば良い。例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤である。
【0029】
また、粘着剤層の形成方法は特に限定されるものではないが、粘着剤層の表面凹凸形状とは逆凹凸形状の離型面を有するセパレータを用意して、粘着剤を該セパレータの離型面上に塗工して粘着剤層をロールコート等の公知の塗工法等によって形成するのが、所望の表面凹凸形状を容易に形成できる点で好ましい一方法である。基材シートは、セパレータ上に粘着剤層を形成して積層シートとした後、この積層シートの粘着剤層面に対して基材シートを貼り付けて積層することで、所望の粘着シートが得られる。
【0030】
〔セパレータ〕
次に、セパレータ13としては、その離型面が平坦面のセパレータでも、使用することはできる(粘着剤層表面に所望の凹凸形状を形成した後で、セパレータを積層する場合で、粘着剤層の溝部分とセパレータ間には空気が存在する)。しかし、セパレータとしては、粘着剤層表面の凹凸形状に対応した(該凹凸形状とは逆)凹凸形状を離型面に有するセパレータを用いるのが、好ましい。これによって、前記した如く、セパレータ上に粘着剤層を塗工法等で形成することで、該粘着剤層表面の所望の表面凹凸形状を容易に形成できる。しかも、粘着シートの保存時、或いは流通時や使用時等に於いて、粘着剤層の表面凹凸形状が潰れず、その形状維持も容易となる。
【0031】
この様な離型面に所望の凹凸形状を設けたセパレータとしては、セパレータとして従来公知のシートに、エンボス加工等の従来公知の賦形手段を適用することで得られる。
【0032】
なお、セパレータの基材となるセパレータ基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の樹脂シート(乃至はフィルム)、或いは紙等の公知の材料を用途に応じて適宜使用すれば良い。なお、セパレータ基材の厚さは、用途に応じたものとすれば良く、例えば、5〜500μm程度、通常は20〜300μm程度である。
【0033】
ところで、セパレータの離型面を、所望の凹凸形状とするには、従来公知のエンボス加工を適用すれば良いが、エンボス加工としては、例えば、加熱されたシートにエンボス版としてエンボスローラを押圧して賦形する方法が代表的である。この他、樹脂シートや紙上への樹脂層の溶融塗工法による成膜時に、その冷却ローラの表面をエンボス面としたエンボスローラを用いる成膜同時賦形法等でも良い。或いは、樹脂層を溶融塗工法に代えて、紫外線や電子線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いてその塗工・硬化と同時に、硬化物としての樹脂層に賦形する方法でも良い。また、スクリーン印刷等の公知の印刷法を利用した盛上げ印刷等によって、離型面に所望の凹凸形状を賦形しても良い。
なお、エンボス版に所望の凹凸形状を設ける方法は、機械的な切削法、レーザ加工法等の公知の形成方法によれば良い。
【0034】
〔基材シート〕
基材シート11としては、従来公知のものを用途に応じて適宜採用すれば良い。例えば、樹脂シート、金属箔、或いは、紙、不織布、織布、突板等の繊維質シート等、或いは、これら2種以上の積層シートや、樹脂含浸不織布等の様な複合シート等からなるシートである。なお、樹脂シートは、透明(無着色、着色)、不透明、半透明等のシートを用いる。なお、基材シートの厚みは、用途に応じたものとすれば良く、例えば、5〜500μm程度、通常は20〜300μm程度である。
【0035】
〔その他〕
ところで、本発明の粘着シートは、必要に応じて適宜、絵柄や凹凸等による模様、印字、コード、記号、画像等による可視或いは不可視情報を、公知の印刷・塗工手段等により施した構成としても良い。通常、これらは基材シートの片面(表面或いは裏面)、或いは両面に対して施される。絵柄等の模様を施したものは、建材用途にて化粧シートとして使用され得る。なお、模様とする絵柄には、全面着色等の全面ベタ模様もある。また、不可視情報とは、例えば、蛍光インキや赤外線吸収インキの印刷等による紫外線や赤外線照射にて判読可能な模様や文字等の情報等である。
【0036】
また、粘着シートには、必要に応じて、各種機能性を付与した構成としても良い。機能性としては、例えば、耐摩耗性、耐擦傷性、耐汚染性、防曇性、反射防止性、帯電防止性、断熱性、抗菌性、電磁波シールド性等である。これらは、その機能に応じて、樹脂シート等の基材シート中に、それに必要な物質を添加するか、基材シート上に該物質或いは該物質を添加したインキや塗液等の層を形成する等して実現する。例えば、耐摩耗性や耐擦傷性等は、シリカ等の耐摩剤を、樹脂シート中に添加するか、該耐摩剤を含む塗液で基材シート表面に塗工形成するる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳述する。
【0038】
〔実施例1〕
図1の斜視図、及び図2断面図の如き粘着シート10を次の様にして作製した。
【0039】
(1)エンボス版の作製:鉄製の中空円筒の版胴の表面を切削加工した後、この表面をクロムめっきして、目的とする粘着剤層の表面凹凸形状と同一形状の表面凹凸形状を形成して、エンボス版とした。
なお、目的形状となるエンボス版の表面凹凸形状は、表1に示す。すなわち、D0=45μm、D1=30μm、D2=15μm、W0=800μm、W1=800μm、W2=800μm、P1=250μm、P2=250μm、θ=90°である(図3、図6、図7参照)。
【0040】
【表1】
【0041】
(2)セパレータの作製:坪量110g/m2の上質紙の片面に、ポリエチレンを溶融押出塗工して、厚さ30μmのポリエチレン層を形成して、セパレータ基材とした。
次に、このセパレータ基材の離型面側とするポリエチレン層を加熱軟化させ、上記(1)で作製したエンボス版を押圧し、冷却固化させて、離型面とするポリエチレン層表面に粘着剤層表面の目的形状と同一形状だが逆凹凸形状の表面凹凸を賦形して、セパレータ13を作製した。
【0042】
(3)粘着シートの作製:上記(2)で作製したセパレータの表面凹凸形状を有する離型面(ポリエチレン層面)上に、該表面凹凸形状を充填する様にして、アクリル樹脂系粘着剤をドライ塗布量で80g/m2塗布し加熱乾燥して、粘着剤層を形成して、セパレータと粘着剤層との積層シートを作製した。
次に、厚さ50μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材シート11を、上記積層シートの粘着剤層面にラミネートして、本発明の粘着シート10を作製した。なお、粘着シート上での基底部分の粘着剤層12の厚さHBASEに該当する部分は、厚さ10μmであった。
【0043】
〔評価〕
上記粘着シートを、一辺50cmの正方形形状に切り抜き、この粘着シートからセパレータを剥離し、表面に凹凸形状を有する粘着剤層を露出させ、次いで、該粘着シートを硝子平板に対して、その粘着剤層面が前記硝子平板面側を向く様にして、貼り合わせて、評価した。仮接着、及び本接着は申し分なく、良好であった。以下、その具体的な内容を詳述する。
【0044】
(1.仮接着)
仮接着は、貼り合せ時に、粘着剤層の凸部形状が完全に潰れない様に、力を加減して貼ることにより、粘着剤層と硝子平板面間に残留する空気は、粘着シートの周辺端部から外部に抜くことが出来、膨れや気泡が粘着シートに発生することは無かった。
また、一旦、貼り合せた粘着シートは、破れ、皺、変形を生じること無く、手で容易に硝子平板面から剥離でき、貼り合せ位置の修正も容易に出来た。
また、貼り合せ時の加圧力を、粘着剤層の凸部を完全に潰さない範囲で順次強くすることにより、仮接着力を3段階で順次強くすることが出来、貼着施工時の状況に合わせて所望の仮接着力を得ることが出来た。
【0045】
(2.本接着)
仮接着後、更に強く加圧し、粘着剤層の凸部を全て潰すことにより、接着力は更に高くなり、手で容易には剥離不能となった。
【0046】
【発明の効果】
(1)本発明の粘着シートによれば、仮接着の為の再剥離性が安定的に得られ、また、本接着力も良い。従って、仮接着時の作業条件に、季節、雰囲気温度、個人差等の変動要因があっても、これらを吸収し、安定的な再剥離性が得られる。また、貼り付け時、或いは貼り付け後のエア抜き性も確保可能である。
(2)更に、粘着剤層の表面に、該表面の凹凸形状とは逆凹凸形状の離型面を有するセパレータを積層した構成とすれば、粘着剤層の所望の表面凹凸形状の形成が容易となる上、更には、粘着シート保存時、流通時、使用時等に於いて、粘着剤層の表面凹凸形状の形状維持が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粘着シートと溝形状をその一形態で概念的に説明する斜視図。
【図2】本発明の粘着シートを別の一形態で概念的に説明する断面図。
【図3】3種の深さレベルを2方向の各溝にを割り振った一例を示す平面図。
【図4】被着体へ貼り付ける加圧力の増大に伴う、深さレベルの異なる各溝の形状変化を概念的に説明する断面図。
【図5】図4と同様に加圧力増大に伴う、接着力の段階的な増加を概念的に説明するグラフ。
【図6】溝の深さと幅を説明する断面図。
【図7】レベル3を与える凸部の大きさを説明する斜視図。
【図8】好ましくない溝幅や、凸部大きさ/溝幅による不具合を概念的に説明する断面図。
【図9】従来の粘着シートの一例を示す斜視図。
【符号の説明】
11 基材シート
12 粘着剤層
13 セパレータ
14 被着体
10 粘着シート
30 粘着シート
31 基材シート
32 粘着剤層
32a 粘着剤凸部
T 凸部
V 溝
Claims (2)
- 基材シート上に、凹凸表面を有する粘着剤層が設けられた粘着シートにおいて、
該粘着剤層は、その表面に多数の溝が設けられ、該多数の溝は深さが少なくとも2レベル以上異なる溝からなり、且つ該深さが2レベル以上異なる多数の溝が2方向に走る、粘着シート。 - 粘着剤層の表面に、該表面の凹凸形状とは逆凹凸形状の離型面を有するセパレータが積層されて成る、請求項1記載の粘着シート。
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