JP4334742B2 - 木製梁及び木製梁や柱などの建築部材の製造方法 - Google Patents

木製梁及び木製梁や柱などの建築部材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家屋等の建築物の躯体を構成する木製梁及び木製梁や柱などの建築部材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地震等による建築物の倒壊は、建築物の躯体を構成する建築部材自体あるいは建築部材同士の接合箇所が破損することにより生じており、このため、木造建築物の耐震・耐久性能の改善が大きな社会的な問題となっている。
そこで、阪神大震災以来、主要の建築部材を、耐震用の特殊な金物を用いて補強を行っており、特に、新築においては、法的にも、耐震・耐久性といった性能が要求されているため、筋交いや火打ちに特殊な金物を用いることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような補強構造にあっては、その補強に用いられる特殊な金物が大型かつ複雑なものであるため、その取り付け施工作業に多大な労力を要するという問題がある。また、補強金物は、建築部材の経年的な縮みによりゆるみが生じ、補強効果が低下してしまうという問題がある他。金物を設置するために新たに木材の欠損が生じて耐力た低下するという問題もある。しかも、この種の補強金具の場合、塩害等によって腐食しやすい。
このように、金物による補強方式には、補強性能のみならず、耐久性、信頼性などにも多くの問題があり、満足すべきものではない。
【0004】
本発明の課題は上記従来の問題点を解決することであり、曲げ強度の大きい木製梁を提供することを目的とする。
本発明の他の目的はコストの低い木製梁を提供することである。
本発明の別の目的は、曲げ強度の大きい木製梁や柱などの建築部材を能率的に製造することができる木製梁や柱などの建築部材の製造方法を提供することである。
本発明の更に他の目的は、強度の大きい木製梁や柱などの建築部材をコスト安に製造することができる木製梁や柱などの建築部材の製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記少なくとも1つの目的を達成するために、請求項1記載の発明は、上部フランジと下部フランジの両側部にウェブを一体に接着したボックス型木製梁において、下部フランジに、アラミド繊維等の補強繊維部材が長さ方向に沿って接着され、上部フランジと下部フランジ及びウェブの内面に配されるとともに、補強繊維部材の長さ方向に直交する方向に材軸方向を向けたスチフナーが設けられている構成とした。
【0006】
この手段では、梁の下部にかかる引張荷重を、引張耐力の強い補強繊維部材が負担し、曲げ強度を強化する。
単板を接着した木製梁は、経年的な縮みを生じにくいが、仮に縮小するようなことがあっても、補強繊維部材は金物と違って、正常な接着状態を保つ。また、補強繊維部材は塩害等によって腐良するおそれがない。
その上、ボックス型とされた木製梁の形状上の特性が生かされる。
木製梁の内部には、スチフナーを所定間隔で設ける。このスチフナーには、通常、配線などを挿通させる貫通孔が形成される。
【0009】
請求項記載の発明は、上部フランジと下部フランジの中央部にウェブを一体に接着したI型木製梁において、下部フランジに、アラミド繊維等の補強繊維部材が長さ方向に沿って接着され、上部フランジの横幅が下部フランジの横幅よりも小さくされ、上部フランジと下部フランジ及びウェブの内面に配されるとともに、補強繊維部材の長さ方向に直交する方向に材軸方向を向けたスチフナーが設けられている構成とした。
【0010】
この手段においても、請求項1記載の発明とほぼ同一の作用を期待でき、またI型とされた木製梁の特性が生かされる。
この構成では、一般に床下地合板等に釘や接着剤等で一体とされる上部フランジの横幅が小さくされ、その分、使用材料の量(体積)が減って重量が軽減されるので、対コスト強度と対重量強度が大きくなる。
上部フランジと下部フランジの寸法差通りの台形状のスチフナーを設けた場合は、座屈強度が効率的に高まる。
【0014】
請求項記載の発明は、繊維方向を互いに平行にした複数の単板と細幅のアラミド繊維等の補強繊維シートとを単板の繊維方向に補強繊維シートの長さ方向をほぼ一致させた状態で積層接着して大判の合板を製造する工程と、該合板を予定された建築部材の幅寸法に合わせて上記補強繊維シートに沿って切断し合板部材を製造する工程と、上記で製造された複数の合板部材を、互いの補強繊維シートをほぼ平行にして積層接着する工程とを具備した構成とした。
【0015】
この手段では、補強繊維シートが合板部材に予め接着されているので、合板部材どうしを手際よく接着することができる。
補強繊維シートは、単板の間に挟み込んでそれらに接着することも、外側の単板の外面に接着することもできる。
大判の合板を合板部材に切断する場合、補強繊維シートの縁に沿って切断することも、また補強繊維シートの中央部や中央部から外れた位置を単板と一緒に切断することもできる。
【0018】
本発明において、単板どうしの接着、又は単板と補強繊維部材の接着に用いられる接着剤の種類は任意である。
また、補強繊維部材としては、アラミド繊維の他に、炭素繊維やガラス繊維などのシートやロッドを用いることができる。また、単板の使用枚数も任意である。
【0019】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
なお、下記図9に示す第7の実施の形態は参考とする。
図1と図2は本発明の第1の実施の形態を示す。図において符号1は単板積層材(LVL)の製造方法により、ロータリーレースで切削した単板、2は補強繊維部材であるアラミド繊維シート(補強繊維シート)である。
【0020】
単板1とアラミド繊維シート2とは、単板1,1の間にアラミド繊維シート2を挟み込み、単板1,1どうし及び両単板1とアラミド繊維シート2を接着剤でそれぞれ接着して大判の合板Pとする。単板1,1の繊維方向は互いに平行(一致)にされ、アラミド繊維シート2の長さ方向が単板1の繊維方向に一致されている。また、アラミド繊維シート2は、予定された建築部材の寸法位置(例えば、30cm間隔)に配設される。
【0021】
上記合板Pは、上記の寸法位置、つまり梁背位置でアラミド繊維シート2の縁に沿って切断されて合板部材(ラミナ)PL とされる。
【0022】
本木製梁Aaは、上記で製造された複数の合板部材PL を、互いのアラミド繊維シート2を一致させて下部に配し、一体に左右に積層接着して成る。
なお、図2の木製梁Aaは、3枚の合板部材PL の両外側面に単板1を、その繊維方向を他の単板1の繊維方向に平行にしてそれぞれ接着して製造されている。
【0023】
上記の構成とされた木製梁Aaにおいては、木製梁Aaの下部にかかる引張荷重を、引張強度の大きいアラミド繊維シート2が受けるため、木製梁Aaの強度が向上する。アラミド繊維シート2は塩害等によって腐食することはなく、また単板1が経年変化で縮むようなことがあっても単板1から剥離せずに接着し続けるので、長年月にわたって所定の強度が保たれる。
【0024】
図3と図4は本発明の第2の実施の形態を示す。
単板1,1を、互いの繊維方向を平行にして接着剤で一体に接着し、大判の合板Paとする。
【0025】
上記の合板Paは、予定された建築部材の寸法位置で単板1の繊維方向に沿って切断されて合板部材PLa とされる。この際、切断と同時に切断ラインに沿って所定の幅と深さを有するL型のシャクリ(切欠溝)1aを形成する。
【0026】
上記で製造された複数の合板部材PLa を、互いのシャクリ1aを下部に配して一体に左右に積層接着し、各シャクリ1aに、アラミド繊維を組紐状に編んだフィブラロッド(補強繊維ロッド、補強繊維部材)2aを嵌め込んで単板1にそれぞれ接着し、木製梁Abとする。
なお、この木製梁Abの場合も、3枚の合板部材PLa の両外側面に単板1を、その繊維方向を他の単板1の繊維方向に平行にしてそれぞれ接着して製造されている。
【0027】
この木製梁Abにおいても、下部に配設された引張強度の大きいフィブラロッド2aは、木製梁Abにかかる引張力を受け、また塩害等によって腐食することがなく、しかも単板1が縮むことがあっても接着を保つので、図2の木製梁Aaと同一の効果が得られる。
【0028】
図5は本発明の第3の実施の形態を示す。
この木製梁Acは、複数の単板1を互いの繊維方向を一致させて一体に接着した合板Pa(図3)を、予定された建築部材の寸法位置で単板1の繊維方向に沿って切断して合板部材PLb (シャクリはなし)とし、その合板部材PLb を複数上下に積層するとともに下部にアラミド繊維シート2を合板部材PLb の全長にわたって挟み込んで合板部材PLb どうし及び合板部材PLb とアラミド繊維シート2をそれぞれ接着剤で一体に接着して成る。
【0029】
この木製梁Acにおいても、前述の木製梁Aa,Abと同一の作用効果を期待できる。単板1で合板部材PLb を形成せずに、所定枚数の単板1をアラミド繊維シート2と一緒に積層接着することもできる。また単板1を集成材とすることができ、この場合は、半端材の再利用が可能となる。
【0030】
図6は本発明の第4の実施の形態を示す。
この木製梁Adは、上部フランジFaと下部フランジFbの両側部にそれらの全長にわたってウェブWを一体に接着したボックス型木製梁となっている。
【0031】
上部フランジFaは、複数の単板1を互いの繊維方向を平行にして一体に接着した合板Pa(図3)を、予定された建築部材の寸法位置で単板1の繊維方向に沿って切断して合板部材PLb とし、その合板部材PLb を複数上下に積層接着して製造されている。
【0032】
これに対して、下部フランジFbは、合板部材PLb ,PLb の間にアラミド繊維シート2を合板部材PLb の全長にわたって挟み込んで一体に接着して成る。なお、アラミド繊維シート2は下側の合板部材PLb の下面に接着することもある。
ウェブWは合板製とされている。
【0033】
符号4は合板製のスチフナーであり、上部フランジFaと下部フランジFb及びウェブW,Wの内面に所定の間隔で接着されている。このスチフナー4には、配線や配管等を挿通させたり、断熱材等を充填するための貫通孔4aが必要に応じて形成される。
なお、図6では手前側のウェブWの端部部分がスチフナー4を見せるために切除されている。
【0034】
この木製梁Adにおいては、ボックス型としての長所が生かされる上、アラミド繊維シート2の働きによって木製梁Aa,Ab,Acとほぼ同一の効果が得られる。
【0035】
図7は本発明の第5の実施の形態を示す。
この木製梁Aeも、上部フランジFcと下部フランジFdの両側部にその全長にわたってウェブWを一体に接着したボックス型木製梁となっている。図6と同様に手前側のウェブWの端部部分が切除されている。
【0036】
上部フランジFcは、前述の合板部材PLb を複数左右に積層接着して製造され、また下部フランジFdは、複数左右に積層接着された合板部材PLb のうちの外側の合板部材PLb の外面にアラミド繊維シート2をそれぞれ接着して製造されている。また所定間隔で配置される合板製のスチフナー4には貫通孔4aが形成されている。
なお、アラミド繊維シート2が接着される合板部材PLb の厚さはアラミド繊維シート2の厚さ分小さくされ、上部フランジFcと下部フランジFdの横幅を同一にしている。
【0037】
この木製梁Aeにおいても、ボックス型の長所が生かされ、またアラミド繊維シート2によって木製梁Aa,Ab,Ac,Adとほぼ同一の効果が得られる。なお、下部フランジFdを、フィブラロッド2aを用いた図4の木製梁Abに準じた構成としてもよい。
【0038】
図8は本発明の第6の実施の形態を示す。
この木製梁Afにおいては、製材(1個の単板1と考えることができる)からなる上部フランジFeと、互いの繊維方向にした2枚の単板1,1の間にアラミド繊維シート2を挟み込んで単板1,1と接着剤で一体に接着した下部フランジFf、及び貫通孔4aを形成した単板構造のスチフナー4が用いられ、上部フランジFeと下部フランジFfの左右両側部にそれらの全長にわたってウェブWをそれぞれ接着して製造されている。
なお、図6と同様に手前側のウェブWの端部部分が切除されている。
【0039】
この木製梁Adにおいても前述の木製梁Aa〜Aeとほぼ同一の効果が得られる。上部フランジFeと下部フランジFfの両方又はいずれか一方を集成材とすることもある。
【0040】
図9は本発明の第7の実施の形態と示す。
この木製梁Agは、上部フランジFaと下部フランジFbの中央部にそれらの全長にわたってウェブWaを一体に接着したI型木製梁となっている。
【0041】
上部フランジFaと下部フランジFbの構造は、図6の前記木製梁Adの上部フランジFa及び下部フランジFbと同一であり、またウェブWaには合板が用いられている。
【0042】
この木製梁Agにおいては、I型木製梁としての長所がそのまま生かされる上、アラミド繊維シート2の働きによって木製梁Aa〜Afとほぼ同一の効果を期待することができる。
なお、必要に応じてスチフナーが所定の間隔で設けられる。上部フランジと下部フランジの両方又はいずれか一方を製材又は集成材とすることができる。また、ウェブWaには、必要に応じて、配線、配管用の孔が設けられるよう、パンチングによる切込みを付けることが行われる。
【0043】
図10は本発明の第8の実施の形態を示す。
この木製梁Ahは、図9の木製梁Agの上部フランジFaの横幅を小さくするとともに下部フランジFbの横幅を大きくし、ウェブWaの左右両側に台形状のスチフナー6を所定間隔で上部フランジFaと下部フランジFb及びウェブWaに接着した構造となっている。
他の構造及び切込み等の点は図9の木製梁Agと同じである。
【0044】
ところで、一般に、梁の上部フランジは施工現場で床下地合板と釘、接着剤等で一体となるため下部フランジより強度を必要としない。
【0045】
図10の木製梁Ahは、アラミド繊維シート2の働きによって木製梁Aa〜Agとほぼ同一の効果をあげるほか、下部フランジFbの幅が広い分、曲げ強度が大きくなり、また上部フランジFaの幅、つまり梁背が小さいので軽量化が可能となる。しかも台形状のスチフナー6によって座屈が防止され、過剰な積載荷重や地震などの安全を確保できる。
【0046】
本発明において、単板、合板部材、スチフナー、ウェブ、アラミド繊維シート、補強繊維ロッド等を接着する接着剤の種類や接着方法は任意である。
また、合板を構成する単板の積層枚数や木材種類、合板部材の積層数等も図のものに限られるものではなく、種々設計変更することができる。
また、本発明は、梁に限らず、柱、その他の建築部材にも適用することができる。図の総ての木製梁Aa〜Ahにおいては、補強繊維部材が梁の端面から少しはみだしているが、このようにせずに、梁の端面と同一に切り揃える場合もある。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、曲げ強度が大きくて耐久力とその信頼性に優れ、しかも半端材の使用によりコストを低減することができる、ボックス型木製梁やI型木製梁を市場に提供することができる。
また、曲げ強度の大きい木製梁や柱などの建築部材を能率よくコスト安に製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る木製梁に使用される合板の一例を示す外観図である。
【図2】 本発明に係る木製梁の第1の実施の形態を示す外観図である。
【図3】 本発明に係る木製梁に使用される合板の他の例を示す外観図である。
【図4】 本発明に係る木製梁の第2の実施の形態を示す外観図である。
【図5】 本発明に係る木製梁の第3の実施の形態を示す外観図である。
【図6】 本発明に係る木製梁の第4の実施の形態を手前側のウェブの一部を切除して示した外観図である。
【図7】 本発明に係る木製梁の第5の実施の形態を手前側のウェブの一部を切除して示した外観図である。
【図8】 本発明に係る木製梁の第6の実施の形態を手前側のウェブの一部を切除して示した外観図である。
【図9】 本発明に係る木製梁の第7の実施の形態を示す外観図である。
【図10】 本発明に係る木製梁の第8の実施の形態を示す外観図である。
【符号の説明】
Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Ag,Ah 木製梁(建築部材)
1 単板
1a シャクリ
2 アラミド繊維シート(補強繊維部材、補強繊維シート)
2a フィブラロッド(補強繊維部材、補強繊維ロッド)
4,6 スチフナー
4a 貫通孔
P,Pa 合板
PL ,PLa ,PLb 合板部材
Fa,Fc,Fe 上部フランジ
Fb,Fd,Ff 下部フランジ
W,Wa ウェブ

Claims (3)

  1. 上部フランジと下部フランジの両側部にウェブを一体に接着したボックス型木製梁において、
    前記下部フランジに、アラミド繊維等の補強繊維部材が長さ方向に沿って接着され、
    前記上部フランジと下部フランジ及びウェブの内面に配されるとともに、前記補強繊維部材の長さ方向に直交する方向に材軸方向を向けたスチフナーが設けられていることを特徴とする木製梁。
  2. 上部フランジと下部フランジの中央部にウェブを一体に接着したI型木製梁において、
    前記下部フランジに、アラミド繊維等の補強繊維部材が長さ方向に沿って接着され
    前記上部フランジの横幅が前記下部フランジの横幅よりも小さくされ、
    前記上部フランジと下部フランジ及びウェブの内面に配されるとともに、前記補強繊維部材の長さ方向に直交する方向に材軸方向を向けたスチフナーが設けられていることを特徴とする木製梁。
  3. 繊維方向を互いに平行にした複数の単板と細幅のアラミド繊維等の補強繊維シートとを単板の繊維方向に補強繊維シートの長さ方向をほぼ一致させた状態で積層接着して大判の合板を製造する工程と、
    該合板を予定された建築部材の幅寸法に合わせて上記補強繊維シートに沿って切断し合板部材を製造する工程と、
    上記で製造された複数の合板部材を、互いの補強繊維シートをほぼ平行にして積層接着する工程とを具備したことを特徴とする木製梁や柱などの建築部材の製造方法。
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