JP2024024391A - 接合構造および接合構造の構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度面や意匠面、施工面に優れた柱と梁の接合構造等を提供する。【解決手段】接合構造1は、柱2と梁4を接合するものである。柱2は、外周部の外郭木材21の内側にコンクリートCを充填して構成され、梁4は、外郭木材21に設けられた、上方に開放されたスリット211を通るように配置され、柱2の上端部のコンクリートCに埋設される。梁4は、木質材による梁本体41と、梁本体41の内部に一方の端部が固定され、他方の端部が梁本体41から突出する鋼棒42と、を有し、鋼棒42の他方の端部が柱2の内部のコンクリートCに埋設される。【選択図】図2
Description
本発明は、柱と梁の接合構造および接合構造の構築方法に関する。
柱と梁を木部材とした木造ラーメン架構における木部材同士の接合時には、GIR(Glued In Rod)など、一方の木部材から突出する鋼材を他方の木部材の材軸方向の孔に挿入することが多く行われており、当該孔に接着材等の充填材を充填することで、木部材同士を剛接合することができる(例えば、特許文献1など)。
一般的に柱と梁の繊維方向は直交するため、柱と梁の接合部に上記の工法を適用すると、GIR等の鋼材がいずれかの部材の繊維直交方向に挿入されることになり、架構の強度が、繊維方向に比べ強度の低い繊維直交方向の強度で決まってしまうという課題が生じる。
さらに、木部材は耐火性能が必要となる場合があり、その際は耐火被覆で表面を覆う必要があるが、それでは木造本来の美さを表現できない。
加えて、木部材同士の接合に前記の工法を用いると、鋼材を木部材の孔に挿入するために、当該木部材を材軸方向に移動させる必要が生じる。特に、当該木部材が梁である場合、これを梁軸方向に移動させるだけのスペースが無いことも多く、施工が難しくなる。また木部材の材軸方向に孔をあける際にも、削孔技術の面(例えば削孔具の長さなど)から深さ方向の削孔限界があり、鋼材の定着長が削孔限界により制限される。
本発明は前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度面や意匠面、施工面に優れた柱と梁の接合構造等を提供することである。
前述した目的を達成するための第1の発明は、柱と梁の接合構造であって、前記柱は、外周部に位置する外郭木材の内側にコンクリートを充填して構成され、前記梁は、前記外郭木材に設けられた、上方に開放されたスリットに通され、前記柱の上端部に挿入されて前記コンクリートに埋設されたことを特徴とする接合構造である。
本発明では、柱をコンクリートと木の合成構造とし、梁を外郭木材のスリットに通して配置し、柱の内部のコンクリートに埋設する。これにより、本発明では柱の外観を木現しとして意匠面で優れた架構とでき、且つ、柱は内部にコンクリートを有することで構造性能に優れたものとなる。また柱にコンクリートを用いているので、前記したように、鋼棒が繊維直交方向に配置されて強度上の課題が生じるのを回避でき、強度面でも優れた架構とできる。また本発明では、梁を上から落とし込んで設置でき、梁を梁軸方向に移動させる必要が無く、施工が容易になる。
前記梁は、例えば、木質材による梁本体と、前記梁本体の内部に一方の端部が固定され、他方の端部が前記梁本体から突出する鋼材と、を有し、前記鋼材の他方の端部が前記柱の内部の前記コンクリートに埋設される。あるいは、前記梁は、H形鋼による鉄骨梁であってもよい。
前者の場合、梁を、軽量且つ高強度であり意匠面にも優れた木部材とでき、後者の場合、梁を、構造性能に優れた鉄骨梁とできる。いずれの場合も、本発明の接合構造により梁を柱に確実に固定できる。
前者の場合、梁を、軽量且つ高強度であり意匠面にも優れた木部材とでき、後者の場合、梁を、構造性能に優れた鉄骨梁とできる。いずれの場合も、本発明の接合構造により梁を柱に確実に固定できる。
前記鋼材は例えば鋼棒であり、前記梁本体は、複数の木質板を積層して形成され、隣り合う前記木質板に加工された溝を組み合わせて形成された空間に、前記鋼材の一方の端部が配置され、充填材が充填されてもよい。
この場合、梁本体を梁軸方向に削孔する必要が無くなるので事前の加工が簡単になり、溝の長さが加工技術の面から制限を受けることもない。
この場合、梁本体を梁軸方向に削孔する必要が無くなるので事前の加工が簡単になり、溝の長さが加工技術の面から制限を受けることもない。
前記鋼材はH形鋼であり、一対の前記梁が、前記外郭木材の対向する位置に設けられた前記スリットのそれぞれを通るように配置され、それぞれの前記梁の前記鋼材の他方の端部同士が、前記柱の内部で向かい合って配置され、前記柱の内部の前記コンクリートに埋設されてもよい。
鋼材としてH形鋼を用いることで、鉄筋等の鋼棒を用いる場合と比較し、剛性や耐力などの構造性能の点で有利となる。
鋼材としてH形鋼を用いることで、鉄筋等の鋼棒を用いる場合と比較し、剛性や耐力などの構造性能の点で有利となる。
第2の発明は、柱と梁の接合構造の構築方法であって、前記柱は、外周部に位置する外郭木材の内側にコンクリートを充填して構成されるものであり、前記柱の上端部の前記コンクリートを充填する前に、前記梁を上から落とし込んで前記柱の上端部に挿入するように配置する工程と、前記柱の上端部の前記コンクリートを充填し、当該コンクリートに前記梁を埋設する工程と、を具備することを特徴とする接合構造の構築方法である。
第2の発明により、コンクリートと木の合成構造を有する柱と、梁とを容易に接合できる。
第2の発明により、コンクリートと木の合成構造を有する柱と、梁とを容易に接合できる。
本発明によれば、強度面や意匠面、施工面に優れた柱と梁の接合構造等を提供できる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
(1.接合構造1)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る接合構造1を含むラーメン架構を示す図である。この架構は、建物の外周部の架構であり、柱2と梁4から構成される単一構面のラーメン構造を有する。柱2と梁4は、上下複数層に設けられる。この例では各層の梁4が各層の柱2の天端に位置するが、天端より若干低い位置とすることもできる。また梁4の上にはスラブ(不図示)が配置される。
(1.接合構造1)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る接合構造1を含むラーメン架構を示す図である。この架構は、建物の外周部の架構であり、柱2と梁4から構成される単一構面のラーメン構造を有する。柱2と梁4は、上下複数層に設けられる。この例では各層の梁4が各層の柱2の天端に位置するが、天端より若干低い位置とすることもできる。また梁4の上にはスラブ(不図示)が配置される。
本実施形態の接合構造1は、柱2と梁4を接合するものである。図1(b)は接合構造1を示す斜視図である。接合構造1では、柱2の側面に梁4が接合される。なお図1(b)では、図中の柱2の上に積層される上層の柱2の図示を省略している。
図2は、図1(b)の接合構造1に関し、柱2と梁4の断面を示したものである。図2(a)は柱2と梁4の鉛直方向の断面であり、図2(b)は柱2と梁4の水平方向の断面である。また図2(c)は柱2の水平方向の断面、図2(d)は梁4の鉛直方向の断面である。図2(b)、(c)は、それぞれ、図2(a)の線a-a、b-bに沿った断面であり、図2(a)は図2(b)の線c-cに沿った断面である。また図2(d)は図2(b)の線d-dに沿った断面である。
柱2は、コンクリートCと木の合成構造柱であり、その水平方向の断面は矩形状となっている。ただし、柱2の断面形状はこれに限定されず、その他の多角形あるいは円形でもよい。柱2は、外周部に外郭木材21を有し、その内側に主筋22が配置され、コンクリートCが充填される。このように、柱2の内部は耐火性能に優れた鉄筋コンクリート造となっている。本実施形態の柱2では、フープ筋が省略されるが、フープ筋が存在していても良い。
外郭木材21には、LVL(Laminated Veneer Lumber)やCLT(Cross Laminated Timber)などの木質材からなる板材が用いられる。外郭木材21は、柱2の矩形状断面の各辺に対応して4枚配置され、断面の隅部において、外郭木材21の端部同士がラグスクリューボルト等のボルト23で接合される。なお、外郭木材21としては、集成材やBP材などその他の木質材を用いることも可能である。また、外郭木材21の端部同士の接合を、ボルト23でなく接着材等で行うことも可能である。
外郭木材21は、柱2の外観を形成することで意匠性を向上させる他、その面内剛性によりせん断補強機能を発揮する。また外郭木材21は、火災時の燃え代となることで、フープ筋を省略した柱2(フープ筋の省略によりコンクリート部分の耐火性能が低下する恐れがある)の耐火性能を補う役割も期待される。そのため、外郭木材21の厚さは、十分な面内剛性を有するとともに、燃え代として機能し得る最小の厚さとすることが望ましい。
また本実施形態では、柱2の側面の梁4に対応する位置において、外郭木材21の上端部にスリット211が設けられる。スリット211は上方に開放され、梁4に対応する位置でのみ設けられる。
梁4は、集成材などの木質材による梁本体41の内部に、鉄筋などの鋼棒42の一方の端部を埋設、固定し、鋼棒42の他方の端部を梁本体41の柱2側の端部から水平方向に突出させたものである。鋼棒42は上下段に複数本(図2(b)の例では2本)ずつ配置される。
梁本体41は、複数の木質板(ラミナ)411を積層、接着して形成され、その際、隣り合う木質板411に予め加工された溝412が組み合わされ、鋼棒42の一方の端部を配置するための空間が形成される。この空間に鋼棒42の一方の端部を配置し、接着材などの充填材413を充填することにより、鋼棒42の当該端部が梁本体41に固定される。
梁4は、梁本体41の柱2側の端部をスリット211に通し、当該端部から突出する鋼棒42の突出部分を、柱2の上端部に挿入するようにして配置される。梁本体41の上記端部はスリット211の底面上に載置される。梁本体41の柱2側の端面は、柱2の内部のコンクリートCに当接し、鋼棒42の突出部分は、このコンクリートC内に埋設される。
接合構造1では、外郭木材21の対向する位置に設けられたスリット211のそれぞれを通るように左右一対の梁4が設置される。これらの梁4の鋼棒42は、図2(b)に示すように平面視で位置をずらして配置される。
(2.接合構造1の構築方法)
接合構造1を構築するには、まず図3(a)に示すように、外郭木材21と主筋22、およびスリット211の下方の高さまでのコンクリートCが一体化されたプレキャスト柱を予め工場等で製作し、このプレキャスト柱を現場に運搬して建て込む。
接合構造1を構築するには、まず図3(a)に示すように、外郭木材21と主筋22、およびスリット211の下方の高さまでのコンクリートCが一体化されたプレキャスト柱を予め工場等で製作し、このプレキャスト柱を現場に運搬して建て込む。
梁4についても、プレキャスト柱と同様、工場等で予め製作され、この梁4を現場まで運搬して図3(a)の矢印eに示すようにプレキャスト柱の上から落とし込み、梁本体41の柱2側の端部を外郭木材21のスリット211に通し、鋼棒42の突出部分を柱2の上端部に挿入するように、プレキャスト柱のコンクリートCの上に配置する。
図3(b)は、左右の梁4を設置した後の状態である。梁本体41の上記端部はスリット211の底面の上に載置され、下から支持される。梁本体41は、必要に応じて、ビスなどの固定手段で外郭木材21に固定される。
この後、柱2の上端部のコンクリートCを外郭木材21の上端まで打設、充填することで、図2(a)等に示すように、柱2と梁4の接合構造1が構築される。なお本実施形態では、この柱2の上に新たな柱2を設置することで、更に上層の架構が構築される。図2(a)では柱2の上方に主筋22が突出しているが、上層の柱2は、前記したプレキャスト柱のコンクリートCの底部に設けた孔(不図示)に下層の柱2の主筋22の突出部分221(図2(a)参照)を挿入し、モルタル等の充填材を充填することで下層の柱2と接合できる。
このように、本実施形態では、柱2をコンクリートCと木の合成構造とし、梁4を外郭木材21のスリット211に通して配置し、柱2の内部のコンクリートCに埋設する。これにより、本実施形態では柱2の外観を木現しとして意匠面で優れた架構とでき、且つ、柱2は内部にコンクリートCを有することで構造性能に優れたものとなる。また外郭木材21は燃え代として機能することで、コンクリートCの温度上昇を抑えることができ、コンクリートCの爆裂防止などの効果も生じる。
さらに、本実施形態では柱2にコンクリートCを用いているので、前記したように、鋼棒42が繊維直交方向に配置され強度上の課題が生じるのを回避して強度面でも優れた架構とでき、柱2と梁4の接合部の剛性と耐力を安定させることで、地震時の繰り返し荷重などに対して良好な性能を確保できるラーメン架構が得られる。また木材だけで柱2を構成する場合と比較してコストも低減できる。
また本実施形態では、外郭木材21の上端部の梁4に対応する位置に、上方に開放されたスリット211が設けられ、梁4を上から落とし込んで設置できる。そのため、梁4を梁軸方向に移動させる必要が無く、施工が容易になる。且つ本実施形態では柱2と梁4をプレキャスト化し、現場では柱2の上端部のコンクリートCを充填するだけで済むので施工スピードも早い。また梁本体41の端面は柱2の内部のコンクリートCに当接し、接合構造1の剛性と耐力を高めやすくなる。
また本実施形態では、梁本体41を、溝412が加工された複数の木質板411を積層して形成し、溝412を組み合わせて形成された空間に鋼棒42の一方の端部を配置して充填材413を充填する。そのため、梁本体41を梁軸方向に削孔する必要が無く事前の加工が簡単になり、溝412の長さが加工技術の面から制限を受けることもない。
しかしながら、本発明が上記の実施形態に限られることはない。例えば本実施形態では、柱2の施工時に前記したプレキャスト柱の建て込みを行っているが、図4(a)に示すように柱2の主筋22を現場で立ち上げた後、予め筒状に組み立ててユニット化した外郭木材21を矢印fに示すように上から落とし込んでもよい。
図4(b)は外郭木材21の建て込みを行った後の状態である。外郭木材21のユニット化にあたっては、必要に応じて、対向する位置にある外郭木材21同士をセパレータ(不図示)により連結し、柱2の内部のコンクリートCを充填する際の側圧に抵抗させる。柱2ではフープ筋が省略されているので、セパレータがフープ筋と干渉して外郭木材21を落とし込めない、といったことはなく、またセパレータはフープ筋の代わりにせん断補強部材としても機能する。
その後、図4(c)に示すように、外郭木材21を型枠とし、スリット211の下方の高さまでコンクリートCを打設、充填する。この後、前記の図3(b)以降の工程を実施することで接合構造1が構築される。なお、上層の柱2の主筋22は、下層の柱2の主筋22の突出部分221(図2(a)参照)に機械式継手等を用いて連結し、立ち上げることができる。
主筋22と外郭木材21のユニットは、同時に落とし込んで設置することも可能である。この場合、主筋22の下端部が外郭木材21から下方に突出した状態で落とし込みを行うことで、当該主筋22を下層の柱2の主筋22と連結するための作業空間を確保することができる。あるいは、外郭木材21のユニットを落とし込むのではなく、主筋22の配置後、その側方から外郭木材21を設置して組み立てても良い。
またプレキャスト柱も前記したものに限らず、例えば図5(a)に示すように、主筋22と、梁4の下方の高さまでの外郭木材21およびコンクリートCとを一体化したものを予めプレキャスト柱として工場等で製作し、現場まで運搬して設置してもよい。
この後、図5(b)に示すように梁4を設置し、必要に応じてプレキャスト柱のコンクリートCの上にフープ筋(不図示)を設置する。そして、上記外郭木材21の上方に、柱2の上端部の外郭木材21を配置し、当該外郭木材21を下方の外郭木材21や梁本体41にビス等の固定手段で固定してその内側にコンクリートCを打設する。これによっても接合構造1を構築することができる。
また本実施形態では梁4を木部材としているが、鉄筋コンクリート造でもよいし、柱2と同様、コンクリートと木による合成構造としてもよい。図6は合成構造を有する梁40を図2(d)と同様の断面で示した例であり、凹状に配置された木部材43の内部に鋼棒42の一方の端部を配置し、コンクリートCを充填することで形成される。
また本実施形態の接合構造1は、建物の外周部において、図1(a)に示す単一構面のラーメン構造に適用することを想定しているが、建物の内部において、図1(a)に示す構面と、当該構面と平面視で直交する構面の二方向のラーメン構造の接合箇所に適用してもよい。この場合、梁4は柱2の前後にも設けられる。これら前後の梁4の鋼棒42は、図2(a)等で示した左右の梁4の鋼棒42と高さを変えて配置される。
また本実施形態では、梁本体41の柱2側の端部をスリット211の底面上に載置しているが、当該端部を、外郭木材21の側面に設置した仮設の載置台(不図示)の上に配置し、図7に示すように、梁本体41の柱2側の端面が外郭木材21の表面の位置に来るようにしてもよい。この場合、スリット211にもコンクリートCが充填され、このコンクリートCと梁本体41の端面とが当接する。
また、鋼棒42は梁4の端部に固定するものに限らず、鋼棒42を梁本体41の梁軸方向の全長に亘って埋設し、鋼棒42の両端部を梁本体41の梁軸方向の両端部のそれぞれから突出させてもよい。鋼棒42を梁本体41の全長に配置すれば、梁4の剛性や耐力の向上が見込め、ロングスパンの梁に対応できる。梁4を鉄筋コンクリート造とする場合は、その主筋を鋼棒42として用いることができる。
また、鋼棒42のコンクリートC内の端部をフック状に折り曲げても良く、コンクリートCの幅内では鋼棒42の定着長さが不足する場合も、フックを設けることで定着長さを確保できる。
また本実施形態では梁本体41に鋼棒42を埋設しているが、梁本体41に埋設する鋼材はこれに限らない。以下、別の鋼材を用いる例を、第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる構成について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
[第2の実施形態]
図8(a)は、第2の実施形態の接合構造1aに関し、柱2と梁4aの鉛直方向の断面を図2(a)と同様に示したものである。また図8(b)は、図8(a)の線g-gに沿った梁4aの鉛直方向の断面を示したものである。
図8(a)は、第2の実施形態の接合構造1aに関し、柱2と梁4aの鉛直方向の断面を図2(a)と同様に示したものである。また図8(b)は、図8(a)の線g-gに沿った梁4aの鉛直方向の断面を示したものである。
接合構造1aは、梁本体41に固定される鋼材がH形鋼42aである点で第1の実施形態の接合構造1と異なる。H形鋼42aは、一方の端部が梁本体41の内部に埋設、固定され、他方の端部が梁本体41の柱2側の端部から水平方向に突出する。
梁本体41は、複数の木質板411を積層、接着して形成された分割部41a、41b同士を組み合わせて形成される。これらの分割部41a、41bは、梁本体41を梁軸方向と平行な鉛直面で分割したものであり、その対向面に溝412a、412bがそれぞれ形成される。これらの溝412a、412bによってH形鋼42aの一方の端部を挟み込むように分割部41a、41bを組み合わせ、溝412a、412bによって形成された空間に接着材等の充填材413を充填することで、H形鋼42aの一方の端部が梁本体41に固定される。
接合構造1aを構築するには、前記と同様、例えば図9(a)に示すように、外郭木材21と主筋22、およびスリット211の下方の高さまでのコンクリートCが一体化されたプレキャスト柱を現場で建て込んだ後、矢印hに示すように梁4aをプレキャスト柱の上から落とし込み、梁本体41の柱2側の端部を外郭木材21のスリット211に通し、H形鋼42aの突出部分を柱2の上端部に挿入するように配置する。
図9(b)は、左右一対の梁4aのそれぞれを、外郭木材21の対向する位置に設けられたスリット211に通して設置した後の状態である。左右の梁4aのH形鋼42aの他方の端部同士は向かい合って配置され、これらのH形鋼42aのウェブ同士が柱2の内部でボルト接合(高力ボルト接合)により一体化される。図中符号Pはボルト接合に用いるスプライスプレートであり、符号Fは同じくボルト接合に用いるボルト等の締結具である。
なお、両H形鋼42aの端部同士が当接する必要は無く、設計値としてある程度の隙間を想定しておくことで現場での施工誤差を吸収できる。また構造性能的に必要がない場合は、H形鋼42aのボルト接合を省略してもよい。
この後、柱2の上端部のコンクリートCを外郭木材21の上端まで打設、充填し、H形鋼42aの端部をコンクリートCに埋設することで、図8(a)等に示すように、柱2と梁4aの接合構造1aが構築される。
第2の実施形態においても、柱2をコンクリートCと木の合成構造とし、梁4aを外郭木材21のスリット211に通して配置し、柱2の内部のコンクリートCに埋設することで、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また第2の実施形態では、鋼材としてH形鋼42aを用いるため、剛性や耐力などの構造性能の点で第1の実施形態の接合構造1よりも有利であり、H形鋼42aのウェブは梁4aの端部のせん断補強を兼ねることもできる。一方、鉄筋などの鋼棒42を用いる第1の実施形態では、梁4を容易に製作できる利点があり、鋼棒42同士を接合することも必要ではない。
なお、H形鋼は梁本体41に固定する鋼材としてではなく、梁そのものとして用いることも可能である。この場合も、H形鋼による鉄骨梁を前記のプレキャスト柱の上から落とし込み、図10(a)に示すように、左右の鉄骨梁4bの柱2側の端部を外郭木材21のスリット211に通して柱2の上端部に挿入する。そして、左右の鉄骨梁4bの端部同士を突き合わせ、そのウェブ同士をボルト接合する。この後、柱2の上端部のコンクリートCを外郭木材21の上端まで打設、充填すればよい。
また長尺の鉄骨梁4bを複数スパンに亘って架け渡す場合などでは、図10(b)に示すように、H形鋼による鉄骨梁4bを通し梁とし、プレキャスト柱の上から落とし込んで柱2の上端部に挿入することも可能である。この後、上記と同様、柱2の上端部のコンクリートCを外郭木材21の上端まで打設、充填すればよい。
このように、梁は構造性能に優れた鉄骨梁4bとすることもできる。一方、前記した図2や図8の例では、梁4、4aを軽量且つ高強度であり意匠面にも優れた木部材とでき、いずれの場合も、本発明の接合構造により梁を柱に確実に固定できる。
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1、1a:接合構造
2:柱
4、4a、40:梁
4b:鉄骨梁
21:外郭木材
41:梁本体
42:鋼棒
42a:H形鋼
211:スリット
411:木質板
412、412a、412b:溝
413:充填材
C:コンクリート
2:柱
4、4a、40:梁
4b:鉄骨梁
21:外郭木材
41:梁本体
42:鋼棒
42a:H形鋼
211:スリット
411:木質板
412、412a、412b:溝
413:充填材
C:コンクリート
Claims (6)
- 柱と梁の接合構造であって、
前記柱は、外周部に位置する外郭木材の内側にコンクリートを充填して構成され、
前記梁は、前記外郭木材に設けられた、上方に開放されたスリットに通され、前記柱の上端部に挿入されて前記コンクリートに埋設されたことを特徴とする接合構造。 - 前記梁は、
木質材による梁本体と、
前記梁本体の内部に一方の端部が固定され、他方の端部が前記梁本体から突出する鋼材と、
を有し、
前記鋼材の他方の端部が前記柱の内部の前記コンクリートに埋設されたことを特徴とする請求項1記載の接合構造。 - 前記梁は、H形鋼による鉄骨梁であることを特徴とする請求項1記載の接合構造。
- 前記鋼材は鋼棒であり、
前記梁本体は、複数の木質板を積層して形成され、
隣り合う前記木質板に加工された溝を組み合わせて形成された空間に、前記鋼材の一方の端部が配置され、充填材が充填されたことを特徴とする請求項2記載の接合構造。 - 前記鋼材はH形鋼であり、
一対の前記梁が、前記外郭木材の対向する位置に設けられた前記スリットのそれぞれを通るように配置され、
それぞれの前記梁の前記鋼材の他方の端部同士が、前記柱の内部で向かい合って配置され、前記柱の内部の前記コンクリートに埋設されたことを特徴とする請求項2記載の接合構造。 - 柱と梁の接合構造の構築方法であって、
前記柱は、外周部に位置する外郭木材の内側にコンクリートを充填して構成されるものであり、
前記柱の上端部の前記コンクリートを充填する前に、前記梁を上から落とし込んで前記柱の上端部に挿入するように配置する工程と、
前記柱の上端部の前記コンクリートを充填し、当該コンクリートに前記梁を埋設する工程と、
を具備することを特徴とする接合構造の構築方法。
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---|---|---|---|
JP2022127186A JP2024024391A (ja) | 2022-08-09 | 2022-08-09 | 接合構造および接合構造の構築方法 |
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Cited By (1)
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JP7526339B1 (ja) | 2023-11-27 | 2024-07-31 | 鹿島建設株式会社 | 接合構造および接合構造の構築方法 |
-
2022
- 2022-08-09 JP JP2022127186A patent/JP2024024391A/ja active Pending
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