JP2021147816A - 耐震壁 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、鉄筋コンクリート製の架構内に木質壁が設置された耐震構造が示されている。木質壁は、壁側凹部および壁側凸部が架構側凸部および架構側凹部に係合することで、架構に接合されている。
特許文献2には、パネル枠体と、このパネル枠体に取り付けられたパネル体と、パネル体との間に隙間を空けてパネル枠体に取り付けられた壁面パネルと、を備える壁面パネルが示されている。パネル体は、間伐材を用いた多数のパネル板材をそれぞれ高さ方向に対して傾けた状態で組み合わせたものである。
第1の発明の耐震壁(例えば、後述の耐震壁1、1A、1B、1C)は、柱梁架構(例えば、後述の柱梁架構10)の構面内に設けられる耐震壁であって、長さ方向を繊維方向とする木質板(例えば、後述の木質板21A、21B、ラミナ21C、21D)が複数並んで配置されて形成された木質壁部(例えば、後述の木質壁部20)と、前記木質壁部の周囲と前記柱梁架構との隙間を前記木質板よりも高強度の充填材で閉塞して形成された閉塞部(例えば、後述の閉塞部30)と、を備え、前記木質板の角度は、前記柱梁架構の対角線の角度から水平に対して略45°までの範囲であることを特徴とする。
木材は、異方性材料であり、針葉樹(例えばスギ)の繊維方向、半径方向、接線方向のヤング係数は、概ね100:10:5である。したがって、繊維方向に直応力が作用するように使用するのが合理的である。また、板目面内のせん断弾性係数は、繊維方向のヤング率の約1/15であり、板目面内のせん断強度は、繊維方向の圧縮強度の約1/10であるため、板目面内方向にせん断力が作用するように使用することは、力学的に合理的ではない。
また、各層の互いに交差する方向に延びる木質板同士を、接着剤、ボルト、ビス、ダボのうち少なくとも1つを用いて、所定間隔おきに互いに固定した。上述のように、柱梁架構に水平方向の外荷重が加わって、所定層の木質板が圧縮力を負担している場合、残りの層の木質板が引張力を負担することになるので、引張力を負担する木質板が、圧縮力を負担する木質板の面外座屈を補剛することになり、圧縮力を負担する木質板の面外座屈を防止できる。また、このとき、圧縮力を負担する木質板の座屈長さは、引張力を負担する木質板に固定される間隔となる。
この発明によれば、木質壁部の側面に沿って鉄筋コンクリート壁部を設けたので、鉄筋コンクリート壁部の強度に木質壁部の強度が累加されるから、木質壁部を既存の鉄筋コンクリート耐震壁の補強構造として利用可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る耐震壁1の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。
耐震壁1は、矩形枠状の柱梁架構10の構面内に設けられている。この耐震壁1は、矩形状の木質壁部20と、木質壁部20の周囲と柱梁架構10との隙間を閉塞して形成された矩形枠状の閉塞部30と、を備える。
柱梁架構10は、一対の鉄筋コンクリート柱11と、これら鉄筋コンクリート柱11同士を連結する鉄筋コンクリート梁12と、を備える。
第1層20Aは、水平に対して所定角度αで延びる木質板21Aを複数並べて形成されている。第2層20Bは、水平に対して所定角度βで延びる木質板21B(図1(a)中破線で示す)を複数並べて形成されている。具体的には、木質板21Aの長さ方向の角度αは、図1(a)中右下と左上とを結ぶ対角線の角度であり、ここでは、水平に対して略30°である。木質板21Bの長さ方向の角度βは、図1(a)中左下と右上とを結ぶ対角線の角度であり、ここでは、水平に対して略30°である。これら木質板21A、21Bは、互いに交差する方向に延びている。
木質板21A、21Bは、長さ方向を繊維方向とする板材であり、木を繊維方向に切り出したひき板、あるいは、ひき板を繊維方向が平行になるように重ねて接着した集成材である。
第1層20Aの木質板21Aと第2層20Bの木質板21Bとは、所定間隔おきにボルト22で互いに固定されている。なお、これに限らず、木質板21Aと木質板21Bとを、接着剤、ビス、ダボのいずれかを用いて互いに固定してもよいし、接着剤、ボルト、ビス、ダボのうち2種類以上を用いて互いに固定してもよい。
木質板21A、21Bの幅寸法W1は、例えば400mmである。また、各木質板21A、21Bの両端部は、柱梁架構10に略平行となるように切断加工されており、閉塞部30の木質壁部20側の面は平滑な平面となっている。
以下、従来の耐震壁および本願発明の耐震壁について、せん断剛性およびせん断耐力を求めて比較した。
従来の耐震壁は、例えばCLTを用いて木質板の延出方向(繊維方向)を縦横方向とする。これに対し、本願発明の耐震壁は、例えばCLTを用いて木質板の角度(繊維方向)を水平に対して略45°とする。CLTとは、後述のように、ひき板である木質板としてのラミナを、繊維方向が直交するように複数層重ねて接着したものである。
従来の耐震壁では、繊維方向が縦横方向となるため、せん断に対して全断面有効とし、本願発明の耐震壁では、繊維方向が水平に対して略45°方向となるため、繊維方向に直応力が作用するラミナのみを有効とし、せん断に対して全断面の1/2を有効とする。また、柱梁架構を剛体とし、節点はピン接合とする。すなわち、柱梁架構は地震力を負担せず、耐震壁の反力のみ負担するものとする。
K1=Q/Δ=(τ×t×W)/(γ×H)=Go×t×W/H
=Go×t=t・Eo/15 ・・・(1)
ここで、Qはせん断力、Δは水平変位、τはせん断応力度、γはせん断ひずみ度、tは壁厚、Wは壁幅,Hは壁高さである。
また、従来の耐震壁のせん断耐力Qu1は、以下の式(2)で表わされる。
Qu1=Fs×t×W=0.1・Fo・t・W ・・・(2)
また、本願発明の耐震壁のせん断剛性K2は、以下の式(3)で表わされる。
K2=Q/Δ=(σ×t/2×W×sin45°)/(ε×H/sin45°)
=t・Eo/4
=15/4×K1=3.75×K1 ・・・(3)
本願発明の耐震壁のせん断耐力Qu2は、以下の式(4)で表わされる。
Qu2=Fo×t/2×W×sin45°=Fo×t/2×W×sin45°
=0.35・Fo・t・W
=3.5×Qu1 ・・・(4)
(1)長さ方向を繊維方向とする木質板21A、21Bを対角線の角度α、βで複数並べた。地震などにより柱梁架構10に水平方向の外荷重(図1(a)中矢印で示す)が加わると、柱梁架構10の構面内には、対角線方向に引張力あるいは圧縮力が作用する。木質板21A、21Bは繊維方向のヤング率および強度が高いため、この引張力あるいは圧縮力に対して、木質板21A、21Bが十分に抵抗するから、優れた耐震性能を発揮できる。
図2は、本発明の第2実施形態に係る耐震壁1Aの正面図である。
本実施形態では、木質板21A、21Bの幅寸法W2が木質板21A、21Bの幅寸法W1よりも狭い点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、本実施形態では、木質板21の幅寸法W2は、例えば200mmである。また、第1層20Aの木質板21Aと第2層20Bの木質板21Bとは、所定間隔おきに接着剤で互いに固定されている。また、各木質板21A、21Bの両端部は、柱梁架構10に略平行となるように切断加工されておらず、閉塞部30の木質壁部20側の面には、凹凸が形成されている。具体的には、本実施形態における木質板21A、21Bは、丸太を矩形板状に切断加工したものである。
本実施形態によれば、上述の(1)〜(3)と同様の効果がある。
図3は、本発明の第3実施形態に係る耐震壁1Bの縦断面図である。
本実施形態では、木質壁部20の一側面に沿って鉄筋コンクリート造の鉄筋コンクリート壁部40をさらに備える点が、第1実施形態と異なる。
本実施形態によれば、上述の(1)〜(3)に加えて、以下のような効果がある。
(4)木質壁部20の一側面に沿って鉄筋コンクリート壁部40を設けたので、鉄筋コンクリート壁部40の強度に木質壁部20の強度が累加されるから、木質壁部20を既存の鉄筋コンクリート耐震壁の補強構造として利用可能となる。
図4は、本発明の第4実施形態に係る耐震壁1Cの正面図である。図5は、耐震壁1Cを構成するCLT50の板取りの一例を示す図である。
本実施形態では、耐震壁1Cの木質壁部20をCLT50で構成した点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、図5に示すように、1枚の矩形状のCLT50を用意する。このCLT50は、ひき板である木質板としてのラミナ21C、21Dを、繊維方向が直交するようにn(nは自然数)層重ねて接着したものである。偶数層のラミナ21Cは、繊維方向が図5中水平方向となっているが、奇数層のラミナ21D(図5中破線で示す)は、偶数層のラミナ21Cと繊維方向が直交しているため、繊維方向が図5中上下方向となっている。
すると、偶数層のラミナ21Cは、繊維方向が図4中右下と左上とを結ぶ方向(水平に対して略45°)に配置され、奇数層のラミナ21Dは、繊維方向が図4中左下と右上とを結ぶ方向(水平に対して略45°)に配置される。
本実施形態によれば、上述の(1)〜(3)と同様の効果がある。
例えば、上述の第1〜4形態では、木質壁部20の全面に亘って、一定方向に延びる木質板21A、21Bを並べたが、これに限らず、図6に示すように、木質壁部20の左側半分を、図6中左下と右上とを結ぶ対角線の角度で延びる木質板21Eを複数並べて形成し、木質壁部20の右側半分を、図6中右下と左上とを結ぶ対角線の角度で延びる木質板21Fを複数並べて形成してもよい。
また、上述の第1〜3実施形態では、木質壁部20を2層の木質板21A、21Bで構成したが、これに限らず、木質壁部を1層の木質板のみで構成してもよいし、耐震壁に必要な耐力や剛性を確保するために、3層以上の木質板で構成してもよい。
また、上述の第3実施形態では、鉄筋コンクリート壁部40の一側面に木質壁部20を設けたが、これに限らず、鉄筋コンクリート壁部40の両側面に木質壁部を設けて一体化させてもよい。
また、上述の第1〜3実施形態では、木質板21A、21Bを、柱梁架構10の対角線の角度α、βとしたが、これに限らず、第4実施形態に示すように、水平に対して略45°としてもよいし、角度α、βから略45°までの範囲であればよい。
10…柱梁架構 11…鉄筋コンクリート柱 12…鉄筋コンクリート梁
13…アンカー材
20…木質壁部 20A…第1層 20B…第2層
21A…第1層の木質板 21B…第2層の木質板
21C…偶数層のラミナ(木質板) 21D…奇数層のラミナ(木質板)
21E…左側半分の木質板 21F…右側半分の木質板
22…ボルト 30…閉塞部 40…鉄筋コンクリート壁部 50…CLT
Claims (3)
- 柱梁架構の構面内に設けられる耐震壁であって、
長さ方向を繊維方向とする木質板が複数並んで配置されて形成された木質壁部と、
前記木質壁部の周囲と前記柱梁架構との隙間を前記木質板よりも高強度の充填材で閉塞して形成された閉塞部と、を備え、
前記木質板の角度は、前記柱梁架構の対角線の角度から水平に対して略45°までの範囲であることを特徴とする耐震壁。 - 前記木質板は、複数層重ねて配置され、
各層の木質板同士は、互いに交差する方向に延びており、接着剤、ボルト、ビス、ダボのうち少なくとも1つを用いて、所定間隔おきに互いに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の耐震壁。 - 前記木質壁部の側面に沿って設けられた鉄筋コンクリート壁部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の耐震壁。
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