JP4332842B2 - 脈動式ダイヤフラム燃料ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジン運転に伴ってクランクケース内や吸気管内に発生する脈動圧力により駆動されてエンジンに供給するための燃料を輸送する脈動式ダイヤフラム燃料ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2サイクルまたは4サイクルの小形ガソリンエンジンに供給する燃料の輸送手段として、構造が簡単であるとともに機械的損失を伴わずに駆動できる、という利点を有する脈動式ダイヤフラム燃料ポンプが広く使用されている。
【0003】
図1は従来から知られており、且つ本発明が適用される脈動式ダイヤフラム燃料ポンプの一例を示す縦断面図であって、ポンプ本体1の一つの面にポンプダイヤフラム2とダイヤフラムカバー体3とが重ねられており、ポンプダイヤフラム2を挟んで設けられたポンプ本体1側の空間およびダイヤフラムカバー体3側の空間はポンプ室4および脈圧室5をそれぞれ形成している。脈圧室5はエンジンのクランクケースまたは吸気管に接続される脈圧導入口6を有している。
【0004】
ポンプ本体1のもう一つの面にはパルセータダイヤフラム7とキャップ体8とが重ねられており、ポンプ本体1に設けられてパルセータダイヤフラム7で覆われた二つのくぼみは吸込室9および吐出室10をそれぞれ形成し、キャップ体8の内部は空気室11を形成している。また、ポンプ本体1に形成されてポンプ室4と吸込室9、吐出室10とを区画している仕切壁12には逆止弁構造の吸込弁13および吐出弁14が設置されている。
【0005】
エンジンの運転に伴ってクランクケース内や吸気管内に発生する脈動圧力、一般にはクランクケース内の脈動圧力が脈圧室5に導入されてポンプダイヤフラム2を往復変位させ、図示しない燃料タンクの燃料を燃料入口15から吸込室9、吸込弁13、ポンプ室4、吐出弁14、吐出室10を経て燃料出口16へと送り、図示しない気化器によりエンジンに供給する。
【0006】
前記ポンプの構造部品であるポンプ本体1、ダイヤフラムカバー体3およびキャップ体8は一般に金属で作られるが、エンジン熱の影響でベーパロックを生じさせることがあるという心配を避けるため熱可塑性樹脂で作ることも知られている。
【0007】
一方、前記のような脈動式ダイヤフラム燃料ポンプにおいて、ポンプ室4、吸込室9および吐出室10の実容積を小さくすると、エンジン始動時の燃料吸込力と燃料吐出応答性とが向上し、良好に始動できることが確認されている。実容積を小さくするためには、ポンプダイヤフラム2に所要の変位量をもたせるため小径化に限度があることから、ポンプ室4、吸込室9、吐出室10を低い高さとすることが必要である。
【0008】
図8は脈動式または機械式のダイヤフラム燃料ポンプに設置されている従来の吸込弁を示す縦断面図である。(A)は吸込室51とポンプ室52とを区画する金属板製の仕切壁53に立上げ筒54を成形して保持枠55と弁座56とを保持させるとともに、平板状の弁体57とコイル状の閉弁ばね58とを弁座56と保持枠55との間に装入したものであって、この吸込弁は実開昭54−165302号公報に記載されている。また、(B)は吸込室51とポンプ室52とを区画する仕切壁59に保持枠60を突設し、平板状の弁体61とコイル状の閉弁ばね62とを仕切壁59と保持枠60との間に装入したものであって、この吸込弁は実開昭54−158121号公報に記載されている。更に、(C)は吸込室51とポンプ室52とを区画する仕切壁63にグロメット64を貫通して円板形の弁体65の中心部を仕切壁63の表面に重ねて固定したものであって、この吸込弁は特開平9−217662号公報に記載されている。
【0009】
吐出弁は弁体のポンプ室に対する開閉方向が吸込弁と反対であるという機能上の差異を有するだけであって構造は同じである。従って、図8(A),(B),(C)の吸込弁(および吐出弁)はいずれも図からも判るように吸込室、ポンプ室、吐出室への突出高さが大きく、これらの収容空間を確保させるために実容積を満足できる小容積とするようにこれらの室の高さを低くすることができない。一方、図8(D)は吸込室51とポンプ室52とを区画する仕切壁66にビス67をねじ込んで円板形の弁体68の中心部を仕切壁66の表面に重ねて固定したものであって、この吸込弁は実開昭48−74309号公報に記載されている。この吸込弁(および吐出弁)は仕切壁66から大きく突出した部分をもたないので、実容積を満足できる小容積とすることが可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ベーパロック発生の心配をなくすためにポンプ本体、ダイヤフラムカバー体、キャップ体を熱可塑性樹脂製としたうえで、エンジン始動性を良好とするためにポンプ室、吸込室、吐出室の実容積を小さいものとする場合、図8(A),(B),(C)のように仕切壁から大きく突出した構造の吸込弁、吐出弁を採用することなく、図8(D)のように大きく突出した部分をもたない吸込弁、吐出弁を使用すると、熱可塑性樹脂製の仕切壁に金属製のビスをねじ込んで弁体の中心を固定したものとなる。
【0011】
しかしながら、熱可塑性樹脂製構造部品に金属製ねじをねじ込むと容易に緩みを生じてしまい、目的部材を強固に且つ安定よく固定できなくなる。固定個所に緩みを生じると、目的部材である弁体が閉弁不良、動作不安定となってエンジン始動時の燃料吸込力、燃料吐出応答性の向上を阻害するばかりか、エンジン運転中の正常なポンプ機能が期待できなくなる、という不都合を生じる。
【0012】
本発明は構造部品を熱可塑性合成樹脂製とした脈動式ダイヤフラム燃料ポンプについて、従来の吸込弁、吐出弁がもっている前述の課題点、即ち大きく突出した部分を有していたり或いは閉弁不良や動作不安定となりやすい、という問題を伴わない吸込弁、吐出弁を具えさせ、ポンプ室、吸込室、吐出室の実容積を小さくしてエンジンの良好な始動性が得られ、しかも正常なポンプ機能を安定して発揮できるものとすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
ポンプ本体およびその両面に重ねられたダイヤフラムカバー体、キャップ体が熱可塑性樹脂で作られており、ポンプ本体に設けられてポンプ室と吸込室、吐出室とを区画した仕切壁に吸込弁および吐出弁が設置されている脈動式ダイヤフラム燃料ポンプがもっている前記課題を解決するために、本発明は吸込弁および吐出弁を円板形の弁体とその周縁部の湾曲動作により開閉させられる弁通孔とを有するものであって、弁体の中心部が仕切壁に溶着した熱可塑性樹脂製のリベット部材の頭と仕切壁とに挟み込まれて固定されているものとした。
【0014】
仕切壁と同じ熱可塑性樹脂で作ったリベット部材を溶着することによって弁体の中心部を固定したことにより、大きく突出した部分をもたないとともに、緩みを生じることなく強固に且つ安定よく固定され、ベーパロック発生の心配がないとともにエンジン始動性が良好であり且つ正常なポンプ機能が維持できるものとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図2乃至図7は図1の吸込弁13についてのそれぞれ異なる実施の形態を示すものであって、吐出弁14についてもこれらと同じ手段が適用される。
【0016】
図2(A),(B)に示した吸込弁は仕切壁12のポンプ室へ向いた面に設けた円形の突起23に中心部を嵌め込んで仕切壁12の表面に重ねた円板形の弁体21と、突起23を中心とする円上に配置して仕切壁12に貫通形成した複数の弁通孔22とを有しており、弁体21の周縁部が両面に作用する圧力差で湾曲して弁通孔22を開閉する。リベット部材25は平形の頭25aと先端を円錐端25cとした軸25bとからなり、突起23の表面に開放して仕切壁12に形成したリベット穴26は奥端に円錐端25cと同一傾斜角度の傾斜段部26aと小径穴26bとを有している。
【0017】
突起23は弁体21の肉厚と同一寸法の高さとされており、軸25bをリベット穴26に嵌め込んで頭25aが突起23および弁体21の表面に重ねられるとともに円錐端25cが傾斜段部26aに重ねられたとき、この状態で超音波溶着によりリベット部材26を仕切壁12に溶着する。本実施の形態では軸25bの円錐端25cに移行する部分および円錐端25cが仕切壁12に溶着され、この軸25b先端部外側周面に形成した溶着部27によってリベット部材25が弁体21の中心部を頭25aと仕切壁12との間に挟み込んで固定している。
【0018】
図3(A),(B)に示した吸込弁における弁体21、弁通孔22は図2に示したものと同じである。本実施の形態におけるリベット部材29は平形の頭29aと先端に円錐部29cおよび小突起29dを有する軸29bとからなり、リベット穴30は突起23の表面に開放して奥端に円錐段30aと小径孔30bとを有している。
【0019】
軸29bをリベット穴30に嵌め込んで頭29aが突起23および弁体21の表面に重ねられるとともに円錐部29cが円錐段30aに重ねられ小突起29dが小径孔30bに嵌入した状態となったとき、リベット部材29を仕切壁12に溶着する。本実施の形態では図2と同様に軸29bの円錐端29cに移行する部分および円錐部29cが仕切壁12に溶着され、この軸29bの先端部外側周面の溶着部31によってリベット部材29が弁体21の中心部を頭29aと仕切壁12との間に挟み込んで固定している。
【0020】
図4(A),(B)に示した吸込弁における弁体21、弁通孔22も図2に示したものと同じである。本実施の形態におけるリベット部材33は平形の頭33aと先端面外側周縁に環突条33cを有する軸33bとからなり、リベット穴34は突起23の表面に開放して奥端に平坦底面34aを有している。
【0021】
軸33bをリベット穴34に嵌め込んで頭33aが突起23および弁体21の表面に重ねられるとともに環突条33cが底面34aに接した状態となったとき、リベット部材33を仕切壁12に溶着する。本実施の形態では環突条33cが溶着ビードとして先端面を底面34aに溶着しており、この軸33bの先端面に形成した溶着部35によってリベット部材33が弁体21の中心部を頭33aと仕切壁12との間に挟み込んで固定している。
【0022】
図5(A),(B)に示した吸込弁は中心に取付孔21aを有し仕切壁12の表面に重ねた円板形の弁体21と、取付孔21aを中心とする円上に配置して仕切壁12に貫通形成した複数の弁通孔22とを有している。本実施の形態におけるリベット部材37は平形の頭37bと先端面に環突条37cを有する軸37bとからなり、リベット穴38は取付孔21aと同心同径であって奥端は平坦底面38aとされている。
【0023】
軸37bを取付孔21aを通してリベット穴38に嵌め込んで頭37aが弁体21の表面に重ねられるとともに環突条37cが底面38aに接した状態となったとき、リベット部材37を仕切壁12に溶着する。本実施の形態では環突条37cが溶着ビードとして軸37bの先端面を底面38aに溶着しており、この溶着部39によってリベット部材37が弁体21の中心部を頭37aと仕切壁12との間に挟み込んで固定している。
【0024】
図6(A),(B)に示した吸込弁は仕切壁12に設けた円形の突起24に中心部を嵌め込んで仕切壁12の表面に重ねた円板形の弁体21と、前記実施の形態と同様の弁通孔22とを有しており、突起24は弁体21の肉厚よりも大きい高さに作られ弁体21の表面から突出している。本実施の形態におけるリベット部材41は平形の頭41aと先端を円錐端41cとした軸41bおよび頭41aの周縁に垂設した押え環突条41dとからなり、リベット穴42は突起24の表面に開放して奥端に傾斜段部42aと小径穴42bとを有している。
【0025】
軸41bをリベット穴42に嵌め込んで頭41aが突起24の表面に重ねられ押え環突条41dが弁体21の表面に重ねられるとともに円錐端41cが傾斜段部42aに重ねられた状態となったとき、リベット部材41を仕切壁12に溶着する。本実施の形態では図2に示したものと同様に、軸41bの円錐端41cに移行する部分および円錐端41cが仕切壁12に溶着され、この軸41bの先端部外側周面の溶着部43によってリベット部材41が弁体21の中心部を頭41aの押え環突条41dと仕切壁12との間に挟み込んで固定している。
【0026】
図7(A),(B)に示した吸込弁は仕切壁12に設けた突起45bに中心部を嵌め込んで仕切壁12の表面に重ねた円板形の弁体21と、前記実施の形態と同様の弁通孔22とを有しており、突起45bは弁体21の肉厚と等しいかまたはこれよりも少し小さい高さに作られている。本実施の形態におけるリベット部材45は一つの表面に円錐状突起45cを有する平形の頭45aと、これと別体に仕切壁12に設けられて軸として働く突起45bとからなり、仕切壁12のリベット穴を不要としている。
【0027】
弁体21の中心部を突起45bに嵌め込んで頭45aを突起45bに重ね溶着することにより、リベット部材45が仕切壁12に溶着されたものと同じこととなる。本実施の形態では円錐状突起45cが溶着ビードとして頭45aの表面を突起45bの頂面に溶着しており、この溶着部46によってリベット部材45が弁体21の中心部を頭45aと仕切壁12との間に挟み込んで固定している。
【0028】
前記各実施の形態におけるリベット部材25,29,33,37,41,45は仕切壁12と同じ熱可塑性樹脂で作られるが、同一種類の樹脂で作るときわめて強固な溶着部27,31,35,39,43,46が得られ、周縁部が反覆して湾曲する弁体21の中心部を安定よく固定させておくことができる。また、弁体21の表面からリベット部材25,29,33,37,41,45の頭25a,29a,33a,37a,41a,45aが突出するだけであるので、ポンプ室、吸込室、吐出室の高さを充分に低いものとしてそれらの実容積を小さくすることができる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると構造部品を熱可塑性樹脂で作ってベーパロックを発生させる熱的悪影響を受けにくいものとしたうえで、機械部品である吸込弁および吐出弁を仕切壁から大きく突出しない構造としたことにより、ポンプ室、吸込室、吐出室の実容積を小さくしてエンジン始動性を良好なものとすることができ、しかも吸込弁および吐出弁に適切な開閉動作を安定よく行なわせて正常なポンプ機能を維持することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される脈動式ダイヤフラム燃料ポンプの一例を示す縦断面図。
【図2】本発明の第一の実施の形態を示す縦断面部分図。
【図3】本発明の第二の実施の形態を示す縦断面部分図。
【図4】本発明の第三の実施の形態を示す縦断面部分図。
【図5】本発明の第四の実施の形態を示す縦断面部分図。
【図6】本発明の第五の実施の形態を示す縦断面部分図。
【図7】本発明の第六の実施の形態を示す縦断面部分図。
【図8】吸込弁の従来例を示す縦断面図。
【符号の説明】
1 ポンプ本体、3 ダイヤフラムカバー体、4 ポンプ室、8キャップ体、9 吸込室、10 吐出室、12 仕切壁、13 吸込弁、14 吐出弁
、21 弁体、22 弁通孔、25,29,33,37,41,45 リベット部材、27,31,35,39,43,46 溶着部
Claims (3)
- ポンプ本体およびその両面に重ねられたダイヤフラムカバー体、キャップ体が熱可塑性樹脂で作られており、前記ポンプ本体に設けられてポンプ室と吸込室、吐出室とを区画した仕切壁に吸込弁および吐出弁が設置されており、前記吸込弁および吐出弁が円板形の弁体とその周縁部の湾曲動作により開閉させられる弁通孔とを有するものであり、前記弁体は中心部が前記仕切壁に溶着した熱可塑性樹脂製のリベット部材の頭と前記仕切壁とに挟み込まれて固定されている脈動式ダイヤフラム燃料ポンプにおいて、前記リベット部材が平形の頭と軸とを有し、前記仕切壁に設けたリベット穴に前記軸が嵌め込まれその先端部外側周面が溶着することによって前記頭と仕切壁との間に前記弁体の中心部を嵌め込んで固定していることを特徴とする脈動式ダイヤフラム燃料ポンプ。
- ポンプ本体およびその両面に重ねられたダイヤフラムカバー体、キャップ体が熱可塑性樹脂で作られており、前記ポンプ本体に設けられてポンプ室と吸込室、吐出室とを区画した仕切壁に吸込弁および吐出弁が設置されており、前記吸込弁および吐出弁が円板形の弁体とその周縁部の湾曲動作により開閉させられる弁通孔とを有するものであり、前記弁体は中心部が前記仕切壁に溶着した熱可塑性樹脂製のリベット部材の頭と前記仕切壁とに挟み込まれて固定されている脈動式ダイヤフラム燃料ポンプにおいて、前記リベット部材が平形の頭と軸とを有し、前記仕切壁に設けたリベット穴に前記軸が嵌め込まれその先端面が溶着することによって前記頭と仕切壁との間に前記弁体の中心部を挟み込んで固定していることを特徴とする脈動式ダイヤフラム燃料ポンプ。
- ポンプ本体およびその両面に重ねられたダイヤフラムカバー体、キャップ体が熱可塑性樹脂で作られており、前記ポンプ本体に設けられてポンプ室と吸込室、吐出室とを区画した仕切壁に吸込弁および吐出弁が設置されており、前記吸込弁および吐出弁が円板形の弁体とその周縁部の湾曲動作により開閉させられる弁通孔とを有するものであり、前記弁体は中心部が前記仕切壁に溶着した熱可塑性樹脂製のリベット部材の頭と前記仕切壁とに挟み込まれて固定されている脈動式ダイヤフラム燃料ポンプにおいて、前記リベット部材が前記仕切部材に設けられた軸である突起およびこれと別体の平形の頭からなり、前記弁体の中心部が前記突起に嵌め込まれるとともに前記頭が前記突起に溶着されることによって前記頭と仕切壁との間に前記弁体の中心部を挟み込んで固定していることを特徴とする脈動式ダイヤフラム燃料ポンプ。
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