JP4331415B2 - リチウム二次電池の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマー電解質を有するリチウム二次電池製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
小型軽量化及び高性能化が進んでいる携帯電子機器のニーズに応えるため、リチウム二次電池の更なる薄型化や形状自由度の向上が求められている。
そこで最近では、リチウム二次電池の電解質を従来の有機電解液からポリマー電解質に置き換えることによって、薄型化や形状自由度の向上を図ったリチウム二次電池が提供されている。
【0003】
ポリマー電解質としては、例えば、有機電解液が保持されたゲル電解質を、多孔質ポリオレフィン膜に塗布したものが提案されている。このポリマー電解質によれば、多孔質ポリオレフィン膜の存在によって金属リチウムのデンドライト成長による内部ショートを防止することが可能とされている。
【0004】
しかし、リチウム二次電池への上記ポリマー電解質の採用は、多孔質ポリオレフィン膜が高価格であるために、リチウム二次電池のコスト増を招くおそれがある。
そこで最近では、多孔質ポリオレフィン膜よりも安価な不織布に上記のゲル電解質を塗布して構成したポリマー電解質が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、不織布を備えたポリマー電解質をリチウム二次電池に適用するには、イオン伝導度の関係からポリマー電解質の厚さを30μm以下程度にする必要があるが、不織布を構成する繊維の径が十数μm程度であることに鑑みると、不織布を薄くすることにより繊維同士の重なりが少なくなって空隙部分が多く発生することが懸念され、デンドライト成長による内部ショートの発生を防止できなくなるおそれがあった。従って、ポリマー電解質の構成材として不織布を用いることは困難な状況であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、イオン伝導性に優れると同時に内部ショートが起きることのないポリマー電解質を具備してなるリチウム二次電池製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のリチウム二次電池は、リチウムを吸蔵・放出する正極及び負極と、該正極及び該負極に挟まれたポリマー電解質とを具備してなり、前記ポリマー電解質は、有機電解液によるゲル化が容易なゲル化繊維と非ゲル化繊維とを少なくとも有する不織布に前記有機電解液が含浸されてなり、前記ゲル化繊維の一部が前記ポリマー電解質と連続した状態で前記正極及び前記負極に充填されることにより前記正極及び負極と前記ポリマー電解質とが接着され、かつ前記ゲル化繊維の残部及び前記非ゲル化繊維が前記正極と前記負極の間に位置していることを特徴とする。
【0008】
係るリチウム二次電池によれば、ゲル化繊維の一部が正極及び負極に含浸され、ゲル化繊維の一部を除いた残部と非ゲル化繊維とが正、負極の間に残存するので、正、負極に充填されたゲル化繊維の分だけポリマー電解質自体を薄くすることができ、正、負極間のイオン伝導度を高めることが可能になる。
また、ゲル化繊維の一部が正、負極に充填されることにより、正、負極の間におけるポリマー電解質に占める非ゲル化繊維の割合が充填される前に比べて高くなるので、非ゲル化繊維の充填密度が相対的に向上し、金属リチウムのデンドライト成長によるショートを防止することが可能になる。
更に、ゲル化繊維の一部がポリマー電解質と連続した状態で正、負極に充填されるため、正、負極とポリマー電解質との界面における界面抵抗を低減することができ、これによりリチウム二次電池自体の内部抵抗が低減されて充放電容量を向上することが可能になる。
【0009】
また本発明のリチウム二次電池は、先に記載のリチウム二次電池であって、前記ゲル化繊維の一部及び残部が、前記有機電解液を含んで膨潤することによりゲル化するものであることを特徴とする。
【0010】
係るリチウム二次電池によれば、有機電解液によってゲル化繊維の一部及び残部が膨潤しているので、正、負極及びポリマー電解質の全体に有機電解液を行き渡らせることができ、リチウム二次電池自体の内部抵抗が低減されて充放電容量を向上することが可能になる。
また、ゲル化繊維の一部及び残部が有機電解液により膨潤してゲル化することにより、ポリマー電解質自体のリチウムイオンの伝導度を向上させることが可能になる。
【0011】
また本発明のリチウム二次電池は、先に記載のリチウム二次電池であって、前記ゲル化繊維がポリアクリロニトリルを少なくとも含むことを特徴とする。
【0012】
係るリチウム二次電池によれば、ゲル化繊維にポリアクリロニトリルが含まれており、ポリアクリロニトリル中のニトリル基が有機電解液に対して溶解しやすいので、ゲル化繊維自体を容易にゲル化させることが可能になる。
【0013】
また本発明のリチウム二次電池は、先に記載のリチウム二次電池であって、前記ゲル化繊維がアクリロニトリル-アクリル酸メチル共重合体であることを特徴とする。
【0014】
係るリチウム二次電池によれば、ゲル化繊維をアクリロニトリルとアクリル酸メチルによる共重合体で構成するので、アクリロニトリル単独の場合よりもゲル化繊維の結晶性を低下させて有機電解液に対する溶解性を向上させることができ、ゲル化繊維をより一層容易にゲル化させることが可能になる。
【0015】
また本発明のリチウム二次電池は、先に記載のリチウム二次電池であって、前記非ゲル化繊維が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかであることを特徴とする。
【0016】
係るリチウム二次電池によれば、非ゲル化繊維がポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかで構成されるので、有機電解液に対する溶解性を低減することができ、この非ゲル化繊維の存在によってデンドライト成長に伴う正、負極のショートを防止することが可能になる。
【0017】
また本発明のリチウム二次電池は、先に記載のリチウム二次電池であって、前記有機電解液が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンのうちの少なくとも1以上の溶媒を含むことを特徴とする。
【0018】
係るリチウム二次電池によれば、有機電解液が上記の溶媒のうちの少なくとも1以上を含むため、ゲル化繊維をゲル化させる一方で非ゲル化繊維を溶解させることがなく、これによりイオン伝導度を向上させて電池の内部抵抗を低減させると同時に正極と負極とのショートを防止することが可能になる。
【0019】
次に本発明のリチウム二次電池の製造方法は、リチウムを吸蔵・放出する正極及び負極と、該正極及び該負極に挟まれたポリマー電解質とを具備してなるリチウム二次電池の製造方法であり、有機電解液によるゲル化が容易なゲル化繊維と非ゲル化繊維とを少なくとも有する不織布に前記有機電解液を含浸してポリマー電解質を形成し、前記ポリマー電解質の厚さ方向両側に前記正極及び前記負極をそれぞれ配置し、前記ポリマー電解質の厚さ方向両側から応力を印加することにより、前記ポリマー電解質に含まれるゲル化繊維の一部を前記正極及び前記負極に圧入して前記正、負極と前記ポリマー電解質とを接着することを特徴とする。
【0020】
係るリチウム二次電池の製造方法によれば、応力を印加して前記ポリマー電解質に含まれるゲル化繊維の一部を前記正極及び前記負極に圧入するので、ゲル化繊維の一部を除く残部及び非ゲル化繊維が正、負極の間に残存し、正、負極に圧入されたゲル化繊維の分だけポリマー電解質自体を薄くすることができ、正、負極間のイオン伝導度を高くさせて内部抵抗が低いリチウム二次電池を得ることが可能になる。
また、ゲル化繊維の一部を正、負極に圧入することにより、正、負極の間におけるポリマー電解質に占める非ゲル化繊維の割合が圧入前に比べて高くなるので、ポリマー電解質における非ゲル化繊維の充填密度が向上して空隙部分が少なくなり、金属リチウムのデンドライト成長に伴うショートが発生することのないリチウム二次電池を得ることが可能になる。
更に、ゲル化繊維の一部を正、負極に圧入するため、正、負極とポリマー電解質との界面における界面抵抗を低減することができ、内部抵抗が低く、充放電容量に優れたリチウム二次電池を得ることが可能になる。
【0021】
また本発明のリチウム二次電池の製造方法は、先に記載のリチウム二次電池の製造方法であって、前記ゲル化繊維がポリアクリロニトリルを少なくとも含むものであることを特徴とする。
【0022】
係るリチウム二次電池の製造方法によれば、ゲル化繊維にポリアクリロニトリルが含まれており、ポリアクリロニトリル中のニトリル基が有機電解液に対して溶解しやすいので、ゲル化繊維のゲル化を速やかに行うことができ、リチウム二次電池を迅速に製造することが可能になる。
【0023】
また本発明のリチウム二次電池の製造方法は、先に記載のリチウム二次電池の製造方法であって、前記ゲル化繊維がアクリロニトリル-アクリル酸メチル共重合体であることを特徴とする。
【0024】
係るリチウム二次電池の製造方法によれば、ゲル化繊維がアクリロニトリルとアクリル酸メチルによる共重合体からなるため、アクリロニトリル単独の場合よりもゲル化繊維の結晶性を低下させて有機電解液に対する溶解性を向上させることができ、これによりゲル化繊維のゲル化をより一層速やかに行うことができるので、リチウム二次電池を迅速に製造することが可能になる。
【0025】
また本発明のリチウム二次電池の製造方法は、先に記載のリチウム二次電池の製造方法であって、前記非ゲル化繊維が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかであることを特徴とする。
【0026】
係るリチウム二次電池の製造方法によれば、非ゲル化繊維が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかで構成されるので、有機電解液に対する非ゲル化繊維の溶解性を低くし、これにより非ゲル化繊維の強度が低下することがないので、応力印加によってポリマー電解質を破断させることがなく、リチウム二次電池製造の歩留まりを向上させることが可能になる。
【0027】
また本発明のリチウム二次電池の製造方法は、先に記載のリチウム二次電池の製造方法であって、前記有機電解液が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンのうちの少なくとも1以上の溶媒を含むことを特徴とする。
【0028】
係るリチウム二次電池の製造方法によれば、有機電解液が上記の溶媒のうちの少なくとも1以上を含むため、ゲル化繊維を速やかにゲル化させてリチウム二次電池を迅速に製造することが可能になるとともに、非ゲル化繊維が溶解しないために応力印加によってポリマー電解質を破断させることがないため、リチウム二次電池製造の歩留まりの向上が可能になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1に本発明のリチウム二次電池の要部の断面模式図を示す。
図1に示すように、本発明のリチウム二次電池1は、リチウムを吸蔵・放出する正極2及び負極3と、正極2及び負極3に挟まれたポリマー電解質4とを具備して構成されている。正極2は例えばシート状の正極集電体2aに保持され、更に負極3はシート状の負極集電体3aに保持されている。
また、ポリマー電解質4は、有機電解液によるゲル化が容易なゲル化繊維5と非ゲル化繊維6とを少なくとも有する不織布7に、有機電解液が含浸されて構成されている。
【0030】
不織布7は、有機電解液によるゲル化が容易なゲル化繊維5と、有機電解液によってもゲル化しない非ゲル化繊維6とを少なくとも有している。ゲル化繊維5は、一部5aがポリマー電解質4と連続した状態で正極2及び負極3に充填され、更に残部5bが非ゲル化繊維6と共に正極2と負極3の間に位置している。
ゲル化繊維5の一部5aは、有機電解液によりゲル化された状態で正極2及び負極3の空隙に充填される。このようにしてポリマー電解質4に正極2及び負極3が接着される。
【0031】
このゲル化繊維5は、有機電解液を含んで膨潤することによりゲル化すると同時に軟化するものが好ましく、このようなゲル化繊維の例としてポリアクリロニトリルを含むものを例示でき、より具体的にはアクリロニトリル-アクリル酸メチル共重合体を例示できる。
【0032】
アクリロニトリルはニトリル基を有しており、このニトリル基は有機電解液に対する溶解性に優れるため、ゲル化繊維自体が有機電解液を含んで膨潤することにより容易にゲル化する。更に、このゲル化によりゲル化繊維自体が軟化して可塑性が向上する。
また、アクリロニトリルに対してアクリル酸メチルを共重合体の形で添加することにより、ゲル化繊維の結晶性を低下させて有機電解液に対する溶解性を更に向上させ、これによりゲル化繊維をより容易にゲル化させるとともに可塑化させることが可能になる。
【0033】
非ゲル化繊維6は、有機電解液に対する溶解性が低く、ゲル化繊維5の残部5bと共に正、負極2、3の間に位置してポリマー電解質4の基本骨格を構成することによりポリマー電解質4の形状を維持する。このような非ゲル化繊維6として、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかを例示できる。
そして、ゲル化繊維5が有機電解液により膨潤し、残部5bが非ゲル化繊維6の空隙に充填されるため、正極2、負極3間が物理的に隔離された状態になる。これにより、デンドライト成長による正、負極2、3のショートを防止することが可能になる。
【0034】
ゲル化繊維5と非ゲル化繊維6の配合割合は、重量比でゲル化繊維:非ゲル化繊維=5:95〜80:20の範囲とすることが好ましい。非ゲル化繊維に対するゲル化繊維の配合比が前記の範囲より少なくなると、ポリマー電解質4のリチウムイオン伝導度が低下するので好ましくなく、ゲル化繊維の配合比が前記の範囲を越えると、ポリマー電解質4の強度が低下してしまうので好ましくない。
【0035】
次に、ポリマー電解質4に含浸される有機電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンのうちの1以上の溶媒を少なくとも含み、更にリチウム塩の溶質を含むものである。これらの溶媒は、上述のゲル化繊維に対する溶解性に優れる一方で非ゲル化繊維に対する溶解性が低いため、ゲル化繊維5に主として含まれてゲル化繊維5のみをゲル化し、更に可塑化させることが可能である。
【0036】
この有機電解液は、上記の溶媒に対して下記に列挙する溶媒の1種以上を混合し、更にリチウム塩を添加したものであっても良い。
即ち、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル等の溶媒を混合してもよい。
特にこの有機電解液は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートのいずれか1つを必ず含むとともにジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートのいずれか1つを必ず含むことが好ましい。
【0037】
また、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiN(Cx2x+1SO2)(Cy2y 1SO2)(ただしx、yは自然数)、LiCl、LiI等のうちの1種または2種以上のリチウム塩を混合させてなるものを例示できる。
更に有機電解液として上記の他に、ゲル化繊維をゲル化できるものであれば、リチウム二次電池の非水電解液として従来から知られているものを用いることもできる。
【0038】
上記のように、ポリマー電解質4は、ゲル化繊維5が有機電解液を含んでゲル化することによりリチウムイオン伝導体としての機能を発揮し、またゲル化繊維の残部5b及び非ゲル化繊維6が正、負極間を物理的に隔離するセパレータとしての機能を発揮し、更にゲル化繊維5の一部5aが正、負極2、3に充填されることにより正、負極とポリマー電解質4を接着して正極、負極及びポリマー電解質を一体化する機能を発揮する。
【0039】
次に正極2は、正極活物質粉末にポリフッ化ビニリデン等の結着材とカーボンブラック等の導電助材を混合してシート状、扁平円板状等に成形したものを例示できる。上記の正極活物質としては、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、V25、TiS、MoS等のリチウムを吸蔵、放出が可能なものを例示でき、また有機ジスルフィド化合物及び有機ポリスルフィド化合物等も例示できる。
また負極3は、負極活物質粉末に、ポリフッ化ビニリデン等の結着材と、場合によってカーボンブラック等の導電助材を混合してシート状、扁平円板状等に成形したものを例示できる。上記の負極活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等を含むものを例示できる。また金属リチウムも負極3として使用できる。
更に正極集電体2aとしては例えばアルミニウム、チタン等からなる金属箔または金属網等を例示でき、負極集電体3aとしては例えば銅からなる金属箔または金属網等を例示できる。
またこの他に、従来からリチウム二次電池の正極もしくは負極して知られているものを用いることもできる。
【0040】
上記のポリマー電解質4を備えたリチウム二次電池1によれば、ゲル化繊維5の一部5aが正極2及び負極3に充填され、ゲル化繊維の残部5bと非ゲル化繊維6とが正、負極2,3の間に残存するので、正、負極2,3に充填されたゲル化繊維の分だけポリマー電解質4自体を薄くすることができ、正、負極2,3間のイオン伝導度を高めることができる。
また、ゲル化繊維の一部5aが正、負極2,3に充填されることにより、正、負極2,3の間におけるポリマー電解質4に占める非ゲル化繊維5の割合が充填前に比べて高くなるので、非ゲル化繊維6の充填密度が相対的に向上し、金属リチウムのデンドライト成長によるショートを防止することができる。
更に、ゲル化繊維の一部5aがポリマー電解質4と連続した状態で正、負極2,3に充填されるため、正、負極2,3とポリマー電解質4との界面における界面抵抗を低減することができ、これによりリチウム二次電池1自体の内部抵抗が低減して充放電容量を向上することができる。
【0041】
また、有機電解液によってゲル化繊維の一部5a及び残部5bが膨潤しているので、正、負極2,3及びポリマー電解質4の全体に有機電解液を行き渡らせることができ、リチウム二次電池1自体の内部抵抗が低減して充放電容量を向上することができる。
また、ゲル化繊維の一部5a及び残部5bが有機電解液により膨潤してゲル化することにより、ポリマー電解質4自体のリチウムイオンの伝導度を向上させることができる。
【0042】
次に本発明のリチウム二次電池の製造方法を説明する。
この製造方法は、ゲル化繊維と非ゲル化繊維とを少なくとも有する不織布に有機電解液を含浸してポリマー電解質を形成する第1の工程と、ポリマー電解質の厚さ方向両側に正極及び負極をそれぞれ配置し、ポリマー電解質の厚さ方向両側から応力を印加することによりポリマー電解質に含まれるゲル化繊維の一部を前記正極及び前記負極に圧入して前記正、負極と前記ポリマー電解質とを接着する第2の工程とからなる。
【0043】
まず第1の工程では、ゲル化繊維と非ゲル化繊維とを少なくとも有する不織布を準備する。この不織布は例えば、アクリロニトリル-アクリル酸メチル共重合体からなるゲル化繊維と、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかよりなる非ゲル化繊維とを少なくとも有し、必要に応じて各繊維同士を接着する接着剤が含まれて構成されている。
次にこの不織布に有機電解液を含浸させる。有機電解液は、各繊維間の空隙部に保持されるとともに、ゲル化繊維に浸透してゲル化繊維を膨潤させる。ゲル化繊維を構成するアクリロニトリルにはニトリル基が含まれており、有機電解液はこのニトリル基を溶解させ、ゲル化繊維をゲル化させると同時に可塑化させる。このようにしてポリマー電解質を製造する。
【0044】
この様子を図2に示す。図2の符号Aは、有機電解液を含浸させる前の不織布を示しており、実線部分が非ゲル化繊維を示し、破線部分がゲル化繊維を示している。
次に図2の符号Bに示すように有機電解液を不織布に含浸させる。すると、図2の符号Cに示すように、不織布の実線部分(非ゲル化繊維)が残存し、符号Aで示した破線部分(ゲル化繊維)が有機電解液により膨潤されて、実線部分(非ゲル化繊維)の繊維間の空隙に保持される。
【0045】
尚、不織布に有機電解液を含浸させた後に加熱しても良い。加熱によって、短時間でゲル化繊維を有機電解液により膨潤させることができる。加熱温度は、例えば、40〜120℃程度が好ましい。
【0046】
次に第2の工程では、図3の符号Dに示すように、有機電解液を含浸させた不織布からなるポリマー電解質4の厚さ方向両側に、シート状の正極2及び負極3を配置する。ポリマー電解質4には、ゲル化繊維5と非ゲル化繊維6とが含まれている。また正極2及び負極3はそれぞれ、シート状の正極集電体2a及び負極集電体3bによりそれぞれ保持されている。また正極2及び負極3の内部には、それぞれ空隙部2b、3bが形成されている。
次に、ポリマー電解質4の厚さ方向両側から応力を印加する。応力を印加すると、ポリマー電解質4が正極2及び負極3によって圧縮され、これによりゲル化繊維5の一部5aが押し出され、正、負極2,3の空隙部2b、3bにそれぞれ圧入される。また非ゲル化繊維6は正、負極2,3の間に残存し、同時にゲル化繊維5の残部5bも正、負極2,3の間に残存する。
【0047】
ゲル化繊維の一部5aは、ゲル化繊維の残部5b及び非ゲル化繊維と連続した状態で正極2及び負極3の各空隙部2b、3bに充填されることにより、ポリマー電解質4と正極2及び負極3とが接着される。
また、応力印加後のポリマー電解質4の厚さは応力印加前のXからY(X>Y)に減少するが、正、負極2,3間における非ゲル化繊維6の充填密度は応力印加前よりも向上する。
これにより、ポリマー電解質4自体が薄くなって正、負極2,3の間隔を減少させてリチウムのイオン伝導度を向上することができ、更に非ゲル化繊維6の充填密度を向上させてデンドライト成長による正、負極2,3のショートを防止できる。
このようにして、図1に示すようなリチウム二次電池1が得られる。
【0048】
上記のリチウム二次電池の製造方法によれば、応力を印加してゲル化繊維の一部5aを正極2及び負極3に圧入するので、ゲル化繊維の残部5b及び非ゲル化繊維6が正、負極2,3の間に残存し、正、負極2,3に圧入されたゲル化繊維の分だけポリマー電解質4自体を薄くすることができ、正、負極2,3間のイオン伝導度を高くさせて内部抵抗が低いリチウム二次電池1を得ることができる。また、ゲル化繊維の一部5aを正、負極2,3に圧入することにより、正、負極2,3の間におけるポリマー電解質4に占める非ゲル化繊維6の割合が圧入前に比べて高くなるので、ポリマー電解質4における非ゲル化繊維6の充填密度が向上し、金属リチウムのデンドライト成長に伴うショートが発生することのないリチウム二次電池1を得ることができる。
更に、ゲル化繊維の一部5aを正、負極2,3に圧入するため、正、負極2,3とポリマー電解質4との界面における界面抵抗を低減することができ、内部抵抗が低く、充放電容量に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
【0049】
また、ゲル化繊維5にポリアクリロニトリルが含まれており、ポリアクリロニトリル中のニトリル基が有機電解液に対して溶解しやすいので、ゲル化繊維5のゲル化を速やかに行うことができ、リチウム二次電池を迅速に製造できる。
特にゲル化繊維5がアクリロニトリルとアクリル酸メチルによる共重合体であれば、アクリロニトリル単独の場合よりもゲル化繊維5の結晶性を低下させて有機電解液に対する溶解性を向上させることができ、ゲル化繊維5のゲル化をより一層速やかに行うことができ、リチウム二次電池を迅速に製造できる。
【0050】
また、非ゲル化繊維6が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかで構成されるので、有機電解液に対する非ゲル化繊維6の溶解性を低くすることができ、これにより非ゲル化繊維6の強度が低下することがないので、応力印加によってポリマー電解質4を破断させることがなく、リチウム二次電池製造の歩留まりを向上できる。
【0051】
【実施例】
(実験例1:ポリマー電解質の厚さ変化の調査)
ゲル化繊維としてポリアクリロニトリル単体を用い、また非ゲル化繊維としてポリエチレン-ポリプロピレン共重合体を用いて、60〜81.7μmの厚さの試料1〜6の不織布を製造した。
得られた不織布にNMP(N-メチルピロリドン)を含浸させることにより、不織布中のゲル化繊維をゲル化させ、更に不織布の厚さ方向両側から約0.5MPaの応力を印加することにより不織布を厚さ方向に圧縮する処理を行った。そして、処理前後における不織布の厚さの変化率を調査した。結果を表1に示す。表1に示す変化率は処理前の不織布の厚さを100%とした場合の変化率である。
尚、各試料におけるゲル化繊維と非ゲル化繊維の配合比を表1に併せて示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004331415
【0053】
表1から明らかなように、ゲル化繊維の配合割合が高いものほど、処理後の厚さが薄くなっていることがわかる。これは、ゲル化繊維の可塑性がNMPの含浸によって向上するため、ゲル化繊維の配合割合が高くなるに伴って不織布の変形量が大きくなったためと考えられる。
【0054】
(実験例2:ポリマー電解質のイオン伝導度)
ゲル化繊維としてポリアクリロニトリル(PAN)単体を用い、また非ゲル化繊維としてポリエチレン-ポリプロピレン共重合体を用いて、厚さ70μmの不織布を製造した。この不織布に、有機電解液を含浸させ、更に80℃で10分間加熱することにより試料7及び8のポリマー電解質を製造した。
なお、上記不織布における各繊維の配合は、ゲル化繊維:非ゲル化繊維=50重量部:50重量部とし、不織布に含浸させた有機電解液は、体積比でエチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC)=1:1の混合溶媒に1モル/LのLiPF6を溶解させたもの(試料7)、EC:PC=1:1の混合溶媒に1モル/LのLiBF4を溶解させたもの(試料8)とした。また試料7の厚さは51μmであり、試料8の厚さは49μmであった。
【0055】
また試料9として、PANを有機電解液(EC:PC=1:1の混合溶媒に1モル/LのLiPF6を溶解させたもの)で膨潤させてゲルを調製し、このゲルを厚さ30μmの上記の不織布に塗布したものを用意した。尚、PANと有機電解液の配合比は、PAN:有機電解液=10:90とし、ゲルの塗布量は15g/m2とした

【0056】
更に試料10として、ポリアクリロニトリルを有機電解液(EC:PC=1:1の混合溶媒に1モル/LのLiPF6を溶解させたもの)で膨潤させてゲルを調製し、このゲルを厚さ25μmのポリプロピレン多孔質フィルムに塗布したものを用意した。尚、PANと有機電解液の配合比は、PAN:有機電解液=10:90とし、ゲルの塗布量は12g/m2とした。
【0057】
上記の試料7〜10のポリマー電解質を2枚の金属リチウム板で挟み、ポリマー電解質の厚さ方向から5kg/cm2(0.5MPa)の応力を印加した状態で、リチウムのイオン伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
Figure 0004331415
【0059】
表2から明らかなように、試料7〜9のポリマー電解質は、0.3〜0.4mS/cm程度のイオン伝導度を示しており、これは試料10のイオン伝導度の2倍程度であることがわかる。
【0060】
(実験例3:分極測定)
ゲル化繊維としてPANを用い、また非ゲル化繊維としてポリエチレン-ポリプロピレン共重合体を用いて、厚さ70μmの不織布を製造した。この不織布に、有機電解液を含浸させ、更に80℃で10分間加熱することにより厚さ70μmの試料11のポリマー電解質を製造した。
なお、上記不織布における各繊維の配合は、ゲル化繊維:非ゲル化繊維=50重量部:50重量部とし、不織布に含浸させた有機電解液は、EC:PC=1:1(体積比)の混合溶媒に1モル/LのLiPF6を溶解させたものとした。
【0061】
また不織布に有機電解液を含浸して加熱した後に、ポリマー電解質の厚さ方向から応力を印加して厚さを35μmとしたこと以外は、前記の試料11の場合と同様にして試料12のポリマー電解質を製造した。
【0062】
また、PEGDMA(ポリエチレングリコールジメチルアクリレート)5重量部に95重量部の有機電解液(EC:PC=1:1(体積比)の混合溶媒に1モル/LのLiPF6を溶解させたもの)を添加し、更に微量の重合開始剤AIBNを添加して窒素雰囲気中で60℃で24時間反応させることにより、試料13のポリマー電解質(化学ゲル)を製造した。
【0063】
更に、厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンフィルムに有機電解液(EC:PC=1:1の混合溶媒に1モル/LのLiBF4を溶解させたもの)を含浸させたものを試料14とした。
【0064】
上記の試料11〜14のポリマー電解質を2枚の金属リチウム板で挟み、ポリマー電解質の厚さ方向から5kg/cm2(0.5MPa)の応力を印加した状態で、電流密度を0.5〜1mA/cm2の範囲で変化させながら直流分極を測定した。結果を図4に示す。
【0065】
図4に示すように、試料11のポリマー電解質の直流分極が0.09〜0.11Vと比較的高めであるのに対し、この試料11を単に薄くした本発明に係る試料12では直流分極が0.04〜0.055V程度となり、従来のリチウム二次電池のセパレータである試料14とほぼ同等になることがわかる。
また本発明に係る試料12の直流分極は、従来の化学ゲル(試料13)よりも小さくなっていることがわかる。
従って、直流分極が小さな本発明に係る試料12のポリマー電解質をリチウム二次電池に用いることにより、充放電効率を向上させることが可能であることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のリチウム二次電池によれば、ゲル化繊維の一部が正極及び負極に含浸され、ゲル化繊維の一部を除いた残部と非ゲル化繊維とが正、負極の間に残存するので、正、負極に充填されたゲル化繊維の分だけポリマー電解質自体を薄くすることができ、正、負極間のイオン伝導度を高めることができる。
また、ゲル化繊維の一部が正、負極に充填されることにより、正、負極の間におけるポリマー電解質に占める非ゲル化繊維の割合が充填される前に比べて高くなるので、非ゲル化繊維の充填密度が相対的に向上して空隙部分が少なくなり、金属リチウムのデンドライト成長によるショートを防止できる。
更に、ゲル化繊維の一部がポリマー電解質と連続した状態で正、負極に充填されるため、正、負極とポリマー電解質との界面における界面抵抗を低減することができ、これによりリチウム二次電池自体の内部抵抗が低減されて充放電容量を向上できる。
【0067】
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法によれば、応力を印加して前記ポリマー電解質に含まれるゲル化繊維の一部を前記正極及び前記負極に圧入するので、ゲル化繊維の一部を除く残部及び非ゲル化繊維が正、負極の間に残存し、正、負極に圧入されたゲル化繊維の分だけポリマー電解質自体を薄くすることができ、正、負極間のイオン伝導度を高くさせて内部抵抗が低いリチウム二次電池を得ることができる。
また、ゲル化繊維の一部を正、負極に圧入することにより、正、負極の間におけるポリマー電解質に占める非ゲル化繊維の割合が圧入前に比べて高くなるので、ポリマー電解質における非ゲル化繊維の充填密度が向上して空隙部分が少なくなり、金属リチウムのデンドライト成長に伴うショートが発生することのないリチウム二次電池を得ることができる。
更に、ゲル化繊維の一部を正、負極に圧入するため、正、負極とポリマー電解質との界面における界面抵抗を低減することができ、内部抵抗が低く、充放電容量に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態であるリチウム二次電池の要部を示す断面模式図である。
【図2】 本発明の実施形態であるリチウム二次電池の製造方法を説明するための工程図である。
【図3】 本発明の実施形態であるリチウム二次電池の製造方法を説明するための工程図である。
【図4】 ポリマー電解質の電流密度と直流分極との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 リチウム二次電池
2 正極
3 負極
4 ポリマー電解質
5 ゲル化繊維
5a ゲル化繊維の一部
5b ゲル化繊維の残部
6 非ゲル化繊維
7 不織布

Claims (5)

  1. リチウムを吸蔵・放出する正極及び負極と、該正極及び該負極に挟まれたポリマー電解質とを具備してなるリチウム二次電池の製造方法であり、有機電解液によるゲル化が容易なゲル化繊維と非ゲル化繊維とを少なくとも有する不織布に前記有機電解液を含浸してポリマー電解質を形成し、前記ポリマー電解質の厚さ方向両側に前記正極及び前記負極をそれぞれ配置し、前記ポリマー電解質の厚さ方向両側から応力を印加することにより、前記ポリマー電解質に含まれるゲル化繊維の一部を前記正極及び前記負極に圧入して前記正、負極と前記ポリマー電解質とを接着することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
  2. 前記ゲル化繊維がポリアクリロニトリルを少なくとも含むものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池の製造方法。
  3. 前記ゲル化繊維がアクリロニトリル-アクリル酸メチル共重合体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウム二次電池の製造方法。
  4. 前記前記非ゲル化繊維が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの複合物のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のリチウム二次電池の製造方法。
  5. 前記有機電解液が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトンのうちの少なくとも1以上の溶媒を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のリチウム二次電池の製造方法。
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