JP4098505B2 - リチウム二次電池用電極材料及びその製造方法、リチウム二次電池用電極並びにリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用電極材料及びその製造方法、リチウム二次電池用電極並びにリチウム二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に好適に使用できるリチウム二次電池用電極材料及びその製造方法、リチウム二次電池用電極並びにリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
小型軽量化及び高性能化が進んでいる携帯電子機器のニーズに応えるため、リチウム二次電池の高容量化が急務となっている。
リチウム二次電池の高容量化のためには活物質の単位重量あたりの容量を増加させることはもちろん重要であるが、極板内の活物質以外の割合を極力減らし、活物質をより多く入れることができるようにすることも重要である。
【0003】
現在負極板の結着剤として広く用いられているポリフッ化ビニリデン(PVdF)は、N-メチル-2-ピロリドンのような有機溶剤に溶解する樹脂である。PVdFは、本来は接着剤ではないが、黒鉛材料との相性が良く、これを概ね黒鉛の8〜10%程度添加することによって高い結着力をもった極板を作成することが可能となる。
しかし、PVdFは繊維が密に詰まったような状態で活物質を覆うため、容量、効率ともに活物質が本来持っている電池性能を低下させる要因となる。また、PVdFは高い接着力を有するものの柔軟性に乏しい。そのため、天然黒鉛のように面間隔が狭く、充放電による膨張収縮率が高い材料を活物質として用いると、結合が破壊されてサイクル特性が低下しやすい傾向がある。
さらに、PVdFのように溶剤系結着剤の場合は、安全性や製造時の溶剤回収などの問題点があるため、水系結着剤の使用が望まれている。
また、活物質へのリチウムイオンの円滑な挿入・脱離が行われるためには、電極のインピーダンスを極力低下させることが有用な手段であるが、一般的に結着剤は非導電性物質であるため、出来る限り結着剤の量を減らすとともに、結着剤そのものの導電性を向上させる必要がある。導電性高分子を結着剤に組み入れることができれば、従来の結着剤では得られない電池特性を得ることができる可能性がある。
さらに、PVdFのように溶剤系結着剤の場合は、安全性や製造時の溶剤回収などの問題点があるため、水系の結着剤であることが望まれている。
【0004】
一方、リチウム電池用に使用されている水系結着剤としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)のようなゴム系ラテックスがある。SBRは弾性が高く、これを用いることによる電池容量や初回の充放電効率の向上が認められている。しかし、SBRは点接着であり、PVdFに比べ活物質との接触面積が狭い。そのため、接着力が弱く、極板からの活物質の脱落や活物質同士の結着性の低下を招やすく、サイクル特性がPVdFに比べ劣る傾向がある。
特に、人造黒鉛は一般的に比表面積が小さい上に濡れ性が悪く、人造黒鉛の結着剤として水系結着剤を用いることは難しいとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い充放電容量と優れたサイクル特性を備えると共に安全性や溶剤回収の問題もない電極材料及びその製造方法を提供し、またこの電極材料を有する負極電極及びリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を検討した結果、水溶性アニリン系導電性高分子と水溶性高分子とを含む結着剤が、従来の結着剤に代わる有効な結着剤であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明のリチウム二次電池用電極材料は、活物質と結着剤とを含む電極材料であって、前記結着剤が、水溶性アニリン系導電性高分子と水溶性高分子とを含を含み、前記水溶性アニリン系導電性高分子がポリアニリンスルフォン酸であり、前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とする。SBRに代表される水系結着剤は一般的にセルロースなどの水溶性高分子を増粘剤として使用するが、本発明では使用する水溶性高分子は単なる増粘剤としての役割だけでなく、水溶性アニリン系導電性高分子と併用することにより高い接着性を生み出す結着剤としての役割を担っている。係る電極材料においては、従来の結着剤を使用する場合と比較して、半分以下の結着剤の使用で充分な結着性を持たせることができる。そのため、高い充放電容量と優れたサイクル特性を備える電極材料とすることができる。また、導電性高分子ポリアニリンを含有しているため、リチウムイオンの挿入・脱離が円滑に行われ、高い電流密度での充放電においてもサイクル劣化を抑制できる。また、水系の結着剤であるので、安全性や溶剤回収の問題を解消することができる。
【0008】
また、本発明のリチウム二次電池用電極材料の製造方法は、活物質と、水溶性アニリン系導電性高分子及び水溶性高分子を含む結着剤と、水とを混練した後、乾燥させるリチウム二次電池用電極材料の製造方法であって、前記水溶性アニリン系導電性高分子がポリアニリンスルフォン酸であり、前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とする。係る電極材料の製造方法によれば、従来の結着剤を使用する場合と比較して、半分以下の結着剤の使用で充分な結着性を持たせることができる。そのため、高い充放電容量と優れたサイクル特性を備える電極材料とすることができる。また、溶媒として水を使用するので、安全性や溶剤回収の問題を解消することができる。また、導電性高分子ポリアニリンを含有しているため、リチウムイオンの挿入・脱離が円滑に行われ、高い電流密度での充放電においてもサイクル劣化を抑制できる。また、溶媒として水を使用するので、安全性や溶剤回収の問題を解消することができる。
【0009】
次に、本発明のリチウム二次電池用電極は、先のいずれかのリチウム二次電池用電極材料を備えたことを特徴とする。この場合、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れた電極とすることができる。特に、これを負極電極として構成した場合に、高い電池特性を得ることができる。また、本発明のリチウム二次電池は、かかる電極を、正極及び/又は負極として備えたことを特徴とする。係る電池によれば、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れた電池とすることができる。本発明の電池は、リチウム二次電池やニッケル水素電池等として構成できるが、特にリチウム二次電池として構成した場合に高い電池特性を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態の電極材料は、活物質を結着剤で結着したものである。本実施形態に用いる活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛、炭素繊維、フェノール樹脂焼成品のような難黒鉛炭素類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭、などの炭素および黒鉛材料、さらにはLiと合金可能なAl, Si, Sn, Ag, Bi, Mg, Zn, In, Ge, Pb, Pd, Pt, Tiなどの金属、およびこれらの元素を含む化合物、またはこれらの金属および化合物と炭素および黒鉛材料との複合化物、リチウム含有窒化物などがあげられるが、正極活物質に対しても本発明の材料を結着剤として使用しても差し支えない。
【0011】
本実施形態に用いる結着剤は、水溶性アニリン系導電性高分子と水溶性高分子とを含むものである。
水溶性アニリン系導電性高分子としては、ポリアニリンスルフォン酸、ポリアニリンカルボン酸等を採用することができるが、ポリアニリンスルフォン酸とすることが好ましい。ポリアニリンスルフォン酸はリチウム二次電池の負極材として一般的に用いられている炭素材料との相互作用が強く、高い決着性を生み出すことができる。
また、これら水溶性アニリン系高分子に含まれるポリアニリンは導電性の高分子であり、これを使用した電極のインピーダンスを他の高分子結着剤を用いた場合に比べ低減させることができる。ポリアニリンを含有した水溶性高分子の作成方法はたとえば特開2000-219739に示されている。
水溶性アニリン系導電性高分子と活物質だけでは十分な接着力を得ることができないが、これと水溶性高分子を混合することにより、活物質間および活物質と集電体間の高い接着力を得ると同時に、均一な電極を作成するために必要な粘度および塗工性を与えることができる。これにより、特に高い充放電容量と優れたサイクル特性を達成することができる。
【0012】
この水溶性アニリン系導電性高分子は、電極材料全体に対して0.1〜10重量%の比率で含まれることが好ましい。0.1重量%より少ないと活物質間および活物質と集電体の間の決着力が低下するため好ましくなく、10重量%より多い電池容量の低下およびインピーダンス増加による高電流特性の劣化を招くので好ましくない。また、結着剤と活物質および水から構成される塗料の集電体への塗工性も低下するので好ましくない。なお、より好ましい比率は、0.3〜2重量%である。
【0013】
また、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレン、ポリ(2−メトキシエトキシエチレン)、ポリ(3−モルフィリニルエチレン)、ポリビニルスルホン酸、ポリビニリデンフルオライド、アミロース、等が挙げられるが、ポリビニルアルコールとすることが好ましい。ポリビニルアルコールは充放電に伴う劣化や析出物がなく、安定した充放電が行われ、高い充放電容量と優れたサイクル特性を達成することができる。
【0014】
この水溶性高分子は、前記電極材料に対して0.1〜10重量%の比率で含まれることが好ましい。0.1重量%より少ないと結着剤と活物質および水からなる塗料の粘度が低すぎて均一な電極を作成することが難しく、結着性も低下する。また10重量%より多いと逆に粘度が上がりすぎて塗工性が著しく低下するとともに、電極の柔軟性も低下し、さらに電極内の活物質の割合が減少することによる電池容量の低減を招くので好ましくない。なお、より好ましい比率は、0.3〜3重量%である。
【0015】
また、水溶性アニリン系導電性高分子と水溶性高分子の合計量は、前記電極材料に対して20重量%以下、好ましくは5%以下の比率で含まれることが好ましい。水溶性アニリン系導電性高分子の合計量が20%を越えると電池容量の低下を招くとともに、電極のインピーダンスを増加させるので好ましくない。
【0016】
また、本実施形態の電極材料には、活物質と結着剤との他に、カーボンブラック、気相成長炭素繊維などの導電剤、および電池特性向上のため金属、金属化合物、酸化物等他の成分を必要に応じて加えても差し支えない。
【0017】
本実施形態の電極材料は、電極材料と水とを混練したペーストを乾燥することにより製造できる。
この乾燥は、実際上は負極電極の集電体上でなされる。すなわち、電極材料と水とを混練したペーストを金属箔若しくは金属網からなる集電体に塗布して乾燥することにより、負極電極が構成できる。
この乾燥にあたり、結着剤に用いる水溶性高分子がポリビニルアルコールである場合は、乾燥温度を150℃以下とすることが好ましい。150℃より高い温度で乾燥すると、ポリビニルアルコールが分解してしまうとともに、水溶性アニリン系高分子由来の電気抵抗が増加するために好ましくないからである。
【0018】
本実施形態の電極材料によれば、従来の結着剤を使用する場合と比較して、半分以下の結着剤の使用で充分な結着性を持たせることができる。そのため、高い充放電容量と優れたサイクル特性を備える電極材料とすることができる。また、導電性高分子ポリアニリンを含有しているため、リチウムイオンの挿入・脱離が円滑に行われ、高い電流密度での充放電においてもサイクル劣化を抑制できる。また、水系の結着剤であるので、安全性や溶剤回収の問題を解消することができる。
なお、上記実施形態の電極材料は、負極材料として説明したが、上記結着剤を使用して正極材料として構成できることはもちろんである。
【0019】
次に、本実施形態の負極電極は、上述のように、集電体上に本実施形態の電極材料を塗布乾燥したものである。負極電極は、特に限定されないが、負極端子も兼ねる負極缶の底部に着設されている。
【0020】
また、本実施形態のリチウム二次電池は、この負極電極と、リチウムの吸蔵・放出が可能な正極電極、及び有機電解質とにより構成することができる。
正極電極としては、例えば、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、V25、TiS、MoS等のリチウムの吸蔵、放出が可能な正極電極材料や、有機ジスルフィド化合物または有機ポリスルフィド化合物等の正極電極材料を含むものが例示できる。
正極電極も、特に限定されないが、正極端子も兼ねる正極缶の底部に着設されている。
【0021】
有機電解質としては、例えば、非プロトン性溶媒にリチウム塩が溶解されてなる有機電解液を例示できる。
非プロトン性溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの二種以上を混合した混合溶媒を例示でき、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートのいずれか1つを必ず含むとともにジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートのいずれか1つを必ず含むことが好ましい。
【0022】
また、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiN(Cx2x+1SO2)(Cy2 y 1SO2)(ただしx、yは自然数)、LiCl、LiI等のうちの1種または2種以上のリチウム塩を混合させてなるものを例示でき、特にLiPF6、LiBF4のいずれか1つを含むものが好ましい。
またこの他に、リチウム二次電池の有機電解液として従来から知られているものを用いることもできる。
【0023】
また有機電解質は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール等のポリマーに上記記載のリチウム塩のいずれかを混合させたものや、膨潤性の高いポリマーに有機電解液を含浸させたもの等、いわゆるポリマー電解質を用いても良い。
【0024】
本実施形態のリチウム二次電池は、上記の正極電極と負極電極の何れかにリチウムを吸蔵させる電解処理を行った後、上記の正極電池が着設された正極缶と、負極電極が着設された負極缶とを、有機電解質を封入しつつ、絶縁パッキンを介して合わせることにより組み立てられる。
【0025】
本実施形態の負極電極及びリチウム二次電池によれば、本実施形態の電極材料をリチウムの担持体として用いているので、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を構成することができる。
【0026】
なお、上記実施形態ではコイン型のリチウム二次電池としたが、例えば、円筒形、角形、あるいはシート型等の種々の形状に構成することができる。
【0027】
【実施例】
[実施例1]
96重量%の天然黒鉛と、2重量%のポリビニルアルコール(PVA)と、ポリアニリンスルフォン酸(PASA)として、2重量%の三菱レイヨン製導電性塗工液aquaPASS(以下PASSと略称する。)と、水とを混合し、攪拌機を用いて15分攪拌し、ペースト状負極用合剤を調製し銅箔に塗布した。これを60℃で30分予備乾燥後、120℃で24時間真空乾燥した。このようにして、厚さ100μmの電極材料を銅箔上に積層した。
そして、電極材料を積層させた銅箔を直径13mmの円形に打ち抜いて1ton/cm2の圧力で圧延し、負極電極とした。この負極電極を作用極とし、円形に打ち抜いた金属リチウム箔(正極電極)を対極とし、作用極と対極との間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレータを挿入し、電解液としてジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒に溶質としてLiPF6が1(モル/L)の濃度となるように溶解させたものを用いて、コイン型のテストセルを作成した。
【0028】
このテストセルを用いて充放電試験を行った。まず、充放電電流密度を0.2Cとし、充電終止電圧を0V(L i/L i+)、放電終止電圧を1.5V(L i/ Li+)とした充放電試験を4回行った。次いで、充放電電流密度を1Cとし、充電終止電圧を0V(L i/L i+)、放電終止電圧を1.5V(L i/Li+)とした充放電試験を50回行った。なお、すべての充電は定電流/定電圧で行い、定電圧充電の終止電流は0.01Cとした。
そして、電極材料の1サイクル目(0.2C)における放電容量及び充放電効率を求めた。また、5サイクル目(1Cの1サイクル目)の放電容量を求めた。さらに、また、54サイクル目(1Cの50サイクル目)の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した容量比(54th/1st)を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0029】
[実施例2]
98重量%の天然黒鉛と、1重量%のPVAと、2重量%のPASSと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0030】
[実施例3]
94重量%の天然黒鉛と、3重量%のPVAと、3重量%のPASSと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0031】
[実施例4]
ペースト状負極用合剤を塗布した銅箔を150℃で30分予備乾燥後、120℃で24時間真空乾燥した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0032】
[実施例5]
ペースト状負極用合剤を塗布した銅箔を180℃で30分予備乾燥後、120℃で24時間真空乾燥した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0033】
[実施例6]
96重量%の天然黒鉛と、2重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)と、2重量%のPASSと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0034】
[比較例1]
90重量%の天然黒鉛と、10重量%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)とを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0035】
[比較例2]
96重量%の天然黒鉛と、3重量%のスチレン−ブタジエンゴム(SBR)と、1重量%のCMCと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0036】
[比較例3]
96重量%の人造黒鉛と、3重量%のSBRと、1重量%のCMCと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0037】
[実施例7]
96重量%の人造黒鉛と、2重量%のPVAと、2重量%のPASSと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0038】
[比較例4]
90重量%の人造黒鉛と、10重量%のPVdFと、NMPとを混合してペースト状負極用合剤を調製した以外は実施例1と同様にして、コイン型のテストセルを作成した。
そして、このコイン型テストセルについて、実施例1と同様の充放電試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0039】
[比較例5]
97重量%の天然黒鉛と、3重量%のPASSと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製したが、粘性がほとんどなく、銅箔に均一に塗布することができなかった。また、これを60℃で30分予備乾燥後、120℃で24時間真空乾燥したところ、接着性が全くなく、電極材料が、銅箔から剥がれ落ちてしまった。
【0040】
[比較例6]
97重量%の天然黒鉛と、3重量%のPVAと、水とを混合してペースト状負極用合剤を調製したが、粘性がほとんどなく、銅箔に均一に塗布することができなかった。また、これを60℃で30分予備乾燥後、120℃で24時間真空乾燥したところ、接着性が全くなく、電極材料が、銅箔から剥がれ落ちてしまった。
【0041】
【表1】
Figure 0004098505
【0042】
表1に示すように、活物質として天然黒鉛、結着剤としてPVAとPASSを各2%使用した実施例1では、結着剤としてPVdFを使用した比較例1や、SBR、CMCを使用した比較例2と比較して高い放電容量と充放電効率が得られた。また、容量維持率については、著しい向上が認められた。
【0043】
実施例2、3は、結着剤としてPVAとPASSを使用しているが、その使用量を変えたものである。いずれも、放電容量や放電効率は、比較例1、2とほぼ同等であると共に、容量維持率の向上も、実施例1程は得られなかった。これは、実施例2では、PVAとPASSの使用量(各1%)が少なすぎ、充分な接着性が得られなかったためと考えられる。また、実施例3では、PVAとPASSの使用量(各3%)が多すぎ、PASAによる膜が厚くかつ緻密になって、インピーダンスの増加を招いているものと考えられる。
【0044】
実施例4、5は、実施例1と同様に結着剤としてPVAとPASSを各2%使用しているが、予備乾燥温度を高くしたものである。これらの場合、放電容量については実施例1を越えており、特に実施例6では、黒鉛の理論容量をも超えている。しかし、実施例4の充放電効率は比較例1、2とほぼ同等であり、実施例5については、比較例よりも低い充放電効率しか得られなかった。これは、乾燥時の温度を150℃以上とすると、PVAが分解しはじめるとともに、PASSの電気抵抗が増加し、電極全体のインピーダンスが増大したことに起因すると考えられる。
【0045】
また、実施例6では、実施例1のPVAに代えてCMCを使用したものであるが、実施例1に近い放電容量と充放電効率、及び容量維持率の向上が認められた。
【0046】
次に、活物質として人造黒鉛を使用する場合であるが、人造黒鉛は天然黒鉛と比較して一般的に比表面積が小さい上、濡れ性が悪い場合が多いので、SBRのような点接触の結着剤のみでは十分結着性を得ることは困難である。実際、SBRとCMCとを用いた比較例3をPVdFを使用した比較例4と比較すると何れの特性も大きく下がっており、このことを裏付けている。
ところが、水系であっても、実施例7のようにPVAとPASSとを使用すると、PVdFを用いた比較例4と同等の放電容量と充放電効率が得られると共に、比較例4よりも高い容量維持率が得られた。
これは、PASSが電極内で活物質をコーティングすることにより高い接着性が得られると共に、表面の濡れ性も向上して、活物質と結着剤とが良くなじんでいるためと考えられる。
【0047】
このように、結着剤として水溶性アニリン系導電性高分子と水溶性高分子とを併せて使用することによって高い電池特性が得られたが、比較例5、6に示したように、これらを単独で使用した場合には結着剤として全く機能せず、両者を混合して初めて高い決着性が得られることがわかった。
【0048】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の電極材料及びその製造方法によれば、充来の結着剤を使用する場合と比較して、半分以下の結着剤の使用で充分な結着性を持たせることができる。そのため、高い充放電容量と優れたサイクル特性を備える電極材料とすることができる。また、導電性高分子ポリアニリンを含有しているため、リチウムイオンの挿入・脱離が円滑に行われ、高い電流密度での充放電においてもサイクル劣化を抑制できる。また、水系の結着剤であるので、安全性や溶剤回収の問題を解消することができる。
また、本発明の電極及び電池によれば、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れた電池を構成することができる。

Claims (7)

  1. 活物質と結着剤とを含む電極材料であって、前記結着剤が、水溶性アニリン系導電性高分子と水溶性高分子とを含み、
    前記水溶性アニリン系導電性高分子がポリアニリンスルフォン酸であり、
    前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とするリチウム二次電池用電極材料。
  2. 前記水溶性アニリン系導電性高分子が、前記電極材料に対して0.1〜10重量%の比率で含まれることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極材料。
  3. 前記水溶性高分子が、前記電極材料に対して0.1〜10重量%の比率で含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリチウム二次電池用電極材料。
  4. 活物質と、水溶性アニリン系導電性高分子及び水溶性高分子を含む結着剤と、水とを混練した後、乾燥させるリチウム二次電池用電極材料の製造方法であって、
    前記水溶性アニリン系導電性高分子がポリアニリンスルフォン酸であり、
    前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とするリチウム二次電池用電極材料の製造方法。
  5. 記乾燥を150℃以下で行うことを特徴とする請求項4に記載のリチウム二次電池用電極材料の製造方法。
  6. 請求項1から請求項3の何れかに記載のリチウム二次電池用電極材料を備えたことを特徴とするリチウム二次電池用電極。
  7. 請求項6に記載のリチウム二次電池用電極を備えたことを特徴とするリチウム二次電池。
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