JP4330067B2 - アモルファス炭素膜の成膜方法 - Google Patents

アモルファス炭素膜の成膜方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマCVD法によるアモルファス炭素膜の成膜方法に関する。
炭素は、埋設量がほぼ無限であり、かつ無害であることから資源問題および環境問題の面からも極めて優れた材料である。炭素材料は、原子間の結合形態が多様で、ダイヤモンドやダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブなど、様々な結晶構造が知られている。中でも、アモルファス炭素膜であるダイヤモンドライクカーボンは、耐摩耗性、固体潤滑性などの機械的特性に優れ、導電性、可視光/赤外光透過率、低誘電率、酸素バリア性などを合わせ持つ機能性材料として注目されており、各産業分野への応用が期待されている。
ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon :DLC)は、その結晶構造が非晶質(アモルファス)であり、通常、化学気相合成法(Chemical Vapor Deposition :CVD)により、基板上に非晶質の炭素が堆積した状態で基板表面に得られる。化学気相合成法としては、特許文献1に開示のように、向かい合う2つの電極間に高周波電力を加えることによって生じるグロー放電を利用した平行平板型プラズマCVD法が一般的である。具体的には、基板を配置した高周波給電電極と、その高周波給電電極と平行に対向する接地電極との間に高周波電力を印加することにより、その間にグロー放電が生じる。このグロー放電を利用して電極間に導入した原料ガス(メタン、エチレン等)を分解し、基板上にDLC薄膜を堆積させる。
しかしながら、上記方法で複数枚の基板に一括してDLC薄膜を成膜する場合には、高周波給電電極に複数枚の基板を並べて配置しなくてはならないので、基板の総面積に見合う大面積の電極が必要となる。さらに、大面積への成膜は技術的に難しく、各基板ごとにDLC薄膜の膜厚や膜組成が不均一になる恐れがある。
また、他の形態として、円筒形の基体表面に成膜を行うPVD装置では、円筒状の基体表面全面に成膜するためには基体を自転させる必要があり、回転機構を有する装置のコストは高いものとなる。また、基体を自転させるための回転機構が装置の故障要因となることも考えられる。さらに、基体の自転が偏芯する場合も考えられ、そうした場合には、膜厚、組成などが均一な薄膜を得ることができない。
特開平6−256957号公報
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、低コストでアモルファス炭素膜を効率よく成膜する、さらに、成膜の際に生じる歪みを抑制、除去する技術を提供することを目的とする。
本発明のアモルファス炭素膜の成膜方法は、プラズマCVD法によって導電性の板状ワークの表面にアモルファス炭素膜を形成するアモルファス炭素膜の成膜方法であって、成膜炉内に配置されかつマイナス極に結線されたワーク固定具に複数の該板状ワークを厚さ方向に平行にかつ積層状態で配置すると共に、シース幅が隣接する2個の該板状ワークの対向面間の間隔以下となるように、処理ガス圧力(つまり「処理ガス圧力」)およびプラズマ電源を操作して行うことを特徴とする。シース幅を、隣接する2個の板状ワークの対向面間の間隔以下にすることで、板状ワーク1枚毎に、安定したグロー放電が得られる。さらに、板状ワークがその厚さ方向に積層状態で配置されるので、成膜面積が大幅に増加し、効率の良い成膜が可能となる。この際、前記処理ガス圧力の範囲は13〜1330Paとし、前記隣接する2個の前記板状ワークの対向面間の間隔は2〜30mmであるのが望ましい。
本発明のアモルファス炭素膜の成膜方法において、処理ガス圧力の範囲は13〜1330Paであるのが好ましく、より好ましくは66.5〜1064Pa、さらに好ましくは266〜798Paである。また、隣接する2個の板状ワークの対向面間の間隔は2〜30mmであるのが好ましく、より好ましくは、3〜20mm、さらに好ましくは5〜15mmである。処理ガス圧力の範囲や板状ワークの対向面間の間隔が前記範囲内であれば、安定したグロー放電を得ることができる。
板状ワークは、上下方向に積層されているのが望ましい。また、板状ワークは円盤状であるのが望ましく、板状ワークはクラッチ板であるのが望ましい。
さらに、前記アモルファス炭素膜の成膜操作の前に、前記板状ワークを成膜温度以上該板状ワークの変態温度未満でホットプレスする前矯正工程を有するのが望ましい。板状ワークは、炭素鋼からなるのが望ましい。この際、前矯正工程は、より望ましくは600℃以上700℃以下、さらに望ましくは630℃以上680℃以下で前記板状ワークをホットプレスする。
さらに、前記アモルファス炭素膜の成膜操作の後に、表面にアモルファス炭素膜が形成された前記板状ワークをアモルファス炭素膜の成膜温度以下でホットプレスする後矯正工程を有するのが望ましい。板状ワークは、炭素鋼からなるのが望ましい。この際、後矯正工程は、より望ましくは300℃以上500℃以下、さらに望ましくは350℃以上450℃以下で前記板状ワークをホットプレスする。
前記処理ガスは、少なくともSiを含むSi含有ガスと炭化水素ガスとを含むとよい。前記Si含有ガスは、有機金属含有ガスおよびハロゲン化合物含有ガスのうちのいずれか1種以上であるのが好ましい。そのうち、有機金属含有ガスはテトラメチルシランおよびシランのうちのいずれか1種以上、ハロゲン化合物は四塩化シリコン、炭化水素ガスはメタン、エチレン、アセチレンおよびベンゼンのうちのいずれか1種以上であるのが好ましい。
さらに、前記成膜炉は円筒状の炉室を持ち、前記ワーク固定具は該炉室と同軸的に等間隔でリング状に配置され、前記処理ガスを供給する複数の筒状のノズルが該炉室と同軸的に該ワーク固定具の遠心方向側で等間隔にリング状に配置されるとともに該炉室の中心に少なくとも1個互いに垂直方向に平行に配置されているのが望ましい。この構成により、膜分布・膜組成の不均一分布を抑制することができ、全ての板状ワークに均一にアモルファス炭素膜を成膜することができる。
本発明のアモルファス炭素膜の成膜方法によれば、シース幅を、隣接する2個の板状ワークの対向面間の間隔以下にすることで、板状ワーク一枚毎に、安定したグロー放電が得られる。さらに、板状ワークがその厚さ方向に積層状態で配置されるので、一度の成膜で従来よりも複数のワークを処理することができ、効率の良い成膜が可能となる。
また、前矯正工程または後矯正工程により、アモルファス炭素膜の成膜の際に板状ワークに生じる歪みを抑制、除去することができる。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
[アモルファス炭素膜の成膜方法]
本発明のアモルファス炭素膜の成膜方法は、プラズマCVD法(より具体的には、直流プラズマCVD法,高周波プラズマCVD法など)によって導電性の板状ワークの表面にアモルファス炭素膜を形成するアモルファス炭素膜の成膜方法である。
プラズマCVD法では、二つの電極の間に電力を加えることによって、グロー放電が生じる。このグロー放電を利用して、電極間に導入した処理ガスを分離して、マイナス電位側の電極(板状ワーク)に薄膜を堆積させる。処理ガスは、水素、アルゴン等のうちの少なくとも1種からなる希釈ガスと、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素ガスのうちいずれか1種以上、および、テトラメチルシラン(TMS:Si(CH))、シラン、SiCl 等のSi含有ガスのうちのいずれか1種以上からなる原料ガスとの混合ガスであるのが望ましい。
板状ワークの素材は、導電性があれば特に限定はない。板状ワークの形状にも特に限定はなく、平板状、円盤状、リング状や、自動車などの部品として用いられるクラッチ板であってもよい。また、板状ワークの厚さは、シース幅に影響するものではないが0.4〜4mm、より好ましくは0.7〜1mmである。
板状ワークは、成膜炉内に配置されかつマイナス極に結線されたワーク固定具に固定される。マイナス極に結線されたワーク固定具には、導電性の板状ワークの少なくとも一部が接触するようにして固定される。
シース幅は、隣接する2個の該板状ワークの対向面間の間隔(ワーク間隔)以下とする。シース幅がワーク間隔以下であれば、シースの幅でワーク固定具と板状ワークの外面に沿って均一にグロー放電し、板状ワークの両面にアモルファス炭素膜を成膜することができる。シース幅がワーク間隔以上であると、成膜時に局所的に放電が強くなり、グロー放電が不安定となるので、好適な成膜ができない。
ここで、一般的に「シース」とは、陰極表面から負グローまでの発光の弱い領域を指す。シースでは、急激な電位降下が生じ、正イオンは陰極に向けて加速され衝突する。この衝突によって電子が放出され、放出された電子(2次電子)はシースの電位勾配によって加速され負グロー域へ入射し、気体分子を電離させる。シースの発光が弱いのは、陰陽両極間に印加された電圧(または、先に述べた電位降下)により加速された2次電子が気体分子を十分に励起する程の運動エネルギーを持つに到らないためである。すなわち、本明細書の「シース幅」とは、板状ワークおよびワーク固定具から負グローまでの発光の弱い領域の幅である。
複数の板状ワークは、平行にかつ隣接する2個の板状ワークの対向面間の間隔を2〜30mmの範囲で板状ワークの厚さ方向に積層状態で配置するのが好ましい。板状ワークの間隔が2mm以下であると、グロー放電が不安定となることがあるので、好適な成膜ができない。また、30mm以上では、安定したグロー放電は得られるものの、ワーク固定具に固定できる板状ワークの数が減少するので、大量処理には不向きである。2個の板状ワークの対向面間の間隔は、より好ましくは3〜20mm、さらに好ましくは5〜15mmである。
ワーク固定具の形状は、各板状ワークの少なくとも一部と接触し、各板状ワークを平行に厚さ方向に積層状態で配置できれば、特に限定はない。したがって、ワーク固定具は、板状ワークを平行に成膜炉の上下方向に固定する形式でも、左右方向に固定する形式でも、いずれの形式でもよい。また、ワーク固定具に板状ワークを固定する方法としては、板状ワークが円盤状であれば板状ワークの外周部をワーク固定具に固定する、さらに、板状ワークがリング状であればリングの内側部および/または外側部をワーク固定具に固定する、などの方法が挙げられる。例えば、円柱状のワーク固定具に、リング状の板状ワークの内側部分が全体的に接するように板状ワークを固定する(図3,4参照)と、グロー放電の放電面積が少なくなり、投入電力が少なくて済む。また、複数本の棒状の保持具からなるワーク固定具に、板状ワークを部分的に保持するように固定する(図5,図7参照)と、処理ガスの流れが良好となり、得られるアモルファス炭素膜の組成がより均一となる。
なお、図15に、ワーク固定具に板状ワークを平行に成膜炉の左右方向に固定する一例を図示する。左右に延びる棒状のワーク固定具に、リング状の板状ワークを等間隔に吊している。
そして、シース幅が板状ワーク間隔以下の2〜30mmとなるように、処理ガス圧力の範囲を13〜1330Pa、より好ましくは66.5〜1064Pa、さらに好ましくは266〜798Paに調整する。
図14は、本発明のアモルファス炭素膜の成膜方法における処理ガス圧力とシース幅の関係を示すグラフである。なお、このグラフでは、一例として、成膜温度500℃でCH 、Ar、H 、TMSの混合ガスを処理ガスとして用いている。処理ガス圧力が13Pa未満ではシース幅が30mmより広くなり、板状ワーク間の間隔を広くする必要があるため、ワーク固定具に固定できる板状ワークの数が減少し、大量処理することができない。一方、処理ガス圧力が高いとグローが不安定になりやすく、1330Pa以上ではグロー放電の均一保持が困難となる。
なお、成膜温度は、プラズマCVD法でアモルファス炭素膜を成膜する際に一般的に用いられている温度条件であればよい。望ましくは、成膜温度はワークの焼入れ/焼戻し温度以下、あるいは変態温度以下30〜50℃とすると良い。より具体的には、好ましくは450〜630℃、より好ましくは500〜600℃である。ここで、成膜温度とは、板状ワークの表面での温度である。
上述した構成のワーク固定具および板状ワークは、プラズマ電源から電圧を印加すると、板状ワークに沿って放電するので、板状ワーク1枚ごとにグロー放電し、板状ワークの両面にアモルファス炭素膜を成膜することができる。
また、成膜炉は円筒状の炉室を持ち、ワーク固定具は該炉室と同軸的に等間隔でリング状に配置され、処理ガスを供給する複数の筒状のノズルが炉室と同軸的にワーク固定具の遠心方向側で等間隔にリング状に配置される。このとき同時に、炉室の中心に1個以上互いに垂直方向に平行にノズルが配置されているのが望ましい。処理ガスを供給するノズルは、ワーク固定具の遠心方向側に配置するほかにも、ワーク固定具の内部に配置してもよい。
次に、前矯正工程および後矯正工程について説明する。
板状ワークは、通常、圧延後パンチング等で剪断して、任意の形状に加工されるので、加工による残留応力が生じる。そして、プラズマCVD法によるアモルファス炭素膜の成膜の際には、成膜時の熱で板状ワークの残留応力が開放されることにより、板状ワークに反りや歪みが発生し、変形する。
さらに、プラズマCVD法によるアモルファス炭素膜の成膜においては、成膜時の熱に加え板状ワークの自重により、成膜中に板状ワークが変形する。特に、上下方向に積層された板状ワークは、変形しやすい。たとえば、図19のAおよびBは、例として、円盤状の板状ワーク2a、2bと、板状ワークを固定したワーク固定具3a、3bと、を真上から見た断面図(上図)と、真横から見た断面図(下図)を模式的に示す。なお、図19は、説明のため板状ワークを1枚だけ示しているが、板状ワークは、その厚さ方向(すなわち上下方向)に複数枚積層される。Aでは、板状ワーク2aの中央部がワーク固定具3aに挟持され固定されているが、固定されていない外周部は、成膜中に板状ワークの自重により矢印の方向へと変形する。その結果、板状ワーク2aは2a’に示すように、傘状に歪む。また、Bでは、板状ワーク2bの外周部が3本の棒状保持具からなるワーク固定具3bに載置されているが、中央部は、成膜中に板状ワークの自重により矢印の方向へと変形する。その結果、板状ワーク2bは2b’に示すように、皿状に歪む。
そして、残留応力が開放されることによる変形と、自重による変形とが成膜中に同時に板状ワークに発生するため、成膜後の板状ワークは、凹凸やヒダ状など、不規則な形状に歪む可能性がある。
そこで、成膜中に生じる歪みを抑制、除去するために、アモルファス炭素膜の成膜操作の前または後に矯正を行うとよい。
前矯正工程は、アモルファス炭素膜の成膜操作の前に、成膜温度以上その板状ワークの変態温度未満で板状ワークをホットプレスするものである。成膜温度以上、変態温度未満の温度範囲でのホットプレスにより、加工により生じた板状ワークの残留応力を緩和することができる。その結果、残留応力が開放されることにより発生する板状ワークの歪みを抑制できる。また、前述の残留応力の開放と重力との相乗効果による歪発生も効果的に抑制することができる。また、板状ワークの変態温度以上で前矯正工程を行うと、板状ワークの残留応力は緩和されるが、板状ワークの組織が変わるため適切ではない。なお、成膜温度およびホットプレスの温度は、板状ワークの表面での温度である。
板状ワークの材質に特に限定はないが、炭素鋼などの鉄鋼材料からなるのが望ましい。炭素鋼からなる板状ワークであれば、望ましくは600℃以上700℃以下、さらに望ましくは630℃以上680℃以下で前矯正工程としてのホットプレスを行う。ホットプレスの温度が700℃を越えると、炭素鋼の変態温度を超える場合が考えられるので、好ましくない。また、600℃未満では、残留応力の開放が十分に行えない場合があるので、好ましい矯正効果を得るのが困難である。なお、ホットプレスの成形温度の最適値は、650℃である。
前矯正工程では、従来用いられているプレス装置を用いればよい。また、ホットプレスの雰囲気も特に限定するものではない。
後矯正工程は、アモルファス炭素膜の成膜操作の後に、表面にアモルファス炭素膜が形成された板状ワークをアモルファス炭素膜の成膜温度以下でホットプレスするものである。成膜温度以下で後矯正工程を行うことにより、加工により生じた板状ワークの残留応力が開放されることにより発生する歪みと、自重により発生する歪みとを、アモルファス炭素膜を劣化させることなく除去できる。成膜温度を超えてホットプレスすると、アモルファス炭素膜が酸化したり、剥離や亀裂などが発生する恐れがあるので、好ましくない。なお、成膜温度およびホットプレスの温度は、板状ワークの表面での温度である。
板状ワークの材質に特に限定はないが、炭素鋼などの鉄鋼材料からなるのが望ましい。炭素鋼からなる板状ワークであれば、望ましくは300℃以上500℃以下、さらに望ましくは350℃以上450℃以下でホットプレスを行う。ホットプレスの温度が300℃未満では、炭素鋼からなる板状ワークの残留応力を緩和するには十分な温度ではなく、好ましい矯正効果を得ることが困難である。また、500℃を超えると、アモルファス炭素膜に剥離や亀裂、酸化などが起こる恐れがあるので好ましくない。なお、ホットプレスの成形温度の最適値は、400℃である。
後矯正工程では、従来用いられているプレス装置を用いればよい。また、ホットプレスの雰囲気も特に限定するものではなく、例えば、大気中でホットプレスを行っても、上記の温度範囲であれば、アモルファス炭素膜が酸化することはない。
なお、前矯正工程および後矯正工程は、成膜温度や板状ワークの材質に合わせて適宜選択し、少なくとも一方を行えばよい。また、前矯正工程および後矯正工程は、残留応力による歪みや自重による歪みの他、膜厚差から生じた歪み(アモルファス炭素膜からの圧縮応力によって板状ワークに発生する歪み)に対しても、歪みの抑制、除去の効果を発揮する。
[アモルファス炭素膜の成膜装置]
モルファス炭素膜の成膜装置は、プラズマCVD法によって導電性の板状ワークの表面にアモルファス炭素膜を形成するアモルファス炭素膜の成膜装置であり、成膜炉と、板状ワークを固定するワーク固定具と、処理ガスを供給するノズルと、少なくともワーク固定具に結線されたプラズマ電源とを具備する。
成膜炉は、真空気密可能であれば特に限定はないが、円筒状の炉室を有するものが好ましい。
板状ワークの素材は、導電性があれば特に限定はない。板状ワークの形状にも特に限定はないが、リング状が望ましく、クラッチ板であってもよい。また、板状ワークの厚さは、シース幅に影響するものではないが0.4〜4mm、より好ましくは0.7〜1mmである。
ワーク固定具は、板状ワークを平行にかつ上下方向に隣接する2個の板状ワークの対向面間の間隔を好ましくは2〜30mmの範囲で上下方向に積層状態で複数個保持する。板状ワークの間隔が2mm以下であると、局所的にシースが接近しすぎ、グロー放電が不安定となるので、好適な成膜ができない。また、30mm以上では、安定したグロー放電は得られるものの、ワーク固定具に固定できる板状ワークの数が減少し、大量処理には不向きである。2個の板状ワークの対向面間の間隔は、より好ましくは3〜20mm、さらに好ましくは5〜15mmである。
ワーク固定具に板状ワークを固定する方法は[アモルファス炭素膜の成膜方法]の欄でも述べたが、板状ワークが上下方向に積層状態で複数個保持されれば、その形態に特に限りはない。例えば、ワーク固定具は、板状ワークの少なくとも一部を保持する棒状の保持具を有するのが望ましい。棒状の保持具の大きさに特に限定はないが、板状ワークがリング状であれば、リングの内径程度の太さを有する棒状の保持具によりリングの内側部を固定してもよい(図3,4参照)。また、複数本の棒状の保持具により、板状ワークを部分的に保持してもよい。例えば、板状ワークが円盤状であれば、ワーク固定具は棒状の保持具を少なくとも3本有し、板状ワークは該保持具により少なくとも3か所保持されるのが望ましい(図5,図7参照)。さらに、板状ワークがリング状であれば、ワーク固定具(保持具)によりリング状の板状ワークの内側部および/または外側部が保持されるのが望ましい。また、保持具は、板状ワークが成膜中に落下等することなく保持できる形状であれば、その形状に特に限定はない。保持具の形状としては、保持具に複数の板状ワークを上下方向に平行に載置したり挟持したり、保持具と板状ワークとが互いに嵌合・係合できる、段差部や突出部を有するのがよい。
また、ワーク固定具は、成膜炉の炉室内に等間隔でリング状に複数個配置される。全てのワーク固定具は、マイナス極に結線される。ワーク固定具には導電性の板状ワークの一部が接触するようにして固定されているので、板状ワークもマイナス極に結線される。
処理ガスを供給するノズルは、成膜炉の炉室内にリング状に配置されたワーク固定具の中心に1個以上及び遠心方向側で等間隔にリング状に配置された複数個で構成される。中心に配置されるノズルは、通常の成膜装置に用いられるものでよく、特に限定はない。例えば、ワーク固定具の上方に設置された複数の下向きのガス供給孔をもつリングガスノズルや、図1および2に示す円筒状ノズル、1本以上配置されガスを放射状に供給する管状のノズルなどが好ましい。また、遠心方向側で等間隔にリング状に配置されるノズルも、通常の成膜装置に用いられるものでよく特に限定はないが、ノズルの側面に複数の孔をもつ管状のノズルが好ましい。この際、板状ワークとノズルとは、50〜300mmの間隔を有するのが望ましい。
プラズマ電源は、通常のプラズマCVD法に用いられるプラズマ電源であれば、特に限定はない。プラズマ電源は、少なくともワーク固定具に結線し、ワーク固定具をマイナス極に通電する。
その他、熱電対、赤外線放射温度計などの温度測定手段や膜厚測定手段などを適宜具備してもよい。
本成膜装置によれば、板状ワークは、ワーク固定具に上下方向に積層状態で複数個保持されるので、一度の成膜で従来よりも複数のワークを処理することができ、効率の良い成膜が可能となる。また、上記構成の成膜装置は、ワークを回転させなくてもよいので回転機構が必要なく、構造が簡単で低コストである。さらに、ワーク固定具と処理ガスを供給するノズルの配置を上記の配置としたことで、処理ガスの分布が良好となり、膜厚、膜組成にばらつきのない良好な膜品質のアモルファス炭素膜が得られる。
以下に、本発明の実施例を図を用いて説明する。図1はアモルファス炭素膜の成膜装置の概略説明図であり、図2は図1の成膜装置のX−X’断面図である。
(実施例1)
本実施例のアモルファス炭素膜の成膜装置は、円筒状でステンレス製のチャンバー11を成膜炉として用い、排気通路12によりチャンバー11と連通する排気系13を有する。排気系13は、油回転ポンプ、メカニカルブースターポンプ、油拡散ポンプからなり、排気通路12に配した排気調整バルブ15を開閉することによりチャンバー11内の処理圧力を調整する。また、チャンバー11には、透光窓18を設け、透光窓18を介して赤外線放射温度計(図示せず)によりワーク22の表面温度を測定する。
チャンバー11内には、プラズマ電源16のマイナス極に通電された陰極20とガス供給手段30が配設される。
陰極20は、プラズマ電源16のマイナス極に連結された支持台21と、支持台21上に載置された5つのワーク固定具23と、それぞれのワーク固定具23に固定された板状ワーク22とからなる。
円板状の支持台21は、炭素鋼製で、円筒状のチャンバー11と同軸的に、チャンバー11の底部の陰極20に固定される。
板状ワーク22は、厚さ0.9mm、直径100mmの炭素工具鋼からなる。板状ワーク22は図4に示すリング状で、その内周面に内歯221を有する。なお、板状ワーク22は、ワーク固定具53に固定される前に予めホットプレスを施したものである。以下にその手順を説明する。
図16に示すプレス装置100に、板状ワーク22を重ねてセットした。なお、プレス装置100は、図示しない昇温炉と、昇温炉の内部に設置された台座101と錘103と、からなり、錘103は油圧により矢印の方向へ押し付けられる。昇温炉内で板状ワーク22を室温から650℃まで0.5時間で昇温した後、押し付け荷重1kgとし、ホットプレスを行った。650℃を保って2時間保持した後、炉内で0.5時間冷却した。
5つのワーク固定具23は炭素鋼製で、円筒状のチャンバー11と同軸的になるよう支持台21上に等間隔にリング状に配置される。ワーク固定具23は、その中心がチャンバー11の中心より直径40cmの円周上に等間隔をもってリング状に配置される。
ワーク固定具23は、支持台21上に支持され垂直に延びる円筒状の固定柱231と、複数の板状ワーク22を等間隔で平行かつ積層状態に固定するための複数個の治具232とを有する保持具230からなる(図3および図4)。治具232は円筒形で、円周面の一端には、段差部233を有する。段差部233は断面直角で板状ワーク22の厚さと等しい段差を有し、板状ワーク22の内歯221は段差部233に同軸的にはめ込むことができる。
板状ワーク22をワーク固定具23に固定するには、まず、固定柱231の上方を底具251の筒内へ差し込み、底具251を固定柱231に沿って下方へ移動させて、支持台21上に底具251を設置する。次に、底具251と同様にして、上記方法により板状ワーク22がはめ込まれた治具232を、底具251上に設置する。この後、同様の手順を繰り返すことにより板状ワーク22が所望の枚数となるまで治具232を積層する。板状ワーク22が所望の枚数となったら、最上部に頭具252を設置する。
上下方向に隣接する2枚の板状ワーク22の対向面間の間隔は、30mmとした。ここで、隣接する2枚の板状ワーク22の対向面間の間隔とは、図3のDで示される距離で、以下「ワーク間隔」とする。すなわち、ワーク間隔は、治具232の高さから段差部233の高さ(つまり板状ワーク22の厚さ)を差し引いた距離に等しくなる。この際、1つのワーク固定具23には35枚の板状ワーク22が固定でき、装置内には合計175枚の板状ワーク22が固定されていることになる。
ガス供給手段30は、原料ガスと希釈ガスとの混合ガスを規定の流量比でチャンバー11に供給する。混合ガスは、マスフローコントローラ(MFC)33により流量を調整後、ガス供給バルブ34を経てガス供給管35によりチャンバー11の内部に供給される。ガス供給管35は、チャンバー11内で、中央のガスノズル31と、周囲の6本のガスノズル32とに分岐する。ガスノズル31は、チャンバー11の中心部に位置するように設置される。また、6本のガスノズル32は、リング状に配置されたワーク固定具23の遠心方向側に等間隔にリング状に配置される。なお、ガスノズル32は、チャンバー11の中心から35cmの位置にそれぞれ配置される。それぞれのガスノズル31,32には、その長さ方向に等間隔で複数の孔311,321が開いている。また、孔311に関しては、6本のガスバルブ32の方向に放射状に開けられている。
プラズマ電源16のプラス極は、チャンバー11に通電される。プラス極はアースされ、チャンバー11の壁面が接地電極(陽極)となる。
以上のような構成のアモルファス炭素膜の成膜装置を作動させて、アモルファス炭素膜を成膜した。まず、排気系13によりチャンバー11内を到達真空度が5×10−3Paまで排気した。つぎに、ガス供給バルブ34を開け、原料ガスであるメタンガス、TMSガスと希釈ガスである水素ガス、アルゴンガスの流量をMFC33で調整してチャンバー11に供給した。その後、排気調整バルブ15の開度を調整し、チャンバー11内の処理圧を133Paとした。
チャンバー11内に所定の流量比の水素、アルゴンからなる希釈ガスが導入され、所定の処理圧が確保されたら、プラズマ電源16により陰極20に9.5kWを供給した。電圧を印加すると、陰極20の周辺にグロー放電が生じ、このグロー放電によりにより、板状ワーク22を500℃に加熱した。続いて原料ガスであるメタンガスとTMSガスを所定の流量で供給し、板状ワーク22の表面にアモルファス炭素膜が成長した。
本実施例の装置では、シース幅が25mmで、安定した放電が得られた。また、30分間の放電により、板状ワーク22の表面に膜厚2μmのアモルファス炭素膜が得られた。得られたアモルファス炭素膜の膜厚分布は、均一であった。
なお、アモルファス炭素膜の成膜条件を表1に示す。また、グロー放電の様子を図9に示すが、この図は説明のために板状ワーク22を3枚固定したものとした。陰極20の周囲に一定の幅でシース25が形成された。シース25は26で示す部分で重なり合っていながらも、板状ワーク22に沿ってシースが形成された。
(実施例2)
実施例1の成膜装置において、ワーク間隔を10mm(板状ワーク、合計500枚)とした。また、成膜中のガス圧、シース幅は、表1の通りである。
本実施例の装置では、安定した放電が得られ、成膜されたアモルファス炭素膜の膜厚分布は、均一であった。グロー放電の様子を図10に示すが、この図は説明のために板状ワーク22を3枚固定したものとした。陰極20の周囲に一定の幅でシース25が形成された。
(実施例3)
実施例1の成膜装置において、ワーク間隔を3mm(板状ワーク、合計600枚)とした。また、成膜中のガス圧、シース幅は、表1の通りである。
本実施例の装置では、安定した放電が得られ、成膜されたアモルファス炭素膜の膜厚分布は、均一であった。グロー放電の様子を図11に示すが、この図は説明のために板状ワーク22を3枚固定したものとした。陰極20の周囲に一定の幅でシース25が形成された。なお、26で示す部分では、シース25は重なり合っているが、放電は安定に保たれ、板状ワーク22に沿ってシースが形成されている。
(実施例4)
実施例1の成膜装置において、ワーク間隔を2mm(板状ワーク、合計750枚)とした。また、成膜中のガス圧、シース幅は、表1の通りである。なお、ワーク間隔が2mmの場合、最大2500枚の板状ワークを装置内に固定できるが、板状ワークの枚数が多すぎるとプラズマ電源出力が不足し、ワーク全体にシースが形成できないため、750枚とした。
本実施例の装置では、安定した放電が得られ、成膜されたアモルファス炭素膜の膜厚分布は、均一であった。グロー放電の様子を図12に示すが、この図は説明のために板状ワーク22を3枚固定したものとした。陰極20の周囲に一定の幅でシース25が形成された。なお、26で示す部分では、シース25は重なり合ったが、放電は安定に保たれ、板状ワーク22に沿ってシースが形成されている。
(比較例1)
実施例1の成膜装置において、ワーク間隔を1mm(板状ワーク、合計500枚)とした。また、成膜中のガス圧、シース幅は、表1の通りである。
本実施例の装置では、局所的にグロー放電が強くなり、均一な放電が得られなかった。グロー放電の様子を図13に示すが、この図は説明のために板状ワーク22を3枚固定したものとした。本比較例ではシース25が接近しすぎるため、26で示す板状ワークの外周部分のみが局所的に重なり合って放電し、板状ワーク22に沿ってシースが形成されない。
(実施例5)
実施例1の成膜装置において、陰極20の板状ワーク22,ワーク固定具23を以下に説明する板状ワーク42,ワーク固定具43(図5)とした。
本実施例において、陰極20は、プラズマ電源16のマイナス極に連結された支持台21と、支持台21上に載置された5つのワーク固定具43と、それぞれのワーク固定具43に固定された板状ワーク42とからなる。
板状ワーク42は、厚さ0.9mm、直径100mmの炭素工具鋼からなる。板状ワーク42は図6に示すリング状で、その外周面に外歯421を有する。
5つのワーク固定具43は炭素鋼製で、図5に示す支持棒431と、治具432とからなる3本の棒状の保持具430を有する。また、治具432は、円筒形で外周面に突出部をもつ受け爪433と円筒形のスペーサー434を有する。なお、図5で、(I)は説明のため、板状ワークを図示していないが、(II)は板状ワークを固定した治具432を示す。また、(II)は、(I)のZ−Z’での断面図であるが、3本の保持具のうち、いずれの保持具も同様の構成である。一端を支持台21に固定された3本の支持棒431には、支持台21からの高さが同じとなるようにナット453(図示せず)を螺合する。貫通孔を同軸的にリング状に3個もつ円盤状の底板451は、その貫通孔に支持棒431を挿入し、ナット453により底板451が下方から保持されることで、支持棒431を等間隔かつ同軸的に固定する。底板451と、後述する底板451と同一形状の天板452は、3本の支持棒431の支えとなり、支持棒431同士の間隔は固定される。
板状ワーク42をワーク固定具43に固定するには、まず、3本の支持棒431の上方をそれぞれスペーサー434の筒内へ差し込み、スペーサー434を支持棒431に沿って下方へ移動させる。次に、スペーサー434と同様にして、受け爪433を、突出部が底板451の中心軸に向くようにスペーサー434上に設置する。そして、受け爪433上に板状ワーク42の外歯421部分を載置する。こうして、板状ワーク42は、それぞれの支持棒431の同じ高さの位置に設けられた受け爪433に載置され、板状ワーク42の外歯421が3つの受け爪433により下方から支えられる状態で固定される。この後、同様の手順を繰り返すことにより板状ワーク42が所望の枚数となるまで治具432を積層する。板状ワーク42が所望の枚数となったら、スペーサー434を設置した後、最上部に天板452を設置する。天板452は、ナット453により上方から固定される。
上下方向に隣接する2枚の板状ワーク42の対向面間の間隔は、10mmとした。この際、1つのワーク固定具43には100枚の板状ワーク42が固定でき、装置内には合計500枚の板状ワーク42が固定されていることになる。
以上のような構成のアモルファス炭素膜の成膜装置を作動させて、実施例1と同様にアモルファス炭素膜を成膜した。本実施例の装置では、板状ワーク42に沿ってシースが形成され、シース幅は5mmで、安定した放電が得られた。得られたアモルファス炭素膜の膜厚分布は、均一であった。
得られた板状ワーク42にホットプレスを施した。図16に示すプレス装置100に、板状ワーク42を重ねてセットした。なお、プレス装置100は、図示しない炉と、昇温炉の内部に設置された台座101と錘103と、からなり、錘103は油圧により矢印の方向へ押し付けられる。昇温炉内で板状ワーク42を室温から400℃まで0.3時間で昇温した後、押し付け荷重1kgとし、ホットプレスを行った。400℃を保って2時間保持した後、炉内で0.3時間冷却した。
(実施例6)
実施例1の成膜装置において、ワーク固定具23を、以下に説明するワーク固定具53(図7,図8)とした。
本実施例において、陰極20は、プラズマ電源16のマイナス極に連結された支持台21と、支持台21上に載置された5つのワーク固定具53と、それぞれのワーク固定具53に固定された板状ワーク22とからなる。
5つのワーク固定具53は炭素鋼製で、支持台21に載置され固定される底板551と、底板551に一端部が取り付けられた3本の棒状の保持具530(支持棒531〜533)と、からなる。そして、3本の保持具530は、図7および図8に示す支持棒531,532,533をそれぞれ有する。支持棒531〜533のうち、支持棒531〜533は、それぞれ底板551に一端部が取り付けられている。なお、図7は、本実施例のワーク固定具53の説明図である。(I)は、ワーク固定具53に板状ワーク22を固定した様子を示しているが、説明のため、板状ワークは3枚とし、保持具530の位置を一点鎖線で示した。(II)は、(I)のW−W’での断面図であって支持棒531での断面図を示しているが、支持棒532,533においても同様の構成である。
保持具530は、支持棒531〜533と、円筒形の支持具553と、円筒形のスペーサー554を有する。支持棒531〜533は、底板551に取り付けられ、支持棒531〜533には、支持具553とスペーサー554が交互に嵌挿されている。この際、スペーサー554は、支持具553よりも径が小さいため、支持具553とスペーサー554との間に段差部が生じる。この段差部で板状ワーク22の内歯221が下方側から受けられることにより、板状ワーク22がワーク固定具53に固定される。
次に、本実施例のワーク固定具53に板状ワーク22を固定する手順を図8を用いて説明する。
ワーク固定具53は、3本の保持具530の支持棒のうち、2本の支持棒531,532は、その一端部が底板551に固定されているが、支持棒533は、その一端部と着脱孔555とを螺合させることにより着脱可能となっている。はじめに、支持棒533を有する保持具530が底板551から外されたワーク固定具53を横向きにする。そして、支持棒531,532を有する2本の保持具530に、底板551と平行となるように板状ワーク22を載置する。この際、板状ワーク22は、その内歯221が、支持具553とスペーサー554の外径差から生じる段差部に掛けられる(図8(IV)参照)。所望の枚数の板状ワーク22が掛けられたら、支持棒533を有する保持具530を板状ワーク22の内周側に挿入する(図8(III)参照)。そして、支持棒533を有する保持具530に設けられた段差部を、板状ワークの内歯221に掛けた後(図8(IV)参照)、支持棒533と底板551とを着脱孔555により螺合する。その後、横向きになっているワーク固定具53を縦向きにすることで、板状ワーク22の内歯221が段差部により下方側から受けられ、板状ワーク22は底板551と平行となるように積層状態で、ワーク固定具53に固定される。そして、底板551は、支持台21に固定される。
上下方向に隣接する2枚の板状ワーク22の対向面間の間隔は、10mmとした。この際、1つのワーク固定具53には100枚の板状ワーク22が固定でき、装置内には合計500枚の板状ワーク22が固定されていることになる。
以上のような構成のアモルファス炭素膜の成膜装置を作動させて、実施例1と同様にアモルファス炭素膜を成膜した。本実施例の装置では、板状ワーク22に沿ってシースが形成され、シース幅は5mmで、安定した放電が得られた。得られたアモルファス炭素膜の膜厚分布は、均一であった。
Figure 0004330067
<板状ワークの歪みについて>
図17は、アモルファス炭素膜の成膜前にホットプレスを施した板状ワーク(実施例2の板状ワーク22に相当)の歪み量の変化を示すグラフである。また、図18は、アモルファス炭素膜の成膜後にホットプレスを施した板状ワーク(実施例5の板状ワーク42に相当)の歪み量の変化を示すグラフである。板状ワークの歪み量は、それぞれ初期(ホットプレスも成膜も行われていない状態)、ホットプレス後、成膜後に測定した。
なお、板状ワークの歪み量は、回転可能な定盤に板状ワークを載置し、板状ワークを回転させながら板状ワーク上面の変位を、ダイヤルゲージを用いて測定した。
アモルファス炭素膜の成膜前に、板状ワークにホットプレスを施した場合、初期の板状ワークに生じていた歪みを矯正することができ、かつ、成膜後の歪みの発生を防止できた(図17)。また、板状ワークにアモルファス炭素膜を成膜後、ホットプレスを施した場合、成膜によって板状ワークに生じた傘状の歪みを効果的に緩和することができた(図18)。この際、板状ワーク表面のアモルファス炭素膜は、酸化による劣化がなく、剥離や亀裂が生じることもなかった。
アモルファス炭素膜の成膜装置の概略説明図である。 アモルファス炭素膜の成膜装置の概略説明図であって、図1のX−X’断面図である。 実施例1〜4および比較例1のアモルファス炭素膜の成膜装置の陰極およびガス供給手段の断面図である。 実施例1〜4および比較例1のアモルファス炭素膜の成膜装置の部分拡大図であって、図3のY−Y’断面を上方から見た図である。 実施例5のアモルファス炭素膜の成膜装置のワーク固定具の説明図であって、(II)は板状ワークを固定した治具を示す(I)のZ−Z’での部分拡大断面図である。 実施例5のアモルファス炭素膜の成膜装置の板状ワークを示す図である。 実施例6のアモルファス炭素膜の成膜装置のワーク固定具の説明図であって、(I)は板状ワークを固定したワーク固定具の説明図、(II)は(I)のW−W’での断面図である。 実施例6のワーク固定具の模式図であって、板状ワークを固定する手順の説明図である。 実施例1のグロー放電の様子を模式的に示した図である。 実施例2のグロー放電の様子を模式的に示した図である。 実施例3のグロー放電の様子を模式的に示した図である。 実施例4のグロー放電の様子を模式的に示した図である。 比較例1のグロー放電の様子を模式的に示した図である。 本発明のアモルファス炭素膜の成膜方法における、処理ガス圧力とシース幅の関係の一例を示すグラフである。 ワーク固定具に板状ワークを左右方向に固定する場合の模式図である。 各実施例で行うホットプレスに用いるプレス装置を模式的に示した図であって、板状ワークをセットした状態の断面図である。 実施例1〜4および実施例6の板状ワークの歪みを示すグラフである。 実施例5の板状ワークの歪みを示すグラフである。 アモルファス炭素膜の成膜操作により生じた歪みを模式的に示した図であって、板状ワークを厚さ方向に積層した(ただし、図は1枚のみを示す)場合に、真上から見た場合の断面図(上図)および、真横から見た場合の断面図(下図)である。
符号の説明
11:成膜炉(チャンバー)
2a,2b,22,42:板状ワーク
3a,3b,23,43,53:ワーク固定具
230,430,530:保持具
31,32:ガスノズル
16:プラズマ電源
25:シース
100:プレス装置

Claims (22)

  1. プラズマCVD法によって導電性の板状ワークの表面にアモルファス炭素膜を形成するアモルファス炭素膜の成膜方法であって、
    成膜炉内に配置されかつマイナス極に結線されたワーク固定具に複数の該板状ワークを厚さ方向に平行にかつ積層状態で配置すると共に、シース幅が隣接する2個の該板状ワークの対向面間の間隔以下となるように、処理ガス圧力およびプラズマ電源を操作して行うことを特徴とするアモルファス炭素膜の成膜方法。
  2. 前記処理ガス圧力の範囲は13〜1330Paとし、前記隣接する2個の前記板状ワークの対向面間の間隔は2〜30mmである請求項1記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  3. 前記処理ガス圧力の範囲は、66.5〜1064Paである請求項1または2記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  4. 前記処理ガス圧力の範囲は、266〜798Paである請求項1または2記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  5. 前記隣接する2個の前記板状ワークの対向面間の間隔は、3〜20mmである請求項1または2記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  6. 前記隣接する2個の前記板状ワークの対向面間の間隔は、5〜15mmである請求項1または2記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  7. 前記板状ワークは、上下方向に積層されている請求項1〜6のいずれか1つに記載のアモルファス炭素膜を有する板状ワークの製造方法。
  8. 前記板状ワークは円盤状である請求項1〜7のいずれか1つに記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  9. 前記板状ワークはクラッチ板である請求項1〜7のいずれか1つに記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  10. さらに、前記アモルファス炭素膜の成膜操作の前に、前記板状ワークを成膜温度以上該板状ワークの変態温度未満でホットプレスする前矯正工程を有する請求項1〜9のいずれか1つに記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  11. 前記板状ワークは、炭素鋼からなる請求項10記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  12. 前記前矯正工程は、600℃以上700℃以下で前記板状ワークをホットプレスする請求項11記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  13. 前記前矯正工程は、630℃以上680℃以下で前記板状ワークをホットプレスする請求項11記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  14. さらに、前記アモルファス炭素膜の成膜操作の後に、表面にアモルファス炭素膜が形成された前記板状ワークをアモルファス炭素膜の成膜温度以下でホットプレスする後矯正工程を有する請求項1〜13のいずれか1つに記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  15. 前記板状ワークは、炭素鋼からなる請求項14記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  16. 前記後矯正工程は、300℃以上500℃以下で前記板状ワークをホットプレスする請求項15記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  17. 前記後矯正工程は、350℃以上450℃以下で前記板状ワークをホットプレスする請求項15記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  18. 前記処理ガスは、少なくともSiを含むSi含有ガスと炭化水素ガスとを含み、
    前記Si含有ガスは、有機金属含有ガスおよびハロゲン化合物のうちのいずれか1種以上である請求項1〜17のいずれか1つに記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  19. 前記有機金属含有ガスは、テトラメチルシランおよびシランのうちのいずれか1種以上である請求項18記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  20. 前記ハロゲン化合物は、四塩化シリコンである請求項18記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  21. 前記炭化水素ガスは、メタン、エチレン、アセチレンおよびベンゼンのうちのいずれか1種以上である請求項18記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
  22. 前記成膜炉は円筒状の炉室を持ち、前記ワーク固定具は該炉室と同軸的に等間隔でリング状に配置され、前記処理ガスを供給する複数の筒状のノズルが該炉室と同軸的に該ワーク固定具の遠心方向側で等間隔にリング状に配置されるとともに該炉室の中心に少なくとも1個互いに垂直方向に平行に配置されている請求項7記載のアモルファス炭素膜の成膜方法。
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