JP4329498B2 - 柱上変圧器中pcbの脱塩素化方法 - Google Patents

柱上変圧器中pcbの脱塩素化方法 Download PDF

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Description

本発明は、柱上変圧器中のポリ塩化ビフェニール(以下PCBと略称することがある。)を脱塩素化して無害化する方法に関する。
各種ハロゲン化有機化合物のなかでも、PCBは人体を含む生体に極めて有害であることから、1973年に特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が禁止されている。しかし、その後適切な廃棄方法が決まらないまま数万トンのPCBが未処理の状態で放置されている。PCBは、高温(30〜750℃)分解では強毒性のダイオキシン類である塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン(PCDD)とジベンゾフラン(PCDF)が副生することから、技術的にPCBを安全に分解することが難しく、永年にわたりPCBの安全で効率的な各種分解法が検討されている。
例えば、特開2001−19646号公報には、白金を担持した活性炭と芳香族塩素化合物(パラクロロフェノール)を含む混合系に、水素ガスを吹き込みながらマイクロ波を照射することにより、有害有機塩素化合物を脱塩素化する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、特開平6−25691号公報には、ハロゲン化芳香族化合物を少量含む炭化水素油(PCBを含む回収トランス油)を、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を溶媒として、ナトリウムエトキシドやNaOH等のアルカリ物質の存在下で100℃以上300℃以下で加熱した後、炭化水素油を分離することにより、ハロゲン化芳香族化合物を除去する方法が提案されている(特許文献2参照)。
一方、特開平8−266888号公報には、芳香族ハロゲン化合物を、第2アルコール中で分解触媒とアルカリ化合物の存在下に、30〜100℃に加熱して分解する方法が提案されている(特許文献3参照)。
更に、特開平4−202500号公報(特許第1982066号)には、有機塩素化合物を含有する電気絶縁油にゼオライト・ニッケル触媒等の卑金属触媒を添加し、水素ガス雰囲気中、加熱温度条件下で水素化することにより、脱塩素化する方法が提案されている(特許文献4参照)。
特開2001−19646号公報(請求項1、段落番号0009) 特開平6−25691号公報(請求項1、請求項5、段落番号0004、段落番号0011等) 特開平8−266888号公報(請求項1、段落番号0011等) 特開平4−202500号公報(第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第8行等)
しかしながら、上記特開2001−19646号公報記載の方法では、水素ガスを芳香族塩素系化合物を含む反応系に外部から供給する必要があり、実用的な手法としては好ましくない。また、特開平6−25691号公報記載の方法で使用されている溶媒DMIは2000円/kgと高価であり、また、該方法では残存PCB割合が多く、脱塩素化を十分行うためには反応時間を長くする必要があるため、PCBの大量処理には不向きである。一方、特開平8−266888号公報記載の方法では溶液を還流条件(78℃)まで加熱する必要が有り、さらに、実際の柱上変圧器中絶縁油に微量混入されるPCBの分解方法については一切言及していない。
また、特開平4−202500号公報記載の方法では、水素添加が必須であり、水素を扱うための防爆装置等も必要とされるため実用的ではない。また、高温(150〜250℃)での反応であるため、副反応生成物が生成する可能性が高い。よって、安全に大量処理が可能で、かつ安価で分解処理が可能な方法の開発が望まれている。
そこで本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、脱塩素化が困難な柱上変圧器中絶縁油に微量混入されるPCBを、安全に大量に脱塩素化して無毒化することができ、より低コストで実用上可能な脱塩素化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、PCBを微量含有する絶縁油が入ったまま放置されている柱上変圧器の容器の隙間部分に有機系水素供与体を添加して、アルカリ化合物及び無機系触媒の存在下で攪拌することにより、外部から水素及び熱を供給することなくPCBの脱塩素化が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリ塩化ビフェニール(PCB)を微量含有する柱上変圧器の絶縁油に水素供与体、アルカリ化合物及び無機系触媒を添加し、撹拌した後、常温(−15〜60℃)で放置する事により脱塩素化することを特徴とするポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法を提供するものである。前記水素供与体、アルカリ化合物及び無機系触媒の合計添加量は、絶縁油量の5〜30wt%であり、かつ、柱上変圧器上部の隙間に収容可能な量である本発明によれば、外部から水素及び熱を供給することなくPCBの脱塩素化が可能であるため、低コストで、安全に大量のPCBを脱塩素化して無毒化することができる。さらに、添加する薬剤の量は絶縁油の量に対し、5〜30wt%と柱上変圧器の隙間部分に入る量であるため、特別な反応容器を必要とせず、柱上変圧器を保管している貯蔵所等の現場で処理することをも可能としたものである。前記撹拌方法としては、柱上変圧器容器の振とう又は内部の攪拌による方法などを適用してもよい。
前記ポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法においては、前記水素供与体が、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物及び脂環式化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることが好ましい。水素供与体のなかでもこれらの有機系水素供与体の一種又は二種以上の混合物を使用することにより、PCBの脱塩素化効率を高めることができる。
また、前記ポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法においては、前記アルカリ化合物が、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることが好ましい。アルカリ化合物のなかでもこれらの化合物の一種又は二種以上の化合物を使用することにより、PCBの脱塩素化効率を高めることができる。
また、前記ポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法においては、前記無機系触媒が、炭素結晶化合物及び金属担持炭素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つ化合物であることが好ましい。無機系触媒のなかでもこれらの化合物の一種又は二種以上の化合物を使用することにより、PCBの脱塩素化効率を高めることができる。
また、本発明のポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法においては、さらに芳香族炭化水素を添加してもよい。当該化合物を添加することにより、PCBの脱塩素化効率をより一層高めることができる。
以上説明した通り、本発明によれば、PCBを微量含有する柱上変圧器の絶縁油を、新たな反応容器を用意することなく常温、常圧で簡易に分解処理することができるので、柱上変圧器貯蔵所などの現場でそのまま脱塩素化処理を実施することができる。よって、実用的な規模で大量のPCBを無毒化することが可能となるので、その実用的価値は大である。
本発明の柱上変圧器中PCBの脱塩素化方法は、PCBを微量含有する絶縁油に水素供与体、アルカリ化合物及び無機系触媒を添加して撹拌し、常温で放置することを特徴とするものである。以下、本発明の詳細を説明する。
本発明で対象とするポリ塩化ビフェニールとしては、ビフェニール化合物に塩素原子が置換した化合物が含まれ、その置換塩素原子の数は1個〜10個である。平均置換塩素原子数は、一般に2〜6個である。本発明では、これらのポリ塩化ビフェニールから選択された少なくとも一種を用いることができ、それぞれ単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
一般に、ポリ塩化ビフェニールは単一化合物として存在せずに、塩素原子の数や置換位置が異なる混合物として存在する。従って、塩素原子の数及び置換位置の組み合せからして209種の異性体が存在し、市販品には100を越える異性体が存在している。
例えば、コプラナーPCBとしては、3,4,4’,5−テトラクロロビフェニール、3,3’,4,4’−テトラクロロビフェニール、3,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’−ペンタクロロビフェニール、2,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2’,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’,5−ヘキサクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサクロロビフェニール、2,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’,5,5’−ヘプタクロロビフェニール等が挙げられる。
PCBは、通常PCB単体の混合物として市販されており、これらがコンデンサやトランスに使用されている。その具体例としては、鐘淵化学(株)の KC−200(2塩化ビフェニール)、KC−300(3塩化ビフェニール)、KC−400(4塩化ビフェニール)、KC−500(5塩化ビフェニール)、KC−600(6塩化ビフェニール)や、三菱モンサイト(株)のアロクロール1254(54% Chlorine)等が挙げられる。
以下に一例として、市販品KC−300の異性体の分布(重量%)を示す。
モノクロロビフェニール 若干
ジクロロビフェニール 12.10%
トリクロロビフェニール 54.98%
テトラクロロビフェニール 27.05%
ペンタクロロビフェニール 4.72%
ヘキサクロロビフェニール 1.08%
ヘプタクロロビフェニール 若干
オクタクロロビフェニール 0
ノナクロロビフェニール 0
デカクロロビフェニール 0
本発明において、「水素供与体」とは、ポリ塩化ビフェニールから発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味し、例えば、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物、及び脂環式化合物等の有機系水素供与体等が挙げられる。これらの化合物はPCBの脱塩素化効率に優れている。中でも、安全性の観点より、アルコール系化合物、ケトン系化合物、脂環式化合物が好ましく、特に、アルコール系化合物が好ましい。水素供与体は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
ここで、前記の複素環式化合物としては、例えば1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等が挙げられる。
前記のアミン系化合物としては、例えばジメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
前記のアルコール系化合物としては、脂肪族アルコール、芳香族アルコールのいずれであってもよく、直鎖又は分岐鎖を有する一価アルコールや多価アルコールを、制限なく用いることができる。アルコール系化合物の炭素数は1〜12の範囲が好ましく、より好ましくは2〜9の範囲、さらに好ましくは3〜6の範囲である。前記アルコール系化合物の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール等の脂肪族アルコール、シクロプロピルアルコール、シクロブチルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等の脂環式アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、デカリンジオール等の多価アルコール等が挙げられる。これらの中でも、分解効率の点から2−プロパノール、シクロヘキサノールが特に好ましい。
前記のケトン系化合物としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トリシクロドデカノン等が挙げられる。
前記の脂環式化合物としてはテトラリン、シクロヘキサン等が挙げられる。
本発明で用いるアルカリ化合物としては、ポリ塩化ビフェニールの脱塩素化反応を促進しうるものであれば制限なく使用することができるが、脱塩素化効率を高める観点より、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化カルシウム等が好ましく用いられる。中でも、コストやハンドリング性の観点より、苛性ソーダ、苛性カリが特に好ましい。アルカリ化合物は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
本発明で用いる無機系触媒としては、ポリ塩化ビフェニールの脱塩素化反応を促進しうるものであれば制限なく使用することができ、その種類は特に限定されない。無機系触媒は触媒寿命が長く、かつ、アルカリ化合物存在下でも安定であるため、有機系触媒よりも好適に用いられる。無機系触媒の好ましい具体例としては、脱塩素化効率を高める観点より、複合金属酸化物、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物及び金属酸化物等が好ましく用いられる。中でも、アルカリ性雰囲気で安全性が高い点より、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物が好ましく、特に金属担持炭素化合物が好ましい。無機系触媒は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
ここで、前記の炭素結晶化合物としては、グラファイト、カーボンナノチューブ(金属を含むものと含まないものの双方が含まれる)、フラーレン等が挙げられる。
また前記の金属担持炭素化合物としては、金属を担持した炭素化合物であれば制限なく用いることができ、その金属担持量は、触媒全量に対して1〜20wt%、より好ましくは5〜10wt%であるのがよい。担持される金属としては、例えば、鉄、銀、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム等が挙げられ、脱塩素化効率を高める観点より、パラジウム、ルテニウム、白金が好ましい。金属担持炭素化合物の具体例としては、例えば、Pd/C(パラジウム担持炭素化合物)、Ru/C(ルテニウム担持炭素化合物)、Pt/C(白金担持炭素化合物)等が挙げられる。金属担持炭素化合物の粒子径は75〜300μmが好ましく、300μmを超える場合は反応性が悪くなり、75μm未満の場合はハンドリング性が悪くなる。より好ましくは125〜250μmが望ましい。
本発明の方法で用いるアルカリ化合物/水素供与体/ポリ塩化ビフェニールの割合は、0.001〜5/10/0.000001〜10(モル比)とすることが好ましい。アルカリ化合物のモル比が0.001未満では分解反応が進まない。また、アルカリ化合物のモル比が5を超えると攪拌混合が難しくなる。また、ポリ塩化ビフェニールのモル比が0.000001未満でも反応は十分進むが、実用上意味がなく、ポリ塩化ビフェニールのモル比が10を超えると、その脱塩素反応が不十分となる。前記三成分のモル比は、0.1〜3/10/0.1〜5が好ましく、特に1〜3/10/0.1〜1が好ましい。
また、無機系触媒の添加量は、反応溶液全量に対する重量比として、0.000001〜0.1とするのが好ましい。前記重量比が0.000001未満では水素発生量が少なくなるため脱塩素化が進行し難くなり、前記重量比が0.1を超えると反応系の撹拌混合が難しくなり、経済的にも不利となる。さらに好ましくは0.0001〜0.01が望ましく、特に、0.001〜0.002が望ましい。
本発明の脱塩素化方法では、PCBを微量含有する絶縁油に、上記の水素供与体、アルカリ化合物及び無機系触媒の他に、芳香族炭化水素を添加することもできる。芳香族炭化水素の添加は、PCBの脱塩素化の促進と、当該化合物添加による絶縁油の粘度上昇を抑えることができる点で好ましい。前記芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、クメン、キシレン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
本発明の方法で用いる薬剤(水素供与体、アルカリ化合物及び無機系触媒の合計)の添加量は、柱上変圧器上部の隙間に収容可能な量であればよいが、柱上変圧器の大きさや絶縁油量を考慮すると、絶縁油と等量以下の使用とするのが好ましく、より好ましくはPCBを微量含有する絶縁油に対し、合計で5〜30wt%であることが望ましい。5wt%未満ではPCBの分解反応が不十分であり、30wt%を超える添加量では、地震による揺れで絶縁油が容器外に溢れるおそれがあり、また、柱上変圧器容器内の絶縁油の攪拌効率が低下し、経済的にも不利となる。さらに、分解反応で大量のアセトンが副生することになり、好ましくないからである。特に好ましくは、10〜30wt%とするのが良い。
前記芳香族炭化水素の添加量は、PCBを微量含有する絶縁油に対し、5〜80wt%が好ましく、より好ましくは5〜50wt%が望ましい。5wt%未満ではPCBの分解促進効果が不十分であり、80wt%を超える場合は柱上変圧器上部の隙間に収容不可となる。特に好ましくは、10〜30wt%とするのが良い。
本発明において攪拌する場合、振とうによる外部からの攪拌、攪拌子による内部からの攪拌、超音波によるミクロ的な攪拌の三通りが考えられるが、いずれの方法を用いてもよい。振とうによる外部からの攪拌としては、例えば、柱上変圧器容器を、振動式攪拌機、振動台、振とう機等を用いて加振する方法(例えば、垂直および/または水平方向へ平行振動させる方法、回旋振動させる方法など)などが挙げられる。攪拌子による内部からの攪拌としては、例えば、攪拌羽根やマグネチックスターラー等の攪拌子を用いて柱上変圧器内部の絶縁油を攪拌する方法などが挙げられる。
振とうあるいは攪拌子による攪拌の場合、その回転数は5rpm〜500rpmの範囲とするのが好ましい。5rpm未満では分解反応速度が遅くなり、500rpmを超えると振とうのエネルギー効率が悪くなる。より好ましくは、20rpm〜200rpmの範囲が望ましい。
攪拌する場合、連続攪拌、間欠攪拌のいずれの方法を採用してもよい。攪拌時間及び攪拌停止時間は、絶縁油中のPCB濃度、水素供与体、反応触媒等に応じて適宜に決定することができる。
反応時間は特に限定されないが、外部からの振とうによる攪拌の場合には、1時間〜96時間、より好ましくは1時間〜48時間が望ましい。1時間未満ではPCBの分解反応が不十分であり、96時間を超える反応時間では振とうの意味がない。さらに望ましくは5時間〜24時間とするのがよい。一方、内部からの攪拌子による攪拌や超音波によるミクロ的な攪拌の場合には0.5日〜6ヶ月が望ましい。0.5日未満ではPCBの分解反応が不十分であり、6ヶ月を超える反応時間では実用上意味がない。さらに望ましくは1日〜3ヶ月とするのがよい。
本発明の方法においては、上記の薬剤を柱上変圧器上部の隙間に添加し、攪拌後、常温(−15〜60℃)で放置する事によりPCBの脱塩素化反応が進行するので、外部加熱は不要である。
本発明の方法によれば、柱上変圧器の絶縁油に50ppm以下程度の微量に含まれるPCBが分解されるので、当該方法で分解されたビフェニール等を含有する絶縁油を柱上変圧器容器から回収することにより、トランス、コンデンサ等の絶縁油として再利用することができる。
本発明のPCBを微量に含有する柱上変圧器の絶縁油の脱塩素化方法によれば、外部から水素ガスや熱を加える場合より若干遅い速度でPCBが分解し脱塩素化される。その機構は明らかではないが、アルカリ化合物から提供されるアルカリ金属ラジカルがPCBの脱ハロゲン化反応を促し、そこに水素供与体からの水素ラジカルが入り込むものと考えられる。分解速度が遅くとも柱上変圧器の貯蔵所等の敷地内であれば新たな反応容器等を用意せずとも放置するだけでPCBを処理できる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」及び「質量部」は、それぞれ「%」及び「部」と略記する。
(実施例1)
PCB含有の絶縁油模擬油として、和光純薬製特級試薬のクメン100mlにKC−400(4塩化ビフェニール、鐘淵化学(株)製)を混ぜてPCB10ppmの溶液としたものを三角フラスコに用意した。そこに、アルカリ物質として、日本曹達製KOHフレーク(95%)を乳鉢ですりつぶして0.5gを、有機系水素供与体として和光純薬製イソプロピルアルコール20mlを、無機系触媒としてパラジウムを5wt%担持した80−100メッシュの活性炭(Pd/C:和光純薬製)0.2gを添加し、東京理化機械製の振とう機(EYELA3010型)で100rpmで24時間振とうさせた。実験は常温(約25℃)で実施した。評価結果を表1に示す。
実験で用いたKC−400の異性体分布(重量%)を以下に示す。
モノクロロビフェニール 0.01%
ジクロロビフェニール 0.48%
トリクロロビフェニール 17.47%
テトラクロロビフェニール 51.43%
ペンタクロロビフェニール 27.92%
ヘキサクロロビフェニール 2.55%
ヘプタクロロビフェニール 0.14%
オクタクロロビフェニール 0%
ノナクロロビフェニール 0%
デカクロロビフェニール 0%
(テトラクロロビフェニールの組成)2,3,4,5−テトラクロロビフェニール、2,3,4,6−テトラクロロビフェニール、2,2’,3,4−テトラクロロビフェニール、2,3,3’,4−テトラクロロビフェニール、2,3,4,4’−テトラクロロビフェニール、3,4,4’,5−テトラクロロビフェニール、3,3’,4,4’−テトラクロロビフェニールなどを主に含有。
(評価方法)
反応前後の溶液をDB1(J&Wサイエンティフィック製)をキャピラリーカラムとする(株)島津製作所製のガスクロマトグラフィー質量分析計QP5050(以下、「GC−MS」)にかけ、PCBのピーク面積の変化から脱塩素化(分解率)を確認した。同時に分解生成物であるビフェニールの量も計測した。絶縁油そのものを用いるときには、Sep−Pak前処理を施してからGC−MSにかけた。
なお、脱塩素化反応の評価は以下の基準で行った。
○:良好(分解率90%以上)、×:不良(分解率90%未満)
Figure 0004329498
表1の結果から実施例1では反応時間24時間での結果であるが、PCBの大部分が消失し、分解生成物であるビフェニールが当量分生成していることが確認できた。
(実施例2)
KC−400を10ppm含有する絶縁油7種4号100mlを三角フラスコに用意した。そこに、アルカリ物質として、日本曹達製KOHフレーク(95%)を乳鉢ですりつぶして0.5gを、有機系水素供与体として和光純薬製イソプロピルアルコール20mlを、無機系触媒としてパラジウムを5wt%担持した80−100メッシュの活性炭(Pd/C:和光純薬製)0.2gを添加し、常温(約25℃)にて、東京理化機械製の振とう機(EYELA3010型)で100rpmで4日間振とうさせた後、16日間静置した。
(実施例3〜5)
KC−400を2ppm含有する絶縁油7種4号100mlを三角フラスコに用意した。そこに、アルカリ物質として、日本曹達製KOHフレーク(95%)を乳鉢ですりつぶして0.5gを、有機系水素供与体として和光純薬製イソプロピルアルコール20mlを、無機系触媒としてパラジウムを5wt%担持した80−100メッシュの活性炭(Pd/C:和光純薬製)0.2〜0.4gを添加し、東京理化機械製の振とう機(EYELA3010型)で100rpmで4日間振とうさせた後、16日間静置した。なお、実験は常温(約25℃〜40℃)で実施した。
(実施例6)
KC−400を2ppm含有する絶縁油7種4号100mlに、実施例4と同様のアルカリ物質0.5g、有機系水素供与体20ml及び無機系触媒0.4gを添加し、常温(約25℃)にて、スターラーを用いて200rpmで4日間強攪拌した後、16日間静置した。
(実施例7)
KC−400を2ppm含有する絶縁油7種4号100mlに、実施例3と同様のアルカリ物質0.5g、有機系水素供与体20ml及び無機系触媒0.2gを添加し、更に、水30mgを添加した。これを、常温(約25℃)にて、東京理化機械製の振とう機(EYELA3010型)で100rpmで4日間振とうさせた後、16日間静置した。
(実施例8)
KC−400を2ppm含有する絶縁油7種4号100mlを三角フラスコに用意した。そこに、アルカリ物質として、日本曹達製KOHフレーク(95%)を乳鉢ですりつぶして0.5gを、有機系水素供与体として和光純薬製イソプロピルアルコール20mlを、無機系触媒としてパラジウムを5wt%担持した80−100メッシュの活性炭(Pd/C:和光純薬製)0.2gを添加し、更にトルエン18.75mlを添加した。これを、常温(約25℃)にて、東京理化機械製の振とう機(EYELA3010型)で100rpmで3日間振とうさせた。その後、上記の無機系触媒(Pd/C)0.2gを追添加して攪拌した後、17日間静置した。
(実施例9)
KC−400を2ppm含有する絶縁油7種4号100mlを三角フラスコに用意した。そこに、アルカリ物質として、日本曹達製KOHフレーク(95%)を乳鉢ですりつぶして0.5gを、有機系水素供与体として和光純薬製イソプロピルアルコール20mlを、無機系触媒としてパラジウムを5wt%担持した80−100メッシュの活性炭(Pd/C:和光純薬製)0.2gを添加し、更に、水30mgとトルエン18.75mlを添加した。これを、常温(約25℃)にて、東京理化機械製の振とう機(EYELA3010型)で100rpmで3日間振とうさせた。その後、上記の無機系触媒(Pd/C)0.2gを追添加して攪拌した後、17日間静置した。
実施例2〜9の実験条件、評価結果を表2にまとめて示す。
Figure 0004329498
表2の結果から、経日によりPCBが消失することが確認できた。また、触媒添加量の増加、分解処理温度の上昇、攪拌力の増大により、PCBの分解が速くなることがわかった。また、トルエン等の芳香族炭化水素を添加した場合(実施例8)は、トルエン無添加の場合(実施例4)に比べてPCBの分解が速いことがわかった。
さらに表2の結果から、水存在下でもPCBの分解が進行することが確認できた。従って、長期間使用された柱上変圧器容器に雨水等が混入している場合であっても、問題なくPCBの脱塩素化が可能であることが確認できた。

Claims (6)

  1. ポリ塩化ビフェニールを微量含有する柱上変圧器の絶縁油に水素供与体、アルカリ化合物及び無機系触媒を、これらの合計添加量が前記絶縁油量の5〜30wt%で、かつ、柱上変圧器上部の隙間に収容可能な量添加し、該変圧器内にて絶縁油を常温(非加熱)で撹拌した後、放置する事により脱塩素化することを特徴とするポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法。
  2. 前記撹拌方法は、柱上変圧器容器の振とう又は内部の攪拌による方法であることを特徴とする請求項1に記載のポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法。
  3. 前記水素供与体が、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物及び脂環式化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法。
  4. 前記アルカリ化合物が、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法。
  5. 前記無機系触媒が、炭素結晶化合物及び金属担持炭素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法。
  6. さらに、芳香族炭化水素を添加することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリ塩化ビフェニールの脱塩素化方法。
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