JP2004201702A - ポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリ塩化ビフェニール混合物と水素供与体とを含む反応系に、アルカリ化合物及び無機系触媒の存在下でマイクロ波を照射することにより、外部から水素を供給することなく、ポリ塩化ビフェニール混合物を脱塩素化する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩化ビフェニール(以下PCBと略称することがある。)混合物を脱塩素化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種ハロゲン化有機化合物のなかでも、PCBは人体を含む生体に極めて有害であることから、1973年に特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が禁止されている。しかし、その後適切な廃棄方法が決まらないまま数万トンのPCBが未処理の状態で放置されている。PCBは、高温(30〜750℃)分解では強毒性のダイオキシン類である塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン(PCDD)とジベンゾフラン(PCDF)が副生することから、技術的にPCBを安全に分解することが難しく、永年にわたりPCBの安全で効率的な各種分解法が検討されている。
【0003】
例えば、特開2001−19646号公報には、白金を担持した活性炭と芳香族塩素化合物(パラクロロフェノール)を含む混合系に、水素ガスを吹き込みながらマイクロ波を照射することにより、有害有機塩素化合物を脱塩素化する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、特開平6−25691号公報には、ハロゲン化芳香族化合物を少量含む炭化水素油(PCBを含む回収トランス油)を、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を溶媒として、ナトリウムエトキシドやNaOH等のアルカリ物質の存在下で100℃以上300℃以下で加熱した後、炭化水素油を分離することにより、ハロゲン化芳香族化合物を除去する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−19646号公報(請求項1、段落番号0009)
【特許文献2】
特開平6−25691号公報(請求項1、請求項5、段落番号0004、段落番号0011等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開2001−19646号公報の発明においては、水素ガスを芳香族塩素系化合物を含む反応系に外部から供給する必要があり、実用的な手法としては好ましくない。また、芳香族塩素化合物としてp−クロロフェノールの1%水溶液を対象としており、油系でより高濃度なものの無毒化技術は未だ存在しない。さらに、特開平6−25691号公報記載の方法で使用されている溶媒DMIは2000円/kgと高価であり、また、該方法では残存PCB割合が多く、脱塩素化を十分行うためには反応時間を長くする必要があるため、PCBの大量処理には不向きである。よって、安全に大量処理が可能で、かつ安価で短時間に分解処理が可能な方法の開発が望まれている。
【0007】
また、PCBには粘性を調整するため、トリクロロベンゼン(TCB)等のハロゲン化芳香族化合物が混合されることが多いが、混合物とすることにより、均一な条件での脱塩素化が難しくなるという課題がある。
【0008】
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、脱塩素化が困難なポリ塩化ビフェニール混合物を、短時間で安全に大量に脱塩素化して無毒化することができ、より低コストで実用上可能な脱塩素化方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、PCBやTCB等のハロゲン化芳香族化合物と有機系水素供与体とを含む反応系に、アルカリ化合物及び無機系触媒の存在下でマイクロ波を照射することにより、外部から水素を供給することなく短時間でPCBの脱塩素化が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリ塩化ビフェニール混合物と水素供与体とを含む反応系に、アルカリ化合物及び無機系触媒の存在下でマイクロ波を照射することを特徴とするポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法を提供するものである。本発明によれば、外部から水素を供給することなく短時間でPCB混合物の脱塩素化が可能であるため、低コストで、安全に大量のPCB混合物を脱塩素化して無毒化することができる。
【0011】
前記ポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法においては、前記アルカリ化合物が、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることが好ましい。アルカリ化合物のなかでもこれらの化合物の一種又は二種以上の化合物を使用することにより、PCB混合物の脱塩素化効率を高めることができる。
【0012】
また、前記ポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法においては、前記水素供与体が、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物及び脂環式化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることが好ましい。水素供与体のなかでもこれらの有機系水素供与体の一種又は二種以上の混合物を使用することにより、PCB混合物の脱塩素化効率を高めることができる。
【0013】
また、前記ポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法においては、前記無機系触媒が、複合金属酸化物、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物及び金属酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であることが好ましい。無機系触媒のなかでもこれらの化合物の一種又は二種以上の化合物を使用することにより、PCB混合物の脱塩素化効率を高めることができる。
【0014】
また、本発明のポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法においては、前記ポリ塩化ビフェニール混合物が、ポリ塩化ビフェニールとハロゲン化芳香族化合物との混合物であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法は、ポリ塩化ビフェニール混合物と水素供与体とを含む反応系に、アルカリ化合物及び無機系触媒の存在下でマイクロ波を照射することを特徴とするものである。以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
本発明で用いるポリ塩化ビフェニールとしては、ビフェニール化合物に塩素原子が置換した化合物が含まれ、その置換塩素原子の数は1個〜10個である。平均置換塩素原子数は、一般に2〜6個である。本発明では、これらのポリ塩化ビフェニールから選択された少なくとも一種を用いることができ、それぞれ単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
【0017】
一般に、ポリ塩化ビフェニールは単一化合物として存在せずに、塩素原子の数や置換位置が異なる混合物として存在する。従って、塩素原子の数及び置換位置の組み合せからして209種の異性体が存在し、市販品には100を越える異性体が存在している。
【0018】
例えば、コプラナーPCBとしては、3,4,4’,5−テトラクロロビフェニール、3,3’,4,4’−テトラクロロビフェニール、3,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’−ペンタクロロビフェニール、2,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2’,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’,5−ヘキサクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサクロロビフェニール、2,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’,5,5’−ヘプタクロロビフェニール等が挙げられる。
【0019】
PCBは、通常PCB単体の混合物として市販されており、これらがコンデンサやトランスに使用されている。その具体例としては、鐘淵化学(株)の KC−200(2塩化ビフェニール)、KC−300(3塩化ビフェニール)、KC−400(4塩化ビフェニール)、KC−500(5塩化ビフェニール)、KC−600(6塩化ビフェニール)や、三菱モンサイト(株)のアロクロール1254(54% Chlorine)等が挙げられる。
【0020】
以下に一例として、市販品KC−300の異性体の分布(重量%)を示す。
モノクロロビフェニール 若干
ジクロロビフェニール 12.10%
トリクロロビフェニール 54.98%
テトラクロロビフェニール 27.05%
ペンタクロロビフェニール 4.72%
ヘキサクロロビフェニール 1.08%
ヘプタクロロビフェニール 若干
オクタクロロビフェニール 0
ノナクロロビフェニール 0
デカクロロビフェニール 0
【0021】
本発明におけるポリ塩化ビフェニール混合物としては、ポリ塩化ビフェニールとハロゲン化芳香族化合物との混合物が好ましく用いられる。その混合割合は特に限定されないが、一般に、ポリ塩化ビフェニール/ハロゲン化芳香族化合物=9/1〜5/5(重量比)であることが好ましく、より好ましくは8/2〜5/5(重量比)であるのがよい。特に好ましくは、7/3〜6/4(重量比)である。前記ポリ塩化ビフェニール/ハロゲン化有機化合物の割合が9/1未満の場合は油の粘性が高くなり、一方、その割合が5/5を超える場合は絶縁性能が低下するからである。
【0022】
前記ハロゲン化芳香族化合物としては、芳香族化合物にハロゲン原子が置換しているものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、トリクロロベンゼン(TCB)、ジクロロベンゼン(DCB)、テトラクロロベンゼン等が挙げられる。一般には、トリクロロベンゼン(TCB)が多用されている。
【0023】
市販のポリ塩化ビフェニール混合物としては、例えば、鐘淵化学(株)製のKC−1000(KC500/TCB=60/40(重量比)の混合物)、KC−1300(KC−300+DCB+4塩化ベンゼンの混合物)等が挙げられる。
【0024】
本発明において、ポリ塩化ビフェニール混合物には、これが用いられている装置(トランス、コンデンサ等)などからポリ塩化ビフェニール混合物を取り出す場合に用いられる種々の物質、例えばドデカン等の洗浄剤等が含まれていてもよい。
【0025】
本発明において、「水素供与体」とは、ポリ塩化ビフェニール及びハロゲン化芳香族化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味し、例えば、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物、及び脂環式化合物等の有機系水素供与体等が挙げられる。これらの化合物はポリ塩化ビフェニール及びハロゲン化芳香族化合物の脱塩素化効率に優れている。中でも、安全性の観点より、アルコール系化合物、ケトン系化合物、脂環式化合物が好ましく、特に、アルコール系化合物が好ましい。水素供与体は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
【0026】
ここで、前記の複素環式化合物としては、例えば1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等が挙げられる。
【0027】
前記のアミン系化合物としては、例えばジメチルエチレンジアミン(DED)等が挙げられる。
【0028】
前記のアルコール系化合物としては、脂肪族アルコール、芳香族アルコールのいずれであってもよく、直鎖又は分岐鎖を有する一価アルコールや多価アルコールを、制限なく用いることができる。アルコール系化合物の炭素数は1〜12の範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜9の範囲である。前記アルコール系化合物の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等の脂肪族アルコール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール等の脂環式アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、デカリンジオール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0029】
前記のケトン化合物としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トリシクロドデカノン等が挙げられる。
【0030】
前記の脂環式化合物としてはテトラリン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いるアルカリ化合物としては、ポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化反応を促進しうるものであれば制限なく使用することができるが、脱塩素化効率を高める観点より、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化カルシウム等が好ましく用いられる。中でも、コストやハンドリング性の観点より、苛性ソーダ、苛性カリが特に好ましい。アルカリ化合物は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
【0032】
本発明で用いる無機系触媒としては、ポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化反応を促進しうるものであれば制限なく使用することができるが、脱塩素化効率を高める観点より、複合金属酸化物、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物、金属酸化物等が好ましく用いられる。中でも、アルカリ性雰囲気で安全性が高い点より、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物が好ましく、特に金属担持炭素化合物が好ましい。無機系触媒は、単独で又は二種以上を任意に組合わせて使用することができる。
【0033】
ここで、前記の複合金属酸化物としては、例えば金属担持ゼオライト、トバモライト、アスベスト等が挙げられる。
【0034】
前記の炭素結晶化合物としては、グラファイト、カーボンナノチューブ(金属を含むものと含まないものの双方が含まれる)、フラーレン等が挙げられる。
【0035】
前記の金属担持炭素化合物としては、金属を担持した炭素化合物であれば制限なく用いることができ、その金属担持量は、触媒全量に対して1〜20wt%、より好ましくは5〜10wt%であるのがよい。担持される金属としては、例えば、鉄、銀、白金等が挙げられ、脱塩素化効率を高める観点より、銀、白金が好ましい。金属担持炭素化合物の具体例としては、例えば、Fe/C(鉄担持炭素化合物)、Ag/C(銀担持炭素化合物)、Pt/C(白金担持炭素化合物)等が挙げられる。金属担持炭素化合物の粒子径は75〜300μmが好ましく、300μmを超える場合は反応性が悪くなり、75μm未満の場合はハンドリング性が悪くなる。より好ましくは125〜250μmが望ましい。
【0036】
前記の金属酸化物としては、例えば、NiO、Fe2O3、Fe3O4等が挙げられる。
【0037】
本発明においてマイクロ波を照射する場合、その出力は10W〜20kWの範囲とするのが好ましい。10W未満では分解反応速度が遅くなり、20kWを超えるとマイクロ波の利用率が悪くなる。より好ましくは、65W〜5kWの範囲が望ましい。
【0038】
マイクロ波の周波数は、1〜300GHzの範囲とするのが好ましい。1GHz未満又は300GHzを超えた周波数範囲では、無機系触媒や水素供与体の加熱が不十分となる。より好ましくは、1〜5GHzの範囲が望ましい。
【0039】
マイクロ波を照射する場合、連続照射、間欠照射のいずれの方法を採用してもよい。照射時間及び照射停止時間は、反応に供するポリ塩化ビフェニール混合物の種類、水素供与体、反応触媒等に応じて適宜に決定することができる。
【0040】
反応時間は特に限定されないが、一般に、0.01分〜5時間が望ましい。0.01分未満ではポリ塩化ビフェニール混合物の分解反応が不十分であり、5時間を超える反応時間では実用上意味がない。さらに望ましくは5分〜3時間とするのがよい。
【0041】
本発明では、反応は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが、望ましくない副反応を抑制する点で、より好ましい。
【0042】
本発明の方法で用いるアルカリ化合物/水素供与体/ポリ塩化ビフェニール混合物の割合は、0.001〜5/10/0.000001〜10(モル比)とすることが好ましい。アルカリ化合物のモル比が0.001未満では分解反応が進まない。また、アルカリ化合物のモル比が5を超えると攪拌混合が難しくなる。また、ポリ塩化ビフェニール混合物のモル比が0.000001未満でも反応は十分進むが、実用上意味がなく、ポリ塩化ビフェニール混合物のモル比が10を超えると、その脱塩素反応が不十分となる。前記三成分のモル比は、0.1〜3/10/0.001〜5が好ましく、特に1〜3/10/0.01〜1が好ましい。
【0043】
また、無機系触媒の添加量は、反応溶液全量に対する重量比として、0.000001〜0.1とするのが好ましい。前記重量比が0.000001未満では水素発生量が少なくなるため脱塩素化が進行し難くなり、前記重量比が0.1を超えると反応系の撹拌混合が難しくなり、経済的にも不利となる。さらに好ましくは0.0001〜0.01が望ましく、特に、0.001〜0.002が望ましい。
【0044】
本発明のポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法によれば、反応系に外部から水素ガスを吹き込んだ場合と同等もしくはそれ以上の速い速度でポリ塩化ビフェニール及びハロゲン化芳香族化合物が分解し脱塩素化される。その機構は明らかではないが、アルカリ化合物から提供されるアルカリ金属ラジカルが、ポリ塩化ビフェニール及びハロゲン化芳香族化合物の脱ハロゲン化反応を促し、そこに水素供与体からの水素ラジカルが入り込むものと考えられる。
【0045】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」及び「質量部」は、それぞれ「%」及び「部」と略記する。
【0046】
(実施例1)
アルカリ物質として、日本曹達製KOHフレーク(95%)を乳鉢ですりつぶしたもの6.86gを、有機系水素供与体として和光純薬製シクロヘキサノール61.18gを、無機系触媒として白金を5wt%担持した80−100メッシュの活性炭(Pt/C:和光純薬製)100mgを、PCB混合物としてKC−1000(KC−500/トリクロロベンゼンの6/4(重量比)の混合物、鐘淵化学(株)製)0.60gをそれぞれ秤量し、内容量200mlの三つ口フラスコに導入後、窒素ガスで置換後マグネチックスターラーで攪拌しながら周波数2.45GHz、照射エネルギー325Wのマイクロ波を80分照射した。反応中も窒素ガスを50ml/minで流した。マイクロ波は13.5秒の照射と13.5秒の放置を交互に繰り返した。上述の反応時間はこれらの合計時間である。
【0047】
三つ口フラスコの上部には、リービッヒ冷却管を取り付けてあるため、シクロヘキサノールは還流し、フラスコの内部温度はその沸点近傍(約160℃)に保持された。
【0048】
実験で用いたKC−500の異性体分布(重量%)を以下に示す。
モノクロロビフェニール 0.008%
ジクロロビフェニール 0.38%
トリクロロビフェニール 1.72%
テトラクロロビフェニール 10.31%
ペンタクロロビフェニール 51.80%
ヘキサクロロビフェニール 32.49%
ヘプタクロロビフェニール 3.23%
オクタクロロビフェニール 0.06%
ノナクロロビフェニール 0%
デカクロロビフェニール 0%
【0049】
(ペンタクロロビフェニールの組成)3,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3,3’,4,4’−ペンタクロロビフェニール、2,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2,3’,4,4’,5−ペンタクロロビフェニール、2’,3,4,4’,5−ペンタクロロビフェニールなどを主に含有。
【0050】
(トリクロロベンゼンの組成)1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンなどなどを主に含有。
【0051】
(比較例1)
アルカリ化合物を入れずに反応時間を40分とした以外は、実施例1と同一条件で反応させた。
【0052】
(評価方法)
反応前後の溶液をDB1(J&Wサイエンティフィック製)をキャピラリーカラム(カラム温度80℃→220℃)とする(株)島津製作所製のガスクロマトグラフィー質量分析計QP5050A(以下、「GC−MS」)にかけ、PCBのピーク面積の変化より脱塩素化(分解率)を確認した。
【0053】
また、反応途中の水素発生量をモレキュラーシーブ5Aをキャピラリーカラム(カラム温度100℃)とする(株)島津製作所のガスクロマトグラフィー13A(「GC」)で分析した。
【0054】
以上の評価結果を表1に示す。なお、脱塩素化反応の評価は、以下の基準で行った。
○:良好(分解率65%以上)
×:不良(分解率65%未満)
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1ではPCBの大部分が消失していた。その時水素ガスが発生しており、シクロヘキサノール由来の水素ラジカルが脱塩素反応に寄与しているものと考えられた。
【0057】
比較例1でKOHなしとした場合には、PCBの分解は起こらなかった。これより、本反応ではアルカリ物質の存在が必要であることが確認された。
【0058】
(実施例2〜24)
アルカリ化合物、水素供与体、無機系触媒として表2に示す化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして実験を行い、アルカリ化合物、水素供与体及び無機系触媒が脱塩素化反応に及ぼす影響について試験した。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表1及び表2の結果より、本発明の方法によれば、ポリ塩化ビフェニール混合物が単一条件で効果的に分解し脱塩素化されることが確認された。
【0061】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、ポリ塩化ビフェニール(PCB)混合物を短時間に、しかも高分解率で分解することができるので、高濃度のPCB混合物を油系のまま短時間で脱塩素化することができる。よって、実用的な規模で大量のPCB混合物を短時間に無毒化することが可能となるので、その実用的価値は大である。
Claims (5)
- ポリ塩化ビフェニール混合物と水素供与体とを含む反応系に、アルカリ化合物及び無機系触媒の存在下でマイクロ波を照射することを特徴とするポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法。
- 前記アルカリ化合物が、苛性ソーダ、苛性カリ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項1に記載のポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法。
- 前記水素供与体が、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物及び脂環式化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項1又は2に記載のポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法。
- 前記無機系触媒が、複合金属酸化物、炭素結晶化合物、金属担持炭素化合物及び金属酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法。
- 前記ポリ塩化ビフェニール混合物が、ポリ塩化ビフェニールとハロゲン化芳香族化合物との混合物である請求項1〜4のいずれかに記載のポリ塩化ビフェニール混合物の脱塩素化方法。
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JP2013208510A (ja) * | 2012-03-30 | 2013-10-10 | Tokyo Electric Power Co Inc:The | Pcbで汚染された大型機器の処理方法及びそれに用いる処理装置 |
JPWO2019230368A1 (ja) * | 2018-05-29 | 2021-07-26 | 株式会社サイダ・Fds | 装置およびこれに用いる触媒 |
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2002
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