JP4328990B2 - 写真処理装置及びこの装置のための実画像領域切り出し方法 - Google Patents

写真処理装置及びこの装置のための実画像領域切り出し方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体を撮像した実画像領域とこの実画像領域の周辺に位置する周辺画像領域を含む写真フィルムから取得された、写真フィルムの幅方向に沿って並ぶ行と写真フィルムの長手方向に沿って並ぶ列で区画された多数の画素データからなるマトリックス状デジタル画像データを用いて実画像領域の存在位置を、この実画像領域の複写プリントを作製する写真処理装置及びこの装置のための実画像領域切り出し方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、写真プリント業界において、写真フィルムに形成された被写体の撮像画像を投影露光する代わりに撮像画像をフィルムスキャナなどを用いてデジタル画像データに変換し、このデジタル画像データに所定のアルゴリズムに基づいて、色濃度調整、サイズ変更処理、画像合成処理などを施してプリントデータを作成し、このプリントデータを用いて、デジタルプリンターで印画紙を露光することにより、撮像画像を印画紙上に可視画像化することにより写真プリントを得るデジタル写真処理装置が注目されている。デジタルプリンターとしては、光変調レーザビーム露光方式、液晶シャッター方式、蛍光ビーム露光方式など種々のものが採用されている。いずれにしても、このようなデジタルプリンターは、RGB各色の照射強度をデジタル画像データを構成する各画素が有する各色の濃度階調値に合わせて調整し、印画紙を露光することによりドット潜像を形成するものであり、露光された印画紙は現像処理後に撮像画像の複写プリント、つまり写真プリントとなる。もちろんデジタルプリンターとして露光方式ではなく、昇華型熱転写方式のものを用いてデジタル写真処理装置を構成することも可能である。
このようなデジタル写真処理装置は、従来の投影露光式写真処理装置の投影露光部がフィルムスキャナとデジタルプリンターとに置き換わったような構成を備えている。つまり、投影露光式では、照明光学系により放射されフィルムを透過した透過光が直接印画紙を露光するのに対して、デジタル露光式では、フィルムを透過した透過光が一旦光電変換部でデジタル画像データに変換され、そのデジタル画像データに基づいて生成されたプリントデータによってデジタルプリンターを駆動して印画紙を露光する。しかしながら、デジタル式と投影露光方式とでは、フィルムからの透過光を直接利用するか、間接的に利用するかという違いがあっても、フィルムの画像を印画紙に焼き付けて、可視化された写真プリントを得るという基本的な技術構成に関しては大きな違いはない。このため、投影露光式とデジタル露光式の両方式を備えた写真処理装置もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
いずれにしてもこのような写真処理装置では、写真フィルムに形成された複数の撮像画像を1つずつ、印画紙に露光焼き付けし、各撮像画像毎の複写プリントとして写真プリントを作成していくが、その際写真フィルムの撮像画像領域以外の周辺領域が写真プリントとして焼き付けられると写真プリントとしての品質が落ちることになるし、かといってこの余計な部分を後から切断除去するのは非常に手間のかかることとなる。このことを避けるためには、写真フィルムの撮像画像領域だけをプリントの対象する必要がある。つまり、投影露光式では正確な撮像画像領域の境界位置を確定して、撮像画像領域をマスク開口部に搬送することが重要であるし、デジタル式では、写真フィルムから取得したデジタル画像データから撮像画像領域に相当する画像データを切り出すための境界位置を正確に知る必要がある。
【0004】
一般的な画像処理の分野においては、個々の画素毎にその全方向での周辺画素との濃度階調値変化をチェックし、注目画像を抽出する種々のアルゴリズムが知られているが、いずれも膨大な演算量を必要とし、写真処理装置には不適当である。
上記実状に鑑み、本発明の課題は、写真フィルムに形成された被写体の撮像画像だけを確実に複写した写真プリント作製を容易に実現するデジタル写真処理装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、被写体を撮像した実画像領域とこの実画像領域の周辺に位置する周辺画像領域を含む写真フィルムから取得された、写真フィルムの幅方向に沿って並ぶ行と写真フィルムの長手方向に沿って並ぶ列で区画された多数の画素データからなるマトリックス状デジタル画像データを用いて実画像領域の存在位置を特定し、この実画像領域の複写プリントを作製する、本発明による写真処理装置では、前記実画像領域に対応するように所定の間隔をあけて選択された複数の行の画素データの各列毎の濃度階調値の平均値を列代表濃度値として順次求める平均演算部と、前記列代表濃度値の変化量を求める変化量演算部と、前記変化量に基づいて特定列を仮実画像境界列と判定する判定部と、前記判定部にて前記仮実画像境界列と判定された特定列を構成する全ての画素データの濃度階調値に基づいて、前記特定列が実画像境界列か否かを確認する判定確認部とが備えられ、前記判定確認部が、前記特定列は実画像境界列ではないものと判断したときに、前記特定列の後続の画像データに対して、前記平均演算部、前記変化量演算部、前記判定部及び前記判定確認部による処理を繰り返す。
【0006】
この構成では、写真フィルムの幅方向に相当する行方向で選択された数カ所の測定ポイントとしての画素の濃度階調値の平均値をその画素が属する特定列の濃度値を代表する値(代表濃度値)として順次求め、ある列の代表濃度値の変化量を判定基準と照らし合わせ、例えば所定しきい値を越えた場合、その列を仮の実画像境界列とみなし、その列に属する全ての画素データを用いてその列が真の実画像境界列であるかどうかを正確にチェックする。このように、ある列が実画像境界列かどうかを、複数の行の画素データの各列毎の濃度階調値の平均値に基づいて判定するので、本来実画像領域である位置に光の透過率が極めて高い像が撮影されているような場合であっても、複数の行の画素データの平均を取ることでその影響が緩和されるので、的確に実画像領域を特定できるとともに、平均値とその平均値の変化量を求めるだけの簡単な処理で実画像領域を特定できる。なお、好ましい測定ポイントの数としては、発明者の実験的な調査結果から、一般的な写真撮影画像においては、間隔をあけて選択された5,6の測定ポイントで実用的に有効であることがわかっている。また、この構成では、ある列が実画像境界列かどうかをチェックするために最初からその列に属する全ての画素を対象とするのではなく、選択された行番地をもつものだけを対象としてそれらの平均値で代表させることにより、とりあえず高速に疑わしい実画像境界列だけを探すという本発明の特徴的主題に加え、次に、その疑わしい列だけは、全ての画素を用いてチェックすることで、処理速度の向上と高い信頼性を実現している。
【0008】
また、被写体を撮像した実画像領域とこの実画像領域の周辺に位置する周辺画像領域を含む写真フィルムから取得された、写真フィルムの幅方向に並ぶ行と写真フィルムの長手方向に並ぶ列で区画された多数の画素データからなるマトリックス状デジタル画像データを用いて実画像領域の存在位置を特定し、この実画像領域の複写プリントを作製する写真処理装置のために提案される、本発明による実画像領域切り出し方法では、前記実画像領域に対応するように所定の間隔をあけて選択された複数の行の画素データの各列毎の濃度階調値の平均値を列代表濃度値として順次求め、前記列代表濃度値の変化量を求め、前記変化量に基づいて特定列を実画像境界列と判定し、前記実画像境界列を構成する全ての画素データの濃度階調値に基づいて前記特定列が実画像境界列であるか否かを確認し、実画像境界列であると確認できないときは前記特定列の後続の画素データに対して、実画像境界列を求める処理を繰り返して、求められた実画像境界列の位置を用いて前記マトリックス状デジタル画像データから実画像領域を切り出すことを特徴とする。この方法においても、上述したような高速化された判定処理によって得られた実画像境界列に基づいて、デジタル画像データから実画像領域を切り出すことが可能となる。
【0009】
通常、写真処理装置では、前記デジタル画像データの取得はフィルムスキャナによって行われ、写真フィルムに形成される実画像領域は写真フィルムの幅方向に関してはほとんどずれが生じないことから、前記実画像領域の前記幅方向外側に位置する周辺画像領域が前記デジタル画像データから除外されるように、前記行の並び方向のデジタル画像データ取得範囲を決定するフィルムマスクの開口幅を前記写真フィルムの撮像コマ幅以下に設定している。このような形態のデジタル写真処理装置において、本発明の好適な実施形態では、前記確認された実画像境界列の位置を用いて前記マトリックス状デジタル画像データから実画像領域を切り出し、この切り出されたデジタル画像データからデジタルプリンターのためのプリントデータを作成する。つまり、スキャン時のマスクキング処理により、取得されたデジタル画像データには実画像領域の写真フィルム幅方向外側に位置する周辺画像領域に相当する画素は含まれないことになるので、実画像境界列だけで所望の画素からなる画像データを切り出すことが可能となる。
【0010】
しかしながら、フィルムマスクを用いる場合には周辺画像領域からの画素を取り込むことを避けるためには、どうしても、そのフィルムマスクの開口幅を基準となる実画像領域よりわずかに小さくすることになる。このことは、写真プリントに余白部分を焼き付けないという利益をもたらす代わりに、画像コマの端ぎりぎりに形成された画像を完全に焼き付けることができず、そのため割愛された画像が主要被写体の一部であるような場合では顧客からクレームを受ける可能性が残る。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記行の並び方向のデジタル画像データ取得範囲を決定するフィルムマスクの開口幅が前記写真フィルムの撮像コマ幅以上に設定されているフィルムスキャナによって前記デジタル画像データの取得が行われ、前記平均演算部が前記実画像領域に対応するように所定の間隔をあけて選択された複数の列の画素データの各行毎の濃度階調値の平均値を行代表濃度値として順次求め、前記判定部が前記変化量演算部よって求められた前記行代表濃度値の変化量に基づいて特定行を実画像境界行と判定し、前記判定確認部が前記実画像境界行を構成するとともに前記実画像境界列にて特定される実画像領域に対応する全ての画素データの濃度階調値に基づいて前記特定行が実画像境界行であるか否かを確認し、この確認された実画像境界行と前記真の実画像境界列の位置を用いて前記マトリックス状デジタル画像データから実画像領域が切り出される。
【0011】
この実施形態では、上述した実画像境界列の判定方法が実画像境界行の判定にも用いられ、つまり、矩形である実画像領域とその周辺に位置する周辺画像領域の4つの境界線が全て前述した方法で判定される。この構成は、1つの写真フィルムにサイズの異なる実画像領域が形成されるような場合(例えばパノラマ写真など)、非常に好都合となる。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施例の説明により明らかになるだろう。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明によるデジタル写真処理装置の実施形態の1つとして投影露光とデジタル露光が両方が可能なプリンタプロセッサの外観斜視図とブロック図がそれぞれ図1と図2に示されている。このプリンタプロセッサは、プリントサイズに合わせてペーパーカッター12によってカットされた印画紙2に対して画像を焼き付ける露光エリア13と、この露光エリア13で露光された印画紙2を現像する現像処理部6、写真用フィルム(以下、単にフィルムと称する。)1を搬送するフィルム搬送機構8と、印画紙2を印画紙マガジン11から露光エリア13及び現像処理部6を経て写真プリント(複写プリント)として横送りコンベヤ7へ搬送する印画紙搬送機構9と、横送りコンベヤ7から送り込まれる印画紙2をオーダ単位で区分けするソータ14とを備え、これらの各部の制御や各種機能の実現はコントローラ10によってなされる。コントローラ10には、画像や文字を表示させるCRTや液晶ディスプレイによって構成されるモニタ10a及び各種の情報入力を行うためのキーボードを備えた操作卓10bが付帯している。
【0013】
前述した露光エリア13には、共通の露光ポイントで、フィルム1の撮像画像を印画紙2に投影して印画紙2に画像を焼き付ける投影露光部4と、フィルム1の撮像画像をデジタル画像データ(以下、単に画像データと称する。)として取得するフィルムスキャナ3から送られた画像データに基づいて制御された光ビームによって印画紙2に画像を焼き付けるデジタル露光部5とが備えられている。
【0014】
印画紙2に対する比較的短い露光時間と長い現像時間を考慮して、このプリンタプロセッサの印画紙搬送機構9は、露光エリア13までは1列の印画紙搬送ラインで、現像処理部6からは2列の印画紙搬送ラインを形成している。このため、露光エリア13と現像処理部6との間には、スイッチバック式振り分け装置9aと2列に振り分けられた印画紙2を2列状態で搬送しながら、適切なタイミングで現像処理部6に送り込む中間搬送部9bが備えられている。このスイッチバック式振り分け装置9aは、送られてきた印画紙2を一旦通過させてその印画紙2の後端を挟持し、そのままX(水平方向)−Y(上下方向)移動することで中間搬送部9bが作り出している2列のストレージ可能な印画紙搬送ラインに交互に引き渡される。
【0015】
以下、各構成要素について説明する。
フィルムスキャナ3は、発生させた光ビームの色分布や強度分布を整えてフィルム1を照射する照明光学系3aと、フィルム1からの透過光ビームを光学的に処理する撮像光学系3bと、撮像光学系3bによって導かれた光ビームをスリット画像としての電荷画像に光電変換する光電変換部3cから構成されている。
【0016】
照明光学系3aは、ハロゲンランプ、調光フィルタ、集光レンズ、さらにフィルムマスク20から構成され、光源からの光ビームの色分布や強度分布を整えるとともに、この光ビームをフィルムマスク20の開口部20aを通じてスリット光として、フィルム1を照射する。フィルムマスク20の開口部20aとフィルム1の被写体を撮像した実画像領域(一般には画像コマという)の関係は、図3に示すように、開口部20aの幅は、基準的な画像コマの幅よりわずかに狭く設定されている。この開口部20aを通過するスリット状の照明光を用いてフィルム1を副走査方向に搬送することにより、フィルム1の画像コマ及び画像コマの間に位置する周辺画像領域が以下に説明する光電変換部3cによって次々と読み取られていくことになる。
【0017】
光電変換部3cは、それ自体公知の、CCDセンサユニット、サンプルホールド(S/H)回路、A/D変換器、センサ駆動回路などから構成されている。CCDセンサユニットは、3つのCCDセンサから構成され、各CCDセンサは多数のCCD素子が主走査方向、つまりフィルム1の幅方向に配列されたラインセンサであり、センサ駆動回路により主走査時に電荷蓄積動作や電荷蓄積時間の制御が行われる。各CCDセンサの撮像面には、それぞれ光ビームの青色成分、赤色成分、緑色成分のみを通過させるカラーフィルタが設けられており、それぞれ、青色成分、赤色成分、緑色成分のみを光電変換する。サンプルホールド回路は、それぞれのCCDセンサから出力される各画素信号をサンプルホールドして各画素信号が連続した画像信号を生成するものであり、A/D変換器は、画像信号を構成する各画素信号を所定のビット数(例えば12ビット)のデジタル信号に変換するものである。このようにして光電変換部3cで取得されたR・G・B信号としての画像データはコントローラ10へ送られる。
【0018】
露光部の1つである投影露光部4は照明光学系4aと露光光学系4bから構成されており、照明光学系4aは、露光用光源、露光用光路に黄、マゼンタ、シアンの各フィルタが出退することにより露光用光源41からの照射光の色バランスを調整する調光フィルタ40aと、調光フィルタ40aにて色バランスを調整した光を均一に混色するミラートンネルなどを備え、露光光学系4bは、焼付対象となるコマ画像からの透過像を印画紙2上に結像する焼付用レンズユニット、シャッタなどを備えている。
【0019】
もう1つの露光部であるデジタル露光部5は、ライン露光型光プリントヘッド5aとこの光プリントヘッド5aを印画紙2の搬送方向である副走査方向に移動させる副走査機構5bから構成されている。この光プリントヘッド5aは、ここでは蛍光体発光方式を用いており、赤色露光を行う真空蛍光素子で構成された赤色プリントヘッドと緑色露光を行う真空蛍光素子で構成された緑色プリントヘッドと青色露光を行う真空蛍光素子で構成された青色プリントヘッドからなる。各色のプリントヘッドの真空蛍光素子は印画紙2の幅に対応する長さをもつように主走査方向(印画紙2の幅方向)にリニアアレイ化されている。光プリントヘッド5aとしては、蛍光体発光方式以外に液晶シャッター方式、PLZTシャッター方式、FOCRT方式、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)方式などが知られており、設計時に露光仕様に応じて選択することができる。副走査機構5bは、光プリントヘッド5aを支持する移動台車や、この移動台車を移動させる移動機構などを備えている。光プリントヘッド5aはコントローラ10と接続されており、コントローラ10による各真空蛍光素子の点灯制御及び副走査機構5bを介して光プリントヘッド5aを副走査方向に移動させることにより画像データや文字データが印画紙2にカラー露光される。
【0020】
図4に示すように、コントローラ10は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースなどからなるマイクロコンピュータシステムを中核部材として構成され、このプリンタプロセッサに必要な各種機能をハードウエア又はソフトウエア或いはその両方で実現させている。このコントローラ10には、フィルム搬送機構8を制御するフィルム搬送制御部50、印画紙搬送機構9を制御する印画紙搬送制御部51、フィルムスキャナ3を制御するスキャナ制御部52、投影露光部4を制御する投影露光制御部53、デジタル露光部5を制御するデジタル露光制御部54といった各種構成要素の動作制御を行う機能が構築されているとともに、フィルムスキャナ3から送られてきたデジタル画像データに対して各種画像処理を行い、投影露光部4のための露光条件の演算用の画像データやデジタル露光部5によって印画紙2に実画像領域の複写画像を形成するために用いられる画像データを生成する画像処理ユニット60も構築されている。
【0021】
画像処理ユニット60には、前述したフィルム1の実画像領域と周辺画像領域のスキャニングデータとしてフィルムスキャナ3から送られてくる画像データを一時的に格納するワーキングメモリ31、このワーキングメモリ31に格納されている画像データを利用して実画像領域と周辺領域の境界位置情報を生成する境界処理手段62、実画像領域に対応する画像データだけを切り出す切り出し部63、切り出された画像データから投影露光部制御部53で用いられる露光条件情報を生成する露光条件生成部64、切り出された画像データに対してさらに各種画像処理を行ってプリントデータを生成するプリントデータ生成部65が備えられている。
【0022】
プリントデータ生成部65で生成されたプリントデータはデジタル露光制御部54に送られ、このプリントデータにより調整された光ビームが光プリントヘッド5aの各素子から照射され、印画紙2に相応な濃度をもつドットが形成されていくことで写真プリントが作製される。投影露光時には、投影露光制御部53は、露光条件生成部64で生成された露光条件に基づいて調光フィルタやシャッタなどの光学系を制御することで照射光ビームを調整し、この光ビームの光軸を所望の画像コマの中心に合わせるべく境界処理手段62で生成された境界位置情報に基づいてフィルム搬送制御部50がフィルム1を位置制御し、印画紙2を所望の画像コマの透過光で投影露光することで写真プリントが作製される。
【0023】
次に、境界処理手段62について説明する。
フィルムスキャナ3から送られてきた画像データはワーキングメモリ31に格納されているが、図5には、この画像データを構成する多数の画素データ(以下単に画素と称す)Pをフィルム1の幅方向に並ぶ行と写真フィルムの長手方向に並ぶ列でマトリックス状に配置した様子が模式的に示されている。ここでは、図3で示したようにフィルムマスク20の開口部20aの幅は、基準的な画像コマの幅よりわずかに狭く設定されているので、取得された画像データには実画像領域の写真フィルム幅方向外側に位置する周辺画像領域に相当する画素は含まれないことになる。
【0024】
ワーキングメモリ3に格納されている各画素Pは、各色のCCD素子が受光した光量を12ビット階調で表した階調値を持っており、例えば黒は赤階調値=0、緑階調値=0、青階調値=0で表され、白は赤階調値=4095、緑階調値=4095、青階調値=4095で表される。この階調値から所定の変換式で対応するフィルムにおける濃度値を得ることができるので、説明を簡単にするため、ここでは各画素はフィルム濃度値に対応する濃度階調値を持っているとする。この画像データの画素Pを要素とするマトリックスをm xn行列(説明上、m=250、n=10000としておく)として、各画素Pの濃度階調値をD(m,n)で表す。図5から明らかなように、これらの画素Pは、先に説明したフィルム1の実画像領域を表すグループと周辺画像領域を表すグループに分けられる。
【0025】
境界処理手段62はそのような実画像領域と周辺画像領域の境界に位置する画素列を各画素Pの濃度階調値を用いて決定するものであり、平均演算部62aと変化量演算部62bと判定部62cと判定確認部62dとを備えている。
【0026】
境界処理手段62は、図5に示すように、行番号が20、70、120、170、220のところを5つの測定ラインとして定義する。次いで、平均演算部62aは、各測定ラインに属する画素Pのうち列番号1の画素の濃度階調値の平均値を列代表濃度値として算出する。i行k列の画素Pの濃度階調値をD(i,k)とすると、第1列を代表する列代表濃度値D(1) は、
[D(20,1)+D(70,1)+D(120,1)+D(170,1)+D(220,1)]/5
で求められる。つまり、第k列を代表する列代表濃度値は、
D( k)=[D(20,k)+D(70,k)+D(120,k)+D(170,k)+D(220,k)]/5
となり、平均演算部62aは順次kの値を1から1ずつ増加しながら各列の代表濃度値を算出していく。
【0027】
さらに、変化量演算部62bは順次求められていく列代表濃度値の変化量を算出する。第k列の変化量:V(k) は、ここでは、
V(k)=D(k+1)-D(k-1) 又は
V(k)=D(k)-D(k-1)
で求めることにする。このようにして求められた変化量:V(k) は、直ちに、判定部62cによって予め設定されている判定基準で比較される。この判定基準は、未露光領域である周辺画像領域の濃度と撮像画像そのものである実画像領域の標準的濃度から実験的かつ経験的に作成したのものであり、ある画素Pの変化量の絶対値がこの判定基準に達した場合その画素Pが周辺画像領域と実画像領域の境界に存在している可能性が高いとして、その列が実画像境界列と判断される。
【0028】
判定部62cで実画像境界列と判定された列に関しては、その列に属する全ての画素の濃度階調値を用いて判定確認部62dが実画像境界列が真の実画像境界列とみなしてよいかどうか確認判定する。ここでの確認は、主に、周辺画像領域での濃度が低いレベルで安定しているということと、実画像領域での濃度は低い濃度の領域が存在してもそれは点在するということに基づいて行われる。つまり、この実画像境界列と判定した特定列が周辺画像領域に存在している場合は、低い濃度に対応する濃度階調値が安定的に続くことになり、この実画像境界列と判定した特定列が実画像領域に存在する場合ある程度高いレベルで変動する濃度に対応する濃度階調値が続くことになる。最も簡単な判定処理としては、低い濃度が安定的に続く画素の数をチェックし、その数が一定数を越えるとその特定列が周辺画像領域存在すると判定すればよい。もちろん、境界領域では、何列かが実画像境界列と判定される可能性が高いので、その場合最も可能性の高かった列を最終的な真の実画像境界列と判定してもよい。なお、判定部62cでの判定時において対象となった変化量:V(k) がプラスの場合判定確認部62dで判定された実画像境界列は実画像領域の前エッジFEを表すことになり、マイナスの場合判定確認部62dで判定された実画像境界列は実画像領域の後エッジREを表すことになる。
【0029】
従って、ある1つのフィルム画像コマに着目して説明すると、上述のように変化量演算部62bが求める、濃度上昇を示す(ここではプラスの)変化量V(k) が判定基準に達することで、判定部62cが実画像境界列と判定した特定列に対して、判定確認部62dが実画像境界列であると確認したときは、その特定列を実画像領域の前エッジFEと決定し、一方、判定確認部62dがその特定列を実画像境界列と判定できなかったときは、その特定列の後続の画素データに対して上述の平均演算部62aによる列代表濃度値の算出、変化量演算部62bによる列代表濃度値の変化量の算出、判定部62cによる実画像境界列の判定及び判定確認部62dによる実画像境界列であることの確認を繰り返して、実画像領域の前エッジFEを決定する。
【0030】
この実画像領域の前エッジFEの決定の後、さらに、上述の平均演算部62aによる列代表濃度値の算出、変化量演算部62bが求める、濃度低下を示す(ここではマイナスの)変化量V(k) が判定基準に達することで、判定部62cが実画像境界列と判定した特定列に対して、判定確認部62dが実画像境界列であると確認したときは、その特定列を実画像境界列を実画像領域の後エッジFEと決定する。一方、判定確認部62dがその特定列を実画像境界列と判定できなかったときは、上述の前エッジFEの場合と同様にして後エッジREを決定する。
【0031】
得られた前エッジFEと後エッジREは、それらの間隔が標準的な画像コマの長手寸法にほぼ一致するはずなので、このことから、最終的なチェックを行うことも可能である。前エッジFEだけが確認できた場合は画像コマの長手寸法から後エッジREを算定することや、後エッジREだけが確認できた場合は画像コマの長手寸法から前エッジFEを算定することは可能である。
【0032】
最終的に、前エッジFEの表す実画像境界列の画素アドレスと後エッジREを表す実画像境界列の画素アドレスから、切り出し部63によって実画像領域に対応する画素Pを含む画像データだけが切り出され、必要に応じて、露光条件生成部64やプリントデータ生成部65に送られる。
【0033】
上記実施の形態では、図3で示すように、フィルムマスク20の開口部20aの幅は、基準的な画像コマの幅よりわずかに狭く設定されていたため、取得された画像データには実画像領域の写真フィルム幅方向外側に位置する周辺画像領域に相当する画素は含まれいなかったが、より正確に実画像領域を切り出すためには、図6に示すように、フィルムマスク20の開口部20aの幅を、基準的な画像コマの幅よりわずかに広く設定して、画像データを取得する別な実施形態が提案される。この形態で取得され、ワーキングメモリ31に格納された画像データを構成する多数の画素の様子が図7に模式的に示されている。ここでは、もちろん、実画像領域に相当する画素Pの周囲の周辺画像領域に相当する画素Pが取り囲まれることになる。
【0034】
この場合、実画像領域の前エッジFEと後エッジREを表す画素アドレスは前述した実施の形態と同様に得られ、実画像領域の上エッジOEと下エッジUEは前エッジFEや後エッジREを決定する方法に類似して得られる。つまり、境界処理手段62は、図7に示すように、まず、列番号が100、200、250、300、400のところを5つの測定ラインとして定義する。次いで、平均演算部62aは、各測定ラインに属する画素Pのうち行番号1の画素の濃度階調値の平均値を行代表濃度値として算出する。i行k列の画素Pの濃度階調値をD(i,k)とすると、第1行を代表する行代表濃度値E(1) は、
[D(100,1)+D(200,1)+D(250,1)+D(300,1)+D(400,1)]/5
で求められる。つまり、第i 行を代表する行代表濃度値は、
E( k)=[D(i,100)+D(i,200)+D(i,250)+D(i,300)+D(i,400)]/5
となり、平均演算部62aは順次i の値を1から1ずつ増加しながら各行の代表濃度値を算出していく。
【0035】
さらに、変化量演算部62bは順次求められていく行代表濃度値の変化量を算出する。第i 行の変化量:V(i) は、ここでは、
V(i)=D(i+1)-D(i-1) 又は
V(i)=D(i)-D(i-1)
で求めることにする。このようにして求められた変化量:V(i) は、直ちに、判定部62cによって予め設定されている判定基準で比較される。この判定基準は、先の実施形態と同様である。
【0036】
判定部62cで実画像境界列と判定された特定行に関しては、その行に属する全ての画素の濃度階調値を用いて判定確認部62dが仮実画像境界行が真の実画像境界行とみなしてよいかどうか判定する。ここでの判定処理も先の実施形態と同様である。ここでも、得られた後エッジOEと下エッジUEは、それらの間隔が標準的な画像コマの短辺寸法にほぼ一致するはずなので、このことから、最終的なチェックを行うことも可能である。
【0037】
1つの実画像領域のための上エッジOEと下エッジUEの決定が完了すると、次の実画像領域のための測定ラインを設定して、同様な方法で、その後エッジOEと下エッジUEが決定されていく。全ての、実画像領域の前エッジFE、後エッジRE、上エッジOE、下エッジUEが決定されると、前エッジFEの表す実画像境界列の画素アドレスと後エッジREを表す実画像境界列の画素アドレス、及び上エッジOEの表す実画像境界列の画素アドレスと下エッジUEを表す実画像境界列の画素アドレスから、切り出し部63によって実画像領域に対応する画素Pを含む画像データだけが切り出され、必要に応じて、露光条件生成部64やプリントデータ生成部65に送られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるデジタル写真処理装置の一例としてのプリンタプロセッサの外観斜視図
【図2】図1によるプリンタプロセッサのブロック図
【図3】フィルムマスクと写真フィルムの関係を示す説明図
【図4】プリンタプロセッサのコントローラが作り出す機能を説明する機能ブロック図
【図5】ワーキングメモリに格納された画像データの画素配置を示す模式図
【図6】別実施形態でのフィルムマスクと写真フィルムの関係を示す説明図
【図7】別実施形態でのワーキングメモリに格納された画像データの画素配置を示す模式図
【符号の説明】
2 印画紙(感光材料)
4 投影露光部
5 デジタル露光部
5a 光プリントヘッド
6 現像処理部
10 コントローラ
60 画像処理ユニット
61 ワーキングメモリ
62 境界処理手段
62a 平均演算部
62b 変化量演算部
62c 判定部
62d 判定確認部
63 切り出し部
64 露光条件生成部
65 プリントデータ生成部

Claims (4)

  1. 被写体を撮像した実画像領域とこの実画像領域の周辺に位置する周辺画像領域を含む写真フィルムから取得された、写真フィルムの幅方向に沿って並ぶ行と写真フィルムの長手方向に沿って並ぶ列で区画された多数の画素データからなるマトリックス状デジタル画像データを用いて実画像領域の存在位置を特定し、この実画像領域の複写プリントを作製する写真処理装置において、
    前記実画像領域に対応するように所定の間隔をあけて選択された複数の行の画素データの各列毎の濃度階調値の平均値を列代表濃度値として順次求める平均演算部と、
    前記列代表濃度値の変化量を求める変化量演算部と、
    前記変化量に基づいて特定列を仮実画像境界列と判定する判定部と、
    前記判定部にて前記仮実画像境界列と判定された特定列を構成する全ての画素データの濃度階調値に基づいて、前記特定列が実画像境界列か否かを確認する判定確認部と、を備え
    前記判定確認部が、前記特定列は実画像境界列ではないものと判断したときに、前記特定列の後続の画像データに対して、前記平均演算部、前記変化量演算部、前記判定部及び前記判定確認部による処理を繰り返すことを特徴とする写真処理装置。
  2. 前記デジタル画像データの取得はフィルムスキャナによって行われ、前記実画像領域の前記幅方向外側に位置する周辺画像領域が前記デジタル画像データから除外されるように、前記行の並び方向のデジタル画像データ取得範囲を決定するフィルムマスクの開口幅が前記写真フィルムの撮像コマ幅以下に設定されており、前記真の実画像境界列の位置を用いて前記マトリックス状デジタル画像データから実画像領域が切り出されることを特徴とする請求項1に記載の写真処理装置。
  3. 前記行の並び方向のデジタル画像データ取得範囲を決定するフィルムマスクの開口幅が前記写真フィルムの撮像コマ幅以上に設定されているフィルムスキャナによって前記デジタル画像データの取得が行われ、
    前記平均演算部が前記実画像領域に対応するように所定の間隔をあけて選択された複数の列の画素データの各行毎の濃度階調値の平均値を行代表濃度値として順次求め、前記判定部が前記変化量演算部によって求められた前記行代表濃度値の変化量に基づいて特定行を実画像境界行と判定し、前記判定確認部が前記実画像境界行を構成するとともに前記実画像境界列にて特定される実画像領域に対応する全ての画素データの濃度階調値に基づいて前記特定行が実画像境界行であるか否かを確認し、この実画像境界行と前記実画像境界列の位置を用いて前記マトリックス状デジタル画像データから実画像領域が切り出されることを特徴とする請求項に記載の写真処理装置。
  4. 被写体を撮像した実画像領域とこの実画像領域の周辺に位置する周辺画像領域を含む写真フィルムから取得された、写真フィルムの幅方向に並ぶ行と写真フィルムの長手方向に並ぶ列で区画された多数の画素データからなるマトリックス状デジタル画像データを用いて実画像領域の存在位置を特定し、この実画像領域の複写プリントを作製する写真処理装置のための実画像領域切り出し方法において、
    前記実画像領域に対応するように所定の間隔をあけて選択された複数の行の画素データの各列毎の濃度階調値の平均値を列代表濃度値として順次求め、
    前記列代表濃度値の変化量を求め、
    前記変化量に基づいて特定列を実画像境界列と判定し、
    前記実画像境界列を構成する全ての画素データの濃度階調値に基づいて前記特定列が実画像境界列であるか否かを確認し、実画像境界列であると確認できないときは前記特定列の後続の画素データに対して、実画像境界列を求める処理を繰り返して、求められた実画像境界列の位置を用いて前記マトリックス状デジタル画像データから実画像領域を切り出すことを特徴とする実画像領域切り出し方法。
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