JP4326927B2 - 導電性改質剤、及び電池 - Google Patents
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また、前記電解液の代わりに、電解液が含浸された導電性高分子から構成されたゲル状高分子電解質が用いられた電池が提案されている(特許文献1御参照。)。
前記ゲル状高分子電解質は、電解液含浸能力に優れ、電解液が添加された時に機械的特性が低下することを防止できるだけでなく、イオン伝導度特性および電極に対する接着力が非常に優秀である。このため、前記ゲル状高分子電解質を利用すれば、充放電特性および効率、電池の寿命および高温放置特性が向上されることが開示されている。
しかし、前記ゲル状高分子電解質が用いられた電池であっても、ゲル状高分子電解質が電解液を含み、この電解液が導電性を発揮する機能を担っていることから、水の凝固点以下の温度域に晒された場合、導電性が不安定となるか、あるいは導電性が確保できなくなる恐れがあった。つまり、従来のゲル状高分子電解質は、水の凝固点以下とした低温の雰囲気では、良好な導電性を維持することは困難であった。
これにより、外気が水の凝固点以下というような過酷な条件下で安定した電解刺激応答(導電性)が得られる。このため、導電性改質剤として、電池等の電極に被覆して用いることによって、電極表面の導電性を向上させることができる。
また、前記導電性改質剤では、水の凝固点よりも高い温度域とした雰囲気に晒された場合には、電子伝導に加えてイオン伝導も働くことにより、一段と優れた導電性を備えることが可能となる。
これにより、導電性高分子ゲルのキャリヤの濃度を高めることができ、導電性を向上させることができる。
これにより、電解質成分を、導電性高分子ゲル中に、ある程度の濃度で保持させることができ、導電性改質剤が被覆された電極の表面近傍に、電解質成分のイオン種を高濃度に分布させることもできる。このため、低温度であっても、電解質成分のイオン種を電極表面に速やかに供給することができる。
かかる導電性改質剤の構成において、前記界面活性剤の前記導電性高分子ゲル中の添加量は、前記導電性共役系高分子100質量部に対して0.1〜30質量部であることを特徴としている。
前記導電性改質剤では、外気が水の凝固点以下というような過酷な条件下で安定した電解刺激応答(導電性)が得られるため、この導電性改質剤によって電極表面が被覆された電池は、優れた低温度特性が得られる。
また、水の凝固点よりも高い温度域とした雰囲気に晒された場合、電子伝導に加えてイオン伝導も機能することにより、一段と優れた導電性が得られる。
図1は、本発明の電池1の一例を示す概略断面図である。電池1は、正極(正極板)11と、負極(負極板)12と、これら正極11と負極12間に配された電解液13とから少なくとも構成されたものである。図1に一例として示した電池1では、電解液13中に、正極板11と負極板12とが対向配置するように浸漬されている。
なお、正極11と負極12間に多孔膜のセパレータを設け、正極11と負極12とが接触し内部短絡することを防止できるようにしても構わない。
例えば、マンガン電池のように、正極活物質として二酸化マンガンを用い、負極活物質として亜鉛を用いることができる。また、アルカリ電池のように、正極活物質として二酸化マンガン,酸化水銀,酸化銀,オキシ水酸化ニッケルから選択された少なくとも1種又は2種以上を用い、負極活物質として亜鉛を用いることができる。
また、鉛蓄電池のように、正極活物質として二酸化鉛を用い、負極活物質として鉛を用いることができる。また、ニッカド電池のように、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを用い、負極活物質としてカドミウムを用いることができる。
また、ニッケル水素電池のように、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを用い、負極活物質として水素吸蔵合金を用いることができる。
なお、電解液13の代わりに、電解液13が高分子材料に含浸された固体電解質等も適用しても構わない。
図3(A)は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、PEDOT/PSSとも言う。)のコロイド水分散液を模式的に示す説明図であり、図3(B)は、図3(A)に示したPEDOT/PSSのコロイド水分散液に、界面活性剤23を添加してゲル化して得られた本発明の導電性高分子ゲル2の一例を模式的に示す説明図である。
図3(A)に示したように、PEDOT/PSSのコロイド水分散液は、水21中にPEDOT/PSS分子が分散している。このPEDOT/PSSのコロイド水分散液に、界面活性剤23を添加してゲル化条件に置くことにより図3(B)に示したように、界面活性剤23を介して3次元的なネットワークが形成され、その中に水21を包含して容易にゲル化し、導電性高分子ゲル2が得られる。
この導電性高分子ゲル2は、導電性共役系高分子22自体が、界面活性剤23及び/又はアルコールによってゲル化して形成されたものであり、例えば特願2003−19120にて提案されたものなどが適用できる。
なお、導電性改質剤14は、前記正極11と負極12のうち、いずれか一方の電極表面にのみ被覆されていても構わない。
図3に示したように、PEDOT/PSSのコロイド水分散液に、界面活性剤23(および/またはアルコール)を添加してゲル化条件に置くことによりゲル化するのは、物理的あるいは化学的に3次元的なネットワークが形成されることによるものと考えられ、また、得られたゲルが導電性を示すのは電子伝導性および/またはイオン伝導性によるものと考えられる。勿論これらの考え方に限定されるものではない。
前記ドーパントとしては、例えばヨウ素,フッ化砒素,塩化鉄,過塩素酸,スルホン酸,パーフルオロスルホン酸,ポリスチレンスルホン酸,硫酸,塩酸,硝酸、およびこれらの誘導体から選択された少なくとも1つが挙げられるが、中でも、高い導電性を容易に調整できることから、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、例えば第4級アルキルアンモニウム塩,ハロゲン化アルキルピリジニウムなどを挙げることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸またはそのエステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩,アルキルベンゼンスルホン酸またはその塩,アルキルナフタレンスルホン酸またはその塩,アルキルスルホコハク酸またはその塩,アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸またはその塩,脂肪酸またはその塩,ナフタレンスルホン酸またはそのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン,アミンオキサイド,加水分解コラーゲンなどを挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレン,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンルビトール脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン硬化ひまし油,ポリオキシエチレンアルキルアミン,アルキルアルカノールアミド、あるいはこれらの誘導体などを挙げることができる。
本発明で用いる界面活性剤23の導電性高分子ゲル2中の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、導電性高分子100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
0.1質量部未満ではゲル化しない恐れがあり、30質量部を超えるとやはりゲル化しない恐れがあり好ましくない。
1価アルコールとしては、例えば、エタノール,イソプロピルアルコール,ブタノールなどの分枝状あるいは直鎖状アルコール,環状アルコール,ポリマー状アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール,プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン,エリスリトール,キシリトール,ソルビトールなどの鎖状多価アルコール、グルコース,スクロールなどの環状多価アルコール、ポリエチレングリコール,ポリビニルアルコールなどのポリマー状多価アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。
これらのアルコールの中でも、イソプロピルアルコール,エチレングリコール,ポリエチレングリコールが好ましく使用できるが、中でも多価アルコールであるエチレングリコールやポリエチレングリコールは次の理由から好適である。エチレングリコールは低濃度でもゲル化させる効果があり、また、揮発性がないため特に好ましく使用できる。また、ポリエチレングリコールの分子量は特に限定されないが、分子量400のものより分子量1000のものの方が添加量が少なくてもゲル化するので好ましい。
1質量部未満ではゲル化しない恐れがあり、70質量部を超えると薄くなり過ぎてやはりゲル化しない恐れがあり好ましくない。
本発明において界面活性剤23とアルコールは、単独で使用することができるが、両者を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
本発明において界面活性剤23とアルコールを併用する場合の両者の比率は特に限定されるものではない。
まず、導電性共役系高分子22を、水21中にコロイド状に分散させたコロイド分散液および/または導電性共役系高分子溶液に、添加物として前記した界面活性剤23および/またはアルコールを気泡などが発生しないように注ぎ入れて添加する。
次いで、通常の大気圧雰囲気にある開放空間あるいは密閉空間内に、所定時間振動が加わらない状態で放置(以下、静置と称する)する。
以上により、3次元的なネットワークが形成されて容易にゲル化し、導電性高分子ゲル2が安定して得られる。
ここで、前記導電性共役系高分子溶液は、前記導電性共役系高分子22を例えば水あるいは有機溶剤などに溶解したものである。本発明において導電性共役系高分子コロイド分散液や導電性共役系高分子溶液は、単独で使用することができるが、両者を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
ゆえに、本発明の導電性改質剤14は、外気が水の凝固点以下となるような厳しい条件下で使用した際にも安定した導電性が得られる。このため、電極表面等に被覆された場合、本発明の導電性改質剤14は、各種電極のインピーダンス特性等の導電特性の安定性の向上に寄与する。
特に、正極活物質や負極活物質として、二酸化マンガン、二酸化鉛などのように電子伝導性に劣る酸化物が用いられた電池の場合、電極表面の導電性を大幅に向上させることができる。
更に、水の凝固点よりも高い温度域とした雰囲気に晒された場合、電子伝導に加えてイオン伝導も機能することにより、一段と優れた導電性が得られる。
以上により、電極表面において、3次元的なネットワークが形成されて容易にゲル化し、導電性高分子ゲル2が安定して得られる。これにより、電極表面に、導電性高分子ゲル2から少なくとも構成された導電性改質剤14の薄膜層が形成される。
このようにして、電極の表面が導電性改質剤14によって被覆された電極が形成できる。
前記電極の表面に設けられた導電性改質剤14からなる薄膜層の厚さは、0.01μm以上、50μm以下が好ましく、これにより、電極表面の導電性を大幅に向上させることができる。
前記電解質成分としては、特に限定されず、正極活物質や負極活物質に応じて公知のものが適用できる。例えば、塩化亜鉛,塩化アンモニウム,希硫酸,水酸化カリウム等の水系電解液用の電解質成分、臭素化リチウム,過塩素酸リチウム,トリフルオロメタンスルホン酸リチウム,チオシアン酸カリウム,六フッ化リン酸リチウム,六フッ化砒酸リチウム等の有機非水系電解液用の電解質成分(有機酸塩等)、四塩化リチウムアルミニウム等の無機非水系電解液用の電解質成分、炭酸リチウム−塩化カリウム共融体混合等の溶融塩、β−アルミナ等の固体電解質等が挙げられる。
このため、導電性高分子ゲル2に、予め電解質成分を高濃度に含有させておくことによって、導電性改質剤14が被覆された電極の表面近傍に、電解質成分のイオン種を高濃度に分布させることもできる。
一般に、電池温度が低温度となると、電解液13中のイオン伝導度が低下してしまう。このため、電極表面近傍に電解質成分のイオン種が十分に供給されず、電極表面近傍の電解質成分が低濃度となってしまい、電極表面の活物質の酸化還元反応が生じ難くなり、電池1の放電特性が悪化してしまう。
しかし、電解質成分が含有された導電性改質剤14が電極に被覆されたことによって、電極の表面近傍に、電解質成分のイオン種を高濃度に分布させることができるため、低温度であっても、電解質成分のイオン種を電極表面に供給することができる。このため、低温度であっても、安定してイオンを供給でき、更に優れた低温度特性が得られる。
(実施例1)
本例では、導電性共役系高分子コロイド分散液であるPEDOT/PSS[商品名:Baytron P、導電性ポリマー(PEDOT/PSS)の濃度約1.3質量%コロイド水分散液、バイエル社製]100質量部に、添加物としてエチレングリコール(Ethyleneglycol:(CH2OH)2:以下、EGと略記する)を30質量部と、電解質成分(電解質)としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(Trifluoromethanesulfonic Acid Lithium Salt:CF3SO3Li:以下、TFMS−Liと略記する)を5質量部添加して混合し、約10分間攪拌した後に、静置温度10℃、25℃および50℃にて、開放放置して1週間静置することにより、静置温度の異なる試料(導電性改質剤)を個別に作製した。
本例では、電解質成分としてTFMS−Liに代えてトリフルオロメタンスルホン酸銀(Trifluoromethanesulfonic Acid Silver Salt:CF3SO3Ag:以下、TFMS−Agと略記する)を用い、その添加量を5質量部とした以外は実施例1と同様に操作し、静置温度10℃、25℃および50℃にて、静置温度の異なる試料(導電性改質剤)を個別に作製した。
本例では、添加物としてドデシルベンゼンスルホン酸(Dodecylbenzene sulfonic acid:(C12H25C6H4SO3H): 以下、DBSとも称す)からなる界面活性剤を用い、その添加量を2質量部とし、さらに電解質成分を添加した場合について述べる。
添加物としてEGの代わりに、DBSを用い、その添加量を2質量部とし、更に電解質成分としてTFMS−Liを用い、その添加量を5質量部とし、静置する際に開放放置した以外は実施例1と同様に操作し、静置温度10℃、25℃および50℃にて、静置温度の異なる試料(導電性改質剤)を個別に作製した。
本例では、電解質成分としてTFMS−Liに代えてTFMS−Agを用い、その添加量を5質量部とした以外は実施例3と同様に操作し、静置温度10℃、25℃および50℃にて、静置温度の異なる試料(導電性改質剤)を個別に作製した。
本例では、電解質成分を添加せず、また添加物としてEGに代えてDBSを用い、その添加量を0.7質量部とし、密閉して1日静置した以外は実施例1と同様に操作し、静置温度10℃、25℃および50℃にて、静置温度の異なる試料(導電性改質剤)を個別に作製した。
まず、ゲルを絶縁性材料からなる容器、例えばビーカーに移し、電極として銅板とアルミ板を1cm程度間隔を開けて、ゲルに差し込み固定する。
次に、電極をなす両板と銅製のリード線を介して、テスターを連結し、測定回路を形成する。
そして、測定回路を接続した直後に得られた電位を、テスターで読み取る。
表1にゲル化の判定結果と電位差の測定結果を纏めて示した。
なお、同じ測定法により蒸留水の電位差を測定したところ、100mVであった。
(a)放置温度が10℃および25℃の条件下では何れの添加量でもゲル化させることはできない。
(b)放置温度が50℃の条件下においては、いずれの実施例(実施例1乃至実施例4)においてもゲル化させることができ、固化し、自立できる状態のゲル(導電性改質剤)が得られた。
(c)EGからなる添加物に、TFMS−Liからなる電解質成分を添加して得られたゲル(実施例1)における電位差は蒸留水と変わらない。しかし、電解質成分をTFMS−Agに代えて得られたゲル(実施例2)の電位差は3倍に増加した。
(d)DBSからなる添加物に、TFMS−Liからなる電解質成分を添加して得られたゲル(実施例3)における電位差は5割ほど増えた。そして、電解質成分をTFMS−Agに代えると、電位差は大幅に増加し4倍となった。
また、開放放置条件下において、添加物としてEGまたはDBSの界面活性剤23と、TFMS−LiまたはTFMS−Agの電解質を用いた場合は、安定したゲル化が可能であることが分かった。また、電解質の添加は、電位差の向上をもたらし、特にTFMS−Agからなる電解質を加えた場合にその効果が顕著であることが確認された。
このため、導電性高分子ゲル2を電極の導電性改質剤14として適用した場合、電極及び電解質一体型の一次電池又は二次電池として用いることができる。
Claims (5)
- 水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤を含んでなる導電性高分子ゲルから少なくとも構成されてなり、前記界面活性剤は長鎖アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする導電性改質剤。
- 前記導電性共役系高分子は、ドーパントがドーピングされていることを特徴とする請求項1に記載の導電性改質剤。
- 導電性高分子ゲルが、電解質を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性改質剤。
- 前記界面活性剤の前記導電性高分子ゲル中の添加量は、前記導電性共役系高分子100質量部に対して0.1〜30質量部であることを特徴とする請求項1に記載の導電性改質剤。
- 正極,負極,電解質を少なくとも備えた電池において、
前記正極と負極のうち、少なくとも一方の電極表面が、水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤を含んでなる導電性高分子ゲルから構成されてなり、前記界面活性剤は長鎖アルキルベンゼンスルホン酸である導電性改質剤によって被覆されていることを特徴とする電池。
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