JP4326660B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法、及び該方法により分子量変換された芳香族ポリカーボネート - Google Patents
芳香族ポリカーボネートの製造方法、及び該方法により分子量変換された芳香族ポリカーボネート Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂(A)から、芳香族環状カーボネート類混合物と、分子量の低い線状芳香族ポリカーボネートとからなる混合物を得て、該混合物を反応せしめて芳香族ポリカーボネートを製造する方法に関する。また芳香族ポリカーボネート樹脂(A)から、芳香族環状カーボネート類混合物と、芳香族ポリカーボネート(A)に比べ分子量の低下した線状芳香族ポリカーボネートとからなる混合物を得て、該混合物を反応せしめて芳香族ポリカーボネート(A)に比べて分子量が変換された芳香族ポリカーボネートを得ることによる分子量を変換する方法、および1)成形性、2)色調、3)耐熱劣化性、4)耐加水分解性の良好な分子量の変換された芳香族ポリカーボネート類にかかわる。
【0002】
【従来の技術】
従来の芳香族環状カーボネート類混合物(ここにいう芳香族環状カーボネート類混合物とは、下記文献中記載される環状二量体、環状三量体および高次環状体等の実質的に環状体より成る混合物との意味であり、本発明の芳香族環状カーボネート類含有混合物とは異なる。)の製造方法としては4,644,053号公報、Macromolecules 1991,Vol.24 p3035−3044、あるいは特公平7−3751号公報に記載されているように、モノ、あるいはオリゴカーボネートのビスクロロフォーメートを、加水分解、縮合する方法、あるいはオリゴカーボネートのモノクロロフォーメートを環化させる方法等が提案されている。
【0003】
しかし、いずれの方法にせよ、これらクロロフォーメート類は、原料として、ホスゲン或いはホスゲンプレカーサーを使用して製造されている。即ち現状では、ホスゲン類を使用しないで、かかる芳香族環状カーボネート類混合物を製造する有効な方法は存在しない。現在環境に対する安全性の高まりの中、斯かる有毒なホスゲンの使用を前提とする、これらの方法は、環境安全上問題のあるプロセスである。
【0004】
芳香族環状カーボネート類が、ポリカーボネートよりイオン的反応機構により熱分解的に生成するとの記述が、以下の文献に記載されている。
1)Foti etal.:J.Polym.Sci.Polymer Chemistry Ed, 21 1567 (1983)
2)G.Montaudo , C. Puglisi, F. Samperi: Poly. Deg. And Stab., 26 285 (1989)
3)G.Montaudo , C. Puglisi, R.Rapisardi、 F. Samperi: Po ly. Deg. And Stab., 31 163 (1991)
【0005】
これらの記述に従えば、原理的にはホスゲンを使用しなくてもポリカーボネートより直接、芳香族環状カーボネート類を入手可能である。しかし上記文献中の記載事項は、反応機構に関するものであり、残念ながら、芳香族環状カーボネートの合成、製造に使用できるものではなく、本発明記載の芳香族環状カーボネート類含有混合物の製造を示唆するものではない。
【0006】
芳香族ポリカーボネートより、芳香族環状カーボネート類の製造を記述したものとしては、Quihi Li and Mark A. Buese の先駆的研究が有る。即ち該文献中には芳香族環状カーボネート類混合物の製造方法および本発明の目的の1つである芳香族環状カーボネート類含有混合物の生成が記載されている。
Quihi Li and Mark A. Buese、 Polym. Material Sci. Eng. Vol. 67 457−458 (1992)
【0007】
上記文献によればポリカーボネート(PC)、をテトラヒドロフラン(THF)中,0.25wt%濃度に溶解し、水酸化セシウム(CsOH)触媒の存在下、PC、触媒モル比;PC/CsOH=333、反応温度50℃で反応させ、芳香族環状カーボネート類含有混合物を最高収率72%で得ている。
【0008】
しかしながら本文献中には上記芳香族環状カーボネート類含有混合物から直接、分子量の変換された芳香族ポリカーボネートを製造する方法、或いは、その可能性を示唆する記述は何ら見出せない。
【0009】
該研究者たちは、芳香族環状カーボネート類の収量を向上させるため、THF中のPC濃度を0.5%、1.0%、3%へと上昇させる検討を行っている。しかしながらこの場合、芳香族環状カーボネート類混合物の収率は、67%、56%、39%と大幅に低下している。ちなみに、最高収率を与える条件下、100L反応容器中にて、50Kgの溶媒を使用したとしても,反応に使用できるポリカーボネート量は125gに過ぎず、得られる芳香族環状カーボネート類の収量は高々99gに過ぎず、実用的な量で芳香族環状カーボネート類を製造する方法とはいえない。
【0010】
芳香族環状カーボネート類混合物の製造には上述のごとく、安全上、製造上低収量など解決すべき問題が数多く残されており、工業的規模で実施するのは現状、不可能である。
【0011】
芳香族ポリカーボネートはその優れた、透明性、耐熱性などより、各種用途に広く使用されているが、現在その製造法としてはホスゲン及び塩化メチレン溶媒を使用する、界面重合法が広く採用されている。しかし現在、ホスゲン、塩化メチレンの環境に対する影響が問題となり、炭酸ジエステル、とりわけジフェニルカーボネートを使用する溶融重合法、あるいは固相重合法が注目を浴びている。しかしながら溶融重合法、あるいは固相重合法により、高重合度ポリカーボネートを製造するためには高温度条件下、高真空条件を長時間持続する必要があり、かかる条件を満足するためは、大きな設備を必要とする。
【0012】
これに対し、芳香族環状カーボネート類混合物の重合は、極めて簡便な条件下、すなわち、触媒の存在下、あるいは非存在下、単に該芳香族環状カーボネートを200℃あるいはそれ以上で、数十分間、加熱するのみで高重合度のポリカーボネートとすることができる利点を有する。
(例えば、Macromolecules 1991,24,3035−3044 Daniel J. Brunell and Thomas G. Shannon)
【0013】
また芳香族ポリカーボネートはその優れた機械的物性、光学的物性のゆえ各種成形品に使用されているが、その溶融粘度が高いため、成形時、樹脂を高温度に曝す必要があり、高温度での樹脂の劣化が問題となっているため、例えば可塑剤、あるいは所謂ABS、SAN等の各種の成形助剤、流動性改質剤が検討、使用されている。
【0014】
溶融粘度は、分子量の増大とともに指数関数的に増大するため、分子量の過大なポリカーボネートはその使用範囲が限定されたものとなる。現在でもその数平均分子量が6万を超えるものの用途は少なく、1.5万から3万程度のものの重要が大きいい。芳香族環状カーボネート類混合物より得られる分子量6万を超えるものは、その成形が困難であるばかりでなくその用途も限られたものとなるため、その重要性は低い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は 本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂(A)から、芳香族環状カーボネート類混合物と、分子量の低い線状芳香族ポリカーボネートとからなる混合物(以下、芳香族環状カーボネート類含有混合物、或いは単に混合物と略称する)を得て、該混合物を反応せしめて芳香族ポリカーボネートを製造する方法を提供することにある。また本発明の第2の目的は芳香族ポリカーボネート樹脂(A)から、芳香族環状カーボネート類混合物と、芳香族ポリカーボネート(A)に比べ分子量の低下した線状芳香族ポリカーボネートとからなる混合物を得て、該混合物を反応せしめて芳香族ポリカーボネート(A)に比べて分子量が変換された芳香族ポリカーボネートを得ることによるポリカーボネートの分子量を変換する方法を提供することにある。また本発明の第3の目的は1)成形性、2)色調、3)耐熱劣化性、4)耐加水分解性の良好な分子量の変換された芳香族ポリカーボネートを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、芳香族環状カーボネート類混合物と、分子量の低い線状芳香族ポリカーボネートとからなる芳香族環状カーボネート類含有混合物が、芳香族環状カーボネート類混合物と同様に、重合能力を有すること、しかも該混合物の溶融温度、および溶融粘度が、従来の芳香族環状カーボネート類混合物、或いは芳香族ポリカーボネートに比較して格段に低いこと、其の取り扱いが容易であり、該混合物から芳香族ポリカーボネート樹脂、或いは直接、フィルム、シート、成形品への重合加工が極めて容易であることを見出し本発明に到達した。即ち本発明方法で得られるポリカーボネートは、成形加工に適度な分子量を有し、しかも得られた成形品が十分実用に耐えることを見出し本発明に到達した。
【0017】
即ち本発明者らは、芳香族環状カーボネート類混合物と、分子量の低い線状芳香族ポリカーボネートとからなる芳香族環状カーボネート類含有混合物をきわめて収量よく製造しうること、しかも該混合物製造原料として、特定不純物含有量、特定末端基構造、濃度、かつ特定分子量分布を有する芳香族ポリカーボネートを使用する事により、一層品質良好な芳香族環状カーボネート類含有混合物を、より一層収量良く製造しうること、そして該混合物より、出発原料である芳香族ポリカーボネート類とは分子量の異なった品質良好な芳香族ポリカーボネート類を製造しうることを見出し本発明に到達した。即ちかかる芳香族ポリカーボネート原料を使用することにより、得られる芳香族環状カーボネート類含有混合物の品質が良好であり、重合する時、重合活性が良好であり、しかも得られた重合物ポリマーの物性、とりわけ、成形性、色調、耐熱劣化性、耐加水分解性が良好である事を見出した。
【0018】
即ち本発明の芳香族ポリカーボネートの製造方法および芳香族ポリカーボネートの分子量を変換する方法は、主たる繰り返し単位が下記式(1)
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Wは、炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキリデン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数1〜10の置換基を有しても良いアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基もしくはスルホン基又は直接結合である。)
で表される芳香族ポリカーボネート(A)を溶媒中、アルカリ金属化合物触媒の存在下に反応させ、芳香族環状カーボネート類混合物と、芳香族ポリカーボネート(A)に比べ分子量の低下した線状芳香族ポリカーボネートとからなる混合物(以下、芳香族環状カーボネート類含有混合物、或いは単に混合物と略称する)を製造し(第一の工程)、さらに該混合物を反応せしめて芳香族ポリカーボネートを製造する(第二の工程)工程からなる。
【0021】
本明細書にいう芳香族環状カーボネート類混合物とは、カーボネートの環状二量体、環状三量体および高次環状体等の実質的に環状体より成る混合物との意味である。本明細書にいう芳香族環状カーボネート類含有混合物とは該芳香族環状カーボネート類混合物と、分子量の低い線状芳香族ポリカーボネートとからなる。
【0022】
上記第一の工程において、1)粘度平均分子量が10,000〜100,000、Mn;ポリスチレン換算数平均分子量、とMw;ポリスチレン換算重量平均分子量の比であるMw/Mnが2.0〜4.0の芳香族ポリカーボネート(A)を原料として使用するのが好ましい。
【0023】
得られる芳香族ポリカーボネートの分子量の観点からして、原料芳香族ポリカーボネート(A)の粘度平均分子量は高い方が、より粘度平均分子量の高い芳香族ポリカーボネートを得るためには好ましい。しかし、反応速度の点、溶媒中への原料芳香族ポリカーボネートの溶解性、得られるポリカーボネートの成形性の点からは、原料芳香族ポリカーボネート(A)の分子量は低い方が好ましい。したがって両観点のバランスより、原料芳香族ポリカーボネート(A)の粘度平均分子量としては、10,000から100,000の範囲のポリカーボネートが選択され使用される。
【0024】
(Mw/Mn)比の値は、芳香族環状カーボネート類含有混合物の品質の点で、重要である。すなわちこの値が大きい原料を使用した場合、理由不明であるが、得られた芳香族環状カーボネート類含有混合物の重合反応が良好に進行しない場合や、あるいは該混合物を重合した芳香族ポリカーボネートの色調、耐加水分解性あるいは流動性が低下した不良芳香族ポリカーボネートが得られる場合がある。Mw/Mn値は分子量分布に関するパラメータであり、何ら不純物の有無を示唆するものでは無いので、上記結果は予想外のことである。
【0025】
強いて、想像すれば、Mw/Mn値が大きいことは、低分子量、あるいは高分子量の成分が多く含有される事或いは分岐構造の含有を意味するので、かかる低分子量、あるいは高分子量のもの或いは分岐成分が何らかの副反応にかかわっていると、推定される。
【0026】
即ち、Mw/Mn値は小さい方が、好ましいが、4.0より小さいと実用上問題が無い。またこの値の下限としては理論値として1が例示されるが、理論値のものは実際上入手不可能であり、1.5程度でも何ら差異は、認められない。ポリカーボネートの生成反応機構上の特徴から実際上は2.0以上のものの入手が容易であるが、さらに実際的には2.2程度であっても何ら問題無く使用できる。
【0027】
さらに原料芳香族ポリカーボネート(A)に関しては
2)リン化合物含有量がリン元素として30ppm以下
3)水分含有量0.01wt%以下、
である原料芳香族ポリカーボネート(A)を使用することにより本発明目的をより一層良好に実現すことが出来る。
【0028】
さらにより一層好ましい実施体様として、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、およびアルカリ(土類)金属以外の金属化合物の含有量が元素としてそれぞれ2ppm以下、ハロゲン化合物の含有量がハロゲン元素の合計量として30ppm以下、リンおよびハロゲン以外の非金属元素含有化合物の元素含有量がそれぞれ3ppm以下である芳香族ポリカーボネート(A)を使用することにより、アルカリ金属触媒による、芳香族ポリカーボネート(A)からの芳香族環状カーボネート類含有混合物の生成反応が、十分速い反応速度で進行するとともに、反応選択率、収率収率も良好なものと成る。
【0029】
本明細書において、これらの金属元素、非金属元素としては、例えば有機金属化学−基礎と応用−山本明夫著に記載のような周期表の分類によるが、本発明においてとくに問題となる非金属元素としてはN、S、Se、B、Asであり、さらに主たる対象としてS、Nである。
【0030】
リン含有量に関しては、上記規定値以下の含有量のポリカーボネートを使用することが、芳香族ポリカーボネートからの芳香族環状カーボネート類含有混合物の生成反応が、十分速い反応速度で、進行するとともに、反応選択率、収率も良好なものと成るために必須である。
【0031】
リン化合物、特に亜燐酸エステル類は、市販ポリカーボネート中、安定剤として、10〜1000ppm(リン分として1〜100ppm)、さらには、難燃剤としてリン酸エステル化合物がそれ以上添加されているので、前もってこれらのリン分を除いて、上記規定含有量あるいは好ましくは、20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下にしておくべきである。1ppmあるいはそれ以下にしておくのが特に好ましい。
【0032】
芳香族ポリカーボネート(A)中の水分含有量に関しては、水分含有量が0.01wt%超えると、生成する芳香族環状カーボネート類の分解消費反応が優勢に成り、得られた芳香族環状カーボネート類含有混合物中の芳香族環状カーボネート類混合物の含有量が低下する。この結果、該芳香族環状カーボネート類含有混合物の重合活性が不良となり、該混合物より製造されるポリカーボネートは、重合度(即ち粘度平均分子量)の低いものしか得られず、その上、色調、耐熱劣化性、耐加水分解性の低い不良水準のものが得られることと成る。
【0033】
芳香族ポリカーボネート中の含水量を上記規定値範囲内にするには、例えば13×102Pa以下の真空条件下、110〜150℃の温度で1〜10hrの乾燥処理を行う事により容易に達成することができる。
【0034】
ハロゲン量に関しては、芳香族ポリカーボネートが界面重合法で製造されたものであるとき、クロロフォーメート、あるいは塩化メチレン成分が、ポリカーボネート中通常1〜30ppm残存混入している。該成分は、芳香族環状カーボネート類含有混合物製造時使用されるアルカリ触媒を不活性化する効果を有する。したがって好ましくは30ppm以下さらに好ましくは20ppm以下、特に好ましくは5ppm以下の値にしておくべきである。1ppm以下であれば特段に好ましい。
【0035】
リン、アルカリ金属、その他の金属、非金属元素、ハロゲン量等の不純物元素量を規定値あるいはそれ以下に低減するには、具体的には、ポリカーボネートをTHF等の非ハロゲン系溶媒に溶解し、希薄アルカリ水で常温、あるいは加温条件下、洗浄、所望によっては活性炭、キレート樹脂、イオン交換樹脂と接触させた後沈殿溶媒例えばメタノールを添加、ポリカーボネートを沈殿、回収する操作を、1回あるいは数回繰返すことにより、前述の不純物元素含有量を上記範囲内に入るようにする事ができる。
【0036】
これら不純物の値が規定値を超えると、アルカリ触媒で、芳香族ポリカーボネートより芳香族環状カーボネート類含有混合物を生成する反応速度が遅いとともに、反応選択率、収率も低下して好ましい結果が得られない、のみならず、得られる芳香族環状カーボネート類含有混合物の安定性が不良となり、保管中劣化反応を起こしやすくなる。またこれらの芳香族環状カーボネート類含有混合物の色調も不良となり、反応性(重合速度)も不良のものと成る。
【0037】
金属化合物、非金属元素含有化合物としては、非共有電子対を有する化合物に配位する能力を有するもの、およびポリエチレンテレフタレートあるいはポリカーボネート製造時、エステル交換触媒としての活性有するものが特に好ましくない。
【0038】
これらの金属、非金属元素を低減させる方法としては、例えば、前述のごとくポリカーボネート溶液の希薄アルカリ水溶液洗浄処理、カチオン交換樹脂処理或いは活性炭処理等を組み合わせ行うのが有効である。この処理によりポリカーボネート中のアルカリ金属化合物、アルカリ金属以外金属化合物の元素含有量を2ppm以下、リン以外の非金属元素含有化合物量を容易に3ppm以下の値にできる。さらに数回繰返すことにより好ましくはそれぞれ1ppm、以下あるいはさらに好ましくは0.5ppm以下特に好ましくは0.1ppm以下にする。
【0039】
分子末端基構造に関しては、芳香族ポリカーボネート末端基が、実質的にアリールオキシ基及びフェノールル性水酸基よりなり、かつフェノール性水酸基含有量がカーボネート構造単位1モル当たり3×10-2化学当量以下である芳香族ポリカーボネートを使用することにより、反応性、色調良好な芳香族環状カーボネート類含有混合物を収量良く製造することが出来る。即ち反応を順調に進行するためにはフェノール性水酸基含有量が適切な量である必要性がある。
【0040】
末端水酸基含有量がカーボネート構造単位1モル当たり3×10-2化学当量を超えるとポリカーボネートの反応速度は増加するが、得られた芳香族環状カーボネート類含有混合物中、芳香族環状カーボネート類含有量が低下し、重合活性が不良となり、かつまた該有混合物より製造されるポリカーボネートの品質とりわけ色調、耐熱劣化性、耐加水分解性が低い不良水準のものと成る。
【0041】
水酸基濃度が上記範囲を超えて多すぎるとき末端水酸基濃度を上記範囲にするには、本発明者等が以前提案したアメリカ特許明細書5,696,222号のような特定サリチル酸エステルで処理する方法が有効であり、該特許記述に従い、容易に目的水酸基濃度に調節可能である。
【0042】
本発明において、第一の工程において使用する溶媒としては、下記グループ記載の少なくとも一種よりなるポリカーボネート溶解性の溶媒であることが好ましい。
【0043】
即ち、エーテル化合物類、チオエーテル化合物類、ケトン化合物類、スルフォ化合物類ン、スルフォキシド化合物類、アミド化合物類系の活性水素を含有しない、常圧沸点300℃以下、かつ水分含有量が20ppm以下、溶解酸素量が10ppm以下のものが好ましく選択される。
【0044】
かかる溶媒としては、例えば
チオフェン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル化合物類、チオエーテル化合物類
アセトフェノン、シクロヘキサノン、アセトン、等のケトン化合物類
N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系化合物類
等が例示される。これらの中ではジオキサン、テトラヒドロフランが好ましいものとして例示される。
【0045】
これら溶媒を使用するには、溶媒中の水分、および溶存酸素量を低減せしめておくことが好ましい。水分含有量を低い水準に押さえておくことは芳香族環状カーボネート類混合物の含有割合を高めることに必須の条件である。水分含有量は低いほど好ましく、20ppm以下、好ましくは10ppm以下の水準である。
【0046】
溶媒水分量をかかる低水準に低下させるには、脱水剤、例えば、Quihi Li and Mark A. Buese等のようにカルシウムハイドライド、リチウムボロハイドライド等の金属水素化物を使用する方法も有るが、水分吸着剤、とりわけモレキュラーシーブによる方法が芳香族環状カーボネート類の収量を高めるので好ましい。
【0047】
さらに該溶媒中の溶存酸素量を低下させておくことが、得られる芳香族環状カーボネート類含有混合物の色調或いは、重合活性を高め、さらに該混合物を重合して得られる芳香族ポリカーボネートの色調、耐加水分解性を向上させるために好ましい。溶存酸素濃度を10ppmに低下させるには、通常の脱気プロセスに従えば良く、さらに好ましくは5ppm以下にすることである。
【0048】
本発明において、上記第一の工程におけるアルカリ金属触媒の使用量として、好ましくは、(1)のカーボネート構造繰り返し単位1モルあたり1×10-6〜1×10-1等量とする。好ましくは1×10-6〜5×10-2等量、さらに好ましくは5×10-6〜1×10-2等量とする。
【0049】
触媒量は少なすぎると、触媒効果が無いし、また多すぎると芳香族環状カーボネート含有混合物の着色、分解など各種副反応を引き起こし好ましくない。
【0050】
本発明で使用するアルカリ金属触媒の金属元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウムが例示されるが、反応速度、収率の点より好ましいものとしては、ナトリウム、カリウム、セシウム、が選択される。
これら元素の水素化物、炭化水素化合物、ボロヒドリド化合物、アルミニウムヒドリド化合物、アート錯体、酸化物、水酸化物、アルコラート、フェノラート、ビスフェノール塩、1,3ジケト錯体などが好ましく使用される。これらのアルカリ金属化合物は当然ながら、水分含有量の無いものが好ましい。
【0051】
具体的には例えばナトリウムヒドリド、カリウムヒドリド、ルビジウムヒドリド、セシウムヒドリド等の水素化物、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、ブチルリチウム、ベンジルカリウム、ベンジルセシウム、インデニルセシウム等の炭化水素化合物、ナトリウムボロヒドリド、カリウムボロヒドリド、セシウムボロヒドリド、ナトリウムアルミニウムヒドリド、カリウムアルミニウムヒドリド、セシウムアルミニウムヒドリド、等のボロヒドリド化合物、アルミニウムヒドリド化合物、ナトリウムテトラフェニルボレート、カリウムテトラフェニルボレート、セシウムテトラフェニルボレート等のアート錯体、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウム、酸化ルビジウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム等の酸化物、水酸化物、ナトリウムメチラート、カリウムt−ブトキシド、セシウムプロポキシド、セシウムt−ブトキシド、ルビジウムエチラート、ナトリウムフェノラート、カリウムフェノラート、セシウム2,4−ジt−ブチルフェノラート、ビスフェノールAモノナトリウム塩、ビスフェノールAジナトリウム塩、ビスフェノールAジカリウム塩、ビスフェノールAモノセシウム塩、ビスフェノールAジセシウム塩等のビスフェノール塩、およびナトリウムアセチルアセトナート、カリウムアセチルアセトナート、ルビジウムアセチルアセトナート、セシウムアセチルアセトナート等の1,3−ジケト錯体が例示される。
【0052】
触媒の存在下、芳香族環状カーボネート類含有混合物製造条件としては、反応温度は室温〜120℃、好ましくは30〜110℃、さらに好ましくは30〜100℃である。反応温度がこれより低くても反応は進行する。反応温度は低いほど反応選択率が高く好ましいが、反応速度の点からは、高い方が好ましい。反応温度を高くすると反応選択率が低下して好ましくない。反応選択率、反応速度の観点より、上記反応温度が好ましく選択される。
【0053】
反応時間は10分から5時間の範囲が選択される、反応時間は、ポリカーボネートの反応転化率を考慮して上記範囲内で、適宜選択される。
【0054】
上記第一の工程が終了した段階で、反応混合物は水洗を繰り返しアルカリ金属触媒を除去することが好ましい。この時溶媒を水に不溶性のものに全部、或いは一部交換しておくのが好ましい。
水不溶性の溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒たとえば、キシレン類などが好ましく使用される。
【0055】
アルカリ金属触媒は水洗に先立ち、触媒不活性化剤により処理されるのが好ましい。触媒不活性化剤としては、カルボン酸、燐酸、酸性あるいは中性燐酸エステル、亜燐酸、酸性あるいは中性亜燐酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルホン酸アンモニウム塩、スルホン酸ホスホニウム塩が例示される。
【0056】
これら触媒不活性化剤の添加量はアルカリ金属触媒のアルカリ金属元素1当量あたり、基本的には1当量添加するのを基本とするが、0.8〜20当量、好ましくは0.9〜10当量、さらに好ましくは、0.9〜5当量、特に好ましくは0.95〜2当量の範囲である。
【0057】
触媒不活性化剤は、化学量論的には、アルカリ触媒1当量あたり1当量で十分なはずであるが不活性化能力に高低があり、それによって量を加減する。触媒不活性化剤の添加量は多すぎると芳香族環状カーボネート類含有混合物の重合活性が低下し好ましくないことがある。
【0058】
これら触媒不活性化剤としては
ア)蟻酸、酢酸、酪酸、蓚酸、琥珀酸、アジピン酸、安息香酸、テレフタル酸等の低級カルボンサン類
イ)燐酸、燐酸トリメチル、燐酸ジブチル、燐酸モノオクチル、燐酸トリフェニル、燐酸ビス(2,4−ジt−ブチルフェニル)、燐酸トリス(2,6−t−ブチルー4−メチルフェニル)、ジオクチルペンタエリスリチルジフォスフェート等の燐酸及びこれらの低級酸性、中性エステル誘導体
ウ)亜燐酸、亜燐酸トリブチル、亜燐酸ジノニル、亜燐酸モノデシル、亜燐酸トリフェニル、亜燐酸ビス(2,4−ジt−ブチルフェニル)、亜燐酸トリス(2,6−t−ブチルー4−メチルフェニル)、ビス(2,6−t−ブチルー4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジフォスファイト等の亜燐酸及びこれらの低級酸性、中性エステル誘導体
エ)ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ノニルスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、ノニルスルホン酸オクチル、メタンスルホン酸ドデシル、等のスルホン酸、スルホン酸低級エステル類
オ)ベンゼンスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸テトラメチルホスフォニウム塩、ノニルスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩、ドデシルスルホン酸テトラブチルホスフォニウム塩、ドデシルベンゼンテトラブチルホスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩
等が例示される。
【0059】
上記第一の工程で得られた芳香族環状状カーボネート類含有混合物溶液の溶媒は、特定温度範囲すなわち、150℃以下において除去することが好ましい。
【0060】
特公昭41−14595号公報に、芳香族環状カーボネートそれ自体は、純粋な形では、十分安定な化合物であるが、微小量のヒドロキシ化合物の存在により、200℃あるいはそれ以上に加熱することにより、きわめて容易に開環重合反応をすることが記述されている。
【0061】
本発明では、溶媒除去の段階において、好ましくは、150℃を超えないようにする必要がある。150℃を超えた場合、反応溶液中含有される少量のヒドロキシ化合物等の重合開始剤作用により、芳香族環状カーボネート類含有混合物の重合反応、あるいはその他の副反応を引き起こし、該混合物の品質が低下する。したがって溶媒除去は、適度の減圧下行い、溶液の温度を好ましくは、140℃以下、さらに好ましくは130℃以下に保つ必要がある。
【0062】
本発明の芳香族環状カーボネート類混合物と、分子量の低い線状芳香族ポリカーボネートとからなる芳香族環状カーボネート類含有混合物は
1)分子構造的に、カーボネート構造単位1モルあたりフェノール性水酸基が2.5×10-2当量未満、
不純物として
2)加水分解性ハロゲン含有量の合計含有量が2ppm以下、
3)アルカリ(土類)金属化合物含有量がアルカリ(土類)元素としてそれぞれ2ppm以下、
4)リン化合物含有量がリン元素として3ppm以下、
5)アルカリ金属以外の金属化合物の含有量が元素としてそれぞれ1ppm以下、リン、ハロゲン以外の非金属元素含有化合物の含有量が元素としてそれぞれ2ppm以下であることを特徴とする。
【0063】
分子構造的に、カーボネート構造単位1モルあたりの末端フェノール性水酸基濃度が2.5×10-2等量未満とすることにより、芳香族環状カーボネート類含有混合物の重合反応活性が高まり、該混合物から得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量、耐熱性、耐加水分解性が高いものとなる。
【0064】
さらに、末端フェノール性水酸基含有量を上記範囲内とすることににより、該混合物の保管時の安定性を良好なものと出来る。即ち、長期保管時の剤の着色を防止することが出来る。着色した混合物からは、芳香族ポリカーボネート本来の透明樹脂は得がたく、樹脂したがって該混合物の経済的価値は低下したものとなってしまう。
【0065】
末端フェノール性水酸基量は、少ないほど上記の意味で好ましい。2.5×10-2等量未満で有れば許容される範囲である。しかし好ましくは1.0×10-2等量未満、さらに好ましくは5×10-3等量未満、特に好ましくは1.0×10-3等量未満である。末端フェノール性水酸基濃度は、以下記述する不純物除去処理を適用することにより低減可能である。
【0066】
フェノール性水酸基に加え、不純物もまた芳香族環状カーボネート類含有混合物の反応性、即ち該混合物から得られる分子量の変換されたポリカーボネートの重合度に大きな影響を有する。加えて不純物はポリカーボネートの色相、及び透明性および安定性即ち耐熱劣化安定性、耐加水分解性に重要な悪影響を及ぼす。
【0067】
加水分解性ハロゲン、金属元素、特に塩素、重金属元素、なかでもFe、Cr,Ni,Mn、Tiは本来無色透明性を特徴とするポリカーボネートの色相に対し、黄色味を強くし商品価値を低下させるとともに、長期間高温保持時、当初無色透明であった色相を悪化させ、黄色味のアップ、分子量低下を引き起こす。分子量の低下は、長期間高温保持された成形品の耐衝撃性、破断強度、破断伸度などの機械的性質の低下をもたらし好ましくない。
【0068】
リン元素は、得られた芳香族環状カーボネート類含有混合物の重合活性を低下させる。即ち所定の分子量までアップする時間が長くなったり、また所定の分子量まで上昇しない場合も発生する。
【0069】
芳香族環状カーボネート類含有混合物の品質、および安定性、該混合物より得られるポリカーボネート樹脂の特徴である、無色透明性を損なわないレベル、機械的性質の安定性の許容できるレベルを勘案して上記不純物レベルが例示される。
【0070】
ポリカーボネート樹脂の本来の特徴である、無色透明性、機械的性質をより活かすためには、芳香族環状カーボネート類含有混合物は好ましくは
ア)加水分解性ハロゲン含有量の合計含有量が0.5ppm以下
イ)アルカリ(土類)金属化合物含有量がアルカリ(土類)元素としてそれぞれ1.0ppm以下
ウ)リン化合物含有量がリン元素として2ppm以下
エ)アルカリ(土)金属以外の金属化合物、リン以外の非金属元素含有化合物の含有量がそれぞれ0.5ppm及び1ppm以下のレベルであり
さらに好ましくは
ア)加水分解性ハロゲン含有量の合計含有量が0.5ppm以下
イ)アルカリ(土類)金属化合物含有量がアルカリ(土類)元素としてそれぞれ0.8ppm以下
ウ)リン化合物含有量がリン元素として1ppm以下
エ)アルカリ(土)金属以外の金属化合物、リン以外の非金属元素含有化合物の含有量がそれぞれ0.1ppm及び0.5ppm以下のレベルでありことが好ましい。
【0071】
かかる分子構造的特徴および不純物レベルを満たす手法としては、出発原料である芳香族ポリカーボネートの分子構造的パラメータ、不純物パラメータを満足させること、及び溶媒、触媒、反応条件を満たすようにする方法が挙げられる。
【0072】
さらに、より好ましい分子構造的特徴および不純物レベルを満たす手法としては、芳香族環状カーボネート類含有混合物に、活性炭処理、OH型強塩基性イオン交換樹脂処理、H型強酸性イオン交換樹脂処理等を組み合わせ併用することにより達成できる。この処理は1回処理で十分なレベルまで好ましい分子構造的特徴および不純物レベルを低減することができるが、さらに2回以上処理し、さらに低い不純物レベルまで達成することができる。
【0073】
斯かる処理により、カーボネート構造単位1モル当たりのフェノール性水酸基の濃度を2.5×10-2当量未満に、加水分解性ハロゲン含有量、アルカリ(土)金属元素、金属化合物、非金属化合物元素の含有量を0.5ppm、あるいは0.1ppm以下とすることが出来る。3回以上の回数、処理回数を上げても、繰返しの効果は大きくない。
【0074】
芳香族環状カーボネート類含有混合物溶液はあえて特別に、該混合物を別途溶解して作成する必要は無く、第一の工程で作成した環状カーボネート含有混合物洗浄溶液を、直接活性炭処理とOH型強塩基性イオン交換樹脂処理及びH型強酸性イオン交換樹脂処理することにより容易に効果的に達成できる。本発明で使用する活性炭は特別のものでなくてよい。処理効果が発揮されるためには、活性炭の比表面積が300m2/g以上の表面積が大きいものが好ましい。より好ましくは500m2/g以上のものである。
【0075】
イオン交換樹脂は市販のイオン交換樹脂が十分効率的に使用しうる。かかる処理の順序としては、イオン交換樹脂処理をまず行い、ついで活性炭処理の順に行う。OH型強塩基性イオン交換樹脂処理とH型強酸性イオン交換樹脂処理はどちらの処理を先に行ってもかまわない。
【0076】
またこれらの処理反応形式はバッチ式、あるいはセミバッチ式、流通式、完全混合槽、管式反応機などその様式は問わない。
【0077】
本発明の芳香族環状カーボネート類含有混合物は実質的に触媒を添加しないでも、加熱溶融重合可能である。しかし、重合プロセスをより効率的に進行させるため、溶融重合法ポリカーボネートの製造に使用される、公知のエステル交換触媒の存在下200℃以上に加熱することにより、さらに容易に重合し、色相、安定性良好な分子量の変換された線状ポリカーボネートを生成する。
【0078】
斯かる触媒としては、1)塩基性地窒素化合物あるいは塩基性リン化合物及びまたは2)アルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物が好ましいものとして例示される。
【0079】
これらのうち含窒素塩基性化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3NOH)、等の、分子中にアルキル、アリール、アルキルアリール基等を有するアンモニウムヒドロキシド類;テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムフェノキシド、テトラブチルアンモニウム炭酸塩、ベンジルトリメチルアンモニウム安息香酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムエトキシド等のアルキル、アリール、アルキルアリール基等を有する塩基性アンモニウム塩類;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、等の第3級アミン類;あるいは、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)等の塩基性塩類をあげることができる。
【0080】
また、含リン塩基性化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド(Me4POH)、ヘキサデシルトリメチルホスホニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルキルアリール基等を有するホスホニウムヒドロキシド類;あるいはテトラメチルホスホニウムボロハイドライド(Me4PBH4)、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(Bu4PBPh4)、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート(Me4PBPh4)等の塩基性塩、等をあげることができる。
【0081】
含窒素塩基性化合物及び/又は含リン塩基性化合物は、塩基性窒素原子あるいは塩基性リン原子が原料芳香族環状カーボネート類含有混合物のカーボネート結合1モルに対し、1×10-5〜1×10-2化学当量の割合で用いるのが好ましく、より好ましくは、2×10-5〜1×10-3化学当量の割合、特に好ましくは5×10-5〜5×10-3化学当量の割合で使用される。
【0082】
一方、重合用の触媒として使用されるアルカリ(土類)金属化合物は、原料芳香族環状カーボネート類含有混合物のカーボネート結合1モルに対し、アルカリ(土)金属元素として5×10-8〜1×10-4化学当量の範囲で、好ましくは5×10-8〜1×10-5化学当量の範囲で、特に好ましくは5×10-8〜5×10-6化学当量の範囲で使用される。かかる量比の触媒を使用することにより、重縮合反応速度を損なうことなく、かつ重縮合反応中に生成しやすい分岐反応、主鎖開裂反応や、成形加工時における装置内での異物の生成や焼けの発生等の好ましくない現象を効果的に抑止でき、良質な線状ポリカーボネートを製造することが出来る。
【0083】
ここで重合用の触媒として使用されるアルカリ(土類)金属化合物としては、例えば、アルカリ(土)金属の水酸化物、炭化水素化合物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化ホウ素塩、安息香酸塩リン酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等があげられ、具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水素化バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、硝酸ルビジウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩、ジリチウム塩、モノナトリウム塩、モノカリウム塩、ナトリウムカリウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、等があげられる。
【0084】
本発明においては、分子量の低下や着色の起こりにくい良好な安定性をもつ芳香族ポリカーボネートを得るために、重合後の該ポリマーの各種状況下の安定性を良好なものとするため、溶融ポリマーの溶融粘度安定性に注目し、この値を0.5%以下にすることが必須であり、そのために特に重合後に溶融粘度安定化剤を用いることが好ましい。なお溶融粘度安定性は、窒素気流下、せん断速度1rad/sec、300℃で30分間測定した溶融粘度の変化を絶対値で評価し、1分間あたりの変化率であらわす。
【0085】
本発明における溶融粘度安定化剤は、ポリカーボネート製造時に使用する重合触媒の活性の一部または全部を失活させる作用もある。
【0086】
溶融粘度安定化剤を添加する方法としては、例えば、反応生成物であるポリカーボネートが溶融状態にある間に添加してもよいし、一旦ポリカーボネートをペレタイズした後、再溶解し添加しても良い。前者においては、反応槽内または押し出し機内の反応生成物であるポリカーボネートが溶融状態にある間に添加してもよいし、また重合後得られたポリカーボネートが反応槽から押し出し機を通ってペレタイズされる間に、溶融粘度安定化剤を添加して混練することもできる。
【0087】
溶融粘度安定化剤としては、公知のいかなる剤も使用できるが、得られるポリマーの色相や耐熱性、耐沸水性などの物性の向上に対する効果が大きい点から、有機スルホン酸の塩、有機スルホン酸エステル、有機スルホン酸無水物、および有機スルホン酸ベタインなどのスルホン酸化合物を使用することが好ましい。なかでもスルホン酸のホスホニウム塩および/またはスルホン酸のアンモニウム塩を使用することが好ましい。そのなかでも特に、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩などが好ましい例として挙げられる。
【0088】
本発明によって分子量の変換された芳香族ポリカーボネートが好適に得られるが、それは原料の芳香族ポリカーボネートに対して分子量を増大したものを得ることもできるし、分子量を減少したものを得ることもできる。その反応条件としては上記の中から適宜選択されるが、原料芳香族ポリカーボネート(A)の粘度平均分子量としては、10,000から100,000の範囲のポリカーボネートが選択され使用されるのに対し、粘度平均分子量9,000から70,000の範囲で分子量の変換された芳香族ポリカーボネートが得られる。
【0089】
また反応原料中の環状カーボネートの量をコントロールすることにより、特に高い粘度平均分子量のポリカーボネートを所望する場合は、芳香族環状カーボネート類含有混合物中の環状カーボネートの含有割合を増加させることにより、比較的高い粘度平均分子量;12,000から120,000の範囲の分子量の変換された芳香族ポリカーボネートが得られる。
上記の方法により本発明の耐久性、安定性に優れた重合体が得られるが、これを用いて各種成形品を成形する場合に用途に応じて従来公知の加工安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤などを添加してもよい。
【0090】
また、本発明の芳香族ポリカーボネートの分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、トリメチルホスフェートおよびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.1重量部が更に好ましい。
【0091】
また、本発明の芳香族ポリカーボネートには溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。かかる離型剤としては、オレフィン系ワックス、カルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。かかる離型剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましい。
【0092】
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルであるのが好ましい。かかる一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。かかる離型剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましい。
【0093】
更に、本発明の芳香族ポリカーボネートに本発明の目的を損なわない範囲で、剛性などを改良する為に無機および有機充填材を配合することが可能である。かかる無機充填材のとしてはタルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の板状または粒状の無機充填材やガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ワラストナイト、カーボン繊維、アラミド繊維、金属系導電性繊維等の繊維状充填材、架橋アクリル粒子、架橋シリコーン粒子等の有機粒子を挙げることができる。これら無機および有機充填材の配合量は本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して1〜150重量部が好ましく、3〜100重量部が更に好ましい。
【0094】
また、本発明で使用可能な無機充填材はシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。この表面処理により、芳香族ポリカーボネートの分解が抑制されるなど良好な結果が得られる。
【0095】
本発明の芳香族ポリカーボネートには、他の樹脂を本発明の目的が損なわれない範囲であれば配合することもできる。
【0096】
かかる他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0097】
本発明で製造されるポリカーボネートから射出成形法などにより、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
【0098】
本発明の芳香族ポリカーボネートは、上記の特定不純物を特定値以下に抑えることで、該ポリマーの耐久性、特に厳しい温湿条件下での長時間の耐久性を保持する効果が得られ、該ポリマーを使用して得られたコンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW等、マグネット・オプティカルディスク(MO)等、デジタルバーサタイルディスク(DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−R、DVD−RAM等)で代表される高密度光ディスク用の基板は長期に渡って高い信頼性が得られる。特にデジタルバーサタイルディスクの高密度光ディスクに有用である。
【0099】
本発明で製造される芳香族ポリカーボネート樹脂からのシートは、接着性や印刷性の優れた芳香族ポリカーボネートシートであり、その特性を生かして電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用され、具体的には各種窓材即ち一般家屋、体育館、野球ドーム、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品、また各種側壁板(スカイドーム、トップライト、アーケード、マンションの腰板、道路側壁板)、車両等の窓材、OA機器のデイスプレーやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、水槽用ポリカーボネート樹脂積層板、プロジェクションテレビやプラズマディスプレイの前面板やフレンネルレンズ、光カード、光ディスクや偏光板との組合せによる液晶セル、位相差補正板等の光学用途等に有用である。かかる芳香族ポリカーボネートシートの厚みは特に制限する必要はないが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜8mm、0.2〜3mmがが特に好ましい。また、かかる芳香族ポリカーボネートシートに、新たな機能を付加する各種加工処理(耐候性を改良するための各種ラミネート処理、表面硬度改良のための耐擦傷性改良処理、表面のしぼ加工、半および不透明化加工等)を施してもよい。
【0100】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂に添加剤を配合するには、任意の方法が採用される。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、溶融押出法でシート化する。
【0101】
本発明のポリカーボネートは、前記の各成分を任意の方法、例えばタンブラー、ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押し出し機等により混合して製造することができる。
【0102】
本発明で製造されるポリカーボネートから射出成形法などにより、耐久性、安定性が良好な成形品を得ることができる。
【0103】
本発明で製造されるポリカーボネートはいかなる用途に使用してもよく、特に光ディスク基板材料として用いることが好ましい。
【0104】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【0105】
[原料ポリカーボネートの製造]
原料ポリカーボネート(A)としては以下の12種のものを用いた。それぞれの物性を表1、2に示す。
【0106】
PC−1;市販の帝人化成(株)製汎用グレードポリカーボネート;L1250を、真空乾燥機中、120℃×12hr×13Paで乾燥した。
【0107】
PC−3;PC−1を20倍量の試薬特級テトラヒドロフランに溶解し、Na型強イオン交換樹脂処理を加えた後、電子工業用高純度メタノールを添加し、ポリカーボネートを沈殿させた。沈殿したポリカーボネートをメタノールで洗浄し、風乾した。
【0108】
PC−2;PC−3を真空乾燥機中、120℃×12hr×13Paで乾燥した。
【0109】
PC−4;PC−2に再度、洗浄と乾燥の同一処理を加えた。
【0110】
PC−5;PC−2にビスフェノールAモノ(t−ブチルフェニルカーボネート)をルーダー中で溶融添加し、フェノール性OH濃度を調整した。
【0111】
PC−6、PC−7;攪拌装置、精留塔および減圧装置を備えた反応装置に原料である精製ビスフェノールA、137重量部、精製ジフェニルカーボネート、135重量部、および重合触媒として、ビスフェノールAジナトリウム塩0.81×10-4重量部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド15×10-3重量部をし込んで窒素雰囲気下、150℃で溶解した。攪拌しつつ温度を180℃に昇温、反応槽内を133×102Paに減圧し、生成するフェノールを留去しながら20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、徐々に減圧し、フェノールを留去しながら、40×102Paで20分間反応させた。さらに徐々に昇温し220℃で20分間、240℃で20分間、反応させ、その後270℃で徐々に減圧し27×102Paで10分間、13×102Paで5分間反応を続行し、最終的に270℃、0.6×102Paで所定の分子量に成るまで反応を続行した。得られたポリカーボネートを乾燥したもの(PC−6)、および乾燥しなかったもの(水分量0.25wt%のもの、PC−7)を得た。
【0112】
PC−8、9;PC−6で製造したポリカーボネート、100重量部当りO−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートをそれぞれ、2.75、および0.97重量部を、280℃、10分、13Pa条件下で混合反応させた。
【0113】
PC−10、11;PC−8で得られたポリカーボネート100重量部当り、それぞれ0.032、および0.10重量部のトリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)フォスファイトを溶融添加した。
【0114】
PC−12;PC−6において、ジフェニルカーボネートを141重量部に、ビスフェノールAジナトリウム塩を、8.1×10-4重量部に変更、使用し、最終的に反応温度を290℃、真空度を2.7×102Paで反応を継続し所定の分子量が得られるまで反応させた。
【0115】
[芳香族環状カーボネート類含有混合物の製造 実施例1〜19]
上記PC1〜PC12の12種の原料ポリカーボネートを表3、4記載のように、モレキュラーシーブで乾燥、窒素ガスで脱酸素した所定量のTHF、100重量部中溶解し、所定量のセシウムブトキシドを添加、乾燥窒素気流下40℃で5hr反応を行った。反応後当量の酢酸で中和後、混合キシレン300重量部を添加、キシレン溶液を100重量部の純水で洗浄し、遠心分離装置で下層の水槽を除去した。この操作を5回繰り返した後、40℃以下の温度で溶媒を除去した後1×102Pa以下の高真空下、溶媒、水分を完全に除去した。得られた芳香族環状カーボネート類含有混合物の収量、収率を表3.4中に記す。
【0116】
[芳香族環状カーボネート類含有混合物の精製]
芳香族環状カーボネート類含有混合物、1重量部を混合キシレン100重量部に溶解し、純水で洗浄を3回行った。その後活性炭1重量部を添加、10hr室温室温で攪拌した。
活性炭を濾過分別した後、エバポレーターで溶媒を除去した。得られた精製環状カーボネート類含有混合物を室温条件下、10Pa以下の高真空で乾燥した。表5、6に該精製処理をしたもの、してないものを記し、それぞれの物性を示した。
【0117】
[芳香族環状カーボネート類含有混合物からのポリカーボネート重合:実施例101〜123]
表5、6のように精製処理をした、あるいは精製処理をしてない芳香族環状カーボネート類含有混合物、および表7のように各種金属を含有する各種の芳香族環状カーボネート類含有混合物254重量部をナトリウムフェノキシド1.2×10-4重量部とともに、SUS316製容器中290℃20分加熱混合した。反応後ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩8.2×10-4重量部を添加した。得られたポリカーボネートの物性を表5、6、7中に記す。
【0118】
[分析]
1)数平均分子量、重量平均分子量測定法
試料3mgをクロロフォルム10mlに溶解し、孔径0.45μmの親水性PTFEミリポアフィルターで濾過、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した。
なお分子量校正に単分散ポリスチレン(EasiCal;ポリマーラボラトリー社製)を使用した。
GPC測定条件
カラム;PLgel5μ MIXD−D(300×7.5mm)2本;ポリマーラボラトリー社製
移動相;クロロフォルム
流量 ;1.0ml/nim
検出 ;481紫外可視検出器(日本ウォーターズ株製)にて254nm波長にて検出。
【0119】
2)溶媒中溶存酸素濃度の測定
セントラル化学(株)製、有機溶媒用DOメーター;UC−12−SOLにより測定。
【0120】
3)金属元素、非金属元素の定量
試料約2gを精秤、石英製坩堝に取り、バーナー、ついで電気炉にて順次灰化した。灰化物を濃硝酸で処理し、希硝酸で過熱溶解した後、希硝酸で加熱溶解、定容した。
アルカリ金属元素はフレーム原子吸光法(日立製作所(株)製;偏光ゼーマン型原子吸光光度計 Z5700)にて、実施。
金属、リンを含む非金属元素はICP質量分析法(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ6500)にて定量した。
【0121】
4)全ハロゲン量;試料をアルゴン/酸素気流中燃焼、発生ハロゲン化か水素をドーマン社製、ドーマン微量滴定装置、MCTS−120により滴定、滴定に要した電気量よりハロゲン量を定量。
【0122】
5)加水分解性ハロゲン量の定量;試料 約5gをトルエン50ml中に溶解、溶離液(2.8mMNaHCO3/2.25mMNa2CO3=1:1)10mlを加えた後、純水40mlを加え、攪拌抽出、その抽出液注の塩素量をダイオネックス社イオンクロマトグラフィー2000iで定量した。
【0123】
6)溶融粘度安定性;
レオメトリックス社製;RAA型流動解析装置を用い、窒素気流下、せん断速度1rad/sec300℃にて測定した溶融粘度の変化の絶対値を30分間測定し1分間当りの変化率を求めた。ポリカーボネート樹脂の長期安定性が良好であるためには、この値が1%を超えては成らない。好ましくは0.5%、特に好ましくは0%である。
【0124】
7)OH基濃度の定量;試料0.02gを0.4mlの重水素化クロロフォルムに溶解、20℃にて1H−NMR(日本電子株式会社製EX−270)を用いて測定した。
【0125】
8)耐熱性(5%重量減温度);℃;窒素気流下、TG−DSCにより測定。界面重合法或いは、エステル交換法によるビスフェノールよりのポリカーボネートのこの値は485℃であった。
480℃より低い値を示すものは、不純物或いはその他の理由によりポリカーボネート本来の安定性が実現されてなく、NGと判定。
【0126】
9)ポリカーボネートの重合度
塩化メチレン中ウベローデ粘度管にて、固有粘度[η]を測定し、次式により粘度平均分子量;Mvを求めた。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0127】
10)ハーゼン
芳香族環状カーボネートを、JISK4101に規定される色数試験方法に基づき、直径23mm、肉厚1.5mm、の平底パイレックスガラス製比色管を用い液深140mm、170℃、溶融状態で1hr窒素気流下保持し、ハーゼン標準比色液と比較測定した。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
【発明の効果】
本発明により、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)から、芳香族環状カーボネート類混合物と、分子量の低い線状芳香族ポリカーボネートとからなる混合物を得て、該混合物を反応せしめて、芳香族ポリカーボネート(A)に比べて分子量が変換された芳香族ポリカーボネートを得ることができる。また本発明より反応性良好で、色調、耐熱劣化性、耐加水分解性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂を与えることができる。
Claims (7)
- 繰り返し単位が下記式(1)
- 上記第一の工程における芳香族ポリカーボネート(A)が、1)粘度平均分子量が10,000〜100,000であり、Mn;ポリスチレン換算数平均分子量、とMw;ポリスチレン換算重量平均分子量の比であるMw/Mnが2.0〜4.0、2)リン化合物含有量がリン元素として30ppm以下、3)水分含有量0.01wt%以下、4)該ポリカーボネート末端基が、実質的にアリールオキシ基及びフェノール性水酸基よりなり、かつフェノール性水酸基含有量がカーボネート構造単位1モルあたり3.0×10-2化学当量以下であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 第一の工程に用いる芳香族ポリカーボネート(A)について、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、およびアルカリ(土類)金属以外の金属化合物の含有量が元素としてそれぞれ2ppm以下、ハロゲン化合物の含有量がハロゲン元素の合計量として30ppm以下、リンおよびハロゲン以外の非金属元素含有化合物の元素含有量がそれぞれ3ppm以下であることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 第一の工程で得られる芳香族環状カーボネート含有混合物が1)カーボネート構造単位1モルあたりフェノール性水酸基が2.5×10-2当量未満、2)加水分解性ハロゲン含有量の合計含有量が2ppm以下、3)アルカリ(土類)金属化合物含有量がアルカリ(土類)元素としてそれぞれ2ppm以下、4)リン化合物含有量がリン元素として3ppm以下、5)アルカリ金属以外の金属化合物の含有量が元素としてそれぞれ1ppm以下、リン、ハロゲン以外の非金属元素含有化合物の含有量が元素としてそれぞれ2ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 第二の工程において、芳香族環状カーボネート含有混合物を溶融加熱重合して芳香族ポリカーボネートを得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 第二の工程において、芳香族環状カーボネート含有混合物を、触媒の存在下で溶融加熱重合して芳香族ポリカーボネートを得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
- 溶融加熱重合反応の触媒が、アルカリ(土類)金属化合物及びまたは塩基性窒素化合物あるいは塩基性リン化合物を含有する触媒である特徴とする請求項6に記載の芳香族ポリカーボネートの製造方法。
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