JP4326612B2 - 粒子状吸水性樹脂の製造方法 - Google Patents

粒子状吸水性樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、親水性単量体を含む水溶液を静置重合して吸水性樹脂を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等の分野では、体液を吸収させることを目的として吸水性樹脂が幅広く利用されている。
上記の吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体などが知られている。
【0003】
これら吸水性樹脂を製造する方法として、アクリル酸またはその塩等を主成分とする親水性単量体を含む水溶液を攪拌しながら水溶液重合を行う方法が一般的に採用されている。
攪拌重合は、重合の進行とともに生成する含水ゲル状重合体を小塊に切断しながら重合できるため、比較的コンパクトな装置で重合熱を除去して重合ピーク温度をある程度コントロールした重合ができるという点で優れているものの、攪拌による剪断力によって分子鎖が切断されるため、分子量が上がりにくい、架橋構造のネットワークが乱れやすい等の問題がある。これに対し、特開昭62−156102号公報、特開平1−126310号公報、特開平3−174414号公報、特開平4−175319号公報、特開平4−236203号公報等で提案されている、単量体水溶液を無攪拌で静置重合する方法によると、上記の問題なく、吸水性樹脂を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の静置水溶液重合によると重合温度のコントロールができないために重合系の最高到達温度が110℃を越えてしまい、そのために吸水性樹脂にとって望ましくない水可溶分が増加して物性の低いものしか得られなかった。あるいは、最高到達温度をコントロールするためには、単量体水溶液濃度を低くしたり、単量体水溶液の厚みを薄くしたりしなければならず、生産性の低い製法を採用する必要があった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、上記問題点を解決し、静置水溶液重合において、重合温度をコントロールでき、高い生産性で優れた品質の吸水性樹脂を得ることができるような製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、静置水溶液重合において重合温度をコントロールできない原因について、攪拌重合ではそのような問題がなかったことを考えあわせて、鋭意検討を行った。その結果、攪拌重合では攪拌によって吸水性樹脂の表面積が大きくなるため、蒸発潜熱によって多くの重合熱が奪われ自然に重合温度がコントロールされていたことが判明した。そこで、静置重合においても同様に、重合系が接触する面からの伝導伝熱による冷却と、重合系から溶媒が蒸発することによる蒸発潜熱による冷却とを併用して重合熱の除去を十分に行うようにすれば良いと考え、本発明に到達した。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、次の構成をとる。
(1) 親水性不飽和単量体を含む水溶液を静置重合し、得られた含水ゲル重合体を粉砕して粒子状含水ゲル状重合体とし、この粒子状含水ゲル状重合体を乾燥して固形分70〜100重量%の乾燥物を得、この乾燥物を粉砕・分級し粒子状吸水性樹脂を製造する方法において、重合装置が、単量体水溶液および/または含水ゲル状重合体からなる重合系が接する面の冷却を行えるとともに、溶媒の蒸発ができる上部空間を有する重合装置であり、親水性不飽和単量体を含む水溶液の厚みが10〜50mmであって重合系の上部空間への不活性ガスの導入により、重合系の溶媒を蒸発させて、この蒸発潜熱による冷却と重合系が接触する面からの伝導伝熱による冷却との併用で重合熱を除去することにより、親水性不飽和単量体を含む水溶液から重合系の最高到達温度を経た含水ゲル状重合体への固形分上昇量を0.2〜10重量%の範囲にコントロールすることを特徴とする粒子状吸水性樹脂の製造方法。
【0008】
(2) 親水性不飽和単量体を含む水溶液を静置重合し、得られた含水ゲル重合体を粉砕して粒子状含水ゲル状重合体とし、この粒子状含水ゲル状重合体を乾燥して固形分70〜100重量%の乾燥物を得、この乾燥物を粉砕・分級し粒子状吸水性樹脂を製造する方法において、重合装置が、単量体水溶液および/または含水ゲル状重合体からなる重合系が接する面の冷却を行えるとともに、溶媒の蒸発ができる上部空間を有する重合装置であり、親水性不飽和単量体を含む水溶液の厚みが10〜50mmであって重合系の上部空間への不活性ガスの導入により、重合系の溶媒を蒸発させて、この蒸発潜熱による冷却と重合系が接触する面からの伝導伝熱による冷却との併用で重合熱を除去することにより、重合系の最高到達温度を60〜95℃の範囲にコントロールすることを特徴とする粒子状吸水性樹脂の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる親水性単量体としては、重合により吸水性樹脂となりうるものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの四級塩などのカチオン性不飽和単量体などを挙げることができる。これらは1種または2種以上を使用することができる。
【0010】
これらの中でアクリル酸またはその塩を主成分として用いることが好ましく、アクリル酸またはその塩以外の他の単量体の使用量は通常全単量体中0〜50モル%未満とすることが好ましく、より好ましくは0〜30モル%である。
親水性単量体水溶液の濃度は一般に広い範囲にわたって可変であるが、10〜60重量%が好ましい。より好ましくは20〜50重量%であり、さらに好ましくは20〜45重量%である。10重量%未満の場合には、生産性が悪く、重合率も上がりにくく、未反応単量体が多くなる。60重量%を越えると、静置重合で重合温度をコントロールすることが困難であり、吸収倍率および/または水可溶分の劣った吸水性樹脂になる。
【0011】
重合に際しては、澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を添加してもよい。
本発明において吸水性樹脂は架橋構造を有することが好ましく、架橋剤を使用しない自己架橋型のものや、2個以上の重合性不飽和基あるいは2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合または反応させた型のものが例示できる。好ましくは親水性不飽和単量体に内部架橋剤を共重合または反応させた架橋構造を有する吸水性樹脂である。
【0012】
これらの内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることが出来る。またこれらの内部架橋剤は2種以上使用してもよい。
【0013】
内部架橋剤の使用量としては前記単量体成分に対して0.005〜3モル%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.5モル%である。内部架橋剤が少なすぎると、吸収速度が低下する傾向があり、逆に内部架橋剤が多すぎると、吸収倍率が低下する傾向がある。
また重合を行うにあたり、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、紫外線や電子線などの活性エネルギー線等を用いることができる。また、酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としても良い。これらの重合開始剤の使用量は通常前記親水性単量体に対し0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.5モル%である。これらの重合開始剤や活性エネルギー線は併用してもよい。
【0014】
特に、アゾ化合物、無機過酸化物、還元剤および過酸化水素の4種類を併用することで吸収性能に優れる吸水性樹脂が得られる場合がある。この場合の無機過酸化物は過酸化水素を含まない。アゾ化合物は熱分解型の重合開始剤であるため、重合系の温度が一定温度以上に上昇した後に働く。無機過酸化物と過酸化水素は酸化性の重合開始剤であるため、還元剤とともにレドックス系の開始剤として、または単独で熱分解型の開始剤として働く。レドックス系開始剤は重合の初期の低温領域で主に働く。無機過酸化物を用いることにより残存単量体量を低減することができる。
【0015】
アゾ化合物としては、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミド)ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミド)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド、アゾビスイソブチロニトリル等が例示され、無機過酸化物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が例示され、還元剤としては、アルカリ金属の亜硫酸塩、アルカリ金属の重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、アスコルビン酸、エリトルビン酸等が例示される。2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、過硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、過酸化水素の組み合わせが好ましい。
【0016】
これらの重合開始剤の使用量としては、前記単量体成分に対し、アゾ化合物0.001〜0.1モル%、無機過酸化物0.001〜0.1モル%、還元剤0.0001〜0.01モル%、過酸化水素0.001〜0.01モル%の範囲が好ましい。残存単量体量を低減するために、無機過酸化物と過酸化水素の合計量が還元剤よりも多いことがより好ましい。
【0017】
上記4種の重合開始剤の投入順序としては、過酸化水素を最後に添加することが好ましい。過酸化水素を他の重合開始剤よりも先に添加すると重合が不安定になるばかりか安定した物性が得られず、結果として低い性能の吸水性樹脂になる。
重合開始温度は適宜選択できるが、通常0〜50℃であり、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。
【0018】
重合系の最高到達温度は60〜95℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは70〜90℃、更に好ましくは75〜90℃である。該温度が60℃未満では得られる吸水性樹脂の吸収倍率が小さくなったり、未反応の単量体量が多くなる。一方、該温度が95℃を越えると得られる吸水性樹脂の水可溶分が多くなり好ましくない。
【0019】
重合系内の温度差(厚さ方向の温度差、特に最高到達温度付近の領域における温度差)としては、30℃以内とすることが好ましく、25℃以内とすることがより好ましい。重合系内の温度差が大きすぎる場合には、場所によって得られる吸水性樹脂の品質が異なり物性が安定しないばかりか、全体の品質が悪くなる。
重合にともない発生する重合熱は、重合系が接触する面からの伝導伝熱による冷却と、重合系から主として水分等の溶媒が蒸発することによる蒸発潜熱による冷却とによって除去される。本発明では、蒸発潜熱による冷却と伝導伝熱による冷却を併用することが重要であり、併用することによって重合系の場所による温度の偏りを最小限にとどめながら重合温度をコントロールすることができ、結果として吸収倍率が高く、水可溶分の少ない吸水性樹脂を安定して得ることができる。
【0020】
蒸発潜熱による冷却とは、重合系(単量体水溶液および/または含水ゲル状重合体)から主として水が蒸発することにより重合系から熱を奪うことをさす。水等の蒸発量は、単量体水溶液の0.5重量%〜10重量%が好ましく、1重量%〜5重量%がより好ましい。0.5重量%未満では重合系の温度コントロールが十分にできず、最高到達温度が高くなり、水可溶分が多くなる。一方、10重量%を越えると得られる吸水性樹脂の吸収倍率が小さくなる傾向がある。
【0021】
ここで、水や単量体等の、単量体水溶液および/または含水ゲル状重合体からの蒸発量は、次のようにして求められる。仕込み単量体水溶液量(Xkg)に対する、重合開始から該重合系が最高到達温度を経て含水ゲル状重合体として取り出されるまでに重合系から出ていった水蒸気および単量体の量(Ykg)の割合、即ち、100Y/X(重量%)である。連続重合の場合は、単位時間当たりのそれぞれの量を求めればよい。
【0022】
一方、上記蒸発量に比例する量として、固形分上昇量がある。本発明では固形分上昇量を次のようにして求める。▲1▼重合系が最高到達温度に達した後、得られる含水ゲル状重合体の固形分(A重量%)を求める。固形分は、含水ゲル状重合体を粒子サイズ2mm以下に粉砕し、その2〜3g(W0g)を直径5cmのアルミカップ(W1g)に入れ、180℃の無風乾燥機中で5時間保持した後、その重量(W2g)を測ることにより求めることができる。即ち、A=100(W2−W1)/W0である。▲2▼親水性単量体水溶液の親水性単量体濃度(B重量%)と▲1▼で求めたA重量%との差を求める。即ち、A−B(重量%)が固形分上昇量である。蒸発潜熱による冷却を有効に利用した本発明の固形分上昇量は、0.2〜10重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜5重量%の範囲であり、更に好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。固形分上昇量が0.2重量%未満では重合系の温度コントロールが十分にできず、最高到達温度が高くなり、水可溶分が多くなる。10重量%を越える場合には得られる吸水性樹脂の吸収倍率が小さくなる傾向がある。
【0023】
本発明の静置重合は、重合系を気密にできる重合装置で行うことが好ましい。それにより空気を排出した状態で、所定のガス雰囲気中、加圧下あるいは減圧下での重合が可能である。その際、蒸発潜熱を引き出す操作として、重合系の上部に30cm/分以上の不活性ガスを導入することが好ましい。30cm/分〜6000cm/分の範囲が好ましく、50cm/分〜3000cm/分の範囲がより好ましい。30cm/分以下の導入量では十分な冷却効果が得られず、得られる吸水性樹脂の水可溶分が多くなる。なお、従来法においても窒素気流下での重合は行われているが、その目的は単量体中の溶存酸素量の上昇を防止するためであり、その導入量は高々20cm/分程度であった。これに対し、本発明のように積極的に蒸発潜熱による重合系の温度コントロールを行うには、それをはるかに越える流量が必要となるものである。重合系の上部に流す不活性ガスの湿度は80%以下が好ましく、より好ましくは湿度50%以下である。不活性ガスとしては、窒素ガスのほか、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、過熱蒸気等を挙げることができる。重合熱は一般に重合系の温度が40℃以上となってから著しく発生するので、蒸発潜熱による重合熱の除去を目的とした不活性ガスは重合系の温度が40℃以上となった時点から流せばよい。ただし、それ以下の温度において重合系の溶存酸素の低下等を目的として不活性ガスを導入することを妨げるものではない。
【0024】
蒸発潜熱を引き出す他の操作として、重合系に接する雰囲気ガス中の水蒸気を結露させることが好ましい。雰囲気ガスが接触する面を冷却することで可能である。雰囲気ガスが接触する重合反応機の面を冷却してもよいし、雰囲気ガスをポンプで吸引し、冷却塔を通して凝縮水を取り除いたガスを再び重合機に戻してフレッシュガスと一緒にしてリサイクルしてもよい。また、凝縮水は、水だけでなく親水性単量体をも含む親水性単量体水溶液であるので、該凝縮水の少なくとも一部(例えば5重量%以上)を原料の親水性単量体を含む水溶液にリサイクルして用いてもよい。重合系を減圧(760mmHg以下)にすることによっても蒸発潜熱を引き出すことができる。
【0025】
伝導伝熱による冷却を効率的に行うには、重合系が接触する面の温度を0〜30℃とすることが好ましい。該温度が0℃よりも低い場合にはその温度を達成するための特別の手段が必要となるため実用的でない。該温度が30℃よりも高い場合には伝導伝熱による重合熱の除去が十分に行えない。
伝導伝熱による冷却と蒸発潜熱による冷却の割合としては、特に限定されないが、重合熱のうちの20%〜60%を蒸発潜熱により除去することが好ましい。
【0026】
重合系の厚み(親水性単量体水溶液の液高)は10〜50mmの範囲であり、10〜40mmの範囲がより好ましく、15〜35mmの範囲がさらに好ましい。重合系の厚みが10mm未満の場合には、生産性が低い。また、このような薄さでは蒸発潜熱によらずとも伝導伝熱による冷却のみで所望の範囲に重合系の温度をコントロールすることが可能である。一方、重合系の厚みが50mmを越えると重合系の温度のコントロールが困難となり、最高到達温度が95℃を越えるようになり、得られる吸水性樹脂の水可溶分が多くなる。
【0027】
本発明では静置重合により重合を行う。静置重合とは、重合が開始してから、重合系が重合熱により最高到達温度に達するまでの間、実質的に攪拌することなく重合することをいう。
静置重合に使用する重合装置としては、重合系が接触する面の加熱および/または冷却を行え、重合系から溶媒が蒸発できる空間を有するものであれば特に限定されるものではない。このような重合装置としては、例えば、ベルトコンベアーの下部片面から加熱および/または冷却が行えるベルトコンベアー型重合装置;プレート面からの片面から加熱および/または冷却が行える熱交換プレート式重合装置;周囲の壁から加熱および/または冷却が行える遠心薄膜型装置等が挙げられる。
【0028】
重合装置の材質としては、ステンレス、合成樹脂、セラミックスなど特に限定されないが、ステンレスが耐久性および伝熱性に優れる点で好ましい。
本発明では、必要により、重合系が最高到達温度を示した後、伝熱面を50℃以上の温度に昇温し、含水ゲル状重合体を保温および/または加熱する熟成工程を設けてもよい。含水ゲル状重合体を30〜95℃の範囲に10分〜10時間保持する熟成工程、好ましくは40〜90℃の範囲に20分〜5時間保持する熟成工程を設けることができる。該熟成工程を設けることにより未反応単量体量を低減することができる。
【0029】
上記重合により得られた含水ゲル状重合体は乾燥するため粉砕し、平均粒径が1〜10mm程度の粒子状含水ゲル状重合体(粉砕ゲル)とすることができる。
上記ゲル粉砕に用いる装置としては、ブロック状またはシート状の含水ゲル状重合体を所定の大きさに粉砕できる装置であれば特に制限はないが、例えば、ミートチョッパー((株)平賀工作所製など)、ニーダー、破砕機(カッターミル、シュレッドクラッシャーなど)、カッター刃を有するスリッターなどが例示できる。
【0030】
上記粉砕ゲルの乾燥には、通常の乾燥機や加熱炉を用いることができる。例えば、薄型攪拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機等である。その場合、乾燥温度は、好ましくは40〜250℃、より好ましくは90〜200℃、更に好ましくは120〜180℃である。乾燥時間としては、通常1〜180分が好ましく、10〜120分がより好ましい。このようにして得られる乾燥物は、前記含水ゲル状重合体の固形分を求める方法と同様の方法で求めた固形分が、通常70〜100重量%であり、好ましくは80〜98重量%である。
【0031】
上記乾燥により得られた乾燥物は、そのまま吸水性樹脂として用いることもできるが、さらに粉砕、分級して所定のサイズの粒子状吸水性樹脂として用いられる。その場合、粒子サイズは、通常10μm〜5mmであり、好ましくは100μm〜1mmである。平均粒子径は、用いる用途によっても異なるが、通常100μm〜1000μm、好ましくは150μm〜800μmである。
【0032】
上述の粒子状の吸水性樹脂の表面近傍をさらに架橋処理してもよく、これにより荷重下の吸収倍率の大きい吸水性樹脂を得ることができる。表面架橋処理には、吸水性樹脂の有する官能基たとえばカルボキシル基と反応し得る架橋剤を用いればよく、通常、該用途に用いられている公知の架橋剤が例示される。
表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等の多価エポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アジチニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン:登録商標);亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物及び塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。これらの中でも多価アルコール化合物、多価エポキシ化合物、多価アミン化合物やそれらの塩、アルキレンカーボネート化合物が好ましい。これらの表面架橋剤は単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【0033】
表面架橋剤の量としては、吸水性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部用いるのが好ましく、0.5〜5重量部用いるのがより好ましい。
表面架橋剤と吸水性樹脂とを反応させるための加熱処理には通常の乾燥機や加熱炉を用いることができる。例えば、薄型攪拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機等である。その場合、加熱処理温度は好ましくは40〜250℃、より好ましくは90〜230℃、さらに好ましくは120〜220℃である。加熱処理時間としては、通常1〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
【0034】
図1に、本発明にしたがって吸水性樹脂を製造する場合の製造工程の流れの一例を表すフロー図を示すが、本発明はこれに限定されない。原料(親水性単量体を含む水溶液)は、反応器内で静置重合され含水ゲル状重合体となる。このとき蒸発潜熱を引き出すために不活性ガスを導入し、排出されたガスから、蒸発した溶媒(水など)と親水性単量体とを含む凝縮水を取り除き、該凝縮水を原料にリサイクルして用い、残りのガスを不活性ガスとしてリサイクルとして用いることが好ましい。含水ゲル状重合体は、ゲル粉砕され粉砕ゲルとなり、続いて乾燥機によって乾燥され、必要によりさらに粉砕され、分級されることで粒子状の吸水性樹脂(製品)となる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例中の吸収倍率および水可溶分は下記の方法により測定した。また、以下で特にことわりのないときは、%は重量%を、部は重量部を、表す。
[吸収倍率]
吸水性樹脂の約0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、人工尿(硫酸ナトリウム0.200%,塩化カリウム0.200%,塩化マグネシウム6水和物0.050%,塩化カルシウム2水和物0.025%,リン酸2水素アンモニウム0.085%,リン酸水素2アンモニウム0.015%,脱イオン水99.425%)中に浸けた。60分後に袋を引き上げ、遠心分離器を用いて250Gにて3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、そのときの袋の重量W0(g)を測定した。W1およびW0から、次式にしたがって、吸収倍率(g/g)を算出した。
【0036】
吸収倍率(g/g)=(W1(g)−W0(g))/吸水性樹脂の重量(g)
[水可溶分量]
吸水性樹脂0.5gを1000gの脱イオン交換水中に分散させ、3時間攪拌した後、濾紙で濾過した。次いで、得られた濾液50gを100mlビーカーにとり、該濾液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液1ml、N/200メチルグリコールキトサン水溶液10ml、および0.1%トルイジンブルー水溶液4滴を添加した。その後、上記ビーカー中の水溶性高分子成分量(水可溶分量)を、N/400ポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いてコロイド滴定した。溶液の色が青色から赤紫色に変化した時点を滴定の終点として滴定量A(ml)を求めた。また、濾液50gに代えて脱イオン水50gを用いて上記と同様の操作を行い、ブランクとして滴定量B(ml)を求めた。そして、これら滴定量A,Bと吸水性樹脂の構成単量体の平均分子量Cとから、次式にしたがって水可溶分量を算出した。
【0037】
水可溶分量(重量%)=(B−A)×0.01×C
実施例1
アクリル酸173gおよび37%アクリル酸ナトリウム水溶液1424gの単量体、架橋剤のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)1.33g、および水388gを十分混合し、水性液を作製した。得られた水性液を長さ320mm×横幅220mm×高さ50mmのサイズで内表面をテフロンコーティングしたステンレス製バット内に注入した。このとき水性液の厚みは25mmであった。該ステンレス製バットを、窒素導入口、排気口、および重合開始剤投入口を設けたポリエチレンフィルムで上部をシールした後、30℃のウォーターバスに浸け、水性液の温度を30℃に調整しながら、該水性液に窒素ガスを導入して、液中の溶存酸素を除いた。その後は、6L/分(108cm/分)で窒素ガスをバットの長さ方向に導入し、反対側から排気をつづけた。重合開始剤として、脱気した5gの水にそれぞれ溶かしたV−50(和光純薬工業製アゾ系重合開始剤)0.02g/単量体モル、L−アスコルビン酸0.0018g/単量体モル、および過酸化水素0.0014g/単量体モルを注入し、マグネティックスターラーで十分混合した(単量体濃度35.0%)。重合開始剤投入後、1分で重合が開始したので、ステンレス製バットを、10℃のウォーターバスに、バットの底から10mmの高さまで浸けるとともに、ポリエチレンフィルムの上部を断熱材で覆った。13分後に80℃の重合ピーク温度を示した。この12分間の重合期間中に排気口から出てきた水蒸気をトラップしたところ、55gであった。重合ピーク後、ステンレス製バットを80℃のウォーターバスに、バットの底から10mmの高さまで浸け60分間保持した。
【0038】
得られた含水ゲル状重合体を9.5mmの孔径を有するダイスをつけたミートチョッパー(株式会社平賀工作所製No.32型チョッパー)で粉砕し、160℃で65分間乾燥した。一方、ミートチョッパーでゲル粉砕して得られた粉砕ゲルの固形分を、本明細書記載の含水ゲル状重合体の固形分測定方法に従って求めたところ36%であり、固形分上昇量は1%であった。乾燥物を粉砕、分級し、500μmから106μmの吸水性樹脂(1)を得た。
【0039】
吸水性樹脂(1)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率68g/g、水可溶分4%であった。
実施例2
アクリル酸43.7kgおよび37%アクリル酸ナトリウム水溶液286kgの単量体、架橋剤のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)337g、および水86.3kgを十分混合し、水性液を作製した。得られた水性液を71.2kg/hで、幅30cm、14cm/分で移動するスチール製のベルト重合機に供給した。高さ50mmの堰を有するベルト重合機の内で、25mmの高さまで水性液が満たされた。上記水性液はベルト重合機の供給口で、該水性液の温度が22℃になるように供給ライン上で加温した。また、供給ライン上で連続的に窒素ガスを吹き込み、溶存酸素を0.5ppm以下にした。溶存酸素レベルを下げた水性液に、供給ライン上で連続的にV−50を0.02g/単量体モル、L−アスコルビン酸0.0018g/単量体モル、および過酸化水素0.0014g/単量体モルとなるようにこれらの重合開始剤の水性液を注入し、十分混合した(単量体濃度35.7%)。ベルト重合機の前半は、12℃の冷却水でベルト下面から冷却した。ベルト重合機に供給された水性液は12分後に85℃の重合ピーク温度を示した。水性液の供給口と同じ位置から3m3/h(670cm/分)で窒素ガスを供給した。ベルト重合機の堰の上面はポリエチレンフィルムで覆ったが、フィルム内面には多くの結露が発生した。ベルト重合機の後半は90℃の温水でベルト下面から12分間加温した。
【0040】
得られた含水ゲル状重合体の固形分は36.2%で、固形分上昇量は0.5%あった。該含水ゲル状重合体を、実施例1と同様にしてゲル粉砕し、160℃で65分間乾燥した。乾燥物を粉砕分級し、500μmから106μmの吸水性樹脂(2)を得た。
吸水性樹脂(2)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率70g/g、水可溶分4%であった。
実施例3
実施例1において、重合中の窒素ガスの供給量を1L/分(18cm/分)とした以外は実施例1と同様の操作を繰り返し吸水性樹脂(3)を得た。重合開始剤投入後12分で95℃の重合ピーク温度を示した。固形分上昇量は0.2%であった。
【0041】
吸水性樹脂(3)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率68g/g、水可溶分8%であった。
実施例4
実施例1において、作製した水性液のうち800gのみをステンレス製バット内に注入して水性液の厚みを10mmとした以外は実施例1と同様の操作を繰り返し吸水性樹脂(4)を得た。重合開始剤投入後15分で60℃の重合ピーク温度を示した。固形分上昇量は0.2%であった。
【0042】
吸水性樹脂(4)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率55g/g、水可溶分3%であった。
実施例5
アクリル酸170gおよび37%アクリル酸ナトリウム水溶液1808gの単量体、架橋剤のポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)1.36g、および水407gを十分混合し、水性液を作製した。得られた水性液を長さ320mm×横幅220mm×高さ50mmのサイズで内表面をテフロンコーティングしたステンレス製バット内に注入した。このとき水性液の厚みは30mmであった。該ステンレス製バットを、窒素導入口、排気口、および重合開始剤投入口を設けたポリエチレンフィルムで上部をシールした後、30℃のウォーターバスに浸け、水性液の温度を30℃に調整しながら、該水性液に窒素ガスを導入して、液中の溶存酸素を除いた。その後は、10L/分(180cm/分)で窒素ガスをバットの長さ方向に導入し、反対側から排気をつづけた。重合開始剤として、脱気した5gの水にそれぞれ溶かしたV−50を0.02g/単量体モル、L−アスコルビン酸0.0018g/単量体モル、および過酸化水素0.0014g/単量体モルを注入し、マグネティックスターラーで十分混合した(単量体濃度35%)。重合開始剤投入後、1分で重合が開始したので、ステンレス製バットを、10℃のウォーターバスに、バットの底から10mmの高さまで浸けるとともに、ポリエチレンフィルムの上部を断熱材で覆った。13分後に84℃の重合ピーク温度を示した。この12分間の重合期間中に排気口から出てきた水蒸気をトラップしたところ、102gであった。重合ピーク後、ステンレス製バットを80℃のウォーターバスに、バットの底から10mmの高さまで浸け60分間保持した。
【0043】
得られた含水ゲル状重合体を9.5mmの孔径を有するダイスをつけたミートチョッパー(株式会社平賀工作所製No.32型チョッパー)で粉砕し、160℃で65分間乾燥した。乾燥物を粉砕分級し、500μmから106μmの吸水性樹脂(5)を得た。粉砕ゲルの固形分は36.5%であり、固形分上昇量は1.5%であった。
【0044】
吸水性樹脂(5)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率70g/g、水可溶分5%であった。
実施例6
アクリル酸204g、37%アクリル酸ナトリウム水溶液1339g、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)1.58g、および脱イオン水442gを十分混合し、水性液を作製した。得られた水性液を、温度計、長さ方向の入口側にガス導入管と出口側に排気口を備えた、断熱材で覆った蓋と、底面320mm×220mm、深さ60mmのバットからなる反応容器に供給し、該反応容器を20℃の水浴に浸した。この水性液に窒素ガスを導入し、溶存酸素を0.3ppm程度にした。その後8L/分(103cm/分)で窒素ガスを反応容器に導入し続けた。5%V−50(和光純薬工業製アゾ系重合開始剤)水溶液3.24g、5%過硫酸ナトリウム水溶液3.24g、および1%L−アスコルビン酸水溶液2.92gを添加混合した。続いて0.35%過酸化水素水3.34gを添加混合した。単量体濃度は35%、水性液の厚みは25mmであった。過酸化水素水を添加して1分後に重合が開始した。重合開始後、反応容器を10℃の水浴に底から10mmの高さまで浸けた。12分後に重合系(重合体+未反応単量体)の厚み方向の中央部が80℃の最高温度(重合ピーク温度)に到達した。その際、反応容器の底部側の重合系の温度は62℃であり、重合系の上部側の温度は66℃であった。重合ピーク後に水浴の温度を60℃にして、60分間保持し含水ゲル状重合体を得た。該含水ゲル状重合体をミートチョッパーで粉砕し、粉砕ゲルを160℃で65分間熱風乾燥した。粉砕ゲルの固形分は35.8%であり、固形分上昇量は0.8%であった。乾燥物を粉砕、分級し、500μmから106μmの吸水性樹脂(6)を得た。
【0045】
吸水性樹脂(6)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率65g/g、水可溶分3%であった。
吸水性樹脂(6)100部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部、水4部およびイソプロピルアルコール1部とを均一に混合し、該混合物を195℃で40分間加熱処理して吸収剤を得た。得られた吸収剤について、上記記載の方法にしたがって吸収倍率を測定し、また、特開平9−235378号公報に記載の方法にしたがって高加圧下吸収倍率および吸収速度を測定した。吸収倍率50g/g、高加圧下吸収倍率28g/g、吸収速度20秒であった。
実施例7
アクリル酸100部、37%アクリル酸ナトリウム水溶液656.4部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)0.77部、および脱イオン水216.7部を十分混合し、単量体水性液を作製した。得られた単量体水性液を71.2kg/hで幅30cm、14cm/分で移動するスチール製のベルト重合機に供給した。単量体水性液はタンクから定量ポンプにより配管を経てベルト重合機に供給したが、配管の途中で窒素ガスを連続的に吹き込み、単量体水溶液の溶存酸素を0.5ppm以下にした。該単量体水性液に、更に、10%V−50(和光純薬工業製アゾ系重合開始剤)水溶液をV−50が0.02g/単量体モルとなる量、10%過硫酸ナトリウム水溶液を過硫酸ナトリウムが0.02g/単量体モルとなる量、およびL−アスコルビン酸水溶液をL−アスコルビン酸が0.0018g/単量体モルとなる量それぞれ供給し、ラインミキシングした。最後に、0.35%過酸化水素水を過酸化水素が0.00144g/単量体モルとなる量供給し、単量体水性液とラインミキシングしベルト重合機に供給した。上記単量体水性液および重合開始剤からなる水性液は、20℃となるように供給ライン上で温度コントロールした。高さ50mmの堰を有するベルト重合機の中で、25mmの高さまで上記水性液が満たされた。ベルト重合機の上部面はステンレス製のフードで覆い、重合は気密下に行った。ベルト重合機の前半12分間は12℃の冷却水でベルト下面から冷却した。ベルト重合機に供給された水性液は8分後に86℃の重合ピーク温度を示した。水性液の供給側から重合系上部に700cm/分となるように窒素ガスを導入した。水性液供給口から1.4m下流側から重合系上部の雰囲気ガスを取り出し、12℃の冷却管と接触させてガス中の水分を凝縮させた。凝縮水を取り除いた雰囲気ガスは、水性液供給口付近のフレッシュ窒素ガスと一緒にして重合機へリサイクルした。一方、凝縮水中には3%程度のアクリル酸が含まれており、原料の水性液にリサイクルした。その際、単量体水性液の濃度は原料の追加投入により35.1%に保った。ベルト重合機の後半は60℃の温水でベルト下面から12分間加温した。
【0046】
得られた含水ゲル状重合体の固形分は35.9%であり、固形分上昇量は0.8%であった。含水ゲル状重合体を実施例1と同様にしてゲル粉砕し、160℃で65分間熱風乾燥した。乾燥物を粉砕、分級し、500μmから106μmの吸水性樹脂(7)を得た。
吸水性樹脂(7)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率66g/g、水可溶分3%であった。
比較例1
実施例1において、溶存酸素を低下させ、重合開始剤を投入した水性液をポリエチレン製袋に入れ、空間部分をなくしたものを実施例1と同様のバットに載せた。以後の操作は実施例1と同様にし、重合開始剤投入後13分で104℃の重合ピーク温度を示した。
【0047】
得られた含水ゲル状重合体を9.5mmの孔径を有するダイスをつけたミートチョッパー(株式会社平賀工作所製No.32型チョッパー)で粉砕し、160℃で65分間乾燥した。粉砕ゲルの固形分は35.0%であり、固形分上昇量は0%であった。乾燥物を粉砕分級し、500μmから106μmの比較吸水性樹脂(1)を得た。
【0048】
比較吸水性樹脂(1)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率70g/g、水可溶分12%であった。
比較例2
実施例1において、重合開始から重合ピーク温度を示す期間中、バットを冷却のためのウォーターバスに浸けず空気中に放置した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。重合開始剤投入後10分で110℃以上で沸騰した。
【0049】
得られた含水ゲル状重合体を9.5mmの孔径を有するダイスをつけたミートチョッパー(株式会社平賀工作所製No.32型チョッパー)で粉砕し、160℃で65分間乾燥した。粉砕ゲルの固形分は38.5%であり、固形分上昇量は3.5%であった。乾燥物を粉砕分級し、500μmから106μmの比較吸水性樹脂(2)を得た。
【0050】
比較吸水性樹脂(2)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率71g/g、水可溶分15%であった。
比較例3
実施例1において、水の量を388gから14.3gとする以外は同様の操作を繰り返し、水性液を作成した。得られた水性液のうち564gを実施例1と同様のバットに注入した。この時の厚みは7mmであった(単量体濃度43.0%)。以後実施例1と同様の操作を繰り返し、重合を開始させた。重合開始後、バットをウォーターバスから出し、バット上部のポリエチレンフィルムをはずし、空気中に放置した。重合開始後4分で110℃以上で沸騰した。以後実施例1と同様の操作を繰り返し、比較吸水性樹脂(3)を得た。固形分上昇量は11.2%であった。
【0051】
比較吸水性樹脂(3)の吸収倍率および水可溶分を上記記載の方法にしたがって測定したところ、吸収倍率45g/g、水可溶分10%であった。
実施例1〜7および比較例1〜3で得られた吸水性樹脂(1)〜(7)および比較吸水性樹脂(1)〜(3)について、吸収倍率および水可溶分を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004326612
【発明の効果】
本発明によると、静置水溶液重合によって、重合系の最高到達温度をコントロールしながら吸水性樹脂を製造することができる。したがって、吸収倍率が高く水可溶分が少ない吸水性樹脂を得ることができる。また、蒸発潜熱により重合熱を除去するのでエネルギーコストが小さくすみ経済的である。
上記効果を奏することから、本発明により得られた吸水性樹脂は、衛生材料(子供用および大人用紙おむつ、生理用ナプキン、失禁用パッドなど)などの人体に接する用途;油中の水の分離材;その他の脱水または乾燥剤;植物や土壌などの保水材;ヘドロなどの凝固剤;結露防止剤;電線あるいは光ファイバー用止水材;土木建築用止水材など、吸水、保水、湿潤、膨潤、ゲル化を必要とする各種産業用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にしたがって吸水性樹脂を製造する場合の製造工程の流れの一例を表すフロー図である。

Claims (12)

  1. 親水性不飽和単量体を含む水溶液を静置重合し、得られた含水ゲル重合体を粉砕して粒子状含水ゲル状重合体とし、この粒子状含水ゲル状重合体を乾燥して固形分70〜100重量%の乾燥物を得、この乾燥物を粉砕・分級し粒子状吸水性樹脂を製造する方法において、
    重合装置が、単量体水溶液および/または含水ゲル状重合体からなる重合系が接する面の冷却を行えるとともに、溶媒の蒸発ができる上部空間を有する重合装置であり、親水性不飽和単量体を含む水溶液の厚みが10〜50mmであって
    重合系の上部空間への不活性ガスの導入により、重合系の溶媒を蒸発させて、この蒸発潜熱による冷却と重合系が接触する面からの伝導伝熱による冷却との併用で重合熱を除去することにより、親水性不飽和単量体を含む水溶液から重合系の最高到達温度を経た含水ゲル状重合体への固形分上昇量を0.2〜10重量%の範囲にコントロールする
    ことを特徴とする、粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  2. 親水性不飽和単量体を含む水溶液を静置重合し、得られた含水ゲル重合体を粉砕して粒子状含水ゲル状重合体とし、この粒子状含水ゲル状重合体を乾燥して固形分70〜100重量%の乾燥物を得、この乾燥物を粉砕・分級し粒子状吸水性樹脂を製造する方法において、
    重合装置が、単量体水溶液および/または含水ゲル状重合体からなる重合系が接する面の冷却を行えるとともに、溶媒の蒸発ができる上部空間を有する重合装置であり、親水性不飽和単量体を含む水溶液の厚みが10〜50mmであって
    重合系の上部空間への不活性ガスの導入により、重合系の溶媒を蒸発させて、この蒸発潜熱による冷却と重合系が接触する面からの伝導伝熱による冷却との併用で重合熱を除去することにより、重合系の最高到達温度を60〜95℃の範囲にコントロールする
    ことを特徴とする、粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  3. 重合開始温度が0〜50℃である、請求項1または2に記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  4. 不活性ガスの導入量が18cm/分以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  5. 蒸発潜熱による冷却を、重合系に接する雰囲気ガス中の水蒸気を結露させることにより行う、請求項1から4までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  6. 伝導伝熱による冷却を、単量体水溶液および/または含水ゲル重合体が接する面の温度を0〜30℃にすることによって行う、請求項1から5までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  7. 上部空間に蒸発した親水性不飽和単量体を含む水溶液の少なくとも一部を、親水性不飽和単量体を含む原料の水溶液にリサイクルして用いる、請求項1から6までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  8. 親水性不飽和単量体がアクリル酸および/またはその塩を主成分とし、親水性不飽和単量体の濃度10〜60重量%であり、且つ、内部架橋剤の使用量前記親水性不飽和単量体に対して0.005〜3モル%である、請求項1から7までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  9. 重合系が最高到達温度を示したのちに、含水ゲル状重合体を30〜95℃の範囲で10分〜10時間保持する熟成工程を設けてなる、請求項1から8までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  10. 重合を行うに当たり、酸化性ラジカル重合開始剤および還元剤を併用する、請求項1から9までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  11. 重合を行うに当たり、アゾ化合物、無機過酸化物、還元剤および過酸化水素の4種類を併用する、請求項1から10までのいずれかに記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
  12. 前記4種類の各使用量が、親水性不飽和単量体に対して、アゾ化合物0.001〜0.1モル%、無機過酸化物0.001〜0.1モル%、還元剤0.0001〜0.01モル%、過酸化水素0.001〜0.01モル%の範囲である、請求項11に記載の粒子状吸水性樹脂の製造方法。
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