JP4326247B2 - インフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック用プリプレグ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック用プリプレグ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にFRPとは、連続繊維材料を含んでなる繊維強化型プラスチック(繊維強化プラスチック)であり、硬さはセラミック並で、金属並の強度があり、重さは鉄の約1/5程度で、弾性率は鉄の約3〜4倍程度と優れる。このようなFRP、特にCFRP(炭素繊維強化プラスチック、以下FRPに含めることもある)においては、その断面積中にどれだけ繊維と樹脂を密に詰めることができるかが、従来からの重要な研究課題であった。
FRPでは繊維の割合が強度を決定するので、繊維割合を増加すれば強度には優れるが、板状等の成形体形状にするには、相互の繊維を接着させる意味からも樹脂が必要である。そして、FRPに用いる繊維の織り方、撚り方によっても、いろいろな種類があり、例えばクロス(布)では幅10m位のものを用いることも可能であり、大型構造物用の板やパイプ等に利用できる。
【0003】
このようなFRPの製造において、繊維材料に樹脂を含浸させる必要があるが、熱可塑性樹脂よりも熱硬化性樹脂のほうが含浸性に優れる。このため、熱硬化性樹脂であれば通常粘度が低いために目の細かいFRPが製造可能であり、高い強度を保持できる。
【0004】
しかし、従来、形状記憶性を有する熱硬化性樹脂を用いてFRPを製造しようとすると、例えば二液硬化型の樹脂の場合、混合とともに速やかに硬化してしまう。すなわち、可使時間が短かった。
したがって、予め熱硬化樹脂を含浸させた繊維材料を保管し、それを間を置いて後にさらに加工するといったような形態で使用することはできなかった。すなわち、熱硬化樹脂を含浸させるや否や、目的とする形状に成形しなければならなかった。実際には、予め熱硬化樹脂を含浸させた繊維材料を成形する任意の場所で所望の任意の形状に成形することができれば、このようなFRPの用途が大きく広がる。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−320366号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、十分な可使時間を備え、FRP成形体の製造が簡便なFRP用プリプレグ及びその製造方法について鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、特定の組成物を用いた形状記憶ポリマーを繊維材料に含浸させて得られるFRP用プリプレグによって、かかる問題点が解決されることを見い出した。
本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートから成る群から選ばれた液状イソシアネートと、ポリオールとを官能基のモル比で、液状イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0を含むマトリックス樹脂組成物と繊維材料とからなり、硬化中のマトリックス樹脂を硬化温度マイナス10℃以下に温度を保持して半硬化させて得られ、上記ポリオールがポリプロピレングリコールであり、該ポリプロピレングリコールの平均分子量が100〜550であることを特徴とするインフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック用プリプレグを提供するものである。
【0008】
形状記憶ポリマーの機能を発現する温度を決定するものは、ガラス転移点(Tg)であり、適用製品の仕様にあわせたTgを有する任意の組成を用いるが、Tgを高くすると更に可使時間が短くなるため、高Tg化(例えば約95℃)と任意の可使時間の確保との両立が技術的な課題となる。
【0009】
そこで、任意のTgを有する組成物を半硬化状態の材料とすることで任意の可使時間を確保可能となった。
本願組成物は、従来では必須であった鎖延長剤を含有させないことで可使時間を長くしながらも、鎖延長剤の不使用により、低下したTgを、低分子量のポリオールを用い且つイソシアネートとポリオールの含有割合を上記の割合にすることで、数十分〜数時間の可使時間を確保しつつ、高いTgを有するポリマー組成物であるが、これをプリプレグ化することで可使時間を任意にすることが可能となった。
【0010】
ここで、本願組成物に用いるイソシアネートは常温で液状である。
ここで、本願組成物に用いる上記ポリオールは、ポリプロピレングリコールであって、平均分子量100〜550である。
【0011】
なお、本明細書中、FRP用プリプレグとは、その半硬化マトリックス樹脂のTg以上かつその半硬化マトリックス樹脂の流動温度未満で、変形可能となり、さらに流動温度以上に加温して、硬化を再開し、硬化を完了させてFRP成形体となるFRPの前駆体である。ここで、流動温度とは、半硬化マトリックスが固体状態から流動可能な状態になる温度であり、例えば粘弾性測定等で半硬化マトリックス樹脂の弾性率を測定した場合に、昇温過程で半硬化マトリックスが流動してサンプルの形状が不定形となり、弾性率が検出不能となる温度である。また、半硬化とは、組成物の硬化が不十分で、架橋度や重合度が低い状態である。一般的に硬化性樹脂が硬化した場合には昇温により流動することはないが、本発明の組成物は架橋密度が一般的な硬化性樹脂と比較して低い特徴を有しており、この組成の特徴をも利用して半硬化の状態で一旦硬化を停止させることで架橋度や重合度が低い状態とする。この半硬化の状態は架橋密度も低く重合度も低いことから常温では固体でありながらも、ある温度以上で溶融し液状化するという、熱可塑的な特徴を有することとなる。
また、本発明は、別の側面でFRP用プリプレグの製造方法であり、該製造方法は、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートから成る群から選ばれた液状イソシアネートと、ポリオールとを官能基のモル比で、液状イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0を含むマトリックス樹脂組成物を繊維材料に含浸させ、硬化中のマトリックス樹脂を硬化温度マイナス10℃以下に温度を保持して半硬化させるようにしてなり、上記ポリオールがポリプロピレングリコールであり、該ポリプロピレングリコールの平均分子量が100〜550である。
【0012】
本発明に係るインフレータブル性を備えたFRP用プリプレグの製造方法では、本願組成物の上記ポリオールは、ポリプロピレングリコールであり、平均分子量100〜550である。
【0013】
さらに、本発明に係るインフレータブル性を備えたFRP用プリプレグの製造方法は、その好適な実施の形態で、マトリックス樹脂を繊維材料に含浸させた後、半硬化させることを特徴としている。この場合、マトリックス樹脂組成物を硬化温度マイナス10℃以下、好ましくは硬化温度マイナス20℃以下、更に好ましくは硬化温度マイナス30℃以下に温度を保持して半硬化させることが好ましい。又、ここで硬化温度とは、例えばDSC測定(示差走査熱量測定)にて測定した際の硬化発熱のピーク温度を意味する。
そして、本発明に係るインフレータブル性を備えたFRP用プリプレグの製造方法は、真空又は減圧下で行うことが好ましい。
【0014】
ここで、前記したインフレータブル機能について説明する。宇宙空間などへ材料を持ち出して構造物を組み立てるには、運搬中における構造物の体積を出来るだけ小さくする必要がある。例えば人工衛星や宇宙構造物では、太陽電池用のパネル等の大型の装置が取り付けられるが、地上からの運搬時には小型化しておくことが要求される。そして、運搬時には折り畳んであったものを、衛星軌道などの宇宙空間では使用状態である所定形状に展開する。このような運搬時にはコンパクトに圧縮可能であって、使用時には所定形状に展開可能な膨張性や展開性を有する材料特性を、いわゆるインフレータブル性(機能)という。
【0015】
このようなインフレータブル性を有することは、地上構造物に用いる材料特性としても当然に重要なものであり、インフレータブル性材料を用いれば、運搬車両等に積載される際にはコンパクトに収納可能(容積が小さくなる)であり、組立や建設を行う現場での使用時には所定形状に展開できる。
【0016】
インフレータブル性を有する構造物には、ジョイント部の折り畳み等による機械的作用によるものと、加熱して元の形状に復する材料特性的作用によるものがある。
従来のインフレータブル性は、機械的な構造によるものが多く、ジョイント部分で折り畳むような態様であった。よって、使用時には何らかの力を加えて、所定形状に展開することが必要であった。また構造上、展開時に故障や事故等のトラブルが起きかねないという問題があった。
【0017】
一方これまでも、材料特性的作用によるインフレータブル性を有する構造物について幾つかの研究がなされてきた。インフレータブル性を有する材料を大型構造物に使用するには、ある程度の強度を有する硬質化した材料であることも必要である。
【0018】
そこで、強度を有する硬質化した高分子材料としては、本発明に係るFRP用プリプレグを用いて製造されるFRPやCFRPが好適である。インフレータブル性を付与するには、形状記憶ポリマーを用いて、内部に繊維材料を含有するようなFRPが考えられる。
【0019】
形状記憶ポリマーとは、通常のポリマーの中にあって、成形形状と変形形状とを熱による温度操作で使い分けることのできる樹脂である。この樹脂を用いた形状記憶ポリマー成形体は、ポリマーのガラス転移点以上溶融温度未満又は分解温度未満で変形を加え、その形状を保持した状態でガラス転移点(Tg)以下まで冷却することにより、変形形状を固定し、また、ガラス転移点以上で溶融温度未満又は分解温度未満の温度に加熱することにより、元の成形形状を回復するもので、温度操作により変形形状と成形形状を使い分けることのできるものである。上記本願組成物は硬化後このような形状記憶ポリマーになりうる。
すなわち、本発明に係るFRP用プリプレグを用いて得られるFRPは、好適なインフレータブル性(機能)を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
上記したように、本発明は、その一側面において、インフレータブル性を備えたFRP用プリプレグであり、該FRP用プリプレグは、本願組成物と繊維材料からなることを特徴としている。
【0021】
本願組成物
次に、本願組成物について説明する。本願組成物は、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートから成る群から選ばれた液状イソシアネートと、平均分子量100〜550のポリプロピレングリコールとを、官能基のモル比で液状イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0にて含むことを特徴とするものである。
【0022】
本願組成物の特性としては、繊維材料を十分に浸透させるために、初期の含浸性が必要であると同時に、一定以上の可使時間の長さが必要である。本願組成物は、強化繊維への含浸性を考慮すると、粘弾性測定による本願組成物の粘度は1000cps以下であることが好ましい。また、繊維材料への本願組成物の十分な含浸時間を確保して密なFRP成形体を得るには、可使時間が30分以上、好ましくは60分以上であるのがよい。ここでの可使時間は、本願組成物の粘度の立ち上がり時間として例えば1000cpsになるまでの時間である。
一方、成形したFRPのインフレータブル機能を発現させるためには、形状記憶性を保持する観点から、本願組成物のTgは通常40〜150℃、好ましくは70〜120℃程度であることが望ましい。
【0023】
本願組成物は、上記の条件を十分に満たすものである。すなわち、高Tg化(例えば約95℃)と可使時間の確保(例えば約50分)とを両立させることができる。
本願組成物に使用可能な原料を次に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0024】
液状イソシアネートの例としては、一般式でOCN−R−NCOと表記することができ、Rにはベンゼン環を1、2個有するものと全く有しないものがあるが、いずれも使用可能であり、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができ、液状である。
【0025】
ポリオールとしては、本願組成物では、平均分子量が100〜550のものを用いる。ポリオールの分子量が550を超えると、得られる形状記憶ポリマーの可使時間が長くなる利点があるものの、本願組成物では、Tgが低下するため、宇宙環境において形状固定及び形状回復といった形状記憶性を発現させるために必要なポリマー組成物のTgを40℃以上に維持することが困難となる。一方、平均分子量が100未満の場合、本願組成物では、FRPの成形に必要な可使時間を確保できなくなる。本願組成物では、ポリオールの平均分子量は、好ましくは150〜250である。なお、平均分子量とは、重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法で測定されるものである。
【0026】
ポリオールは、Tg前後での大きな物性変化(例えば弾性率)を得るため、ポリプロピレングリコールを用いる。
【0028】
イソシアネートとポリオールとの混合比は、官能基のモル比で、イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0(すなわち、NCO/OH=0.9〜1.1)である。このような混合比とすることで、必要な可使時間を確保しつつ、形状固定及び形状回復といった形状記憶性を発現することができる高いTgを有するポリマー組成物を得ることができる。なお、上記混合比は、官能基のモル比で、イソシアネート:ポリオール=0.95〜1.05:0.95〜1.05と表現することもできる。また、好ましい混合比は、官能基のモル比で、イソシアネート:ポリオール=0.98〜1.05:1.0(NCO/OH=0.98〜1.05)である。
【0029】
なお、本願組成物は、従来では必須であった鎖延長剤を含有しないものである。鎖延長剤は、ポリマー組成物の中でTg調整剤の役割を有するものであり、高いTgを維持するのに用いられているが、その一方で、可使時間を短くする傾向がある。本願組成物では、このような鎖延長剤を用いずに、高いTgを確保できる。
【0030】
本願組成物に硬化可能な範囲で添加することのできる添加剤としては、各種フィラー、有機成分、希釈剤等の慣用される添加剤を一種以上添加することができる。
【0031】
インフレータブル性を備えたFRP用プリプレグ及びその製造方法
次に、本発明に係るインフレータブル性を備えたFRP用プリプレグをさらに説明する。本発明に係るインフレータブル性を備えたFRP用プリプレグは、上記の本願組成物と、繊維材料とからなることを特徴とするものである。
【0032】
繊維材料としては、有機材料による繊維に限定されるものではなく、ガラス繊維等の無機繊維や炭素繊維を用いることができる。具体的には、例えば炭素繊維、アラミド繊維などが好適である。織組織も限定されないが、例えばタテ糸とヨコ糸からなる平織りの素材が挙げられ、厚さは例えば0.1〜1.0mmの範囲のものが用いられる。
また、本発明に係るFRP用プリプレグには、マトリックス樹脂である本願組成物と繊維材料以外に、補強用繊維や色素等が含まれていても良く、それらの量比は特に限定されるものではない。
【0033】
本発明に係るインフレータブル性を備えたFRP用プリプレグの本願組成物と繊維材料の組成比は、特に限定されるものではないが、繊維材料の体積含有率が通常5〜75体積%、好ましくは10〜60体積%、さらに好ましくは20〜55体積%の割合で含まれることがよい。ここでFRP中の繊維材料の理論体積は、単位面積当たりの繊維材料重量に積層枚数を考慮した値を、繊維材料の密度で割った値として計算できる。繊維材料が5体積%未満では繊維材料による強度が十分に発揮されないので好ましくなく、繊維材料が75体積%を超えると難成形性で、樹脂の含浸が不十分となって良品を得ることが難しい。また、繊維材料が60体積%を超えると、本願組成物によるインフレータブル性が十分に発揮されにくくなる。上記体積含有率の範囲内においては、繊維材料の組成比を多くした場合、得られる成形体は強度が高くなり、一方、樹脂を多く配合した場合、形状固定性に優れる。
【0034】
次に、本発明に係るFRP用プリプレグの製造方法について以下に説明するが、これに限定されるものではない。
FRP用プリプレグの好ましい製造方法として、真空RTM法を採用することができる。この方法では、型内に繊維材料を設置した後、型締めを行い、真空吸引にて型内を真空にする。本願組成物の各成分は、予め容器などで混合調製しておき、この混合物を型内に注入することで、本願組成物を繊維材料に含浸する。含浸する時間は、ポリマー組成や繊維材料の種類等によって任意に定められるが、本願組成物では、可使時間が30分以上確保されることから、この可使時間の範囲内で十分な繊維内への樹脂の浸透が可能な時間、含浸が行われる。含浸後真空状態を維持したまま組成物を半硬化させ、半硬化後FRP用プリプレグを型から外す。ポリマー組成物の半硬化は、組成物の硬化温度を勘案した任意の硬化条件で硬化させる(例えば、80℃で1時間+120℃で2時間)。
ここで、半硬化とは、架橋が不十分な形で硬化を停止させた状態をいう。本発明のFRP用プリプレグでは、マトリックス樹脂の架橋が不十分であるため、再度温度を上げると溶融し硬化が開始され完全な硬化物となる。
半硬化は、硬化中のマトリックス樹脂を硬化温度マイナス10℃、好ましくは硬化温度マイナス20℃以下、更に好ましくは硬化温度マイナス30℃以下に保持ことによって行われる。すなわち、硬化を行うには不十分な温度環境及び硬化時間により半硬化の状態で硬化の進行を停止させることが重要であり、この際硬化反応による発熱で組成物の温度が上昇しない様に組成物の温度を維持することがポイントとなる。加えてのポイントは前述した通り本発明の組成物にある。硬化温度とは、例えばDSC測定(示差走査熱量測定)にて測定した際の硬化発熱のピーク温度を意味する。
【0035】
本願組成物は、熱硬化樹脂であるが、一般的な熱硬化樹脂と比較すると、架橋密度が低い傾向にあり、従って半硬化の状態では熱硬化樹脂でありながら流動が可能となる。この特徴をプリプレグに応用することで、常温にて固体状態であり、容易なハンドリングで、保管も可能となる。
その後、例えば、FRP用プリプレグを積層した後、加熱により層間の樹脂が流動することで一体物のFRPとして成形できる。すなわち、予め熱硬化樹脂を含浸させた繊維材料を成形する任意の場所で所望の任意の形状に成形することができる。
【0036】
また、本発明のインフレータブル性を備えたFRP用プリプレグには、プリプレグの段階から形状固定−回復特性が存在し、プリプレグ段階の半硬化マトリックス樹脂のTgは、この半硬化マトリックス樹脂の流動温度より低いことから、プリプレグを半硬化マトリックス樹脂のTg以上で、半硬化マトリックス樹脂の流動温度未満に加温し、自由な形状に変形可能な状態にしてから金型等に合わせて積層した後、さらに流動温度以上に加温して硬化を完了させることもできるため、作業をさらに容易とすることができる。なお、以下の他の製造方法によっても同様にして半硬化のFRP用プリプレグを得ることができる。
【0037】
例えば、熱プレス成形法を採用することができる。この方法では、本願組成物の各材料を、樹脂槽中に投入して混合・調製してもよいし、又は、事前に他の容器等で調製してから樹脂槽中に投入してもよい。その樹脂槽中に、上記繊維材料を入れて含浸する。含浸後、FRP用プリプレグの半硬化工程では、例えば平板状に含浸済みの蒸気船に材料を配置し圧力を相当に加えた状態で、硬化温度マイナス10℃、好ましくは硬化温度マイナス20℃以下、更に好ましくは硬化温度マイナス30℃以下に温度を徐々に上昇させることが好ましい。又、半硬化過程において真空中で行うこともボイドのない緻密なプリプレグを作製する、及び水分による品質の低下を防ぐ上で好ましい。水分による品質の低下を防ぐ意味では、半硬化過程を不活性ガス中ですることも好ましい。
繊維材料は、クロス、マット又はテープ等の状態として引き取り、ポリマー組成物で満たされた樹脂槽中に通すことによって行うこともできる。なお、樹脂槽に含浸させる方法の他、本願組成物を上側又は下側から噴き付ける方法なども、適宜採用することができる。
【0038】
また、FRP用プリプレグとして、単一の繊維材料からなるだけでなく、2層以上の1種以上の繊維材料からなるプリプレグ(同一繊維材料、異種繊維材料、織物・一方向材・不織布の内の任意の組み合わせ)として製造することができる。この場合、多層構造の積層体を成形する場合には、含浸後の繊維材料をプレスする手前で2以上積層させて、相互に密着させる。重ね合わせて厚さを調整してから、この複数枚のクロス等の繊維材料を、加圧機構に通して、半硬化させる。
半硬化にあたり、熱プレスする際の温度は通常60〜180℃まで上昇させる。圧力は通常0〜20kgf/cm2程度である。
最後に、切断工程を経て、得られた成形体を検査する。
【0039】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び変更を加え得るものである。以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものでない。
【0040】
【実施例】
実施例1
表1の組成と炭素繊維織物(トレカ CO6343(東レ(株)製)、CFクロス)を用いてFRP用プリプレグを作製し、これを用いてCFRPサンプルを作製した。
【0041】
【表1】
【0042】
液状イソシアネート:カルボジイミド変性4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物。
PPG200:ポリプロピレングリコール(平均分子量200)。
PPG400:ポリプロピレングリコール(平均分子量400)。
【0043】
サンプル1は、本願組成物に対応している。このサンプル1を用い、真空RTM法を 使用してプリプレグを作製した。
・プリプレグ作製条件:
・積層数:2層
・設定板厚:0.5mm
・半硬化条件:真空下、60℃で2時間
【0044】
先ず、CFクロスを切り出し、0.25mm厚の板を成形するための型内にこれを設 置した後、真空吸引にて型内を真空にした。本願組成物の主剤と硬化剤は、60℃で2 時間程度、真空脱気してから、室温まで冷却した。その後、官能基のモル比で液状イソ シアネート:ポリオール=1.05:1.0にて撹拌混合し、約2分程度で白濁から透 明になった。この透明になった樹脂成分を型内に注入し、加圧下真空中で硬化条件60 ℃で2時間で半硬化させた。半硬化後、FRP用プリプレグを型から外し、所定寸法に 切り出した。
【0045】
サンプル2(本願組成物に対応)の組成については熱プレス成形法を使用してFRP 用プリプレグを作製した。
・プリプレグ作製条件:
・積層数:1層
・設定板厚:0.25mm
・半硬化条件:真空下、60℃で2時間
【0046】
FRP用プリプレグは、熱プレス成形法によって作製した。
先ず、CFクロスを切り出し、約1mm厚のスペーサー内に設置した。
組成物の主剤と硬化剤は、60℃で2時間程度、真空脱気してから、室温まで冷却し た。その後、官能基のモル比で、サンプル番号2について、液状イソシアネート(MD I)/ポリオール(PPG400)=1.05/1.0にて撹拌混合し、約2分程度で 白濁から透明になった。
【0047】
この透明になった樹脂成分をCFクロス上に流し込み、テフロン(登録商標)フィル ムを被せた上からゴムロールで含浸し、気泡を外に押し出した。さらに、アルミ板で挟 み、60℃で約2時間、約1kgf/mm2でプレスし半硬化させた。
加圧したままの状態で室温まで冷却し、型から外し、所定寸法に切り出した。
【0048】
上記FRP用プリプレグのサンプル1、2を用いたCFRPの製造は次のようにして 行った。
・成形方法:熱プレス成形法
・積層構成:CFRPサンプル1:2層
CFRP成形体サンプル2及び3:4層
・CFRP板厚:設定板厚1mm
・硬化条件:150℃で1時間、プレス圧:約1kgf/mm2
であった。
試作したCFRPサンプル1、2のTgを動的粘弾性にて測定した。また、形状固定 −回復性について確認した、結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
上記のように、本願組成物を用いた形状記憶ポリマーを繊維材料に含浸させて得られる本発明に係るFRP用プリプレグは、マトリックス樹脂が半硬化の状態で保管できることから、十分な可使時間を備え、したがって、FRP成形体の製造が簡便であり、かつ得られるFRP成形体は、良好なTg及び形状記憶特性(インフレータブル性)を備えることが了解される。
【0051】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明によれば、十分な可使時間を備え、FRP成形体の製造が簡便なFRP用プリプレグ及びその製造方法が提供される。
すなわち、本発明に係るFRP用プリプレグは、形状記憶特性を備えた組成物を繊維材料に含浸させて得られ、マトリックス樹脂が半硬化の状態で保管できることから、十分な可使時間を備える。したがって、FRP成形体の製造が簡便であり、かつ得られるFRP成形体は、良好なTg及び形状記憶特性(インフレータブル性)を備えることが了解される。
Claims (5)
- 2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートから成る群から選ばれた液状イソシアネートと、ポリオールとを官能基のモル比で、液状イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0を含むマトリックス樹脂組成物と繊維材料とからなり、硬化中のマトリックス樹脂を硬化温度マイナス10℃以下に温度を保持して半硬化させて得られ、上記ポリオールがポリプロピレングリコールであり、該ポリプロピレングリコールの平均分子量が100〜550であることを特徴とするインフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック用プリプレグ。
- 2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートから成る群から選ばれた液状イソシアネートと、ポリオールとを官能基のモル比で、液状イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0を含むマトリックス樹脂組成物を繊維材料に含浸させ、硬化中のマトリックス樹脂を硬化温度マイナス10℃以下に温度を保持して半硬化させるようにしてなり、上記ポリオールがポリプロピレングリコールであり、該ポリプロピレングリコールの平均分子量が100〜550であることを特徴とするインフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック用プリプレグの製造方法。
- マトリックス樹脂を繊維材料に含浸させた後、半硬化させることを特徴とする請求項2に記載のインフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック用プリプレグの製造方法。
- 真空又は減圧下で行うことを特徴とする請求項2又は3に記載のインフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック用プリプレグの製造方法。
- 請求項1に記載の繊維強化プラスチック用プリプレグを硬化させてなるインフレータブル性を備えた繊維強化プラスチック。
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