JP4325982B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体酸化皮膜を形成させた弁作用金属上に、導電性高分子からなる固体電解質を形成させてなる固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム、タンタルなどの弁作用金属上に、固体電解質を形成させてなる固体電解コンデンサが知られている。
【0003】
固体電解質として、高電気伝導度で、耐熱性に優れた導電性高分子を用いた固体電解コンデンサは、コンデンサの電気抵抗が小さく、また表面実装可能な優れた特性のコンデンサである。
【0004】
以下、従来の固体電解コンデンサについて、図面を参照して説明する。
【0005】
図1は、一般的な固体電解コンデンサの構成を示す概略断面図であり、また、図2は従来の固体電解コンデンサの陰極接着部を示す概略平面図である。
【0006】
エッチング処理を施した弁作用金属1の陽極端子部2以外の表面を、化成処理により誘電体酸化皮膜を形成させた後、順次、固体電解質層3、カーボン層及び銀層からなる陰極導電層4を形成させて、コンデンサ素子を得る。
【0007】
ついで、リードフレームの陰極リード5に、銀ペースト等の導電性接着剤6を1点塗布した後、上記コンデンサ素子を該リード上に載置し、コンデンサ素子を陰極リードに接着させる。
【0008】
図2は、陰極リード5のコンデンサ素子載置部9に、導電性接着剤6を1点塗布した状態を示し、該接着剤の塗布面が陰極接着部の接着面となる。
【0009】
ついで、該素子の陽極端子部2を、リードフレームの陽極リード7にスポット溶接等の手法により接合させた後、エポキシ樹脂等の外装樹脂8により成形させて、図1に示す固体電解コンデンサを得る。
【0010】
従来の固体電解コンデンサの陰極接着部は、陰極導電層4と陰極リード5とを導電性接着剤6により接着させるにあたり、図2に示すように1点の接着面で接着されていた(例えば特許文献1参照。)。
【0011】
しかしながら、該コンデンサは、コンデンサ素子の陰極導電層4と陰極リード5との間の接着強度が低く、また、陰極接着部の接着面が1点の場合、一点あたりの接着面積が大きくなるため、熱ショックを受けて導電性接着剤中に含まれる樹脂が収縮−膨張を繰り返されることにより、接着面の一部が剥離し、等価直列抵抗(以下、「ESR」と略記する。)が増大したり、または、完全に剥離し、オープン不良が発生するという解決すべき点が残されていた。
【0012】
例えば、従来のコンデンサは、温度270℃に熱したハンダ浴に20秒間浸漬するハンダ浸漬試験や、温度−50℃で30分間保持させた後、温度105℃で30分間保持させるサイクルを20回繰り返すヒートサイクル試験(温度急変試験)のような、過酷な条件下での熱ショックをともなう耐久性試験において、接着面の一部が剥離したり、あるいは、接着面が完全に剥離する場合があった。
【0013】
さらに、陰極リード5上に塗布した導電性接着剤6の接着面が1点の場合、該リード上にコンデンサ素子を載置し接着させる工程において、該素子が該接着剤の塗布面を支点として回転方向に動きやすく、リードフレームとコンデンサ素子との間に位置ずれが発生し、製品の歩留まりが低下するするという解決すべき点が残されていた。
【0014】
【特許文献1】
特開平9−266138号公報 (第3−6頁、第5図)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固体電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子及び陰極リードとの接着強度が高く、コンデンサの熱ショックに対する耐久性に優れ、また、該コンデンサの組立工程、特に陰極リード上にコンデンサ素子を載置し接着させる工程において、リードフレームとコンデンサ素子との間に位置ずれが発生しない固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、コンデンサ素子と陰極リードとを接着させるにあたり、導電性接着剤の接着面を複数設けることにより、上記課題を解決し得る固体電解コンデンサ及びその製造方法を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、表面に誘電体酸化皮膜を形成させた弁作用金属上に、順次、固体電解質層及び陰極導電層を形成させてなるコンデンサ素子を、リードフレームに載置し、該素子の陰極導電層を導電性接着剤により陰極リードへ接着させ、また、陽極端子部を陽極リードへ接合させ、ついで外装樹脂で成形させてなる固体電解コンデンサにおいて、陰極導電層と陰極リードとが少なくとも2点の接着面で接着されてなることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0018】
また、本発明は、表面に誘電体酸化皮膜を形成させた弁作用金属上に、順次、固体電解質層及び陰極導電層を形成させてコンデンサ素子を得る工程、リードフレームの陰極リードに導電性接着剤を塗布した後、該リード上にコンデンサ素子を載置させて、コンデンサ素子を陰極リードに接着させる工程、陽極端子部をリードフレームの陽極リードに接合させる工程、外装樹脂で成形させる工程を包括する固体電解コンデンサの製造方法において、陰極リードに導電性接着剤を少なくとも2点塗布することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0019】
本発明に用いられる弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンなどの金属またはこれらの合金が用いられるが、以下、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合を例にとり、図1及び図3を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、例示した図面によりなんら限定されない。
【0020】
図3は、本発明の固体電解コンデンサの陰極接着部を示す概略平面図である。
【0021】
まず、エッチング処理を施したアルミニウム箔1の陽極端子部2を除いた表面に、化成処理により誘電体酸化皮膜を形成させた後、順次、固体電解質層3、カーボン及び銀層からなる陰極導電層4を形成させてコンデンサ素子を得る。
【0022】
固体電解質層3としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリアセチレン、あるいは、ポリチオフェンまたはポリ(アルキルチオフェン)などのチオフェン誘導体ポリマーなどの導電性高分子、二酸化マンガンなどの導電性酸化物が用いられるが、静電容量、ESRなどのコンデンサ特性面から、導電性高分子であるポリピロールまたはチオフェン誘導体ポリマーが好ましい。該導電性高分子層を形成させる方法としては、化学重合法または電解重合法などの従来公知の方法が用いられる。また、陰極導電層4は、カーボンペースト及び銀ペーストを塗布、加熱、乾燥させることによって形成される。
【0023】
ついで、リードフレームの陰極リード5に、銀ペースト等の導電性接着剤6を少なくとも2点塗布した後、上記コンデンサ素子を該リード上に載置し、コンデンサ素子を陰極リードに接着させる。
【0024】
図3(a)は、陰極リード5のコンデンサ素子載置部9に、導電性接着剤6を2点塗布した状態を示し、該接着剤の塗布面が陰極接着部の接着面となる。
【0025】
ついで、陽極端子部2をリードフレームの陽極リード7にスポット溶接などの手法で接合した後、外装樹脂8で成形し、その後、電圧を印加してエージングさせて、本発明の固体電解コンデンサを得る。
【0026】
本発明の固体電解コンデンサは、コンデンサ素子と陰極リードとを複数の接着面で接着させることにより、1点あたりの接着面積を小さくでき、熱ショックにより収縮−膨張が繰り返されても、剥離することがないので、長期間にわたりESRが上昇することなく、耐久性に優れている。
【0027】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法によれば、コンデンサ素子をリードフレームに載置し接着させる工程において、陰極リード上に導電性接着剤が複数塗布されており、コンデンサ素子が複数点で支持されているため、位置ずれが発生することなく、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を、実施例に基づき、図面を参照して説明する。実施例中「%」は「質量%」を示す。なお、本発明は、実施例によりなんら限定されない。
【0029】
実施例1
図1において、弁作用金属1であるアルミニウム箔(縦5.0mm×横4.0mm、厚さ150μm)を、エッチング処理により表面を粗面化した後、陽極端子部2(縦1.0mm×横4.0mm)以外を、アジピン酸アンモニウム水溶液中、電圧10Vで化成処理して、表面に誘電体酸化皮膜を形成させた。
【0030】
ついで、上記箔を、ピロールモノマー30%エタノール溶液中に浸漬させた後、支持電解質であるパラトルエンスルホン酸アンモニウム15%及び酸化剤である過硫酸アンモニウム15%水溶液中に浸漬、乾燥させる操作を3回繰り返して、誘電体酸化皮膜上に、化学重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた。
【0031】
ついで、該箔を、ステンレス容器中、ピロールモノマー0.4mol/l及び支持電解質である1,7−ナフタレンスルホン酸テトラエチルアンモニウム0.4mol/lのアセトニトリル溶液中に浸漬し、先に形成した化学重合ポリピロール膜の一部に金ワイヤーを接触させて陽極とし、ステンレス容器を陰極として、電流0.3mAで90分間、電解重合させて、電解重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させて、化学重合ポリピロール及び電解重合ポリピロールからなる固体電解質層3を形成させた。
【0032】
続いて、該素子に、カーボンペースト及び銀ペーストを塗布、加熱、乾燥させて陰極導電層4を形成し、コンデンサ素子を得た。
【0033】
次に、図3(a)に示すように、厚さ0.1mmの鉄合金(42−アロイ)製リードフレームの陰極リード5のコンデンサ素子載置部9に、導電性接着剤6である銀ペースト(ナミックス(株)社製 H9430)を直径1.4mmφの大きさに2点塗布し、ついで、先に得られたコンデンサ素子を自動搭載機により載置後、加熱、乾燥させて、陰極リード5に該素子を接着させた。上記導電性接着剤の塗布面すなわち接着面2点の合計面積は、約3.2mm2であり、該接着剤の合計塗布量は約2mgである。
【0034】
得られた素子について、コンデンサ素子及び陰極リードとの接着面の接着強度及び位置ずれ不良率を、以下に記載の方法で測定した。
【0035】
接着強度の測定は、引張試験機(安井器械(株)製 BT−805)を用い、該装置の試験片固定部に、陰極リードを水平に固定し、コンデンサ素子のエッジ部に該装置の釣り針状測定治具を引っ掛けて、引っ張り荷重を測定し、得られた測定値を接着強度とした。コンデンサ素子50個について接着強度を測定し、それらの値の平均値を算出した結果を表1に示す。
【0036】
位置ずれ不良率は、測定顕微鏡を用いてコンデンサ素子を上方から観察し、コンデンサ素子面と、陰極リード面との回転方向の位置ずれ角度を測定し、位置ずれ角度が5度以上のものを不良とした。コンデンサ素子50個について、位置ずれ角を測定し、位置ずれ不良率を求め、その結果を表1に示す。
【0037】
実施例2〜4
実施例1において、陰極リード上に導電性接着剤である銀ペーストの塗布サイズ及び塗布数を変えた以外は実施例1と同様にして、次に示す実施例2〜4の各コンデンサ素子を作製した。
【0038】
実施例2は、図3(b)に示すように、導電性接着剤6を直径1.1mmφの大きさに3点塗布し、同様に、実施例3は、直径1mmφの大きさに4点塗布(図3(c))、実施例4は、直径0.9mmφの大きさに5点塗布(図3(d))した。
【0039】
なお、上記実施例2〜4における導電性接着剤の接着面の合計面積及び合計塗布量は、実施例1と同等となるように、それぞれ約3.2mm2及び約2mgとした。
【0040】
得られたコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様にして、接着強度及び位置ずれ不良率を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
比較例1
実施例1において、図2に示すように、陰極リード上に導電性接着剤である銀ペーストを直径2.0mmφの大きさに1点塗布した以外は実施例1と同様にして、コンデンサ素子を得た。
【0042】
なお、導電性接着剤の接着面の合計面積及び合計塗布量は、実施例1と同等となるように、それぞれ約3.2mm2及び約2mgとした。
【0043】
得られたコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様にして、接着強度及び位置ずれ不良率を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
実施例5
実施例1と同様にして得られた陰極リード付コンデンサ素子の陽極端子部2に、陽極リード7をスポット溶接により接合させ、外装樹脂8であるエポキシ樹脂で成形し、エージングさせて、定格静電容量22μF、定格電圧6.3Vの固体電解コンデンサを完成させた。なお、該コンデンサは、陰極接着部の接着面が2点である。
【0045】
上記コンデンサ50個を用いて、熱ショック試験すなわち温度270℃に熱したハンダ浴に20秒間浸漬し、続いて、温度−50℃で30分間保持させた後、温度105℃で30分間保持させるサイクルを20回繰り返す試験を行った後、周波数100kHzにおけるESRを測定し、平均値を求めた。熱ショック試験の前後のESR測定値を表2に示す。
【0046】
また、熱ショック試験後のコンデンサを分解し、陰極接着部の剥離状態を顕微鏡により観察した。陰極リードとコンデンサ素子が一部でも剥離が認められるものは剥離ありと判断し、50個のサンプルについて観察し、それらの結果から剥離発生率を算出した。結果を表2に示す。
【0047】
実施例6
実施例5において、実施例2で得られたコンデンサ素子を用いた以外は実施例5と同様にして、固体電解コンデンサを完成させた。なお、該コンデンサは、陰極接着部の接着面が3点である。
【0048】
以下、実施例5と同様にして熱ショック試験を行い、ESR及び剥離発生率を求めた。結果を表2に示す。
【0049】
実施例7
実施例5において、実施例3で得られたコンデンサ素子を用いた以外は実施例5と同様にして、固体電解コンデンサを完成させた。なお、該コンデンサは、陰極接着部の接着面が4点である。
【0050】
以下、実施例5と同様にして熱ショック試験を行い、ESR及び剥離発生率を求めた。結果を表2に示す。
【0051】
実施例8
実施例5において、実施例4で得られたコンデンサ素子を用いた以外は実施例5と同様にして、固体電解コンデンサを完成させた。なお、該コンデンサは、陰極接着部の接着面が5点である。
【0052】
以下、実施例5と同様にして熱ショック試験を行い、ESR及び剥離発生率を求めた。結果を表2に示す。
【0053】
比較例2
実施例5において、比較例1で得られたコンデンサ素子を用いた以外は実施例5と同様にして、固体電解コンデンサを完成させた。なお、該コンデンサは、陰極接着部の接着面が1点である。
【0054】
以下、実施例5と同様にして熱ショック試験を行い、ESR及び剥離発生率を求めた。結果を表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1に示すように、コンデンサ素子と陰極リードの接着面数が1点である従来の比較例1では、接着強度が低く、また、陰極リード上にコンデンサ素子を載置し接着させる工程において、位置ずれ不良率が高いのに対して、接着面を複数点設けた本発明の実施例1〜4では、接着強度が高く、位置ずれ不良率が0であり、位置ずれが発生しない。
【0058】
表2に示すように、陰極リードとコンデンサ素子の接着面数が1点である従来の固体電解コンデンサである比較例2は、熱ショック試験後にESRが大きく上昇し、また、コンデンサ素子の剥離発生率が高いのに対し、接着面を複数点設けた本発明の固体電解コンデンサである実施例5〜8では、熱ショック試験後においてもESRの上昇が小さく、また、剥離の発生が見られない。
【0059】
【発明の効果】
本発明の固体電解コンデンサは、コンデンサ素子と陰極リードとを複数の接着面で接着させることにより、1点あたりの接着面積を小さくでき、熱ショックにより収縮−膨張が繰り返されても、剥離することがないので、長期間にわたりESRが上昇することなく、耐久性に優れている。
【0060】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法によれば、コンデンサ素子をリードフレームに載置し接着させる工程において、陰極リード上に導電性接着剤が複数塗布されており、コンデンサ素子が複数点で支持されているため、位置ずれが発生することなく、製品の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な固体電解コンデンサの構成を示す概略断面図である。
【図2】従来の固体電解コンデンサの陰極接着部を示す概略平面図である。
【図3】本発明の固体電解コンデンサの陰極接着部を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1 弁作用金属
2 陽極端子部
3 固体電解質層
4 陰極導電層
5 陰極リード
6 導電性接着剤
7 陽極リード
8 外装樹脂
9 コンデンサ素子載置部
Claims (1)
- 表面に誘電体酸化皮膜を形成させた弁作用金属上に、順次、固体電解質層及び陰極導電層を形成させてコンデンサ素子を得る工程、リードフレームの陰極リードに導電性接着剤を塗布した後、該リード上にコンデンサ素子を載置させて、コンデンサ素子をリードフレームに接着させる工程、陽極端子部をリードフレームの陽極リードに接合させる工程、外装樹脂で成形させる工程を包括する固体電解コンデンサの製造方法において、陰極リードに導電性接着剤を少なくとも2点塗布することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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