JP4325958B2 - 紫外線及び熱線遮蔽性積層体 - Google Patents

紫外線及び熱線遮蔽性積層体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線及び熱線遮蔽性積層体に関し、より詳細には紫外線及び熱線遮蔽性に優れ、かつ長期耐候性に優れた積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年省エネルギーの観点から、熱線遮蔽フィルムを使用して熱線を遮蔽する技術が注目されており、このような熱線遮蔽フィルムが一部商品化もされている。具体的使用方法としては、ビルや住宅、車両などの窓ガラスに直接熱線遮蔽フィルムを貼り付ける方法、あるいは2枚のガラズの間に挟み込む方法などが行われているが、いずれの方法においても熱線遮蔽剤及びこれを含有する結着剤の耐候性が問題となっていた。一方樹脂やゴムなどの劣化を引き起こし、人体に悪影響を及ぼす紫外線を遮蔽するフィルムやガラスの開発が盛んに行われており、上記の熱線遮蔽剤と紫外線遮蔽剤を併用した熱線及び紫外線遮蔽フィルムやガラスも開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この熱線及び紫外線遮蔽フィルムやガラスでは、添加型の紫外線吸収剤を使用しているため、紫外線吸収効率を向上させようと紫外線吸収剤を多量に添加すると、紫外線遮蔽層の結着性能が悪くなり層間密着性が低下したり、紫外線吸収剤がブリードアウトするといった問題が生じ長期耐候性の向上が図れない。
【0004】
そこで本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、紫外線及び熱線遮蔽性に優れるとともに、長期耐候性にも優れた積層体を提供することをその目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、透明基材、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層を備えた積層体であって、該紫外線遮蔽層は該熱線遮蔽層よりも光入射側に形成され、該紫外線遮蔽層は、下記一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収性単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体成分を重合してなる重合体を含有し、該熱線遮蔽層は熱線遮蔽物質を含有していることを特徴とする紫外線及び熱線遮蔽性積層体が提供される。
【0006】
【化5】
【0007】
(式中、R1 は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R2 は低級アルキレン基を表し、R3 は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン、炭素数1〜8の炭化水素基、低級アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
【0008】
【化6】
【0009】
(式中、R4 は低級アルキレン基を表し、R5 は水素原子またはメチル基を表す。)
【0010】
ここで耐擦り傷性や耐汚染性などの一層の向上には、積層体の少なくとも片面側の表面に表面保護層が更に形成されているのが好ましい。また積層体表面の耐汚染性及び耐汚染除去性の向上には、積層体の最外層中に有機ポリマー複合無機微粒子(以下、「複合無機微粒子」と記すことがある)が含有されているのが望ましい。
【0011】
また本発明によれば、保護材、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層を備えた積層体であって、該紫外線遮蔽層と該熱線遮蔽層とが直接又は間接に密着し、該保護材が積層体の片面側の最外層として剥離可能に形成されており、該紫外線遮蔽層は、前記一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収性単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体成分を重合してなる重合体を含有し、該熱線遮蔽層は熱線遮蔽物質を含有していることを特徴とする紫外線及び熱線遮蔽性積層体が提供される。
【0012】
ここで耐擦り傷性や耐汚染性などの一層の向上には、保護材に内接して表面保護層が更に形成されているのが好ましく、また積層体表面の耐汚染性及び耐汚染除去性の向上には、保護材を剥離した後の積層体の最外層中に有機ポリマー複合無機微粒子が含有されているのが望ましい。
【0013】
前記単量体成分が下記一般式(3)及び(4)で表される紫外線安定性単量体から選ばれる少なくとも1種を更に含んでいるのが好ましい。
【0014】
【化7】
【0015】
(式中、R6 は水素原子またはシアノ基を表し、R7 、R8 はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R9 は水素原子または炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0016】
【化8】
【0017】
(式中、R6 は水素原子またはシアノ基を表し、R7 、R8 、R7'、R8'はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0018】
また前記熱線遮蔽物質として無機系熱線遮蔽剤及び/又は有機系熱線遮蔽剤を用いるのが望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、紫外線及び熱線遮蔽性に優れるとともに、長期耐候性にも優れた積層体を得るため鋭意検討を重ねた結果、紫外線遮蔽機能と熱線遮蔽機能とを別々の層に分担させ、同時に紫外線遮蔽層を熱線遮蔽層よりも光入射側に設けることにより優れた紫外線遮蔽性能と熱線遮蔽性能を維持しながら飛躍的に耐候性を向上させることができるという新たな知見を得、さらに特定の紫外線吸収性単量体を含む単量体成分を重合させた重合体を紫外線遮蔽層に含有させることにより、従来問題となっていた紫外線吸収剤のブリードアウトを有効に防止できることを見いだし本発明をなすに至った。
【0020】
本願請求項1の積層体の大きな特徴の一つは、透明基材、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層を備えた点にある。すなわち従来のようには紫外線遮蔽物質と熱線遮蔽物質とを同一層に含有させず、それぞれ別々の層に含有させて機能を分離させることにより、従来と同等あるいはそれ以上の紫外線遮蔽及び熱線遮蔽効果が発揮させることができ、また該積層体の耐候性も向上させることができた。
【0021】
また他の大きな特徴は、該紫外線遮蔽層を該熱線遮蔽層よりも光入射側に形成した点にある。このような層構成とすることにより積層体の耐候性を一層向上させることができた。すなわち紫外線遮蔽層を該熱線遮蔽層よりも光入射側に形成させることによって、熱線遮蔽層を構成する結着樹脂などを劣化させる紫外線が紫外線遮蔽層で遮蔽され、熱線遮蔽層まで届かなくなり耐久性が向上するのである。
【0022】
図1を参照して、本願請求項1の積層体の層構成は、紫外線遮蔽層が熱線遮蔽層よりも光入射側に形成していれば特に限定はなく、光入射側から見て順に、▲1▼紫外線遮蔽層−熱線遮蔽層−透明基材(図1(a))、▲2▼紫外線遮蔽層−透明基材−熱線遮蔽層(図1(b))、▲3▼透明基材−紫外線遮蔽層−熱線遮蔽層(図1(c))の大きく3つの層構成に分類できる。透明基材がガラスやフッ素樹脂など耐候性に優れたものを主体とする場合は、上記3つのいずれの層構成でもよいが、透明基材が耐候性に劣る場合は、紫外線遮蔽層の後に透明基材を設けた上記▲1▼又は▲2▼の層構成とするのがよい。
【0023】
本発明で使用できる透明基材としては、透明であれば特に制限はなく有機系基材、無機系基材のいずれも使用することができ、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の有機系基材;ガラスなどの無機系基材を挙げることができる。また透明基材の形状や製法はどのようなものでもよく特に限定はない。なお本発明でいう透明には、無色透明、有色透明、半透明が含まれる。
【0024】
また本願請求項1の積層体の大きな特徴は、該紫外線遮蔽層が、前記一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収性単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体成分を重合してなる重合体を含有している点にある。当該重合体を使用することにより、従来と同等あるいはそれ以上の紫外線吸収性能が得られ、しかも紫外線遮蔽層からのブリードアウトを有効に防止することができる。
【0025】
本発明における前記一般式(1)で表される紫外線吸収性単量体は、式中、R1 は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基で構成され、R2 は低級アルキレン基で構成され、R3 は水素原子またはメチル基で構成され、Xは水素、ハロゲン、炭素数1〜8の炭化水素基、低級アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0026】
上記式中、R1 で表される置換基としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族炭化水素基であり、R2 で表される置換基は、具体的には炭素数1〜6のアルキレン基であって、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状アルキレン基及びプロピレン基、2−メチルトリメチレン基、2−メチルテトラメチレン基などの分鎖状アルキレン基であり、Xで表される置換基は、水素;フッソ、塩素、シュウ素、ヨウ素などのハロゲン;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式炭化水素基:シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式炭化水素基:フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基など炭素数1〜6の低級アルコキシ基;シアノ基;ニトロ基である。
【0027】
前記一般式(1)で表される紫外線吸収性単量体としては、例えば2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−3' −tert−ブチル−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −tert−ブチル−3' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。一般式(1)で表されるこれら紫外線吸収性単量体は一種類のみを用いてもよく、また二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0028】
また前記一般式(2)で表される紫外線吸収性単量体は、式中、R4 で表される置換基は低級アルキレン基で構成され、R5 で表される水素原子またはメチル基で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0029】
上記式中、R4 で表される置換基は、具体的には炭素数2または3のアルキレン基であって、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基などを挙げることができる。
【0030】
前記一般式(2)で表される紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−〔2' ヒドロキシ−5' −(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3' −tert−ブチルフェニル〕−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。一般式(2)で表されるこれら紫外線吸収性単量体は一種類のみを用いてもよく、また二種類以上を適宜混合してもよい。
【0031】
耐候性の一層の向上を図るため、本発明で使用する単量体成分は、一般式(3)及び(4)で表される紫外線安定性単量体から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいるのが好ましい。
【0032】
本発明で使用する一般式(3)、(4)の紫外線安定性単量体において、式中、R6 で示される置換基は水素原子またはシアノ基で構成され、R7 、R8 、R7'、R8'で示される置換基はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基で構成され、R9 で示される置換基が水素原子または炭化水素基で構成され、Yで示される置換基が酸素原子またはイミノ基で構成されるピペリジン類である。
【0033】
上記R9 で示される置換基としては、具体的には水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基であって、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基など鎖式炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族炭化水素基などが非限定的に例示される。
【0034】
前記一般式(3)で表される紫外線安定性単量体としては、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられ、これらの一種のみを用いてもよく、また二種以上を適宜混合して用いてもよい。もちろん一般式(3)の紫外線安定性単量体はこれら化合物に限定されるものではない。
【0035】
前記一般式(4)で表される紫外線安定性単量体としては、例えば1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられ、これら一種のみを用いてもよく、また二種以上を適宜混合して用いてもよい。なお一般式(4)の紫外線安定性単量体はこれらに限定されるものではない。
【0036】
一般式(1)、(2)で表される紫外線吸収性単量体の使用量は、特に限定されないが、紫外線吸収性重合体に対して1〜90wt%とすることが望まれる。より好ましい範囲について述べると、下限側として好ましくは5wt%、さらに好ましくは10wt%である。他方上限側として好ましくは70wt%、さらに好ましくは50wt%である。紫外線吸収性単量体の使用量が1wt%よりも少ないと、熱線遮蔽層や透明基材の紫外線による劣化を防ぐためには紫外線遮蔽層の厚みを厚くする必要が生じ、その上に表面保護層を形成するときに亀裂が発生しやすく、また長期間の使用によっても亀裂が発生するおそれがある。他方、90wt%よりも多いと紫外線遮蔽層の物性の低下を招くおそれがある。
【0037】
また、一般式(3)、(4)で表される紫外線安定性単量体の使用量は、特に限定されるものではないが、紫外線吸収性重合体に対して0.1〜15wt%とすることが望まれる。より好ましい範囲について述べると、下限側として好ましくは0.5wt%、さらに好ましくは1wt%である。他方上限側として好ましくは5wt%、さらに好ましくは3wt%である。紫外線安定性単量体の合計使用量が0.1wt%よりも少ないと、紫外線遮蔽層の劣化を防ぐことができないおそれがあり、他方15wt%よりも多いと、紫外線遮蔽層の物性低下を招くおそれがある。
【0038】
また上記単量体以外のその他の共重合可能な不飽和単量体は、紫外線吸収性単量体が繰り返し単位の一部として含まれる重合体に要求される各種物性を損なわないものであればいずれも使用することができ、耐候性の点からは下記一般式(5)に表される不飽和単量体の使用が好ましい。
【0039】
【化9】
【0040】
(式中、R10は水素原子またはメチル基を表し、Zは炭素数が4以上の炭化水素基を表す。)
【0041】
上記式中、Zで表される置換基はシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロドデシル基などの炭素数4以上の脂環式炭化水素基;ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基など炭素数4以上の直鎖または分枝鎖のアルキル基;ボルニル基、イソボルニル基などの炭素数4以上の多環式炭化水素基であり、中でも脂環式炭化水素基、分枝鎖のアルキル基、炭素数6以上の直鎖アルキル基が好ましい。
【0042】
一般式(5)に表される不飽和単量体として、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの一種または二種以上が使用できる。
【0043】
一般式(5)に表される不飽和単量体の使用量は、特に限定はないが、紫外線吸収性重合体に対して3〜70wt%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50wt%の範囲である。当該使用量が3wt%未満の場合、所望の耐候性を得にくくなるおそれがあり、他方70wt%を超えるは場合、透明基材や熱線遮蔽層との層間密着性の低下を招くおそれがある。
【0044】
その他の共重合可能な不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系不飽和単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製;商品名「プラクセルFM」)等の活性水素を有する基を含有する不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N' −ジメチルアミノチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の含窒素不飽和単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2個の重合性二重結合を有する不飽和単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族不飽和単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。その他単量体は必要に応じて一種類のみを用いてもよく、また二種以上を用いてもよい。
【0045】
特に熱線遮蔽層又は透明基材との密着性の点からイミド(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0046】
上記単量体の混合方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の混合方法が採用され得る。
【0047】
また単量体組成物を共重合させる際の重合方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の重合方法が採用され得る。例えば、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合等の重合方法が使用できる。溶液重合法を用いて単量体組成物を重合させる場合に用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、その他の芳香族系溶媒;iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。もちろん使用し得る溶媒がこれら溶媒に限定されるものではないが、透明基材や熱線遮蔽層を浸食する溶剤は好ましくない。これら溶媒は一種のみを使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。なお、溶媒の使用量は生成物の濃度などを考慮し適宜定めればよい。
【0048】
また単量体組成物を共重合させる際には重合開始剤を用いる。重合開始剤としては、たとえば2,2' −アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2' −アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。重合開始剤の使用量は、要求される重合体の特性値などから適宜決定されるべきものであり、特に限定はないが、単量体成分全量に対して0.01〜50wt%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜20wt%の範囲である。
【0049】
反応温度は、特に限定されるものではないが、室温〜200℃の範囲が好ましく、40〜140℃がより好ましい。なお反応時間は、用いる単量体組成物の組成や重合開始剤の種類などに応じて、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
【0050】
紫外線吸収性重合体の平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは4,000〜300,000であり、さらに好ましくは5,000〜200,000である。なお平均分子量は、ポリスチレン標準GPCで測定した値である。
【0051】
次に紫外線遮蔽層の形成について説明する。生成された紫外線吸収性重合体を、必要により他の重合体と混合して紫外線遮蔽層組成物とし、透明基材又は熱線遮蔽層上に塗布する。このとき紫外線遮蔽層は、透明基材又は熱線遮蔽層に直接形成してもよいし、当該基材表面にプライマー層を形成し、その上に形成してもよい。当該組成物の塗布は、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコータ、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、バーコート、静電塗装などの方法により行うことができる。その後に塗布した紫外線遮蔽層を加熱したり、紫外線や電子線を照射して硬化させて成形物を得る。
【0052】
ここで、生成された紫外線吸収性重合体が単独で硬化できない重合体の場合には、硬化剤を添加する必要がある。かかる硬化剤は、紫外線吸収性重合体に存在する硬化性官能基、例えば水酸基やアミノ基、カルボキシル基又はその無水物、エポキシ基、アミド基等と架橋硬化反応する官能基を1分子当たり2個以上含む化合物又はポリマーであって、紫外線吸収性重合体に存在する官能基の種類に応じて選択・使用される。例えば、紫外線吸収性重合体に存在する官能基がカルボキシル基又はその無水物である場合には、ポリイソシアネート化合物又はその変性物、アミノプラスト樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂等の架橋硬化剤、当該官能基がエポキシ基である場合には、アミンやカルボン酸、アミド、N−メチロールアルキルエーテル等を含む化合物からなる架橋硬化剤、当該官能基が水酸基やアミノ基である場合には、ポリイソシアネート化合物又はその変性物、エポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂等の架橋硬化剤を挙げることができる。これら硬化剤の中でも、活性水素を有する基との組み合わせにおいて、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂が好ましい。
【0053】
また、紫外線吸収性重合体と混合される重合体としては、熱可塑性重合体又は単独あるいは架橋剤によって架橋硬化する熱硬化性重合体を使用することができる。本発明の積層体の用途・要求される特性によって、当該重合体の種類・使用量を適宜決定すればよい。当該重合体としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性重合体;ウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の単独硬化する熱硬化性重合体;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤によって硬化する熱硬化性重合体を挙げることができる。
【0054】
架橋硬化剤は単独又は2種以上併用してもよい。架橋硬化剤の使用量は、架橋硬化剤の種類等によって適宜決定されるものであるが、紫外線遮蔽層に存在する硬化性官能基と架橋硬化剤中の官能基とのモル比率が0.8〜1.2の範囲となるのが好ましい。また架橋反応を促進させるために架橋触媒を添加してもよい。かかる架橋触媒としては例えば、塩類や無機物質、有機物質、酸物質、アルカリ物質等が挙げられる。
【0055】
紫外線遮蔽層が、加熱によって硬化される場合、硬化温度は架橋性官能基の種類や使用する硬化剤の種類によって異なるが、例えば室温〜250℃の温度で硬化するのが好ましい。
【0056】
紫外線照射によって硬化される場合、その硬化方法は、使用する光重合開始剤、紫外線を発生させる光源の種類、光源と塗布面との距離などの条件によっても異なってくるが、例えば波長1,000〜8,000オングストロームの紫外線を通常数秒間、長くとも数十秒間照射する方法を挙げることができる。
【0057】
電子線照射によって硬化される場合には、例えば通常50〜1000keV、好ましくは100〜300keVの加速電圧で、吸収線が1〜20Mrad程度となるように電子線を照射する方法を挙げることができる。電子線照射は大気中で行ってもよいが、窒素などの不活性ガス中で行うのが好ましい。
【0058】
また紫外線照射又は電子線照射後、必要に応じて加熱を行い、硬化を一層進行させてもよい。
【0059】
紫外線遮蔽層の厚さは、Lambert−Beerの法則により共重合される紫外線吸収剤量に依存するため、所望の積層体の耐候性を満足する範囲であれば特に限定はなく、例えば0.5〜200ミクロンが好ましく、より好ましくは1〜100ミクロン、さらに好ましくは2〜30ミクロンである。厚さが200ミクロンより厚いと、塗工速度が遅くなり、また積層体本来の性能が低下することがある。他方厚さが0.5ミクロンより薄いと、透明基材や熱線遮蔽層上への均一塗工が困難となり、また紫外線吸収能が不十分となることがある。
【0060】
また本発明では該熱線遮蔽層に熱線遮蔽物質が含有されている必要がある。本発明で使用できる有機系熱線遮蔽物質としては、近赤外線領域(700〜1800nm)に吸収を有する物質であれば特に限定はないが、用途によっては可視領域(400〜700nm)の着色が少なく、モル吸光係数が大きいものが望ましく、それら物質を一種又は二種以上組み合わせて使用できる。また用途によっては可視領域の調色を行ったり、目的の色に着色するために可視領域に吸収のある物質を含有させることもできる。有機系熱線遮蔽物質の使用量は、使用目的、使用する物質のモル吸光係数の違い、物質の組み合わせ等により画一的に決められるものではないが、通常は積層体に対して有機系熱線遮蔽物質の総使用量が、0.01〜50g/m2 が好ましい。特に好ましい量は0.1〜20g/m2 である。望ましい物質としては、例えば金属錯体化合物、フタロシアニン、ナフタロシアニン、アミニウム塩、アントラキノン、ナフトキノンなどが挙げられる。特に好ましい物質としては、フタロシアニン骨格の少なくとも1ヶ以上、好ましくは4ヶ以上に、窒素原子が結合した(例えばフェニルアミノ基やアルキルアミノ基で置換されているフタロシアニン)フタロシアニンが好ましい。また更には特開平6−264050号公報、特開平5−345861号公報、特開平6−25548号公報、特願平10−22318号公報、特願平10−233341号公報に記載のフタロシアニンなどが好ましい。
【0061】
また本発明で使用できる無機系熱線遮蔽物質としては、特に限定はなく例えば金属、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属酸化物などの無機系熱線遮蔽物質を挙げることができる。分散媒体への溶解性及び耐候性を有しているのが望ましいため、この中では金属酸化物の微粒子が好ましく使用される。かかる好ましい金属酸化物としては、酸化インジウム及び/又は酸化インジウムにIV価金属元素及び/又はFを含有させた酸化インジウム系酸化物、酸化スズ及び/又は酸化スズにV価金属元素及び/又はFを含有させた酸化スズ系酸化物、酸化亜鉛に、III B族金属元素、IVB族金属元素等のIII 価金属元素、IV価金属元素、F及びCのうち少なくとも一つの元素を含有させた酸化亜鉛系酸化物、スズ酸カドミウムなどの金属酸化物が挙げられる。
【0062】
酸化インジウムにIV価金属元素及び/又はFを含有した酸化インジウム系酸化物としては、酸化インジウムにIV価金属元素であるスズを含有したものが挙げられる。該金属酸化物系物質における含有割合(含有された元素/インジウム)は0.1〜20wt%の範囲が好ましい。酸化スズにV価金属元素及び/又はFを含有した酸化スズ系酸化物としては、酸化スズにV価金属元素であるアンチモンを含有したものが挙げられる。該金属酸化物系物質における含有割合は(含有された元素/スズ)は0.1〜20wt%の範囲が好ましい。酸化亜鉛に(III B族金属元素、IVB族金属元素等のIII 価金属元素、IV価金属元素、F及びCのうち少なくとも一つの元素)を含有した酸化亜鉛系酸化物としては、酸化亜鉛にIII B族金属元素であるAl、Ga、In、Tl、IVB族金属元素であるSi、Ge、Sn、Pb、その他Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Zr、Hf、La等のIII 価及び/又はIV価の金属元素の少なくとも1種を含有したものが挙げられる。該金属酸化物系物質における含有割合は(含有された元素/亜鉛)は0.1〜20wt%の範囲が好ましい。
【0063】
これらの金属酸化物微粒子の中でも、透明性に優れる点で平均粒径が0.1ミクロン以下であるものが好ましく、さらに0.05ミクロン以下、特に0.03ミクロン以下が好ましい。
【0064】
上記金属酸化物の中でも酸化亜鉛系酸化物が安価であることから好ましい。特に、III B族金属元素、IVB族金属元素のうち少なくとも一つの元素を含有した酸化亜鉛系酸化物が、可視光域の透過性に優れ、熱線遮蔽性に優れる点で好ましい。また酸化亜鉛系酸化物は、添加金属元素の種類や量を変えることによって紫外線遮蔽機能を付与することができる点でも好ましい。
【0065】
酸化亜鉛系酸化物微粒子は、結晶性酸化亜鉛に特有の回折ピークである、格子面(100)、(002)、(101)に回折ピークを示すものが好ましく、以下の結晶子パラメータを満たすことが好ましい。Scherrer法(Cauchy関数近似)を用いて求めた。各回折面(hkl)に対して垂直方向の結晶子の大きさをDs(hkl)とするとき、Ds(002)/Ds(100)<1.2を満足することが好ましい。より好ましくは、0.5<Ds(002)/Ds(100)<1.0である。この範囲にあると赤外線非透過性に優れるからである。
【0066】
そしてWilson法を用いて求めた結晶子の大きさをDw、格子歪みをAwとするとき、1≦Dw≦100(nm)、且つ、0≦Aw≦1(%)を満足することが好ましい。より好ましくは、5≦Dw≦30(nm)、且つ、0≦Aw≦0.5(%)である。Dwが小さすぎると、赤外線非透過性が低下し、Dwが大きすぎると可視光に対する透明性が低下する。
【0067】
熱線遮蔽層組成物は、熱線遮蔽物質、結着剤、溶剤を含む。本発明では、熱線遮蔽物質と結着剤の総重量に対して熱線遮蔽物質を1〜90wt%、結着剤を99〜10wt%の割合で含み、かつ組成物全量に対する熱線遮蔽物質と結着剤の総量が重量比で10〜90wt%、さらには30〜90wt%であることが好ましい。結着剤としては、特に限定はなく、例えば(メタ)アクリル系;(メタ)アクリルウレタン系;(メタ)アクリルシリコーン系;アルキルポリシロキサン系;ポリ塩化ビニル系;ポリ塩化ビニリデン;メラミン系;ウレタン系;スチレン系;アルキド系;フェノール系;エポキシ系;ポリエステル系;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性、湿気硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性などの硬化性合成樹脂、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴムもしくは天然ゴム等の有機系結着剤、シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド及びそれらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等の無機系結着剤などの従来公知の結着剤が使用できる。
【0068】
上記結着剤の中には、従来からハードコート用樹脂として知られる紫外線硬化型(メタ)アクリル樹脂、熱硬化型あるいは湿気硬化型の(メタ)アクリルシリコーン系樹脂や、耐熱性塗料として用いられる純シリコーン樹脂、シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂などの変性シリコーン樹脂なども含まれる。
【0069】
これらの結着剤は単独又は2種以上を混合して使用される。上記結着剤の中でも、比較的低温で層形成、乾燥ができ、耐候性、耐久性に優れる点で(メタ)アクリル系;(メタ)アクリルウレタン系;(メタ)アクリルシリコーン系;純シリコーン樹脂;シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂などの変性シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂が好ましく、これらのうち少なくとも1種を結着剤全量の50%以上とすることが好ましい。
【0070】
熱線遮蔽層の形成は、熱線遮蔽物質、結着剤、溶剤を含む熱線遮蔽層組成物を透明基材又は紫外線遮蔽層上に塗布することにより行う。このとき熱線遮蔽層は透明基材又は紫外線遮蔽層上に直接形成してもよいし、透明基材又は紫外線遮蔽層上にプライマー層を形成し、その上に形成してもよい。その他、前記紫外線吸収層の形成と同様の方法で熱線遮蔽層を形成すればよい。
【0071】
熱線遮蔽層の形成には、2種以上の熱線遮蔽物質を併用することができ、好ましくは吸収波長域の異なる有機系熱線遮蔽物質と無機系熱線遮蔽物質を混合して用いる、又は有機系熱線遮蔽物質を用いた熱線遮蔽層と無機系熱線遮蔽物質を用いた熱線遮蔽層との2層を形成するのがよい。特に、有機系熱線遮蔽物質と無機系熱線遮蔽物質のいずれかが混合することによって悪影響を受ける場合には、2層構造とするのがよい。
【0072】
熱線遮蔽層の厚さは、特に限定はないが、0.5〜200ミクロンの範囲が好ましく、1〜100ミクロンの範囲がより好ましい。
【0073】
積層体の耐擦り傷性及び耐汚染性をより向上させるために、積層体の表面に表面保護層を更に設けてもよい。もちろん必要により表面及び各層間にプライマー層を設けてもよい。
【0074】
上記の表面保護層を形成する樹脂は、特に限定はないが、表面硬度、耐擦り傷性の点等からシリコーン系硬化性樹脂及び有機系硬化性樹脂の少なくとも1種の樹脂が好ましい。
【0075】
シリコーン系硬化性樹脂は、シロキサン結合を持った樹脂であり、例えばトリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシラン又はそれらのアルキル化物の部分加水分解物、メチルトリアルコキシシラン及びフェニルトリアルコキシシランの混合物を加水分解したもの、コロイド状シリカ充填オルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物等が挙げられる。市販品としては、例えば「Siコート2」(大八化学社製)、「トスガード510」、「UVHC8553」、「UVHC8556」、「UVHC8558」(以上東芝シリコーン社製)、「KP−85」、「KP−854」、「X−12−2206」、「X−12−2450」(以上信越化学工業社製)などが挙げられる。これらには、縮合反応時に発生するアルコール等が含まれているが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないし分散させてもよく、そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類等が挙げられる。なお表面保護層には平滑な表面状態を得るため各種界面活性剤、例えばシロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤等を添加してもよい。
【0076】
また有機樹脂系硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂等が挙げられる。多官能アクリル樹脂としては、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の樹脂を挙げることができる。
【0077】
上記表面保護層を積層体に形成する方法は、層形成用組成物を積層体表面に塗布し、加熱することによって硬化させる熱硬化法や、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化させる活性エネルギー線硬化法等が挙げられる。このうちシリコーン系硬化性樹脂には主に熱硬化法が、有機樹脂系硬化性樹脂には紫外線を用いた活性エネルギー線硬化法が主に用いられる。一般的に熱硬化法は活性エネルギー線硬化法に比べ硬化までの時間がかかるのが欠点である。
【0078】
該表面保護層を形成する層形成用組成物を積層体に塗布する方法としては、浸漬法、スプレーコート法、フローコート法、ロールコート法、スピンコート法等が挙げられる。層間密着性の密着性を向上させるため、表面保護層は、下塗り層やプライマー層、接着層等と呼ばれる中間層を形成し、その上に形成してもよい。また、シラン系、チタン系などのカップリング剤などの添加剤を用いてもよい。
【0079】
表面保護層の層厚は、0.1〜200ミクロン、好ましくは0.5〜100ミクロン、更に好ましくは1〜50ミクロンの範囲である。該表面保護層の層厚が0.1より薄い場合は、表面硬度が低く表面保護層の効果がなく、他方層厚が200ミクロンよりも厚い場合は、樹脂板の物性、特に曲げ強さ等の機械強度が低下してしまう。
【0080】
また本発明の積層体の最外層中に有機ポリマー複合無機微粒子を含有させることにより、積層体表面の耐汚染性及び耐汚染除去性を向上させることができる。使用する有機ポリマー複合無機微粒子とは、無機微粒子表面に有機ポリマーが固定された複合無機微粒子を意味し、当該無機微粒子を基材保護層に含有させることにより耐汚染性及び汚染除去性の向上が図られる。無機微粒子と有機ポリマーの一体化は、無機微粒子に有機ポリマーが固定されることで達成されてもよく、後述するように有機質部分と無機質部分を有する含ケイ素ポリマーを加水分解・縮合することで無機微粒子を形成すると同時に有機ポリマーとの一体化を達成してもよい。ここに固定とは、一時的な接着及び付着を意味するものではなく、当該複合無機微粒子を溶剤で洗ったときに洗浄液中に有機ポリマーが検出されないことを意味しており、この現象は、有機ポリマーと無機微粒子の間で化学結合が生成していることを強く示唆している。
【0081】
使用できる無機微粒子は、実質的に無機物からなる微粒子であればよく、構成する元素の種類を問わないが、無機酸化物が好ましく用いられる。無機微粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等任意の形状でよく、特に限定されない。
【0082】
複合無機微粒子の平均粒子径は5〜200nmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜100nmの範囲である。複合無機微粒子の平均粒子径が5nm未満であると、複合無機微粒子の表面エネルギーが高くなり、複合無機微粒子の凝集が起こりやすくなる。他方複合無機微粒子の平均粒径が200nmを超えると、表面保護層の透明性が低下する。複合無機微粒子の粒子径の変動係数(粒子径分布)は、50%以下であり、30%以下が好ましい。複合無機微粒子の粒子径分布が広すぎる、すなわち粒子径の変動係数が50%を超えると表面保護層表面の凹凸が激しくなり、表面保護層の平滑性が失われるからである。
【0083】
該無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元ネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。無機酸化物を構成する金属元素としては、例えば元素周期律表II〜VI族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表III〜V族から選ばれる元素がさらに好ましい。その中でもSi、Al、Ti、Zrから選ばれる元素が好ましい。金属元素がSiであるシリカ微粒子は製造しやすく、入手が容易であるので、最も好ましい無機微粒子である。無機酸化物は、その製造中に有機基や水酸基を含有することがある。当該有機基とは、例えば置換されていてもよい炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。無機微粒子を構成する無機酸化物は1種のみである必要はなく、2種以上であってもよい。
【0084】
有機ポリマーは、樹脂内での無機微粒子の分散性や有機媒体との親和性の向上に寄与するほか、有機ポリマー自体がバインダーやマトリックスとして寄与することもある。有機ポリマーの構造は、直鎖状、分枝状、架橋構造等任意である。有機ポリマーを構成する樹脂としては、例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル及びこれらの共重合体であり、これらをアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等であってもよい。これらの中でも、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂等のアクリル単位を含む有機ポリマーは、層形成能を有し、層形成組成物用途に好適である。上記アクリル単位としては、例えばメチルアクリレート単位、エチルアクリレート単位、メチルメタクリレート単位、ポリエチレングリコール側鎖等の水酸基を有するアクリレート単位、ポリエチレングリコール側鎖等の水酸基を有するメタクリレート単位等の極性の高い側鎖を有する単位を挙げることができ、これらの単位は層の耐汚染性及び汚染除去性を向上させる。
【0085】
有機ポリマーは官能基を有するものであってもよい。官能基がパーフルオロアルキル基及び/又はシリコーン基であると、層の耐汚染性及び自己洗浄性が向上するため好ましい。有機ポリマーの主鎖とパーフルオロアルキル基及び/又はシリコーン基との結合状態は特に限定されないが、これらの基と有機ポリマーの主鎖とが直接に結合したもののほかに、エステル基(−COO−)又はエーテル基(−O−)等を介して結合したものでもよい。有機ポリマー中のパーフルオロアルキル基及び/又はシリコーン基の含有量は特に限定されないが、全体重量の0.01〜50%がより好ましい。含有量が0.01%未満であると、被膜形成時に複合無機微粒子の層表面への移行が起こりにくい。他方、含有量が50%を超えると、層表面から複合無機微粒子が抜け落ち、層の耐汚染性及び汚染除去性が低下するおそれがある。
【0086】
有機ポリマーの平均分子量は特に限定されないが、有機溶剤に対する溶解性や複合無機微粒子の製造し易さ等を考慮すると、200,000以下であるのが好ましく、50,000以下であるのがより好ましい。
【0087】
本発明で使用する複合無機微粒子は任意の方法で製造することができる。前述の有機質部分と無機質部分を有するシロキサン化合物を用いて作成する場合、使用するシロキサン化合物としては、有機鎖とポリシロキサン基から構成され、1分子当たり少なくとも1個のポリシロキサン基が結合しており、かつ該ポリシロキサン基中に少なくとも1個のSi−OR1 基(R1 は水素原子又はアルキル基、アシル基から選ばれる、置換されていてもよい少なくとも一種の基であり、R1 が1分子中に複数ある場合、複数のR1 は互いに同一であっても、異っていてもよい。)を含有する構造を有する含ケイ素ポリマーが好ましく挙げられる。かかる含ケイ素ポリマーを単独で又は加水分解可能な金属化合物とともに、加水分解・縮合する製造方法が好ましい。
【0088】
なお複合無機微粒子とその製造方法の詳細は、特開平7−178335号公報及び特開平9−302257号公報に記載されており、また本発明で使用する複合無機微粒子には、特願平9−291390号に記載されているような複合無機微粒子にエチレン性不飽和基を導入したものも含まれる。
【0089】
上記複合無機微粒子を含有する樹脂の市販品としては、例えば「ユーダブルC−3300」、「ユーダブルC−3600」(以上、(株)日本触媒社製)等が挙げられる。
【0090】
紫外線遮蔽層及び熱線遮蔽層はその他に種々の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、塗料などの層形成用組成物に一般に使用されるレベリング剤;黄鉛、モリブデートオレンジ、紺青、カドミウム系顔料、チタン白、複合酸化物顔料、透明酸化鉄、カーボンブラック、環式高級顔料、溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、染付顔料、顔料中間体などの顔料;顔料分散剤;抗酸化剤;粘性改質剤;耐光安定剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;充填剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防食剤;防錆剤;蛍光性増白剤;有機・無機防炎剤;滴下防止剤;溶融流改質剤;静電防止剤などが挙げられる。
【0091】
次に本願請求項4の積層体について説明する。本願請求項4の積層体の大きな特徴の一つは、該紫外線遮蔽層と該熱線遮蔽層とが直接又は間接に密着し、該保護材が積層体の片面側の最外層として剥離可能に形成されている点にある。すなわち本発明の積層体は、実使用においては保護材が形成された面とは反対側面を被接着物に接着した後、保護材を積層体から剥がし、紫外線及び熱線遮蔽作用を発揮させるのである。このとき光入射側に紫外線遮蔽層が存在するように上記密着体を被接着物に接着させることが重要である。紫外線遮蔽層を熱線遮蔽層より光入射側に存在させることにより、紫外線による熱線遮蔽層中の結着剤劣化などを防止でき耐候性の向上が図れるのである。具体的には、図2を参照して、光5は図面上方から入力され、図2(a)の場合は、紫外線遮蔽層1側を被接着物6に接着させ、図2(b)の場合は、熱線遮蔽層2側を被接着物6に接着させる。
【0092】
該紫外線遮蔽層と該熱線遮蔽層とは直接密着していてもよいし、プライマー層を介して間接的に密着していてもよい。
【0093】
また該保護材は、積層体の片面側の最外層として剥離可能に形成されていればよく、紫外線遮蔽層又は熱線遮蔽層上に直接形成されていてもよく、またプライマー層を介して形成されていてもよい。
【0094】
被接着物側に積層体を接着する機能がない場合は、紫外線遮蔽層又は熱線遮蔽層上に粘接着層を設けておくのが望ましい。粘接着層の形成は、例えば、天然ゴム、ブチールゴム、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタールなどのポリマーにテルペン樹脂、ロジン、ロジンエステル及びその誘導体、フェノール樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、ハーコリン(ヒドロアベエチン酸エステル)ポリブテンなどを適宜配合したものを石油系溶剤、トルエン、酢酸エステルなどの溶剤に溶解させて塗布することにより行うことができる。
【0095】
本発明で使用できる保護材としては、紫外線遮蔽層又は熱線遮蔽層から容易に剥離し得るものであれば特に限定はなく、例えばスーパーカレンダー仕上げや機械仕上げのクラフト紙;ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムを挙げることができ、シリコーンなどの剥離剤をコートしたものがより好ましい。
【0096】
被接着物への接着は、上記粘接着層による接着あるいは紫外線遮蔽層又は熱線遮蔽層が熱可塑性樹脂を主体とするものである場合には加熱による接着が可能であり、また紫外線遮蔽層又は熱線遮蔽層の表面を処理しておくことにより接着することができる。
【0097】
耐擦り傷性や耐汚染性などの一層の向上のためには、保護材に内接するように表面保護層がさらに形成されているのがよい。積層体が被接着物に接着された後に保護材が剥離されると、該表面保護層が最外層となり上記効果が奏されるのである。
【0098】
また積層体表面の耐汚染性及び耐汚染除去性の向上のためには、保護材を剥離した後の積層体の最外層中に複合微粒子が含有されているのが好ましい。ここでいう最外層とは、上記表面保護層が形成されている場合は該表面保護層をいい、図2(a)の場合は熱線遮蔽層、図2(b)の場合は紫外線遮蔽層をいう。
【0099】
紫外線吸収性重合体、熱線遮蔽物質、紫外線遮蔽層及び熱線遮蔽層の形成方法は、前記請求項1の積層体の場合と同様である。
【0100】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお特に断りのない限り、実施例および比較例に記載された「部」は重量部を、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0101】
(紫外線吸収性重合体の合成)
(合成例1)
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ミリリットルのフラスコに、2−[ 2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル] −2H−ベンゾトリアゾール5部、メチルメタクリレート30部、ブチルアクリレート24部、n−ブチルメタクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸1部、プロピレングリコールモノメチルエーテル80部を仕込み、窒素ガスを導入し、撹拌しながら110℃まで加熱した。開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20部の混合物を2時間かけて仕込物に滴下し、滴下後さらに2時間加熱させてアクリル樹脂の49.7%溶液を得た。なお、このものの数平均分子量は13,000であった。
この紫外線吸収性重合体を重合体1とする。表1に単量体組成物の種類と配合量、及び得られた重合体の特性値を示す。
【0102】
(合成例2〜8)
表1に示す単量体組成物及び配合量で、合成例1と同様にして紫外線吸収性重合体及び比較用重合体を製造した。製造した重合体をそれぞれ重合体2〜8とする。なお、合成例6については、合成例1と同様にして紫外線吸収性重合体を合成した後、窒素と酸素の混合ガスを導入し、撹拌しながら110℃で、アクリル酸15部、テトラフェニルホスホニウムブロミド0.2部、メトキノン0.01部の混合物を30分間かけて滴下し、その後さらに4時間反応させて重合体の側鎖にアクロイル基を有する重合体6を製造した。
【0103】
【表1】
【0104】
UVA1:2−[ 2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル] −2H−ベンゾトリアゾール
UVA2:2−[ 2' −ヒドロキシ−5' −(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3' −tert−ブチルフェニル] −4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール
HALS1:4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
HALS2:1−メタクリロイル−4−メタクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
IA:イミドアクリレート(「アロニクスTO−1429」東亜合成化学社製)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
GMA:グリシジルメタクリレート
開始剤:tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
【0105】
(無機系熱線遮蔽剤の合成)
撹拌機、滴下口、温度計、開閉制御可能な留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた20リットルのガラス製反応器中で、酢酸2600部及びイオン交換水1855部の混合溶媒に酸化亜鉛(フランス法酸化亜鉛)488部、水酸化インジウム(酸化インジウム含有量78.5%)53部、炭酸ナトリウム0.318部を添加混合した後、100℃で2時間加熱することにより均一溶液を得た後、2−ブトキシエタノール10,000部を添加混合し均一溶液(S1)を得た。
【0106】
次に留出ガス出口を開の状態で、窒素ガス導入口から窒素を流し、内部の雰囲気を窒素で置換した後、窒素ガスを流しながら溶液(S1)を昇温し、溶液中の揮発成分の一部を留出させながら、内温を170℃まで加熱昇温し30時間保持することにより、ZnO結晶性粒子が分散した紺色の分散体(D1)を得た。
【0107】
分散体(D1)は、結晶子径Dwが12nmの微粒子が分散粒径14nmで分散したものであり、分散体(D1)中の微粒子は、
Ds(002)/Ds(100)=0.68、
Aw=0.3%
であり、In含有量がZnに対する原子比で5%、アセトキシ基が酸化亜鉛に対する重量比で3重量%の割合で結合してなるものであった。また極めて分散性に優れるものであった。
【0108】
得られた分散体を遠心分離操作して微粒子からなるケーキを得、このケーキをMEKに再分散させることによって、微粒子濃度50wt%のMEK分散体を得た。
上記微粒子の物性を下記にしたがって評価した。
【0109】
粉末試料の作製法
得られた分散体中の微粒子を遠心分離操作によって分離した後、メタノールのよる洗浄、さらにアセトンによる洗浄を十分行った後、30℃で1日真空乾燥し、さらに80℃で1日真空乾燥し、揮発成分を完全に除去して微粒子の粉末を得、これを粉末試料とした。
【0110】
カルボキシル基含有量
粉末試料1gを0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液に混合し、3日間撹拌した後、遠心分離操作によって得た上澄みをイオンクロマト分析することによって測定した。
【0111】
結晶性
粉末X線回折により評価した。
結晶子径Ds(hkl)、Dw、格子歪Aw
粉末試料の粉末X線回折測定を行って求めた。ここで、Dw(hkl)はScherrer法(Cauchy関数近似による)によって得られる各回折面(hkl)に対して垂直な方向の結晶子径であり、Dw及びAwは、Wilson法を用いて求めた結晶子の大きさ及び格子歪である。
【0112】
平均分散粒径Dd
酸化亜鉛系粒子を含む分散液を必要に応じて塗料溶媒で希釈して、動的光散乱方式による粒子径アナライザー(野崎産業社製「NICOMPMode1370」)を用いて重量基準の平均粒子径を求め、これを平均分散粒径とした。
【0113】
微粒子組成
粉末試料の金属成分の組成は、蛍光X線分析、原子吸光分析、プラズマ発光分析、重量分析および元素分析などにより求めた。
【0114】
分散体の微粒子濃度
分散体の一部を100℃において溶媒などの揮発成分を完全に除去し得るまで真空乾燥することにより乾燥粉末を得、これを空気中、500℃で1時間加熱したときの残分を金属酸化物として、金属酸化物分の分散体に対する重量分率を求め、この値を分散体中の微粒子濃度(金属酸化物換算濃度)とした。
【0115】
(熱線遮蔽剤(酸化亜鉛微粒子)分散体組成物の配合)
前記で得られた酸化亜鉛微粒子(固形分50%)60部、アクリル系樹脂溶液(「ユーダブル S−5160」(株)日本触媒社製)45部、プロピレングリコールモノメチルエーテル60部を混合・撹拌して熱線遮蔽剤分散組成物を得た。
【0116】

ポリカーボネート樹脂板の表面をエチルアルコールで洗浄した後、熱線遮蔽剤分散組成物溶液を塗膜厚さが20ミクロンとなるようにポリカーボネート樹脂板表面に塗工し、風乾後80℃で30分間乾燥させ熱線遮蔽層を形成した。次いで、合成例1で得られた紫外線遮蔽性重合体100部に、硬化剤Aを7部、レベリング剤(「BYK300」ビッグケミー社製)0.01部を加えてよく撹拌し、所定粘度になるように樹脂溶液を調整した。次いで熱線遮蔽層を形成したポリカーボネート樹脂板表面に、該樹脂溶液を塗膜厚さが15ミクロンとなるように塗工して、80℃で30分間加熱硬化させた。得られたポリカーボネート樹脂板を下記評価項目について評価した。
【0117】
(耐候性試験)
スガ試験機社製のサンシャインウエザーメーターでサンシャインスーパーロングライフカーボンを使用し、温度63℃一定下で、降雨なし2時間と降雨18分のサイクルを繰り返す条件で試験片を2,000時間暴露した。耐候性試験後の評価として、下記の層間密着性、黄変度、表面状態(外観)観察を行った。
【0118】
(層間密着性)
塗膜に100個のゴバン目(1mm2 )をつけ、ゴバン目部分にセロファンテープを密着させ、次いで密着したセロファンテープを直角にかつ急激に剥離する。このとき剥離せずに残ったゴバン目の目数を数え、全目数100に対し何個残ったかで下記の判定を行った。
A(塗膜密着性良好):残り目数100個(全部残っている)
B(密着力が弱い) :残り目数99〜70個(部分的に剥離)
C(密着していない):残り目数70個以下(ほとんど剥離)
【0119】
(黄変度)
JIS K−7103に準拠し、試験片の着色(特に黄色味)を示す黄色度(Y1)を測定し、下記式から黄変度(△Y1)を算出した。
黄変度(△Y1)=(試験後の黄色度)−(初期黄色度)
黄変度が大きいほど初期に比べて着色したことを意味し、黄変度が4以上になると着色したことが明らかにわかる。
【0120】
(表面状態)
試験片表面を目視により観察し、下記基準で判定した。
◎:変化なし
○:ほとんど変化なし
△:わずかなクラックや曇りあり
×:はっきりとしたクラックや曇りあり
【0121】
(耐湿性試験)
80℃、98%RHで100時間耐湿性試験を行った後、続いて前記耐候性試験を行い評価として、前記の黄変度及び表面状態(外観)観察を行った。
【0122】
2〜6、比較例1、2
1と同様にして、表2に示す基材上に所定の熱線遮蔽剤を含有する熱線遮蔽層を形成し、さらにその上に所定の紫外線遮蔽剤を含有する紫外線遮蔽層を形成し、積層体を作製した。1と同様にして評価を行った。それぞれの評価結果を表2に示す。
【0123】

離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの処理面側に合成例1で得られた紫外線遮蔽層用アクリル樹脂100部に、硬化剤Aを7部、レベリング剤(「BYK300」ビッグケミー社製)0.01部を加えてよく撹拌し、所定粘度となるよう希釈し、膜厚が10ミクロンとなるように塗工し、風乾後120℃で30分間乾燥させた。次いで、熱線遮蔽用酸化亜鉛微粒子分散体組成物を膜厚が20ミクロンとなるように塗布して熱線遮蔽層を紫外線遮蔽層上に形成し、熱転写用紫外線及び熱線遮蔽積層体を得た。
【0124】
得られた熱転写用紫外線及び熱線遮蔽積層体をポリカーボネート樹脂板上に乗せ、その上から熱プレス機で100kg/cm2 の圧力で120℃×5分間プレスし、冷却後PETフィルムを剥がし紫外線及び熱線遮蔽積層をポリカーボネート樹脂板上に形成した。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】

合成例7で得られたアクリル樹脂50部に有機系熱線吸収物質(オクタフルオロ−オクタキスアニリノオキシバナジウムフタロシアニン)0.1部、プロピレングリコールモノメチルエーテル20部を添加・混合し有機系熱線遮蔽物質含有組成物を得た。
【0126】
一方、ポリカーボネート樹脂板表面をエチルアルコールで洗浄後、熱線遮蔽層用酸化亜鉛微粒子分散体組成を塗膜厚さが20ミクロンとなるようにポリカーボネート樹脂板表面に塗工し、風乾後80℃で30分間乾燥させて無機系熱線遮蔽層を形成した。
【0127】
次いで、前記作製した有機系熱線遮蔽物質含有組成物を塗膜厚さが10ミクロンとなるように無機系熱線遮蔽層の表面に塗工し、風乾後80℃で30分間乾燥させて有機系熱線遮蔽層を形成した。
【0128】
さらに合成例1で得られた紫外線遮蔽層用アクリル樹脂100部に硬化剤Aを7部、レベリング剤(ビッグケミー社製「BYK300」)0.01部を加えてよく撹拌し、所定の粘度となるようにアクリル樹脂溶液を調整し、上記有機系熱線遮蔽層上に塗膜厚さが15ミクロンとなるように形成し、目的の積層体を得た。この積層体を前記評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
添加型紫外線吸収剤:「MARK LA31」(アデカ・アーガス化学社製)
硬化剤A :イソシアネート(「スミジュールN−3200」(住友バイエルウレタン社製))
硬化剤B :ブロックイソシアネート(「デュラネートMF−K60X」(旭化成工業社製))
硬化剤C :メラミン(「サイメル212」三井サイナミッド社製)
UV硬化1:表面をエチルアルコールで洗浄された基材表面に、ラジカル光開始剤(「ダロキュアー1173」チバガイギー社製)が1部添加され所定粘度に調整された紫外線遮蔽性重合体溶液を塗工した後、80℃で30分間熱風乾燥させ、5m/minの速度で移動するコンベアーに載置し、高圧水銀灯ランプ(120W/cm)を用いて20cmの高さから紫外線照射を2回行った。
【0131】
【発明の効果】
本願請求項1の発明に係る積層体では、紫外線遮蔽機能と熱線遮蔽機能とを別々の層に分担させ、同時に紫外線遮蔽層を熱線遮蔽層よりも光入射側に設けることにより優れた紫外線遮蔽性能と熱線遮蔽性能を維持しながら飛躍的に耐候性を向上させることができた。また特定の紫外線吸収性単量体を含む単量体成分を重合させた重合体を紫外線遮蔽層に含有させることにより、従来問題となっていた紫外線吸収剤のブリードアウトを有効に防止できた。
【0132】
本願請求項4の発明に係る積層体では、使用の際に保護材を積層体から剥がすので、保存・運搬時などにおける外部環境から積層体の実体上の表面を保護することでき、また請求項1の積層体と同様の効果を奏させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願請求項1の発明に係る積層体の層構成を示す概念図である。
【図2】本願請求項4の発明に係る積層体の層構成を示す概念図である。
【符号の説明】
1 紫外線遮蔽層
2 熱線遮蔽層
3 透明基材
4 保護材
5 光
6 被接着物

Claims (7)

  1. 透明基材、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層を備えた積層体であって、該紫外線遮蔽層は該熱線遮蔽層よりも光入射側に形成され、該紫外線遮蔽層の重合体成分は、下記一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収性単量体から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(3)及び(4)で表される紫外線安定性単量体から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(5)で表される不飽和単量体とを含む単量体成分を重合してなる、数平均分子量が5000以上9000未満の重合体のみであり、該熱線遮蔽層は熱線遮蔽物質を含有していることを特徴とする紫外線及び熱線遮蔽性積層体。
    (式中、R1は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R2は低級アルキレン基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン、炭素数1〜8の炭化水素基、低級アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
    (式中、R4は低級アルキレン基を表し、R5は水素原子またはメチル基を表す。)
    (式中、R6は水素原子またはシアノ基を表し、R7、R8はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R9は水素原子または炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
    (式中、R6は水素原子またはシアノ基を表し、R7、R8、R7'、R8'はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
    (式中、R10は水素原子またはメチル基を表し、Zは炭素数が4以上の炭化水素基を表す。)
  2. 積層体の少なくとも片面側の表面に表面保護層が更に形成された請求項1記載の紫外線及び熱線遮蔽性積層体。
  3. 積層体の最外層中に有機ポリマー複合無機微粒子が含有されている請求項1又は2記載の紫外線及び熱線遮蔽性積層体。
  4. 保護材、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層を備えた積層体であって、該紫外線遮蔽層と該熱線遮蔽層とが直接又は間接に密着し、該保護材が積層体の片面側の最外層として剥離可能に形成されており、該紫外線遮蔽層の重合体成分は、前記一般式(1)及び(2)で表される紫外線吸収性単量体から選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(3)及び(4)で表される紫外線安定性単量体から選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(5)で表される不飽和単量体とを含む単量体成分を重合してなる、数平均分子量が5000以上9000未満の重合体のみであり、該熱線遮蔽層は熱線遮蔽物質を含有していることを特徴とする紫外線及び熱線遮蔽性積層体。
  5. 保護材に内接して表面保護層が更に形成された請求項4記載の紫外線及び熱線遮蔽性積層体。
  6. 保護材を剥離した後の積層体の最外層中に有機ポリマー複合無機微粒子が含有されている請求項4又は5記載の紫外線及び熱線遮蔽性積層体。
  7. 該熱線遮蔽物質として無機系熱線遮蔽剤及び/又は有機系熱線遮蔽剤を用いる請求項1乃至6のいずれかに記載の紫外線及び熱線遮蔽性積層体。
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