以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置の一例の概要について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を示す概略構成図、図2は同装置の画像形成部及び副走査搬送部の平面説明図、図3は同じく側面説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1の内部(筺体内)に、用紙を搬送しながら画像を形成するための画像形成部(手段)2及び用紙を搬送するための副走査搬送部(手段)3等を有し、装置本体1の底部に設けた給紙カセットを含む給紙部(手段)4から用紙5を1枚ずつ給紙して、副走査搬送部3によって用紙5を画像形成部2に対向する位置で搬送しながら、画像形成部2によって用紙5に液滴を吐出して所要の画像を形成(記録)した後、片面印刷の場合には排紙搬送部(手段)7を通じて装置本体1の上面に形成した排紙トレイ8上に用紙5を排紙し、両面印刷の場合には、排紙搬送部7の途中から装置本体1の底部に備えた両面ユニット10に送り込み、スイッチバック搬送を行って、再度、副走査搬送部3に給紙して両面に画像を形成した後排紙トレイ8上に排紙する。
また、この画像形成装置は、画像形成部2で形成する画像データ(印刷データ)の入力系として、装置本体1の上部で排紙トレイ8の上方には画像を読み取るための画像読取部(スキャナ部)11を備えている。この画像読取部11は、照明光源13とミラー14とを含む走査光学系15と、ミラー16、17を含む走査光学系18とが移動して、コンタクトガラス12上に載置された原稿の画像の読み取りを行い、走査された原稿画像がレンズ19の後方に配置した画像読み取り素子20で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化され画像処理され、画像処理した印刷データを印刷することができる。
さらに、この画像形成装置は、画像形成部2で形成する画像データ(印刷データ)の入力系として、外部のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットワークを介して受信可能であり、受信した印刷データを処理して印刷することができる。
ここで、この画像形成装置の画像形成部2は、図2にも示すように、ガイドロッド21及びガイドレール22でキャリッジ23を片持ちで主走査方向に移動可能に保持し、主走査モータ27で駆動プーリ28Aと従動プーリ28B間に架け渡したタイミングベルト29を介して主走査方向に移動走査する。
そして、このキャリッジ23上に、それぞれの色の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド24を搭載し、キャリッジ23を主走査方向に移動させ、副走査搬送部3によって用紙5を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド24から液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。なお、ライン型ヘッドを用いることもできる。
記録ヘッド24は、それぞれブラック(Bk)インクを吐出する2個の液滴吐出ヘッド24k1、24k2と、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクを吐出するそれぞれ1個の液滴吐出ヘッド24c、24m、24yの計5個の液滴吐出ヘッド(以下、色を区別しないときは「記録ヘッド24」という。)で構成され、キャリッジ23に搭載した各サブタンク25からそれぞれ各色のインクが供給される。
一方、図1に示すように、装置本体1の前面からカートリッジ装着部に、ブラック(Bk)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した記録液カートリッジである各色のインクカートリッジ26を着脱自在に装着でき、各色のインクカートリッジ26から各色のサブタンク25にインクを供給する。なお、ブラックインクは1つのインクカートリッジ26から2つのサブタンク25に供給する構成としている。
なお、記録ヘッド24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のものなどを用いることができる。
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、図2に示すように、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復装置121を配置している。この維持回復装置121は、5個の記録ヘッド24の各ノズル面をキャピングするための5個の保湿用キャップ122k2、122k1、122c、122m、122y(色を区別しないときは「保湿用キャップ122」という。)と、1個の吸引用キャップ123と、記録ヘッド24のノズル面をワイピングするためのワイパーブレード124と、記録(画像形成)に寄与しない液滴の吐出(空吐出)を行うための空吐出受け部材125などを備えている。
さらに、キャリッジ23の走査方向他方側の非印字領域には、図2に示すように、5個の記録ヘッド24から記録(画像形成)に寄与しない液滴の吐出(空吐出)を行うための空吐出受け部材126を備えている。この空吐出受け部材126には、記録ヘッド24に対応して5個の開口127k2、127k1、127c、127m、127y(色を区別しないときは「開口127」という。)を形成している。
副走査搬送部3は、図3にも示すように、下方から給紙された用紙5を略90度搬送方向を転換させて画像形成部2に対向させて搬送するための、駆動ローラである搬送ローラ32とテンションローラである従動ローラ33間に架け渡した無端状の搬送ベルト31と、この搬送ベルト31の表面を帯電させるために高圧電源から交番電圧である高電圧が印加される帯電手段である帯電ローラ34と、搬送ベルト31を画像形成部2の対向する領域でガイドするガイド部材35と、用紙5を搬送ローラ32に対向する位置で搬送ベルト31に押し付ける2個の押さえコロ(加圧コロ)36と、画像形成部2によって画像が形成された用紙5の上面側を押える2個の拍車ローラ37と、画像が形成された用紙5を搬送ベルト31から分離するための分離爪38とを備えている。
この副走査搬送部3の搬送ベルト31は、DCブラシレスモータを用いた副走査モータ131によって、タイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ32が回転されることで、図2の用紙搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト31は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)との2層構造としているが、これに限るものではなく、1層構造あるいは3層以上の構造でも良い。
また、従動ローラ33と帯電ローラ34との間に、搬送ベルト31の表面に付着した紙粉等を除去するためのクリーニング手段(ここではマイラを用いている。)135と、搬送ベルト31表面の電荷を除去するための除電ブラシ136とを備えている。
また、従動ローラ33と帯電ローラ34との間に、搬送ベルト31の表面に付着した紙粉等を除去するためのクリーニング手段(ここではマイラを用いている。)135と、搬送ベルト31表面の電荷を除去するための除電ブラシ136とを備えている。
さらに、搬送ローラ32の軸32aには高分解能のコードホール137を取り付け、このコードホイール137に形成した図示しないスリットを検出する透過型フォトセンサ138を設けて、これらのコードホイール137とフォトセンサ138によってロータリエンコーダを構成している。
また、搬送ベルト31の裏面側の表面(搬送ローラ32外周面と接する面)には、図示しないリニアスケールを形成し、このリニアスケールを読み取るための反射型フォトセンサ139を設けて、これらのリニアスケールとフォトセンサ139によってリニアエンコーダを構成している。なお、リニアスケールは、搬送ベルト31の裏面側の表面にアルミを蒸着した後レーザ光で飛ばして縞模様に形成したものを用いることができる。また、このリニアスケールはガイド部材35によって反射型フォトセンサ139による読取りが邪魔されない部位に設けられる。さらに、センサ139に隣接して、搬送ベルト31の裏面側の表面に設けたリニアスケールのつなぎ目を検知するためのつなぎ目センサ140を設けている。
給紙部4は、装置本体1の前面側から抜き差し可能で、多数枚の用紙5を積載して収納する給紙カセット41と、給紙カセット41内の用紙5を1枚ずつ分離して送り出すための給紙コロ42及びフリクションパッド43と、給紙された用紙5をレジストするレジストローラ44を備えている。また、この給紙部4は、多数枚の用紙5を積載して収容するための手差しトレイ46及び手差しトレイ46から1枚ずつ用紙5を給紙するための手差しコロ47と、装置本体1の下側にオプションで装着される給紙カセットや後述する両面ユニット10から給紙される用紙5を搬送するための搬送コロ48を備えている。給紙コロ42、レジストローラ44、手差しコロ47、搬送コロ48などの副走査搬送部3へ用紙5を給送するための部材は図示しない電磁クラッチを介してHB型ステッピングモータからなる給紙モータ(駆動手段)49によって回転駆動される。
排紙搬送部7は、副走査搬送部3の分離爪38で分離された用紙5を搬送する3個の搬送ローラ71a、71b、71c(区別しないときは「搬送ローラ71」という。)及びこれに対向する拍車72a、72b、72c(同じく「拍車72」という。)と、排紙ローラ71及び拍車72間で搬送される用紙5をガイドする下ガイド部73及び上ガイド部74と、下ガイド部73及び上ガイド部74の間から送り出される用紙5を、第1の搬送経路である反転排紙経路81を通じて反転してフェイスダウンで排紙トレイ8へ送り出すための反転ローラ対77及び反転排紙ローラ対78とを備えている。なお、下ガイド部73及び上ガイド部74の間で用紙5を搬送する搬送路を搬送路70という。
なお、搬送路70の出口側には、排紙トレイ8に反転排紙するための第1排紙経路81、後述するストレート排紙トレイ181に排紙するための第2排紙経路82及び両面ユニット10のいずれかに対する搬送経路に切り替えるための分岐機構60を設けている。
両面ユニット10は、送り込まれる用紙5を装置本体1の側面部から受け入れて下方に搬送する垂直両面搬送路90cを構成した垂直搬送部101aと、垂直両面搬送路90cに続いて水平方向に搬送する水平取り込み搬送路90a及びスイッチバック搬送路90bを構成した水平搬送部101bとを一体に有している。
垂直両面搬送路90cには送り込まれた用紙5を下方に搬送する両面入口ローラ対91及び水平取り込み搬送路90aに送り出す搬送ローラ対92を備え、水平取り込み搬送路90aには5つの両面搬送ローラ対93を備え、スイッチバック搬送路90bには取り込み搬送路90aから送られる用紙5を反転して再給紙するためのリバースローラからなる両面出口ローラ94及び3個の両面搬送ローラ対95を備えている。
また、取り込み搬送路90aからスイッチバック搬送路90bへの用紙5の搬送経路とスイッチバック搬送路90bから搬送ローラ対48への再給紙のための搬送経路とを切り替える分岐板96を揺動可能に設けている。分岐板96は、図1の実線図示のスイッチバック側位置と破線図示の再給紙側位置との間で揺動可能である。
この両面ユニット10から送り出された用紙5は、前述した搬送コロ48に送り込まれてレジストローラ44に送られる。
そして、上述した給紙部4の給紙カセット41、手差し給紙トレイ46、両面ユニット10から給紙された用紙5がレジストローラ44で搬送されるとき、副走査搬送部3の搬送ローラ32及び押えコロ36間とレジストローラ44との間で、用紙5にループ(弛み)を形成して用紙5に対するバックテンションなどを防止するため、図1に示すように、開閉ガイド板110を揺動可能に設けている。
この開閉ガイド板110は、レジストローラ44から用紙5を副走査搬送部3に送り出すときには、図示の状態から矢示方向に揺動して用紙5を案内し、用紙5が副走査搬送部3の達したタイミングで図示の状態に復帰してループを形成可能な状態にする。
さらに、この画像形成装置においては、1枚手差し給紙を行なうために、図1にも示すように、装置本体1の一側部側に、1枚手差し給紙トレイ141を装置本体1に対して開閉可能(開倒可能)に設け、1枚手差しを行なうときには1枚手差し給紙トレイ141を仮想線図示の位置に開倒する。この1枚手差し給紙トレイ141からの手差し給紙される用紙5は、開閉ガイド板110の上面でガイドされてそのまま副走査搬送部3の搬送ローラ32と押さえコロ36との間に直線的に差し込むことができる。
一方、画像形成が行われた用紙5をフェイスアップでストレートに排紙するため、装置本体1の他側部側にストレート排紙トレイ181を開閉可能(開倒可能)に設けている。このストレート排紙トレイ181を開く(開倒)ことで、排紙搬送部7に下ガイド部73及び上ガイド部74から送り出される用紙5を直線的にストレート排紙トレイ181に排紙するための第2の排紙経路であるストレート排紙経路82が形成される。
これにより、例えばOHP、厚手の用紙など曲線搬送が難しい用紙を使用するときには1枚手差し給紙トレイ141から1枚手差し給紙を行いストレート排紙トレイ181まで直線的に用紙5を搬送することができるようになる。勿論、普通紙などの通常の用紙であっても1枚手差し給紙トレイ141から給紙し、ストレート排紙トレイ181に直線的に排紙することはできる。
ここで、図4を参照して各種センサの配置について説明すると、用紙5を検知するために、レジストローラ44の上流側には搬送レジストセンサ201を、搬送ローラ32と上流側の押えコロ36との手前側には印字部入口センサ202を、下流側の押えコロ36の下流側(画像形成部2の入口)には画像書き出し位置をレジストするための画像レジストセンサ203を、画像形成部2の出口(搬送ローラ71aの手前側)には印字部出口センサ204を、分岐機構60の部分には分岐センサ205を、排紙ローラ対78の手前側には排紙センサ206をそれぞれ配置している。また、1枚手差し給紙トレイ141上に用紙5がセットされたことを検知するための手差し紙有無センサ207を配置している。
また、1枚手差しトレイ141の開閉を検知するための手差しトレイ開検知センサ211を、ストレート排紙トレイ181の開閉を検知するための排紙トレイ開検知センサ212をそれぞれ配置している。なお、図4では図示しないが、両面ユニット10の水平取り込み搬送路90aの入口側には両面入口センサを、水平取り込み搬送路90aの出口側とスイッチバック搬送路90bの入口側との間には反転センサをそれぞれ配置している。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5のブロック図を参照して説明する。
この制御部300は、CPU301と、CPU301が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM302と、画像データ等を一時格納するRAM303と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)304と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC305とを含む、この装置全体の制御を司る主制御部310を備えている。
また、この制御部300は、ホスト側と主制御部310との間に介在して、データ、信号の送受を行うための外部I/F311と、記録ヘッド24を駆動制御するためのヘッドドライバを含むヘッド駆動制御部312と、キャリッジ23を移動走査する主走査モータ27を駆動するための主走査駆動部(モータドライバ)313と、ロータリエンコーダ138A及びリニアエンコーダ139Aの検出結果等に基づいて副走査モータ131を駆動するための副走査駆動部314と、給紙モータ49を駆動するための給紙駆動部315と、排紙部7の各ローラを駆動する排紙モータ79を駆動するための排紙駆動部316と、両面ユニット10の各ローラを駆動する両面再給紙モータ99を駆動するための両面駆動部317と、維持回復機構121を駆動する維持回復モータ129を駆動するための回復系駆動部318と、帯電ベルト34にACバイアスを供給するACバイアス供給部319とを備えている。
さらに、制御部300は、前述した開閉ガイド板ソレノイド113、シャッタソレノイド150を含む各種のソレノイド(SOL)類321を駆動するソレノイド類駆動部(ドライバ)322と、給紙関係の電磁クラック類323などを駆動するクラッチ駆動部324と、画像読取部11を制御するスキャナ制御部325とを備えている。
また、主制御部に310は、前述した用紙を検知する各種センサ201〜206、1枚手差し給紙トレイ141の開閉を検知するセンサ211、ストレート排紙トレイ181の開閉を検知するセンサ212、及びその他のセンサを含むセンサ類326からの各種検知信号を入力し、装置本体1に設けたテンキー、プリントスタートキーなどの各種キー及び各種表示器を含む操作/表示部327との間で必要なキー入力の取り込み、表示情報の出力を行なう。
このように構成した画像形成装置における画像形成動作について簡単に説明すると、ACバイアス供給部319から帯電ローラ34に交番電圧である正負極の矩形波の高電圧を印加することによって、帯電ローラ34は搬送ベルト31の絶縁層(表層)に当接しているので、搬送ベルト31の表層には、正と負の電荷が搬送ベルト31の搬送方向に対して交互に帯状に印加され、搬送ベルト31上に所定の帯電幅で帯電が行われて不平等電界が生成される。
そこで、給紙部4、手差し給紙部46、両面ユニット10、1枚手差し給紙トレイ141などから用紙5が給紙されて搬送ローラ32と押えコロ36との間の、正負極の電荷が形成されることによって不平等電界が発生している搬送ベルト31上へと送り込まれると、用紙5は電界の向きにならって瞬時に分極し、静電吸着力で搬送ベルト31上に吸着され、搬送ベルト31の移動に伴って搬送される。
そして、この搬送ベルト31で用紙5を間歇的に搬送しながら、用紙5上に印刷データに応じて記録ヘッド24から記録液の液滴を吐出して画像を形成(印刷)し、画像形成が行なわれた用紙5の先端側を分離爪38で搬送ベルト31から分離して排紙搬送部7によって、適宜、排紙トレイ8、ストレート排紙トレイ181に排紙し、あるいは両面ユニット10に送り込んで他面の画像を形成を行なった後排紙する。
そこで、この画像形成装置における副走査モータの駆動制御について図6及び図7をも参照して説明する。なお、図6は副走査の駆動制御に係わる部分を機能的に説明するブロック説明図、図7は副走査の説明に供するエンコーダ出力の説明図である。
まず、副走査搬送部3の搬送ベルト31に形成したリニアスケールとセンサ139で構成されるリニアエンコーダ139Aと、搬送ローラ32の軸32aに設けたコードホイール137とセンサ138で構成されるロータリエンコーダ138Aの各出力信号は、エンコーダ信号処理部403に与えられ、このエンコーダ信号処理部403で速度及び位置情報に変換される。そして得られた速度及び位置情報を信号処理合成部404にて合成処理した後、比較演算部405に与える。
一方、この比較演算部405には速度・位置プロファイル格納部406に格納されている速度・位置プロファイルの情報が与えられており、比較演算部405はこれらの信号処理合成部404から与えられる速度及び位置情報(の合成情報)と速度・位置プロファイル格納部406に格納されている速度・位置プロファイルの情報とを比較して、偏差を演算する。
そして、この比較演算部405で得られた偏差に基づいてPID制御演算部407はPID演算を行ってPWM信号を生成する。つまり、PID制御演算部407は、比較演算部405からの偏差に対してPID(比例、積分、微分)制御を行って制御値を演算する。ここでは、副走査モータ131をPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御で駆動するものとして、PID制御演算部407は偏差に対してPID制御を行ってPWMのデューティ比を求め、このPWMのデューティ比をモータドライバ408に与えてPWM制御で副走査モータ131を駆動させることにより、搬送ベルト31を目標とする速度で目標とする位置に駆動するようにしている。
このリニアエンコーダ出力とロータリエンコーダ出力に基づく副走査モータの駆動制御の一例の具体例について図7を参照して説明する。
搬送ベルト31が搬送ローラ32の回転によって移動すると、リニアエンコーダ139Aからは図7(a)に示すようなリニアエンコーダ出力が出力され、また、ロータリエンコーダ138Aからは図7(b)に示すようなロータリエンコーダ出力が出力される。ここでは、リニアエンコーダ139Aとしては100LPI以上の分解能を有するものを、ロータリエンコーダ138Aとしては300LPI以上、4800CR以上のものを使用することが好ましい。
この場合、リニアエンコーダ139Aの分解能は搬送ベルト31の送り量をそのまま表わす。ここでは、リニアエンコーダ139Aの分解能は150LPIとしているので、1分解能当りのベルト送り量は169.3μmとなる。
一方、ロータリエンコーダ138Aの1分解能当たりの搬送ベルト31の送り量がいくらになるかは、1周当りのパルス数と搬送ローラ32の径及び搬送ベルト31の厚みで決定されることになる。ロータリエンコーダ138Aを構成するコードホイール137の分解能が大きく(スリットのピッチが細かく)、ホイール137の外径が大きいほど1周当りのパルス数は多くなる。また、搬送ローラ32の径が小さいほどロータリエンコーダ1パルス当りのベルト送り量は小さくなる。
ここでは、コードホイール137の分解能を600LPIとして、これを逓倍処理(この例では4逓倍)して2400LPIとし、コードホイール137と搬送ローラ32の径(ベルトの厚み込み)の関係を4:1にしているので、搬送ベルト31上に換算したロータリエンコーダ138Aの分解能は4倍され、2400LPI×4=9600LPIとなり、1分解能当たりのベルト送り量は約2.65μmとなる。
そこで、ロータリエンコーダ出力でNパルス分、搬送ベルト31を移動させるとする。このとき、図7に示すリニアエンコーダ出力1パルスの距離L1とロータリエンコーダ1パルスの距離L2の関係は、L1=L2×64と仮定すると、ロータリエンコーダ換算でのNパルスの移動量は、リニアエンコーダのパルス数をn1、ロータリエンコーダの端数をn2(=0〜64)としたとき、次の(1)式で表わされる。
N=64×n1+n2……(1)
これを上記具体例の移動量で表わすと、2.65μm×N=169.3μm×n1+2.65μm×n2となる。例えば、N=1000パルス(移動量2.65mm)としたとき、n1=15、n2=40となる。
なお、(1)式における「64」はL1とL2の比であるから、これを相関係数としてaで表わすと、(1)式は、次の(2)式で表わすことができる。
N=a・n1+n2……(2)
このように、ある移動量だけ搬送ベルト31を移動させるためのリニアエンコーダ139A及びロータリエンコーダ138Aのパルス数n1、n2を求めるには、まずパルス数N(1000パルスとする。)をL1とL2の相関係数a(ここでは、9600LPI/150LPI=64とする。)で除算し、その商(ここでは、15.625となる。)の整数部(15)をリニアエンコーダ139Aのパルス数n1とする。次に、(2)式より、n2=N−a・n1=1000−64×15=40を求める。
つまり、移動量の算出にあたり、先に分解能の低いエンコーダのパルス数を決定し(移動量を越えない値に)、端数(残りの移動量)に相当する分解能の高いエンコーダのパルス数n2を決定する。例えば、移動量5.3mmのとき、N=2000パルスであるから、2000/64の商の整数部「31」をリニアエンコーダ139Aのパルス数n1とし、n2=2000−64×31=16を求める。
ここでは、移動量の指定はロータリエンコーダ138Aのパルス数Nで行っている。ただし、実際にロータリエンコーダ138Aの出力を用いるのは端数(0〜63)のみであり、移動量の大部分はリニアエンコーダ139Aの出力を元に制御する。上記の例では、ロータリエンコーダ138Aの1パルスの距離L2はリニアエンコーダ139Aの1パルスの距離L1の1/64であるから、実際の搬送ベルト31の移動量に占めるロータリエンコーダの割合は小さく、部品精度の影響を低減することができる。
つまり、ロータリエンコーダの出力だけで搬送ベルトの移動量を制御する場合には、搬送ローラ、搬送ベルト、用紙という段階を経ることになるので、搬送ローラ自体の部品精度や温度などによるローラ径の変動、搬送ベルト自体の部品精度や温度などによるベルトの伸縮などの誤差要因が重畳されることになり、ロータリエンコーダの出力と実際の用紙の移動量との間の誤差が大きくなるおそれがある。
これに対して、搬送ベルトの移動量を直接検出するリニアエンコーダを備えることで、用紙の実際の移動量をより直接的に検出することが可能になり、しかも、リニアエンコーダ出力だけでは分解能が十分得られないことから、これにロータリエンコーダ出力を組み合わせることによって、より高精度に移動量制御を行うことができるようになる。
次に、給紙部4の給紙モータ49の駆動制御について図8を参照して説明する。
給紙モータ49は前述したようにHB型ステッピングモータで構成しているので、速度プロファイル格納部416に格納した速度プロファイルに基づいて主制御部310からモータドライバ418を駆動制御して給紙モータ49に所要の駆動パルスを与えることによって所定の方向に所要の回転量で駆動する。
そこで、副走査搬送部3のDCブラシレスモータで構成した副走査モータ131と給紙部4のHB型ステッピングモータで構成した給紙モータ49の同期駆動制御について図9を参照して説明する。
図9には速度プロファイル格納部406に格納した副走査モータ131の速度プロファイルを実線で、プロファイル格納部416に格納した給紙モータ49の速度プロファイルを破線でそれぞれ示している。なお、副走査モータ131で送る送り量と給紙モータ49で送る送り量とは同じとする。
先ず、加速時には、同図に示すように、DCブラシレスモータで構成した副走査モータ131は時点T1から時点T2までの間に加速度υaで立ち上げる一方、ステッピングモータで構成した給紙モータ49は時点T1からT3までの間に加速度υb(υb<υa)で立ち上げる。つまり、副走査モータ131の加速度テーブルと給紙モータ49の加速度テーブルを異ならせて加速時の加速度を異ならせ、また、副走査モータ131の加速度よりも給紙モータ49の加速度を遅らせている(加速度を小さくしている。)。
ここで、ステッピングモータ(給紙モータ49)を早く立ち上げようとすると、加速トルクが大きくなって出力トルクの大きいコスト的に不利なステッピングモータを用いるか、メカ負荷を低減しなければならずに構成上に不利になる。そこで、副走査モータ131の加速度テーブルと給紙モータ49の加速度テーブルを合わせる、つまり、DCモータ(副走査モータ131)の立ち上げをステッピングモータ(給紙モータ49)に合わせて遅らせると、本来早く立ち上げることができるDCモータの加速が遅れることになって、却って、用紙の送りに時間がかかり記録速度(記録枚数/単位時間当り)が遅くなることになる。
これに対して、副走査モータ131の加速度テーブルと給紙モータ49の加速度テーブルを異ならせて加速時の加速度を異ならせることによって、DCモータで構成した副走査モータ131は本来可能な早い立ち上げを行うことができ、また、低出力トルクのステッピングモータで構成した給紙モータ49でも出力トルクに見合った立ち上げを行なうことができるようになる。
これによって、各駆動源の特性に応じた加速度で立ち上げることができて、コスト的に高くなる駆動源の使用や記録速度の低下を伴わないで同期制御を行なうことができる。
次に、減速時には、同図に示すように、DCブラシレスモータで構成した副走査モータ131は時点T4から時点T5までの間に減速度υc1で立ち下げ、時点T5から時点T6までのその状態を保持し、時点T6から時点T7までの間に減速度υc2(υc2=υc1でも良い。)で立ち下げて時点T7で停止させる。一方、ステッピングモータで構成した給紙モータ49は時点T5(時点T5以外の時点でも良い。)から時点T6までの間に加速度υdで立ち下げて時点T6で停止させる。
つまり、搬送ベルト31の送り量精度、即ち副走査モータ131の送り量精度は画質に大きく影響するために複数段で時間をかけて停止させることによって高精度に停止位置制御を行なう。これに対して、ステッピングモータ(給紙モータ49)にあっては、このようなスルーダウンの駆動制御を行なうことは困難であり、しかも、ステッピングモータを超低速で駆動させると騒音が大きくなり、脱調を生じるおそれもあるので、単純なダウン制御を行なうようにしている。
このように、副走査モータ131の減速度(全体的な)と給紙モータ49の減速度を異ならせることによって、用紙を高精度に送りながら、しかもステッピングモータの駆動制御も簡単に騒音を発生させることなく行なうことができる。
ここで、副走査モータ131による用紙送り量と給紙モータ49によるレジストローラ44からの用紙繰り出し量は同じになるように設定するので、搬送ローラ32とレジストローラ44間において用紙のループを形成した場合、立ち上げ時には先に立ち上がる副走査モータ131による送りによってループ量はマイナスになり、立ち下げ時には先に立ち上がる給紙モータ49による送り出しによってループ量はプラスになることになる。
そこで、これらの発生するループ量のマイナス分とプラス分が略同じになるように加速度テーブルを決めることによって、搬送ローラ32とレジストローラ44間における用紙のループたまり量を低減することができる。
例えば、図10に示すように、初期ループ位置がループLP0にあるとき、加速時にループLP1のようにループ量が減少して、このままのループ量で送りが行われ、減速時にはループ量が増加してループLP0に戻るようにすることで、最大ループ量をループLP0の位置に維持することができる。
言い換えれば、前述したように、副走査モータ131の加速度よりも給紙モータ49の加速度を遅らせることによって、無駄なループ溜まりを設ける必要がなく省スペース化を図れることになる。
なお、ステッピングモータの出力トルクが十分であるような場合には、図11に示すように、副走査モータ131の加速度と給紙モータ49の加速度とを同じにして、副走査モータ131の立ち上げタイミングに対して給紙モータ49の立ち上げタイミング(ここでは時点T11)を遅らせることによっても、上述したループ量の減少を伴う送り制御は行なうことができる。
ここで、初期ループの形成について図12をも参照して説明する。
まず、給紙クラッチをオン状態にし、給紙モータ49を所定の送り量で駆動することにより、給紙カセット41に収容された用紙5を1枚ずつ給紙し、給紙モータ48で回転駆動されているレジストローラ44によって更に搬送し、副走査搬送部3の搬送ベルト31と押さえコロ36とのニップ部に用紙5の先端が達するまで、用紙5を搬送する。
このとき、副走査モータ131を停止した状態にしておくことで、搬送ベルト31と押さえコロ36とのニップ部に先端が当接した用紙5は、レジストローラ44による搬送力を受けて更に搬送されるので、撓み(外方に膨らみ)、前述した図10に示す初期のループLP0が形成される。
そして、用紙5の送り量が所定量になったとき、つまり、用紙5に搬送路中でループLP0が形成される送り量だけ用紙5を給紙搬送したときに、副走査モータ131の駆動を開始して、以後は、給紙モータ49を副走査モータ131に同期させて、前述したような速度プロファイルに従って駆動制御する。
また、上記実施形態においては、本発明をマルチファンクション(MFP)の画像形成装置に適用した例で説明したが、プリンタやファクシミリ装置などの他の画像形成装置にも同様に適用することができる。また、インク以外の記録液を使用する画像形成装置にも適用することができる。