JP4324340B2 - レーザ加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばIC等の電子部品、液晶またはPDPのガラス基板等の工業製品へ成膜された薄膜材料の加工に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レーザ加工装置は図8あるいは図9のように構成していた。図8に示すレーザ加工装置において、1はレーザ光源、2はレーザ光源1から出射されたレーザ光、31はレーザ光2を走査させるガルバノ式スキャナ、32は光学レンズある。4は、ガラス基板42上に薄膜41が形成された被加工物を示している。5は被加工物4を支持している支持台である。
【0003】
動作について説明する。レーザ光源1から出射したレーザ光2は、光学レンズ32により薄膜41上に集光される。レーザ光2により、照射された部分の薄膜41は物理変化、例えば溶融、気化、消失、発泡、隆起、変色、脱色等を起こして除去される。この状態でガルバノ式スキャナ31によって、レーザ光2の照射位置を走査させることにより、薄膜41には加工溝10が形成される。
【0004】
また、図9に示すレーザ加工装置において、1はレーザ光源、2はレーザ光源1から出射されたレーザ光、3は集光手段、4は被加工物で基板42上に薄膜41が形成されている。52はX−Yステージ等からなる走査手段である。
【0005】
レーザ光源1から出射したレーザ光2は、集光手段3により被加工物状の薄膜41上に集光される。レーザ光2により、薄膜41は物理変化例えば、表面あるいは表面層の剥離、溶融、気化、消失、発泡、隆起、変色、脱色等を起こす。この状態で走査手段52によって、レーザ光2の集光位置を走査させることにより、薄膜41には加工溝10が形成される。
【0006】
特に、薄膜41がダイヤモンド状炭素膜である場合について以下に述べる。ダイヤモンド状炭素膜は、耐摩耗性があること、平坦な表面が得られること、各種の金属等と静止摩擦係数、動摩擦係数が小さいこと等から、各種材料の保護や摩擦防止のための被覆膜として注目されている。また、化学的に不活性であることから、通常金属を腐敗してしまうような雰囲気の中での治工具の使用を可能にしている。さらに、良好な絶縁特性が得られることが知られているが、近年これに導電性を持たせる試みが行われている。
【0007】
ところで、これらの応用分野において、成膜されたダイヤモンド状炭素膜を除去する必要が生じる場合がある。例えば、治工具などの機械部品に位置決めや位置だし、あるいは部材の識別用のためにマーカを設けたり、ダイヤモンド状炭素膜の絶縁性、もしくは導電性を利用した回路等を形成する場合には、所定のパターンに加工する必要がある。そこで、従来ダイヤモンド状炭素薄膜を加工する装置として、特開平11−278990号公報の装置があった。この装置においてレーザ光源として波長10μm以下のものを使用している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のレーザ加工装置を用いると、レーザ光により被加工物に発生した熱が照射部周辺へ広がることにより、照射部周辺も物理変化を起こし、形成される加工溝がレーザの照射スポット径より大きくなることがあった。したがって、被加工物に形成するパターンの微細化がおこなえないという問題や、加工溝の幅がレーザ出力、被加工物の材質、厚さ、周囲温度等に影響され、均一幅で加工溝を形成することは難しいという問題があった。
【0009】
また、レーザ光により被加工物に発生した熱が照射部周辺へ広がらない場合でも、レーザの照射スポット径より小さな幅の加工溝は形成できないという、加工精度上に問題があった。
【0010】
さらに、レーザ光の走査手段として、ガルバノ式スキャナを使用した場合、光学系の収差のために、図10のようにスキャニングエリア中心部の照射スポット径91より周辺部の照射スポット径92、93が大きくなってしまう。したがって、スキャニングエリア中心部より周辺部の加工溝の幅が広くなってしまうという、加工精度上に問題点があった。
【0011】
【0012】
そこで、本発明は、レーザ加工する被加工物に均一幅の溝あるいはレーザ光の照射スポット径より小さい溝を形成することができるレーザ加工装置である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため第1のレーザ加工装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を走査させる走査手段と、被加工物を載置する支持台とからなり、前記レーザ光により前記被加工物を加工するレーザ加工装置において、前記支持台は、前記被加工物に加工するパターンと同一形状の溝部を有する被加工物冷却手段からなり、前記被加工物冷却手段の前記溝部の幅が、前記被加工物上に集光した前記レーザ光の照射スポット径と同じかまたは小さい幅であることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、レーザ照射部周辺に広がった熱を被加工物冷却手段で冷却することができるので、被加工物冷却手段の溝部の幅に応じて均一な幅で加工溝が形成できる。
【0016】
上記構成により、レーザの照射スポット径と同じかまたは小さい幅の加工溝が形成できる。また、被加工物に形成される加工溝幅は被加工物冷却手段の溝部の幅によって決定するので、レーザ光の走査手段として、ガルバノ式スキャナを使用した場合でも、スキャニングエリア全域において均一な幅で加工溝が形成できる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する被加工物冷却手段としては、熱抵抗の低いアルミ、銅、鉄等の金属材料に、機械加工またはエッチング等によりパターン加工したもので構成することができる。
【0025】
【実施例】
第1の実施例
本発明の第1の実施例の薄膜加工装置を図1に基づいて説明する。図1において、1はレーザ光源、2はレーザ光源1から出射されたレーザ光、31はレーザ光2を走査させる走査手段であるガルバノ式スキャナ、32は集光手段である集光レンズ、4は被加工物でガラス基板42上に薄膜41が形成されている。51は被加工物冷却手段であり、図2に示すように薄膜41に加工するパターンと同一形状で、かつレーザ光2の照射スポット径と同一幅の溝部11をもつ。図1のように、被加工物4が、ガラス基板42上に形成された薄膜41からなる場合は、ガラス基板側からレーザ光照射するように設置すると、薄膜41側に被加工物冷却手段51を接触させることができる。
【0026】
レーザ光源1としては、半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、He−Cdレーザ、Arレーザ、若しくはエキシマレーザ等の気体レーザ、YAGレーザ、YVO4、YLFレーザ、ガラスレーザ、ファイバレーザ等の固体レーザ、色素レーザの液体レーザ、非線形光学結晶と組み合わせることによって高調波成分の波長のレーザビームを発する高調波レーザ光源を用いることができる。また、レーザ光2は、光ファイバ等で導光させてもよい。走査手段としてX−Yステージを用いることもできるが、走査速度の点でガルバノ式スキャナを用いることが好ましい。
被加工物4としては、ガラス基板のない被加工物4にも適用できる。ただし、以下で説明するようにレーザ光2の照射により被加工物4に発生した熱を被加工物冷却手段51で冷却するためには、薄い被加工物において本発明の効果が期待できる。したがって、特に効果が確認されたガラス基板上に形成した薄膜を例に説明する。
【0027】
動作を説明する。レーザ光源1から出射したレーザ光2は、集光レンズ32により被加工物状の薄膜41上に集光される。レーザ光2により、薄膜41は物理変化(溶融、気化、消失)を起こす。この状態でガルバノ式スキャナ31によって、レーザ光2の集光位置を走査させることにより、薄膜41には加工溝10が形成される。
【0028】
この加工溝10の形成プロセスを図を用いて説明する。図3は従来のレーザ加工装置、図4は本実施例の装置における加工溝10の形成プロセスである。従来のレーザ加工装置を用いると、被加工物の種類によって図3のようにレーザ光2により被加工物に発生した熱81が照射部周辺へ拡散熱82として広がる。この拡散熱82によって、照射部周辺も物理変化を起こし、形成される加工溝10がレーザ光2の照射スポット径より大きくなることがあった。一方、本実施例の装置を用いると、図4のようにレーザ照射部周辺へ広がった拡散熱82は被加工物冷却手段51へと流れ込み、レーザ照射部周辺の薄膜41は冷却され、物理変化を起こす温度に到らない。したがって、本実施例の装置を用いると、薄膜41上に形成された加工溝10がレーザ光2の照射スポット径より大きくなることはない。
【0029】
レーザ光源1として半導体レーザを用いて、ガラス基板上に形成したダイヤモンド状炭素薄膜に対する加工試験をおこなった。レーザの照射スポット径が、50μmとなるように、集光手段を構成した。被加工物冷却手段には、幅50μmの溝部を形成した。被加工物冷却手段51を用いない従来の構成で試験を行ったところ、加工溝の幅は50〜65μmまでバラついた。つぎに、被加工物冷却手段51を用いて試験を行ったところ、50〜52μmの均一な幅で加工溝を形成できた。
【0030】
第2の実施例
本発明の第2の実施例の薄膜加工装置を説明する。第2の実施例の装置が、第1の実施例と異なる点は、被加工物冷却手段51の溝部11の幅をレーザの集光径より小さくした点である。第2の実施例における薄膜41上の加工溝10の形成プロセスを図を用いて説明する。図5は従来のレーザ加工装置、図6は本実施例の装置における加工溝10の形成プロセスである。従来の装置では、図5のようにレーザ光2により薄膜に発生した熱81が、レーザ照射部以外の薄膜に広がらない被加工物であっても、レーザの照射スポット径より小さな加工溝は形成できないという問題があった。一方、本実施例の装置を用いると、図6のようにレーザ照射部に発生した熱81の内、被加工物冷却手段51に接触した部分の熱83は、被加工物冷却手段51へと流れ込み、その部分の薄膜は物理変化を起こす温度に到らない。したがって、レーザの照射スポット径より小さな幅の加工溝を形成することができる。
【0031】
このことを利用して、被加工物冷却手段51の溝部11をスキャニングエリア中心部の照射スポット径より小さく設定すると、ガルバノ式スキャナ使用時の図9のような照射スポット径の不均一性に影響されず、スキャニングエリア全域において均一な幅で被加工物4に加工溝10が形成できる。
【0032】
レーザ光源1として半導体レーザを用いて、ガラス基板上に形成したダイヤモンド状炭素薄膜に対する加工試験をおこなった。レーザの照射スポット径が、50μmとなるように、集光手段を構成した。被加工物冷却手段には、幅30μmの溝部からなる図7のようなパターンを形成した。被加工物冷却手段51を用いない従来の構成で試験を行ったところ、加工溝の幅はエリア中心部で50μm、エリア周辺部で55μmあった。つぎに、被加工物冷却手段51を用いて試験を行ったところ、エリア全域にわたって30μmの均一な幅で加工溝を形成できた。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のレーザ加工装置によれば、レーザ照射部周辺に広がった熱を被加工物冷却手段で冷却することができるので、被加工物冷却手段の溝部の幅に応じて均一な幅で加工溝が形成できる。
【0049】
また、本発明のレーザ加工装置によれば、前記被加工物冷却手段の前記溝部の幅が、前記被加工物上に集光した前記レーザ光の照射スポット径より小さくしたことにより、上記構成により、レーザの照射スポット径より小さな幅の加工溝が形成できる。また、被加工物に形成される加工溝幅は被加工物冷却手段の溝部の幅によって決定するので、レーザ光の走査手段として、ガルバノ式スキャナを使用した場合でも、スキャニングエリア全域において均一な幅で加工溝が形成できる。
【0050】
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例のレーザ加工装置の構成を示す概略構成図
【図2】 本発明の第1の実施例の被加工物冷却手段を示す概略構成図
【図3】 従来のレーザ加工装置における加工溝の形成プロセスを示す概略構成図
【図4】 本発明の第1の実施例のレーザ加工装置における加工溝の形成プロセスを示す概略構成図
【図5】 従来のレーザ加工装置における加工溝の形成プロセスを示す概略構成図
【図6】 本発明の第2の実施例のレーザ加工装置における加工溝の形成プロセスを示す概略構成図
【図7】 本発明の第2の実施例の被加工物冷却手段の上面模式図
【図8】 従来のレーザ加工装置の概略構成図
【図9】 従来の薄膜加工装置の構成を示す概略構成図
【図10】 ガルバノ式スキャン使用時のレーザ照射スポット径の変化を示す模式図
【符号の説明】
1:レーザ光源
2:レーザ光
31:ガルバノ式スキャナ
32:集光レンズ
4:被加工物
41:薄膜
42:ガラス基板
5:支持台
51:被加工物冷却手段
81:レーザ照射部の熱
82:レーザ照射部周辺の熱
83:レーザ照射部の熱の内、被加工物冷却手段で冷却された部分
91:スキャニングエリア中心部のレーザ光の照射スポット
92:スキャニングエリア周辺部のレーザ光の照射スポット
93:スキャニングエリア周辺部のレーザ光の照射スポット
Claims (1)
- レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を走査させる走査手段と、被加工物を支持する支持台とからなり、前記レーザ光により前記被加工物を加工するレーザ加工装置において、
前記支持台は、前記被加工物に加工するパターンと同一形状の溝部を有する被加工物冷却手段からなり、前記被加工物冷却手段の前記溝部の幅が、前記被加工物上に集光した前記レーザ光の照射スポット径と同じかまたは小さい幅であることを特徴とするレーザ加工装置。
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