JP4322535B2 - 水中モータポンプ及び水中モータポンプの運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、立軸ポンプに関し、特に先行待機運転に適する立軸ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から図8に示すように、縦方向に配置された軸の先端に羽根車12を備え、羽根車12に水と共に空気を吸い込ませることにより、吸込水槽1の最低運転水位LWL以下でも運転を継続することを可能にした立軸ポンプ3があった。このポンプ3では、羽根車12入口側の吸込管14に貫通孔15を設け、貫通孔15に、外気に開口16aした空気管16を取り付け、最高水位HWLより低い最低運転水位LWL以下で、貫通孔15を経て流入する空気の流入量を水位に応じて変化させて徐々に排水量を低下するようにしていた。貫通孔15は、水位LWLからh≒v2/2gだけ低い位置LLWLに開けられている。vはその部分の水の流速、gは重力加速度である。
【0003】
羽根車12は、鉛直方向に配置された回転軸11に固着され、回転軸11は筒状の吐出ケーシング15中を鉛直方向上方に延在している。吐出ケーシング15は最高水位HWLよりも上方で直角に水平方向に曲がっている。延在する回転軸11は、この曲管部を上方に貫通して、吐出ケーシング15の外部に設置されたモータ17の回転軸に連結されている。羽根車12はモータ17により回転駆動される。回転軸11は軸受18a、18b、18cで回転可能に支持されている。
【0004】
このようにして、例えば大都市の雨水排水用として、吸込水位に関係なく降雨情報等により予めポンプを始動しておき、低水位から水位が上昇するときは空運転から水量を徐々に増やしながら全量運転へ、また高水位から水位が低下するときは全量運転から水量を徐々に減らしながら空運転へと、スムーズに運転を移行できるようにしていた。このようなポンプは、先行待機運転用のポンプと言われ、ケーシング下端よりも低い水位LLLWLで始動される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
実開平3−56895号公報(第1図、第2図、第3図、第5図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような従来のポンプでは、モータ17が水槽1の上方に張られた床上に設置されており、長い回転軸11を必要としていた。特に、水槽1が深いときは、軸受として、羽根車12近傍の軸受18a、モータ17の近傍の軸受18cの他に、回転軸11の安定した回転を確保するため中間軸受18bを設けなければならなかった。したがって水中及び気中での運転に耐える軸受が必要となり、また軸受の潤滑、空気中での冷却等への配慮が必要となる。このように、ポンプの構造が複雑であり、運転や維持管理に手間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、先行待機運転に適した、運転や維持管理の容易なポンプを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項2に係る発明による水中モータポンプは、例えば図1に示されるように、水中に配置されるモータ151と;モータ151により回転され、水槽内の水を吸い込む羽根車120と;羽根車120の回転速度を前記水槽の水位に応じて変化させる回転速度制御装置162とを備える。また典型的には、羽根車120の上流側に配置され、羽根車120に向けて前記水を流す吸込管132を備える。
【0009】
このように構成すると、水中に配置されるモータを備えるので、運転や維持管理の容易なポンプを提供することができ、回転速度制御装置を備えるので、羽根車の回転速度を水槽の水位に応じて変化させることで、ポンプの運転を安定させることができる。
【0010】
また請求項2に記載の水中モータポンプでは、前記水槽の水位を検出し、検出信号を回転速度制御装置162に伝える水位検出器163を備える。
【0011】
このように構成すると、水位検出器を備えるので、回転速度制御装置で回転速度を変化させるにあたって、必要な水位を検出することができる。
【0012】
また請求項3に記載のように、請求項2に記載の水中モータポンプでは、モータ151は交流電動機であり、該交流電動機に供給される交流電源の周波数を変換するインバータ162を備えるようにしてもよい。
【0013】
このように構成すると、インバータを備えるので、周波数を変換し、ひいてはモータの回転速度を容易に変化させることができる。
【0014】
本発明による水中モータポンプは、例えば図7に示されるように、水中に配置されるモータ151と;モータ151により回転され、水槽内の水を吸い込む羽根車120と;羽根車120の上流側に配置され、羽根車120に向けて前記水を流す吸込管132と;吸込管132に形成された空気吸込口116aに一端が接続され、空気吸込口116aよりも高い位置に他端が開口116bする空気管116とを備える構成であってもよい。
【0015】
このように構成すると、吸込管に形成された空気吸込口に一端が接続され、空気吸込口よりも高い位置に他端が開口する空気管を備えるので、水位に応じて空気吸込口から、空気を吸い込むことができ、気水混合運転が可能となる。それにより空気吸込渦の発生を抑制できる。
【0016】
このとき、空気管の他端の開口位置は、典型的には水槽の最高水位よりも上方である。このように構成すると、空気管から水中の異物を吸い込んでしまうのを防止できる。水中モータポンプは典型的には立軸ポンプである。空気吸込口は複数とするのが好ましい。複数の空気吸込口は吸込管の周方向に等配とするのが好ましい。
【0017】
また請求項4に記載のように、請求項2又は請求項3に記載の水中モータポンプでは、モータ151は、回転子152を外部から封止するモータケーシング157と;回転子152を回転させる回転軸121と;モータケーシング157の回転軸121の貫通部に設けられた軸封装置156と;モータケーシング157の内部に設置され、モータ151の回転子152を回転可能に支持する転がり軸受154、155とを有するようにしてもよい。
【0018】
このように構成すると、モータは、回転子を外部から封止するモータケーシングと、回転子を回転させる回転軸と、モータケーシングの回転軸の貫通部に設けられた軸封装置を備えるので、モータを乾式に構成することができる。
【0019】
また請求項5に記載のように、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の水中モータポンプでは、モータ151と羽根車120とは一体となりモータ羽根車組立体101を構成し;モータ羽根車組立体101を収納する、鉛直方向に配置される円筒状の外部ケーシング131を備え;モータ羽根車組立体101には外部ケーシング131に嵌合する嵌合座124bが形成され、外部ケーシング131には嵌合座124bを受ける受け座136が形成されているようにしてもよい。典型的には、嵌合座と受け座が合体すると、モータ羽根車組立体と外部ケーシングとの芯が合うように構成されている。
【0020】
このように構成すると、嵌合座と受け座を備えるので、モータ羽根車組立体と外部ケーシングとの組立が容易となる。
【0021】
また請求項6に記載のように、請求項5に記載の水中モータポンプでは、吸込管132が外部ケーシング131に取り付けられるようにしてもよい。
【0022】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明による水中モータポンプの運転方法は、例えば図4に示されるように、水中に配置されるモータにより回転され水槽内の水を吸い込む羽根車を有する水中モータポンプの運転方法であって;前記水槽の水位を検出し(S2);前記検出した水位が、前記ポンプが水を吸い上げなくなる水位であるエアロック水位以下のとき(S4)最低回転速度(20%)で運転し(S7)、前記検出した水位が、前記エアロック水位より高く且つ前記水中モータポンプの最低運転水位以下のとき前記最低回転速度と前記水中モータポンプの100%回転速度との中間の回転速度で運転し(S5)、前記検出した水位が、前記最低運転水位よりも高いとき100%の回転速度で運転する(S3)。水中モータポンプは、典型的には、前記羽根車の上流側に配置され前記羽根車に向けて前記水を流す吸込管を有する。
【0023】
また請求項1に記載の水中モータポンプの運転方法では、前記モータは交流電動機であり、前記エアロック水位を前記モータの電流値と力率に基づいて検知するようにしてもよい(S6)。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号あるいは類似符号を付し、重複した説明は省略する。
【0025】
図1の断面図を参照して、本発明の第1の実施の形態である立軸ポンプを説明する。図1(a)に示す水中モータポンプ100は、先行待機運転用のポンプである。
【0026】
先行待機運転とは雨水がポンプ吸水槽に流入する前にあらかじめポンプを始動し、水位(Level)Lの上昇にしたがって排水を始め、水位が低下してもポンプを停止させずに運転することである。排水を始めても、水中モータポンプ100は、空気吸込渦を発生しないよう、回転速度を調節する。
【0027】
図1を参照して水中モータポンプ100の構造を説明する。水中モータポンプ100は、鉛直方向に配置される円筒状の吐出ケーシング本体131を備え、吐出ケーシング本体131下端に吸込管としての吸込ベルマウス132が取り付けられている。吸込ベルマウス132の上端部には円板状の出口フランジ部132aが形成されており、出口フランジ部132aの外周は、円筒状の吐出ケーシング本体131の下端に密封的に固定されている。出口フランジ部132aの内側には、吸込ベルマウス132の壁に沿って、後述のライナーケーシングと突き合わされる突合部132bが形成されている。突合部132bは、出口フランジ部132aの面から僅かに盛り上がっている。
【0028】
出口フランジ部132aと吐出ケーシング本体131の下端との密封的な固定構造を図2の部分断面図を参照して具体的に説明する。
(a)の例では、吐出ケーシング本体131は鋼製の円筒状のケーシングとして構成されており、その下端には水平方向の鋼製のフランジ131bが溶接で取り付けられている。フランジ131bにフランジ132aがボルトで固定される。
(b)の例では、吐出ケーシング本体131が鋳鉄製であり、フランジ131bが吐出ケーシング本体131と一体で鋳造されている。そして、フランジ131bにフランジ132aがボルトで固定される点は(a)と同様である。
(c)の例では、吐出ケーシング本体131と吸込管132とが鋳鉄の一体構造となっている。したがって、前記フランジ131bとフランジ132aの部分も含めて、全体が一体で構成されている。
【0029】
吐出ケーシング本体131の内部には、吸込ベルマウス132の上方に、ライナケーシング123とガイドベーンケーシング124が配列されている。ライナケーシング123とガイドベーンケーシング124とは水平方向のフランジで締結されている。吐出ケーシング本体131、吸込ベルマウス132、ライナケーシング123、ガイドベーンケーシング124が、広い意味のケーシング130を構成している。
【0030】
図1(b)の部分断面図に示すように、ガイドベーンケーシング124の外周には、円環状の嵌合座124bが形成されている。嵌合座124bには、逆円錐台形状に形成されたテーパ状の嵌合座面124aが形成されている。
【0031】
外部ケーシングとしての吐出ケーシング本体131の内面には、円環状の受け座136が形成されている。受け座136には、嵌合座124bの嵌合座面124aと嵌合するように、テーパ状の受け座面136aが形成されている。
【0032】
円筒状の吐出ケーシング本体131の中心軸線に一致するように、縦方向(鉛直方向)に回転軸121が配設され、回転軸121の下方先端にオープン型の羽根車120が取りつけられている。羽根車120の外周(オープン羽根の先端)と僅かな隙間をもってライナケーシング123が羽根車120を収納している。水中モータポンプ100は、立軸の斜流ポンプ又は軸流ポンプである。また羽根車120の吐出側にはガイドベーン122が配設されている。ガイドベーン122は、ガイドベーンケーシング124と一体に形成されている。
【0033】
先行待機運転用のポンプとしては、不図示の軸流ポンプが用いられることもある。軸流ポンプは、吐出ヘッドに対して流量が比較的大きい場合に適する。
【0034】
ガイドベーン122の鉛直方向上方には、羽根車120を回転させる電動モータ151が配置される。本実施の形態では、電動モータ151の回転軸は、羽根車120の回転軸121と共通の軸である。
【0035】
電動モータ151は、乾式モータであり、内部を外部から封止密閉し、水が内部に侵入しないように、モータケーシング157で全体が囲われている。モータケーシング157の下部には、回転軸121の貫通部があり、この貫通部には軸封装置としてのメカニカルシール156が設けられている。
【0036】
メカニカルシール156とモータケーシング157とで密封された内部には、回転軸121に固着された回転子152、回転子152と僅かな隙間をもってその外周に配置された固定子153及び回転軸121を回転可能に支持する下部軸受154と上部軸受155が収納されている。
【0037】
固定子153は、モータケーシング157に固定されている。下部、上部の軸受154、155は、給油を必要としない潤滑剤封入型の軸受とするのが好ましい。本実施の形態では、グリースを封入した転がり軸受を使用している。羽根車120は、モータ151と共通の回転軸121に取り付けられているので、軸受は、2つの転がり軸受154、155で済む。特に、スラスト荷重(羽根車120、回転軸121、回転子152を含む回転体の重量と羽根車120にかかる流体力)も受けられるように、転がり軸受154、155の少なくとも一方をアンギュラーコンタクト型のボール軸受とするとよい。
【0038】
モータケーシング157の上部からは、モータ駆動用の電源ケーブルが引き出されている。ケーブル引き出し部は水がモータの内部に侵入しないようにシールされている。
【0039】
吐出ケーシング本体131は、前述のように回転軸121と中心軸線を同一とする円筒状の缶胴部分からなり、缶胴部分の下端は吸込ベルマウス132とその出口フランジ部で蓋がされている。缶胴部分の上端は、吐出ケーシング上蓋134で蓋がされている。吐出ケーシング上蓋134は円板であり、吐出ケーシング本体131の缶胴部分の上端に取り付けられたフランジに締結されることにより、吐出ケーシング本体131の缶胴部分を蓋している。
【0040】
吐出ケーシング本体131には、据え付け用の吐出ケーシング据付座135が取り付けられており、該据付座で据付台であるコンクリート製の床171に据え付けられている。コンクリート製の床は、ポンプ機場基礎でもある。吐出ケーシング本体131の、ケーシング据付座135と、上蓋で蓋をされた上端のフランジとの間には、水平方向に吐出管が導出され、該吐出管には吐出フランジ133が取りつけられており、フランジ133により、不図示の吐出配管と接続されている。吐出配管は雨水を河川や海等に導いて排出するための配管である。
【0041】
羽根車120は、後述の最低水位LWLよりも下方に配置されている。羽根車120の本体部分全体、又は少なくともその一部、特にそこまで水位があれば羽根車120が水を吸い上げる先端部が最低水位LWLよりも下方に配置されている。
【0042】
次にポンプ100の高さ方向の構造と水位の関係を説明する。水位HWLは前述のように、水槽の許容水位である。水位Lがこれ以上に上昇することはない。その下方に最低水位LWLがある。これは、ポンプ固有の値であり、水位がこれ以下になると何らかの問題が起こりポンプの運転が継続できなくなる水位である。典型的には、それ以下では吸込管132の下端から渦状に空気を吸い込み(図7(b)参照)、振動や騒音が発生し運転が継続できなくなる水位Lcと一致する。これはポンプ固有の値であり、羽根車120の回転速度が全速のままであるとき水位が最低水位LWL(Lc)を下回ると運転の継続が困難になる。本実施の形態では、後述のように羽根車120の回転速度を調節することにより、低水位での運転を可能にしている。しかし水位LWLは渦状の空気吸込以外の条件で定まる場合もある。
【0043】
設計上の最低水位Ld(Design Level)は、水位LWLと少なくとも等しく、通常はそれよりも高くなるようにする。設計上の最低水位Ldは、吸込管132の下端から吸込管の内径に対して所定の係数を乗じて簡易的に求めている。係数は例えば、1.1とする。設計値はある程度の余裕を有しており、実機の回転速度を変えずに水位を低下させて行った場合、設計的に定めた最低水位Ldを多少下回っても運転は可能である。
【0044】
設計上の最低水位Ld乃至は最低水位LWLの下方には、羽根車20の吸込開始水位SLWLがある。この水位は、羽根車120の先端部分の水位に相当する。低い水位から水位が上昇して、羽根車120が水に接すると、気水攪拌が開始され間もなく水が吐出されるからである。
吸込ベルマウス132の先端の水位を水位A2とする。
【0045】
水中モータポンプ100には、水位検出器163が備えられている。本実施の形態ではディスプレースメント型の水位検出器を用いている。この水位検出器は、最高水位HWLよりも上方に設置される発信器163aと、発信器163aに接続され発信器163aから鉛直方向に吊り下げられた一様な断面積を有する棒163bを含んで構成されている。棒は典型的には丸棒である。ディスプレースメント型の水位検出器163では、水位によって棒163bが排除する水の量が変わり、それに応じて発信器163aにかかる荷重が変化する。荷重の変化が棒163bの先端からの水位に比例するので、荷重を検出することにより水位を知ることができる。
【0046】
一方電動モータ151は交流電動機であり、電動モータ151にはインバータ162を介して電源161から電力が供給される。インバータ162は、制御装置164の制御信号により電動モータに供給する交流電力の周波数を変換する。
【0047】
発信器163aが発信する荷重に応じた信号、すなわち水位に応じた信号は、制御装置164に送信される。制御装置は受信信号に応じて、インバータ162の出力電流の周波数を調節する。即ち、水位に応じて電動モータ151の回転速度を調節する。
【0048】
図3の回転速度・水位線図を参照して、また随時図1を参照して、第1の実施の形態の作用を説明する。先ず水位がA2よりも低い状態で水中モータポンプ100を始動する。例えばこのポンプが据え付けられた機場周辺で、又は該機場に雨水が流入する地域で大雨が降ったとの降雨情報が入った場合等には、ある時間の後に水位が急に上昇することが予測される。そのような場合に、水位がA2よりも下の状態で、先行待機運転用の水中モータポンプ100が始動される。先行待機運転の開始である。このときの電動モータ151、ひいては羽根車120の回転速度は、定格速度を100%としたとき、20%の速度である。
【0049】
雨水の流入により水槽内の水位Lが上昇し、吸込ベルマウス132の下端水位A2を越える。このときも、まだ水は吸い上げられない。羽根車120は20%の回転速度で空転している。
【0050】
水位Lがさらに上昇して、水位SLWLの手前まで、いわば水位A2と水位SLWLとの間の水位LLWLまで到達したところで、その水位を検出した水位検出器163からの信号により、制御装置164がインバータ162の出力周波数を上昇させ羽根車120の回転速度を仮に50%とする。これは水が吸い込まれる少し手前で回転速度を上昇させることを意味する。水位LLWLの値を予め制御装置164に設定しておく。
【0051】
水位Lがさらに上昇し、水位SLWLに達したところでポンプ100は気水攪拌を開始する。そして水を吸い込み始める。このときは、ポンプは100%の回転速度で運転されていないので、ポンプ100の吐出量は要項点の全水量吐出量よりも少ない。
【0052】
さらに水位Lが上昇し、水位LWL(Ld)に達すると、制御装置164はポンプの回転速度を100%とする。水量は全水量吐出量となるが、既に説明したように、この水位では水槽の水面から空気が渦状になって吸込ベルマウス132下端から吸い込まれることはない。ここに到ると、要項点の全水量を吐出することになり、定常運転に入る。
【0053】
さらに水位が、水位LWLと水位HWLの間の水位まで上昇して、ポンプ100は定常運転を継続する。その後、ポンプ100の排水により今度は水位Lが低くなってゆくと、水位LWLで(多少のヒステレシスはあるが)ポンプ100の回転速度は50%に落とされる。さらに水位Lが低下して、LLWLになると(多少のヒステレシスはあるが)回転速度は20%に落とされる。水位LLWLでは、水の吸い込みが終わり、羽根車120は空気中で運転される空運転状態になる。即ち、ポンプ100は全く水を吸い込まないエアロック状態となる。水位LLWLは、排水停止水位であり、水位SLWLとA2との間の適切な水位に機場毎に設定する。
さらに水位Lが下がり、A2を越えても羽根車120は空気中で運転が継続される。すなわち空運転状態を継続する。言いかえれば、ポンプ100が全く水を吸い込まないエアロック状態が継続する。
【0054】
回転速度を20%から50%に上昇させ、また50%から20%に落とす水位をLLWLとしたが、水位上昇時と降下時の水位差を単なるヒステレシス程度のものではなく、もっと大きくとってもよい。即ち、水位上昇時にはSLWLの少し手前(低水位側)とし、水位降下時にはSLWLよりもかなり低い確実にエアロックに入る水位として、SLWLとA2との間とするとよい。特に、吸込ベルマウス132の長さが比較的短いときには、A2近傍で僅かにA2よりも高い水位としてもよい。
【0055】
水位とポンプの回転速度との関係を整理すると以下の通りである。
水位HWLとLWL(Ld)の間の通常運転では、ポンプの回転速度は100%とする。
水位LWLとLLWLの間では、本実施の形態では50%としたが、80〜40%の間の所定の回転速度で運転される。この回転速度は、ポンプの揚水量は通常運転の場合よりも少ないが、モータ151を冷却するに十分な水量を得られるような値とする。
【0056】
水位LLWLより低水位では、本実施の形態では20%としたが、40%〜10%の間の所定の回転速度で運転される。10%より低速度とすると、電動モータのトルク変動率が大きくなるので、それを避けるため10%以上とする。好ましくは15%以上、さらに好ましくは18%以上、20%前後とするのがよい。この状態では、ポンプ100は揚水しないので、電動モータ151の負荷は微小であり、且つ回転速度も低いので電動モータ151の温度上昇は緩やかである。
【0057】
エアロック運転の回転速度を40%よりも高くすると、確実にはエアロック運転に入らない可能性がある。したがって、30%以下とするのが好ましく、さらに好ましくは25%以下とするとよい。
【0058】
エアロック運転が一定の時間以上続く場合には、ポンプ100を停止する。この停止はタイマーにより行うのがよい。タイマーの設定値は例えば10分とする。但し、降雨情報により水槽への雨水の流入が増加しないと予測できる場合は、その情報に従って、タイマーの設定にかかわらずもっと短い時間で停止してもよい。
【0059】
エアロック状態を検出する際の、水位検知器が故障したときのバックアップとして、電動モータ151への電流値を用いてもよい。すなわち、エアロック状態では無負荷運転なので電流値は相対的に小であり、それ以外では負荷があるので電流値が相対的に大である。このことを利用して、エアロック状態を検出する際のバックアップとする。
【0060】
以上の説明では、水位検出器はディスプレースメント型として説明した。この型では、棒163bの長さを長くすることにより水位検出の範囲を広くとることができるという利点がある。しかし、これに限らず、フロート式、電気接点式、水圧により間接的に水位を検出する圧力検出式の水位検出器であってもよい。また、超音波、レーザー等を利用した距離検知装置であってもよい。
【0061】
回転速度制御に用いるインバータ162は、V/F方式、センサレルベクトル制御方式とするとよい。また回転速度制御には、インバータの他、流体継手を用いてもよい。
【0062】
以上の実施の形態では、回転速度は0%、20%、50%、100%とステップ状に変化させるものとして説明したが、これに限らず水位に応じて無段階に調節してもよい。その場合、0%から下限の回転速度(以上の実施の形態では20%)まではステップ状に変化させ、水位LLWLから水位LWL(あるいは多少余裕を持たせて水位LWLよりも多少高い水位)の間で、下限回転速度(20%)から100%回転速度を無段階に変化させるとよい。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、減速起動が可能であるので、全速起動と違って起動時の過渡的振動の抑制を図ることができ、始動電流の低減も可能である。
【0064】
図1の断面図に戻って、吐出ケーシング本体131とモータ羽根車組立体101との関係を説明する。第1の実施の形態の水中モータポンプでは、ガイドベーン122とガイドベーンケーシング124とは一体で鋳造されている。ガイドベーンケーシング124は、外部ケーシングと内部ケーシングとからなり、その両者の間にガイドベーン122が形成されている。また本実施の形態では、ガイドベーンケーシング124の内部ケーシングの一部は、モータケーシング157の一部を構成している。またはモータケーシング157の一部と共通であるといってもよい。
【0065】
ガイドベーンケーシング124の内部ケーシングの上端とモータケーシング157とはボルトで締結されている。その結果、電動モータ151とガイドベーン122とガイドベーンケーシング124とは一体構造となっている。さらに前述のように羽根車120はモータと共通の回転軸121に取り付けられているので、電動モータ151と羽根車120とは一体に組み立てられ、モータ羽根車組立体101を構成している。
【0066】
図1(b)を参照して説明したように、嵌合座124bが受け座136に嵌合するので、モータ羽根車組立体101は外部ケーシングである吐出ケーシング本体131に収納され、モータ羽根車組立体101は吐出ケーシング本体131の中心と芯が合う。また嵌合座124bの嵌合座面124aが受け座136の受け座面136aに嵌合して密着するので、モータ羽根車組立体101の自重により安定した姿勢を保つことができる。
【0067】
羽根車120の回転方向の反力には、嵌合座124bと受け座136(嵌合座124bの嵌合座面124aと受け座136の受け座面136a)の間の摩擦力で抗することができ、モータ羽根車組立体101が自転することはない。しかしながら、自転を確実に防止するために、回転防止部を設けるとよい。
【0068】
図1(c)のA−A断面図に示すように、回転防止部として、ガイドベーンケーグ124に半径方向に突出した突起である回転防止板124cを形成する。また、回転防止板124cに当たるように、吐出ケーシング本体131の内側に半径方向に突出した突起であるストッパ131aを形成する。ストッパ131aは、周方向に複数設けるとよい。回転防止板124cは1箇所でもよい。
【0069】
逆に、ストッパ131aを1個とし、回転防止板124cを周方向に複数設けてもよい。このようにすると、ガイドベーンケーシング124が鋳物のときは、外周に突起を複数もうけても手間はあまり変わらず、吐出ケーシング本体131が鋼管であるとき、ストッパ131aを溶接で取り付ける手間が省ける。したがって製造が容易となる。
【0070】
モータ羽根車組立体101を吐出ケーシング本体131に収納するときは、吐出ケーシング上蓋134を取り外し、その結果開放される吐出ケーシング本体131の開口から鉛直方向下方にモータ羽根車組立体101を吊り下げて吐出ケーシング本体131に収納する。そのとき吸込ベルマウスの出口フランジ突合せ面132bと、ライナケーシング123の下端とが僅かな隙間をもって対向して合わさる。
【0071】
いわばモータ羽根車組立体101は、内部構造の出し入れが容易なプルアウト構造をもって吐出ケーシング本体131に収納されている。したがって、電動モータ151や羽根車120の点検、これら交換時の分解、組立作業の省力化を図ることができる。分解、組立の際、ポンプ100全体を吊り上げる必要がなく、内部構造だけを吊り上げればよいので、クレーン容量の低減も可能である。
【0072】
本実施の形態によれば、電動モータ151が通常運転では水中に没する構造であるが、グリス封入型の転がり軸受154、155を使用しているので、水中部の軸受への給油や給水が不要であり、維持管理が容易である。また電動モータ151と羽根車120が共通な回転軸121を有するので、軸の長さを従来例と比較して短くできる。またハイドロ部品(羽根車120、ライナケーシング123、ガイドベーン122)を一体に組み立てるので、羽根車120とライナケーシング123との隙間を小さくでき、ポンプ効率の向上を図ることができる。
【0073】
水槽が深く吐出ケーシング本体131が長くなるときは、不図示のステーを吐出ケーシング本体131の下部に取り付けて、それを吸込水槽床面172に固定するとよい。
【0074】
図4のフロー図を参照して、本発明の第2の実施の形態である、水中モータポンプの運転方法を説明する。まず、水中モータポンプを起動する(S1)。ポンプは、回転する羽根車により水槽内の水を吸い込む。また水位検出器のより水槽の水位を検出する。
【0075】
検出した水位Lが、設定値HH以上かを判断する(S2)。設定値HHは、図1でLd(LWL)に相当する水位である。すなわちその水位で運転しても、ポンプが問題なく運転できる水位である。即ち水位Lcに多少の余裕をもって定めた水位である。
【0076】
水位Lが設定値HH以上のとき(S2がYES)は、回転速度100%で運転する(S3)。水位Lが設定値HHより低いとき(S2がNO)は、さらに水位Lが設定値LL以上かを判断する(S4)。設定値LLは、図1でLLWLに相当する水位である。すなわちその水位で回転速度を20%に落とせば、水を吸い上げなくなる水位、すなわちエアロックする水位である。
【0077】
水位Lが設定値LL以上のとき(S4がYES)は、回転速度50%で運転する(S5)。水位Lが設定値LLより低いとき(S4がNO)は、さらに電動モータに流れる電流が設定値LLC以上かを判断する(S6)。電流の設定値LLCは、ポンプの軸動力カーブとモータ性能カーブから適切な値として設定する。
【0078】
電流が設定値LLC以上のとき(S6がYES)は、回転速度20%で運転する(S7)。このときは、ポンプはエアロックして空転をする。電流が設定値LLCより低いとき(S6がNO)は、ポンプを停止する(S8)。水位が設定値LLよりも低く、且つ電流が設定値LLC以上である場合は、20%の回転速度で運転を継続する。水位が設定値LLよりも低く、且つ電流が設定値LLCよりも低いときはポンプを停止する。電流による停止はバックアップ用であり、電流によらずにタイマ又は手動による停止をしてもよい。
【0079】
いずれの回転数で運転しているときも水位Lを検出し、水位Lの値にしたがって前記のような判断を行い、ポンプをしかるべき回転速度で運転をする。または停止する。
【0080】
次に図5のフロー図を参照して、本発明の第3の実施の形態である、水中モータポンプの運転方法を説明する。まず、水中モータポンプを起動する(S11)。ポンプは、100%の回転速度で回転する羽根車により水槽内の水を吸い込む(S12)。また電流計により、ポンプを駆動する電動モータの電流を検出する。
【0081】
検出した電流値Cが、設定値HHC以上かを判断する(S13)。電流値Cが設定値HHC以上のとき(S13がYES)は、そのまま回転速度100%の運転を継続し、電流値Cの監視を続ける。
【0082】
電流値Cが設定値HHCより低いとき(S13がNO)は、電動モータへの電力の力率PFが設定値HPF以上かを判断する(S14)。設定値HPFは、ポンプの軸動力カーブとモータ性能カーブから適切な値として設定する。
【0083】
力率PFが、設定値HPF以上のとき(S14がYES)は、ポンプの回転速度を50%とする(S15)。その回転速度での運転時間を監視する(S16)。その運転時間が所定の時間(タイマーを使うときはその設定値)以下のときは、回転速度50%の運転を継続し、所定の時間を越えたら起動直後のプロセスに戻り、ポンプの回転速度を100%とする(S12)。
【0084】
ステップS14で、力率が設定値HPFよりも小さいとき(S14がNO)は、回転速度を20%とする(S17)。このときは力率の監視を継続し(S14)、力率PFの値にしたがって、対応する回転速度で運転する(S15又はS17)。
【0085】
次に図6の時間経過図を参照して、本発明の実施の形態の水中モータポンプの運転態様を、時間経過と水位の変化に沿って説明する。(a)〜(d)は、時間経過とともに水位が低水位から高水位を経て再び低下するとき、本発明の実施の形態である1台の水中モータポンプがどのような運転をされるかを示す。
【0086】
図6(a)は、水位がポンプの吸込ベルマウスの下端よりも低い場合である。このときポンプを始動する。回転速度は20%である。水位が吸込ベルマウスの下端と羽根車先端の水位との中間の水位LLWL1に到るまでは、回転速度20%の運転を継続する。水位LLWL1は、羽根車先端の水位SLWL(図1)よりも、僅かに低い水位に設定するとよい。
【0087】
図6(b)は、水位がLLWL1を越え、LWLよりも低い場合である。水位がLLWL1を越えたところで、回転速度を50%に上げる。ポンプは中間吐出量の運転になる。
【0088】
図6(c)に示すように、水位がLWLを越えると、回転速度を100%に上げる。ここで全水量運転に入る。水位がLWLを越えているので、ポンプは渦状に空気を吸い込むことなく、100%回転速度の運転を継続できる。
【0089】
図6(d)に示すように、再び水位が低下してLWLを下回ると回転速度は50%に下げられる。水位がLLWL1よりも低くA2よりも高いところに設定された水位LLWL2までは、この運転を継続する。
【0090】
水位がさらに低下しLLWL2を下回ると、(a)に示すように回転速度を20%にして、エアロックを生じさせ気中運転に入る。
【0091】
図7の模式的断面図を参照して、本発明の第4の実施の形態の水中モータポンプを説明する。ポンプの本体部分の構造は第1の実施の形態と同様である。
【0092】
図7(a)に示す本実施の形態の水中モータポンプ110は、回転数制御をせずに全速先行待機運転の可能なポンプである。要項点水量を吐出せずに運転を可能とするため、回転速度を下げるのではなく、水と一緒に空気を吸い込ませる。
【0093】
図を参照して立軸の水中モータポンプ110の構造を説明する。ポンプ110では、羽根車120の先端よりも下方の吸込ベルマウス132の壁で、鉛直方向の円筒状部分に、吸気口116aが形成されている。吸気口116aの鉛直方向の位置は、第1の実施の形態で説明した、水位LLWL、特にLLWL2に相当する位置である。吸気口116aは1個であってもよいが、複数例えば4本を、周方向に等配とするとよい。
【0094】
吸気口116aには、外側に空気管116の一端が接続されている。空気管116は吸気口116aに1対1で設けてもよいし、複数の吸気口をマニホ−ルドにまとめて、そこに1本を設けてもよい。
【0095】
吸気口116aの上側の水位をA1とする。後述のように空気を吸い込む水位は水位A1を基準にして定まる。
【0096】
空気管116の他端(上端)116bは、水槽1内の最高水位HWLよりも上方に開放するのが好ましい。このときは、空気管116の他端116bが水中に没することはない。したがって、他端116bから水中に浮遊する異物が吸い込まれることが防止できる。さらに他端116bは、水槽の内部(床171(図1参照)よりも下方)に位置するように構成するとよい。このようにすると、水槽内の異臭を維持管理者が居る可能性のある床上に放散させることを防止できる。
【0097】
吸込開始水位SLWLの下方には、吸気口水位A1がある。水位Lが低下して、水位LWLに到ると、水位Lよりも負圧分hだけ低い空気管116中の水位がこの水位A1になり、空気管116を通して吸込ベルマウス132に空気が吸い込まれ始める。
【0098】
さらに図7を参照して、水中モータポンプ110の作用を説明する。先ず水位がA2よりも低い状態でポンプ110を始動する。ある時間の後に水位が急に上昇することが予測されるときである。先行待機運転の開始である。
【0099】
雨水の流入により水槽内の水位Lが上昇し、吸込ベルマウス132の下端水位A2を越える。水位が水位A1を越えても、まだ水は吸い上げられない。羽根車120は空転している。
【0100】
水位Lがさらに上昇して、水位SLWLまで到達したところで、羽根車120は気水攪拌を開始する。そして水を吸い込み始める。このときは、空気管116を通し、吸込ベルマウス132内に、水と一緒に空気も吸い込むのでポンプは要項点の全水量吐出の運転ではない。即ち、ポンプ110は気水混合運転をしている。さらに水位Lが上昇すると徐々に吸込空気量は減少し、代わりに水量が増加する。やがて水位Lが水位LWLまで上昇すると空気の吸込量がゼロになり、(そのときのQHカーブ(水量水頭カーブ)上のH次第であるが)要項点の全水量を吐出するに至る。即ち、定常運転に入る。
【0101】
さらに水位が、水位LWLと水位HWLの間の水位まで上昇して、ポンプ110は定常運転を継続する。その後、ポンプ110の排水により今度は水位Lが低くなってゆくと、水位LWLで(空気管116中の水位が吸気口水位A1に到るので)空気管116を通して空気を吸い込み始める。即ち、再び気水混合運転が開始される。水位Lが低下するにつれて吸込空気量が増えて、代わりに水量が減ってゆく。さらに水位Lが下がり、水位A1付近になると水の吸い込みが終わり、羽根車120は空気中で運転される空運転状態になる。即ち、ポンプ110は全く水を吸い込まないエアロック状態となる。
【0102】
エアロック水位は、通常は吸気口116aの高さである水位A1と一致または近傍となるように設計はするが、必ずしも一致するとは限らない。水位がA1を通過してさらに下がったところで、または吸込ベル132の下端水位A2に至ると水量はゼロになる場合もある。本実施の形態では、エアロック水位は水位A1とほぼ一致するものとし、この水位で水量がゼロになるものとする。
【0103】
このようにして、羽根車120は空気中での空転状態を続けることになる。降雨が続くときは、そのまま運転を続け、再び水位Lが上昇してきて、前記のように水位SLWLに到達したところでポンプ110は水を吸い込み始める。このようにして、先行待機運転用ポンプ110は、水槽の水位にかかわらず、空運転と要項点全水量の運転との間で運転を継続することができる。空運転と要項点全水量運転との間の移り変わりは、ポンプが空気も一緒に吸い込むのでなめらかに行われる。
【0104】
前述のように、水位Lが十分に低下して吸込ベルマウス132の下端の水位A2より低くなっても、ポンプ110は先行待機運転を継続する。吐出水量がゼロになってから10分程度の間は、羽根車120よりも上方のケーシング(特に吐出ケーシング本体131)中には水が留まっているが、あまり長時間その状態が続くと水の温度が上昇してポンプの損傷につながるので、ケーシング中の水は不図示のドレン孔から抜かれる。その後の先行待機運転では、羽根車120は空気中で空転運転がされる。
【0105】
前述のように雨水の流入により水槽内の水位Lが上昇して、水位がA1を越えても、まだ水は吸い上げられないが、水位低下直後で羽根車120の上方に水が溜まっている間に再び水位が上昇したときは吸気口の高さである水位A1で水の吸い上げが始まる。
【0106】
以上のような先行待機運転ポンプは、機場には水中モータポンプ110を複数台設置するとよい。そのような機場の運転において、水位の増加に伴って1台のポンプでは排水量が不足する場合には、次々に他のポンプを起動して複数台の運転に入る。
【0107】
全量吐出水量となる設計上の水位Ldと流速との関係を説明する。水位Ld=(A1の水位)+hが成り立つ。ここで、h=hl+(v2/2g)である。簡易計算では、h=(v2/2g)×1.1で計算される。
【0108】
ここでvは、(要項点全水量)/(吸込管132の吸込部面積)で求められる水の吸込流速である。(v2/2g)はベルヌーイの定理から計算される水の流れにより生じる負圧である。速度水頭といってもよい。またhlは吸込管132の下端A2から吸気口116aまでの流れロスである。上記の簡易計算では、hl=(v2/2g)×0.1として、吸込管132の下端A2から吸気口116aまでの流れロスを経験的に係数を使って求めている。もちろん、吸込管132の下端A2からの損失水頭を厳密に計算又は実測して求めてもよい。
【0109】
水位Ldは上記のようにして計算される水位であり、水位Lが上昇傾向のときは、ここで吸気口116aからの空気の吸い込みがなくなりポンプは全量吐出となり、水位Lが下降傾向のときは、ここで全量吐出が終わり吸気口116aからの空気の吸い込みが始まるという水位である。
【0110】
水位Ldは設計上、吸込ベルマウス132の下端から渦状に空気を吸い込んでしまうという水位に対して余裕を持たせる。したがって、この水位では吸込ベルマウス132の下端から空気を吸い込むことがない。即ち、水位Ldは水位LWL、通常は水位Lcと同じか、又はそれよりも高い位置にある。
【0111】
水位Lcは上記のように水位Ldを求めるにあたって、チェック項目となる。即ち、設計過程で求めた水位Ldが水位Lcよりも低くなってしまった場合は、水位Ldが水位Lcと同等かそれよりも高くなるように設計を修正する。例えば吸込管132を長くして、水位Lcを下げる。水位Ldは、例えば、水位A2から1.1×吸込管内径として計算する。
このようにすれば、Ldが水位Lcよりも低くはならないことが経験上分かっている。
【0112】
本実施の形態の水中モータポンプ110では、羽根車120は水位LWL、さらには水位Lcよりも下方に配置されている。
吸込ベルマウス132の壁の内周面には、不図示の旋回防止板を設けるとよい。 水位Ldは、水位A1+hで計算され、h=hl+(v2/2g)であるとしたが、実際は吸気口116aの近傍には正圧hpが発生する。これは吸込ベルマウス132の内部に発生する旋回流によるものとされている。すなわち、旋回流により生じる遠心力で正圧が発生するものと考えられる。旋回流は、ポンプ吐出量が要項点流量よりも小さい場合に発生する。
【0113】
正圧hpを考慮すると、hは以下の通りとなる。
h=hl+(v2/2g)−hp
【0114】
正圧hpが発生する場合は、水位Lが水位Ldまで低下しても、空気管116から空気を吸い込まない。したがって、期待通りに気水混合運転がなされない。旋回防止板を設ければ、これが旋回流を防止してくれるので、hpがほぼゼロまたは十分に小さくなり、水位LがLdになったとき空気の吸い込みが可能となる。
【0115】
第4の実施の形態のポンプ110は、第1の実施の形態と同様に、電動モータ151が通常運転では水中に没する構造であるが、グリス封入型の転がり軸受154、155を使用しているので、水中部の軸受への給油や給水が不要であり、維持管理が容易である。また電動モータ151と羽根車120が共通な回転軸121を有するので、軸の長さを従来例と比較して短くできる。またハイドロ部品を一体に組み立てるので、羽根車120とライナケーシング123との隙間を小さくでき、ポンプ効率の向上を図ることができる。
【0116】
また第1の実施の形態と第2の実施の形態とを合わせて、空気管116を備えるポンプをさらに回転速度制御するように構成してもよい。
【0117】
なお、図7(b)に示すように、ポンプが空気管116を備えず、羽根車の回転速度も調節しない場合、水槽1の水位が最低運転水位LWLを下回ると、吸込管が水面から渦状に空気を吸い込んでしまい、振動を生じる等、運転が不安定になってしまう。すなわち、最低運転水位LWLは水面が吸込管132の下端よりも高いにもかかわらず、吸込管132からポンプが空気を吸い込んでしまう水位である。本発明の実施の形態によれば、水槽の水位が前記最低運転水位を下回っても安定して運転が可能となる。
【0118】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、水中に配置されるモータを備えるので、運転や維持管理の容易なポンプを提供することができ、また、水位が最低運転水位を下回っても、ポンプの運転を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である水中モータポンプの正面断面図である。
【図2】図1の部分断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の水中モータポンプの運転を示す、回転速度・水位線図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態である水中モータポンプの運転方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態である水中モータポンプの運転方法を示すフロー図である。
【図6】本発明の実施の形態の水中モータポンプの運転態様を、時間経過と水位の変化に沿って説明する時間経過図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態である水中モータポンプの模式的正面断面図である。
【図8】従来の先行待機運転用ポンプの正面断面図である。
【符号の説明】
100 水中モータポンプ
116 空気管
120 羽根車
121 回転軸
122 ガイドベーン
123 ライナケーシング
124 ガイドベーンケーシング
124b 嵌合座
130 ケーシング
131 吐出ケーシング本体(外部ケーシング)
132 吸込管(吸込ベルマウス)
136 受け座
151 モータ
152 回転子
153 固定子
154 下部軸受
155 上部軸受
156 軸封装置
157 モータケーシング
162 インバータ
163 水位検出器
164 制御装置
171 ポンプ機場基礎
172 水槽床面
h 負圧水頭
HWL 最高水位
Ld 設計水位
LWL 最低水位
Lc 渦状に空気を吸い込む水位
SWL 羽根車の吸込開始水位
A1 吸気口水位
A2 吸込管下端水位
Claims (6)
- 水中に配置されるモータにより回転され水槽内の水を吸い込む羽根車を有する水中モータポンプの運転方法であって;
前記水槽の水位を検出し;
前記検出した水位が、前記ポンプが水を吸い上げなくなる水位であるエアロック水位以下のとき最低回転速度で運転し、前記検出した水位が、前記エアロック水位より高く且つ前記水中モータポンプの最低運転水位以下のとき前記最低回転速度と前記水中モータポンプの100%回転速度との中間の回転速度で運転し、前記検出した水位が、前記最低運転水位よりも高いとき100%の回転速度で運転する;
水中モータポンプの運転方法。 - 水中に配置されるモータと;
前記モータにより回転され、水槽内の水を吸い込む羽根車と;
前記羽根車の回転速度を前記水槽の水位に応じて変化させる回転速度制御装置と;
前記水槽の水位を検出し、検出信号を前記回転速度制御装置に伝える水位検出器とを備え;
前記回転速度制御装置は、前記水位検出器が検出した水位が、前記羽根車が水を吸い上げなくなる水位であるエアロック水位以下のとき最低回転速度で運転させ、前記水位検出器が検出した水位が、前記エアロック水位より高く且つ前記羽根車の回転速度が全速のままであると運転の継続ができなくなる水位である最低運転水位以下のとき前記最低回転速度と前記羽根車の100%回転速度との中間の回転速度で運転させ、前記水位検出器が検出した水位が、前記最低運転水位よりも高いとき前記羽根車の100%の回転速度で運転させる;
水中モータポンプ。 - 前記モータは交流電動機であり、該交流電動機に供給される交流電源の周波数を変換するインバータを備える、請求項2に記載の水中モータポンプ。
- 前記モータは、回転子を外部から封止するモータケーシングと;
前記回転子を回転させる回転軸と;
前記モータケーシングの前記回転軸の貫通部に設けられた軸封装置と;
前記モータケーシングの内部に設置され、前記モータの回転子を回転可能に支持する転がり軸受とを有する;
請求項2又は請求項3に記載の水中モータポンプ。 - 前記モータと前記羽根車とは一体となりモータ羽根車組立体を構成し;
前記モータ羽根車組立体を収納する、鉛直方向に配置される円筒状の外部ケーシングを備え;
前記モータ羽根車組立体には前記外部ケーシングに嵌合する嵌合座が形成され、前記外部ケーシングには前記嵌合座を受ける受け座が形成されている;
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の水中モータポンプ。 - 前記羽根車の上流側に配置され、前記羽根車に向けて前記水を流す吸込管が、前記外部ケーシングに取り付けられている、請求項5に記載の水中モータポンプ。
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