以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10の構成を説明する。図1は、揚液ポンプとしての揚水ポンプ10の正面断面図である。揚水ポンプ10は、液体としての水を揚水する先行待機運転用のポンプである。揚水ポンプ10は、構造物99に固定される固定パイプ20と、固定パイプ20内に出し入れ可能に収納されるポンプ本体30と、低水位時に空気を導入する空気流入機構としての空気管28とを備えている。典型的には、揚水ポンプ10の運転時には固定パイプ20内にポンプ本体30が収容され、点検時にはポンプ本体30が固定パイプ20から引き出されるようにして取り扱われる。
固定パイプ20は、ポンプ本体30を主に収容するコラムパイプ21と、吸込管25とを有している。コラムパイプ21は、ポンプ本体30を覆うことができる長さを有し、筒状に、典型的には円筒状に形成された部材である。コラムパイプ21は、典型的には鋼製又は鋳鉄製である。コラムパイプ21は、軸線が鉛直になるように配置されて構造物99(本実施の形態では水槽98の上方に位置するスラブ)に固定される。ここでいう「鉛直」は、ポンプ本体30の出し入れに支障がない範囲で傾いている状態も含む概念である。コラムパイプ21には、収容されたポンプ本体30の上端よりも所定の高さ以上の上方に、水平方向に延びる枝管21pが設けられている。「所定の高さ」は、揚水した水の流れを安定させることができる距離を確保した高さである。枝管21pは、揚水した水の流路を形成する。また、コラムパイプ21は、構造物99への固定用の据付座24が外周に設けられている。また、コラムパイプ21は、上端に上部フランジ21aが設けられ、下端に下部フランジ21bが設けられている。上部フランジ21aには、取り外し可能なコラム蓋22が気密に取り付けられている。下部フランジ21bには、吸込管25が取り付けられている。
吸込管25は、コラムパイプ21の内径よりも小さな径の開口25hが形成された吸込管フランジ25fに異径管25pが取り付けられて一体に形成された部材である。吸込管25は、典型的には、鋼製又は鋳鉄製であり、全体が一体に構成されている。吸込管25は、コラムパイプ21に取り付けられたときに、コラムパイプ21の軸線と異径管25pの軸線とが一致して、この軸線が開口25hの中心を貫くように形成されている。異径管25pは、吸込管フランジ25fから下方に向かって、一旦徐々に径がすぼまった後に、下端付近でコラムパイプ21の径と同程度まで急激に径が広がるベルマウス形状に形成されている。吸込管フランジ25fに形成された開口25hの大きさは、ポンプ本体30の吸込口の内径と略同じ大きさに形成されている。
ポンプ本体30は、オープン型の羽根車31と、羽根車31が回転軸32の先端に取り付けられた電動機33とを有している。電動機33は水中モータであり、本実施の形態の揚水ポンプ10はコラム形水中モータポンプとして構成されている。ポンプ本体30は、電動機33と羽根車31とが一体に組み立てられた電動機羽根車組立体として、コラムパイプ21に対して出し入れできるように構成されている。ポンプ本体30は、コラムパイプ21に収容されたときに、回転軸32がコラムパイプ21の軸線と一致し、羽根車31が電動機33よりも下方に位置するようになっている。電動機33は乾式モータであり、内部を外部から封止密閉し、水中で運転される際に水が内部に侵入しないように、モータケーシング337で全体が囲われている。モータケーシング337の下部には、回転軸32の貫通部があり、この貫通部には軸封装置としてのメカニカルシール336が設けられている。
メカニカルシール336とモータケーシング337とで密封された内部には、回転軸32に固着された回転子332、回転子332と僅かな隙間をもってその外周に配置された固定子333及び回転軸32を回転可能に支持する下部軸受334と上部軸受335が収納されている。固定子333は、モータケーシング337に固定されている。下部軸受334及び上部軸受335は、給油を必要としない潤滑剤封入型の軸受とするのが好ましい。本実施の形態では、グリースを封入した転がり軸受を使用している。羽根車31は、電動機33と共通の回転軸32に取り付けられているので、軸受は、2つの転がり軸受334、335とすることができる。特に、スラスト荷重(羽根車31、回転軸32、回転子332を含む回転体の重量と羽根車31にかかる流体力)も受けられるように、転がり軸受334、335の少なくとも一方をアンギュラーコンタクト型のボール軸受とするとよい。モータケーシング337の上部からは、駆動用の電源ケーブル33cが引き出されている。ケーブル引き出し部は水がモータの内部に侵入しないようにシールされている。
ポンプ本体30は、さらに、羽根車31の側面周囲(回転方向周り)を覆うように囲む羽根車ケーシング34を有している。また、羽根車31の吐出側にはガイドベーン35が配設されている。羽根車ケーシング34は、羽根車31に加えてガイドベーン35をも側面周囲で覆うように囲む長さを有している。羽根車ケーシング34は、下端の内径が吸込管フランジ25fの開口25h(異径管25pの内径)と略同じ大きさに形成され、上端の外径がコラムパイプ21の内径よりも僅かに小さく形成されている。羽根車ケーシング34は、下端から上端に向かって径が徐々に広がるように形成されている。なお、図ではは、羽根車31が斜流羽根車である例を示しているが、軸流羽根車でもよい。軸流羽根車の場合の羽根車ケーシング34は、下端から上端まで同じ径で形成される。
羽根車ケーシング34の外周には、円環状の嵌合座34sが形成されている。他方、コラムパイプ21の内面には、円環状の受け座23が形成されている。受け座23と嵌合座34sとは、嵌合したときに、この嵌合部分の全周で空気及び水が通過しないように密着する構成となっている。受け座23と嵌合座34sとが嵌合することにより、コラムパイプ21にポンプ本体30が載置され、ポンプ本体30がコラムパイプ21に収容されたときのコラムパイプ21に対するポンプ本体30の位置が決まる。このとき、羽根車ケーシング34の下端と吸込管フランジ25fの上面との間に所定の幅の隙間である下方隙間11が形成されるような位置に、受け座23及び嵌合座34sが形成されている。下方隙間11は、羽根車ケーシング34下端の下方全体に、典型的には水平に形成されている。下方隙間11は、羽根車ケーシング34内に空気を導入するために設けられる隙間であり、ポンプ本体30を固定パイプ20に収容する際に設定されるクリアランス(受け座23に対して嵌合座34sが浮くことがないように設定されるもの)とは作用効果(意味合い)が異なる。
また、ポンプ本体30がコラムパイプ21に収容されたときのコラムパイプ21に対するポンプ本体30の位置が決まったときに、コラムパイプ21の内面と羽根車ケーシング34の外面と吸込管フランジ25fの上面とで囲まれた隙間(空間)である側方隙間12が形成される。側方隙間12は、回転軸32周りの全周に形成されている。側方隙間12は、下方隙間11を介して羽根車ケーシング34内と連通している。
空気管28は、側方隙間12を形成する部分のコラムパイプ21に一端28aが取り付けられている。空気管28は、一端28aを介して側方隙間12と連通している。空気管28は、一端28aから見て下がることなく上方に延び、最高水位HWLよりも上方で他端28bが大気に開放している。このようにすると、他端28bが水中に没することがないので、水中に存在する異物が他端28bから吸い込まれることを防止できる。他端28bは、水槽98の外部で開放されていると水中に存在する異物の吸い込みを確実に防止することができる。なお、維持管理者が居る可能性のある外部に異臭が放散することを防止する観点から、水槽98の内部で他端28bを開放することとしてもよい。空気管28は、1本又は複数本が取り付けられていてもよい。
次に揚水ポンプ10の作用を説明する。まず水位が吸込管25の下端(開口部)の水位A1よりも低い状態で揚水ポンプ10を始動する。例えば川の上流で大雨が降ったとの降雨情報が入った場合等、ある時間の後に水位が急に上昇することが予測される。そのような場合に、水位がA1よりも下の状態で、先行待機運転用の揚水ポンプ10が始動される。先行待機運転の開始である。なお、揚水ポンプ10を始動する水位は、水位A1よりも上の状態でもよく、つまり水位に関係なく運転が可能である。
雨水の流入により水槽内の水位が上昇し、吸込管25の下端水位A1を越える。水位が下端水位A1を越えても、下方隙間11の上端の高さに相当する下方隙間上端水位TWLを越えても、まだ水は吸い上げられない。羽根車31は空転している(気中運転)。水位がさらに上昇して、吸込開始水位SLWLまで到達したところで、羽根車31は水を吸い込み始める。吸込開始水位SLWLは、羽根車31の下端部分の水位に相当する。このときは、空気管28、側方隙間12、下方隙間11を介して羽根車ケーシング34内に空気も吸い込むので、揚水ポンプ10の全水量吐出の運転(定常運転)ではない。すなわち、揚水ポンプ10は気水混合運転をしている。さらに水位が上昇すると徐々に吸込空気量は減少し、代わりに水量が増加する。やがて水位が定常運転水位RWLまで上昇すると吸込空気量がゼロになり、揚水ポンプ10の全水量を吐出するに至る。すなわち、定常運転に入る。羽根車31の回転によって吸い上げられた水は、コラムパイプ21内を上昇して枝管21pを流れて吐出される。
定常運転水位RWLは、下方隙間上端水位TWLからh≒v2/2gだけ高い水位である。ここで、vはその位置での水の流速、gは重量加速度である。下方隙間11部分では、水の流れによりベルヌーイの定理による速度水頭の分だけ水の流れがない場合に比べて圧力が低くなるので、定常運転水位RWLのときに位置水頭が上記の速度水頭と等しくなる位置は、圧力がゼロ(大気圧)となる。下方隙間11部分は、水位が定常運転水位RWLを下回ると負圧となり、側方隙間12及び空気管28を通じて大気と連通しているために、空気管28の他端28bから羽根車ケーシング34の内部に空気を吸引する。
また、定常運転水位RWLは、できるだけ早く定常運転に入るようにする観点からは最低水位LWLと等しくするのが好ましいが、通常は安全を見てそれよりも高くなるようにする。定常運転水位RWLは、羽根車ケーシング34の長さ(高さ)を適切に設定する等により、下方隙間上端水位TWL(羽根車ケーシング34の下端)に高さhを加えた液位として任意に決定することができる。最低水位LWLは、ポンプ固有の値であり、水位がこれ以下になると、仮に空気管28が無ければポンプの運転の継続に支障をきたす。仮に空気管28が無ければ最低水位LWL以下では吸込管25の下端から渦状に空気を吸い込み始め、振動や騒音が発生し運転の継続が困難になる水位となり、最低水位LWLは渦状の空気吸込以外の条件で定まる場合もある。水位が下方隙間上端水位TWLを越えて最低水位LWLに至るまでの間に下方隙間11から羽根車ケーシング34の内部に吸気することにより、吸込管25の下端から渦状に空気を吸い込まなくなり、振動や騒音などの問題が発生することを回避することができ、そのまま運転を継続することが可能となる。
さらに水位が、最低水位LWLと最高水位HWLの間の水位まで上昇して、揚水ポンプ10は定常運転を継続する。その後、揚水ポンプ10の排水により今度は水位が低下し、定常運転水位RWLを下回ると、空気管28、側方隙間12、下方隙間11を介して羽根車ケーシング34内に空気を吸い込み始める。すなわち、再び気水混合運転が開始される。水位が低下するにつれて吸込空気量が増えて、代わりに水量が減っていく。さらに水位が下がり、下端水位A1になると、水の吸い込みが終わる。このとき、揚水ポンプ10は、まったく水を吸い込まず、羽根車31の上方に水が残存しているエアロック状態となる。エアロック状態では、水が枝管21pまで上がらず、電動機33は羽根車31の上方に残存している水を攪拌することとなる。なお、水位が下方隙間上端水位TWLまで低下したときに、あるいは下方隙間上端水位TWLと下端水位A1との間まで低下したときに、羽根車31が空気中で運転される気中運転状態となって(このとき羽根車31の上方に水が残存していない)水の吸い込みが終わる場合もあるが、本実施の形態では水位が下端水位A1まで低下したときに水の吸い込みが終わるようになっている。降雨が続くときは、そのまま運転を続ける。
水位が下端水位A1よりも一旦低下して再び上昇に転じたとき、羽根車31の上方に水が残存しているエアロック状態であれば、水位が吸込管25の高さである下端水位A1に到達したときに水の吸い上げが始まる。他方、羽根車31の上方に水が残存していない気中運転状態であれば、水位が上述のように吸込開始水位SLWLに到達したときに水の吸い上げが始まる。このようにして、先行待機運転用の揚水ポンプ10は、水槽98の水位にかかわらず、空運転(気中運転状態又はエアロック状態)と全水量の運転との間で運転を継続することができる。空運転と全水量運転との間の移り変わりは、揚水ポンプ10が水と共に空気管28から空気を一緒に吸い込むので滑らかに行われる。
次に図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る揚水ポンプ102を説明する。図2は、揚水ポンプ102の正面断面図である。第2の実施の形態に係る揚水ポンプ102の、第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10(図1参照)と異なる点は、下方隙間11がより大きく形成され、羽根車31より上流側でコラムパイプ21の内面に旋回防止部材としての旋回防止板41が設けられていることである。他の構成は揚水ポンプ10(図1参照)と同様である。定常運転水位RWL以下で気水混合運転を行う先行待機運転用のポンプは、水位が低く水と共に空気を吸い込む場合、羽根車31の下方に旋回流れが発生することに伴い、旋回流れが発生しない場合に比べて下方隙間11付近に発生する負圧が減殺されてしまい、十分な吸気が行われず、期待通りに気水混合運転がなされないことがあった。
揚水ポンプ102は、旋回流れが発生しない場合に比べて下方隙間11付近に発生する負圧が減殺される原因となる旋回流の発生を低減する旋回防止板41が取り付けられている。旋回防止板41は、典型的には矩形の板であり、垂線が水平になるように一辺がコラムパイプ21の内面に固定され、この固定された辺に対向する辺がコラムパイプ21の軸に向かう方向に延びている。旋回防止板41は、このコラムパイプ21の軸に向かう方向に延びる辺が、仮に羽根車ケーシング34の下端を吸込管フランジ25fに当たるまで延長するとした場合に、この仮想部分の羽根車ケーシング34の内面よりも内側に突き出ないように形成されている。旋回防止板41は、羽根車ケーシング34の下端との間隔がポンプ本体30を出し入れする際に干渉しない程度の距離となっており、吸込管フランジ25fの上面との間隔が気水混合運転をする際に空気を吸い込むことができる程度の距離となっている。旋回防止板41は、典型的には、コラムパイプ21の水平断面における円周の中心角が等しくなるような間隔で複数(本実施の形態では4つ)設けられている。
揚水ポンプ102は、定常運転水位RWL以下で気水混合運転を行う際に、羽根車31の下方に旋回流れが発生しようとしても、旋回防止板41が回転軸32周りの水の流れの邪魔となって旋回流の発生が低減される。これにより、下方隙間11部分に発生する負圧が減殺されることが低減され、十分な吸気が行われることとなる。したがって、吸込管25が水面から渦状に空気を吸い込んでしまって振動を生じる等の運転が不安定になってしまうことを回避することができる。
図3には、本発明の第2の実施の形態の変形例に係る揚水ポンプの正面断面の一部分を示す。(a)は第1の変形例に係る揚水ポンプ102Aを、(b)は第2の変形例に係る揚水ポンプ102Bを、(c)は第3の変形例に係る揚水ポンプ102Cをそれぞれ示す。揚水ポンプ102Aは、揚水ポンプ102における側方隙間12の下部及び下方隙間11に設けられた矩形の旋回防止板41に代えて、直角三角形あるいは台形の板で形成された旋回防止板41Aが、側方隙間12内に設けられている。このように構成すると、旋回防止部材が主水流にないので、流路損失がなくゴミの引っかかりもほとんどなくなる。揚水ポンプ102Bは、揚水ポンプ102と比べて、旋回防止板41のコラムパイプ21の軸に向かう方向に延びる辺が、仮に羽根車ケーシング34の下端を吸込管フランジ25fに当たるまで延長するとした場合に、この仮想部分の羽根車ケーシング34の内面よりも内側に突き出るように形成されている。このように構成すると、旋回流をより大きい面積で止めることができ、さらに旋回流を低減することができる。揚水ポンプ102Cは、揚水ポンプ102における側方隙間12の下部及び下方隙間11に設けられた矩形の旋回防止板41に代えて、矩形の板で形成された旋回防止板41Cが、羽根車31よりも上流側の羽根車ケーシング34内に設けられている。旋回防止板41Cは、垂線が水平になるように一辺が羽根車ケーシング34の内面に固定され、この固定された辺に対向する辺が羽根車ケーシング34の軸に向かう方向に延びている。旋回防止板41Cは、他の実施の形態と同様に複数設けられている。この仮想部分の羽根車ケーシング34の内面よりも内側に突き出るように形成した構成でもよい。
次に図4を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る揚水ポンプ103を説明する。図4は、揚水ポンプ103の正面断面図である。第3の実施の形態に係る揚水ポンプ103は、第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10(図1参照)から見てさらに電動機33の昇温防止手段を備えている。上述のように、電動機33は、エアロック状態になると羽根車31の上方に残存している水を攪拌するだけとなり、気中運転状態になると羽根車31周囲の空気を攪拌するだけとなる。水又は空気が入れ替わらないエアロック状態又は気中運転状態の運転では、電動機33が冷却されないこととなり、これを続けると電動機33の故障に至る可能性がある。揚水ポンプ103は、これらの不都合を回避するため、昇温防止手段として機能する、制御装置50、電流計51、電極棒52、バイパス弁53vが配設されたバイパス管53、排気弁54vが配設された排気管54を備えている。
電流計51は、電動機33の電流値を検出する計器である。電流計51は、電動機33の負荷が大きいと大きな値を検出する。したがって、気中運転状態の電流値は、定常運転又は気液混合運転時あるいはエアロック状態の電流値に比べて著しく小さくなる。電流計51は、典型的には電動機33等に電力を送電する動力盤(不図示)に設けられている。電流計51は、電動機33の力率値を検出する計器としてもよい。電極棒52は、コラムパイプ21内の水位が所定の水位に至っているか否かを検出するものである。電極棒52は、その下端が、コラムパイプ21内の枝管21pが接続されている高さに位置するように配設されている。電極棒52は、コモン電極(不図示)と協働して、電極棒52への接液の有無を検出することにより、コラムパイプ21内の水位が所定の水位に至っているか否かを検出することができる。電極棒52が接液を検出した場合は、枝管21pに水が流れていることになる。
バイパス管53は、エアロック状態のときに羽根車31の上部に滞留している水を水槽98内へ導くことができるものである。バイパス管53は、一端53aが、エアロック状態のときのコラムパイプ21内の水面水位よりも下方かつ羽根車31の上端よりも上方のコラムパイプ21の外側面に接続されており、これによりコラムパイプ21内に連通している。一端53aは、典型的には羽根車ケーシング34の上端の直近上方のコラムパイプ21の外側面に接続されている。一端53aは、電動機33の下端付近の高さに設けられているのが好ましい。バイパス管53は、一端53aからみて水平に延びた後に向きを変えて下方に延び、羽根車31よりも下方で下向きに他端53bが開口している。バイパス管53には、水の流れを遮断可能なバイパス弁53vが配設されている。バイパス弁53vは、典型的には電動弁あるいは電磁弁が用いられる。
排気管54は、コラムパイプ21内の空気をコラムパイプ21外の大気に排出することができるものである。排気管54は、コラムパイプ21の上方に設けられていると、下方から上方へ向かう空気の流れを作り出すことが可能になるので好ましい。バイパス管54は、典型的にはコラム蓋22に取り付けられており、コラムパイプ21内とコラムパイプ21外の外気とが連通するように構成されている。排気管54には、流路を遮断可能な排気弁54vが配設されている。排気弁54vは、典型的には電磁弁あるいは電動弁が用いられる。
制御装置50は、電動機33の昇温を防止するように昇温防止手段を構成する各機器を制御することができるように構成されている。制御装置50は、電流計51と信号ケーブルを介して電気的に接続されており、電流計51が検出した電流値を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置50は、電極棒52と信号ケーブルを介して電気的に接続されており、検出した水位を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置50は、バイパス弁53v及び排気弁54vとそれぞれ信号ケーブルを介して電気的に接続されており、開閉信号を送信してバイパス弁53v及び排気弁54vのそれぞれを開状態又は閉状態にすることができるように構成されている。また、制御装置50は、計時手段としてのタイマー(不図示)を有している。
ここで図5のフローチャートを併せて参照して、揚水ポンプ103の作用を説明する。揚水ポンプ103は、制御装置50によって以下に説明するように制御される。揚水ポンプ103は、水位の変動に伴って上述の第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10(図1参照)の作用の説明で述べたような運転を行う(S1)。このとき、バイパス弁53v及び排気弁54vは閉となっている。そして、揚水ポンプ103の運転中に、制御装置50は、エアロック状態となったか否かを判断する(S2)。エアロック状態か否かは、電流計51によって電動機33に負荷がかかっていることを検出し、かつ、電極棒52が接液していないことを検出したときにエアロック状態にあると判断する。エアロック状態となった場合は、エアロック状態となってから第1の所定の時間が経過したか否かを判断する(S3)。「第1の所定の時間」は、エアロック状態が継続しても電動機33が故障するほどの高温に至ることがない時間内で任意に決定することができる。他方、エアロック状態で水位の上昇に備えておくことに、先行待機運転に適したポンプの意義がある。ゆえに、電動機33が故障しない範囲内でエアロック状態を継続することが好ましい。
エアロック状態となってから第1の所定の時間が経過したか否かを判断する工程(S3)において、第1の所定の時間が経過していない場合は、エアロック状態となったか否かを判断する工程(S2)に戻る。他方、第1の所定の時間が経過した場合は、バイパス弁53vを開にする(S4)。バイパス弁53vが開になると、コラムパイプ21内の羽根車31の上方で滞留攪拌されていた水がバイパス管53を介してコラムパイプ21外へ流出する。このとき、流出した分の水を補充するように吸込管25から羽根車31の上方まで水が揚水されてエアロック状態が継続される場合があるが、バイパス管53から水が流出することによりコラムパイプ21内の水の入れ替えが行われるため、電動機33の昇温が抑制される。
バイパス弁53vを開にしたら、エアロック状態が解消したか否かを判断する(S5)。制御装置50は、電極棒52が接液していることを検出したとき(気液混合運転又は定常運転)あるいは電流計51によって電動機33に負荷がかかっていないことを検出したとき(気中運転状態)にエアロック状態が解消したと判断する。エアロック状態が解消していない場合は、バイパス弁53vを開にした状態を維持しつつ再びエアロック状態が解消したか否かを判断する工程(S5)に戻る。他方、エアロック状態が解消した場合は、昇温防止対策をリセットし(S10)、通常の揚水ポンプ103の運転(S1)に戻る。ここでのリセットは、バイパス弁53vを閉にすることとエアロック状態となってからの時間の計測のリセットが行われる。
エアロック状態となったか否かを判断する工程(S2)において、エアロック状態となっていない場合は、気中運転状態となったか否かを判断する(S6)。気中運転状態か否かは、電流計51によって電動機33に負荷がかかっていないことを検出したときに気中運転状態にあると判断する。気中運転状態となった場合は、気中運転状態となってから第2の所定の時間が経過したか否かを判断する(S7)。「第2の所定の時間」は、気中運転状態が継続しても電動機33が故障するほどの高温に至ることがない時間内で任意に決定することができる。第2の所定の時間は第1の所定の時間と同じであってもよい。他方、気中運転状態で水位の上昇に備えておくことに、先行待機運転に適したポンプの意義がある。したがって、電動機33が故障しない範囲内で気中運転状態を継続することが好ましい。
気中運転状態となってから第2の所定の時間が経過したか否かを判断する工程(S7)において、第2の所定の時間が経過していない場合は、エアロック状態となったか否かを判断する工程(S2)に戻る。他方、第2の所定の時間が経過した場合は、排気弁54vを開にする(S8)。排気弁54vが開になると、コラムパイプ21内の空気が排気管54を介してコラムパイプ21外へ流出し、これに伴って空気管28、側方隙間12、下方隙間11を介して羽根車ケーシング34内に空気が流入する。つまり、コラムパイプ21内に下方隙間11から排気管54へと向かう空気の流れが形成される。このように空気の入れ替えが行われるため、電動機33の昇温が抑制される。
排気弁54vを開にしたら、気中運転状態が解消したか否かを判断する(S9)。制御装置50は、電流計51によって電動機33に負荷がかかっていることを検出したときに気中運転状態が解消したと判断する。気中運転状態が解消していない場合は、排気弁54vを開にした状態を維持しつつ再び気中運転状態が解消したか否かを判断する工程(S9)に戻る。他方、気中運転状態が解消した場合は、昇温防止対策をリセットし(S10)、通常の揚水ポンプ103の運転(S1)に戻る。ここでのリセットは、排気弁54vを閉にすることと気中運転状態となってからの時間の計測のリセットが行われる。
揚水ポンプ103についての以上の説明では、エアロック状態となったときにバイパス管53から水をコラムパイプ21外に流出させ、気中運転状態となったときに排気管54から空気をコラムパイプ21外に流出させることとしたが、エアロック状態又は気中運転状態となったときに制御装置50が電動機33を停止させる制御をするように構成してもよい。このように構成すると、バイパス弁53vが配設されたバイパス管53及び/又は排気弁54vが配設された排気管54を省略することができ、装置構成がシンプルになる。また、揚水ポンプ103において、バイパス弁53v及び排気弁54vを自動制御することに代えて、手動で開閉させることとしてもよい。この場合、エアロック状態又は気中運転状態になったことを警報等で知らせることができるようにするとよい。また、揚水ポンプ103において、排気管54を省略してバイパス管53が排気管54の機能を兼ねるようにすることで、装置構成をシンプルにしてもよい。
図6には、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る揚水ポンプの側方隙間12まわりの詳細断面を示す。図6(a)に示す変形例では、揚水ポンプ10(図1参照)を基本構成として、受け座23に受け座孔23hが形成され、受け座23及び嵌合座34sによって区画された上下の部分が連通するように構成されており、揚水ポンプ103(図4参照)が備えているバイパス弁53vが配設されたバイパス管53、排気弁54vが配設された排気管54、制御装置50、電流計51、電極棒52が省略されている。このように構成した場合、エアロック状態になったときは羽根車31の上部に滞留している水が受け座孔23hを通り側方隙間12及び下方隙間11を通って羽根車31の下部に移動する水の流れが形成され、気中運転状態になったときは羽根車31の上部に存在している空気が受け座孔23h、側方隙間12及び下方隙間11を通って羽根車31の下部に移動する空気の流れが形成されるので、電動機33の昇温を抑制することができる。また、このように構成した場合、エアロック状態及び気中運転状態ではなく、水位が上昇して気液混合運転となったときは、受け座孔23hから流入した水と空気管28から流入した空気とが側方隙間12内において混合して下方隙間11を介して羽根車ケーシング34内に流入することとなる。このように、図6(a)に示す変形例では装置構成を単純にすることができる。また、図6(b)の変形例に示すように、側方隙間12の下方部分の吸込管フランジ25fに貫通孔25gを形成してもよい。
次に図7を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る揚水ポンプ104を説明する。図7は、揚水ポンプ104の正面断面図である。第4の実施の形態に係る揚水ポンプ104は、第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10(図1参照)から見てさらに、運転中における固定パイプ20に対するポンプ本体30の振動を低減させる支持部材を備えている。いわゆるコラム型のポンプはコラムに対してポンプ本体が着脱可能なように構成されているため、羽根車等がケーシングに固定されているポンプに比べて振動が生じやすい。揚水ポンプ104は、このような事情を考慮して振動を低減させる支持部材を備えている。
第4の実施の形態に係る揚水ポンプ104の、第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10(図1参照)と異なる点は、コラム蓋22に支持部材としてのサポートパイプ22sが取り付けられていることである。サポートパイプ22sは、コラム蓋22の内側の面に対して垂直に下方に延びて設けられており、電動機33のケーシングの上端角部をサポートパイプ22sの内面で押さえることができるようにその下端が下方に向かって広がっている傾斜面を有している。傾斜面部分のサポートパイプ22sの内面には、ゴムパット22rが貼付されている。揚水ポンプ104は、固定パイプ20にポンプ本体30を収容してコラム蓋22を閉じたときに、傾斜面部分のサポートパイプ22sの内面が、ゴムパット22rを介して電動機33のケーシングの上端角部を押さえることにより、揚水ポンプ104を運転した際に発生しうる固定パイプ20とポンプ本体30との相対的な位置の変化(振動による移動)を低減することができる。なお、回転方向の移動を防止するための部材を羽根車ケーシング34の嵌合座34s又はコラムパイプ21の受け座23に設けてさらに移動を抑制することもできる。
図8(a)には、本発明の第4の実施の形態の第1の変形例に係る揚水ポンプ104Aの正面断面図を示す。揚水ポンプ104Aは、固定パイプ20及びポンプ本体30とは別体の支持部材としてのサポート部材61を用いてポンプ本体30を固定パイプ20に押さえるように構成されている。図8(b)の斜視図に示すように、サポート部材61は、2つのリング部材61cを複数(例えば4つ)の棒状部材61bで接続して構成されている。リング部材61cは、内径が電動機33のモータケーシング337(図1参照)の外径よりも大きく、外形がコラムパイプ21の内径よりもわずかに小さく形成されている。棒状部材61bは、サポート部材61の高さが羽根車ケーシング34の上端とコラム蓋22の内面との鉛直距離に等しくなる長さに形成されている。サポート部材61を構成する一方のリング部材61cの端面には、ゴムシート61rが貼付されている。揚水ポンプ104Aでは、固定パイプ20にポンプ本体30を収容したら、ゴムシート61rが貼付された方が上になるようにサポート部材61をポンプ本体30の周囲に嵌め込んだうえで、コラム蓋22を閉じるようにする。これにより、コラム蓋22の内面がサポート部材61を介してポンプ本体30を固定パイプ20に押さえ付けることとなり、揚水ポンプ104Aを運転した際に発生しうる固定パイプ20とポンプ本体30との相対的な位置の変化(振動による移動)を低減することができる。さらに、コラム蓋22に、押しつけ力を調節するルーズ機構を設けてもよい。
図9(a)には、本発明の第4の実施の形態の第2の変形例に係る揚水ポンプ104Bの正面断面図を示す。揚水ポンプ104Bは、支持部材としてのロック機構62を備えている。図9(b)の詳細図に示すように、ロック機構62は、コラムパイプ21の内壁からコラムパイプ21内に突起が出入りするロック部材63と、ロック部材63をコラムパイプ21に出し入れするように動かすリンク機構64とを有している。揚水ポンプ104Bは、コラムパイプ21にポンプ本体30を収容したときにガイドベーン35が位置する高さのコラムパイプ21の側面に、ロック孔21hが形成される。ロック孔21hにはブッシュ63bが取り付けられ、ブッシュ63bの孔にロック部材63が挿入される。ロック部材63は、外側に鍔が形成されており、鍔とブッシュ63bとの間にOリング63rが介在するようにOリング63rを取り付けたうえでブッシュ63bの孔に挿入される。コラムパイプ21の外側には、リンク機構64を構成する2つのL型部材64a、64cが、上下に間隔を空けて取り付けられている。L型部材64a、64cは、それぞれL型の山の頂部で、L型の両端部が上下に回動可能にピン等でコラムパイプ21に枢支されている。コラムパイプ21の上方に取り付けられているL型部材64aの下端と、下方に取り付けられているL型部材64cの上端とは、リンク機構64を構成するI型部材64bの各端部にそれぞれ回動可能にピン等で取り付けられている。I型部材64bに取り付けられていない方のL型部材64cの端部は、ロック部材63の鍔に取り付けられている。ロック機構62は、コラムパイプ21の外周に複数(例えば4つ)設けられている。揚水ポンプ104Bでは、L型部材64aの上端が上がっている状態のときにロック部材63の先端がコラムパイプ21の内側に突き出ていないので、この状態で固定パイプ20にポンプ本体30を収容したら、L型部材64aの上端を下げる。すると、ロック部材63の先端がコラムパイプ21の内側に突き出て羽根車ケーシング34を外側から押さえ付ける。これにより、揚水ポンプ104Bを運転した際に発生しうる固定パイプ20とポンプ本体30との相対的な移動を低減することができる。このとき、Oリング63rがロック部材63の鍔とブッシュ63bとの間に介在するので、ロック孔21hから水が漏れることが防止される。
次に図10を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る揚水ポンプ105を説明する。図5は、揚水ポンプ105の正面断面図である。第5の実施の形態に係る揚水ポンプ105の、第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10(図1参照)と異なる点は、ポンプ本体30の回転軸32が下方に延びており、回転軸32を支持する軸受け36が羽根車31の上流側に設けられていることである。他の構成は揚水ポンプ10(図1参照)と同様である。軸受け36は、羽根車ケーシング34の内面から内側に延びる複数(例えば4つ)のリブ37により羽根車ケーシング34に固定されている。軸受け36を羽根車31よりも上流側に設けることにより、羽根車31を挟んで両端支持となって、電動機33側の軸受けの負荷を低減することができ、揚水ポンプ105の寿命を延ばすことができる。なお、リブ37を矩形板状に形成することにより、第2の実施の形態に係る揚水ポンプ102Cの旋回防止板41C(図3(c)参照)の機能をリブ37に持たせることが可能になる。
次に図11を参照して、本発明の第6の実施の形態に係る揚水ポンプ106を説明する。図11は、揚水ポンプ106の正面断面図である。第6の実施の形態に係る揚水ポンプ106の、第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10(図1参照)と異なる点は、空気流入機構として、空気管28(図1参照)を備えておらず、コラムパイプ21Aが二重管に形成され、二重管の間を利用して側方隙間12に空気を供給する構成になっている。具体例で説明すると、揚水ポンプ106は、コラムパイプ21Aが、外側に配設された外管21jと、外管21jよりも内側で外管21jとの間に空気流路29を形成するように配設された内管21kとを有している。上部フランジ21aは、内管21kの上端から外側に広がるように取り付けられており、外管21jの上端が上部フランジ21aに接触している。下部フランジ21bは、外管21jの下端に取り付けられている。内管21kの下端は、揚水ポンプ10(図1参照)における受け座23(図1参照)が形成されている位置に相当する位置で全体が水平方向の内側に曲がっており、羽根車ケーシング34の外周に形成された嵌合座34sと嵌合する受け座21m(図1における受け座23に相当)が形成されている。また、最高水位HWLよりも上方の外管21jの側面には、空気流路29につながる吸気孔21iが形成されている。図11に示す例では、吸気孔21iが水槽98の外で開口しているが、水槽98内で開口していてもよい。枝管21pは、内管21kに接続されており、外管21jを貫通して外側に延びている。これら以外の構成は、揚水ポンプ10(図1参照)と同様である。揚水ポンプ106は、コンパクトながら十分な量の空気を側方隙間12に供給することができる。
次に図12を参照して、本発明の第7の実施の形態に係る揚水ポンプシステム107を説明する。図12は、揚水ポンプシステム107を説明する部分断面図である。揚水ポンプシステム107は、これまでに説明した第1〜第6の実施の形態(それぞれ変形例も含む)に係る揚水ポンプ10、102〜106のいずれかを複数備えている。本実施の形態では第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10を3台備えることとして説明する(区別を容易にするために異なる符号10A、10B、10Cをそれぞれに付することとする)。揚水ポンプシステム107は、同じ大きさの揚水ポンプ10A、10B、10Cが同じ高さで構造物99に固定されている。同じ大きさの揚水ポンプ10A、10B、10Cを備えることで、それぞれの固定パイプ20に対してポンプ本体30を相互に入れ換えることが可能になる。なお、それぞれの固定パイプ20に対してポンプ本体30を相互に入れ換えることが可能であれば、大きさが異なっていてもよい。
そして、各揚水ポンプ10A、10B、10Cは、吸込管25の異径管25pの上端部分の内径がそれぞれ異なっている。本実施の形態では、異径管25pの上端部分の内径は、揚水ポンプ10Aの内径dAが最も小さく、揚水ポンプ10Bの内径dBが中間で、揚水ポンプ10Cの内径dCが最も大きくなっている(すなわち、各内径はdA<dB<dCの関係にある。)。これにより、下方隙間11付近の水の流速は、揚水ポンプ10Aが最も速く、揚水ポンプ10Bが中間の速さで、揚水ポンプ10Cが最も遅くなり、各揚水ポンプ10A、10B、10Cは同じ高さで構造物99に固定されているが、定常運転水位RWL(図1参照)は揚水ポンプ10Aが最も高く、揚水ポンプ10Cが最も低くなる。したがって、定常運転(全速運転)の状態の時間は揚水ポンプ10Cが最も長く、揚水ポンプ10Aが最も短くなる。このように、定常運転(全速運転)となる水位を変えることができるので、急激な水位変動や電源の負荷変動を抑えることができる。さらに、空気管28を流れる空気の抵抗を変える(例えば、空気管28の径を変える、空気管28に弁を設置する等)ことにより、空気の流入量を個々に変えて定常運転となる水位を変えることとしても同様の効果を与えることができる。揚水ポンプシステム107は、固定パイプ20に対してポンプ本体30を相互に入れ換えることができるので、ポンプ本体30のローテーションを行うことにより各ポンプ本体30にかかる負荷を平準化することができ、各ポンプ本体30の寿命を延ばすことができる。揚水ポンプシステム107は、各揚水ポンプ10A、10B、10Cにおいて、ポンプ本体30及びコラムパイプ21の構造は同一で、吸込管25の異径管25pの形状を変えるだけで、定常運転水位RWL(図1参照)を変えることができ、水位の変動に対して円滑な排水が可能になる。
次に図13を参照して、本発明の第7の実施の形態の変形例に係る揚水ポンプシステム107Aを説明する。図13は、揚水ポンプシステム107Aを説明する部分断面図である。揚水ポンプシステム107Aは、揚水ポンプシステム107(図12参照)と比べて、吸込管25の異径管25pの上端部分の内径がすべて同じに構成されている一方で、異径管25pの下端の高さがそれぞれ異なるように各揚水ポンプ10A、10B、10Cが構造物99に固定されている点が相違している。その他の構成は揚水ポンプシステム107(図12参照)と同じである。異径管25pの下端の高さがそれぞれ異なるため、水位の上昇に伴う揚水開始時期がそれぞれ異なることとなる。揚水ポンプシステム107Aでは、水位の上昇に伴う揚水開始時期は、異径管25pの下端の高さが最も低い揚水ポンプ10Aが最も早く、次いで揚水ポンプ10B、揚水ポンプ10Cの順に揚水が開始されることとなる。水位が低下したときの運転停止時期は、逆に、揚水ポンプ10Cが最も早く、揚水ポンプ10B、揚水ポンプ10Aの順に停止することとなるので、運転時間は揚水ポンプ10Aが最も長くなる。また、各揚水ポンプ10A、10B、10C間における揚水開始時期あるいは運転時間に対応するように定常運転の時間も異なることとなる。運転時間が異なることで、最も長時間にわたり運転される揚水ポンプ10Aにかかる負荷が最も大きくなる。揚水ポンプシステム107Aは、固定パイプ20に対してポンプ本体30を相互に入れ換えることができるので、ポンプ本体30のローテーションを行うことにより各ポンプ本体30の運転時間を平準化することができ、各ポンプ本体30にかかる負荷を平準化することができて、各ポンプ本体30の寿命を延ばすことができる。揚水ポンプシステム107Aは、各揚水ポンプ10A、10B、10Cにおいて、ポンプ本体30の構造は同一(吸い込み開始位置が変わってもポンプ回転軸の長さを変えなくてよい)で、固定パイプ20のみ、中でも単純な構成のコラムパイプ21の長さが異なるだけであるので製造が容易であり、揚水ポンプシステム107(図12参照)と比べてポンプ効率を高く維持できる。なお、異径管25pの下端の位置を相互に変えず、ポンプ本体30の設置高さ(羽根車31の高さ)を変えることにより、揚水開始時期を変えるように構成してもよい。
なお図14に示すような、コラムパイプ21ではなく吸込管25に空気管28が接続された気水混合運転されるコラム型の揚水ポンプ10Xであっても、上述の揚水ポンプシステム107(図12参照)あるいは揚水ポンプシステム107A(図13参照)を構成する揚水ポンプとして適用可能である。
次に図15に、上述の本発明の第1〜第6の実施の形態(変形例も含む)に係る揚水ポンプ10、102〜106(本発明の第7の実施の形態に係る揚水ポンプシステム107、107Aの構成要素となる場合も含む)に適用可能な吸込管の変形例を示す。図15(a)に示すように、異径管25p(例えば図1参照)に代えて直管25xを吸込管フランジ25fに取り付けて吸込管25Aを構成してもよい。また、図15(b)に示すように、異径管25p(例えば図1参照)から下端を滑らかに曲げて上方に向かうように、かつ、外側に位置する端部が内側に位置する端部よりも上方に延びるように構成した流線型管25yのように変形し、外側の端部を吸込管フランジ25fに取り付けて吸込管25Bを構成してもよい。この場合、ポンプ本体30が固定パイプ20に収容されたときに羽根車ケーシング34の一部が吸込管フランジ25fを貫通して吸込管25B内に位置することとなる。この場合も、下方隙間11及び側方隙間12が形成されるような位置でポンプ本体30がコラムパイプ21に対して位置決めされる。図15(b)に示すように、側方隙間12が吸込管25Bと羽根車ケーシング34との間に形成される場合は、空気管28が吸込管25Bに接続される。流線型管25yを有する吸込管25Bを採用すると、吸込側のロス(圧力損失)を低減することができると共に、空気を羽根車ケーシング34の周囲に略一様に分配可能な側方隙間12を形成することができる。なお、吸込管25Bの曲がった下端部分の内側に水が入らないように内側に位置する端面より下部を充填物(不図示)で埋めてもよく、あるいは吸込管25Bの曲がった下端部分にその内側に入った水を抜くドレン孔(不図示)を形成してもよい。また、図15(c)に、吸込管25Bを採用した際の、側方隙間12内に直角三角形あるいは台形の板で形成された旋回防止板41Aが設けられた場合の例を示す。この場合、旋回防止板41Aは、側方隙間12が形成される吸込管25Bの形状に合わせて様々な形状に形成することができる。なお、図示は省略するが、吸込管25Bを採用した場合であっても、図2又は図3(b)に示したように下方隙間11を大きく形成して側方隙間12の下部及び下方隙間11に矩形の旋回防止板41を設けてもよく、あるいは図3(c)に示したように矩形の板で形成された旋回防止板41Cを羽根車31よりも上流側の羽根車ケーシング34内に設けてもよい。
なお図16に示すように、上述の本発明の第1〜第6の実施の形態(変形例も含む)に係る揚水ポンプ10、102〜106(本発明の第7の実施の形態に係る揚水ポンプシステム107、107Aの構成要素となる場合も含む)において、空気管28(図11に示す揚水ポンプ106の場合は吸気孔21i)に流路を遮断可能な遮断弁58を配設し、別途水槽98内の水位を検出する水位検出器59及び制御装置50Aを設け、検出した水位に応じて遮断弁58を開閉制御して、側方隙間12及び下方隙間11を介して羽根車ケーシング34内に空気を導入するタイミングをコントロールするように構成してもよい。
また図17に示すように、上述の本発明の第2の実施の形態(変形例も含む)に係る揚水ポンプ102、102A、102C等(図2、図3(a)、図3(b)、図15(c)参照)において、空気管28を側方隙間12内に突き出して、側方隙間12内に存在する部分の空気管28と旋回防止部材とを一体に構成してもよい。図17(a)に示す例では、空気管28の直径と比較して厚さが小さく長さが大きい旋回防止板41Eが、空気管28の先端開口部に、空気管28の先端開口の一部を旋回防止板41Eの厚みで遮るように、また旋回防止板41Eの長手方向が鉛直になるように取り付けられている。図17(b)に示す例では、板状の旋回防止板41Fが、鉛直方向に立つようにして空気管28の側壁部分に取り付けられている。このような、側方隙間12内に存在する部分の空気管28と旋回防止部材とを一体に構成する変形例は、本発明の第7の実施の形態に係る揚水ポンプシステム107、107Aの構成要素となる場合にも適用可能である。
また上述の揚水ポンプ103(図4参照)が備えているような昇温防止手段(制御装置50(昇温時に電動機33を停止させるシーケンスを含む)、電流計51、電極棒52、バイパス弁53vが配設されたバイパス管53、排気弁54vが配設された排気管54)を、図14に示すような、コラムパイプ21ではなく吸込管25に空気管28が接続された気水混合運転されるコラム型の揚水ポンプ10Xに対して適用してもよく、さらに、図示は省略するが、コラム形ではない水中モータポンプに対して適用してもよい。
以上で説明した本発明の第2〜第6の実施の形態(変形例も含む)に係る揚水ポンプ102〜106のそれぞれが有する特徴的な構成は、それぞれのうちの任意の2つ以上(全部であってもよい)の特徴的な構成を本発明の第1の実施の形態に係る揚水ポンプ10に対して重畳して適用してもよい。