JP2005240622A - 立軸ポンプシステム及びポンプ機場 - Google Patents

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義弘 内田
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喜裕 山川
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Abstract

【課題】 羽根車の上流側に配置された吸込管内に任意もしくは安定した空気圧・空気量が確実に流入するようにした、特に先行待機運転に適する立軸ポンプシステム及び該立軸ポンプシステムを備えたポンプ機場の提供することを目的とする。
【解決手段】 縦方向に配置される回転軸21により回転し、水槽1内の水を吸い込む羽根車20と、羽根車20の上流側に配置され、羽根車20に向けて水を流す吸込管31と、吸込管31に一端が接続され、吸込管31に空気を導入する空気管60とを有する立軸ポンプ10と;空気管60の他端に接続され、空気管60に空気を送り込む送風機70と;空気管60への空気の供給開始、停止を行なう開始停止手段71と;開始停止手段71を制御する制御機構73を備えるように構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、立軸ポンプシステム及びポンプ機場に関し、特に先行待機運転に適する立軸ポンプシステム及びポンプ機場に関するものである。
従来から図12に示すように、縦方向に配置された軸の先端に羽根車2を備え、羽根車2に水と共に空気を吸い込ませることにより、吸込水槽1の最低運転水位LWL以下でも運転を継続することを可能にした立軸ポンプ3があった。このポンプ3では、羽根車2入口側の吸込管4に貫通孔5を設け、貫通孔5に、外気に開口6aした空気管6を取り付け、最低運転水位LWL以下で、貫通孔5を経て流入する空気の流入量を水位に応じて変化させて徐々に排水量を低下させ、さらに低い水位ではポンプを空運転させるようにしていた。
このようにして、例えば大都市の雨水排水用として、吸込水位に関係なく降雨情報等により予めポンプを始動しておき、低水位から水位が上昇するときは空運転から水量を徐々に増やしながら全量運転へ、また高水位から水位が低下するときは全量運転から水量を徐々に減らしながら空運転へと、スムーズに運転を移行できるようにしていた。このようなポンプは、ケーシング下端よりも低い水位LLLWLで始動される(例えば、特許文献1参照。)。
実開平3−56895号公報(第5図)
また、図13の模式的正面断面図に示すように、以上のようなポンプを複数備えるポンプ機場があった。この機場には、急激な排水開始や排水停止による水槽のサージ現象を防止するために、胴管の長さや、羽根車の位置を変えた複数のポンプ3a、3b、3cが備えられ、各ポンプの排水開始水位及び全量運転水位を段階的に変えるようにしていた。
しかしながら、以上のような従来のポンプでは、例えばクローズタイプの水槽でポンプ取り付けが密閉された水槽に据え付けられているときは、水位の増減により、水槽内上方の密閉空間の空気圧が変動するため空気流入開始水位(揚水開始水位、揚水停止水位)に変動誤差が生じ、設定した水位と異なる水位で揚水開始されたり、揚水停止水位でも排水されるという問題があった。また、従来の立軸ポンプが複数台取り付けられたポンプ機場では、最も長い胴管を有するポンプ3aや最も下に羽根車が取り付けられたポンプが、必ず最初に排水を開始する。したがって運転頻度、運転時間が他機3b、3cに比べて、過多となる。このように、ポンプによって起動水位が異なるので、ポンプ運転時間に偏りが生じ、特定のポンプの消耗が激しくなったり、維持管理作業の困難性を招くという問題があった。
そこで本発明は、羽根車の上流側に配置された吸込管内に、任意もしくは安定した空気圧・空気量が確実に流入するようにした、特に先行待機運転に適する立軸ポンプシステム及び該立軸ポンプシステムを備えたポンプ機場の提供を目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による立軸ポンプシステムは、例えば図1又は図2に示すように、縦方向に配置される回転軸21により回転し、水槽1内の水を吸い込む羽根車20と、羽根車20の上流側に配置され、羽根車20に向けて水を流す吸込管31と、吸込管31に一端が接続され、吸込管31に空気を導入する空気管60とを有する立軸ポンプ10と;空気管60の他端に接続され、空気管60に空気を送り込む送風機70と;空気管60への空気の供給開始、停止を行なう開始停止手段71と;開始停止手段71を制御する制御機構73を備えるように構成されている。
このように構成すると、空気管60に空気を送り込む送風機70を備えるので、羽根車20の上流側に配置された吸込管31内に、任意もしくは安定した空気圧・空気量が確実に流入するようにでき、例えば始動水位の調整ができる特に先行待機運転に適する立軸ポンプシステムを提供することができる。
また請求項2に記載のように、請求項1に記載の立軸ポンプシステムは、制御機構73は、空気管60内の圧力、又は水槽1の水位に応じて空気の供給開始、停止をするように開始停止手段71を制御するように構成してもよい。
上記目的を達成するために、請求項3に係る発明による立軸ポンプシステムは、例えば図2又は図6に示すように、縦方向に配置される回転軸21により回転し、密閉された水槽1内の水を吸い込む羽根車20と、羽根車20の上流側に配置され、羽根車20に向けて水を流す吸込管31と、吸込管31に一端が接続され、他端が密閉された水槽1内の最高水位よりも上方に開口する空気管60とを有する立軸ポンプ10と;密閉された水槽1に空気配管79を通して空気を送り込む送風機70と;密閉された水槽1への空気の供給開始、停止を行なう開始停止手段71と;開始停止手段71を制御する制御機構73を備えるように構成される。
このように構成すると、密閉された水槽1に空気配管79を通して空気を送り込む送風機70を備えるので、羽根車20の上流側に配置された吸込管31内に、任意もしくは安定した空気圧・空気量が確実に流入するようにでき、例えば始動水位の調整ができる特に先行待機運転に適する立軸ポンプシステムを提供することができる。
また請求項4に記載のように、請求項3に記載の立軸ポンプシステムでは、制御機構73は、密閉された水槽1内の圧力に応じて空気の供給開始、停止をするように開始停止手段71を制御するように構成してもよい。
また請求項5に記載のように、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の立軸ポンプシステムでは、送風機70は、回転軸21と共通の駆動機により駆動されるように構成してもよい。
上記目的を達成するために、請求項6に係る発明によるポンプ機場は、例えば図11に示すように、請求項1又は請求項3に記載の立軸ポンプシステム101(図1参照)と;複数台の立軸ポンプ10a、10b、10cを据え付ける水槽1とを備え;複数台の立軸ポンプ10a、10b、10cそれぞれの制御機構73(図1参照)は、複数台の立軸ポンプ10a、10b、10cの排水開始水位が2以上の異なる水位となるように、立軸ポンプ10a、10b、10cそれぞれの開始停止手段71(図1参照)を制御するように構成される。
このように構成すると、複数の立軸ポンプを備えながら、各ポンプの運転時間の均一化を図ることが可能な維持管理性の高いポンプ機場を提供することができる。
以上のように本発明によれば、縦方向に配置される回転軸により回転し、水槽内の水を吸い込む羽根車と、羽根車の上流側に配置され、羽根車に向けて水を流す吸込管と、吸込管に一端が接続され、吸込管に空気を導入する空気管とを有する立軸ポンプと;空気管の他端に接続され、空気管に空気を送り込む送風機と;空気管への空気の供給開始、停止を行なう開始停止手段と;開始停止手段を制御する制御機構を備えるので、羽根車の上流側に配置された吸込管内に、任意もしくは安定した空気圧・空気量が確実に流入するようにした、特に先行待機運転に適する立軸ポンプシステムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号あるいは類似符号を付し、重複した説明は省略する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る立軸ポンプシステム101を説明する概略図であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図である。図示の立軸ポンプ10は、先行待機運転用のポンプであり、据え付け台であるコンクリート製の床12に据え付けられている。
ここでまず図2の断面図を参照して、本発明の第1の実施の形態に使用するのに適した立軸ポンプ10の一例について説明する。なお、本図で説明する立軸ポンプ10の各構成は特にことわりのない限り、第1の実施の形態から第7の実施の形態で共通する構成であるものとして説明する。
先行待機運転、特に全速先行待機運転とは雨水がポンプ吸水槽に流入する前にあらかじめポンプを始動し、全速で空運転し雨水の流入を待機し、水位(Level)Lの上昇にしたがって排水を始め、水位が低下してもポンプを停止させずに全速で運転することである。排水を始めても、立軸ポンプ10は直ちに要項の水量を吐出するわけではない。少流量や空運転を可能とするため、水と一緒に空気を吸い込ませる。
図を参照して立軸ポンプ10の構造を説明する。立軸ポンプ10は、鉛直方向に上から配列された揚水管ケーシング(ケーシング本体)33、ライナケーシング32、吸込管(吸込ベル)31を備える。それぞれは水平方向のフランジで締結されている。これらが広い意味のケーシングを構成している。
該ケーシングの中心に縦方向(鉛直方向)に回転軸21が配設され、回転軸21の下方先端にオープン型の羽根車20が取りつけられている(クローズ型であってもよい)。羽根車20の外周(オープン羽根の先端)と僅かな隙間をもってライナケーシング32が羽根車20を収納している。立軸ポンプ10は斜流ポンプである。斜流ポンプは吐出ヘッドが比較的大きい場合に用いられる。また羽根車20の吐出側、ケーシング本体33の内側にはガイドベーン35が配設されている。
先行待機運転用のポンプとしては、不図示の軸流ポンプや渦巻斜流ポンプが用いられることもあり、本発明は軸流ポンプや斜流ポンプの場合にも適用できる。軸流ポンプは、吐出ヘッドに対して流量が比較的大きい場合に適する。
ケーシング本体33は、回転軸21と平行に垂直方向の胴管部33aと、上方で水平方向に曲がった曲管部33bとそれに連なる水平管部分とを含んで構成され、曲管部分33bを、回転軸21が貫通している。該貫通部には軸受22cと不図示のシールが配設されている。回転軸21は、羽根車20近傍に配設された軸受22aと前記軸受22c、さらに両軸受の中間に配設された軸受22bで3点支持(3点以上でもよい)されている。胴管部33aが長い場合は、さらに軸受22bと同様な不図示の中間軸受を軸受22bと軸受22cとの間に備えてもよい。また、不図示のスラスト軸受が回転軸21にかかる鉛直方向の荷重(即ち羽根車20、回転軸21を含む回転体の重量と羽根車20にかかる流体力)を支持している。
ケーシング本体33には、据え付け用のフランジが取り付けられており、該フランジで据え付け台であるコンクリート製の床12に据え付けられている。ケーシング本体33の前記水平管部分にはフランジが取りつけられており、該フランジにより、吐出配管34と接続されている。吐出配管34は雨水を河川や海等に導いて排出するための配管である。
羽根車20の先端よりも下方に位置するケーシングには、空気吸込孔51が形成されている。図2では、空気吸込孔51は1個として図示してあるが、複数個設けてもよい。またケーシングを囲む環状の空気室(不図示)を設け、空気室とケーシング内部とを複数の孔(穴)又は環状の空気室全周に形成されたスリットで連通するように構成してもよい。このような空気室は、吸込管31を形成するケーシング壁の内面を囲み、該内面よりも外側に形成される。
空気吸込孔51又は不図示の空気室には、外側に空気管60の一端が接続されている。空気管60は図示のように1本であってもよいが、複数であってもよい(例えば4本としてもよい)。空気吸込孔51を複数設けるか、又は環状の空気室を設けると、空気管60から吸入される空気が、吸込管31の全周に均一に分配されるので都合がよい。なお、空気管60は、図1及び図4から図9で説明する第1の実施の形態から第6の実施の形態では2本、図10で説明する第7の実施の形態では1本であるものとして説明するが、空気管60の数はこれに限られたものではないことは上述の通りである。
空気管60の他端(上端)61は、水槽1内の最高水位HWLよりも上方に開放されている(第1から第3及び第7の実施の形態では送風機の吐出側に接続されている)。最高水位HWLは、水槽1において最も水位が上昇し得る水位である。したがって、空気管60の上端61が水中に没することはない。
羽根車20は、後述の最低水位LWLよりも下方に配置されている。羽根車20の本体部分全体、又は少なくともその一部、特にそこまで水位があれば羽根車20が水を吸い上げる先端部が最低水位LWLよりも下方に配置されている。
空気吸込孔51の近傍、特に羽根車20と空気吸込孔51との間のケーシング(ここでは吸込管31)の内面には、平板状の旋回防止板(不図示)を半径方向に、また軸線方向(鉛直方向)に向けて形成してもよい。
次に立軸ポンプ10の高さ方向の構造と水位の関係を説明する。最高水位HWLは前述のように、水槽1の最高水位である。水位Lがこれ以上に上昇することはない。その下方に最低水位LWLがある。これは、特定の水槽1に設置されたポンプ固有の値であり、水位がこれ以下になると何らかの問題が起こりポンプの運転が継続できなくなる水位である。典型的には、それ以下では吸込管31の下端から渦状に空気を吸い込み、振動や騒音が発生し運転が継続できなくなる水位である。
設計上の最低水位Ldは、水位LWLと少なくとも等しく、通常はそれよりも高くなるようにする。設計上の最低水位Ldは、吸込管径やポンプ吐出流量に対応して決められる。
設計上の最低水位Ld乃至は最低水位LWLの下方には、羽根車20の吸込開始水位SLWLがある。この水位は、羽根車20の先端部分の水位に相当する。低い水位から水位が上昇して、羽根車20が水に接すると、気水攪拌が開始され間もなく水が吐出されるからである。
吸込開始水位SLWLの下方には、空気吸込孔51の高さに相当する吸気水位A1がある。これは空気吸込孔51の上側端部に相当する。水位Lが低下して、水位LWLに到ると、水位Lよりも負圧分hだけ低い空気管60中の水位がこの水位A1になり、空気管60を通して吸込管31に空気が吸い込まれ始める。
なお本実施の形態では、空気吸込孔51の上側端部の高さが吸気水位A1となっている。吸気水位A1の下方には、吸込管31の先端の水位A2がある。
さらに図2を参照して、立軸ポンプ10の作用を説明する。先ず水位がA2よりも低い状態で立軸ポンプ10を始動する。例えば上流側で大雨が降ったとの降雨情報が入った場合等、ある時間の後に水位が急に上昇することが予測される。そのような場合に、水位がA2よりも下の状態で、先行待機運転用の立軸ポンプ10が始動される。先行待機運転の開始である。
雨水の流入により水槽内の水位Lが上昇し、吸込ベルの下端水位A2を越える。水位がさらに上昇して水位A1を越えても、まだ水は吸い上げられない。羽根車20は空転している。
水位Lがさらに上昇して、水位SLWLまで到達したところで、羽根車20は気水攪拌を開始する。そして水を吸い込み始める。このときは、空気管60を通し、空気吸込孔51から、吸込管31内に、水と一緒に空気も吸い込むのでポンプは全水量吐出の運転ではない。即ち、立軸ポンプ10は気水混合運転をしている。さらに水位Lが上昇すると徐々に吸込空気量は減少し、代わりに水量が増加する。やがて水位Lが水位LWLまで上昇すると空気の吸込量がゼロになり、全水量を吐出するに至る。即ち、定常運転に入る。
さらに水位が、水位LWLと水位HWLの間の水位まで上昇して、立軸ポンプ10は定常運転を継続する。その後、立軸ポンプ10の排水により今度は水位Lが低くなってゆくと、水位LWLで(空気管60中の水位が吸気水位A1に到るので)空気管60を通して空気を吸い込み始める。即ち、再び気水混合運転が開始される。水位Lが低下するにつれて吸込空気量が増えて、代わりに水量が減ってゆく。さらに水位Lが下がり、水位A1付近になると水の吸い込みが終わり、羽根車20は空気中で運転される空運転状態になる。即ち、立軸ポンプ10は全く水を吸い込まないエアロック状態となる。
このようにして、羽根車20は空気中での空転状態を続けることになる。降雨が続くときは、そのまま運転を続け、再び水位Lが上昇してきて、前記のように水位SLWLに到達したところでポンプ10は水を吸い込み始める。このようにして、先行待機運転用ポンプ10は、水槽1の水位にかかわらず、空運転と全水量の運転との間で運転を継続することができる。空運転と全水量運転との間の移り変わりは、ポンプが空気も一緒に吸い込むのでなめらかに行われる。
前述のように雨水の流入により水槽内の水位Lが上昇して、水位がA1を越えても、まだ水は吸い上げられないが、水位低下直後で羽根車20の上方に水が溜まっている間に再び水位が上昇したときは空気吸込孔51の高さである水位A1で水の吸い上げが始まる。
ここで図3の部分断面図を参照して、各水位と吸込管31の下端から渦状に空気を吸い込んでしまう水位Lcとの関係を明かにする。この関係は、後述の第4から第6の実施の形態に適用される。第1から第3、第7の実施の形態では、空気管60に送風機から空気を送り込むことにより、あえてこの関係を崩している。
一般に、立軸ポンプを設計するときは、先ず設計仕様によりエアロック水位が指定される。即ち高い水位から水位が低下してきて、最後に排水が止まる水位である。通常は、エアロック水位は空気吸込孔51の水位A1に一致するものとして設計する。即ち、設計上この位置に空気吸込孔51を設ける。試運転でエアロック水位を確認する。実際のエアロック水位は、空気吸込孔51位置よりも高いことはなく、それよりも低い位置になるか、又はほぼ同等の高さになる。
また一般には設計仕様で、低水位から水位が上がってきたときに排水を開始する位置、即ち羽根車先端位置SLWLも指定される。
水位A1が決まると、全量吐出水量となる設計上の水位Ldは、水位Ld=A1+hで計算される。ここで、h=hl+(v/2g)である。水頭hは、(v/2g)に所定の係数を乗じて簡易計算で定めてもよい。
ここでvは、(要項点全水量)/(吸込管31の吸込部面積)で求められる水の吸込流速である。(v/2g)はベルヌーイの定理から計算される水の流れにより生じる動圧である。速度水頭といってもよい。またhlは吸込管31の下端A2から空気吸込孔51までの流れロスである。損失水頭hlは、簡易計算により(v/2g)に経験的な係数を乗じて求めてもよい。
水位Ldは上記のように簡易計算により求めることが多い。水位Lが上昇傾向のときは、ここで空気吸込孔51からの空気の吸い込みがなくなりポンプは全量吐出となり、水位Lが下降傾向のときは、ここで全量吐出が終わり空気吸込孔51からの空気の吸い込みが始まるという水位である。
水位Ldは設計上、吸込管31の下端から渦状に空気を吸い込んでしまうという水位に対して余裕を持たせる。したがって、この水位では吸込管31の下端から空気を吸い込むことがない。即ち、水位Ldは水位LWL、通常は水位Lcと同じか、又はそれよりも高い位置にある。
水位Lcは上記のように水位Ldを求めるにあたって、チェック項目となる。即ち、設計過程で求めた水位Ldが水位Lcよりも低くなってしまった場合は、水位Ldが水位Lcと同等かそれよりも高くなるように設計を修正する。例えば吸込管31を長くして、水位Lcを下げる。
本実施の形態の立軸ポンプ10では、羽根車20は水位LWL、さらには水位Lcよりも下方に配置されている。
水位Ldは、水位A1+hで計算され、h=hl+(v/2g)であるとしたが、さらに吸込管31の内部に発生する旋回流によって空気吸込孔51の近傍に発生する正圧hpを考慮すると、hは以下の通りとなる。
h=hl+(v/2g)−hp
以下で具体的に説明する第1の実施の形態から第3の実施の形態及び第7の実施の形態によれば、立軸ポンプ10は、送風機としてのファン70により、空気管60に空気を送り込み強制的に加圧する。したがって、立軸ポンプ10が空気を吸い込む水位(水槽1の水位又は吸水槽1aの水位)は、上述の水頭hの式に支配されることはない。又、第4の実施の形態から第6の実施の形態では、密閉された水槽1(図2参照)に空気配管79(例えば図6参照)を通して空気を送り込み強制的に加圧する。したがって、立軸ポンプ10が空気を吸い込む水位(水槽1の水位)は、上述の水頭hの式に支配されるが、水槽1の水位を吸水槽1aの水位とは無関係に定めることができる。また、現合も可能となる。
再び図1に戻り、本発明の第1の実施の形態に係る立軸ポンプシステム101の説明を続ける。立軸ポンプ10は、前述のように据え付け台であるコンクリート製の床12に据え付けられている。さらに、コンクリート製の床12は、立軸ポンプ10を囲むように水平方向に対して略垂直な壁を連続的に形成し、吸込管31に水面が達したときに、該水面上方部分が外気と遮断される構造である密閉された水槽1を形成している。立軸ポンプ10がコンクリート製の床12に据え付けられている部分には水槽1内の密閉性を確保すべくポンプベース75が配設されている。水槽1は、水槽1底部近傍の壁12aに形成された開口にて、水面上方が大気に開放されたオープン吸水槽1aに接続し、該開口から水槽1内に排水が流入するように構成されている、いわゆるクローズタイプの水槽である。なお、開口が形成されている水槽1の壁12aの水槽1とは反対側の面、すなわち吸水槽1a側の面を、鉛直方向に対して、例えば45°程度傾斜させ水槽1内に流入する排水の流れを下向きにすることで、流入の際に渦が発生しにくいように構成されている。
第1の実施の形態の立軸ポンプシステム101は、立軸ポンプ10を備えており、本実施の形態では図2で既に説明した空気管60を2本(2本以上でもよい)備えている。一方の空気管60は、他端61(図2参照)側が配管を介して送風機としてのファン70に接続されている。配管はポンプベース75を貫通しており、ポンプベース75とファン70との間の所定の部分に、電動弁からなる開始停止手段としての開閉バルブ71が配設されている。また、空気管60には圧力検出器74が配設されており、空気管60内の圧力を測定するように構成されている。もう一方の空気管60は、水槽1内で他端61(図2参照)側が空気管60に接続されている。なお、本実施の形態では送風機としてファンを用いるものとして説明するが、例えば、必要な空気圧によってはブロワを用いて構成してもよい。
ファン70は、回転軸21を回転させる不図示の駆動機により駆動されるように構成されている。すなわち、ファン70は、回転軸21を回転させる駆動機と共通の駆動機により駆動される。さらに、ファン70にはフィルタ72が取り付けられており、ファン70は、駆動すると該フィルタ72を介して周囲の外気を吸い込み、配管を介して空気管60に空気を送り込み、強制的にケーシング本体33の吸込管31の内側に吐出するように構成されている。ここで、ファン70が共通の駆動機により駆動されるとは、回転軸21から不図示の減速機等を介して動力を取り出すように構成されるものであってもよいし、駆動機の出力軸から2つに分岐して動力を取り出す構成であってもよく、例えば、ベルトとプーリを用いてもよいし、駆動機を両軸形式にしてもよい。また、フィルタ72は、ファン70を通して水槽1内の空気が逆流するような場合の臭気対策のため活性炭等の脱臭フィルタとするとよい。
開閉バルブ71は、弁の開閉を行うことによりファン70によって吸い込まれた空気の空気管60への供給開始、停止を行うように、圧力検出器74に接続されている制御機構73によって制御されている。なお、開閉バルブ71は、ファン70の吸込側に設けたダンパとしてもよい。他の実施の形態でも同様である。制御機構73は、典型的にはマイコン等のコンピュータであり、圧力検出器74によって測定された圧力を受信し、空気管60内の圧力に応じて空気の供給開始、あるいは供給停止を行うべく開閉バルブ71の開閉を制御する。
すなわち、空気管60内の空気圧の変動に応じて、空気管60へ空気の供給量を変動させることで空気管60内の空気圧を調整することが可能となり、空気流入開始水位(揚水開始水位、停止水位)を任意に変動させることができることとなる。
さらに具体的に説明する。従来技術のようにファン70を備えない場合は、水槽1の水位が上昇してLWLに達したときは、ポンプ10は空気管60からの空気の吸い込みをしなくなっている。あるいは前述の正圧hpのために、LWLに達する前に空気を吸い込まなくなることもあり得る。しかしながら、本実施の形態によれば、ファン70により又制御機構73により、空気吸い込みの水位を任意に定めることができる。
以上で説明したように、第1の実施の形態である立軸ポンプシステムによれば、ファン70を取り付けたので、ポンプに空気を送るタイミングを任意に設定できて自由にエアロック水位等を設定でき、旋回流等の発生によるポンプの異常振動を低減することができる。また、ポンプに入れる空気の量を調整することで揚水量を調整できる。さらに、空気管60に開閉バルブ71を接続しているので、ポンプに必要に応じて必要なだけの空気が供給でき、ポンプの実際の状態に応じた最適な運転が可能になる。
さらに、従来は空気管60による空気の吸い込みを自然に任せていたので、気水混合運転やエアロック運転などの各種運転水位は構造上決まってしまい、それよりも高い水位まで空気を吸い込むように設定できなかったが、本発明によれば、各種運転水位を調整できるので、たとえば気水混合運転やエアロック運転などの運転水位を従来より高水位に設定でき、その分排水量の調整幅が広がる。
また、以上で説明した第1の実施の形態である立軸ポンプシステムによれば、ファン70を立軸ポンプ10の不図示の駆動機に連結することでその動力をポンプの駆動動力と共用したので、ファン70の動力を別に設ける必要がなく、構造が簡単になるばかりか故障箇所が少なくなり、信頼性が高まる。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る立軸ポンプシステム102を説明する概略図である。第2の実施の形態では、第1の実施の形態での圧力検出器74(図1参照)の代わりに水位検出器76が配設されている。水位検出器76は、水位の変化を水槽1の底部付近の水圧の変化により検知するものであってもよいし、浮子を用いたフロート式、レベルスイッチによるオンオフ式等であってもよい。
制御機構73は、水位検出器76によって検知された水槽1の水位、あるいは予め設定された水位に応じて、空気の供給開始、あるいは供給停止を行うべく開閉バルブ71の開閉を制御し、ファン70による空気管60への空気の送り込みによって強制的に加圧することで空気圧を調整することが可能となり、空気流入開始水位(揚水開始水位、揚水停止水位)を任意に変動させることができることとなる。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る立軸ポンプシステム103を説明する図であり、図5(a)は立軸ポンプシステム103の概略図、図5(b)は後述する弁77近傍の部分概略図、図5(c)は立軸ポンプシステム103の変形例を示す弁77近傍の部分概略図である。図5(a)に示すように、第3の実施の形態では、空気管60とファン70とを接続する配管の所定の部分に、水槽1内の空気圧を抑制する弁77が配設されている。さらに、弁77にはフロート式水位計78が機械的に接続されており、弁77の大気開放面積を変化させることにより、揚水開始水位、揚水停止水位を任意に変動させるように構成されている。
具体的には図5(b)示すように、立軸ポンプシステム103では、水槽1内に空気管60に対して略平行に円筒形状に形成されたシャフト78aが配設されている。当該シャフト78aと空気管60とはポンプベース75付近の水槽1外側で接続されている。さらに、接続することで形成される空気管60の開放面77aに対応するように、シャフト78aの内側にコック77bが配設されている。コック77bは、水平方向にはシャフト78aの内径よりもやや小さく、鉛直方向には開放面77aよりもやや大きい略円筒状に形成されている。さらに、コック77bの鉛直方向下側には棒状部材78eが固定されており、該棒状部材78eは水槽1の底部付近に配設されるフロート式水位計78のフロート78bに連接されている。
シャフト78aの空気管60とは反対の側には、シャフト78aに対して略平行に円筒形状に形成された大気開放管78cが配設されている。シャフト78aと大気開放管78cとは、開放面77aのやや下方、大気開放管78cの鉛直方向下側の端部で接続されており、開放面77aとほぼ同様に開放面が形成されている。さらに、大気開放管78cの鉛直方向上側の端面である大気開放端面78dは、ポンプベース75よりも上方に位置し、大気に開放されるように構成されている。
フロート78bは、水槽1内の水位の変化に伴って鉛直方向に上下に移動し、フロート78bの移動に連動してコック77bも、シャフト78a内を上下に移動するように構成されている。コック77bの上下動により、弁77の開放面77aの開放面積が変化し、ファン70から空気管60へ送り込まれる空気量を調整することが可能となる。また、本実施の形態では、コック77bはシャフト78a内の最下部に位置するときに開放面77aを完全に塞いでいる状態となるように配設されている。
つまり、水槽1内の水位が高いときには開放面77aの全面が開放されており、ファン70から空気管60へ送り込まれる空気は、開放面77a、シャフト78a、大気開放管78c、大気開放端面78dを順に介して大気中に開放される。つぎに、水位が下降すると共に、コック77bによって開放面77aが徐々に閉鎖され、大気中に開放される空気量は減少する。そして、水槽1内の水位が一定の水位に達したときに、開放面77aは完全に閉鎖され、ファン70から空気管60へ送り込まれる空気のすべてがケーシング本体33の吸込管31の内側に吐出するようになる。これにより、揚水開始水位、停止水位を任意に変動させることができるのである。すなわち、フロート式水位計78のフロート78bが弁77の開閉を制御する制御機構として機能するのである。また、棒状部材78eの長さを適宜設定することで、揚水開始水位、停止水位をポンプ性能に応じた水位に設定することができる。
なお、弁77とフロート式水位計78の構成は上述した形態に限らず、水槽1内の水位が低くなったときに空気管60に送り込まれる空気量が増す、すなわち大気開放される空気量が減り、水位が高くなったときに大気開放される空気量が増えるような構成であれば、種々の変更が可能である。例えば、図5(c)に示すように、大気開放管78cを用いない構成とすることができる。この場合、シャフト78aの鉛直方向上側の端面を大気開放端面78dとして大気に開放し、大気開放端面78dの上方に滑車78fを配設し、コック77bの鉛直方向上側とフロート78bとを滑車78fを介して連接するとよい。また、このときは、棒状部材78eに代えてワイヤ78gを用いるとよい。このように構成することで、フロート78bは、水槽1内の水位の変化に伴って鉛直方向に上下に移動し、フロート78bの移動に連動してコック77bも、シャフト78a内を上下に移動する。コック77bの上下動により、弁77の開放面77aの開放面積が変化し、ファン70から空気管60へ送り込まれる空気量を調整することが可能となる。
なお、以上で説明した第1、第2及び第3の実施の形態では、水槽1は密閉された水槽であるものとして説明したが、これに限らず、水面上方が大気に開放された、あるいは大気圧である自由表面を持つ水槽であってもよい。すなわち、ポンプベース75を通気可能な構造としてもよい。そのときは不図示の通気口には、不図示の臭気遮断フィルタを設けるとよい。水槽1が密閉構造のときは、吸水槽1aの水位と水槽1の水位が必ずしも一致しない。即ち、吸水槽1aの水位が上昇するとき、水槽1の水位は閉じ込められた空気の圧縮にしたがって上昇はするが、吸水槽1aの水位よりも低い水位に保たれる。これに対して、水槽1が開放構造のときは、吸水槽1aの水位と同じ水位となる。また、水槽1と吸水槽1aとが一体になった、いわゆるオープンタイプの水槽であってもよい。後述する第7の実施の形態も同様である。
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る立軸ポンプシステム104を説明する概略図である。本実施の形態では、水面上方部分が外気と遮断される構造である密閉された水槽1を形成している。立軸ポンプ10がコンクリート製の床12に据え付けられている部分には水槽1内の密閉性を確保すべくポンプベース75が配設されている。さらに、第1の実施の形態では空気管60の空気圧の変動に応じてファン70による空気の供給量を調整するように構成されていたのに対して、第4の実施の形態では、密閉された水槽1内の水位の変動、すなわち空気圧の変動に応じて、ファン70による水槽1への空気の供給量を変動させることで水槽1内の空気圧を調整し、空気流入開始水位(揚水開始水位、揚水停止水位)を任意に変動させることができるように構成されている。
すなわち、水槽1内の圧力を測定する圧力検出器74は空気管60ではなくポンプベース75に配設されており、ファン70によって送り込まれる空気は、開閉バルブ71を介し供給量が調整され、開閉バルブ71に連接されポンプベース75を貫通して配設されている空気配管79を通して水槽1内に直接吐出される構成となっている。なお、この場合2本配設されている空気管60は各々を接続する必要はない。
本実施の形態では、吸水槽1aの水位が上昇し、それに伴って水槽1の水位も上昇する。水槽1の水位がLWLに達したときには、立軸ポンプ10は空気を空気管60から吸い込まない。本実施の形態によれば、水槽1の水面上方の空気圧を調整できるので、吸水槽1aの水位が上昇しても水槽1の水位は上昇しないようにすることができる。このようにして、吸水槽1aの水位に拘わらず、立軸ポンプ10の気水混合運転を継続することができる。
図7は、本発明の第5の実施の形態に係る立軸ポンプシステム105を説明する概略図である。第5の実施の形態は、回転軸21を回転させる駆動機とは別にファン70を駆動させる駆動機70aが設けられている点で第4の実施の形態等とは異なる構成となっている。
この場合、制御機構73が駆動機70aの始動停止手段70bを制御するように構成することでファン70の回転数を直接に調整することが可能となるため開閉バルブ71を設置する必要がなくなる。すなわち、駆動機70aの始動停止手段70bが空気の供給開始、供給停止を行う開始停止手段として機能することとなるのである。また、本実施の形態では、回転軸21上に直流発電機80を設置し、制御機構73とともに電流調整器を設置し、回転軸21の回転により発電される電力をファン70の駆動に利用することで効率のよい立軸ポンプシステム105とすることが可能となる。
図8は、本発明の第5の実施の形態の変形例に係る立軸ポンプシステム105aを説明する概略図である。本変形例は、直流発電機80及びジェネレータの設置位置が図7の場合と異なる。本変形例では回転軸21を回転させる駆動機81の立軸ポンプ10とは反対側の軸端に直流発電機80が設置されている。この場合、より単純な構成である立軸ポンプシステム105aとすることが可能となる。
図9は、本発明の第6の実施の形態に係る立軸ポンプシステム106を説明する概略図である。第1の実施の形態から第5の実施の形態では、ファン70はフィルタ72を介して周囲の外気を吸い込むように構成されていたのに対して、第6の実施の形態では、ファン70は吸水槽1aとファン70とを接続する吸気配管82を介して吸水槽1a側の空気を吸い込むように構成されている。この場合、フィルタ72を配設する必要がなく、例えば吸水槽1a内に雨水だけでなく下水が流入したとしても、下水の臭気が床上に放出されることがない。
図10は、本発明の第7の実施の形態に係る立軸ポンプシステム107を説明する概略図である。第7の実施の形態では、立軸ポンプ10の吸込管31に空気を供給する空気管60を接続してなる立軸ポンプ10の強制給気装置において、空気管60に空気を送風するファン70を、立軸ポンプ10の駆動機85に連結して構成されている。また、立軸ポンプ10の羽根車20の回転軸21と駆動機85の間に減速機84を取り付け、ファン70の動力を、前記減速機84の部分から取り出すことができる。さらにまた、立軸ポンプ10のファン70と駆動機85の間に、駆動機85からファン70に伝達する動力を接続・遮断する開始停止手段としてのクラッチ88を設けることができる。さらにまた、立軸ポンプ10の前記空気管60に、空気の導通を開閉又は空気量の制御を行う開閉バルブ71を取り付けることができる。さらにまた、立軸ポンプ10の近傍に水位センサ又はキャビテーションや空気吸込渦や水中渦による振動を検知する振動センサを設置することで、ファン70によって吸込口内に強制的に空気を給気するタイミングを検出することができる。
本図に示すようにこの立軸ポンプ10は立軸斜流ポンプであり、ケーシング本体33内の下部に羽根車20を収納し、ケーシング本体33の上部から引き出した羽根車20の回転軸21に減速機84を介して駆動機85を接続し、さらにケーシング本体33の吸込管31近傍に空気管60の一端を接続して構成している。
そしてこの立軸ポンプシステム107の場合はさらに、空気管60の他端にファン70を取り付け、またファン70を駆動する駆動軸87をクラッチ88を介して減速機84に接続している。以下各構成部品について詳細に説明する。
この実施形態にかかる立軸ポンプシステム107が備える立軸ポンプ10は立軸斜流ポンプであるが、立軸軸流ポンプ等の他のポンプに本発明を適用しても良い。また駆動機85はこの実施形態ではデイーゼルエンジンを使用しているが、ガソリンエンジンやガスタービンや電動機等、他の駆動機を用いても良い。本実施形態では減速機84は直交軸減速機(傘歯車減速機)を使用することで直交する駆動機85のシャフト86と回転軸21とを連結している。
また減速機84には前述のようにクラッチ88が取り付けられており、クラッチ88を接続することで駆動機85の動力をファン70に伝達し、クラッチ88を切断することで駆動機85の動力をファン70に伝達しないように構成している。つまり、クラッチ88を接続すれば駆動機85は羽根車20とファン70の両者を同時に駆動し、クラッチ88を切断すれば羽根車20のみを駆動する。
ファン70は回転・駆動されることで図示する矢印のように周囲の空気を吸引して空気管60内に強制的に空気を供給し、強制的にケーシング本体33の吸込管31の内側に吐出する。
また図示はしないがこの立軸ポンプ10を設置する水槽の水位が所定の水位に達したことを検出する水位センサ(及び/又はポンプの振動を検出する振動センサ)を設置しておく。
次にこの立軸ポンプシステム107の動作を説明する。立軸ポンプシステム107を始動するスイッチがオンされると、駆動機85が駆動されて羽根車20が回転駆動され、揚水が開始され、水槽内の水が排水される。水槽内が所定の水位以下になった場合、即ち水槽内の水に空気吸込渦や水中渦の発生する恐れが生じる水位、またはキャビテーションを発生する恐れがある水位まで下がった場合は、これを水位センサが検出演算し、前記クラッチ88を接続し、ファン70を回転駆動して空気管60内に強制的に空気を供給し、強制的にケーシング本体33の吸込管31の内側に空気を吐出し、これによって気水混合運転をさせたりエアロック運転をさせたりする。水位が上昇した場合は、クラッチ88を切断してエアの強制的な供給を停止する。つまりクラッチ88の接続・切断によって吸込管31に適宜エアを送り、最適な運転状態を選択し、これによって自由にエアロック等を行うことができる。
また振動センサを設けることでポンプの振動が所定の振動以上になったことを検知した場合は、空気吸込渦や水中渦やキャビテーションが発生していると判断し、前記クラッチ88を接続するようにしても良い。この場合振動の程度に応じてクラッチ88をオンオフすることで、送り込む空気量を制御しても良い。即ち振動が大きいときは大量の空気を導入し、振動が小さいときは少ない空気を導入する。
ところで上記実施形態に示す立軸斜流ポンプに比べて立軸軸流ポンプの場合、ポンプの吸込管に絞りがないので単にエアパイプを取り付けただけではエアロック水位が低くなってしまい、吸込管から空気が入りやすかった。しかしながら本発明のようにファン70を取り付ければ、ポンプ形状に関係なくエアロック水位等を決めることができるので、このような問題は生じない。
以上で説明した第7の実施の形態である立軸ポンプシステム107によれば、ファン70の動力を減速機84の部分から取り出したので、動力の取り出しが容易に行うことができる。また、ファン70と駆動機の間にクラッチを設けたので、ファン70に必要に応じて必要なだけの動力が供給でき、ポンプの実際の状態に応じた最適な運転が可能になる。
以上本発明の実施形態を詳細に説明したが本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面全体に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば以下の通りである。
1上記実施形態においては減速機84とファン70の間にクラッチ88を設けたが、クラッチ88を設ける代わりに空気管60の途中に電動弁からなる開閉バルブ71(図10に点線で示す)を取り付け、この開閉バルブ71の開閉によって空気の入切を制御しても良い。その際開閉バルブ71の開度を調節することで供給する空気量を調節しても良い。このように構成すれば、クラッチを設けなくてもポンプへの強制的な空気の供給量を制御できる。この場合は、開始停止手段は開閉バルブ71となる。
2上記実施形態では立軸ポンプ10の吸込管31の内部に強制的に空気を送り込む手段としてファン70を用いたが、ブロア等、他の各種空気供給手段を用いても良い。
3上記実施形態ではファン70を減速機84の部分に取り付けたが、それ以外の部分に取り付けても良い。要はポンプを駆動する駆動機に連結するものであればどの位置に設けても良い。
4上記実施形態ではポンプを先行待機ポンプに利用した場合を説明したが、他の目的に使用する場合でも本発明を適用できることは言うまでもない。
図11は、本発明の第8の実施の形態に係るポンプ機場の複数の立軸ポンプの関係を示す模式的正面断面図である。上述した立軸ポンプシステムが用いられるポンプ機場108では、以上で説明したような先行待機運転ポンプ、ここでは立軸ポンプが水槽に複数台設置される。本図に示すように、複数の立軸ポンプ10a、10b、10cの間をそれぞれ鉄筋コンクリート製の水槽仕切壁1b、1cで仕切られ、各ポンプ用の水槽が独立した密閉水槽を形成している。
さらに、複数台の立軸ポンプ10a、10b、10cそれぞれの制御機構73は、複数台の立軸ポンプ10a、10b、10cの排水開始水位が2以上の異なる水位となるように、立軸ポンプそれぞれの開始停止手段、例えば第4の実施の形態である立軸ポンプシステム104を設置するのであれば開閉バルブ71を制御するように構成されている。
このようなポンプ機場108の運転において、水位の上昇に伴って1台のポンプでは排水量が不足する場合には、次々に他のポンプが排水を開始して複数台による排水運転に入る。ここで使用されるポンプは、先に説明した立軸ポンプ10を用いているので、胴管部33a(図2参照)の長さが同一であり、その据付高さが同じで、特に羽根車の設置高さ等が同一な仕様であっても、水を吸い込み始める水位を異ならせることができる。
第1の実施の形態から第3の実施の形態及び第7の実施の立軸ポンプシステムを用いる場合は、水槽はオープンタイプ(自由表面を持つ水槽)であってもよい。このときは、ファン70により強制的に供給される空気により、水槽の水位に無関係に、ある程度まで気水混合運転の開始あるいは終わりの時期を調整できるので、排水開始の順序をポンプ毎に任意に設定することが可能となる。
以上で説明した第8の実施の形態であるポンプ機場108によれば、各ポンプの水を吸い込み始める水位をポンプの設置後でも任意に変更することが可能であるので、ポンプ運転時間に偏りが生じ、特定のポンプの消耗が激しくなったり、維持管理作業の困難性を招くことはなく、ポンプ運転時間と形状の均一化により、建設と維持管理性の向上が可能となる。また、ポンプのうち1台が故障したとき、他の号機による代替が可能であり、さらに、故障したポンプを交換するにしても、同一仕様のポンプで済むので、製造納期の短縮化が容易である。
なお、以上で説明したポンプ機場108では、送風機としてのファン70(図1参照)は各立軸ポンプ10a、10b、10cに対して共通に、すなわち1つだけ設けるものとしてもよい。また、ポンプ機場108において、第1の実施の形態乃至第3の実施の形態又は第7の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを用いる場合は、必ずしも水槽仕切壁1b、1cを設ける必要はなく同一の水槽に設けてもよく、この場合より簡単な構成であるポンプ機場108とすることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを説明するための概略図である。 本発明の第1の実施の形態に係る立軸ポンプシステムに使用するのに適した立軸ポンプの正面断面図である。 各水位と吸込管の下端から渦状に空気を吸い込んでしまう水位Lcとの関係を説明する立軸ポンプの部分断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを説明するための概略図である。 本発明の第3の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを説明するための概略図である。 本発明の第4の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを説明するための概略図である。 本発明の第5の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを説明するための概略図である。 本発明の第5の実施の形態に係る立軸ポンプシステムの変形例を説明するための概略図である。 本発明の第6の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを説明するための概略図である。 本発明の第7の実施の形態に係る立軸ポンプシステムを説明するための概略図である。 本発明の第8の実施の形態に係るポンプ機場の複数の立軸ポンプの関係を示す模式的正面断面図である。 従来の立軸ポンプの正面断面図である。 従来の機場の複数の立軸ポンプの関係を示す模式的正面断面図である。
符号の説明
10 立軸ポンプ
20 羽根車
21 回転軸
30 ケーシング
31 吸込管
51 吸気孔
60 空気管
70 ファン
70a、81、85 駆動機
71 開閉バルブ
72 フィルタ
73 制御機構
74 圧力検出器
76 水位検出器
77 弁
78 フロート式水位計
79 空気配管
82 吸気配管
88 クラッチ
101、102、103、104、105、105a、106、107 立軸ポンプシステム
108 ポンプ機場
h 負圧水頭
HWL 最高水位
Ld 設計水位
LWL 最低水位
Lc 渦状に空気を吸い込む水位
SWL 羽根車の吸込開始水位
A1 吸気口水位
A2 吸込管下端水位

Claims (6)

  1. 縦方向に配置される回転軸により回転し、水槽内の水を吸い込む羽根車と、前記羽根車の上流側に配置され、前記羽根車に向けて前記水を流す吸込管と、前記吸込管に一端が接続され、前記吸込管に空気を導入する空気管とを有する立軸ポンプと;
    前記空気管の他端に接続され、前記空気管に空気を送り込む送風機と;
    前記空気管への空気の供給開始、停止を行なう開始停止手段と;
    前記開始停止手段を制御する制御機構を備える;
    立軸ポンプシステム。
  2. 前記制御機構は、前記空気管内の圧力、又は前記水槽の水位に応じて前記空気の供給開始、停止をするように前記開始停止手段を制御するように構成された、請求項1に記載の立軸ポンプシステム。
  3. 縦方向に配置される回転軸により回転し、密閉された水槽内の水を吸い込む羽根車と、 前記羽根車の上流側に配置され、前記羽根車に向けて前記水を流す吸込管と、前記吸込管に一端が接続され、他端が前記密閉された水槽内の最高水位よりも上方に開口する空気管とを有する立軸ポンプと;
    前記密閉された水槽に空気配管を通して空気を送り込む送風機と;
    前記密閉された水槽への空気の供給開始、停止を行なう開始停止手段と;
    前記開始停止手段を制御する制御機構を備える;
    立軸ポンプシステム。
  4. 前記制御機構は、前記密閉された水槽内の圧力に応じて前記空気の供給開始、停止をするように前記開始停止手段を制御するように構成された、請求項3に記載の、立軸ポンプシステム。
  5. 前記送風機は、前記回転軸と共通の駆動機により駆動される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の、立軸ポンプシステム。
  6. 請求項1又は請求項3項に記載の立軸ポンプシステムと;
    複数台の前記立軸ポンプを据え付ける水槽とを備え;
    前記複数台の立軸ポンプそれぞれの前記制御機構は、前記複数台の立軸ポンプの排水開始水位が2以上の異なる水位となるように、前記立軸ポンプそれぞれの前記開始停止手段を制御するように構成された;
    ポンプ機場。
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