JP4320994B2 - 変速機用電動駆動装置 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は変速機用電動駆動装置に関する。
本発明に係る変速機用電動駆動装置は、自動車用変速機の変速比を自動的に、或は運転者の指示に従って切り替える為の駆動装置として利用するに適している。
背景技術
自動車用の変速機として従来から、運転者がクラッチペダルと共にシフトレバーを操作する事によりギヤを切り換える手動変速機、或は運転状況に応じて変速機を自動的に切り換える自動変速機が、広く使用されている。又、このうちの自動変速機としては、トルクコンバータと遊星歯車機構とを組み合わせたもの、可変式のプーリと無端ベルトとを組み合わせたもの等が、従来から使用されている。更に、従来手動変速機として使用されていた変速ユニットの切り換えを自動的に行なえる様にすると共に、クラッチの断接を自動的に行なえる様にした自動車用変速機も、操作が容易で、しかも伝達効率が一般的な自動変速機に比べて高い事から、近年使用される様になっている。この様な自動車用変速機で変速ユニットを構成するギヤの切り換えを行なう為の構造として従来から、油圧式のもの、或は特開平2−273051号公報に記載されている様な機械式のものが知られている。
従来の様に、変速ユニットを構成するギヤの切り換えを油圧式に行なう構造の場合には、自動車の運転中常に油圧ポンプを回転駆動する為、動力損失が発生し、自動車の走行性能や燃費性能に悪影響を及ぼすだけでなく、油漏れに伴う故障を防止する為の対策も面倒になる。又、従来から知られている、上記切り換えを機械式に行なわせる装置は、トラック等の大型自動車用に開発されたもので、構造が複雑で設置スペースが嵩む為、乗用車等の小型自動車用としては不向きである。
本発明の変速機用電動駆動装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
発明の開示
本発明の第1の態様による変速機用電動駆動装置は、
複数のギヤのうちから所望のギヤを選択する為に切換シャフトを軸方向に変位させるセレクト動作と、
選択したギヤを噛合状態にする為に上記切換シャフトを回転させるシフト動作とを、それぞれが電動モータを駆動源とする第一、第二のアクチュエータにより行なわせる変速機用電動駆動装置であって、
前記切換シャフトは、回転可能且つ軸方向移動不能にハウジングに支持された筒状部材に挿通され、該切換シャフトと該筒状部材はスプライン嵌合しており、
前記筒状部材の外周面には、前記シフト動作の際前記切換シャフトを回転させる駆動腕が一体的に形成され、
該切換シャフトの端部は前記筒状部材より外方に軸方向に突出する長さ部分を有しており、
上記セレクト動作を行なわせる第一のアクチュエータは、第一の電動モータと、
この第一の電動モータの出力軸により回転駆動される周面歯を備えた回転伝達部材と、この回転伝達部材の上記周面歯に噛合する周面歯を備えた回転被伝達部材と、この回転被伝達部材と共に回動する揺動腕とを備えたものであり、この揺動腕の先端部は上記切換シャフトの前記突出する長さ部分の一部外周面に軸方向に対向して形成された径方向突出部間の環状の係合溝内に係合させる事により、この揺動腕の揺動に伴ってこの切換シャフトを軸方向に変位自在としており、
上記シフト動作を行なわせる第二のアクチュエータは、第二の電動モータと、
この第二の電動モータの回転を直線運動に変えて出力する出力軸部材を備えたボールネジ機構とを備え、
この出力軸部材は、前記駆動腕に結合し、
該駆動腕は前記出力軸部材の直線運動により上記切換シャフトの軸心周りに回動し、該駆動腕の回動とともに上記切換シャフトが回動して前記シフト動作が行われることを特徴とする。
また、本発明の第2の態様による変速機用電動駆動装置は、
複数のギヤのうちから所望のギヤを選択する為に切換シャフトを軸方向に変位させるセレクト動作と、
選択したギヤを噛合状態にする為に上記切換シャフトを回転させるシフト動作とを、それぞれが電動モータを駆動源とする第一、第二のアクチュエータにより行なわせる変速機用電動駆動装置であって、
前記切換シャフトは、滑り軸受を介してハウジングに支持されており、
前記切換シャフトには、前記シフト動作の際前記切換シャフトを回転させるため径方向に突出する駆動腕部材が固定され、
上記セレクト動作を行なわせる第一のアクチュエータは、第一の電動モータと、
この第一の電動モータの出力軸により回転駆動される周面歯を備えた回転伝達部材と、この回転伝達部材の上記周面歯に噛合する周面歯を備えた回転被伝達部材と、この回転被伝達部材と共に回動する揺動腕とを備えたものであり、この揺動腕の先端部を上記切換シャフトの一部外周面片側に軸方向に対向して形成された径方向突部間の係合溝内に係合させる事により、この揺動腕の揺動に伴ってこの切換シャフトを軸方向に変位自在としており、
上記シフト動作を行わせる第二のアクチュエータは、第二の電動モータと、この第二の電動モータの回転を直線運動に変えて出力する出力軸部材を備えたボールネジ機構とを備え、
この出力軸部材は、上記駆動腕部材を前記切換シャフトの軸方向移動自在に且つ前記切換シャフトをその軸心周りに回動自在に、前記切換シャフトの一部外周面他側に形成された前記駆動腕部材に結合しており
該駆動腕部材は前記出力軸部材の直線運動により回動し、該駆動腕部材の回動とともに上記切換シャフトが動して前記シフト動作が行われることを特徴とする。
上述の様に構成する本発明の変速機用電動駆動装置は、次の様にして、変速ユニットのギヤを切り換える。先ず、第一のアクチュエータを構成する第一の電動モータを所定方向に回転させて、揺動腕を揺動変位させる。そして、この揺動腕の先端部により切換シャフトを、所定方向に軸方向変位させて、セレクト動作を行なう。このセレクト動作に要する力は小さい為、上記揺動腕の変位速度を確保する場合でも、上記第一の電動モータとして特に大きな出力を有するものを使用しなくても、十分に上記セレクト動作を行なえる。
この様にしてセレクト動作を行なった後、シフト動作を行なうべく、第二のアクチュエータにより、駆動腕を介して上記切換シャフトを回転させる。この様なシフト動作は、上記第二のアクチュエータを構成するボールねじ機構を介して該ボールネジ機構の出力軸部材を軸方向に移動させる事で行なうが、この様にボールネジ機構を介して出力軸部材を軸方向に移動する力は十分に大きくできる。従って、セレクト動作に比べて大きな力を有するシフト動作も、確実に行なえる。
又、第二のアクチュエータを構成するボールねじ機構との係合状態は可逆的である。従って、第一、第二の電動モータが故障する等により、上記切換シャフトの駆動をこれら第一、第二の電動モータにより行なえなくなった場合でも、この切換シャフトを手動により駆動する事を可能にできる。
発明の実施の形態
図1〜4は、本発明の第1実施の形態を示している。手動変速機と同様の変速ユニットを内蔵したミッションケース1の側面から、この変速ユニットの変速比を切り換える為の切換シャフト2の先端部3を突出させている。この先端部3の中間部には雄スプライン部4を形成しており、この雄スプライン部4に、その内周面に雌スプラインを形成したスプライン筒5をスプライン係合させている。本例の場合には、上記ミッションケース1の開口6の周縁部に固定した支持筒7の中間部内周面と上記スプライン筒5の基部(図2の下部)外周面との間に、深溝型玉軸受等の、ラジアル、スラスト両方向の荷重を支承自在な転がり軸受8を設けて、上記スプライン筒5を回転のみ自在に支持している。又、上記支持筒7の先端部(図2の上端部)内周面と上記スプライン筒5の中間部外周面との間にシールリング9を設けて、上記支持筒7の開口端部を塞いでいる。更に、上記先端部3の更に端部で、上記スプライン筒5から突出した部分に、係合駒10を結合している。この係合駒10は、断面コ字形で全体を円環状としたもので、外周面に全周に亙る係合溝11を有する。又、上記スプライン筒5の先端部(図2の上端部)外周面と上記先端部3の更に端部外周面との間には、伸縮自在なベローズ12を掛け渡して、上記スプライン筒5と上記切換シャフト2とのスプライン係合部への異物進入防止を図っている。
上述の様なスプライン筒5と係合駒10とを組み付けた上記切換シャフト2は、軸方向(図1の表裏方向、図2の上下方向)に変位する事によりセレクト動作(一般的な手動式フロアシフト車でシフトレバーを車両の幅方向に変位させる事により行なう動作で、変速の為のギヤを選択する動作)を、回転させる事によりシフト動作(同じくシフトレバーを車両前後方向に変位させる事により行なう動作で、選択したギヤに対応するシンクロメッシュ機構を結合する動作)を、それぞれ行なわせる。例えば、図5に示す様に、前進5段(1速〜5速)、後退1段(R)の6種類の変速状態を実現する変速ユニットで考えた場合、セレクト動作では、何れの変速状態ともならない(シンクロメッシュ機構がフリー状態となっている)ニュートラル状態のまま、図5の左右方向両端位置と左右方向中央位置との3種類の位置を選択する。又、シフト動作では、このニュートラル状態での3種類の位置から、何れかの方向(図5の上方又は下方)に変位させ、何れかのシンクロメッシュ機構を接続状態として、何れかの変速状態とする。このうちのセレクト動作を行なわせるべく、上記切換シャフト2を軸方向に変位させる為に、上記ミッションケース1の外面と上記係合駒10との間に、第一のアクチュエータ13を設けている。
この第一のアクチュエータ13は、図3に示す様に、リダクションモータ等、正転逆転自在な第一の電動モータ14の出力軸により、多条ウォームギヤ15を回転駆動自在としている。この多条ウォームギヤ15のリード角は、15〜25度程度と大きくしている。そして、この多条ウォームギヤ15とウォームホイール16とを噛合させている。このウォームホイール16の回転中心である出力軸17は、上記多条ウォームギヤ15に対し捩れの位置にある。そして、この出力軸17に揺動腕18の基端部を結合固定して、この揺動腕18を、上記ウォームホイール16と共に回転する様に構成している。そして、この揺動腕18の先端部片側面(図1の左端部上面)に形成した係合凸部19を、上記係合駒10の係合溝11に係合させている。この様な構成により、上記出力軸17を中心とする上記揺動腕18の揺動に伴って上記切換シャフト2を、軸方向に変位自在としている。
一方、上記シフト動作を行なわせるべく、上記切換シャフト2を回転させる為に、前記ミッションケース1の外面と前記スプライン筒5の外周面に固設した駆動腕20の先端部との間に、第二のアクチュエータ21を設けている。この第二のアクチュエータ21は、図4に示す様に、略円筒状のハウジング22の一端部(図4の左端部)に正転逆転自在な第二の電動モータ23を、筒状のモータハウジング24を介して支持固定している。このモータハウジング24は、大径部25と小径部26とを段部27により連続させたもので、このうちの小径部26を上記ハウジング22の一端部に螺合固定し、上記大径部25に上記第二の電動モータ23を支持固定している。
又、上記小径部26の内側にボールねじ軸33の中間部基端寄り部分を、深溝型玉軸受の如く、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承自在な転がり軸受28により、回転のみ自在に支持している。尚、この転がり軸受28を構成する外輪29は、上記小径部26の開口端部に形成した内向フランジ状の鍔部30の内面とこの小径部26の中間部内周面に係止したストップリング31との間で挟持して、軸方向への変位を阻止している。又、上記転がり軸受28を構成する内輪32は、上記ボールねじ軸33の中間部に形成した外向フランジ状の鍔部34とこのボールねじ軸33の基端部(図4の左端部)外周面に螺着したナット35とにより挟持して、このボールねじ軸33に対し上記内輪32が軸方向に変位する事を防止している。そして、上記ボールねじ軸33の基端部で上記転がり軸受28よりも突出した部分と上記第二の電動モータ23の出力軸36とを、カップリング部37により、回転力の伝達自在に結合している。
上記ボールねじ軸33の周囲には、ボールナット38を配置している。そして、これらボールねじ軸33の外周面とボールナット38の内周面とにそれぞれ形成したボールねじ溝39a、39b同士の間に複数のボール40を配置してボールねじ機構41を構成している。従って上記ボールナット38は、後述の様に自身の回転を阻止されているので、上記ボールねじ軸33の回転に伴ってこのボールねじ軸33の軸方向に変位する。又、このボールナット38の片端面(図4の右端面)には円筒状の出力軸部材42の基端部を、これらボールナット38と出力軸部材42とを一体に造る事により結合している。
又、上記出力軸部材42の中間部外周面は、前記ハウジング22の前端部(図4の右端部)内周面に係止した滑り軸受43に摺接させて、上記出力軸部材42の案内を図っている。又、この出力軸部材42の先端部には結合ブラケット44を固定して、この出力軸部材42と前記駆動腕20の先端部とを結合自在としている。上記結合ブラケット44は、この駆動腕20の先端部を挿入自在な切り込み45を有する、二又状に形成しており、この駆動腕20の先端部を切り込み45に挿入した状態で、結合ピン46により、この駆動腕20と上記結合ブラケット44とを、揺動変位自在に結合している。
又、図示の例では、上記出力軸部材42の中間部外周面にガイド溝47を、この出力軸部材42の軸方向(図4の左右方向)に亙って形成している。そして、上記ハウジング22の先端部に固定したガイドピン48を上記ガイド溝47に係合させる事により、上記出力部材42及び上記ボールナット38の回転を防止する為の回転防止手段を構成している。
又、前記モータハウジング24の内端面(図4の右端面)を上記ボールナット38の軸方向片面(図1の左端面)に、上記ハウジング22の内周面先端寄り部分に形成した段部62を上記ボールナット38の軸方向他端面(図17の右端面)に、それぞれ対向させる事により、このボールナット38の軸方向に関する変位量を規制する為のストッパ手段を構成している。
更に、上記出力軸部材42と上記ハウジング22との間に、上記ストッパ手段により規制される上記ボールナット38のストロークの中間位置で係合して、このボールナット38が軸方向に変位する事に対する抵抗を発生させるディテント機構49を設けている。このディテント機構49を構成する為、上記出力軸部材42の中間部外周面で上記ガイド溝47と直径方向反対側位置に、中央部に向かう程深くなる摺鉢状の凹孔50を形成している。又、上記ハウジング22の一部で上記ボールナット38の軸方向に亙る変位に伴って上記凹孔50に対向する部分に円筒状のシリンダ部51を、上記ハウジング22及びボールナット38の直径方向に亙って設けている。そして、上記シリンダ部51内に、鋼球等のボール52を、上記直径方向に亙る変位自在に保持している。そして、ボール52と、上記シリンダ部51の開口端部に付着したキャップ53との間に、弾性部材である圧縮コイルばね54を設けて、上記ボール52を上記出力軸部材42の外周面に向け、弾性的に押し付けている。
なお、ディテント機構49は上述のものに限られず、例えば出力軸部材42の周部に形成されたテーパ溝に弾性リングが係合するような構成のもの、出力軸部材42の周部に形成された凹み部にその外側に設けられた凸部材が弾性により押圧係合するような構成のもの、あるいは出力軸部材42の周部に形成されたテーパ凸部にその周囲に設けられた凹み部付部材が弾性により係合するような構成のもの等、出力軸部材42をそのストロークの中間位置に位置決めし、その位置からの移動に対して所定の抵抗力を与えるようなものであれば、どのような構成のものでも良い。
上述の様に構成する第二のアクチュエータ21は、前記モータハウジング24の外周面の直径方向反対側2個所位置に設けた取付部55、55を、前記ミッションケース1の外面に設けた支持ブラケット56に、互いに同心の1対の枢軸により、揺動自在に支持する。又、前述した通り、上記出力軸部材42の先端部と前記駆動腕20とを、前記結合ブラケット44及び結合ピン46を介して結合する。
また、上述した第二のアクチュエータ21のボールねじ機構41において、ボールねじ軸33をモータ出力軸36に連結して回転させ、ボールナット38を出力軸部材42に一体にして直線運動させているが、この構成とは逆にボールナットをモータ出力軸36に連結して回転させ、このボールナットにボールを介して係合するボールねじ軸を出力軸部材42と一体にして直進運動させる構成としても良い。
上述の様に構成する本発明の変速機用電動駆動装置は、次の様にして、前記ミッションケース1に内蔵した変速ユニットのギヤを切り換える。先ず、前記第一のアクチュエータ13を構成する第一の電動モータ14を所定方向に回転させて、前記揺動腕18を図2の上下方向に揺動変位させる。そして、この揺動腕18の先端部に設けた係合突部19より前記切換シャフト2を、前記係合駒10を介して所定方向に軸方向変位させ、セレクト動作を行なう。このセレクト動作に要する力は小さい為、前記多条ウォームギヤ15とウォームホイール16とを噛合させて、上記揺動腕18の変位速度を確保する場合でも、上記第一の電動モータ14として特に大きな出力を有するものを使用する事なく、十分に上記セレクト動作を行なえる。従って、小型化とセレクト動作の迅速化との両立を容易に図れる。尚、このセレクト動作を行なう際、両端位置への移動は、上記切換シャフト2が変位しなくなるまで上記第一の電動モータ14を所定方向に回転させる事で行なう。これに対して中央位置への移動は、上記切換シャフト2が何れかの端部に存在する状態から、上記第一の電動モータ14を所定時間だけ回転させる事で行なう。
この様にしてセレクト動作を行なった後、シフト動作を行なうべく、前記第二のアクチュエータ21を伸縮させる事により、前記駆動腕20を介して上記切換シャフト2を所定方向に回転させる。この様にシフト動作を行なう際には、前記第二の電動モータ23により前記ボールねじ軸33を所定方向に回転させる。そして、前記ボールねじ機構41により前記ボールナット38及び出力軸部材42を軸方向に変位させて、上記駆動腕20を押し引きする。上記シフト動作では、上記第二のアクチュエータ21の伸縮ストロークの両端位置で、何れかの変速状態を実現する(所望のギヤに対応するシンクロメッシュ機構を接続状態とする)。この様に、何れかの変速状態となる上記両端位置に対応する、上記ボールナット38及び出力軸部材42のストロークの両端位置は、このボールナット38の軸方向両端面と前記モータハウジング24の内端面若しくは前記段部62との衝合により規制される。従って、図示の例では、上記ストロークの両端位置部分では、上記第二の電動モータ23に流れる電流の増大を検出する事によりこの第二の電動モータ23への通電を停止する事で、上記ボールナット38及び上記出力軸部材42の位置決めを図れる。上述の様なシフト動作は、上記ボールねじ軸33を回転させ、上記ボールナット38を軸方向に移動させる事で行なうが、この様にボールナット38が軸方向に移動する力は十分に大きくできる。従って、セレクト動作に比べて大きな力を有するシフト動作も、確実に行なえる。
一方、変速比を変える際には、上記第二のアクチュエータ23を伸縮ストロークの一端側(例えば最大伸長状態)から他端側(例えば最大収縮状態)にまで変位させる(図5で上下方向に直線的なシフト操作を行なう場合)か、一度セレクト動作を経てから、再びシフト動作を行なう。この様に一度セレクト動作を経る場合には、上記第二のアクチュエータ21を伸縮ストロークの中央位置で一度停止して、前述したセレクト動作を可能にする。この様にセレクト動作を可能にする、前記ニュートラル状態は、上記伸縮ストロークの中央位置に対応する。又、このストロークの中央位置では、前記ディテント機構49が作動する。即ち、本例の場合には、ディテント機構49を構成する前記ボール52と凹孔50とが、上記ストロークの中央位置で互いに係合し、前記出力軸部材42が変位する事に対する抵抗を発生させる。従って、図示の例では、中央位置は、上記ボールナット38が何れかの端部に位置する状態から上記第二の電動モータ23に所定時間通電し、上記凹孔50が上記ボール52に対向する位置にまで上記出力軸部材42を変位させる事により、正確に位置決めできる。尚、上記第二の電動モータ23の回転量を検出若しくは規制する事により、上記第二のアクチュエータ21をストロークの中央位置で停止できるのであれば、上記ディテント機構49を省略する事もできる。
上述した様に本発明の変速機用電動駆動装置によれば、特に面倒で設置スペースが嵩む機構を使用する事なく、変速ユニットの入力部材である切換シャフト2を駆動して、変速状態の切換を行なえる。又、前記第一のアクチュエータ13を構成する前記多条ウォームギヤ15とウォームホイール16との噛合状態は可逆的であり、上記第二のアクチュエータ21を構成する前記ボールねじ軸33とボールナット38との係合状態も可逆的である。従って、前記第一の電動モータ14或は上記第二の電動モータ23が故障する等により、上記切換シャフト2の駆動をこれら第一、第二の電動モータ14、23により行なえなくなった場合でも、この切換シャフト2を手動により駆動する事を可能にできる。
尚、図示の例では、ディテント機構49を、ストロークの中間1個所位置にのみ設けた場合に就いて示したが、ディテント機構を設ける場合で、位置決めをする必要個所が両端部を含めて4個所以上存在する場合には、ディテント機構を、軸方向位置が異なる2個所以上に設ける事もできる。この場合に、各ディテント機構を設ける位置を、軸方向だけでなく円周方向にもずらせて、軸方向に近接配置したディテント機構の構成部材(例えばシリンダ部51)同士が互いに干渉する事を防止する事もできる。
次に、図6〜7は、本発明の第2実施の形態を示している。本実施形態の場合には、ミッションケース1の開口6部分に固定した円輪状の支持プレート57の内側に切換シャフト2を、滑り軸受58により回転自在に支持している。又、シールリング9により、上記支持プレート57の内周面と切換シャフト2の外周面との間の隙間を塞いでいる。又、この切換シャフト2の先端部(図7の上端部)で上記ミッションケース1から突出した部分に駆動ブラケット59を、上記切換シャフト2に対する回転も軸方向に亙る変位も不能にして、固定している。
上記駆動ブラケット59の外周面片側(図6〜7の右側)部分には係合溝11aを形成しており、この係合溝11aに、第一のアクチュエータ13(図1〜3参照)により揺動変位させられる揺動腕18の先端部片面(図6〜7の左面)に設けた係合突部19を係合させている。又、上記駆動ブラケット59の外周面他側(図6〜7の左側)部分の軸方向両端部に形成した1対の駆動腕20a、20aの先端部同士の間にスライドピン60を、上記切換シャフト2と平行に支持している。そして、このスライドピン60を、第二のアクチュエータ21(図1、2、4参照)の出力軸部材42aの先端部に形成した円孔61に、揺動並びに軸方向の変位自在に挿通している。
上述の様に構成する本例の場合も、前述した第1実施の形態の場合と同様に、上記揺動腕18を揺動させる事により上記切換シャフト2を軸方向に変位させて、セレクト動作を行なえる。又、上記出力軸部材42aを軸方向に変位させる事によって、シフト動作を行なえる。
次に図8および図9を参照して第一のアクチュエータの変形例113について説明する。
この第一のアクチュエータの変形例113は、図8に示す様に、リダクションモータ等、正転逆転自在な第一の電動モータ114の出力軸114aに一体にディスクギヤ115を有している。ディスクギヤ115にはセクタギヤ116が噛み合っている。ディスクギヤ115とセクタギヤ116とは回転軸がほぼ平行である。ここでほぼ平行とは完全な平行を含むことは勿論プラスもしくはマイナスに15度程度傾いている場合も含むものとする。
セクタギヤ116は玉軸受120を介してハウジングに101に回動自在に支持されている。ハウジング101はモータハウジングと一体に構成されトランスミッションケース1(図2)と一体になっている。セクターギヤ116の回動中心である出力軸117には、揺動腕118の基端部を結合固定してあり、この揺動腕118はセクターギヤ115と共に回動するようになっている。この揺動腕118の先端部は図2に示した第一アクチュエータ13の揺動腕18の先端部と同様係合凸部119を介して、図2に示した係合駒10の係合溝11に係合させている。この様な構成により、上記出力軸117を中心とする上記揺動腕118の揺動に伴って図2に示す切換シャフト2を、軸方向に変位自在としている。
この第一のアクチュエータの変形例113において、セクターギヤ116は図9に点線で示す如く切換シャフト2の上下運動に十分な角度範囲を揺動出来るようこの作動角度範囲に対応する歯数を有しており、セクタギヤ116のピッチ円半径はディスクギヤ115のピッチ円半径の3〜10倍に選択されるのが好適であり、本実施形態の場合5倍に選択されている。また、セクターギヤ116の回動中心からディスクギヤ115との噛み合い点に至るピッチ円半径は該回転中心から揺動腕118の先端部の係合凸部119にある作動中心への距離よりも大きく、したがってセクターギヤの回動は増力されて揺動腕118に伝達される。
また、ディスクギヤ115とセクタギヤ116とは形状が本例のものに限定されるものではなく、共に上述した意味でほぼ平行な軸を有し、それぞれディスクギヤ115とセクタギヤ116とについて上述した如き特性のほぼ平行に配置されそれぞれ周面歯を有する回転伝達部材および回転被伝達部材であれば良い。
本発明は、以上に述べた通り構成し作用するので、小型・軽量に構成できて、乗用車等の小型自動車の変速機の切り換えを行なえる変速機用電動駆動装置の実現を図れる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の第1の実施の形態を示す平面図であり、図2は図1のA−A断面図であり、図3は図1のB−B断面図であり、図4は図1のC−C断面図であり、図5は変速機のシフトパターンの1例を示す略平面図であり、図6は本発明の第2の実施の形態を示す部分平面図であり、図7は図6のD−D断面図であり、図8は第一のアクチュエータの変形例を示す部分断面説明図であり、図9は図8のA−A断面図である。

Claims (2)

  1. 複数のギヤのうちから所望のギヤを選択する為に切換シャフトを軸方向に変位させるセレクト動作と、
    選択したギヤを噛合状態にする為に上記切換シャフトを回転させるシフト動作とを、それぞれが電動モータを駆動源とする第一、第二のアクチュエータにより行なわせる変速機用電動駆動装置であって、
    前記切換シャフトは、回転可能且つ軸方向移動不能にハウジングに支持された筒状部材に挿通され、該切換シャフトと該筒状部材はスプライン嵌合しており、
    前記筒状部材の外周面には、前記シフト動作の際前記切換シャフトを回転させる駆動腕が一体的に形成され、
    該切換シャフトの端部は前記筒状部材より外方に軸方向に突出する長さ部分を有しており、
    上記セレクト動作を行なわせる第一のアクチュエータは、第一の電動モータと、
    この第一の電動モータの出力軸により回転駆動される周面歯を備えた回転伝達部材と、この回転伝達部材の上記周面歯に噛合する周面歯を備えた回転被伝達部材と、この回転被伝達部材と共に回動する揺動腕とを備えたものであり、この揺動腕の先端部は上記切換シャフトの前記突出する長さ部分の一部外周面に軸方向に対向して形成された径方向突出部間の環状の係合溝内に係合させる事により、この揺動腕の揺動に伴ってこの切換シャフトを軸方向に変位自在としており、
    上記シフト動作を行なわせる第二のアクチュエータは、第二の電動モータと、
    この第二の電動モータの回転を直線運動に変えて出力する出力軸部材を備えたボールネジ機構とを備え、
    この出力軸部材は、前記駆動腕に結合し、
    該駆動腕は前記出力軸部材の直線運動により上記切換シャフトの軸心周りに回動し、該駆動腕の回動とともに上記切換シャフトが回動して前記シフト動作が行われることを特徴とする変速機用電動駆動装置。
  2. 複数のギヤのうちから所望のギヤを選択する為に切換シャフトを軸方向に変位させるセレクト動作と、
    選択したギヤを噛合状態にする為に上記切換シャフトを回転させるシフト動作とを、それぞれが電動モータを駆動源とする第一、第二のアクチュエータにより行なわせる変速機用電動駆動装置であって、
    前記切換シャフトは、滑り軸受を介してハウジングに支持されており、
    前記切換シャフトには、前記シフト動作の際前記切換シャフトを回転させるため径方向に突出する駆動腕部材が固定され、
    上記セレクト動作を行なわせる第一のアクチュエータは、第一の電動モータと、
    この第一の電動モータの出力軸により回転駆動される周面歯を備えた回転伝達部材と、この回転伝達部材の上記周面歯に噛合する周面歯を備えた回転被伝達部材と、この回転被伝達部材と共に回動する揺動腕とを備えたものであり、この揺動腕の先端部を上記切換シャフトの一部外周面片側に軸方向に対向して形成された径方向突部間の係合溝内に係合させる事により、この揺動腕の揺動に伴ってこの切換シャフトを軸方向に変位自在としており、
    上記シフト動作を行わせる第二のアクチュエータは、第二の電動モータと、この第二の電動モータの回転を直線運動に変えて出力する出力軸部材を備えたボールネジ機構とを備え、
    この出力軸部材は、上記駆動腕部材を前記切換シャフトの軸方向移動自在に且つ前記切換シャフトをその軸心周りに回動自在に、前記切換シャフトの一部外周面他側に形成された前記駆動腕部材に結合しており
    該駆動腕部材は前記出力軸部材の直線運動により回動し、該駆動腕部材の回動とともに上記切換シャフトが回動して前記シフト動作が行われることを特徴とする変速機用電動駆動装置。
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