JP4320922B2 - エステラーゼ遺伝子及びその利用 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エステラーゼ遺伝子及びその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(2)
Figure 0004320922
( R2は炭素数7〜19のアラルキル基、炭素数2〜5のアルキルカルボニル基、炭素数3〜6のアルケニルカルボニル基、炭素数7〜13のアリールカルボニル基、炭素数8〜10のアラルキルカルボニル基、炭素数2〜9のアルキルオキシカルボニル基、炭素数8〜10のアラルキルオキシカルボニル基、炭素数3〜9のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数7〜13のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数6〜12のアリールスルホニル基を示すが、該アラルキル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリール基またはアリールスルホニル基において、その芳香環に結合する水素原子の1個以上は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる少なくとも一種で置換されていてもよく、該アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキル基またはアルケニル基における水素原子の1個以上は炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる少なくとも一種で置換されていてもよい。nは1または2を表す。)
で示される(S)−N−置換環状イミノ酸類(以下、S環状イミノ酸(2)と記すこともある)は、医薬などの中間体として有用な化合物である。
かかるS環状イミノ酸(2)のうち、一般式(3)
Figure 0004320922
(式中、R2は水素原子または保護基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)
で示されるN−置換アゼチジン−2−カルボン酸の生化学的製造に用いられる生体触媒としては、例えば、Candida antarctica,Penicillium camembertii,Rhizopus chinensis,Rhizopus japonicus,Mucor javanicus,Mucor miehei,Bacillus subtilis,Candida rugosa,Candia cylindracea,Pseudomonas cepacia,Bacillus licheniformis,Bacillus sp.,Aspergillus niger起源の酵素が、その分子構成に基づいて決定される固有の特性である反応生成物の光学純度(%e.e.)とともに特開平11−46784号公報に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、S環状イミノ酸(2)を製造するための優れた触媒能力を有するタンパク質をコードする新規な遺伝子を見出し、これを利用した遺伝子工学的手法による一般式(1)
Figure 0004320922
(式中、R1は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数7〜19のアラルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基または炭素数6〜12のアリール基を表わすが、該アルキル基における水素原子の1個以上が炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよく、該アラルキル基または該アリール基における芳香環に結合する水素原子の1個以上が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよい。R2及びnは前記と同じ意味を表わす。)
で示されるN−置換環状イミノ酸エステル類(以下、環状イミノ酸エステル類(1)と記すこともある)を不斉加水分解し、S環状イミノ酸(2)を生産する新規な製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、S環状イミノ酸(2)を製造するための優れた触媒能力を有するタンパク質をコードする新規な遺伝子等を見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、
1.下記の塩基配列のいずれかを有することを特徴とする遺伝子(以下、本発明遺伝子と記すこともある)、
(a)配列番号2で示される塩基配列。
(b)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつ配列番号2で示される塩基配列の一部からなる塩基配列。
(c)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列。
(d)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつSDS−PAGEによる分子量が約2.5万ダルトンのタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(e)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつ配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列に対して60%以上の塩基同一性を示す塩基配列。
(f)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列を有するDNAを増幅可能とするオリゴヌクレオチドをプライマーとし、かつAspergillus flavusに属する微生物由来の染色体DNAを鋳型とするPCRによって増幅されるDNAの塩基配列。
【0005】
2.下記の塩基配列のいずれかを有することを特徴とする遺伝子。
(a)配列番号2で示される塩基配列。
(b)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号103〜765で表される塩基配列。
(c)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列。
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(f)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号79〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
【0006】
3.宿主細胞において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とする前項1又は2記載の遺伝子。
【0007】
4.宿主細胞において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列が配列番号3で示されるアミノ酸配列であることを特徴とする前項3記載の遺伝子。
【0008】
5.宿主細胞で機能可能なプロモーターと前項1又は2記載の遺伝子とが機能可能な形で接続されてなることを特徴とする遺伝子。
【0009】
6.前項1又は2記載の遺伝子を含むことを特徴とするベクター。
【0010】
7.前項1又は2記載の遺伝子が宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体。
【0011】
8.宿主細胞が微生物であることを特徴とする前項7記載の形質転換体。
【0012】
9.前項1又は2記載の遺伝子を宿主細胞に導入する工程を含むことを特徴とする形質転換体の製造方法。
【0013】
10.前項1又は2記載の遺伝子を有する微生物を培養する工程を含むことを特徴とするラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質の製造方法。
【0014】
11.環状イミノ酸エステル類(1)に前項1または2記載の遺伝子を有する微生物又はその処理物を作用させることを特徴とするS環状イミノ酸(2)の製造方法。
【0015】
12.下記のアミノ酸配列のいずれかを有するタンパク質(以下、本発明タンパク質と記すこともある。)。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列。
(b)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部からなるアミノ酸配列。
(c)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列。
(d)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつSDS−PAGEによる分子量が約2.5万ダルトンのタンパク質のアミノ酸配列。
(e)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して60%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列。
【0016】
13.下記のアミノ酸配列のいずれかを有することを特徴とするタンパク質。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号79〜255で表されるアミノ酸配列。
(d)配列番号2で示される塩基配列に対応するアミノ酸配列。
(e)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号103〜765で表される塩基配列に対応するアミノ酸配列。
(f)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列に対応するアミノ酸配列。
【0017】
14.環状イミノ酸エステル類(1)に、前項12又は13記載のタンパク質を作用させることを特徴とするS環状アミノ酸の製造方法。
【0018】
15.一般式(1)において、R1がその水素原子の1個以上がハロゲン原子又はニトロ基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であることを特徴とする前項14に記載の方法。
【0019】
16.一般式(1)において、R2が(a)その芳香環に結合する水素原子の1個以上が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよい炭素数7〜19のアラルキル基または(b)水素原子の1個以上が炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよい炭素数2〜9のアルキルオキシカルボニル基であることを特徴とする前項14または15に記載の方法。
等を提供するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明遺伝子には、下記の塩基配列のいずれかを有することを特徴とする遺伝子
(i)配列番号2で示される塩基配列、
(ii)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(iii)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつ、配列番号2で示される塩基配列の一部からなる塩基配列(具体的には例えば、配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号103〜765で表される塩基配列、配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号79〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列。)、
(iv)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列、
(v)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつSDS−PAGEによる分子量が約2.5万ダルトンのタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(vi)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、かつ配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列に対して60%以上の塩基同一性を示す塩基配列、
(vii)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列を有するDNAを増幅可能とするオリゴヌクレオチドをプライマーとし、かつAspergillus flavusに属する微生物由来の染色体DNAを鋳型とするPCRによって増幅されるDNAの塩基配列等を含む。
【0021】
上記の遺伝子としては、天然の遺伝子であってもよいし、例えば、部位特異的変異導入法や突然変異処理などによって天然の遺伝子に変異を導入することにより作出された遺伝子であってもよい。
天然の遺伝子を検索する場合には、ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有する微生物を対象にすればよく、例えば、Aspergillus flavusに属する微生物を好ましい対象としてあげることができる。
【0022】
本発明遺伝子はエステル不斉加水分解反応を立体選択的に触媒する能力として少なくとも代表的基質であるラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有している。例えば、本発明遺伝子が有する塩基配列に対するアミノ酸配列を有するタンパク質を含有する3.5mlの100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中に、0.02gのラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステル、1.0mlのメチル−t−ブチルエーテルを添加することにより反応液を調製し、この反応液を約30℃〜約35℃にて1時間〜24時間振とうしながら保温した後、得られた反応液を遠心分離(12000rpm、5分間)して得られる水相中に存在する光学活性N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸の量を分析すれば、当該能力の有無を判定することができる。
【0023】
尚、光学活性N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸の定量分析方法については実施例の欄等において一例を詳細に記載する。
【0024】
本発明遺伝子において、「配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989、農村文化社発行)等に記載されるサザンハイブリダイゼーション方法において、(1)高イオン濃度下[例えば、6XSSC(900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム)等が挙げられる。]に、65℃の温度条件でハイブリダイズさせることにより配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAとDNA-DNAハイブリッドを形成し、(2)低イオン濃度下[例えば、0.1 X SSC(15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム)等が用いられる。]に、65℃の温度条件で30分間保温した後でも該ハイブリッドが維持されうるようなDNAをいう。具体的には、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAや、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列において、その一部の塩基配列が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNAなどがあげられる。かかるDNAは、自然界に存在するDNAの中からクローニングされたDNAであっても、このクローニングされたDNAに塩基の欠失、置換または付加が人為的に導入されてなるDNAであっても、人為的に合成されたDNAであってもよい。
【0025】
より具体的には、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号79〜255で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその5’末端に、開始コドン(ATG)が付加された塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列の塩基番号235〜765で表わされる塩基配列又はその5’末端に、開始コドン(ATG)が付加された塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその5’末端に、開始コドン(ATG)が付加された塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列の塩基番号103〜765で表わされる塩基配列又はその5’末端に、開始コドン(ATG)が付加された塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列からなるDNA等があげられる。
本発明遺伝子において、配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列に対して60%以上の塩基同一性とは、配列番号2で示される全塩基を対象とする同一性であり、好ましくは80%以上の塩基同一性をあげることができる。
【0026】
本発明遺伝子のDNAは、例えば以下のようにして調製することができる。まず、例えばアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)などに属する微生物等から、通常の遺伝子工学的方法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、春潤社、1993年)等に記載される方法)に準じて染色体DNAまたはcDNAを調製し、これらを鋳型として、かつ配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列を有するDNAを増幅可能とするオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて下記の反応条件にてPCRを行うことにより、配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列を有するDNAを増幅することができる。
【0027】
具体的には、例えば、配列番号2で示される塩基配列の塩基番号1〜27で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと、配列番号2で示される塩基配列の塩基番号784〜798で示される塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて下記の反応条件にてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを増幅することができる。
【0028】
ここで、PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々終濃度が0.2mMとなるよう含み、2種類のプライマーを各々5pmol、TaqポリメラーゼGoldを2.5U、および鋳型となるcDNAを含む100μlの反応液を、PCR装置にセットし、98℃(7分間)加熱処理した後、97℃(0.3分間)‐45℃(1分間)‐72℃(2分間)の保温を20サイクル繰り返し、次いで94℃(1分間)‐50℃(0.3分間)‐75℃(2.5分間)の保温を20サイクル繰り返し、さらに70℃(7分間)保温する条件をあげることができる。尚、このようにしてPCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加してもよい。また、染色体DNAまたはcDNAがベクターに挿入されてなるDNAライブラリーを鋳型とする場合には、例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列から選ばれる塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の5'末端側の約14塩基程度以上の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)と、ライブラリー構築に用いられたベクターのDNA挿入部位近傍の塩基配列に相補的な塩基配列からなる約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドとをプライマーとして用いてPCRを行うことにより、本発明遺伝子のDNAを増幅することもできる。また、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAなどを調製する場合には、以下のようにすることができる。
【0029】
例えば、A.Greener, M.Callahan, Strategies, 1994年7巻32-34頁等に記載される方法により配列番号2で示される塩基配列からなるDNAにランダムに変異を導入してもよい。また、W.Kramer,et al.,Nucleic Acids Research,1984年12巻9441頁もしくはW.Kramer,H.J.Frits,Methods in Enzymology,1987年,154巻,350頁等に記載のギャップド・デュープレックス(gapped duplex)法、または、T.A.Kunkel,Proc. of Natl. Acad. Sci. U.S.A.,1985年,82巻,488頁もしくはT.A.Kunkel,et al.,Methods in Enzymology,1987年,154巻,367頁等に記載のクンケル(Kunkel)法などに準じて、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに部位特異的に変異を導入してもよい。配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを鋳型とし、配列番号2で示される塩基配列の一部においても1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いてPCRを行い、配列番号2で示される塩基配列において1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるDNAを増幅することもできる。
【0030】
さらに、例えば、S.Henikoff,et al.,Gene,1984年、28巻、351頁、C.Yanisch−Perron, et al.,Gene,1985年、33巻、103頁等に記載された方法により、配列番号2で示される塩基配列の一部を欠失した塩基配列を有するDNAを調製してもよい。このようにして得られるDNAの中から、ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAを選抜すればよい。
【0031】
上記のようにして増幅されたDNAは、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている通常の方法に準じてベクターにクローニングすることができる。具体的には、例えばInvitogen社のTAクローニングキットに含まれるプラスミドベクターやStratagene社のpBluescriptIIなどのプラスミドベクターを用いてクローニングすることができる。
【0032】
また、本発明遺伝子のDNAは、例えばアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)等に属する微生物由来の染色体DNAまたはcDNAのライブラリーに、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する約15塩基以上の塩基からなるDNAをプローブとして後述する条件にてハイブリダイズさせ、該プローブが特異的に結合するDNAを検出することによっても取得することができる。
【0033】
染色体DNAまたはcDNAのライブラリーにプローブをハイブリダイズさせる方法としては、コロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーションを挙げることができ、ライブラリーの作製に用いられたベクターの種類に応じて方法を選択するとよい。使用されるライブラリーがプラスミドベクターを用いて構築されている場合は、コロニーハイブリダイゼーションを行う。具体的にはまず、ライブラリーのDNAを宿主微生物に導入して形質転換体を取得し、得られた形質転換体を希釈して寒天培地にまき、コロニーが現れるまで培養を行う。ライブラリーがファージベクターを用いて作製されている場合は、プラークハイブリダイゼーションを行う。具体的にはまず、宿主微生物とライブラリーのファージを感染可能な条件下で混合した後、更に軟寒天培地と混合し、これを寒天培地にまく。その後、プラークが現れるまで培養を行う。
【0034】
次いで、前記のいずれのハイブリダイゼーション法の場合も、前記の培養を行った寒天培地の表面にメンブレンを載せ、形質転換体またはファージを該メンブレンに吸着させる。このメンブレンをアルカリ処理した後、中和処理し、次いで、DNAを該メンブレンに固定する処理を行う。より具体的に例えば、プラークハイブリダイゼーションの場合には、前記寒天培地の上にニトロセルロースメンブレンまたはナイロンメンブレン等、例えば、Hybond-N+(アマシャム社登録商標)に置き、約1分間静置してファージ粒子をメンブレンに吸着させる。次に、該メンブレンをアルカリ溶液(1.5M 塩化ナトリウム、0.5N NaOH)に約3分間浸してファージ粒子を溶解させてファージDNAをメンブレン上に溶出させた後、中和溶液(1.5M 塩化ナトリウム、0.5Mトリス-塩酸緩衝液pH7.5)に約5分間浸す処理を行う。該メンブレンを洗浄液(0.3M塩化ナトリウム、30 mMクエン酸ナトリウム、0.2M トリス-塩酸緩衝液pH7.5)で約5分間洗った後、例えば、約80℃で約90分間ベーキングすることによりファージDNAをメンブレンに固定する。
【0035】
このように調製されたメンブレンを用いて、上記DNAをプローブとしてハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションは、例えば、J.Sambrook, E.F.Frisch, T.Maniatis著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition(1989)」 Cold Spring Harbor Laboratory Press等の記載に準じて行うことができる。
【0036】
プローブに用いるDNAを放射性同位元素により標識するには、例えば、ベーリンガー社、宝酒造社製のRandom Labeling Kit等を用いることができ、通常のPCR反応組成中のdCTPを(α-32P)dCTPに替えて、プローブに用いるDNAを鋳型にしてPCR反応を行うことにより、標識を行うこともできる。また、プローブに用いるDNAを蛍光色素で標識する場合には例えば、アマシャム製のECL Direct Nucleic Acid Labeling and Detection System等を用いることができる。
【0037】
ハイブリダイゼーションを行う際の試薬及び温度条件は多種存在するが、例えば、450〜900mMの塩化ナトリウムおよび45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含み、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.1〜1.0%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μg/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポリビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2%の濃度で含んでいてもよいプレハイブリダイゼーション液、好ましくは、900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0%のSDSおよび100μg/mlの変性Calf-thymus DNAを含むプレハイブリダイゼーション液を、上記のようにして作製したメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、該溶液に前記メンブレンを浸して42〜65℃で1〜4時間、好ましくは、65℃で2時間保温する。次いで例えば、450〜900mMの塩化ナトリウムおよび45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含み、SDSを0.1〜1.0%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μg/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポリビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2%の濃度で含んでいてもよいハイブリダイゼーション溶液、好ましくは、900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0%のSDSおよび100μg/mlの変性Calf-thymus DNAを含むハイブリダイゼーション溶液と、前述の方法で調製して得られたプローブ(メンブレン1cm2当たり1.0x104〜2.0x106cpm相当量)とを混合した溶液をメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、該溶液にメンブレンを浸し42〜65℃で12〜20時間、好ましくは、65℃で16時間保温しハイブリダイゼーション反応を行う。該ハイブリダイゼーション反応後、メンブレンを取り出し、15〜300mMの塩化ナトリウム、1.5〜30mMクエン酸ナトリウムおよび0.1〜1.0 %のSDS等を含む42〜65℃の洗浄液等を用い、好ましくは、15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウムおよび1.0 %のSDSを含む65℃の洗浄液で15分間の洗浄を2回行う。さらに、メンブレンを2xSSC溶液(300mM塩化ナトリウム、30mMクエン酸ナトリウム)で軽くすすいだ後乾燥させる。このメンブレンを、例えば、オートラジオグラフィーなどに供してメンブレン上のプローブの位置を検出することにより、用いたプローブとハイブリダイズするDNAのメンブレン上の位置を検出する。検出されたDNAのメンブレン上の位置に相当するクローンをもとの寒天培地上で特定しこれを釣菌することにより、当該DNAを有するクローンを単離することができる。
【0038】
上述のようにして得られるDNAは、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている通常の方法に準じてベクターにクローニングすることができる。ベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK331-1(Pharmacia社製)などを利用することができる。
【0039】
また、前述のDNAの塩基配列は、F.Sanger, S.Nicklen, A.R.Coulson著、Proceeding of Natural Academy of Science U.S.A.(1977) 74: 5463-5467頁等に記載されているダイデオキシターミネーター法等により解析することができる。塩基配列分析用の試料調製には、例えば、パーキンエルマー社のABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit等の市販の試薬を用いてもよい。
【0040】
上述のようにして得られるDNAにコードされるタンパク質の環状イミノ酸エステル類(1)に対する立体選択的な不斉加水分解能の確認は、以下のようにして行うことができる。
【0041】
例えば、まず、該DNAを後述のように、宿主細胞において機能可能なプロモーターの下流に接続されるようにベクターに挿入し、これを宿主細胞に導入して形質転換体を取得する。次いで、該形質転換体の培養物を前記化合物に作用させ、その反応生成物を分析する。S環状イミノ酸(2)を優先的に生成する能力を有する形質転換体は、かかる能力を有するタンパク質をコードする本発明遺伝子のDNAを保有している。
【0042】
本発明遺伝子のDNAにおいて、環状イミノ酸エステル類(1)を不斉加水分解し、S環状イミノ酸(2)を優先的に生産する能力を有するタンパク質、特にそのアミノ末端領域、をコードする塩基配列において、使用されているアミノ酸をコードするコドンを、宿主細胞における使用頻度の順位が高いコドンに置換することにより、該タンパク質の宿主細胞での発現効率を高めてもよい。ここで「アミノ末端領域」とは、タンパク質のアミノ末端を含む約10〜約50アミノ酸残基程度からなる領域をいう。
【0043】
また、宿主細胞での発現効率を高めるためには、当該宿主細胞で利用可能な既知のタンパク質のN末端領域をコードするDNAを利用する方法もある。
宿主由来のタンパク質のアミノ末端領域のアミノ酸配列、例えば、大腸菌を宿主とする場合、大腸菌のβ−ガラクトシダーゼ等のアミノ末端領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列の下流に、配列番号1で示されるアミノ酸配列またはその一部である部分配列をコードする塩基配列が、読み枠を合わせた状態で接続されてなる塩基配列を有するDNA等を調製し、調製されたDNAを本発明遺伝子又はその代わりとして利用すればよい。より具体的には、大腸菌のβ−ガラクトシダーゼのアミノ末端残基から25番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列の下流に、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列が接続されてなる塩基配列を有するDNAが、あるいは大腸菌のβ−ガラクトシダーゼのアミノ末端残基から25番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列をコードする塩基配列の下流に、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列が接続されてなる塩基配列を有するDNA等をあげることができる。
【0044】
本発明遺伝子は、宿主細胞において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列をコードする塩基配列を有していてもよい。宿主細胞において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列としては、例えば、その宿主細胞において通常分泌されるタンパク質由来のシグナルペプチドのアミノ酸配列をあげることができる。具体的には例えば、大腸菌において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列としては、リポタンパク質(Lpp)等の膜局在タンパク質のシグナルペプチドのアミノ酸配列、アルカリフォスファターゼ(phoA)、マルトース結合タンパク質(MalE)等のペリプラズム局在タンパク質のシグナルペプチドのアミノ酸配列、配列番号3で示されるアミノ酸配列などをあげることができ、Bacillus属に属する微生物において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列としては、α−アミラーゼ(BLA)、プロテアーゼ・インヒビター(BbrPI)等のタンパク質のシグナルペプチドのアミノ酸配列をあげることができる(生物化学実験法37「蛋白質の分泌と細胞内輸送」水島昭二著、学会出版センター、蛋白質核酸酵素 臨時増刊号「蛋白質工学の進展−蛋白質の設計を目指して」共立出版)。
【0045】
本発明遺伝子を宿主細胞で発現させるには、宿主細胞で機能可能なプロモーターと本発明遺伝子とが機能可能な形で接続されてなる遺伝子を宿主細胞に導入する。ここで、「機能可能な形で」とは、該遺伝子を宿主細胞に導入し宿主細胞を形質転換させた際に、本発明遺伝子が、プロモーターの制御下に発現するように、プロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、例えば、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、または、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーターなどをあげることができる。また、本発明遺伝子の元来のプロモーターを利用してもよい。一般的には、宿主細胞で機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなる本発明遺伝子を、前述のようなベクターに組込んで、これを宿主細胞に導入する。ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子など)を含むベクターを用いると、該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして選択する際に便利である。
【0046】
本発明遺伝子が導入される宿主細胞としては、例えば、Escherichia、Bacillus、Corynebacterium、Staphylococcus、Streptomyces、Saccharomyces、Kluyveromyces、Aspergillus属等に属する微生物などがあげられる。遺伝子を宿主細胞へ導入する方法は、宿主となる細胞に応じて通常用いられる方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio-Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法などをあげることができる。
【0047】
本発明遺伝子が導入された形質転換体は、前述のようなベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして選抜することができる。形質転換体が本発明遺伝子を保有していることは、該形質転換体からベクターDNAを調製した後、調製されたDNAについて、例えば「モレキュラー・クローニング」(J.Sambrookら、コールド・スプリング・ハーバー、1989年)等に記載される通常の方法(制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション等)を行うことにより確認することができる。
【0048】
本発明タンパク質を製造するには、例えば、本発明遺伝子を有する微生物を培養すればよい。該微生物を培養する為の培地としては、微生物の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。炭素源としては、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動植物油、糖蜜等が挙げられる。これら炭素源の培地への添加量は、培地全量に対し通常、0.1〜20%(w/v)程度とするとよい。
【0049】
窒素源としては、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor )、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源やアミノ酸類、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩や硝酸塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩、尿素などの有機または無機窒素源等が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は、多くの場合、炭素源としても使用することができる。窒素源の添加量は培地全量に対し通常、0.1〜30%(w/v)程度とするとよい。
【0050】
有機塩や無機塩としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩類およびリン酸塩類を挙げることができ、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素一カリウム、リン酸水素二カリウム等を挙げることができ、その添加量は培地全量に対し通常、0.0001〜5%(w/v)程度とするとよい。さらに、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと本発明遺伝子とが機能可能な形で接続されてなる遺伝子が導入された宿主細胞の場合には、本発明タンパク質の生産を誘導するための誘導剤として、例えばisopropyl thio-β-D-galactoside(IPTG)を培地中に少量加えてもよい。
【0051】
培養は、微生物の培養に通常使用される方法に準じて行うことができ、例えば試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養、固体培養等の方法が可能である。ジャーファーメンターを用いる場合には、ジャーファーメンター内に無菌空気を導入する必要があり、通常、培養液容量の約0.1〜約2倍/分の通気条件を用いる。培養温度は、微生物が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常、約15℃〜約40℃の範囲の培養温度が好ましく、培地のpHとしては、約6〜約8の範囲が好ましい。培養時間は、培養条件によって異なるが、通常約1日間〜約5日間が望ましい。
【0052】
本発明タンパク質には、下記のアミノ酸配列のいずれかを有するタンパク質を含む。
(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列。
(ii)配列番号2で示される塩基配列に対応するアミノ酸配列。
(iii)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部からなるアミノ酸配列(具体的には、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列;配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号79〜255で表されるアミノ酸配列;配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号103〜765で表される塩基配列に対応するアミノ酸配列;配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列に対応するアミノ酸配列)。
(iv)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列。
(v)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつSDS−PAGEによる分子量が約2.5万ダルトンのタンパク質のアミノ酸配列。
(vi)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、かつ配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して60%以上のアミノ酸同一性を示すアミノ酸配列。
【0053】
本発明遺伝子を有する微生物の培養物から本発明タンパク質を精製する方法としては、通常のタンパク質の精製において使用される方法を適用することができ、例えば次のような方法を挙げることができる。
【0054】
まず、微生物の培養物から遠心分離等により菌体を集めた後、これを超音波処理、ダイノミル処理、フレンチプレス処理等の物理的破砕方法、または界面活性剤もしくはリゾチーム等の菌体溶菌酵素を用いる化学的破砕方法等によって破砕する。得られた破砕液から遠心分離、メンブレンフィルターろ過等により不溶物を除去して無細胞抽出液を調製し、これを陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー等の分離精製方法を適宜用いて分画することによって本エステラーゼを精製することができる。クロマトグラフィーに使用する担体としては、例えば、カルボキシメチル(CM)基、DEAE基、フェニル基もしくはブチル基等を導入したセルロース、デキストランまたはアガロース等の樹脂担体が挙げられる。市販の担体充填済みカラムを用いることもでき、例えば、Q-Sepharose FF、Phenyl-Sepharose HP(商品名、いずれもアマシャム ファルマシア バイオテク社製)、TSK−gel G3000SW(商品名、東ソー社製)等が挙げられる。
【0055】
本発明タンパク質の精製操作の一例を示す。
本発明タンパク質を生産する微生物の菌体を遠心分離により集めた後、例えば20mMリン酸カリウム(pH7.0)等のバッファー液に懸濁する。これをダイノミル等を用い破砕処理し、得られた菌体破砕液を約10000×gで15分間程度遠心分離した後、上清を回収してメンブレンフィルターにてろ過して不溶物を除去し、無細胞抽出液を調製する。こうして得られた無細胞抽出液を例えば Q Sepharose FFカラムや Q Sepharose HPカラム(商品名、アマシャム ファルマシア バイオテク社製)などに導入し、塩化ナトリウム直線濃度勾配によりカラムへの吸着物を順次を溶出させ、分画された溶出液を得る。本発明タンパク質を含む画分を次いで、例えば Phenyl-Sepharose HP カラム(商品名、アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に導入し、硫酸アンモニウム直線濃度勾配によりカラムへの吸着物を順次溶出させ、分画された溶出液を得る。本発明タンパク質を含む画分を、さらに、限外ろ過膜等を用いて濃縮した後、例えばTSK−gel G3000SWカラム(600mm×7.5mmID)(商品名、東ソー社製)に導入し、例えば0.15Mの塩化ナトリウムを含む50mMりん酸ナトリウムバッファー等で溶出させ、分画された溶出液を得ることによって、本発明タンパク質を精製することができる。尚、本発明タンパク質を含む画分は、例えば、ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を指標にして選抜するのがよい。
【0056】
本発明タンパク質あるいは本発明遺伝子を有する微生物またはその処理物が立体選択的に触媒するエステル不斉加水分解反応としては環状イミノ酸エステル(1)を不斉加水分解し、S環状イミノ酸(2)を生成する反応、好ましくは環状イミノ酸エステル類(1)において、R1が、その水素原子の一個以上がハロゲン原子又はニトロ基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基である化合物を不斉加水分解し、上記化合物に対応するS環状イミノ酸(2)を生成する反応や、環状イミノ酸エステル類(1)において、R2が、(a)その芳香環に結合する水素原子の1個以上が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよい炭素数7〜19のアラルキル基、または(b)水素原子の1個以上が炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよい炭素数2〜9のアルキルオキシカルボニル基である化合物を不斉加水分解し、上記化合物に対応するS環状イミノ酸(2)を生成する反応等をあげることができる。
【0057】
次に本発明におけるS環状イミノ酸(2)の製造方法について説明する。環状イミノ酸エステル類(1)に、本発明タンパク質あるいは本発明遺伝子を有する微生物又はその処理物を作用させることにより、S環状イミノ酸(2)を得ることができる。
【0058】
環状イミノ酸エステル類(1)において、R2は、アゼチジン環またはピロリジン環のNの保護基であり、例えば、炭素数7〜19のアラルキル基;炭素数2〜5のアルキルカルボニル基、炭素数3〜6のアルケニルカルボニル基、炭素数7〜13のアリールカルボニル基、炭素数8〜10のアラルキルカルボニル基等の炭素数2〜13のアシル基;炭素数2〜9のアルキルオキシカルボニル基;炭素数8〜10のアラルキルオキシカルボニル基;炭素数3〜9のアルケニルオキシカルボニル基;炭素数7〜13のアリールオキシカルボニル基;炭素数1〜8のアルキル基;炭素数2〜8のアルケニル基;炭素数6〜12のアリール基;炭素数6〜12のアリールスルホニル基等を挙げることができる。また、前記アラルキル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリール基またはアリールスルホニル基において、その芳香環に結合する水素原子の1個以上、通常は1〜5個はさらに、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよく、前記アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキル基またはアルケニル基において、その水素原子の1個以上、通常は1〜3個がさらに炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよい。
【0059】
かかるアラルキル基としては、ベンジル基、p−クロロベンジル基、α−フェニルエチル基、β−フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンズヒドリル基、トリフェニルメチル基等を;かかるアルキルカルボニル基としては、アセチル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基等を;かかるアルケニルカルボニル基としては、アリルカルボニル基等を;かかるアリールカルボニル基としては、ベンゾイル基、p−フェニルベンゾイル基等を;かかるアラルキルカルボニル基としては、ベンジルカルボニル基等を;かかるアルキルオキシカルボニル基としては、t−ブトキシカルボニル基、トリクロロエチルオキシカルボニル基等を;かかるアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等を;かかるアルケニルオキシカルボニル基としては、アリルオキシカルボニル基等を;かかるアリールオキシカルボニル基としては、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルオキシカルボニル基等を;かかるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を;かかるアルケニル基としては、アリル基等を;かかるアリール基としては、フェニル基等を;かかるアリールスルホニル基としては、p−トルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−メトキシベンゼンスルホニル基、m−ニトロベンゼンスルホニル基等を具体的に挙げることができる。好ましくはかかるアラルキル基を挙げることができ、さらに好ましくはベンジル基、p−クロロベンジル基、α−フェニルエチル基、ベンズヒドリル基及びトリフェニルメチル基を挙げることができ、特に好ましくはベンジル基、p−クロロベンジル基及びα−フェニルエチル基を挙げることができる。
【0060】
環状イミノ酸エステル類(1)は環の2位の炭素原子の他に不斉炭素原子を有することができ、例えば置換基R2がα−フェニルエチル基等のα−アルキル置換アラルキル基である場合を挙げることができる。具体的に、置換基R2がα−フェニルエチル基の場合、N−〔(S)−フェニルエチル〕−アゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−〔(R)−フェニルエチル〕−アゼチジン−2−カルボン酸メチルエステルまたはこれらの混合物、またはN−〔(S)−フェニルエチル〕−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−〔(R)−フェニルエチル〕−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステルまたはこれらの混合物で有り得る。
【0061】
1としては例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数7〜19のアラルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基等を挙げることができる。また、前記アラルキル基またはアリール基において、その芳香環に結合する水素原子の1個以上、通常は1〜5個がさらに炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよく、前記アルキル基において、その水素原子の1個以上、通常は1〜3個がさらに炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基から選ばれる1種以上で置換されていてもよい。
【0062】
かかるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を;かかるアラルキル基としては、ベンジル基、p−クロロベンジル基、α−フェニルエチル基、β−フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンズヒドリル基、トリフェニルメチル基等を;かかるアルケニル基としては、アリル基等を;かかるアリール基としては、フェニル基等を挙げることができる。好ましくはかかるアルキル基を挙げることができ、さらに好ましくは低級アルキル基(炭素数1〜4程度)を挙げることができる。
【0063】
環状イミノ酸エステル類(1)として具体的には例えば、N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−p−クロロベンジルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−〔(S)−フェニルエチル〕−アゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−〔(R)−フェニルエチル〕−アゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−β−フェニルエチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−フェニルプロピルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−ベンズヒドリルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−トリフェニルメチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−アセチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−クロロアセチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−トリフルオロアセチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−ベンゾイルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−p−フェニルベンゾイルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−t−ブトキシカルボニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−トリクロロエチルオキシカルボニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−ベンジルオキシカルボニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−2−フェニルエチルオキシカルボニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−アリルオキシカルボニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルオキシカルボニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−メチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−エチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−n−プロピルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−イソプロピルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−n−ブチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−イソブチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−sec−ブチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−t−ブチルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−アリルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−フェニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−p−トルエンスルホニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−ベンゼンスルホニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−メトキシベンゼンスルホニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル、N−ニトロベンゼンスルホニルアゼチジン−2−カルボン酸メチルエステル等を挙げることができ、また、上記各化合物におけるアゼチジン環が、ピロリジン環に置き代った相当する化合物をあげることができる。さらに上記各化合物におけるメチルエステルが、例えばエチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ベンジルエステル、(S)−α−フェニルエチルエステル、(R)−α−フェニルエチルエステル、β−フェニルエチルエステル、フェニルプロピルエステル、ベンズヒドリルエステル、トリフェニルメチルエステル、アリルエステル、フェニルエステル、ナフチルエステル等に置き代わった相当する化合物を挙げることができる。
【0064】
上記方法は通常、水の存在下に行われる。水としては、例えば水、緩衝水溶液等、種々の形態をとり得る。緩衝水溶液としては、例えば無機酸塩の緩衝水溶液、有機酸塩の緩衝水溶液を挙げることができ、無機酸塩の緩衝水溶液としては、例えばリン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液等のリン酸アルカリ金属塩水溶液を、有機酸塩の緩衝水溶液としては、例えば酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液等の酢酸アルカリ金属塩の水溶液を挙げることができる。水の量は環状イミノ酸エステル類(1)に対して0.5モル倍以上であり、前記種々の形態の水を溶媒として用いることもできる。緩衝水溶液を溶媒として用いる場合、その量は環状イミノ酸エステル類(1)に対して、通常は100重量倍以下である。
【0065】
また、上記方法において、上記のような種々の形態の水に加え、疎水性有機溶媒、親水性有機溶媒などの有機溶媒を共存させることもできる。
疎水性有機溶媒としては、例えばt−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタンなどの炭化水素類などを、親水性有機溶媒としては、例えばt−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類などを挙げることができる。これらの疎水性有機溶媒や親水性有機溶媒は単独または2種以上を組み合わせて用いることができ、疎水性有機溶媒と親水性有機溶媒とを組み合わせて用いることもできる。
【0066】
かかる有機溶媒を用いる場合、その使用量は環状イミノ酸エステル類(1)に対して、通常100重量倍以下、好ましくは0.1〜50重量倍の範囲である。
【0067】
上記方法は、例えば水や緩衝水溶液及び環状イミノ酸エステル類(1)を、本発明タンパク質あるいは本発明遺伝子を有する微生物又はその処理物とともに、必要によりさらに有機溶媒等を含有した状態で、攪拌、振とう等により混合することにより行われる。
【0068】
上記方法における反応時のpHは、適宜選択されるが、通常はpH4〜10である。
反応温度は、安定性、反応速度等の点から、通常は0〜70℃が好ましく、さらに好ましくは10〜40℃である。
本発明タンパク質あるいは本発明遺伝子を有する微生物又はその処理物の使用量は反応速度や選択性の点から適宜選択され、環状イミノ酸エステル類(1)に対して、通常は0.001〜50重量倍、好ましくは0.002〜20重量倍である。
【0069】
反応の終点は、例えば、反応液中の環状イミノ酸エステル類(1)の反応率を液体クロマトグラフィー等により追跡することにより決めることができる。環状イミノ酸エステル類(1)の転換率が50%を超えないところで終了させることが選択率の点で好ましい。反応時間は、通常、約5分間〜約4日間の範囲である。
【0070】
反応液からのS環状イミノ酸(2)の回収は、一般に知られている任意の方法で行うことができる。例えば、反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶媒で抽出し有機層を除いた後、水層にイオンクロマトグラフィー等の処理により塩類を除き、次いで濃縮することにより得ることができ、必要によりカラムクロマトグラフィー等により精製することもできる。
【0071】
本発明タンパク質あるいは本発明遺伝子を有する微生物又はその処理物は種々の形態で生体触媒として利用される。
【0072】
具体的には、例えば、本発明遺伝子を有する微生物の培養物、本発明遺伝子を有する微生物の菌体、かかる菌体の処理物、無細胞抽出液、粗精製タンパク質、精製タンパク質等の形態をあげることができる。ここで菌体の処理物としては、例えば、凍結乾燥菌体、有機溶媒処理菌体、乾燥菌体、菌体摩砕物、菌体の自己消化物、菌体の超音波処理物、菌体抽出物、菌体のアルカリ処理物等をあげることができ、さらに、これら種々の形態の生体触媒を、例えば、シリカゲルやセラミックス等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等へ吸着させる担体結合法や、ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に閉じ込める包括法などの公知の方法に準じて固定化した固定化物として用いることもできる。
【0073】
特に、本発明遺伝子を有する微生物を用いる場合における工業的な生産を考慮すれば、生菌体を用いるよりも該菌体を死滅化させた処理物として用いる方が製造施設の制限が少ないという点で好ましい。そのための死菌化処理法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱(乾燥、湿熱)、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸(有機、無機)、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ほう酸、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、ケトン、シアン、およびこれらの化合物、または抗生物質など)を挙げることができ、必要に応じてこれらを適宜組み合わせて用いることができる。一般的には、これらの内でもできるだけ酵素を失活させず、かつ酵素反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理法を用いることが望ましい。例えば、遺伝子組換え体の培養液をNaOHやNa2CO3などによってpH8〜12に調整し、0〜60℃に保ちながら、好ましくはpH9.0〜10.5、10〜30℃の条件下で10分間〜60時間程度攪拌することでアルカリ処理による滅菌を行うことができる。さらにこれらの処理後の培養物を上記の固定化物として用いることもできる。
【0074】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1(cDNA ライブラリーの作製)
500ml容フラスコに200mlの培地(グルコース 10g/L、ポリペプトン 7g/L、酵母エキス 5g/L、K2HPO4 5g/L、pH7.2)を分注し、121℃で15分間滅菌した。上記培地に、予め同じ培地中で30℃で48時間振とう培養したアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)ATCC11492株の培養液を接種し、30℃で72時間振とう培養を行った。培養後、菌体を遠心(8,000xg、10分)して集め、得られたペレット状(半径2-5mm)の菌体を20mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)で3回洗浄した。洗浄菌体は-80℃で凍結保存した。
上記凍結保存菌体ペレット40gから、フェノールクロロホルムイソアミルアルコール法によって全RNAを調製し、約12.6mg(OD260/OD280=2.0)の全RNAを得た。次いで、Oligotex(dT)30-Super(宝酒造社製)を用いて前記の全RNA1mgからpoly(A)を有するRNA7.6μg(OD260/OD280=1.75)を調製した。
【0075】
cDNAライブラリーの作製は「バイオ総合カタログ1997/98 Vol.1遺伝子工学、E-24〜27」に記載の方法に基づいて実施した。まず、2.8μgのpoly(A)を有するRNAとOligo(dT)18-リンカープライマー((GA)10ACGCGTCGACTCGAGCGGCCGCGGACCG(T)18(宝酒造社製)、およびRAV-2 Reverse Transcriptase(宝酒造社製)とSuperScriptII Reverse Transcriptase(GIBCO BRL社製)を用いて一本鎖cDNAの合成反応後、反応液にE. coli DNA polymerase(宝酒造社製)とE. coli Rnase/E. coli DNA Ligase Mixture(宝酒造社製)及びT4 DNA Polymerase(宝酒造社製)を反応させて、二本鎖cDNAの合成と平滑末端化を行った。次いで、SalIアダプター(GIBCO BRL社製)とのライゲーションを行った。次いで、ライゲーションにより得られたDNAをNotIで切断して、スピンカラムSpin−OUTTMClumn GT−1200(宝酒造社製)で低分子量DNAを除去した後、λZipLox[SalI-NotIアーム](GIBCO BRL社製)とライゲーションを行った。次いでライゲーションにより得られたDNAをin vitro packaging kit (STRATAGENE社製)を用いて、パッケージングした。
【0076】
実施例2
(1)エステラーゼの精製
実施例1と同じ条件で調製したアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)ATCC11492株の−80℃凍結保存菌体約120gを、0.05%Tween80 を含む50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に懸濁した後、ダイノミル(WILLY A.BACHOFEN AG社製、ガラスビーズ0.1〜0.2mmΦ、3000rpm、30分)にて破砕した。破砕液を遠心分離(10,000xg、10分間)して得た上清を、さらに超遠心分離(100,000xg、120分間)し、超遠心上清200mlを得た。得られた超遠心上清200mlを、BIS-TRISバッファー(0.05%Tween80を含む20mM ビス−トリスプロパンバッファー、pH7.0)で平衡化したQ-Sepharose HP XK16/10 カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)にチャージした後、BIS-TRISバッファーで洗浄した。洗浄後、0〜0.7MのNaClの濃度勾配を有するBIS-TRISバッファー140mlでタンパク質を溶出し、下記のエステラーゼ活性(以下、本エステラーゼ活性と記す)を有する溶出画分(活性画分)48mlを得た。
【0077】
エステラーゼ活性の測定は、以下の方法で行った。
ラセミ−N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステル0.02g、t-ブチルメチルエーテル(MTBE)1.0mlおよび100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)3.5mlを10ml容のねじ口試験管に入れ35℃、15分間保温した後、溶出画分液約200μlを加えて、35℃、60分間、往復振盪(120str/min)し反応させた。該反応液400μlに1mlのMTBEを加え、撹拌後、遠心(12000rpm、5分間)して、水相 200μlを分取した。この水相をHPLCの移動相(20mMKH2PO4(pH3.8):アセトニトリル=90:10)で5から20倍に希釈し、0.2μmフィルターで微粒子を除去し、HPLCに供して以下に示す条件でN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の定量を行った。
【0078】
(N−ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の定量分析)
カラム:ODS-A212(住化分析センター製)
移動相:20mM KH2PO4:アセトニトリル=90:10
流速:1ml/分
温度:40℃
検出波長:220nm
【0079】
また、生成したN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の光学異性体分析は以下の方法で行った。該反応液1mlに400μlのMTBEを加えて、撹拌、遠心分離(12000rpm、5分間)し、水相200μlを12時間凍結乾燥した。残渣にアセトニトリル100μlを加え、遠心(12,000rpm、5分間)して不溶物を除去して得たアセトニトリル相50μlに、光学異性体分析用HPLCの移動相(2mM 硫酸銅:アセトニトリル=90:10)200μlを加えて0.2μlのフィルターでろ過した後、光学異性体分析用のサンプルとした。光学異性体分析のHPLCの条件を以下に示す。
【0080】
(N−ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の光学異性体分析)
カラム:スミキラルOA-6000(住化分析センター製)
移動相:2mM 硫酸銅:アセトニトリル=90:10
流速:1ml/分
温度:35℃
検出波長:254nm
【0081】
並行して、溶出画分を添加しないこと以外、上記と同じ操作を行った際の自然水解による、N-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の生成量も測定した。
このようにして測定されたエステラーゼ1[U]は、1分間に1nmolのN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸を生成する酵素量として下記の通り定義された。
【0082】
エステラーゼ1[U]=(X−Y)/T
X:反応液のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸生成量(nmol)
Y:自然水解によるN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸生成量(nmol)
T:反応時間(分)
【0083】
前記カラム操作によって得られた本エステラーゼ活性を示す画分48mlを0.7M硫酸アンモニウムを含むBIS-TRISバッファーで平衡化したPhenyl-Sepharose HP XK16/10 カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)にチャージした後、平衡化に用いたバッファーと同じ組成のバッファーで洗浄した。次いで、0.7Mから0Mの硫酸アンモニウムの濃度勾配を有するBIS-TRISバッファー140mlによりタンパク質を溶出し、前記の方法で本エステラーゼ活性を測定し、本エステラーゼ活性を示す画分12mlを得た。
【0084】
(2)プライマーDNAの作製
このようにして得られた本エステラーゼ活性を示す画分を、セントリコン10(アミコン社)を用いて濃縮し、水で平衡化した脱塩カラム(FastDesalting Colum、ファルマシア社製)で脱塩した後、減圧濃縮した。減圧濃縮された本エステラーゼ活性を示す画分に含まれるタンパク質成分をLaemmli, U. K., Nature, (1970) 227, 680記載の方法に準じたドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(マルチゲル10/20(第一化学社製)を使用して、電気泳動用SDS−トリスグリシンバッファー(第一化学社製)中、40mAで1.5時間電気泳動した。)で分離し、PVDF膜(Trans-Blot Transfer Medium PVDF Membrane BIO-RAD社製)にエレクトロ・ブロッティング(20mA、120分間)し、クマシーブリリアントブルーG250染色液(BIO-RAD社製)によって染色した。分子量マーカーとの移動度の比較から分子量約2.5万ダルトンと推定される染色されたタンパク質のバンドを切り取り、約2pmol相当のタンパク質を含むPVDF膜をプロテインシークエンサー470A(アプライドバイオシステムズ社製)に供した。その結果、N末端側のアミノ酸20残基の配列が決定された。得られたアミノ酸配列結果を配列番号4に示す。
【0085】
上記のようにして決定されたアミノ酸配列の5番目から10番目までのアミノ酸配列をもとにして配列番号5で示す混合オリゴヌクレオチドを合成した。尚、オリゴヌクレオチドの合成には、DNA 自動合成装置モデル380A(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
【0086】
実施例3
配列番号5で示されるオリゴヌクレオチドと、SP6 Promoter primer(宝酒造社製)とをプライマーに用い、かつ実施例1に記載の方法にて構築したcDNAライブラリーを鋳型に用いて、PCRを行った(パーキンエルマー・キコーテック社製のTaqポリメラーゼGold PCRキットを使用)。PCRの条件を以下に示す。
【0087】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2mM-mix) 10μl
プライマー(5pmol/μl) 各1μlx2種
10xbuffer(with MgCl) 10μl
TaqポリメラーゼGold(2.5U/μl) 1μl
超純水 76μl
【0088】
[PCR反応条件]
反応混合液の入った容器をGeneAmp PCR System2400(PERKIN ELMER社製)にセットし、98℃(7分間)加熱処理した後、97℃(0.3分間)‐45℃(1分間)‐72℃(2分間)を20サイクル繰り返し、次いで94℃(1分間)‐50℃(0.3分間)‐75℃(2.5分間)を20サイクル繰り返しさらに70℃(7分間)の処理を行った。TOPOTMTA cloningキットVer.E(Invitrogen社製)を使用して、該キット付属のpCR2.1−TOPOベクター既存の「PCR Product挿入サイト」に前記PCRによって得られた遺伝子断片(約800bp)を挿入するライゲーション反応を行った。
このライゲーション反応液をE.coli JM105コンピテントセル(ファルマシア バイオテック社)に添加して、ライゲーション反応により作製されたベクターが導入された形質転換体を得た。得られた形質転換体を1mMのisopropyl thio-β-D-galactoside(IPTG)と100μg/mlのアンピシリン(Ap)を含む10mlの滅菌されたLB培地(L-broth powder(宝酒造社製)1包を100mlの純水で溶解(pH6.5-6.8)後、121℃、15分間滅菌)に接種し、試験管中で30℃、24時間振とう培養した。培養後、培養液を、菌体濃度が10倍になるように濃縮し、これらの濃縮液(OD660=約12)の本エステラーゼ活性を実施例2に示す方法で測定し、0.8U/OD/mlの本エステラーゼ活性を示す前記形質転換体のクローンを選抜した。QIAGEN plasmidキット(QIAGEN社製)を用いて、該キット添付のプロトコールにしたがい、該クローンの有するベクター(pYHN1と命名した。)を調製した。
【0089】
次いで、PRISM kit (アプライドバオテクノロジー社)と自動塩基配列解析装置373A(アプライドバオテクノロジー社)とを用い、解析にGenetyx-Mac/ATSQ(ソフトウエア開発社)と、Genetyx-Mac(ソフトウエア開発社)とを使用してpYHN1に挿入されている遺伝子断片の塩基配列を決定した。その結果、pYHN1には配列番号2の塩基配列番号103番目から768番目に示される塩基配列からなる遺伝子断片が挿入されていることが分かった。
【0090】
決定した塩基配列から推定されるアミノ酸配列(配列番号1の中の35番目から48番目)は、Aspergillus flavus ATCC11492から精製した本発明タンパク質のN末端アミノ酸配列と一致した。また、pYHN1における配列番号2の塩基配列番号103番目から768番目の遺伝子配列領域の上流に、ベクター上にコードされていたlacZαの開始コドン以降の25アミノ酸残基をコードする塩基配列が、配列番号2の塩基配列番号103番目からの塩基配列とオープンリーディングフレームの読み枠が一致したかたちで連続してることが判った。
【0091】
実施例4
表1に示されたオリゴヌクレオチドRC1とT7Promoter Primer(宝酒造社製)とをプロモーターとして用い、実施例1に記載のcDNAライブラリーを鋳型として用い、かつ実施例3と同じ条件でPCRを実施した。得られた増幅断片(約800bp)をTOPOTMTA cloningキットVer.Eキット付属のpCR2.1−TOPOベクターの「PCR Product挿入サイト」にライゲーション反応を行った。このライゲーション反応液をE.coli JM105 コンピテントセル(ファルマシア バイオテック社)に添加して、ライゲーション反応により作製されたベクターが導入された形質転換体を得た。得られた形質転換体から実施例3記載の方法と同様の方法によって当該形質転換体が有するベクターを調製し、該ベクターに挿入されている遺伝子断片の塩基配列を解析した。その結果、該ベクターには配列番号2の塩基配列番号1番目から768番目に示される塩基配列からなる遺伝子断片が挿入されていることがわかった。
【0092】
オリゴヌクレオチドFOとオリゴヌクレオチドRC1とをプライマーとして用い、前記ベクターを鋳型にして、実施例3と同じ条件でPCRを行った。得られた増幅断片(約800bp)を前記と同様にして、pCR2.1−TOPOベクターの「PCR Product挿入サイト」にライゲーションし、これにより得られたプラスミドを用いてE.coli JM105を形質転換した(E.coli JM105/pYHNOと命名した。)。前記と同じ条件で本エステラーゼ活性の測定を行ったところ、0.047U/OD/mlであった。pYHN0にコードされるORFの制限酵素地図を図1に示す。
【0093】
【表1】
Figure 0004320922
【0094】
実施例5
実施例4で得られたpYHN0を鋳型として、かつ表1に示すオリゴヌクレオチドEF8とRC1とをプライマーとし、実施例3と同様の条件でPCRを行った。得られた増幅断片(約800bp)をベクターpUC18のSmaIサイトに挿入することによりプラスミド(pYHN8と命名した。)を作製した。実施例3と同様にしてpYHN8をE.coli JM105に導入することにより得られた形質転換体の本エステラーゼ活性を測定したところ0.88U/OD/mlであった。
【0095】
実施例6
pYHN0をEcoRl消化して切り出した約800bpのDNA断片を回収し、これをベクターpTrc99A(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)のtrcプロモーター制御下のEcoRIサイトに挿入することによりプラスミド(pYHNK1と命名した。)を作製した。実施例3と同様にしてpYHNK1をE.coli JM105に:導入することにより得られた形質転換体の本エステラーゼ活性を測定したところ、6.7U/OD/mlであった。
【0096】
実施例7
実施例3と同様にしてpYHNK1をE.coli JM109およびE.coli DH5α株(ともに宝酒造(株)社製コンピテントセルを使用)に導入することにより得られた形質転換体の本エステラーゼ活性を測定したところ、それぞれ8.48U/OD/ml、および2.1U/OD/mlであった。
【0097】
実施例8
表1で示すオリゴヌクレオチドAF1、AR2、AF2およびAR3の各オリゴヌクレオチドを合成した。オリゴヌクレオチドAF1とオリゴヌクレオチドAR2とを、および、オリゴヌクレオチドAF2とオリゴヌクレオチドAR3とを、それぞれ90℃で5分間保温することによってアニーリングさせたのち、両者およびpTV118N(宝酒造社製)をライゲーションキット(宝酒造社製)を用いて連結することによって、pTV118NのNcoI‐EcoRIサイトにリンカー領域を挿入した分泌用ベクターを作製した。(該分泌用ベクターに挿入されたリンカー領域にコードされているアミノ酸配列を配列番号3に示す。)。該分泌用ベクターのEcoR1サイトに、実施例3で作製されたpYHN1をEcoRI消化して切り出した約800bpのDNA断片をライゲーションした。(得られたプラスミドをpYHNK2と命名した。)該pYHNK2を実施例3と同様にしてE.coli JM105株に導入することにより得られた形質転換体(E.coli JM105/pYHNK2株と命名した。)の本エステラーゼ活性を実施例2で示す方法(ただし反応時間のみ16分間に変更した。)で測定したところ42.7U/OD/mlであった。
【0098】
実施例9
Ap(50μg/ml)とIPTG(1mM)とを含む滅菌されたLB培地100mlを500ml容フラスコに分注し、Ap(50μg/ml)を含む滅菌されたLB培地で培養した実施例7記載の形質転換体E.coli JM105/pYHNK2株を接種し、30℃、24時間、振とう培養した後、遠心分離(6000rpm、10分間)により集菌し、菌体を回収した。
回収された菌体を100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に懸濁し菌体懸濁液とした(菌体濃度OD660=9.2)。ラセミ体のN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸エチルエステル 0.3g、n-ヘプタン0.62gおよび蒸留水1.5gを5mlのサンプル瓶に入れ、これに0.5mlの上記菌体懸濁液を加え、30℃で撹拌子(1.5cm)により撹拌(1000rpm)しながら30時間反応させた。
該反応液を遠心分離(10000rpm、10分間)して得られる水相中のN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸を実施例2に記載の方法で分析したところ、0.12gのN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸が生成されており、反応に供したラセミ体であるN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸エチルエステルに対するN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の生成率は43%(mol/mol)と算出された。
さらにN-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の光学異性体分析を実施例1に記載の方法で行ったところ、N-ベンジルアゼチジン-2-カルボン酸の光学純度は98%e.e.(光学異性体比[(R)/(S)]=1/99)の(S)体過剰であった。
【0099】
実施例11
(1)酵素液の調製
試験管(内径18mm)に液体培地(水1Lにグリセロール5g、酵母エキス6gおよびリン酸一カリウム4g、リン酸二カリウム9.3gを溶解し、リン酸にてpH7.0に調製した。)10mlを入れて滅菌した後、アンピシリンを50μg/mlになるように加えた。これに、実施例8記載の形質転換体E.coli JM105/pYHNK2株のグリセロールストック0.1mlを接種し、30℃で12時間振とう培養することにより前培養液を得た。次に3L容の小型培養槽(丸菱バイオエンジ社製、MDL型)に液体培地(水1.5Lにグリセロール22.5g、酵母エキス15g、総合アミノ酸F(味の素社製)22.5g、リン酸一カリウム6g、硫酸マグネシウム3.6g、硫酸第一鉄7水和物0.06g、塩化カルシウム2水和物0.06gを溶解する。)1500mlを入れて滅菌した後、前記小型培養槽のpHコントローラによって、リン酸液(4M)、アンモニア(14%)を添加することによりpHを7.0に調製した。これにアンピシリンを50μg/mlとなるように加えて攪拌した後、上記前培養液0.75mlを接種し、培養を行った。培養は温度30℃、通気量1vvm(1.5L/min)、攪拌回転数1,000rpmで行った。培養開始15時間後、IPTGを終濃度50μMになるように添加し、滅菌した培地28ml(グリセリン150g、総合アミノ酸F(味の素社製)42g、酵母エキスK-2(コスモ食品社製)28gを含む。)を流加(流加速度14ml/時間)してさらに培養を継続した。計40時間培養することにより培養液を得た。
【0100】
得られた培養液50mlから遠心分離(6000rpm、10分間、4℃)により菌体を回収し、回収された菌体を100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁した。この懸濁液を再度遠心分離(6000rpm、10分間、4℃)し、菌体を回収した。回収された菌体を30mlの滅菌水に再懸濁した。この懸濁液を再度遠心分離(6000rpm、10分間、4℃)することにより、上清を得た。得られた上清を凍結乾燥した後、得られた残渣を100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に溶解し、これを酵素液とした。
【0101】
実施例12
表2に示された各種のN−ベンジル−L−アゼチジンカルボン酸エステルそれぞれ40μl、メチル−t−ブチルエーテル1.0ml、および100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1.5mlを10ml容ネジ口試験管に入れ、これに実施例11にて調製した酵素液0.5ml(8.8U相当)を加え、それぞれ、30℃、16時間振とうしながら反応を行った。反応後、反応液を遠心分離(12000rpm、5分間)して得られる水相中のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を実施例1に記載の方法で定量した。また、N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸の光学異性体分析を実施例2に記載の方法で行った。これらの結果から、算出された生成率(反応に供したラセミN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エステルに対するN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸の生成率)およびN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸の光学純度を表2に示した。
【0102】
【表2】
Figure 0004320922
【0103】
実施例13
N−ベンジル−L−ピロリジンカルボン酸エチル40μl、メチル−t−ブチルエーテル1.0ml、および100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1.5mlを10ml容ネジ口試験管に入れ、これに実施例11にて調製した酵素液0.5ml(8.8U相当)を加え、30℃、16時間振とうしながら反応を行う。反応後、反応液を遠心分離(12000rpm、5分間)して得られる水相中のN−ベンジルピロリジン−2−カルボン酸を実施例2に記載の方法で定量する。また、N−ベンジルピロリジン−2−カルボン酸の光学異性体分析を実施例2に記載の方法で行う。これらの結果から、生成率(反応に供したラセミN−ベンジルピロリジン−2−カルボン酸エステルに対するN−ベンジルピロリジン−2−カルボン酸の生成率)およびN−ベンジルピロリジン−2−カルボン酸の光学純度を算出する。
【0104】
実施例14
N−ベンジル−L−アゼチジンカルボン酸エチル30μl、メチル−t−ブチルエーテル1.0ml、および100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1.5mlを10ml容ネジ口試験管に入れ、これに実施例11にて調製した酵素液0.5ml(8.8U相当)を加え、それぞれ、30℃、16時間振とうしながら反応を行う。反応後、反応液を遠心分離(12000rpm、5分間)して得られるメチル−t−ブチルエーテル相中のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルの定量、および光学異性体分析を下記の分析方法にて測定する。得られるメチル−t−ブチルエーテル相から減圧下メチル−t−ブチルエーテルを除去することによって(R)−N−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルを得る。
【0105】
【発明の効果】
本発明によれば、S環状イミノ酸(2)を製造するための優れた触媒能力を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子およびこれを利用した遺伝子工学的手法によるS環状イミノ酸(2)を生産する新規な製造方法を提供できる。
【0106】
[配列表フリーテキスト]
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
【0107】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> Sumitomo Chemical Co. Ltd.

<120> Esterase Genes and Use thereof

<130> P151638

<150> JP 11/158199
<151> 1999-06-04

<160> 5

<210> 1
<211> 255
<212> PRT
<213> Aspergillus flavus

<400> 1
Met His Leu Pro Ile Lys Thr Leu Phe Val Ser Leu Leu Gly Ala Ser
1 5 10 15
Val Leu Ala Arg Pro Leu Pro Asn Asp Ala Leu Val Glu Arg Asn Ala
20 25 30
Pro Leu Asn Glu Phe Leu Ser Val Leu Leu Ser His Leu Pro Ala Ile
35 40 45
Asn Gly Ser Ile Thr Ala Val Ser Gly Leu Ile Thr Asp Phe Asp Gln
50 55 60
Leu Leu Ala Asp Ile Thr Gly Ala Gln Thr Thr Leu Asn Gly Phe Thr
65 70 75 80
Gly Ala Cys Thr Asp Tyr Thr Val Leu Phe Ala Arg Gly Thr Ser Glu
85 90 95
Pro Gly Asn Val Gly Val Leu Val Gly Pro Pro Leu Ala Glu Ala Phe
100 105 110
Glu Gly Ala Val Gly Ala Ser Ala Leu Ser Phe Gln Gly Val Asn Gly
115 120 125
Tyr Ser Ala Ser Val Glu Gly Tyr Leu Ala Gly Gly Glu Ala Ala Gly
130 135 140
Ser Lys Ala Met Ala Ser Gln Ala Ser Asp Ile Leu Ser Lys Cys Pro
145 150 155 160
Asp Thr Lys Leu Val Met Ser Gly Tyr Ser Gln Gly Cys Gln Ile Val
165 170 175
His Asn Ala Val Glu Gln Leu Pro Ala Glu His Ala Ser Lys Ile Ser
180 185 190
Ser Val Leu Leu Phe Gly Asp Pro Tyr Lys Gly Lys Ala Leu Pro Asn
195 200 205
Val Asp Ala Ser Arg Val His Thr Val Cys His Ala Gly Asp Thr Ile
210 215 220
Cys Glu Asn Ser Val Ile Ile Leu Pro Ala His Leu Thr Tyr Ala Val
225 230 235 240
Asp Val Ala Ser Ala Ala Asp Phe Ala Val Ala Ala Ala Lys Asn
245 250 255

<210> 2
<211> 798
<212> DNA
<213> Aspergillus flavus

<220>
<221> CDS
<222> (1)..(768)

<400> 2
atg cat ctt cct atc aag act ctc ttt gtc tct ctc ctc gga gcc agc 48
Met His Leu Pro Ile Lys Thr Leu Phe Val Ser Leu Leu Gly Ala Ser
1 5 10 15
gtt ctc gca cgc cct ctt ccc aat gat gct ctc gtt gag aga aac gct 96
Val Leu Ala Arg Pro Leu Pro Asn Asp Ala Leu Val Glu Arg Asn Ala
20 25 30
ccc cta aac gag ttc ctc agc gtc ctt ctg tct cat ttg cct gcc att 144
Pro Leu Asn Glu Phe Leu Ser Val Leu Leu Ser His Leu Pro Ala Ile
35 40 45
aac ggc tct atc act gcg gtg tcg ggt ctg atc acc gat ttt gat caa 192
Asn Gly Ser Ile Thr Ala Val Ser Gly Leu Ile Thr Asp Phe Asp Gln
50 55 60
ttg ctt gct gac atc acc ggt gct caa aca acc ctg aat gga ttt act 240
Leu Leu Ala Asp Ile Thr Gly Ala Gln Thr Thr Leu Asn Gly Phe Thr
65 70 75 80
ggt gcc tgc acg gat tac acc gtt ctc ttc gcc cgc gga acc agt gag 288
Gly Ala Cys Thr Asp Tyr Thr Val Leu Phe Ala Arg Gly Thr Ser Glu
85 90 95
ccc gga aac gtt ggt gtc ctc gtc gga cct cct ctt gct gag gcg ttt 336
Pro Gly Asn Val Gly Val Leu Val Gly Pro Pro Leu Ala Glu Ala Phe
100 105 110
gag gga gcc gtc ggt gcg tcc gcc ttg agc ttc cag ggt gtc aac ggc 384
Glu Gly Ala Val Gly Ala Ser Ala Leu Ser Phe Gln Gly Val Asn Gly
115 120 125
tat tct gca tct gtc gag gga tat ttg gct gga ggt gaa gcc gct ggc 432
Tyr Ser Ala Ser Val Glu Gly Tyr Leu Ala Gly Gly Glu Ala Ala Gly
130 135 140
agc aag gca atg gca tct cag gcc agc gac att ctc tcc aag tgt ccc 480
Ser Lys Ala Met Ala Ser Gln Ala Ser Asp Ile Leu Ser Lys Cys Pro
145 150 155 160
gac acc aag ctt gtc atg agt ggc tat tcc cag ggc tgc cag att gtt 528
Asp Thr Lys Leu Val Met Ser Gly Tyr Ser Gln Gly Cys Gln Ile Val
165 170 175
cac aat gcc gtt gag caa ctt cct gcg gaa cac gca agc aag atc agc 576
His Asn Ala Val Glu Gln Leu Pro Ala Glu His Ala Ser Lys Ile Ser
180 185 190
agc gtc ctc ctt ttc gga gac cca tac aag ggc aag gct ctc ccc aac 624
Ser Val Leu Leu Phe Gly Asp Pro Tyr Lys Gly Lys Ala Leu Pro Asn
195 200 205
gtt gat gct tcc cgc gtc cac act gtg tgc cac gct gga gac act att 672
Val Asp Ala Ser Arg Val His Thr Val Cys His Ala Gly Asp Thr Ile
210 215 220
tgc gag aac agc gtt att att ctg ccc gct cac ttg acc tac gct gtt 720
Cys Glu Asn Ser Val Ile Ile Leu Pro Ala His Leu Thr Tyr Ala Val
225 230 235 240
gat gtg gct tct gcg gct gac ttc gct gtt gcg gct gca aag aac taa 768
Asp Val Ala Ser Ala Ala Asp Phe Ala Val Ala Ala Ala Lys Asn
245 250 255
attacgataa gggctccatg ttcactgtaa 798

<210> 3
<211> 33
<212> PRT
<213> Escherichia coli

<400> 3
Met Lys Gln Ser Thr Ile Ala Leu Ala Leu Leu Pro Leu Leu Phe Thr
1 5 10 15
Pro Val Ala Asn Ala Ala Pro Thr Ser Asn Pro Ala Gln Glu Leu Glu
20 25 30
Ala
33

<210> 4
<211> 20
<212> PRT
<213> Aspergillus flavus

<220>
<221> UNSURE
<222> 6
<223> Xaa=Glu or Ala

<220>
<221> UNSURE
<222> 13
<223> Xaa=Ser or Gly

<220>
<221> UNSURE
<222> 19
<223> Xaa is unknown

<220>
<221> UNSURE
<222> 20
<223> Xaa=His or Gly

<400> 4
Asn Ala Pro Leu Glx Xaa Phe Leu Ser Val Leu Leu Xaa His Leu Pro
1 5 10 15
Ala Ile Xaa Xaa
20

<210> 5
<211> 17
<212> DNA
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> Designed oligonucleotide primer for PCR

<400> 5
aacgaattcc tsagygt 17
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpYHN1の保有する本発明遺伝子の制限酵素地図を示す図である。

Claims (13)

  1. 下記の塩基配列のいずれかを含むことを特徴とする遺伝子。
    (a)配列番号2で示される塩基配列。
    (b)ラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列を有するDNAを増幅可能とするオリゴヌクレオチドEF8:ATGGAATTCACTGGTGCCTGCACGGATおよびRC1:AAGCAAGCTTTACAGTGAACATGGをプライマーとし、かつAspergillus flavusに属する微生物由来の染色体DNAを鋳型とするPCRによって増幅されるDNAの塩基配列。
  2. 下記の塩基配列のいずれかを含むことを特徴とする遺伝子。
    (a)配列番号2で示される塩基配列。
    (b)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号103〜765で表される塩基配列。
    (c)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列。
    (d)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
    (e)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
    (f)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号79〜255で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
  3. 宿主細胞において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とする請求項1または2記載の遺伝子。
  4. 宿主細胞において分泌シグナルとして機能可能なアミノ酸配列が配列番号3で示されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項3記載の遺伝子。
  5. 宿主細胞で機能可能なプロモーターと請求項1又は2記載の遺伝子とが機能可能な形で接続されてなることを特徴とする遺伝子。
  6. 請求項1又は2記載の遺伝子を含むことを特徴とするベクター。
  7. 請求項1又は2記載の遺伝子が宿主細胞に導入されてなることを特徴とする形質転換体。
  8. 宿主細胞が微生物であることを特徴とする請求項7に記載の形質転換体。
  9. 請求項1又は2記載の遺伝子を宿主細胞に導入する工程を含むことを特徴とする形質転換体の製造方法。
  10. 請求項1又は2記載の遺伝子を有する微生物を培養する工程を含むことを特徴とするラセミ体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸エチルエステルを不斉加水分解し、(S)体のN−ベンジルアゼチジン−2−カルボン酸を優先的に生産する能力を有するタンパク質の製造方法。
  11. 一般式(1)
    Figure 0004320922
    (式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R2は、ベンジル基を表し、nは1を表す。)
    で示されるN−置換環状イミノ酸エステル類に、請求項1または2記載の遺伝子を有する微生物またはその処理物を作用させることを特徴とする一般式(2)
    Figure 0004320922
    (式中、 2 及びnは前記と同じ意味を表わす。)
    で示される(S)−N−置換環状イミノ酸類の製造方法。
  12. 下記のアミノ酸配列のいずれかを含むことを特徴とするタンパク質。
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列。
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号35〜255で表されるアミノ酸配列。
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号79〜255で表されるアミノ酸配列。
    (d)配列番号2で示される塩基配列に対応するアミノ酸配列。
    (e)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号103〜765で表される塩基配列に対応するアミノ酸配列。
    (f)配列番号2で示される塩基配列のうち、塩基番号235〜765で表される塩基配列に対応するアミノ酸配列。
  13. 一般式(1)
    Figure 0004320922
    (式中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R2は、ベンジル基を表し、nは1を表す。)
    で示されるN−置換環状イミノ酸エステル類に、請求項12に記載のタンパク質を作用させることを特徴とする一般式(2)
    Figure 0004320922
    (式中、R2及びnは前記と同じ意味を表わす。)
    で示される(S)−N−置換環状イミノ酸類の製造方法。
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